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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】非水系溶媒により安定化された製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20241125BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20241125BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20241125BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K47/20
A61K47/12
A61K9/70 401
A61P25/08
A61K47/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020551118
(86)(22)【出願日】2019-10-04
(86)【国際出願番号】 JP2019039349
(87)【国際公開番号】W WO2020071546
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2018189491
(32)【優先日】2018-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019014911
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 純
(72)【発明者】
【氏名】三輪 泰司
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓子
(72)【発明者】
【氏名】濱本 英利
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0226972(US,A1)
【文献】国際公開第03/009882(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0123320(US,A1)
【文献】国際公開第2016/136732(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と
支持体の片面に設けられた粘着剤層と、を備えた、貼付剤であって、前記粘着剤層が、バクロフェン塩酸塩およびDMSOを含有する外用剤組成物を含み、バクロフェン塩酸塩の濃度が、外用剤組成物の全重量に対して、1~30重量%であり、DMSOの濃度が、外用剤組成物の全重量に対して、25~95重量%である、貼付剤。
【請求項2】
更に、一種以上のC16-20脂肪酸を含有する請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
前記C16-20脂肪酸が、オレイン酸、イソステアリン酸又はその混合物である、請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
更に、オレイルアルコールを含有する請求項1に記載の貼付剤。
【請求項5】
(a)溶媒不透性の第1のシートと、
(b)前記第1のシートの上面に貼り付けられ、前記第1のシートとの間に非シール領域と該非シール領域を囲むシール領域を形成するとともに、前記非シール領域の外周縁に沿って環状に伸びる切断部が形成された溶媒不透性の第2のシートと、
(c)前記非シール領域において前記第1のシートと前記第2のシートの間に配置され,前記切断部の内側で前記第2のシートに固定され、外用剤組成物を担持した経皮吸収剤担持部材と、
(d)前記第2のシートの上面に剥離可能に貼り付けられた粘着性の第3のシートと、
を備えた、請求項1~4のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】
16-20脂肪酸の濃度が、外用剤組成物の全重量に対して、0.5~60重量%である、請求項2または3に記載の貼付剤。
【請求項7】
オレイルアルコールの濃度が、外用剤組成物の全重量に対して、0.4~8重量%である、請求項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バクロフェン又はその塩を含有する外用剤組成物、及びバクロフェン又はその塩を含有する製剤の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バクロフェンは、経口用錠剤、髄腔内注射剤として上市されており、痙性麻痺等の治療薬として用いられる。血漿中有効濃度を一定に保ち、経口剤の投与により引き起こされる悪心等の消化器系に対する副作用を生じさせない投与方法として経皮投与は有望である。バクロフェンを含有する外用剤としては、例えば、炭素数6~12のアルコール及びプロピレングリコールを含む水性製剤(特許文献1)が提案されている。
【0003】
バクロフェンは脱水縮合を生じやすく、製剤設計に際しては経時劣化の抑制に配慮することが求められる。バクロフェンの経時劣化を抑制する方法として、α-アミノ酸を添加する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-253022号公報
【文献】特開2000-34226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、バクロフェンの経皮吸収性及び安定性に優れた、バクロフェン又はその塩、特にバクロフェン塩酸塩を含有する外用剤組成物を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、また、バクロフェンの縮合環化反応が抑制され、安定性に優れたバクロフェン又はその塩を含有する製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の酸がバクロフェンの可溶化剤、安定化剤、及び/又は経皮吸収促進剤として作用することを見出した。さらに、バクロフェンとその特定の酸との塩をジメチルスルホキシド(以下、DMSOと称する場合がある。)に溶解させると、環化体(分子内縮合生成物)及びその他の分解物等の生成が抑制され、優れた保存安定性を示すことを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は下記〔1〕~〔4〕を提供する。
【0008】
〔1〕 バクロフェン塩酸塩を含有する外用剤。
〔2〕 さらに、DMSOを含有する上記〔1〕に記載の外用剤。
〔3〕 バクロフェン塩酸塩を、有機溶媒又は無機溶媒に溶解する、バクロフェン製剤の安定化方法。
〔4〕 バクロフェン塩酸塩、DMSO、C16-20脂肪酸を含有する外用剤。
【0009】
さらに、本発明は下記〔5〕~〔12〕を提供する。
〔5〕 バクロフェン塩酸塩を含有する外用剤組成物。
〔6〕 更に、DMSOを含有する上記〔5〕に記載の外用剤組成物。
〔7〕 更に、一種以上のC16-20脂肪酸を含有する上記〔5〕又は〔6〕に記載の外用剤組成物。
〔8〕 前記C16-20脂肪酸が、オレイン酸、イソステアリン酸又はその混合物である、上記〔7〕に記載の外用剤組成物。
〔9〕 支持体と
支持体の片面に設けられた粘着剤層と、を備えた、貼付剤であって、前記粘着剤層が、上記〔5〕~〔8〕のいずれかに記載の外用剤組成物を含む、貼付剤。
〔10〕 (a)溶媒不透性の第1のシートと、
(b)前記第1のシートの上面に貼り付けられ、前記第1のシートとの間に非シール領域と該非シール領域を囲むシール領域を形成するとともに、前記非シール領域の外周縁に沿って環状に伸びる切断部が形成された溶媒不透性の第2のシートと、
(c)前記非シール領域において前記第1のシートと前記第2のシートの間に配置され,前記切断部の内側で前記第2のシートに固定され、上記〔5〕~〔8〕のいずれかに記載の外用剤組成物を担持した経皮吸収剤担持部材と、
(d)前記第2のシートの上面に剥離可能に貼り付けられた粘着性の第3のシートと、
を備えた、貼付剤。
〔11〕 バクロフェンまたはその塩を含有する製剤の安定化方法であって、バクロフェン塩酸塩を有機溶媒及び/又は無機溶媒に溶解させることを特徴とする、安定化方法。
〔12〕 前記有機溶媒が、DMSOを含む、上記〔11〕に記載の安定化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バクロフェンを有効成分として含有する外用剤を製造した場合に、環化体(分子内縮合生成物)及びその他の分解物等の生成が抑制され、優れた保存安定性をもたらすことが可能となり、さらに、バクロフェンの皮膚透過性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[バクロフェン又はその塩を含有する外用剤組成物]
本発明の外用剤組成物は、バクロフェン(4-アミノ-3-(4-クロロフェニル)ブタン酸)又はその塩、好ましくはバクロフェン塩酸塩を含む。バクロフェンは、ラセミ体であってもよく、光学異性体(R-バクロフェンまたはS-バクロフェン)であってもよい。バクロフェン塩酸塩は、通常、有機溶媒及び/又は無機溶媒に溶解されている。前記有機溶媒には、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、アラキジン酸、アラキドン酸等の脂肪酸;レブリン酸等のケト酸;カプリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の1価アルコール;プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の2価アルコール;グリセリン等の3価アルコール;セバシン酸ジエチル、ミリスチン酸イソピル、アジピン酸ジイソプロピル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル等の脂肪酸エステル;プロピレングリコールジアセテート等のジエステル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ジメチルスルホキシド等が含まれる。前記無機溶媒としては、水が例示できる。それらの溶媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
有機溶媒及び/又は無機溶媒に溶解したバクロフェン塩酸塩は、分子内縮合生成物(環化体)及びその他の分解物等の生成が抑制され、保存安定性に優れている。
【0013】
本発明の外用剤組成物において、バクロフェン塩酸塩を溶解する溶媒としてはDMSOが好ましく用いられる。DMSOの存在により、バクロフェン塩酸塩は皮膚透過性及び保存安定性に優れている。
【0014】
ある実施態様において、本発明の外用剤組成物は、バクロフェン塩酸塩、DMSOに加えて、更に他の有機溶媒を含むことができる。他の有機溶媒としては、上述の有機溶媒をいずれも用いることができる。ある実施態様において、本発明の外用剤組成物は、バクロフェン塩酸塩、DMSO、及びオレイルアルコールを含む。ある実施態様において、本発明の外用剤組成物は、バクロフェン塩酸塩、DMSO、オレイルアルコールに加え、更に他の有機溶媒を含むことができる。
【0015】
ある実施態様において、本発明の外用剤組成物は、バクロフェン塩酸塩、DMSO、及びC16-20脂肪酸を含む。ある実施態様において、本発明の外用剤組成物は、バクロフェン塩酸塩、DMSO、C16-20脂肪酸、及びプロピレングリコールジアセテートを含む。C16-20脂肪酸の例には、パルミチン酸等のC16飽和脂肪酸、パルミトレイン酸等のC16不飽和脂肪酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等のC18飽和脂肪酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等のC18不飽和脂肪酸、アラキジン酸等のC20飽和脂肪酸、アラキドン酸等のC20不飽和脂肪酸が含まれる。C16-20脂肪酸は、1種又は2種以上を組み合わせて用い得る。ある実施態様において、C16-20脂肪酸はイソステアリン酸であり得る。
【0016】
バクロフェンまたはその塩(好ましくは、バクロフェン塩酸塩)の濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、0.2~40重量%、1~30重量%、3~20重量%、5~15重量%、5~12重量%、7~12重量%、10~45重量%、15~40重量%、17~35重量%、18~30重量%、20~30重量%であり得る。
【0017】
ある実施態様において、DMSOの濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、20~99重量%、20~98重量%、25~95重量%、28~95重量%、30~95重量%、32~95重量%、35~95重量%、37~95重量%、39~95重量%、40~95重量%、41~95重量%、42~95重量%、43~95重量%、44~95重量%、45~95重量%、46~95重量%、47~95重量%、48~95重量%、49~95重量%、50~95重量%、51~95重量%、52~95重量%、53~95重量%、54~95重量%、55~95重量%、56~95重量%、57~95重量%、58~95重量%、59~95重量%、60~95重量%、61~95重量%、62~95重量%、63~95重量%、64~95重量%、65~95重量%、66~95重量%、67~95重量%、68~95重量%、69~95重量%、70~95重量%、71~95重量%、72~95重量%、73~95重量%、74~95重量%、75~95重量%、76~95重量%、77~95重量%、78~95重量%、79~95重量%、80~95重量%、81~95重量%、82~95重量%、83~95重量%、84~95重量%、85~95重量%であり得る。
【0018】
ある実施態様において、DMSOの濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、5~50重量%、7~46重量%、10~46重量%、12~45重量%、13~44重量%、14~43重量%、15~42重量%、16~41重量%、17~40重量%、18~39重量%、19~38重量%、20~37重量%、21~36重量%、22~35重量%、23~34重量%、24~33重量%、25~32重量%、25~31重量%、25~30重量%であり得る。
【0019】
ある実施態様において、C16-20脂肪酸の濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、0.5~60重量%、1~50重量%、5~45重量%、10~40重量%、10~38重量%、10~36重量%、12~34重量%、12~32重量%、13~30重量%、14~28重量%、15~25重量%、18~22重量%であり得る。
【0020】
16-20不飽和脂肪酸の濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、0.5~10重量%、0.6~8重量%、0.8~6重量%、0.8~4重量%、0.9~2.5重量%、1.0~2.2重量%、1.2~1.8重量%であり得る。C16-20飽和脂肪酸の濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、5~50重量%、10~45重量%、12~40重量%、15~35重量%、15~34重量%、15~33重量%、15~32重量%、15~31重量%、15~30重量%、15~29重量%、15~28重量%、15~27重量%、15~26重量%、15~25重量%、15~24重量%、15~23重量%、15~22重量%、15~21重量%、16~21重量%、17~21重量%、18~21重量%であり得る。
【0021】
プロピレングリコールジアセテートの濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、1~40重量%、2~40重量%、5~40重量%、10~35重量%、15~35重量%、20~35重量%、25~30重量%、5~15重量%、5~12重量%、8~10重量%であり得る。
【0022】
オレイルアルコールの濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、0.4~8重量%、0.5~7重量%、1.0~7重量%、1.5~7重量%、1.8~7重量%、2.0~6.8重量%、2.2~6.6重量%、2.4~6.4重量%、2.5~6.2重量%、2.6~6.2重量%であり得る。
【0023】
本発明の外用剤組成物がDMSO及びオレイルアルコールに加えて、更に他の有機溶媒を含む場合、当該他の有機溶媒の濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、5~90重量%、10~90重量%、15~90重量%、20~90重量%、25~90重量%、30~85重量%、40~85重量%、40~80重量%、5~60重量%、5~55重量%、5~50重量%、10~45重量%であり得る。
【0024】
本発明の外用剤組成物がDMSOおよび水を含む場合、水の濃度は、例えば、外用剤組成物の全重量に対して、0~3.0重量%、0~2.5重量%、0~2.0重量%、0~1.5重量%、0~1.0重量%、0~0.8重量%、0~0.6重量%、0~0.5重量%、0~0.4重量%。0~0.3重量%、0~0.2重量%、0~0.1重量%、0~0.08重量%、0~0.05重量%であり得る。水の濃度がその上限値より高いと、バクロフェンの保存安定性が低下する場合がある。
【0025】
本発明の外用剤組成物は、液剤(ローション剤)として使用するほか、ゲル剤、クリーム剤、貼付剤等、様々な形態の外用剤に加工して使用することもできる。本発明の外用剤組成物を液剤として用いる場合は、その液剤は、例えば、適宜な担持体に適量の本発明の外用剤組成物を担持して皮膚に適用することができる。前記担持体としては、例えば、国際公開第2016/136732号及び国際公開第2017/082301号に記載の経皮吸収剤デリバリーデバイスに用いられる経皮吸収担持部材等が挙げられる。これらの文献に記載の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。すなわち、本発明において使用される経皮吸収剤デリバリーデバイスは、
(a)溶媒不透性の第1のシートと、
(b)前記第1のシートの上面に貼り付けられ、前記第1のシートとの間に非シール領域と該非シール領域を囲むシール領域を形成するとともに、前記非シール領域の外周縁に沿って環状に伸びる切断部が形成された溶媒不透性の第2のシートと、
(c)前記非シール領域において前記第1のシートと前記第2のシートの間に配置され,前記切断部の内側で前記第2のシートに固定され、本発明の外用剤組成物を担持した経皮吸収剤担持部材と、
(d)前記第2のシートの上面に剥離可能に貼り付けられた粘着性の第3のシートと、
を備えた構造を有しうる。
【0026】
本発明の外用剤組成物を貼付剤として用いる場合は、その貼付剤は、例えば、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマー等のポリマーをベースポリマーとする公知の粘着剤組成物に本発明の外用剤組成物を混合し、粘着剤層を形成することにより製造することができる。本発明の貼付剤は、少なくとも支持体と、支持体の片面に有効成分を含有する粘着剤層を備えた構造を有しうる。
【0027】
ゴム系ポリマーの例としては、これらに限定されないが、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」と称する場合がある)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブタジエンゴム・スチレンブロック共重合体、スチレン・ブタジエンゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブテン等の合成ゴム;天然ゴム等が挙げられる。
【0028】
アクリル系ポリマーの例としては、これらに限定されないが、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸2-エチルヘキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2-エチルエキシル・N-ビニル-2-ピロリドン・ジメタクリル酸-1,6-ヘキサングリコール共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2-エチルヘキシル・アクリル酸2-ヒドロキシエチル・酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0029】
本発明の貼付剤において、粘着剤層は、粘着付与剤、軟化剤、充填剤、抗酸化剤等の他の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0030】
粘着付与剤の例として、これらに限定されないが、ロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、DCPD(ジシクロペンタジエン)系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
軟化剤の例として、これらに限定されないが、プロセスオイル、ポリブテン等の石油系軟化剤、ヒマシ油、ヤシ油などの脂肪油系年化剤、精製ラノリン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0032】
充填剤の例として、これらに限定されないが、カオリン、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩、ケイ酸、アルミニウム水和物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの充填剤は、粘着剤層が柔軟になり過ぎた場合に適度な硬さに調整することができる。
【0033】
抗酸化剤の例としては、これらに限定されないが、ジブチルヒドロキシルトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本発明の貼付剤における支持体には、薬物不透過性で伸縮性または非伸縮性の支持体を使用することができる。このような支持体としては、医薬品の分野において通常用いられるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ナイロン、ポリウレタンなどの合成樹脂フィルムもしくはシートまたはこれらの積層体、多孔質体、発泡体、フィルムにアルミニウムを蒸着させたもの、紙、織布、不織布などが挙げられる。
【0035】
本発明の貼付剤の調製方法としては、公知の方法、例えば溶媒法、ホットメルト法等によって製造することができる。
【0036】
本発明の外用剤は、適宜な包材により包装して保存することができる。包材は、水の透過性が低い素材からなるものを使用できる。水の透過性が低い素材の例は、アルミラミネートフィルムである。包材により水との接触を遮断して保存することにより、不純物の生成を抑制し、長期安定に保存することができる。
【0037】
本発明の外用剤は、脳血管障害、脳性(小児)麻痺、痙性脊髄麻痺、脊髄血管障害、頸部脊椎症、後縦靱帯骨化症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、外傷後遺症(脊髄損傷、頭部外傷)、術後後遺症(脳・脊髄腫瘍を含む)等のγ-アミノ酪酸(GABA)受容体に関連する疾患の治療に使用することができる。本発明の外用剤は、治療を必要とする対象の皮膚へ貼付するかまたは塗布することができる。
【実施例
【0038】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されない。
【0039】
(実施例1)
水、プロピレングリコール(PG)、グリセリン、酢酸、乳酸、10%塩酸、10%水酸化ナトリウム水溶液にバクロフェンを溶解し、0.25重量%溶液を調製した。各溶液10gを50℃で保存し、1週間後及び2週間後のバクロフェン及びその環化体(分子内縮合生成物)の含量を測定した。
【0040】
結果を表1に示す。
【表1】
【0041】
これらの結果によれば、水、10%塩酸、10%水酸化ナトリウム水溶液、及び乳酸の溶液ではバクロフェンの環化体の生成は抑制された。
一方、プロピレングリコール及び酢酸の溶液では、バクロフェンの含量は大きく低下した。また、プロピレングリコールの溶液では環化体以外の分解物も多量に生成していた。
【0042】
さらに、バクロフェンは、水中で安定であるが、水への溶解度は低く(約0.27%)、その濃度は外用剤として用いるのに不十分であるのに対し、10%塩酸及び乳酸への溶解度は高く(10%塩酸:約39%、乳酸:約33%)、そして、これらの溶液中での安定性は高いことが示された。その結果、塩酸及び乳酸を可溶化剤として用いることでバクロフェン含有製剤の安定性が向上することが示唆された。
【0043】
(実施例2)
塩酸又は乳酸を可溶化剤として用いてバクロフェンの各溶液を調製し、水、プロピレングリコール、NMP(N-メチルピロリドン)、及びグリセリンに溶解し、各溶液の50℃保存におけるバクロフェンの安定性を評価した。各溶液の調製方法は以下の通りである。
[塩酸を可溶化剤とする溶液]
バクロフェンを、10%塩酸に、バクロフェン:10%塩酸=1:2(重量比)の割合で溶解し、バクロフェンの塩酸溶液を調製した。次いで、バクロフェンの塩酸溶液0.1gを各溶媒(水を除く)10gに溶解して試料とした。
[乳酸を可溶化剤とする溶液]
バクロフェンを、乳酸に、バクロフェン:乳酸=1:3(重量比)の割合で溶解し、バクロフェンの乳酸溶液を調製した。次いで、バクロフェンの乳酸溶液0.1gを各溶媒10gに溶解して試料とした。
【0044】
結果を表2及び表3に示す。
【表2】
【0045】
塩酸を可溶化剤としたとき、塩酸に溶解されたバクロフェンは、プロピレングリコール及びグリセリン中では安定性が悪く、環化体以外の生成物が生成された。
【0046】
【表3】
【0047】
乳酸を可溶化剤としたとき、乳酸に溶解されたバクロフェンは、NMP中ではほぼ一週間でバクロフェンは消失し、環化体のみになった。プロピレングリコール中では不安定であったが、グリセリン及び水中では安定であった。
【0048】
(実施例3)
[バクロフェン塩酸塩溶液の安定性の評価]
バクロフェン(10.0g)を、10%塩酸(20g)に溶解した後、溶媒を凍結させ、凍結乾燥機で一晩乾燥してバクロフェン塩酸塩を得た。
得られたバクロフェン塩酸塩を、水、NMP(N-メチルピロリドン)、プロピレングリコール、グリセリンに溶解して、0.25重量%の溶液を調製した。各溶液を50℃に保存し、1週間後及び2週間後のバクロフェン及びその環化体の含量を測定して、バクロフェンの安定性を評価した。
【0049】
結果を表4に示す。
【表4】
【0050】
バクロフェン塩酸塩は、いずれの溶媒に溶解した場合でも安定であり、特に環化体の生成が顕著に抑制された。
【0051】
(実施例4)
[バクロフェン含有経皮製剤の安定性及び皮膚透過性の評価]
表5~表7に示す割合(重量%)で各成分を秤取混合し、常法に従い、バクロフェン含有経皮製剤を製造した。各製剤を50℃条件下で保存し、1週間後及び2週間後のバクロフェン及びその環化体の含量を測定して、バクロフェンの安定性を評価した。また、ラット皮膚を用いたin vitro試験によって各製剤におけるバクロフェンの皮膚透過性を評価した。
【0052】
結果を表5~表7に示す。
【表5】
【0053】
乳酸を含む製剤は、10%塩酸を含む製剤に比べてバクロフェンの皮膚透過性が優れていた。一方、製剤安定性、特に環化体の生成抑制については10%塩酸を含む製剤が優れた効果を示した。
【0054】
【表6】
【0055】
【表7】
【0056】
バクロフェン遊離体に替えてバクロフェン塩酸塩を含む製剤は、10%塩酸を含む製剤に比べて高い皮膚透過性を示した。また、皮膚透過性はオレイルアルコールの濃度に依存して向上した。
【0057】
(実施例5)
[DMSOを含むバクロフェン含有経皮製剤の安定性及び皮膚透過性の評価]
表8に示す割合(重量%)で各成分を秤取混合し、常法に従い、バクロフェン含有経皮製剤を製造した。各製剤を50℃条件下で保存し、1週間後及び2週間後のバクロフェン及びその環化体の含量を測定して、バクロフェンの安定性を評価した。また、ブタ皮膚を用いたin vitro試験によって各製剤におけるバクロフェンの皮膚透過性を評価した。
【0058】
結果を表8に示す。
【表8】


【0059】
DMSOを含み、水を実質的に含有しない製剤は極めて優れた保存安定性を示した。
【0060】
(実施例6)
[DMSO及びC16-20脂肪酸を含むバクロフェン含有経皮製剤の安定性及び皮膚透過性の評価]
表9に示す割合(重量%)で各成分を秤取混合し、常法に従い、バクロフェン含有経皮製剤を製造した。各製剤を80℃条件下で保存し、2日後のバクロフェン及びその環化体の含量を測定して、バクロフェンの安定性を評価した。また、ブタ皮膚を用いたin vitro試験によって各製剤におけるバクロフェンの皮膚透過性を評価した。
【0061】
結果を表9に示す。
【表9】
【0062】
(実施例7)
[バクロフェン含有経皮製剤の長期安定性の評価]
表9のJ-8で示されるバクロフェン含有経皮製剤を製造し、50℃、40℃及び25℃条件下で3月保存し、1月後及び3月後のバクロフェン及びその環化体の含量を測定して、バクロフェンの長期安定性を評価した。
【0063】
結果を表10に示す。
【表10】
【0064】
DMSO及びC16-20脂肪酸を含む製剤において、バクロフェンは長期間にわたって高い保存安定性を示した。
【0065】
(実施例8)
[機械製造したバクロフェン含有経皮製剤の長期安定性の評価]
国際公開第2016/136732号に記載された経皮吸収剤デリバリーデバイスの製造方法を用いて、機械製造したバクロフェン含有経皮製剤の長期安定性を評価した。本実施例では、表9のJ-8で示されるバクロフェン含有経皮製剤(経皮吸収剤)を不織布(経皮吸収剤担持部材)に染み込ませ、2枚のアルミラミネートフィルム(カバーシート及びベースシート)の間に配置した。得られた経皮製剤をアルミの袋に封入して保存して、初期(0月)、1月後、2月後及び3月後のバクロフェン及びその環化体の含量を測定して、バクロフェンの長期安定性を評価した。
【0066】
結果を表11に示す。
【表11】
【0067】
表中、含量(%)はバクロフェンの表示量(約44.4mg)に対する割合を示す。機械製造したDMSO及びC16-20脂肪酸を含む製剤においても、バクロフェンは長期間にわたって優れた保存安定性を示した。
【0068】
(実施例9)
[貼付剤の製造]
表12及び表13に示す処方(重量%)で貼付剤を製造した。製造は、酢酸エチル及びヘプタンを溶媒として用い、溶媒法により常法に従って行った。
【0069】
【表12】
【0070】
【表13】