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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】毛髪一時着色料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/19 20060101AFI20241125BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61K8/19
A61Q5/06
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/39
A61K8/86
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021011746
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115231
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】尾藤 博幸
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-150280(JP,A)
【文献】Kao,日本,Hair Mascara,Mintel GNPD [online],2017年11月,Internet<URL:https://portal.mintel.com>,ID#5277649, [検索日2024.09.13]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを含有する毛髪一時着色料組成物であって、
(A)エタノール
(B)精製水
(C)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー
(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有し、
(A)エタノールと(B)精製水の質量比(A)/(B)が1.93以上であり、
前記(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルのオキシエチレン基の平均付加モル数が20~30モルから選ばれる1種以上であることを特徴とする毛髪一時着色料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪一時着色料組成物に関し、カーボンブラックを含有する毛髪一時着色料組成物であって、カーボンブラックの再分散性と塗布後の毛髪の乾きの速さに優れた毛髪一時着色料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪一時着色料は、酸化染毛剤や酸性染毛料とは異なり、単に毛髪を顔料被覆によって着色するだけである。その特徴により毛髪に対して手軽に任意の着色を施せる点、シャンプーで洗い落とせる点等から、例えば白髪を隠したい場合や、黒髪を好みの色に着色したい場合等に広く使用されている。
【0003】
顔料の中でもカーボンブラックは隠蔽性や発色性に優れるとともに、黒酸化鉄や黒酸化チタン等の黒色無機顔料と比較して比重が小さく経時的な沈降速度が遅いという利点があるため、毛髪一時着色料組成物の顔料として広く使用されている。
【0004】
このような毛髪一時着色料組成物の一般的に要求される性能としては、均一に着色するために良好な顔料分散性がある。また、毛髪一時着色料組成物は毛髪の塗布部が乾く前に手や衣服等で触れると色移りしやすいため、塗布後の毛髪の乾きの速さが求められる。
【0005】
顔料であるカーボンブラックは毛髪一時着色料組成物中で経時的に沈降することは避けられない。このためカーボンブラックを含有する毛髪一時着色料組成物を使用する際は、使用前に振とうして沈降したカーボンブラックを再分散させて使用する方法が知られている。
【0006】
カーボンブラックの再分散性を向上させる方法としては、特定の成分を含有し水の全溶媒に対する比率を30~95質量%とすることでカーボンブラックの再分散性に優れた化粧料用顔料分散液とその化粧料用顔料分散液を含有した水系液体化粧料を得る方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-156745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示されている化粧料用顔料分散液では全溶媒に対する水の割合が高くなるため、毛髪に塗布後、毛髪が乾くまでに時間がかかり、手や衣服等で触れると色移りしやすいという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、カーボンブラックを含有する毛髪一時着色料組成物であって、(A)エタノール、(B)精製水、(C)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマー、(D)ポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有し、(A)エタノールと(B)精製水の質量比(A)/(B)が1.93以上であることを特徴とする毛髪一時着色料組成物が上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、カーボンブラックの再分散性および、塗布後の毛髪の乾きの速さに優れた毛髪一時着色料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0012】
本発明は、塗布後の毛髪の乾きを速くする観点から(A)エタノールを含有する。
【0013】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、好ましくは57.9%~86.9%、より好ましくは67.9%~82.9%がよい。前記(A)成分が57.9%未満の場合、塗布後の毛髪の乾きが遅くなる恐れがある。前記(A)成分が86.9%を超える場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れがある。
【0014】
本発明は、カーボンブラックの再分散性の観点から、(B)精製水を含有する。
【0015】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、好ましくは1~30%、より好ましくは5~20%がよい。前記(B)成分が1%未満の場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れがある。前記(B)成分が30%を超える場合、塗布後の毛髪の乾きが遅くなる恐れがある。
【0016】
本発明で用いられる前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(A)/(B)は、カーボンブラックの再分散性と塗布後の毛髪の乾きの速さの観点から、好ましくは1.93以上、より好ましくは3.4~16.58がよい。質量比(A)/(B)が1.93未満の場合、塗布後の毛髪の乾きが遅くなる。質量比(A)/(B)が16.58を超える場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れがある。
【0017】
本発明は、カーボンブラックの再分散性の観点から、(C)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/メタクリル酸アルキル)コポリマーを含有する。
【0018】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、好ましくは2~12%、より好ましくは4~10%がよい。前記(C)成分が2%未満の場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れがある。前記(C)成分が12%を超える場合、塗布後の毛髪の乾きが遅くなる恐れがある。
【0019】
本発明は、カーボンブラックの再分散性の観点から、(D)ポリオキシエチレン(以下、POEとする)ラウリルエーテルを含有する。
【0020】
本発明で用いられる前記(D)成分としては、特に限定されないが、例えば、POE(2)ラウリルエーテル、POE(4)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(15)ラウリルエーテル、POE(20)ラウリルエーテル、POE(21)ラウリルエーテル、POE(23)ラウリルエーテル、POE(24)ラウリルエーテル、POE(25)ラウリルエーテル、POE(30)ラウリルエーテル、POE(38)ラウリルエーテル、POE(40)ラウリルエーテル、POE(50)ラウリルエーテル等が挙げられる。なお、これらの成分において、POEの後の括弧内の数字はオキシエチレン基の平均付加モル数を表している。前記(D)成分は1種以上を含有してよい。前記(D)成分のオキシエチレン基の平均付加モル数は、カーボンブラックの再分散性を向上させる観点から、好ましくは20~30モルがよい。
【0021】
本発明で用いられる前記(D)成分の含有量は、好ましくは0.5~5%、より好ましくは1~3%がよい。前記(D)成分が0.5%未満の場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れがある。前記(D)成分が5%を超える場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れや塗布後の毛髪の乾きが遅くなる恐れがある。
【0022】
本発明で用いられるカーボンブラックの含有量は、好ましくは0.01~1.2%、より好ましくは0.05~0.8%がよい。カーボンブラックが0.01%未満の場合、隠蔽性が悪くなる恐れがある。カーボンブラックが1.2%を超える場合、カーボンブラックの再分散性が悪くなる恐れがある。
【0023】
本発明の毛髪一時着色料組成物は、カーボンブラック以外の顔料を含有してもよい。
【0024】
本発明で用いられるカーボンブラック以外の顔料としては、特に限定されないが、例えば、無機顔料として、黒酸化鉄、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化チタン、グンジョウ、コンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カルミン、シコニン等が挙げられ、有機顔料として、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色227号、赤色230号の(1)、赤色230号の(2)、赤色231号、赤色232号、青色1号、青色2号、青色202号、青色205号、黄色4号、黄色5号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、だいだい色205号、だいだい色207号等水溶性染料のバリウム、カルシウム、ジルコニウムもしくはアルミニウムレーキ顔料、赤色201号、赤色202号、赤色203号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色207号、赤色208号、赤色215号、赤色218号、赤色219号、赤色220号、赤色221号、赤色223号、赤色225号、赤色226号、赤色228号、青色201号、青色204号、青色404号、黄色201号、黄色204号、黄色205号、緑色202号、だいだい色201号、だいだい色203号、だいだい色204号、だいだい色206号、だいだい色401号、だいだい色402号、だいだい色403号、紫色201号等が挙げられる。前記カーボンブラック以外の顔料は1種以上を含有してよい。
【0025】
本発明は、毛髪一時着色料組成物に適度な粘性を与える観点から親水性増粘剤の1種以上を含有してもよい。
【0026】
本発明で用いられる前記親水性増粘剤としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、寒天、グアーガム、クインスシードガム、ベントナイト、デンプン等が挙げられる。前記親水性増粘剤は1種以上を含有してよい。その中でも前記(A)成分と前記(B)成分の質量比(A)/(B)が1.93以上の毛髪一時着色料組成物においての経時安定性の観点から、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロースがよい。
【0027】
本発明で用いられる前記親水性増粘剤の含有量は、好ましくは0.2~1.2%、より好ましくは0.2~1%がよい。
【0028】
本発明の毛髪一時着色料組成物は前記成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、前記(D)成分以外の界面活性剤、前記(C)成分および前記親水性増粘剤以外のポリマー、油性成分、保湿剤、キレート剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、安定化剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、染料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0029】
本発明による毛髪一時着色料組成物の20℃の条件下における粘度は、特に限定されないが、毛髪への塗布のしやすさの観点から、好ましくは50~500mPa・s、より好ましくは100~300mPa・sがよい。
【0030】
本発明による20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られた毛髪一時着色料組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に100g充填し、20℃条件下で24時間静置した後に、B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、M2号ローターを用いて20℃条件下において30rpmで1分間回転させた後に測定したものである。
【0031】
本発明の毛髪一時着色料組成物の20℃におけるpHは、好ましくは4~10、より好ましくは6~9がよい。
【0032】
本発明による20℃条件下におけるpHは、常法にて調製して得られた毛髪一時着色料組成物をサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に100g充填し、20℃条件下で24時間静置した後、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(F-71、株式会社堀場製作所製)にて原液のpHを測定し得られるものである。
【0033】
本発明の毛髪一時着色料組成物は、汎用の毛髪用塗布具を用いて使用することができる。毛髪用塗布具の形状、構造等は、特に限定されないが、例えばヘアマスカラタイプの塗布具、チューブタイプの塗布具、筆タイプの塗布具、押圧機構を備えた塗布具、エアゾール機構を有する塗布具等が挙げられる。その中でも、安全性と使用後の廃棄のしやすさの観点から、ヘアマスカラタイプの塗布具、チューブタイプの塗布具、筆タイプの塗布具がよい。
【0034】
本発明の毛髪一時着色料組成物は、毛髪への塗布前に振とうして使用する。
【0035】
本発明における振とうとは、毛髪一時着色料組成物を用いた毛髪用塗布具を手で持って上下・左右に振ることを指す。
【実施例
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0037】
本明細書に示す評価試験において、毛髪一時着色料組成物に含まれる成分および、その含有量を種々変更しながら実施した各種の試験結果を表1~4に示す。なお、表中の毛髪一時着色料組成物の各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。また、表中の毛髪一時着色料組成物の成分に示すPOEはポリオキシエチレンを表し、POEの後の括弧内の数字はオキシエチレン基の平均付加モル数を表している。
【0038】
本明細書に示す評価試験において、「カーボンブラックの再分散性」および「塗布後の毛髪の乾きの速さ」について評価した。
【0039】
<カーボンブラックの再分散性>
実施例および比較例で得られた毛髪一時着色料組成物を調製後ただちにサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に80g充填して密栓し1ヶ月間室温にて静置させてカーボンブラックを意図的に沈降させた毛髪一時着色料組成物と、同様に調製・充填して3分以内の毛髪一時着色料組成物とを、上下20cmの幅で7秒間に20回の速さで上下に振とうし、それぞれの毛髪一時着色料組成物を0.1g採取して白色の紙に10cmの長さに均一に伸ばし、1ヶ月間静置させた毛髪一時着色料組成物と調製・充填して3分以内の毛髪一時着色料組成物との色調を比較し、色調の差を下記の基準により評価した。
◎:色調の差はない。
○:色調の差はほとんどない。
×:色調の差がある。
【0040】
<塗布後の毛髪の乾きの速さ>
実施例および比較例で得られた毛髪一時着色料組成物を0.1g採取してガラス板に10cmの長さに均一に伸ばして放置し、試験用白布(JIS L0803染色堅ろう度試験用添付白布)を付着させ、色移りしなくなるまでの時間を評価した。
◎:1分以内に色移りしなくなる。
○:5分以内に色移りしなくなる。
×:5分を超えても色移りする。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
表1~4に示す実施例1~23から、カーボンブラックの再分散性および塗布後の毛髪の乾きの速さに関して良好な結果を得た。
【0046】
以下の実施例24により得られた毛髪一時着色料組成物は、カーボンブラックの再分散性および塗布後の毛髪の乾きの速さに関して良好な結果を得た。
【0047】
(実施例24)
成 分 含有量(質量%)
(A)エタノール 77.06
(B)精製水 10.00
(C)(メタクリロイルオキシエチルカルボキシベタイン/
メタクリル酸アルキル)コポリマー 8.00
(D)POE(25)ラウリルエーテル 2.00
ヒドロキシプロピルセルロース 0.70
1,3-ブチレングリコール 0.80
カーボンブラック 0.60
ベンガラ 0.40
黄酸化鉄 0.40
海藻エキス 0.01
加水分解シルク液 0.01
ツバキ花エキス 0.01
ローヤルゼリーエキス 0.01
合計 100.00
粘度 177mPa・s(20℃)
pH 8.0(20℃)
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、カーボンブラックの再分散性および塗布後の毛髪の乾きの速さに優れた毛髪一時着色料組成物を提供することができる。