(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法
(51)【国際特許分類】
C23C 18/20 20060101AFI20241125BHJP
C23C 18/36 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
C23C18/36
(21)【出願番号】P 2021112277
(22)【出願日】2021-07-06
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092439
【氏名又は名称】豊永 博隆
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一生
(72)【発明者】
【氏名】奥野 良将
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】特許第6843455(JP,B1)
【文献】特開2012-255182(JP,A)
【文献】特開2002-220677(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0120550(US,A1)
【文献】特開2018-012882(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109642323(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/20
C23C 18/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)界面活性剤よりなる吸着促進剤の含有液に非導電性基板を接触させる吸着促進工程と、
(b)ニッケルコロイド触媒液に吸着促進された非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(c)触媒付与された上記基板上に無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液を用いてニッケル又はニッケル合金皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなる無電解ニッケル系メッキ方法において、
上記吸着促進工程(a)が、一次吸着工程(a1)の後に二次吸着工程(a2)を施す二段階工程からなり、
一次吸着工程(a1)が非導電性基板をカチオン系界面活性剤の含有液に接触させる工程であり、
二次吸着工程(a2)が非導電性基板をアニオン系界面活性剤の含有液に接触させる工程であることを特徴とする無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法。
【請求項2】
一次吸着工程(a1)のカチオン系界面活性剤がポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアリルアミン(PAA類)、ジアリルジアルキルアンモニウム塩重合体(DADA)より選ばれた少なくとも一種であり、
二次吸着工程(a2)のアニオン系界面活性剤がアルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法。
【請求項3】
無電解メッキ工程(c)において、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液が還元剤として次亜リン酸類を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法。
【請求項4】
触媒付与工程(b)の触媒液が、可溶性ニッケル塩と、還元剤と、コロイド安定剤及び/又は水溶性ポリマーとを含有してなり、
上記コロイド安定剤がオキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、アミノ酸類、ポリカルボン酸類、糖質より選ばれた少なくとも一種であり、
上記水溶性ポリマーがポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリビニルアルコール類(PVA類)、ポリアクリルアミド類(PAM類)、ポリアリルアミン類(PAA類)より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非導電性基板に吸着促進処理をし、ニッケルによる触媒付与処理をした後、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキを施す無電解ニッケル系のメッキ方法に関して、当該吸着促進処理において非導電性基板に異なる種類の界面活性剤で2段階処理を施すことにより、次の触媒付与工程で非導電性基板にニッケルコロイド粒子を効果的に触媒付与し、もって、無電解メッキにおいてニッケル又はニッケル合金皮膜の付き回り性を良好に達成できるものを提供する。
【背景技術】
【0002】
ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PET樹脂などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などの非導電性基板上に無電解ニッケル又はニッケル合金メッキを施すには、先ず、基板を界面活性剤などに接触させて吸着促進処理をし、次いで、基板上にパラジウム、金、銀、銅、ニッケルなどの金属を吸着させてこれを触媒核とした後、この触媒核を介して無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液により同ニッケル系皮膜を基板上に析出させる方式が一般的である。
【0003】
そこで、吸着促進及び触媒付与の各処理を経た後、ニッケル又はニッケル合金メッキを含む無電解メッキを施す従来技術を挙げると、次の通りである。
(1)特許文献1
(A)吸着促進剤工程と、(B)触媒付与工程と、(C)無電解メッキ工程とからなる無電解メッキ方法であり、
上記吸着促進工程(A)が、被メッキ物(請求項6;樹脂基板やセラミックス基板)をカチオン性界面活性剤で処理する1次工程と、アニオン性界面活性剤で処理する2次工程とからなり、
触媒付与工程(B)が銀を含有する特定の構造体で被メッキ物を処理する工程からなり、
無電解メッキ工程(C)では、メッキ金属に銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、ロジウムなどが例示される([0045])。
当該文献1の請求項5及び実施例1~3([0057]、[0059]~[0060])において、無電解メッキは銅メッキである。
【0004】
次の特許文献2~5の出願人は本発明と同一である。
(2)特許文献2
(A)吸着促進剤工程と、(B)触媒付与工程と、(C)無電解メッキ工程とからなる無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法であり、当該触媒付与工程(B)を可溶性ニッケル塩と、還元剤と、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類などの所定のコロイド安定剤とを含有するコロイド触媒液で処理することに特徴がある(請求項1、請求項8)。
上記吸着促進工程(A)では、被メッキ物をノニオン性、カチオン性、アニオン性及び両性の各種界面活性剤のいずれかで処理しており(請求項8参照)、請求項9ではカチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤で処理することを特徴とする。
【0005】
(3)特許文献3
(A)吸着促進剤工程と、(B)触媒付与工程と、(C)無電解メッキ工程とからなる無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法であり、当該触媒付与工程(B)を可溶性ニッケル塩と、還元剤と、グルコース、フルクトース、ソルビトール、キシリトール、マルチトールなどの所定の糖質とを含有するコロイド触媒液で処理することに特徴がある(請求項1、請求項4)。
上記吸着促進工程(A)では、被メッキ物をノニオン性、カチオン性、アニオン性及び両性の各種界面活性剤のいずれかで処理する(請求項4参照)。
【0006】
(4)特許文献4
(A)吸着促進剤工程と、(B)触媒付与工程と、(C)無電解メッキ工程とからなる無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法であり、当該触媒付与工程(B)を可溶性ニッケル塩と、還元剤と、ポリエチレンイミン類、ポリアミン類、ポリアクリルアミド類などの所定の合成系水溶性ポリマーとを含有するコロイド触媒液で処理することに特徴がある(請求項1、請求項4)。
上記吸着促進工程(A)では、被メッキ物をノニオン性、カチオン性、アニオン性及び両性の各種界面活性剤のいずれかで処理しており(請求項3参照)、請求項5ではカチオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤で処理することを特徴とする。
【0007】
(5)特許文献5
(A)吸着促進剤工程と、(B)触媒付与工程と、(C)無電解メッキ工程とからなる無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法であり、当該触媒付与工程(B)を可溶性ニッケル塩と、還元剤と、オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、ポリカルボン酸類などの所定のコロイド安定剤と、ポリビニルピロリドン類、ポリエチレンイミン類、ポリアリルアミン類などの所定の合成系水溶性ポリマーとを含有するコロイド触媒液で処理することに特徴がある(請求項1、請求項4)。
上記吸着促進工程(A)での界面活性剤の種類の選択(請求項4)、また、カチオン性及び/又は両性の界面活性剤の選択が好ましいことも(請求項6)、上記特許文献4と同じである。
【0008】
【文献】特開2012-255182号公報
【文献】特開2016-056421号公報
【文献】特開2018-012882号公報
【文献】特許第6843455号公報
【文献】特許第6858425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1では、樹脂基板やセラミックス基板などの被メッキ物を吸着促進処理するに際して、先ずカチオン性界面活性剤、次にアニオン性界面活性剤で夫々処理した後、触媒付与工程では被メッキ物を特定の銀触媒で処理し、無電解メッキすることが記載される。
この特許文献1の無電解メッキ工程では、メッキ金属に銅、ニッケル、銀などが挙げられるが([0045])、上述のように、被メッキ物に触媒付与する金属が銀であるため、特許文献1は、触媒付与対象がニッケルである本発明と根本的に異なる。
また、特許文献2~5は、基本的に所定の界面活性剤を単用又は併用して非導電性基板に吸着促進処理を施し、(i)オキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などの所定のコロイド安定剤、(ii)ポリビニルピロリドン類、ポリエチレンイミン類などの所定の合成系の水溶性ポリマー、(iii)ソルビトール、キシリトールなどの所定の糖質を単用又は併用したコロイド触媒液で上記基板にニッケル触媒核を付与した後、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキを施すものである。
【0010】
本発明は、ニッケル触媒核の効率的な付与を実現して、次の無電解ニッケル又はニッケル合金メッキに際して、付き回り性に優れたニッケル又はニッケル合金皮膜を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記特許文献2~5の無電解ニッケル系メッキでは、非導電性基板に界面活性剤を用いて吸着促進処理をし、ニッケル触媒核を付与した後、無電解メッキを施すものであるが、無電解メッキ皮膜の付き回り性、即ち、基板に対する円滑な被覆性に改善すべき余地があった。
一方、上記特許文献1では、所定の吸着促進処理を施し、触媒付与を特定の銀触媒で処理した後、ニッケル、銅などの無電解メッキ皮膜を被メッキ物に形成するものであり、触媒付与する金属が銀である点で、ニッケルを触媒核とする本発明とは根本的に異なるが、一方で、触媒付与の予備処理としての吸着促進処理において、特許文献1のような2段の吸着促進処理を、特許文献1の銀系触媒とは異なるニッケル触媒核に適用して効率的な触媒付与を実現し、もって無電解ニッケル系のメッキを行う可能性に想い到った。
そこで、先ず、吸着促進処理では、特許文献1のようなカチオン性とアニオン性の界面活性剤による吸着処理を前・後に分けて検証し、アニオン性での1次処理の後、カチオン性界面活性剤で2次処理すると、無電解メッキでのニッケル皮膜の付き回り性に劣り、付き回り性の飛躍には順序を逆にする必要があることを確認した(後述の試験例参照)。
また、カチオン性(1次処理)及びアニオン性(2次処理)の界面活性剤による適正な順序で吸着促進処理をしても、特許文献1のような銀系の触媒付与では、本発明が目的とする無電解ニッケル系メッキを施しても、良好な皮膜形成には至らず、皮膜の付き回り性に劣ることが確認された(後述の試験例参照)。
【0012】
そこで、特許文献2~5を基本とする無電解ニッケル系メッキにおいて、無電解ニッケル系メッキ皮膜の付き回り性を向上するためには、特許文献1を参照して、カチオン性(1次処理)及びアニオン性(2次処理)の界面活性剤を用いて適正な順序で2段階の吸着促進処理をすること、触媒付与工程では特許文献1のような銀系触媒ではなく、特許文献2~5のようなニッケル触媒を用いることが必要である点を確認し、本発明を完成した。
【0013】
即ち、本発明1は、(a)界面活性剤よりなる吸着促進剤の含有液に非導電性基板を接触させる吸着促進工程と、
(b)ニッケルコロイド触媒液に吸着促進された非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイド粒子を吸着させる触媒付与工程と、
(c)触媒付与された上記基板上に無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液を用いてニッケル又はニッケル合金皮膜を形成する無電解メッキ工程
とからなる無電解ニッケル系メッキ方法において、
上記吸着促進工程(a)が、一次吸着工程(a1)の後に二次吸着工程(a2)を施す二段階工程からなり、
一次吸着工程(a1)が非導電性基板をカチオン系界面活性剤の含有液に接触させる工程であり、
二次吸着工程(a2)が非導電性基板をアニオン系界面活性剤の含有液に接触させる工程であることを特徴とする無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法である。
【0014】
本発明2は、上記本発明1において、一次吸着工程(a1)のカチオン系界面活性剤がポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアリルアミン(PAA類)、ジアリルジアルキルアンモニウム塩重合体(DADA)より選ばれた少なくとも一種であり、
二次吸着工程(a2)のアニオン系界面活性剤がアルキルナフタレンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法である。
【0015】
本発明3は、上記本発明1又は2において、無電解メッキ工程(c)において、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液が還元剤として次亜リン酸類を含むことを特徴とする無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法である。
【0016】
本発明4は、上記本発明1~3のいずれかにおいて、触媒付与工程(b)の触媒液が、可溶性ニッケル塩と、還元剤と、コロイド安定剤及び/又は水溶性ポリマーとを含有してなり、
上記コロイド安定剤がオキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、アミノ酸類、ポリカルボン酸類、糖質より選ばれた少なくとも一種であり、
上記水溶性ポリマーがポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリビニルアルコール類(PVA類)、ポリアクリルアミド類(PAM類)、ポリアリルアミン類(PAA類)より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法。
【発明の効果】
【0017】
非導電性基板への吸着促進工程(a)において、当該基板をカチオン性界面活性剤に接触させる1次吸着工程と、アニオン性界面活性剤に接触させる2次吸着工程との2段階で処理することにより、次の工程(b)で非導電性基板にニッケルコロイド粒子を効率的に触媒付与でき、もって、無電解メッキ工程(c)に際して当該基板上へのニッケル皮膜の付き回り性を良好に達成して、基板の全面に亘りニッケル又はニッケル合金皮膜を均一に被覆することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、非導電性基板に界面活性剤を用いて吸着促進処理をし、ニッケル触媒核を付与した後、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキを施す方法であり、当該吸着促進処理を1次と2次の2段階工程で行い、1次工程では非導電性基板をカチオン性界面活性剤で、2次工程ではアニオン性界面活性剤で夫々処理することを特徴とする。
本発明の触媒付与工程では、前記特許文献1のような銀系触媒は用いず、ニッケル触媒核を用いる点で特許文献1とは異なる。
【0019】
上記非導電性基板は、ガラス・エポキシ樹脂、ガラス・ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリブチレンタレフタレート(PBT)樹脂など)、ABS樹脂、PET樹脂及びこれらのポリマーアロイ(例えば、PC/ABS、PBT/ABS、PA/ABS、PC/PS)などの樹脂基板を初め、ガラス基板、セラミックス基板などをいう。
【0020】
本発明は、上記ニッケルコロイド触媒液を用いた無電解メッキ方法であり、次の3つの工程を順次組み合わせてなる。
(a)吸着促進工程
(b)触媒付与工程
(c)無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ工程
上記吸着促進工程(a)はいわば(b)の触媒付与の前処理工程であり、基板を界面活性剤の含有液に接触させることで基板表面の濡れ性を高めて触媒活性を増強し、次工程でのニッケルコロイド粒子の吸着を促進するものである。尚、後述するように、吸着促進工程(a)の予備処理として、エッチング工程を施しても良いことは言うまでもない。
本発明の吸着促進工程(a)は、一次吸着工程(a1)の後に二次吸着工程(a2)を施す二段階工程からなる。
上記一次吸着工程(a1)では非導電性基板をカチオン系界面活性剤の含有液に接触させ、次の二次吸着工程(a2)では非導電性基板をアニオン系界面活性剤の含有液に接触させる。
非導電性基板を界面活性剤の含有液に接触させる手法としては、当該液に基板を浸漬させることが基本であるが、含有液を基板に噴霧したり、刷毛で塗布するなどの処理でも差し支えない。
【0021】
1次吸着工程(a1)で用いるカチオン性界面活性剤は、カチオン性を帯びた通常の界面活性機能を有する処理剤を意味し、カチオン性ポリマーも包含される。
上記カチオン性界面活性剤を例示すると、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジン、ポリアリルアミン(PAA類)を初め、一般的な第1~3級アミン化合物、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。
上記第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩には、例えば、ジアリルジアルキルアンモニウム塩重合体(DADA)、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルエチルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルエチルアンモニウム塩、ジメチルベンジルラウリルアンモニウム塩、セチルジメチルベンジルアンモニウム塩、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム塩、トリメチルベンジルアンモニウム塩、トリエチルベンジルアンモニウム塩、ジメチルジフェニルアンモニウム塩、ベンジルジメチルフェニルアンモニウム塩、ヘキサデシルピリジニウム塩、ラウリルピリジニウム塩、ドデシルピリジニウム塩、ステアリルアミンアセテート、ラウリルアミンアセテート、オクタデシルアミンアセテートなどが挙げられる。
この1次吸着工程(a1)のカチオン性界面活性剤には、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアリルアミン(PAA類)、ジアリルジアルキルアンモニウム塩重合体(DADA)などが好適である。
【0022】
また、2次吸着工程(a2)で用いるアニオン性界面活性剤は、アニオン性を帯びた通常の界面活性機能を有する処理剤を意味し、アニオン性ポリマーも包含される。
上記アニオン性界面活性剤を例示すると、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、或いは、ポリアクリル酸やポリメタクリル酸などのカルボン酸系ポリマー、ポリエチレンスルホン酸などのスルホン酸系ポリマー、リン酸系ポリマーなどが挙げられる。
この2次吸着工程(a1)のアニオン性界面活性剤には、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩などが好適である。
【0023】
吸着促進工程(a)の次の触媒付与工程(b)では、可溶性ニッケル塩に還元剤を作用させて生じるニッケルコロイド粒子はゼータ電位がマイナスであるため、上記一次吸着工程(a1)で非導電性基板をカチオン性界面活性剤で接触処理することで、2次吸着工程(a2)でのアニオン性界面活性剤による処理を経ても、基板のマイナス電荷への傾斜を抑制して、触媒付与工程(b)におけるニッケルコロイド粒子の基板への吸着を優位に作用させる効果も期待できる。
上記界面活性剤の含有量は0.05~100g/Lであり、好ましくは0.5~50g/L、より好ましくは1.0~30g/Lである。
当該吸着促進工程の処理温度は、一次工程(a1)及び2次工程(2a)共に15~70℃程度が適しており、好ましくは20~45℃である。より好ましくは30~40℃である。
吸着促進工程の浸漬時間は、一次工程(a1)及び2次工程(2a)共に0.5~20分程度が適しており、好ましくは1~3分程度である。
吸着促進処理の1次及び2次含有液のpHは共に4~12であり、好ましくは7~10である。
【0024】
上述の通り、吸着促進工程(a)の前に、予備処理として、基板を無水クロム酸などのエッチング溶液に浸漬して、表面を粗面化するエッチング工程(p)を行うことができる。
エッチング溶液の濃度は250~500g/Lであり、好ましくは350~450g/Lである。また、エッチング能力を増す目的で硫酸を添加することが好ましい。
処理温度は20~80℃であり、好ましくは50~70℃である。処理時間は2~30分であり、好ましくは5~15分である。
【0025】
吸着促進工程(a)を終えた非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、次の触媒付与工程(b)に移行する。
触媒付与工程(b)では、上記ニッケルコロイド触媒液に非導電性基板を浸漬して、基板表面上にニッケルコロイドを吸着させる。
上記ニッケルコロイド触媒液の基本組成は、(A)可溶性ニッケル塩と、(B)還元剤と、(C)コロイド安定剤及び/又は水溶性ポリマーとである。
上記可溶性ニッケル塩(A)は、水溶液中でニッケルイオンを発生させる可溶性の塩であれば任意のものが使用でき、特段の制限はなく、難溶性塩をも排除しない。具体的には、硫酸ニッケル、酸化ニッケル、塩化ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウム、酢酸ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、スルファミン酸ニッケル、或いは有機スルホン酸やカルボン酸のニッケル塩などが挙げられる。
【0026】
上記還元剤(B)としては、水素化ホウ素化合物、アミンボラン類、次亜リン酸類、アルデヒド類、アスコルビン酸類、ヒドラジン類、多価フェノール類、多価ナフトール類、フェノールスルホン酸類、ナフトールスルホン酸類、スルフィン酸類、還元糖類などが挙げられる。
水素化ホウ素化合物は水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウムなどであり、アミンボラン類はジメチルアミンボラン、ジエチルアミンボランなどである。アルデヒド類はホルムアルデヒド、グリオキシル酸又はその塩などであり、多価フェノール類はカテコール、ヒドロキノン、レゾルシン、ピロガロール、フロログルシン、没食子酸などであり、フェノールスルホン酸類はフェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸又はその塩などである。還元糖類はグルコース、フルクトースなどである。
【0027】
上記成分(C)のコロイド安定剤はメッキ浴中でニッケル錯体を形成する化合物であり、触媒液の経時安定性を担保する機能を果たすものである。
当該コロイド安定剤(C)はオキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類、アミノ酸類、ポリカルボン酸類よりなる群から選ばれる。
上記オキシカルボン酸類としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、グリコール酸、乳酸、トリオキシ酪酸、アスコルビン酸、イソクエン酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ロイシン酸、シトラマル酸、エリソルビン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0028】
上記アミノカルボン酸類としては、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四プロピオン酸、ニトリロ三酢酸、イミノジ酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸、イミノジプロピオン酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、メタフェニレンジアミン四酢酸、1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N′,N′-四酢酸、ジアミノプロピオン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
また、上記アミノ酸類としては、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、グリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)-エチレンジアミンコハク酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0029】
上記ポリカルボン酸類としては、コハク酸、グルタル酸、マロン酸、アジピン酸、シュウ酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、メサコン酸及びこれらの塩などが挙げられる。
【0030】
上記成分(C)の水溶性ポリマーは、コロイド粒子の分散性、即ち、触媒液の経時安定性を担保する機能を果たし、もって無電解ニッケルメッキに際して、ニッケル皮膜に優れた付き回り性を付与できる。
上記水溶性ポリマーは、基本的に合成系のポリマーが好ましいが、ゼラチン、澱粉などの天然由来の水溶性ポリマー、或いは、カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)などのセルロース誘導体のような半合成系ポリマーを排除するものではない。当該合成系の水溶性ポリマーについては、上述の界面活性剤との関係で、一部重複するものであっても差し支えない。
上記合成系の水溶性ポリマー(D)は、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアミン類(PA類)、ポリビニルイミダゾール類(PVI類)、ポリアクリルアミド類(PAM類)から選ばれる。
上記ポリビニルピロリドン類(PVP類)はポリビニルピロリドンのホモポリマー並びに、ポリビニルピロリドンにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を付加したポリマーを含む。
上記ポリエチレンイミン類(PEI類)は、ポリエチレンイミンのホモポリマー並びにポリエチレンイミンにエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシドを付加したポリマーを含む。
上記ポリアミン類(PA類)はジアリルアミンポリマーが基本で、具体的にはジアルキルアンモニウムクロリド重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド二酸化硫黄共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドアクリルアミド共重合体などである。
上記ポリビニルイミダゾール類(PVI類)はポリビニルイミダゾールのホモポリマー並びにポリビニルイミダゾールにエチレンオキシド及び/又はポリプロピレンオキシドを付加したポリマーを含む。
上記ポリアクリルアミド類(PAM類)はアクリルアミドのホモポリマー、アルデヒド変性ポリアクリルアミド、メチロールポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミドなどを初め、アクリルアミドにアクリル酸、メタクリル酸などの親水性ポリマーなどを共重合したポリマーを含む。但し、前記ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体はジアリルアミンとアクリルアミドの共重合体に分類できる。
上記水溶性ポリマー(D)としては、ポリビニルピロリドン類(PVP類)、ポリアクリルアミド類(PAM類)、ポリエチレンイミン類(PEI類)、ポリアミン類(PA類)が好ましく、PEIのエチレンオキシド付加物、ジアリルアミンポリマーからなるPA類、アルデヒド変性ポリアクリルアミドなどがより好ましい。
【0031】
また、本発明のニッケルコロイド触媒液には、必要に応じて、触媒核となる微細金属の分散性を増すために、界面活性剤を含有することができる。
当該界面活性剤はノニオン系、両性、カチオン系、或はアニオン系の各種界面活性剤を選択できる。
上記ノニオン系界面活性剤としては、C1~C20アルカノール、フェノール、ナフトール、ビスフェノール類、(ポリ)C1~C25アルキルフェノール、(ポリ)アリールアルキルフェノール、C1~C25アルキルナフトール、C1~C25アルコキシル化リン酸(塩)、ソルビタンエステル、ポリアルキレングリコール、C1~C22脂肪族アミン、C1~C22脂肪族アミドなどにエチレンオキシド(EO)及び/又はプロピレンオキシド(PO)を2~300モル付加縮合させたものや、C1~C25アルコキシル化リン酸(塩)などが挙げられる。
上記両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン、イミダゾリンベタイン、スルホベタイン、アミノカルボン酸などが挙げられる。また、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドとアルキルアミン又はジアミンとの縮合生成物の硫酸化、或はスルホン酸化付加物も使用できる。
上記カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤については、上記吸着促進工程(a)で述べた通りである。
【0032】
上記ニッケルコロイド触媒液において、上記可溶性ニッケル塩(A)は単用又は併用でき、その含有量は0.001~1.0モル/Lが適し、好ましくは0.002~0.5モル/L、より好ましくは0.0025~0.3モル/Lである。
可溶性ニッケル塩(A)の含有量が適正量より少ないとニッケル皮膜の膜厚が不足したり、皮膜の均質性が低下する恐れがあり、逆に、溶解量などに応じて上限濃度は制限される。
上記還元剤(B)は単用又は併用でき、その含有量は0.002~1.0モル/Lが適し、好ましくは0.003~0.7モル/L、より好ましくは0.005~0.6モル/Lである。
還元剤の含有量が適正量より少ないとニッケル塩の還元作用が低下し、逆に、上限濃度は溶解量などで制限されるが、多過ぎると無電解メッキで析出するニッケル皮膜の均質性が低下する恐れがある。
上記成分(C)は単用又は併用でき、当該ポリマーの触媒液に対する含有量は0.5~300g/Lであり、好ましくは1~200g/L、より好ましくは1~100g/Lである。成分(C)の含有量が適正量より少ないと経時安定性を損なう恐れがあり、300g/Lを越えるとコロイドが過剰に安定して触媒活性の円滑性が低減する。
【0033】
本発明のニッケルコロイド触媒液は水系、或いは親油性アルコールなどの有機溶媒系を問わない。
水系の場合には、液の溶媒は水及び/又は親水性アルコールから選択される。
また、当該触媒液のpHについては特に限定はないが、中性、弱酸性、弱アルカリ性などを選択することが好ましい。
【0034】
本発明のコロイド触媒液の調製手順としては、上記可溶性ニッケル塩(A)を含む溶液と、この溶液とは別途に調製された上記還元剤(B)を含む溶液とを混合してコロイド粒子を生成することが重要である。
可溶性ニッケル塩(A)と還元剤(B)を先に混合すると、ニッケルイオンが還元されて金属ニッケルが析出してしまい、成分(C)が触媒液中で有機的に機能しない恐れがあるからである。
従って、当該触媒液を調製する際には、還元剤からニッケルイオンに電子を円滑に供与するため、還元剤の溶液を可溶性ニッケル塩(及び成分(C))の含有溶液に時間をかけて緩やかに滴下して製造することを基本とする。例えば、5~50℃(好ましくは10~40℃)の還元剤溶液をニッケル塩溶液に滴下して20~1200分間(好ましくは30~300分間)撹拌し、触媒液を調製する。尚、触媒液の調製では、可溶性ニッケル塩の溶液を還元剤の液に滴下することを排除するものではない。
本発明の触媒液において、還元剤の作用により可溶性ニッケル塩から生じるニッケルコロイド粒子は適した平均粒径が1~250nm、好ましくは1~120nm、より好ましくは1~100nmの微細粒子である。
ニッケルコロイド粒子の平均粒径が250nm以下になると、触媒液に非導電性基板を浸漬した場合、コロイド粒子が基板の微細な凹凸面の窪みに入り込み、緻密に吸着し、或いは引っ掛かるなどのアンカー効果により基板表面にニッケルコロイド核の付与が促進されるものと推定できる。
【0035】
コロイド触媒液の液温は15~95℃、好ましくは15~70℃、浸漬時間は0.1~20分程度、pHは3~11であり、浸漬処理に際しては、基板を触媒液に静置状態で浸漬すれば充分であるが、撹拌や揺動を行っても良い。
【0036】
また、本発明の無電解ニッケルメッキ方法では、触媒付与工程(b)と無電解メッキ工程(c)の間に、活性化工程(b1)を組み込むことができる。
活性化工程b1は、触媒付与された非導電性基板を酸の含有液に接触させることを特徴とする。基板を酸に接触させることで、コロイド粒子が部分的に酸化されて酸化ニッケルになるのを、硫酸などで溶解して酸化膜を除去して再生し、コロイド粒子の触媒活性を効果的に保持して、次の無電解メッキ工程(c)で皮膜形成を円滑に促進できる。
これにより、活性化工程(b1)なしの場合に比べて当該触媒付与による活性度を事後的に補助強化することができ、複雑な形状の基板に対してもめっきムラや断線の弊害を確実に防止し、ニッケル系皮膜の密着性をより向上できる。
活性化工程(b1)で用いる酸には、硫酸、塩酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、スルファミン酸などの無機酸、有機スルホン酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、グリオキシル酸等のカルボン酸などの有機酸が挙げられ、前記コロイド安定剤としてのオキシカルボン酸類、アミノカルボン酸類などを使用しても良い。
酸の濃度は0.02~1.5モル/L、好ましくは0.05~1.0モル/Lである。
活性化の処理温度は5~70℃、好ましくは10~40℃であり、処理時間は0.1~20分、好ましくは0.2~10分である。
【0037】
触媒液に浸漬した非導電性基板は純水で洗浄した後、乾燥し、或いは乾燥することなく、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ工程(c)に移行する。
無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液の組成に特段の制限はなく、公知のメッキ液を使用できる。
無電解ニッケルメッキは、実質的にはニッケル-リンメッキ、或いはニッケル-ホウ素メッキである。
上記ニッケル合金はニッケル-コバルト、ニッケル-スズ、ニッケル-スズ-亜鉛、ニッケル-タングステン-リンなどである。
公知の無電解ニッケルメッキ液は、基本的に可溶性ニッケル塩と還元剤を主成分とし、これに錯化剤、pH調整剤、反応促進剤などの各種添加剤を含有する。
無電解メッキに際して、リン系の還元剤(例えば、次亜リン酸塩)を使用すると、ニッケル-リンメッキ皮膜が得られ、ホウ素系の還元剤を(例えば、ジメチルアミンボラン)使用すると、ニッケル-ホウ素皮膜が得られる。
可溶性ニッケル塩については、前記ニッケルコロイド触媒液で述べた通りである。
上記錯化剤については、前記ニッケルコロイド触媒液で述べたコロイド安定剤と共通する部分もあり、具体的には、アンモニア、エチレンジアミン、ピロリン酸塩、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などである。
【0038】
一方、無電解ニッケル合金メッキ液は、基本的に無電解ニッケルメッキ液と成分は共通するが、ニッケルと合金を形成する相手方の金属の可溶性塩を含むことになる。
上述の通り、ニッケル合金には、ニッケル-コバルト、ニッケル-スズ、ニッケル-スズ-亜鉛合金などを例示するため、相手方の金属の可溶性塩として、硫酸第一スズ、塩化第一スズ、酸化第一スズ、スズ酸ナトリウム、ホウフッ化第一スズ、有機スルホン酸やスルホコハク酸の第一スズ塩などの可溶性第一スズ塩、硫酸コバルト、塩化コバルト、有機スルホン酸のコバルト塩などの可溶性コバルト塩、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、酸化亜鉛、有機スルホン酸やスルホコハク酸の亜鉛塩などの可溶性亜鉛塩などが挙げられる。
【0039】
無電解メッキ工程(c)において、無電解ニッケル又はニッケル合金メッキは、従来と同様に処理すれば良く、特段の制約はない。無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液の液温は一般に15~100℃、好ましくは20~90℃である。
メッキ時間は5分~1時間、好ましくは10~30分である。
ニッケル又はニッケル合金メッキ液の撹拌では、空気撹拌、急速液流撹拌、撹拌羽根等による機械撹拌等を使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の吸着促進剤の含有液、ニッケルコロイド触媒液、並びに無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ液の調製を含む無電解ニッケル又はニッケル合金メッキ方法の実施例を述べるとともに、ニッケルコロイド触媒液の触媒吸着量測定試験例、上記実施例で得られた析出ニッケル(又はニッケル合金)皮膜の付き回り性評価試験例を順次説明する。
尚、本発明は下記の実施例、試験例に拘束されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得ることは勿論である。
【0041】
《無電解ニッケル及びニッケル合金メッキ方法の実施例》
本発明では、上記特許文献2~5の無電解ニッケル系メッキで得られるメッキ皮膜の付き回り性の改善を課題とすることを先述した。
そこで、これら特許文献2~5を本発明の指標とし、この指標に基づいて吸着促進工程、触媒付与工程及び無電解ニッケルメッキ工程からなる無電解メッキの「基準例」とすることで、本発明の実施例について、触媒液の吸着量並びにメッキ皮膜の付き回り性の改善度合を相対的に測ることにした。
従って、先ず、本発明の代表例として実施例1(下記の項目(1))を述べるとともに、実施例1との対比で上記指標となる基準例1~2(下記の項目(0-1及び0-2))を説明したうえで、実施例2~25(項目(2)~(25))を順次詳述する。
下記の実施例2~25のうち、実施例2~23は無電解ニッケルメッキ方法の実施例、実施例24~25は無電解ニッケル合金メッキ方法の実施例である。
【0042】
上述したように、基準例1~2は特許文献2~5の無電解メッキ方法に基づくもので、基準例1は吸着促進工程で非導電性基板をカチオン性界面活性剤で1段処理し、触媒付与処理をした後に無電解ニッケルメッキをした例、同じく基準例2は吸着促進工程での基板処理をアニオン性界面活性剤で1段処理した例である。
上記実施例1は後述するように、予備工程としてエッチング処理をした後、1次吸着促進(a1)→2次吸着促進(a2)→触媒付与(b)→無電解メッキ(c)の各工程を順次施した無電解ニッケルメッキ方法の例であり、1次吸着工程のカチオン性界面活性剤にポリエチレンイミン、2次吸着工程のアニオン性界面活性剤にアルキルナフタレンスルホン酸塩を用いた例である。
実施例2~8は実施例1を基本としながら、吸着促進処理の1次及び2次工程での含有液の組成、即ち、カチオン性及びアニオン性界面活性剤の分子量、種類を変更した例である。
実施例9~14は1次吸着工程(a1)の含有量や浸漬条件を実施例1から変更した例であり、実施例9はカチオン性界面活性剤の含有量を実施例1から減量し、実施例10は逆に含有量を増量した例である。実施例11は1次吸着工程の処理温度を実施例1より低くし、実施例12は逆に処理温度を高くした例である。実施例13は吸着促進液のpHをアルカリ側から中性に変更した例である。
実施例15~21は2次吸着工程(a2)の含有量や浸漬条件を実施例1から変更した例であり、実施例15はアニオン性界面活性剤の含有量を実施例1から減量し、実施例16は逆に含有量を増量した例である。実施例17は2次吸着工程の処理温度を実施例1より低くし、実施例18は逆に処理温度を高くした例である。実施例19は吸着促進液のpHを中性から酸性側に変更し、実施例20は逆にpHをアルカリ側に変更した例、実施例21は処理時間を短縮した例である。
実施例22~23は実施例1を基本として、触媒付与工程(b)での触媒液の組成を変更した例である。
【0043】
先述したように、実施例1~23は無電解ニッケル-リンメッキの例(実質的に無電解ニッケルメッキの例)であるのに対して、実施例24は無電解ニッケル-コバルト合金メッキの例、実施例25は無電解ニッケル-タングステン-リン合金メッキの例である。
【0044】
一方、下記の比較例1~3のうち、比較例1は吸着促進処理(a)に際して、本発明とは逆に、1次工程で基板をアニオン性界面活性剤の含有液で処理し、2次工程でカチオン性界面活性剤で処理した例である。
比較例2は冒述の特許文献1に準拠した例であり、本発明と同じく、吸着促進処理において1次工程(a1)でカチオン性界面活性剤を用い、2次工程(a2)でアニオン性界面活性剤を用いて夫々処理した後、触媒付与工程(b)でニッケル触媒核ではなく銀触媒核を用いて処理した後、無電解ニッケルメッキを行った例である。
比較例3は吸着促進工程で、カチオン性とアニオン性部分を分子内に兼備する両性界面活性剤を用いて基板を1段階処理した例である。
【0045】
(1)実施例1
本発明の無電解ニッケルメッキ方法は1次吸着促進(a1)→2次吸着促進(a2)→触媒付与(b)→無電解メッキ(c)の各工程を順次施すことを基本とするが、本実施例1では、吸着促進工程の前に予めエッチング処理をするとともに、触媒付与工程と無電解メッキ工程の間に活性化処理を付加した。
従って、実施例1の無電解ニッケルメッキ方法は、エッチング→吸着促進→触媒付与→活性化→無電解メッキの各工程からなる。
具体的には、先ず、予備処理として下記条件(p)でエッチング処理をし、次いで、条件(a)で吸着促進を行い、条件(b)で触媒付与を行った後、条件(c)で無電解ニッケル-リンメッキを行った。尚、触媒付与工程(b)の後、前述した酸による活性化工程(b-1)を付加しても良い。
(p)エッチング処理工程
先ず、ABS樹脂基板(縦:45mm、横:50mm、板厚:3mm)をエッチング処理し、基板表面を粗面化して試料基板とした。
エッチング処理液の組成は次の通りである。
[エッチング処理液]
無水クロム酸 400g/L
98%硫酸 200ml/L
[エッチング処理条件]
試料基板をエッチング処理液に68℃、10分の条件で浸漬し、純水で洗浄、乾燥した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。Mwは重量平均分子量である。
[吸着促進剤]
ポリエチレンイミン(Mw:70,000) 10g/L
pH 10.0
[1次吸着条件]
エッチング処理した試料基板を吸着促進剤の含有液に35℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
次の組成で吸着促進剤の含有液を調製した。
[吸着促進剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 10g/L
pH 7.0
[2次吸着条件]
1次吸着処理した試料基板を吸着促進剤の含有液に35℃、2分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
(b)触媒付与工程
ニッケル触媒液の調製については、先ず、ニッケル溶液と還元剤溶液を調製し、次いで、両溶液を混合してニッケルコロイド触媒液を調製した。
各液の調製条件は次の通りである。
[ニッケル溶液]
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.1モル/L
グルタル酸 0.3モル/L
ポリエチレンイミン(Mw:1,800) 0.01モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.25モル/L
[ニッケルコロイド触媒液の調製条件]
pH4.0に調整した25℃のニッケル溶液に還元剤溶液を滴下して撹拌し、ニッケルコロイド触媒液を得た。
[触媒付与処理条件]
試料基板をニッケルコロイド触媒液に30℃、5分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
(c)無電解ニッケルメッキ工程
次の組成で無電解ニッケル‐リンメッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は希硫酸もしくは水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解ニッケルメッキ液]
硫酸ニッケル6水和物(Ni2+として) 0.1モル/L
次亜リン酸ナトリウム1水和物 30g/L
コハク酸 25.0g/L
残余 純水
pH(20℃) 4.6
[無電解ニッケルメッキ条件]
上記無電解ニッケルメッキ液中に90℃、20分の条件で浸漬して無電解メッキを施し、試料基板上にニッケル‐リン皮膜を形成した後、純水で洗浄し、乾燥した。
【0046】
(0-1)基準例1
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)のみを施し、2次処理(a2)を行わない以外は、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1と同様に実施した。
即ち、当該基準例1の吸着促進工程(a)では、カチオン性界面活性剤による1段階処理のみを行った。
【0047】
(0-2)基準例2
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)のみを施し、1次処理(a1)を行わない以外は、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
即ち、当該基準例2の吸着促進工程(a)では、アニオン性界面活性剤による1段階処理のみを行った。
【0048】
(2)実施例2
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)で用いる吸着促進剤を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ポリエチレンイミン(Mw:10,000) 10g/L
【0049】
(3)実施例3
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)で用いる吸着促進剤を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ポリエチレンイミン(Mw:1,600) 10g/L
【0050】
(4)実施例4
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)で用いる吸着促進剤を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(Mw:30,000)10g/L
【0051】
(5)実施例5
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)で用いる吸着促進剤を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
ドデシル硫酸ナトリウム 10g/L
【0052】
(6)実施例6
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)で用いる吸着促進剤を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 10g/L
【0053】
(7)実施例7
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)と2次処理(a2)の組成を次の通りに変更し、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ポリアリルアミン(Mw:1,600) 10g/L
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
ドデシル硫酸ナトリウム 10g/L
【0054】
(8)実施例8
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)と2次処理(a2)の組成を次の通りに変更し、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(Mw:30,000)10g/L
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム 10g/L
【0055】
(9)実施例9
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)で用いる吸着促進剤の含有量を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ポリエチレンイミン(Mw:70,000) 0.5g/L
【0056】
(10)実施例10
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)で用いる吸着促進剤の含有量を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ポリエチレンイミン(Mw:70,000) 50g/L
【0057】
(11)実施例11
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
試料基板を吸着促進剤(ポリエチレンイミン)に20℃、2分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0058】
(12)実施例12
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
試料基板を吸着促進剤(ポリエチレンイミン)に50℃、2分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0059】
(13)実施例13
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
[吸着促進剤]
ポリエチレンイミン(Mw:70,000) 10g/L
pH 7.0
【0060】
(14)実施例14
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの1次処理(a1)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの2次処理(a2)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a1)吸着促進工程(1次処理)
試料基板を吸着促進剤(ポリエチレンイミン)に35℃、0.5分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0061】
(15)実施例15
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 0.5g/L
【0062】
(16)実施例16
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 50g/L
【0063】
(17)実施例17
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
試料基板を吸着促進剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)に20℃、2分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0064】
(18)実施例18
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
試料基板を吸着促進剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)に50℃、2分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0065】
(19)実施例19
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 10g/L
pH 4.0
【0066】
(20)実施例20
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
[吸着促進剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 10g/L
pH 10.0
【0067】
(21)実施例21
上記実施例1を基本として、吸着促進工程(a)のうちの2次処理(a2)の条件を次の通りに変更し、吸着促進工程のうちの1次処理(a1)、触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a2)吸着促進工程(2次処理)
試料基板を吸着促進剤(アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム)に35℃、0.5分の条件で浸漬した後、純水で洗浄した。
【0068】
(22)実施例22
上記実施例1を基本として、触媒付与工程(b)の触媒液の組成を次の通り変更し、吸着促進工程(a)の1次処理(a1)及び2次処理(a2)、並びに無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(b)触媒付与工程
ニッケル触媒液の調製については、先ず、ニッケル溶液と還元剤溶液を調製し、次いで、両溶液を混合してニッケルコロイド触媒液を調製した。
各液の調製条件は次の通りである。
[ニッケル溶液]
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.1モル/L
コハク酸 0.3モル/L
ポリエチレンイミン(Mw:1,800) 0.01モル/L
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.25モル/L
[ニッケルコロイド触媒液の調製条件]
pH4.0に調整した25℃のニッケル溶液に還元剤溶液を滴下して撹拌し、ニッケルコロイド触媒液を得た。
【0069】
(23)実施例23
上記実施例1を基本として、触媒付与工程(b)の触媒液の組成を次の通り変更し、吸着促進工程(a)の1次処理(a1)及び2次処理(a2)、並びに無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(b)触媒付与工程
ニッケル触媒液の調製については、先ず、ニッケル溶液と還元剤溶液を調製し、次いで、両溶液を混合してニッケルコロイド触媒液を調製した。
各液の調製条件は次の通りである。
[ニッケル溶液]
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.1モル/L
グルタル酸 0.3モル/L
ポリエチレンイミンEO付加物
(EO40モル、Mw:2,500) 0.02モル/L
尚、上記EO付加物はエチレンオキシド付加物を意味する。
[還元剤溶液]
水素化ホウ素ナトリウム 0.25モル/L
[ニッケルコロイド触媒液の調製条件]
pH4.0に調整した25℃のニッケル溶液に還元剤溶液を滴下して撹拌し、ニッケルコロイド触媒液を得た。
【0070】
下記の実施例24~25は無電解メッキ工程が無電解ニッケル-コバルトなどの無電解ニッケル合金メッキの例である。
(24)実施例24
上記実施例1を基本として、無電解メッキ工程(c)の組成を次の通りに変更し、吸着促進工程(a)の1次処理(a1)及び2次処理(a2)、並びに触媒付与工程(b)は実施例1の通り実施した。
(c)無電解ニッケル合金メッキ工程
次の組成で無電解ニッケル‐コバルト合金メッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は希硫酸もしくは水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解ニッケル-コバルト合金メッキ液]
塩化ニッケル(Ni2+として) 0.05モル/L
塩化コバルト(Co3+として) 0.05モル/L
塩酸ヒドラジン 1.0モル/L
酒石酸ナトリウム 0.4モル/L
チオ尿素 3ppm
pH(20℃) 12.0
【0071】
(25)実施例25
上記実施例1を基本として、無電解メッキ工程(c)の組成を次の通りに変更し、吸着促進工程(a)の1次処理(a1)及び2次処理(a2)、並びに触媒付与工程(b)は実施例1の通り実施した。
(c)無電解ニッケル合金メッキ工程
次の組成で無電解ニッケル‐タングステン-リン合金メッキ液を建浴した。また、当該メッキ液は希硫酸もしくは水酸化ナトリウムでpH調整した。
[無電解ニッケル-タングステン-リン合金メッキ液]
硫酸ニッケル(Ni2+として) 0.05モル/L
タングステン酸ナトリウム(W4+として) 0.1モル/L
クエン酸ナトリウム 0.08モル/L
次亜リン酸ナトリウム 0.1モル/L
pH(20℃) 9.8
【0072】
(26)比較例1
上記実施例1を基本としながら、吸着促進工程(a)での1次処理(a1)と2次処理(a2)の順番を逆にした例である。
即ち、吸着促進工程(a)のうち、アニオン性界面活性剤を用いる2次処理(a2)を先に行い、次にカチオン性界面活性剤を用いる1次処理(a1)を後で行って、次く触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
2次処理(a2)及び1次処理(a1)の操作内訳は実施例1の通りである。
【0073】
(27)比較例2
先述した通り、上記実施例1を基本としながら、触媒付与工程(b)では本発明のニッケル触媒液に替えて、冒述の特許文献1に準拠した銀触媒液を用いた例である。
吸着促進工程(a)の1次処理(a1)及び2次処理(a2)、並びに無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(b)触媒付与工程(銀触媒液)
上記特許文献1の銀系触媒は調製が複雑であるため、以下では、より簡略な方式として、例えば、同じ出願人の特開2004-190066号公報の実施例1([0044])を参照して、銀触媒液を調製した。
[銀触媒液の調製]
0.375モル/Lのピロリン酸カリウム、0.25モル/Lの硫酸第一スズを含む溶液800mLを50℃に加温し、撹拌しながら0.05モル/Lの硝酸銀溶液200mLを少しずつ添加して銀触媒液を調製した。
[触媒付与条件]
試料基板を上記銀触媒液に30分、5分の条件で浸漬し、純水で洗浄した。
【0074】
(28)比較例3
実施例1を基本としながら、吸着促進工程(a)において、カチオン性とアニオン性を兼備する両性界面活性剤を用いて基板を1段階処理した例である。
触媒付与工程(b)及び無電解メッキ工程(c)は実施例1の通り実施した。
(a)吸着促進工程(1段階処理)
[吸着促進剤]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 10g/L
【0075】
《触媒付与後の吸着量の測定試験例》
そこで、上記実施例1~25、基準例1~2並びに比較例1~2で建浴した各ニッケルコロイド触媒液(比較例3は銀コロイド触媒液)を用いて触媒付与した試料基板について、6%硝酸(25℃)に6分間の条件で浸漬して基板の吸着粒子を硝酸液に溶解させ、原子吸光光度計(日立ハイテクサイエンス社製 ZA3300)を用いて金属濃度を測定し、触媒の吸着量を算出して下記の基準で吸着量の優劣を評価した。
◎:吸着量は0.8mg/dm2以上であった。
○:同じく0.6~0.8mg/dm2であった。
◇:同じく0.4~0.6mg/dm2であった。
△:同じく0.2~0.4mg/dm2であった。
×:同じく0.2mg/dm2未満であった。
【0076】
《無電解メッキにより析出したニッケル及びニッケル合金皮膜の付き回り性の評価試験例》
次いで、上記実施例1~25、基準例1~2並びに比較例1~3の各無電解メッキ工程で得られたニッケル又はニッケル合金の無電解皮膜について、下記の基準で付き回り性の優劣を目視により外観評価した。
尚、皮膜の付き回り性は前述したように、基板全面に対する皮膜の被覆率を意味する。
◎:メッキ皮膜の被覆率が100%であった。
○:同じく被覆率が98~100%であった。
◇:同じく被覆率が90~98%であった。
△:同じく被覆率が50~90%であった。
×:同じく被覆率が50%未満であった。
【0077】
《ニッケルコロイド触媒液の触媒吸着量と皮膜の付き回り性の試験結果》
下表は、上記コロイド触媒液の吸着量、並びに無電解メッキで得られたニッケル又はニッケル合金皮膜の付き回り性についての評価試験結果である。
下表1の「吸着」は触媒の吸着量、「付き回り」は皮膜の付き回り性を夫々意味する。
[表1] 吸着 付き回り 吸着 付き回り 吸着 付き回り
基準例1 ◇ ◇ 実施例11 ◎ ◎ 実施例23 ◎ ◎
基準例2 ◇ ◇ 実施例12 ◎ ◎ 実施例24 ◎ ◎
実施例1 ◎ ◎ 実施例13 ○ ◎ 実施例25 ◎ ◎
実施例2 ◎ ◎ 実施例14 ◎ ◎ 比較例1 × ×
実施例3 ◎ ◎ 実施例15 ◎ ◎ 比較例2 ○ ×
実施例4 ◎ ◎ 実施例16 ◎ ◎ 比較例3 × ×
実施例5 ◎ ◎ 実施例17 ◎ ◎
実施例6 ◎ ◎ 実施例18 ◎ ◎
実施例7 ◎ ◎ 実施例19 ◎ ◎
実施例8 ◎ ◎ 実施例20 ◎ ◎
実施例9 ◎ ◎ 実施例21 ◎ ◎
実施例10 ◎ ◎ 実施例22 ◎ ◎
【0078】
《触媒の吸着性とメッキ皮膜の付き回り性についての評価》
本発明は、試料基板を吸着促進工程(a)の1次工程(a1)でカチオン性、次いで2次工程(a2)でアニオン性の各界面活性剤による2段階で処理することを特徴とするが、この2段階処理の順番を逆にして、アニオン性、その次にカチオン性界面活性剤で処理した比較例1では、触媒付与工程(b)での触媒吸着効率はきわめて低く、無電解メッキ工程でのニッケル系皮膜の付き回り性は×の評価であった(表1参照)。
また、カチオン性とアニオン性を兼備する両性界面活性剤で基板を吸着促進処理した比較例3についても、上記比較例1と同じく、触媒吸着効率はきわめて低く、無電解メッキ工程での付き回り性は×の評価であった(表1参照)。
本発明と同じく、2段階の吸着促進処理をした後、冒述の特許文献1に準拠して、触媒付与工程(b)ではニッケル触媒核に替えて銀系の触媒核を付与し、無電解ニッケルメッキを行った比較例2では、触媒吸着評価は○で基準例1~2より良好であったが、ニッケル皮膜の付き回り性については予測外の結果となり、×の評価であった。これは、無電解ニッケル液に含まれる還元剤が銀触媒上では効果を発揮しないことが原因ではないかと推察される。
【0079】
一方、冒述の基準発明2~5に準拠し、基板をカチオン性、或いはアニオン性界面活性剤で1段階処理した基準例1~2では、触媒吸着量は上記比較例1及び3より良好な結果であり、メッキ皮膜の付き回り性(被覆率)も90%以上であった。
これに対して、吸着促進工程(a)で本発明の2段階処理(カチオン性→アニオン性界面活性剤)を行い、ニッケル触媒核の付与及び無電解ニッケルメッキを行った実施例1~23では、触媒吸着量、並びにニッケル皮膜の付き回り性は上記基準例1~2から顕著に向上した。
即ち、表1に示すように、吸着促進工程で所定の2段階処理を行った本発明の実施例1~23では、カチオン性又はアニオン性界面活性剤で1段階処理する基準例1~2に比べて触媒吸着量は実施例13(評価は○)を除いて、全て◎の評価であった。
この触媒吸着量の飛躍的な増大の結果、本発明の実施例1~23で得られた無電解メッキ皮膜は優れた付き回り性を示し、吸着促進工程で所定の2段階処理を行う本発明方法は、1段階処理する基準例1~2に比して、ニッケル皮膜の被覆率(付き回り性)において顕著な優位性が裏付けられた。
【0080】
1次処理(a1)で吸着促進剤を中性に調整した実施例13では、触媒吸着量の評価が○であったことから、1次処理ではpHをアルカリ側に調整するのが好ましいと推察される。これに対して、2次処理(a2)で吸着促進剤のpHを中性、酸性或いはアルカリ側に調整しても、触媒吸着量、メッキ皮膜の付き回り性の評価は全て◎であった。
1次処理(a1)のカチオン性界面活性剤の含有量を実施例1より大幅に低減した実施例9、大幅に増量した実施例10は、メッキ皮膜の付き回り性の評価は実施例1と変わらないことから、1次処理において、カチオン性界面活性剤は低い濃度でも充分に有効性を発揮できることが分かる。
また、2次処理(a2)でのアニオン性界面活性剤の含有量を実施例1より大幅に低減、或いは増量した実施例15、実施例16にあっても、皮膜の付き回り性の評価は実施例1と変わらないことから、2次処理において、アニオン性界面活性剤が低濃度域でも充分に有効性を発揮できることが分かる。
1次処理(a1)のカチオン性界面活性剤の種類を実施例1から実施例2~3に変化させても、皮膜の付き回り性の評価は実施例1と変わらず、この点は、2次処理(a2)のアニオン性界面活性剤の種類を変化させた場合(実施例1→実施例5、6)、或いは、1次処理(a1)と2次処理(a2)の界面活性剤の種類を同時に変化させた場合も、夫々同じであった(実施例1→実施例7、8)。
同じく、1次処理(a1)の処理温度を変化させても(実施例1→実施例11、12)、皮膜の付き回り性の評価は実施例1と変わらないため、実施例11のような常温(20℃)でも皮膜形成は良好に達成できる。この点は1次処理(a1)の処理時間についても同じであり、1次処理(a1)の処理時間を短縮しても(実施例1(2分)→実施例14(0.5分))、皮膜の付き回り性は良好に達成できた。
一方、2次処理(a2)についても同様な結果が得られ、処理温度を常温に変えても(実施例1(35℃)→実施例17(20℃))、処理時間を短縮しても(実施例1(2分)→実施例21(0.5分))、皮膜の付き回り性は良好であった。
【0081】
さらに本発明では、吸着促進工程(a)の次の触媒付与工程(b)において触媒液の組成を変えても、表1に示す通り、触媒吸着量、並びに無電解メッキでの付き回り性は共に良好な結果を示した(実施例22~23)。
他方、上記実施例1~23は無電解ニッケル-リン合金メッキに関するが、無電解ニッケル合金メッキを施した場合にも同様の結果が得られた。即ち、本発明の2段階吸着促進工程(a)並びに触媒付与工程(b)の後、無電解ニッケル-コバルト合金メッキを行った実施例24、或いは、無電解ニッケル-タングステン-リン合金メッキを行った実施例25についても、表1に示す通り、無電解メッキの付き回り性は◎の評価であり、無電解ニッケル合金メッキについても、得られたメッキ皮膜は優れた被覆率(付き回り性)を示した。