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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】光源装置、捕虫器および光源システム
(51)【国際特許分類】
   F21V 33/00 20060101AFI20241125BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20241125BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20241125BHJP
   F21S 4/22 20160101ALI20241125BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20241125BHJP
   A01M 1/04 20060101ALI20241125BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20241125BHJP
   F21Y 107/70 20160101ALN20241125BHJP
   F21Y 103/10 20160101ALN20241125BHJP
【FI】
F21V33/00 400
F21V31/00 150
F21S2/00 600
F21S4/22
F21V9/32
A01M1/04 A
F21Y115:10 500
F21Y107:70
F21Y103:10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021114194
(22)【出願日】2021-07-09
(65)【公開番号】P2023010214
(43)【公開日】2023-01-20
【審査請求日】2024-04-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 集会名:株式会社LIXILおよび株式会社ニシヤマへの説明会、開催日:令和3年6月22日、開催場所:株式会社LIXIL 駒ヶ根事業所 会議室 集会名:ベンハーはかり株式会社への説明会、開催日:令和3年7月9日、開催場所:FKK株式会社 本社 会議室
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591124640
【氏名又は名称】FKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100145229
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】川田 一力
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和貴
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0146870(US,A1)
【文献】国際公開第2019/163983(WO,A1)
【文献】特開2019-129245(JP,A)
【文献】特開2019-062772(JP,A)
【文献】特開2016-103017(JP,A)
【文献】国際公開第2014/050655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 33/00
F21V 31/00
F21S 2/00
F21S 4/22
F21V 9/32
A01M 1/04
F21Y 115/10
F21Y 107/70
F21Y 103/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する長尺の回路基板と、
340nm以上400nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射し且つ前記回路基板に列状に実装された複数の発光部と、
透光性を有し且つ前記複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されるとともに、前記回路基板および前記複数の発光部を覆う長尺のカバーと、を備え、
前記カバーにおける蛍光物質または蓄光物質の含有率は、放射される光の波長スペクトルについて、340nm以上400nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、460nm以上640nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、の比率が、誘引対象となる虫の340nm以上400nm以下の波長帯域における最大視感度と460nm以上640nm以下の波長帯域における最大視感度との比率に等しくなるように設定されている、
光源装置。
【請求項2】
前記誘引対象となる虫は、少なくとも、ミカンキイロアザミウマ、トビイロウンカを含む、
請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記カバーにおける前記蛍光物質または蓄光物質の含有量は、0.1%以上且つ20%以下である、
請求項1または2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記カバーは、長尺な筒状であり、前記カバーにおける前記複数の発光部からの光の放射方向側において前記カバーの内壁から前記カバーの外壁に至る340nm以上400nm以下の波長帯域の光に対して透明な透明部位と、前記カバーにおける前記透明部位以外の部位に配置され前記蛍光物質または前記蓄光物質を含む発光部位と、を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項5】
前記透明部位は、前記回路基板の厚さ方向に直交する断面の面積が、前記カバーの内壁から前記カバーの外壁に向かうほど漸増している、
請求項4に記載の光源装置。
【請求項6】
340nm以上400nm以下の波長帯域と460nm以上640nm以下の波長帯域とのそれぞれに相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射する光源装置と、
箱状であり内側に前記光源装置が配置されるとともに、周壁に前記光源装置からの光を外方へ透過させるための少なくとも1つの光透過用孔と、前記光源装置から放射される光に誘引される虫を内側に導入するための導入口と、が穿設された筐体と、を備え、
前記光源装置は、
可撓性を有する長尺の回路基板と、
340nm以上400nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射し且つ前記回路基板に列状に実装された複数の発光部と、
透光性を有し且つ前記複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されるとともに、前記回路基板および前記複数の発光部を覆う長尺のカバーと、を有し、
前記カバーにおける蛍光物質または蓄光物質の含有率は、放射される光の波長スペクトルについて、340nm以上400nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、460nm以上640nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、の比率が、誘引対象となる虫の340nm以上400nm以下の波長帯域における最大視感度と460nm以上640nm以下の波長帯域における最大視感度との比率に等しくなるように設定されている、
捕虫器。
【請求項7】
340nm以上400nm以下の波長帯域と460nm以上640nm以下の波長帯域とのそれぞれに相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する第1光を放射する第1光源装置と、
580nm以上の波長帯域に相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する第2光を放射する第2光源装置と、を備え、
前記第1光源装置は、
可撓性を有する長尺の回路基板と、
340nm以上400nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射し且つ前記回路基板に列状に実装された複数の発光部と、
透光性を有し且つ前記複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されるとともに、前記回路基板および前記複数の発光部を覆う長尺のカバーと、を有し、
前記カバーにおける蛍光物質または蓄光物質の含有率は、放射される光の波長スペクトルについて、340nm以上400nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、460nm以上640nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、の比率が、誘引対象となる虫の340nm以上400nm以下の波長帯域における最大視感度と460nm以上640nm以下の波長帯域における最大視感度との比率に等しくなるように設定されている、
光源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、捕虫器および光源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
長尺であり且つ断面略U字状の本体と、本体の内側に配置され、虫を誘引する誘引光を照射可能な光源と、本体の開口側に着脱自在に配置され光源を覆うとともに、本体との間に隙間を形成するカバーと、を備える長尺の捕虫器が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-61508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載されているような長尺の捕虫器では、例えば人が居住する空間に設置された場合に高い虫の誘引効果が求められる。また、このような長尺の捕虫器には、捕虫器の長手方向における全体から斑無く虫の誘引効果の高い光を放射することにより、虫を効率的に捕集することが要請されている。このため、虫の誘引効果の高い光を放射する光源として、捕虫器の長尺な本体内部の狭小且つ長尺なスペースに設置できる長尺の線状光源が求められている。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、狭小且つ長尺なスペースに設置することができる光源装置、捕虫器および光源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る光源装置は、
可撓性を有する長尺の回路基板と、
340nm以上400nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射し且つ前記回路基板に列状に実装された複数の発光部と、
透光性を有し且つ前記複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されるとともに、前記回路基板および前記複数の発光部を覆う長尺のカバーと、を備え、
前記カバーにおける蛍光物質または蓄光物質の含有率は、放射される光の波長スペクトルについて、340nm以上400nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、460nm以上640nm以下の波長帯域における最大の相対強度と、の比率が、誘引対象となる虫の340nm以上400nm以下の波長帯域における最大視感度と460nm以上640nm以下の波長帯域における最大視感度との比率に等しくなるように設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回路基板が、長尺であり且つ可撓性を有し、カバーが、長尺且つ透光性を有するとともに、複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されている。これにより、設置スペースの形状に沿って曲げたりすることができるので、例えば細長の筐体を備える捕虫器の筐体の内側の狭小且つ長尺なスペースに無理なく設置することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る捕虫器を示し、(A)は斜視図であり、(B)は(A)のA-A線における断面矢視図である。
図2】実施の形態1に係る光源装置を示し、(A)は平面図であり、(B)は斜視図である。
図3】実施の形態1に係る光源装置の図2(A)のB-B線における断面矢視図である。
図4】実施の形態1に係る光源装置から放射される光のスペクトルを示し、(A)は蓄光物質の含有率が1%の場合を示す図であり、(B)は蓄光物質の含有率が3%の場合を示す図であり、(C)は蓄光物質の含有率が5%の場合を示す図である。
図5】実施例および比較例1、2に係る光源装置から放射される光のスペクトルを示す図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る光源システムを示す構成図である。
図7】実施の形態2に係る光源システムの使用例を示す図である。
図8】変形例に係る光源装置の断面図である。
図9】(A)は変形例に係る光源装置の断面図であり、(B)は他の変形例に係る光源装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
以下に、本発明の実施の形態に係る捕虫器について添付図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る捕虫器は、340nm以上400nm以下の波長帯域と460nm以上640nm以下の波長帯域とのそれぞれに相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射する光源装置と、箱状であり内側に光源装置が配置されるとともに、周壁に光源装置からの光を外方へ透過させるための少なくとも1つの孔と光源装置から放射される光に誘引される虫を内側に導入するための導入孔とが穿設された筐体と、を備える。そして、光源装置は、可撓性を有する長尺の回路基板と、340nm以上400nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射し且つ回路基板に列状に実装された複数の発光部と、透光性を有し且つ複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されるとともに、回路基板および複数の発光部を覆う長尺のカバーと、を有する。
【0010】
図1(A)に示すように、本実施の形態に係る捕虫器3は、2つの光源装置1と、矩形箱状であり2つの光源装置1が内側に配置される筐体31と、を備える。筐体31は、周壁に光源装置1からの光を外方へ透過させるための複数の光透過用孔31aと、光源装置1から放射される光に誘引される虫を内側に導入するための導入口31bと、が穿設されている。また、筐体31の内側には、図1(B)に示すように、筐体31の内側へ誘い込まれた虫が筐体31外へ再び逃げ出すのを抑制するための返し板32が設けられている。また、返し板32には、光源装置1から放射される光を透過させるための複数の光透過用孔32aが穿設されている。ここで、筐体31の周壁に穿設された光透過用孔31aおよび返し板32に穿設された光透過用孔32aは、例えば筐体31の内側へ誘い込まれた虫が通り抜けることができない程度の大きさに設定されており、例えば光透過用孔31a、32aの最大幅が2mm以下となるように設定されている。なお、光透過用孔31a、32aは、平面視円形状に限定されるものではなく、平面視矩形状その他の平面視形状を有するものであってもよい。
【0011】
光源装置1は、340nm以上400nm以下の波長帯域と460nm以上640nm以下の波長帯域とのそれぞれに相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する第1光を放射する。この光源装置1は、図2(A)および(B)に示すように、可撓性を有する長尺の回路基板21と、複数の発光部22と、発光部22へ供給される電流を制限するための限流素子23と、可撓性を有する長尺なカバー11と、を備える。また、光源装置1は、カバー11の長手方向における両端部に装着されカバー11内を密閉するキャップ12を備える。光源装置1は、直流電力を出力する電源装置(図示せず)から電力線PL1を介して発光部22へ電流が供給される。
【0012】
回路基板21は、例えばFPC(Flexible Printed Circuits)から構成されており、導体パターン(図示せず)が形成されている。また、回路基板21の長手方向における両端部には、電力線PL1に電気的に接続される電極211が設けられている。
【0013】
発光部22は、例えばSMD(Surface Mount Device)タイプLED(Light Emitting Diode)発光装置から構成される。発光部22は、矩形板状であり厚さ方向における一面側に平面視円形の凹部22cが形成された本体部22bと、凹部22cの底部に配設された発光素子22aと、凹部22cに充填された後述の紫外の波長帯域に対して透明な透明部材(図示せず)と、を有する。発光素子22aとしては、340nm以上400nm以下の紫外または青色の波長帯域の光を放射するLED素子が採用される。複数の発光部22は、回路基板21の第1主面21bに等間隔に列状に実装されている。発光部22の発光素子22aは、回路基板21に形成された導体パターンを介して、互いに直列または並列に接続されている。限流素子23は、回路基板21に形成された導体パターンに介挿され、発光素子22aに流れる電流を予め設定された大きさに制限する。電源装置10から電力線PL1および導電パターンを通じて発光素子22aに電流が流れると、発光素子22aが点灯する。
【0014】
カバー11は、長尺筒状であり、図3に示すように、回路基板21に実装された複数の発光部22からの光を出射する平坦な光出射面11aと、光出射面11aに対向する平坦な背面11bと、を有し、回路基板21および複数の発光部22を覆っている。回路基板21および複数の発光部22は、カバー11の内側11eに配置されている。回路基板21の短手方向における両端部21aは、カバー11に埋設されており、回路基板21における第1主面21bとは反対側の第2主面21cは、カバー11に密着している。また、カバー11は、その外壁の角部に、その長手方向に沿ってテーパ面11dが形成されている。カバー11の光出射面11aは、回路基板21の第1主面21bに平行であり、カバー11の、第1主面21bが臨む方向側の外壁にカバー11の長手方向に沿って形成されている。光出射面11aには、カバー11の長手方向に沿って延長された溝11cが設けられている。この溝11cは、装飾用の溝である。テーパ面11dは、回路基板21における複数の発光部22が実装される第1主面21bに対して傾斜している。
【0015】
また、カバー11は、透光性を有し且つ複数の発光部22から放射される紫外の波長帯域の光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蓄光物質を含有する軟性材料から形成されている。軟性材料としては、透光性を有する熱硬化性のポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を採用することができる。カバー11における蓄光物質の含有率は、0.1%以上且つ20%以下の範囲内に設定される。蓄光物質としては、例えばアルミン酸ストロンチウムを主成分とする蓄光物質が採用される。そして、光源装置1から放射される光は、複数の発光部22から放射される光の一部と、カバー11に含有される蓄光物質から放射される光と、が混合されたものとなり、340nm以上400nm以下の波長帯域と460nm以上640nm以下の波長帯域とのそれぞれに相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有するいわゆる二峰性の特徴を有する。
【0016】
また、蓄光物質の含有量は、例えば誘引させる対象となる虫の視感度に応じて設定されることが好ましい。多くの虫の視感度は、大凡図4(A)の曲線S11で表される波長スペクトルを有する。一方、蓄光物質の含有量を1%とした場合、光源装置1から放射される光の波長スペクトルは、図4(A)の曲線S12で表される波長スペクトルとなり、曲線S11で表される虫の視感度の波長スペクトルと略同様の特徴を有することとなる。このため、光源装置1になるべく多種の虫を誘引させることを目的とする場合には、蓄光物質の含有率を1%にすることが好ましい。
【0017】
また、例えば千葉県、埼玉県で多く見られ、野菜、生花等に大きな被害を及ぼすミカンキイロアザミウマの視感度は、大凡図4(B)の曲線S21で表される波長スペクトルを有する。一方、蓄光物質の含有量を3%とした場合、光源装置1から放射される光の波長スペクトルは、図4(B)の曲線S22で表される波長スペクトルとなり、曲線S21で表されるミカンキイロアザミウマの視感度の波長スペクトルと略同様の特徴を有することとなる。このため、光源装置1を千葉県、埼玉県等においてミカンキイロアザミウマを誘引させて野菜、生花等の被害の低減を図ることを目的とする場合には、蓄光物質の含有率を3%にすることが好ましい。更に、稲の害虫であるトビイロウンカの視感度は、大凡図4(C)の曲線S31で表される波長スペクトルを有する。一方、蓄光物質の含有量を5%とした場合、光源装置1から放射される光の波長スペクトルは、図4(C)の曲線S32で表される波長スペクトルとなり、曲線S31で表されるトビイロウンカの視感度の波長スペクトルと略同様の特徴を有することとなる。このため、光源装置1を稲作地帯においてトビイロウンカを誘引させて稲への害虫被害の低減を図ることを目的とする場合には、蓄光物質の含有率を5%にすることが好ましい。なお、図4(A)乃至(C)の曲線S11、S21、S31で表される虫の視感度の波長スペクトルは、「光を利用した害虫防除のための手引き」(独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター,2014年7月発行)の第5頁乃至第10頁の記載から引用した。
【0018】
このように、本実施の形態に係る光源装置1では、カバー11における蓄光物質の含有率を変化させることにより、光源装置1から放射される光における340nm以上400nm以下の波長帯域の強度と460nm以上640nm以下の波長帯域の強度との比率を変化させることができる。そして、光源装置1から放射される光の波長スペクトルの形状が対象とする虫の視感度の波長スペクトルの形状に適合するように、カバー11における蓄光物質の含有率を設定することが可能である。
【0019】
図2(A)および(B)に戻って、キャップ12は、透光性を有する樹脂材料から形成され、有底角筒状の形状を有する。キャップ12の底壁には、電力線PL1を導入するための導入孔12aが設けられている。キャップ12の内側断面の寸法は、カバー11の断面の外形寸法よりも大きく、カバー11の長手方向における両端部を覆うように装着されている。
【0020】
ここで、本発明の実施例と2種類の比較例とに係る捕虫器それぞれの虫の捕集量を比較した結果について説明する。比較例1に係る捕虫器に使用される光源装置として、ピーク波長367nmの紫外光の波長領域のみにピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射するものを採用した。また、比較例2に係る捕虫器に使用される光源装置として、波長367nmの紫外光の波長領域のみにピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射する発光部22とともに、波長520nmの緑色光の波長領域のみにピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射する発光部を備える光源装置を採用した。一方、本発明の実施例に係る捕虫器に使用される光源装置として、前述の光源装置1と同様の構成を有し、波長367nmの紫外光の波長領域と、波長519nmと、のそれぞれにおいて相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射するものを採用した。ここで、実施例に係る光源装置のカバー11は、紫外光により励起されると波長519nmで相対強度が最大となる波長スペクトルを有する光を放射する蓄光物質を含有するものを採用した。実施例および比較例1、2に係る光源装置から放射される光の波長スペクトルを図5に示す。なお、図5において、曲線S41、42は、それぞれ、比較例1、2に係る光源装置から放射される光の波長スペクトルを示し、曲線S43は、実施例に係る光源装置から放射される光の波長スペクトルを示す。図5に示すように、実施例に係る光源装置から放射される光は、その波長スペクトルの波長519nm付近における相対強度のピークの半値全幅が比較例2に係る光源装置から放射される光の波長スペクトルの波長520nm付近における相対強度のピークの半値全幅に比べて長いという特徴を有する。具体的には、比較例2に係る光源装置から放射される光の波長スペクトルの波長520nm付近における相対強度のピークの半値全幅が40nm程度であるのに対して、実施例に係る光源装置から放射される光の波長スペクトルの波長519nm付近における相対強度のピークの半値全幅が90nm以上となっている。
【0021】
実施例および比較例1、2に係る捕虫器を京都市内における桂川の河川敷付近に設置して、2021年6月11日から2021年6月27日までの間、各捕虫器の光源装置を点灯させた状態で放置したときの虫の捕集量を下記表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
表1に示すように、実施例に係る捕虫器の虫の捕集量は、比較例1、2に係る捕虫器の虫の捕集量に比べて多くなることが判った。このことから、実施例に係る捕虫器のように、紫外光の波長帯域のみならずに波長460nm以上640nm以下の波長帯域の両方に相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有し且つ波長460nm以上640nm以下の波長帯域の相対強度のピークの半値全幅が90nm以上である光を放射する光源装置を採用したもののほうがより高い捕虫効果を得られることが判った。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態に係る光源装置1によれば、回路基板21が、長尺であり且つ可撓性を有し、カバー11が、長尺であり且つ透光性を有するとともに、複数の発光部22から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蓄光物質を含有する軟性材料から形成されている。つまり、光源装置1は、誘虫効果を発揮する光を放射する可撓性を有する線状光源である。これにより、設置スペースの形状に沿って曲げたりすることができるので、捕虫器3の筐体31の内側の狭小且つ長尺なスペースに無理なく設置することができるという利点がある。
【0025】
また、本実施の形態に係るカバー11における蓄光物質の含有量は、0.1%以上且つ20%以下に設定されている。これにより、光源装置1から虫の視感度ピークが存在する460nm以上640nm以下の波長帯域の光を放射させることができるので、虫の誘引効果を高めることができる。
【0026】
更に、本実施の形態に係る捕虫器3は、前述の細長の光源装置1を備えることにより、筐体31全体を細長な形状にすることができるので、狭小且つ長尺なスペースに設置することができる。
【0027】
(実施の形態2)
本実施の形態に係る光源システムは、340nm以上400nm以下の波長帯域と460nm以上640nm以下の波長帯域とのそれぞれに相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する第1光を放射する第1光源装置と、580nm以上の波長帯域に相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する第2光を放射する第2光源装置と、を備える。そして、第1光源装置は、可撓性を有する長尺の回路基板と、340nm以上400nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射し且つ回路基板に列状に実装された複数の発光部と、透光性を有し且つ複数の発光部から放射される光により励起されることにより460nm以上640nm以下の波長帯域において相対強度が最大となる光を放射する蛍光物質または蓄光物質を含有する軟性材料から形成されるとともに、回路基板および複数の発光部を覆う長尺のカバーと、を有する。
【0028】
本実施の形態に係る光源システムは、図6に示すように、2つの光源装置1、9と、光源装置1、9へ電力線PL1、PL2を介して電力を供給する電源装置10と、を備える。なお、図6において、実施の形態1と同様の構成については図1(A)および(B)と同一の符号を付している。電源装置10は、例えば商用電源から供給される交流を整流および平滑化して直流に変換する整流平滑回路と、整流平滑回路から出力される直流を光源装置1、9の定格電圧に昇圧または降圧して出力する電力変換回路と、を有する。
【0029】
光源装置9は、例えば580nm以上の波長帯域に相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射する。この光源装置9は、光源装置1と同様の構成を有し、可撓性を有する長尺の回路基板21と、複数の発光部と、発光部へ供給される電流を制限するための限流素子23と、可撓性を有する長尺なカバーと、キャップ12と、を備える。なお、光源装置9において光源装置1と同様の構成については、実施の形態1の図2(A)および(B)と同一の符号を用いて説明する。発光部は、前述の凹部22cが形成された本体部22bと、凹部22cの底部に配設された発光素子22aと、を有し、凹部22cに紫外または青色の波長帯域の光を可視光の波長帯域に変換する色変換部材が充填されている。ここで、色変換部材は、例えば580nm以上の波長帯域に相対強度のピークが存在する波長スペクトルを有する光を放射する蛍光物質を含むものが採用される。また、カバーは、例えば可視光に対して透明な軟性材料から形成されている。軟性材料としては、実施の形態で説明したカバー11と同様に、透明な熱硬化性のポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂等を採用することができる。そして、光源装置9から放射される光の波長スペクトルは、前述の虫の視感度のピークが存在する波長帯域よりも長波長側にピークが存在する特徴を有する。
【0030】
本実施の形態に係る光源システムは、例えば図7に示すように、光源装置1、9の両方を点灯させた状態で使用される。ここで、光源装置9は、利用者Pが生活する領域A2を照明するように設置され、光源装置1は、領域A2から離間した位置に設置される。そして、虫Iは、光源装置1から放射される光により光源装置1の近傍の領域A1に誘引される結果、虫Iが領域A2に飛来することを抑制できる。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態に係る光源システムでは、光源装置1の設置スペースが屈曲した狭小且つ長尺な形状であっても、設置スペースの形状に沿って曲げたりすることができるので、目立たない狭小且つ長尺なスペースに設置した状態で虫を光源装置1へ誘引することができるという利点がある。
【0032】
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明は前述の各実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、図8に示す光源装置2001のように、カバー2011における発光部22からの光の放射方向側、即ち、+Z方向側の部分の厚さH21が、発光部22における発光素子22aからカバー2011の内側2011eにおける発光部22に対向する内壁までの高さH20に比べて長く設定されているものであってもよい。本構成によれば、カバー2011に含まれる蓄光物質の含有率を低くしつつ発光部22から放射される光のカバー2011での変換効率を高めることができる。従って、カバー2011における蓄光物質の含有率を低減できる分、カバー2011の強度を高めることができる。
【0033】
実施の形態では、カバー11全体が、蓄光物質を含有する軟性材料から形成される例について説明した。但し、これに限らず、例えば図9(A)に示す光源装置3001のように、カバー3011が、長尺な筒状であり、カバー3011における複数の発光部22からの光の放射方向側、即ち、+Z方向側においてカバー3011の内壁からカバー3011の外壁に至る透明部位3112と、発光部位3111と、を有するものであってもよい。なお、図9(A)において実施の形態1と同様の構成については図3と同一の符号を付している。ここで、透明部位3112は、340nm以上400nm以下の波長帯域の光に対して透明な部位であり、蓄光物質、蛍光物質等を含まない部分である。また、発光部位3111は、カバー3011における透明部位3112以外の部位に配置され、蓄光物質を含む部位である。この場合、カバー3011は、いわゆる二色成形法により形成される。また、透明部位3112は、回路基板21の厚さ方向に直交する断面の面積が、カバー3011の内壁からカバー3011の外壁に向かうにつれて、即ち、+Z方向側に向かうにつれて漸増している。これにより、発光部22から放射される光を効率良くカバー3011の外方へ放射させることができる。
【0034】
或いは、例えば図9(B)に示す光源装置4001のように、カバー4011が、カバー4011における複数の発光部22からの光の放射方向側、即ち、+Z方向側においてカバー4011の内壁からカバー4011の外壁に至る透明部位4112と、発光部位4111と、カバー4011の-Z方向側においてカバー4011の内壁からカバー4011の外壁に至る透明部位4113と、を有するものであってもよい。なお、図9(B)において図7を用いて説明した変形例と同様の構成については図8と同一の符号を付している。ここで、回路基板21が透明である場合、発光部22から放射された光が、透明部位4113を透過してカバー4011の外側に取り出される。
【0035】
これらの構成によれば、複数の発光部22から放射される光の取り出し効率を高めることができるので、特に、340nm以上400nm以下の波長帯域の光に対する視感度の高い虫に対する誘引効果を高めることができる。
【0036】
実施の形態に係る光源装置1において、キャップ12の代わりに、封止樹脂部が設けられたものであってもよい。ここで、封止樹脂部は、回路基板21および複数の発光部22がカバー11の内側に配置され、電力線PL1がカバー11の筒軸方向における一方の端部から回路基板21に設けられた電極211に接続された状態で、カバー11の両端部を封止するようにすればよい。本構成によれば、特に、光源装置1が屋外で使用される場合において、カバー11における封止樹脂部により封止された両端部からカバーの内側への水その他の異物の侵入が抑制されるので、カバー11の内側に配置された回路基板21への異物の付着に起因した光源装置1の動作不良の発生が抑制される。
【0037】
実施の形態では、カバー11が角筒状である例について説明したが、これに限らず、円筒状或いは断面形状がその他の形状である筒状のカバーを備えるものであってもよい。
【0038】
実施の形態および前述の変形例では、カバー11、2011が、蓄光物質を含有する、或いは、カバー3011、4011の発光部位3111、4111が蓄光物質を含有する例について説明した。但し、これに限らず、蓄光物質に代えて蛍光物質を含有するものであってもよい。
【0039】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態及び変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の光源装置は、虫類による虫害対策用の光源システム用途として好適である。
【符号の説明】
【0041】
1,9,2001,3001,4001:光源装置、3:捕虫器、10:電源装置、11,2011,3011,4011:カバー、11a:光出射面、11b:背面、11c:溝、11d:テーパ面、11e,2011e:内側、11f:外側面、12:キャップ、12a:導入孔、21:回路基板、21a:両端部、21b:第1主面、21c:第2主面、22:発光部、22a:発光素子、22b:本体部、22c:凹部、23:限流素子、31:筐体、31a,32a:光透過用孔、31b:導入口、32:返し板、211:電極、3111,4111:発光部位、3112,4112,4113:透明部位、A1,A2:領域、I:虫、P:利用者、PL1,PL2:電力線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9