(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】肩甲骨位置算出装置及び肩甲骨位置算出方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/107 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61B5/107 300
(21)【出願番号】P 2021126298
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-07-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507176149
【氏名又は名称】有限会社MAIDO
(74)【代理人】
【識別番号】100170025
【氏名又は名称】福島 一
(72)【発明者】
【氏名】辰己 浩之
(72)【発明者】
【氏名】前川 知子
【審査官】後藤 昌夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/090083(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0228712(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/107ー5/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元点群測定器具を用いて、所定の姿勢における被験者の背中の表面の3次元点群を測定する測定制御部と、
前記背中の表面の3次元点群のうち、前記被験者の背中の脊椎の一部を示す脊椎
点であって、頸椎点、胸椎点、腰椎点のいずれか、又は、これらの組み合わせを取得する第一の取得制御部と、
前記背中の表面の3次元点群のうち、前記被験者の背中の左肩甲骨の一部を示
す1点又は2点の左肩甲骨点と
、当該左肩甲骨点に対応して、前記被験者の背中の右肩甲骨の一部を示
す1点又は2点の右肩甲骨点とを取得する第二の取得制御部と、
前記取得された脊椎点と、前記取得された左肩甲骨点と右肩甲骨点との合計の複数点をそれぞれ線で結んで、前記被験者の肩甲骨モデルを作成して、当該肩甲骨モデルの複数点のうち、いずれかの2点を結んだ線の距離と、いずれかの3点を結んだ二線の間の角度とを算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置を算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置を算出する算出制御部と、
を備える肩甲骨位置算出装置。
【請求項2】
前記所定の姿勢と異なる姿勢における被験者の背中の表面の3次元点群の測定と、複数の前記点の取得とを行わせ
、前記肩甲骨モデルを採用して、前記算出した距離と角度とで用いた点の組み合わせと同一の点の組み合わせでの距離と角度とを算出し、前記所定の姿勢と前記異なる姿勢との距離の変化と、前記所定の姿勢と前記異なる姿勢との角度の変化とを算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置の変化を評価する評価制御部
を更に備える
請求項1に記載の肩甲骨位置算出装置。
【請求項3】
3次元点群測定器具を用いて、所定の姿勢における被験者の背中の表面の3次元点群を測定する測定制御工程と、
前記背中の表面の3次元点群のうち、前記被験者の背中の脊椎の一部を示す脊椎
点であって、頸椎点、胸椎点、腰椎点のいずれか、又は、これらの組み合わせを取得する第一の取得制御工程と、
前記背中の表面の3次元点群のうち、前記被験者の背中の左肩甲骨の一部を示
す1点又は2点の左肩甲骨点と
、当該左肩甲骨点に対応して、前記被験者の背中の右肩甲骨の一部を示
す1点又は2点の右肩甲骨点とを取得する第二の取得制御工程と、
前記取得された脊椎点と、前記取得された左肩甲骨点と右肩甲骨点との合計の複数点をそれぞれ線で結んで、前記被験者の肩甲骨モデルを作成して、当該肩甲骨モデルの複数点のうち、いずれかの2点を結んだ線の距離と、いずれかの3点を結んだ二線の間の角度とを算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置を算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置を算出する算出制御工程と、
を備える肩甲骨位置算出方法。
【請求項4】
前記所定の姿勢と異なる姿勢における被験者の背中の表面の3次元点群の測定と、複数の前記点の取得とを行わせ
、前記肩甲骨モデルを採用して、前記算出した距離と角度とで用いた点の組み合わせと同一の点の組み合わせでの距離と角度とを算出し、前記所定の姿勢と前記異なる姿勢との距離の変化と、前記所定の姿勢と前記異なる姿勢との角度の変化とを算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置の変化を評価する評価制御工程
を更に備える
請求項3に記載の肩甲骨位置算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩甲骨位置算出装置及び肩甲骨位置算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種心身の状態により人体の姿勢が変化することが経験的に知られている。例えば、落ち込んでいる際には、肩を落とす等の外観変化が見られる。又、心的外傷後ストレス症候群(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)等に対するヨガの有用性が報告されている。
【0003】
一方、脊椎や肩甲骨の位置を測定する技術が存在する。例えば、特表2015-535451号公報(特許文献1)には、X線画像を用いた脊柱内の椎骨の空間位置及び向きを判定するための方法が開示されている。この方法では、脊柱の一部の1つのX線画像を撮影し、同時に、光学的方法によって背部の一部の表面データを記録し、X線画像によって骨構造の要素の位置を判定し、表面データにおける特徴的な要素の位置を判定し、解剖学的固定点を判定し、解剖学的固定点を用いて撮影された1つのX線画像及び表面データを重ね合わせ、表面データ及び1つのX線画像からの骨構造の要素から3次元モデルを計算する。3次元モデルは、椎骨の位置及び向き、脊柱及び棘突起の発達、並びに、棘突起発達及び脊柱発達のシフトを含む。これにより、脊柱内の椎骨の空間位置及び向きを正確に測定することができるとしている。
【0004】
又、実用新案登録第3207832号公報(特許文献2)には、透光性を有する基材から構成される姿勢検査用具が開示されている。この姿勢検査用具では、基材は身体に歪みのない状態の人体の輪郭を示す図案からなる測定部を備えており、人体の輪郭の内側部分は透光性を備え、被検者の身体の輪郭線に測定部の人体の図案の輪郭を重ねた状態で被検者の身体の歪みを検査する。これにより、姿勢の歪みの検査について深い知識のない者でも容易に姿勢の歪みの検査を行うことが可能であるとしている。
【0005】
一方、本出願人が、既に特許出願し、権利化している特開2015-205169号公報(特許文献3)には、肩甲骨位置測定器具及び肩甲骨位置測定方法が開示されている。この器具は、高さ方向に延びる態様の本体部と、本体部の右方向又は左方向に延びる態様で設けられるバー部と、本体部が脊柱に沿って所定箇所に配置されるとともに、バー部が右肩甲骨又は左肩甲骨の所定箇所の高さ位置に合うように本体部において変位され、バー部に対する右肩甲骨又は左肩甲骨の所定箇所の位置が計測されることにより、右肩甲骨又は左肩甲骨の水平方向の位置が測定されるとともに、本体部に対するバー部の位置が計測されることにより、右肩甲骨又は左肩甲骨の高さ方向の位置が測定される。これにより、肩甲骨の位置異常によっておこる肩こりや姿勢不良に対する治療効果を客観的な数値で測定することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2015-535451号公報
【文献】実用新案登録第3207832号公報
【文献】特開2015-205169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、PTSDをはじめとする各種精神的障害や心理的状況・心理的負荷と肩甲骨の位置を含めた姿勢要素に関する研究は、ほとんど存在しない。
【0008】
ここで、上述のように、脊椎や肩甲骨の位置を測定する技術は存在するものの、特許文献1に記載の技術では、X線画像を撮影する設備が必要であり、手軽に脊椎の位置や向きを測定することが出来ないという課題がある。又、特許文献2に記載の技術では、被検者の肩甲骨や脊椎の位置や向きを具体的に測定することが出来ないという課題がある。更に、特許文献3に記載の技術では、測定者がバー部を被験者の右肩甲骨又は左肩甲骨の位置に直接配置する必要があり、被験者の肩甲骨の位置の測定に手間や時間がかかるという課題がある。又、測定者が被験者と密接に接触するため、新型コロナウイルス等の感染症の接触感染のリスクが高まるという課題がある。更に、特許文献1-3に記載の技術では、肩甲骨の位置を3次元的に測定することが出来ないことから、肩甲骨の位置から被験者の心理的な部分の関連性を具体的に導き出し難いという課題がある。
【0009】
一方、精神的障害や心理的状況・心理的負荷と姿勢要素の関連性について関心が高まっており、姿勢要素は、左右の肩甲骨の位置と深い関係にある。そのため、手軽に被験者の左右の肩甲骨の位置を測定することが可能な装置や方法が求められている。
【0010】
又、近年の携帯端末装置(スマートフォンやタブレット)の普及に伴い、ユーザーが携帯端末装置をうつむいた状態で使用し続けることが多くなっている。ここで、ユーザーがうつむいた状態で携帯端末を使用し続けると、頭を支える首に大きな負担が掛かり、首のカーブが失われ、首の骨が次第に真っすぐになることが分かってきている(ストレートネックという)。ストレートネックは、ユーザーがディスクトップ型の端末装置を長時間使用し続けても引き起こされる。このようなストレートネックは、首、肩、背中、腰などの凝りや痛みを生じさせ、重症化すると、痛みやしびれ、背骨の変形、ヘルニア、手足の冷え、頭痛、眼精疲労、吐き気、めまい、慢性的なだるさ、血行不良などの症状が現れる。一方で、ストレートネックは、左右の肩甲骨の位置と密接に関係しており、ストレートネックを検証する上でも、左右の肩甲骨の位置を測定することには大きな意義がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、非接触で被験者の肩甲骨の位置を3次元的に算出することが可能な肩甲骨位置算出装置及び肩甲骨位置算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る肩甲骨位置算出装置は、測定制御部と、第一の取得制御部と、第二の取得制御部と、算出制御部と、を備える。測定制御部は、3次元点群測定器具を用いて、所定の姿勢における被験者の背中の表面の3次元点群を測定する。第一の取得制御部は、前記背中の表面の3次元点群のうち、脊椎の一部を示す脊椎点を取得する。第二の取得制御部は、前記背中の表面の3次元点群のうち、前記被験者の背中の左肩甲骨の一部を示す左肩甲骨点と、前記被験者の背中の右肩甲骨の一部を示す右肩甲骨点とを取得する。算出制御部は、前記脊椎点と、前記左肩甲骨点と、前記右肩甲骨点とのいずれかの2点を結んだ線の距離と、いずれかの3点を結んだ二線の間の角度とを算出することで、前記被験者の左右の肩甲骨の位置を算出する。
【0013】
本発明に係る肩甲骨位置算出方法は、測定制御工程と、第一の取得制御工程と、第二の取得制御工程と、算出制御工程と、を備える。肩甲骨位置算出方法の各工程は、肩甲骨位置算出装置の各制御部に対応する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非接触で被験者の肩甲骨の位置を3次元的に算出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る肩甲骨位置算出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る肩甲骨位置算出方法の実行手順を示すためのフローチャートである。
【
図3】本発明の実施形態に係る3次元点群測定器具が校正プレートとカメラの場合の被験者の背中の表面の3次元点群の測定の一例を示す概略図(
図3A)と、3次元空間における被験者の背中の表面の3次元点群の一例を示す概略図(
図3B)と、である。
【
図4】本発明の実施形態に係る3次元点群測定器具が3次元レーザスキャナーの場合の被験者の背中の表面の3次元点群の測定の一例を示す概略図(
図4A)と、3次元空間における被験者の背中の表面の3次元点群の一例を示す概略図(
図4B)と、である。
【
図5】本発明の実施形態に係る被験者の背面と右側面における脊椎(頸椎、胸椎、腰椎)、左右の肩甲骨の位置の一例を示す概略図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る第一の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図6A)と、第二の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図6B)と、である。
【
図7】本発明の実施形態に係る第三の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図7A)と、第四の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図7B)と、である。
【
図8】本発明の実施形態に係る第五の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図8A)と、第六の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図8B)と、である。
【
図9】本発明の実施形態に係る第七の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図9A)と、第八の肩甲骨モデルとその各点の距離と角度の一例を示す概略図(
図9B)と、である。
【
図10】本発明の実施形態に係る通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢における第四の肩甲骨モデルの一例を示す概略図である。
【
図11】実施例における3次元点群測定器具が校正プレートとカメラの場合の通常姿勢の被験者の背中の表面の3次元点群の測定の一例を示す写真(
図11A)と、3次元空間における被験者の背中の表面の3次元点群の測定結果の一例を示す概略図(
図11B)と、である。
【
図12】実施例における第一の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図13】実施例における第二の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図14】実施例における第三の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図15】実施例における第四の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図16】実施例における第五の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図17】実施例における第六の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図18】実施例における第七の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図19】実施例における第八の肩甲骨モデルと各点を用いた距離と角度の一例を示す結果図である。
【
図20】実施例における猫背姿勢と背伸姿勢の被験者の背中の表面の3次元点群の測定とその測定結果の一例を示す概略図である。
【
図21】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第一の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図22】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第二の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図23】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第三の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図24】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第四の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図25】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第五の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図26】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第六の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図27】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第七の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【
図28】実施例における通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第八の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化の一例を示す結果図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0017】
本発明者は、長年、精神的障害や心理的状況・心理的負荷と、左右の肩甲骨の位置、並びに左右の肩甲骨の位置と姿勢の関係に関する研究を進めており、既に出願した特許出願(特開2015-205169)の肩甲骨位置測定器具及び肩甲骨位置測定方法を用いて事業展開しているが、今回、3次元点群測定器具を用いることで、意外にも、被験者の肩甲骨の位置を3次元的に算出することが出来たため、後述する実施例に基づいて、本発明を完成させたのである。
【0018】
即ち、本発明に係る肩甲骨位置算出装置1は、
図1に示すように、3次元点群測定器具10と、端末装置11と、を備える。
【0019】
3次元点群測定器具10は、非接触で対象物の表面の3次元点群(複数の3次元座標値)を測定可能な器具であれば、特に限定は無いが、例えば、対象物に設けた校正プレートを撮影することで対象物の表面の3次元点群を測定するカメラ(撮影器具)や対象物の表面にレーザを照射し、その反射光を利用することで対象物の表面の3次元点群を測定する3次元レーザスキャナーなどを挙げることが出来る。ここで、カメラは、携帯端末装置に内蔵されたものを用いても構わないし、デプス(奥行き距離)値を撮影可能なデプスカメラであっても構わない。
【0020】
その他に、例えば、対象物の表面に反射シールを設けて、反射シールを含む対象物の表面を複数のカメラで異なる角度で撮影することで、対象物の表面の反射シールの3次元点群を測定するトラッキングシステム(いわゆるモーションキャプチャーに相当)、対象物の表面の温度を検出することで、対象物の表面の遠近を算出し、対象物の表面の3次元点群を測定する赤外線カメラや対象物の表面に特定の光の照射パターンを照射し、その反射光を利用することで対象物の表面の3次元点群を測定するドットプロジェクタなどを挙げることが出来る。
【0021】
3次元点群測定器具10の制御部の構成に特に限定は無いが、例えば、制御部を端末装置11に組み込んだソフトウェアで構成して、端末装置11を操作することで、3次元点群測定器具10で被験者の背中の表面の3次元点群を測定すると、端末装置11で演算して、3次元点群の測定値を出力しても良い。その他に、3次元点群測定器具10に制御部を内蔵して、3次元点群測定器具10で被験者の背中の表面の3次元点群を測定すると、内部の制御部で演算して、3次元点群の測定値だけ出力しても良い。
【0022】
又、端末装置11は、一般に使用されるコンピュータであり、例えば、タッチパネル付きの携帯端末装置、タブレット型端末装置、ウェアラブル型端末装置、ディスクトップ型端末装置を含む。端末装置11は、記憶部と、入力部と、出力部とを備え、入力部は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等であり、出力部は、例えば、液晶ディスプレイ等である。
【0023】
端末装置11は、図示しないCPU、ROM、RAM等を内蔵しており、CPUは、例えば、RAMを作業領域として利用し、ROM等に記憶されているプログラムを実行する。後述する各制御部についても、CPUがプログラムを実行することで各制御部の機能を実現する。尚、プログラムは、ネットワークを介してクラウド等のサーバから取得可能なソフトウェアやアプリケーションであっても良い。
【0024】
次に、
図1-
図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る構成及び実行手順について説明する。先ず、測定者が、被験者Sの依頼を受けて、端末装置11を起動し、被験者Sに所定の姿勢(例えば、通常姿勢)を取ってもらい、被験者Sの背中に対して3次元点群測定器具10を設置して、端末装置11に測定キーを入力する。すると、端末装置11の測定制御部101は、3次元点群測定器具10を用いて、所定の姿勢における被験者Sの背中の表面の3次元点群を測定する(
図2:S101)。
【0025】
測定制御部101の測定方法は、3次元点群測定器具10の種類に応じて適宜変更される。例えば、校正プレートを用いたカメラを3次元点群測定器具10にした場合は、
図3Aに示すように、先ず、測定者が、校正プレート10aを被験者Sの背中に沿わせて設置して、校正プレート10aを含む被験者Sの背中を第一の方向からカメラ10bで撮影し、次に、測定者が、被験者Sの背中を動かすことなく、カメラ10bを動かして、第一の方向と異なる第二の方向から、校正プレート10aを含む被験者Sの背中を撮影する。
【0026】
すると、カメラ10bから、第一の方向と第二の方向で撮影された二枚の撮影画像が端末装置11に送られ、端末装置11の測定制御部101は、
図3Bに示すように、二枚の撮影画像に基づいて、校正プレート10aを基準とした被験者Sの背中の表面の3次元点群を取得することが出来る。
【0027】
校正プレート10aの構成に特に限定は無いが、例えば、長方形状の四隅のそれぞれに円状のマークを設けた構成を挙げることが出来る。校正プレート10aの4つのマークを二つの異なる方向で撮影し、その撮影された二枚の撮影画像と、校正プレート10aの4つのマークの相対的な位置情報とを用いることで、カメラの特定の位置を基準とした校正プレート10aの4つのマークの3次元点群を取得することが出来るとともに、校正プレート10aに設置された被験者Sの背中の表面の3次元点群を算出することが出来る。この状態で、例えば、測定者が、撮影画像内の被験者Sの背中の表面のうち、任意の点を指定すると、指定した点の3次元座標値を取得することが出来る。
【0028】
一方、3次元レーザスキャナーを3次元点群測定器具10にした場合は、
図4Aに示すように、先ず、測定者が、3次元レーザスキャナー10cの発光部分に対向する位置に被験者Sの背中を向けた状態で被験者Sを立たせて、被験者Sの背中を3次元レーザスキャナー10cでスキャンする。
【0029】
すると、3次元レーザスキャナーからスキャンされた3次元点群が端末装置11に送られ、端末装置11の測定制御部101は、
図4Bに示すように、3次元点群に基づいて、3次元レーザスキャナーの特定の位置を基準とした被験者Sの背中の表面の3次元点群を取得することが出来る。
【0030】
尚、他の方法として、カメラで二つの異なる方向から撮影した被験者Sの背中の表面の画像や動画を用いて、被験者Sの背中の表面の彩度、輝度、明度、色相等の変化に基づいて、被験者Sの背中の表面の3次元点群を測定しても良いし、上述のようにデプスカメラから被験者Sの背中の表面の3次元点群を測定しても構わない。
【0031】
さて、測定制御部101が測定を完了すると、次に、端末装置12の第一の取得制御部102は、背中の表面の3次元点群のうち、被験者Sの背中の脊椎の一部を示す脊椎点を取得する(
図2:S102)。
【0032】
第一の取得制御部102の取得方法に特に限定は無い。例えば、
図5に示すように、通常、ヒトの背中の中央内部には、頭部から、7個の頚椎と、12個の胸椎と、5個の腰椎が下方に向かって配置され、胸椎の左右には、左右の肩甲骨が配置されている。この頸椎と胸椎と腰椎は、脊椎と称する。脊椎点は、頸椎点、胸椎点、腰椎点のいずれか又はこれらの組み合わせの特徴点を採用することが出来る。頸椎点は、第1頸椎から第7頸椎までのいずれか、これらの間、又はこれらの組み合わせであり、胸椎点は、第1胸椎から第12胸椎までのいずれか、これらの間、又はこれらの組み合わせであり、腰椎点は、第1腰椎から第5腰椎までのいずれか、これらの間、又はこれらの組み合わせである。下記では、例えば、脊椎点として、1つの頸椎点と1つの胸椎点を例に挙げて説明する。
【0033】
ここで、7つの頸椎のうち、頭部から7番目の第7頸椎C7は、他の頸椎と比べて、外部に最も突出した棘突起C7aを有するため、この第7頸椎C7の棘突起C7aの位置は、背中の表面から突出して、外部から目視することが出来る。
【0034】
そこで、測定者は、被験者Sの背中の表面の3次元点群のうち、背中の中央上部に突出している突起部C7aを第7頸椎C7の棘突起C7aとして指定すると、第一の取得制御部102は、測定者の指定を受けて、この突起部C7aの3次元座標値を、頸椎の一部を示す頸椎点C7として取得する。
【0035】
次に、12個の胸椎のうち、頭部から1番目の第1胸椎T1は、他の胸椎と比べて、第7頸椎C7に最も近接し、且つ、外部に突出した棘突起T1aを有するため、この第1胸椎T1の棘突起T1aの位置は、背中の表面から突出して、外部から目視することが出来る。
【0036】
そこで、測定者は、被験者Sの背中の表面の3次元点群のうち、第7頸椎C7の頸椎点に最も近接した突起部T1aを第1胸椎T1の棘突起T1aとして指定すると、第一の取得制御部102は、測定者の指定を受けて、この突起部T1aの3次元座標値を、胸椎の一部を示す胸椎点T1として取得する。
【0037】
このように、測定者が、被験者Sの背中の表面における突起部を目印にして、第7頸椎C7の棘突起C7aと第1胸椎T1の棘突起T1aとを指定することで、第一の取得制御部102は、頸椎点C7と胸椎点T1の3次元座標値を取得する。これにより、測定者は、被験者Sに接触することなく、被験者Sの左右の肩甲骨の位置を算出するための頸椎点C7と胸椎点T1とを取得することが出来る。
【0038】
ここで、頸椎点C7と胸椎点T1とは、共に、被験者Sの頭部から胸部までの背骨の一直線上に位置することから、これらの点は、被験者Sの左右の肩甲骨の位置の基準位置となり得る。
【0039】
尚、上述では、測定者が、第7頸椎C7の棘突起C7aと第1胸椎T1の棘突起T1aとを指定することで、頸椎点C7と胸椎点T1とを脊椎点として取得するように構成したが、他の脊椎の棘突起を指定しても構わない。例えば、測定者が、腰椎の一部を示す腰椎点を脊椎点として取得しても良い。測定者が腰椎点を指定する方法として、例えば、左右の腸骨稜の最高点を結んだ線のヤコビ線(Jacoby line)を用いて第4腰椎、第5腰椎、又は、第4腰椎と第5腰椎との間を指定することが出来る。
【0040】
又、他の方法を用いても良い。例えば、3次元点群測定器具10がカメラ10bを含む場合、カメラ10bで撮影された撮影画像の被験者Sの背中のうち、突起部には、黒色の影が映し出されるため、突起部の影を利用して、例えば、第7頸椎C7の棘突起C7aや第1胸椎T1の棘突起T1aの位置を特定し、特定した点を取得するよう構成しても構わない。この場合、測定者が手作業で突起部の位置を特定しても良いし、突起部の陰影、彩度、輝度、明度、色相等の特徴の変化に基づいて突起部の位置を測定するソフトウェアを作成して、ソフトウェアを使って自動的に突起部の位置を特定しても良い。
【0041】
尚、被験者Sの脊椎の特徴点が増加する程、被験者Sの背骨の位置を精度高く算出することが出来る。
【0042】
さて、第一の取得制御部102が取得を完了すると、次に、端末装置12の第二の取得制御部103は、被験者Sの背中の左肩甲骨の一部を示す左肩甲骨点と、被験者Sの背中の右肩甲骨の一部を示す右肩甲骨点とを取得する(
図2:S103)。
【0043】
第二の取得制御部103の取得方法に特に限定は無い。例えば、
図5に示すように、一般的に、被験者Sの背中の表面では、左の肩甲骨のうち、上方近傍に、外部に向かって突出した左の肩甲棘が存在し、右の肩甲骨にも、同様に、上方近傍に、外部に向かって突出した右の肩甲棘が存在する。この左右の肩甲棘の位置は、背中の表面から突出して、外部から目視することが出来る。
【0044】
そこで、測定者は、被験者Sの背中の表面の3次元点群のうち、背中の上方の左右のそれぞれに突出した突起部A、Bを、左右の肩甲棘として指定すると、第二の取得制御部103は、測定者の指定を受けて、これらの突起部A、Bの3次元座標値を、左肩甲骨の上方の一部を示す左肩甲骨上点Aと、右肩甲骨の上方の一部を示す右肩甲骨上点Bとして取得する。
【0045】
このように、上述と同様に、測定者が、被験者Sの背中の表面における突起部を目印にして、左右の肩甲棘の突起部A、Bとを指定することで、第二の取得制御部103は、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bの3次元座標値を取得することが出来るため、測定者は、被験者Sに接触することなく、被験者Sの左右の肩甲骨の位置を算出するための左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとを取得することが出来る。
【0046】
ここで、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとは、被験者Sの左右の肩甲骨の特徴点であるため、脊椎点としての上述の頸椎点C7と胸椎点T1とで比較することで、被験者Sの左右の肩甲骨の位置の傾きや偏りを確認することが出来る。
【0047】
ここで、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bの代わりに、被験者Sの左右の肩甲骨の他の特徴点を取得しても良い。例えば、
図5に示すように、左右の肩甲骨について、外部から認識できる位置として、左右の肩甲棘の他に、左右の下角を挙げることが出来る。具体的には、左の肩甲骨のうち、下方近傍に、外部に向かって突出した左の下角が存在し、右の肩甲骨にも、同様に、下方近傍に、外部に向かって突出した右の下角が存在する。この左右の下角の位置は、上述と同様に、背中の表面から突出して、外部から目視することが出来る。
【0048】
そこで、測定者は、被験者Sの背中の表面の3次元点群のうち、背中の下方の左右のそれぞれに突出した突起部C、Dを、左右の下角として指定すると、第二の取得制御部103は、測定者の指定を受けて、これらの突起部C、Dの3次元座標値を、左肩甲骨の下方の一部を示す左肩甲骨下点Cと、右肩甲骨の下方の一部を示す右肩甲骨下点Dとして取得してもよい。
【0049】
このように、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bに代えて、左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとを取得しても良いし、これらの点を全て採用しても良い。
【0050】
又、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの代わりに、被験者Sの左右の肩甲骨の他の特徴点を取得しても良い。例えば、
図5に示すように、左右の肩甲骨について、外部から認識できる位置として、左右の下角の他に、左右の肩峰を挙げることが出来る。具体的には、左の肩甲骨のうち、上方左近傍に、外部に向かって突出した左の肩峰が存在し、右の肩甲骨にも、同様に、上方右近傍に、外部に向かって突出した右の肩峰が存在する。この左右の肩峰の位置は、上述と同様に、背中の表面から突出して、外部から目視することが出来る。
【0051】
そこで、測定者は、被験者Sの背中の表面の3次元点群のうち、背中の上方の左右のそれぞれに突出した突起部E、Fを、左右の肩峰として指定すると、第二の取得制御部103は、測定者の指定を受けて、これらの突起部E、Fの3次元座標値を、左肩甲骨の外側の一部を示す左肩甲骨外点Eと、右肩甲骨の外側の一部を示す右肩甲骨外点Fとして取得してもよい。
【0052】
このように、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとに代えて、左肩甲骨外点Eと右肩甲骨外点Fとを取得しても良いし、これらの点を全て採用しても良い。尚、被験者Sの左右の肩甲骨の特徴点が増加する程、被験者Sの左右の肩甲骨の位置を精度高く算出することが出来る。又、脊椎点の数及び左右の肩甲骨点の数が増加する程、被験者Sの左右の肩甲骨の位置の精度を更に向上させることが出来る。
【0053】
さて、第二の取得制御部103が取得を完了すると、端末装置12の算出制御部104は、脊椎点(例えば、頸椎点C7と、胸椎点T1)と、左肩甲骨点(例えば、左肩甲骨上点A)と、右肩甲骨点(例えば、右肩甲骨上点B)とのいずれかの2点を結んだ線の距離と、いずれかの3点を結んだ二線の間の角度とを算出することで、被験者Sの左右の肩甲骨の位置を算出する(
図2:S104)。
【0054】
算出制御部104の算出方法に特に限定は無い。例えば、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの4点の3次元座標値が取得された場合は、
図6Aに示すように、3次元点群を表すための3次元空間のxyz座標系において、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの4点がそれぞれプロットされ、4点がそれぞれ線で結ばれることで、被験者Sの左右の肩甲骨の位置のモデル(肩甲骨モデルとする)が作成される。ここでは、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの4点で構成される肩甲骨モデルを第一の肩甲骨モデルとする。
【0055】
この肩甲骨モデルは、被験者Sの背中の頸椎や胸椎、左右の肩甲骨の空間的位置を一見して理解することが出来るとともに、胸椎に対する頸椎の曲がり具合や胸椎に対する左右の肩甲骨のひずみ具合を確認することが出来るため、大変有意義である。
【0056】
さて、算出制御部104は、第一の肩甲骨モデルから、左右の肩甲骨の位置を示す距離と角度とを算出する。距離は、例えば、頸椎点C7と胸椎点T1との距離(1)と、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aとの距離(2)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの距離(3)と、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aとの距離(4)と、胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの距離(5)とを挙げることが出来る。これにより、左右の肩甲骨の位置の近接具合を数値的に示すことが出来る。更に、距離(3)と距離(2)の差分と、距離(5)と距離(4)の差分とを求めることで、左右の肩甲骨の偏り具合を数値的に示すことが出来る。又、角度は、例えば、左肩甲骨上点Aと胸椎点T1と頸椎点C7との間の角度(1)と、右肩甲骨上点Bと胸椎点T1と頸椎点C7との間の角度(2)と、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aと胸椎点T1との間の角度(3)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bと胸椎点T1との間の角度(4)と、胸椎点T1と頸椎点C7と左肩甲骨上点Aとの間の角度(5)と、胸椎点T1と頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの間の角度(6)とを挙げることが出来る。これにより、左右の肩甲骨の位置の傾き具合を数値的に示すことが出来る。更に、角度(2)と角度(1)の差分と、角度(4)と角度(3)の差分と、角度(6)と角度(5)の差分とを求めることで、左右の肩甲骨の傾き具合を数値的に示すことが出来る。
【0057】
上述の肩甲骨モデルは、取得される点の数や種類によって適宜設計変更することが出来るが、ここでは、代表的な肩甲骨モデルを列記する。
【0058】
例えば、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの5点の3次元座標値が取得された場合は、
図6Bに示すように、この5点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第二の肩甲骨モデルとする。第二の肩甲骨モデルの距離は、例えば、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aとの距離(1)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの距離(2)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cとの距離(3)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dとの距離(4)と、頸椎点C7と左肩甲骨下点Cとの距離(5)と、頸椎点C7と右肩甲骨下点Dとの距離(6)とを挙げることが出来る。更に、距離(2)と距離(1)の差分と、距離(6)と距離(5)の差分とを求めることが出来る。角度は、例えば、左肩甲骨下点Cと左肩甲骨上点Aと頸椎点C7との間の角度(1)と、右肩甲骨下点Dと右肩甲骨上点Bと頸椎点C7との間の角度(2)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cと頸椎点C7との間の角度(3)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dと頸椎点C7との間の角度(4)と、左肩甲骨上点Aと頸椎点C7と左肩甲骨下点Cとの間の角度(5)と、右肩甲骨上点Bと頸椎点C7と右肩甲骨下点Dとの間の角度(6)と、更に、角度(2)と角度(1)の差分と、角度(6)と角度(5)の差分とを求めることが出来る。
【0059】
又、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの5点の3次元座標値が取得された場合は、
図7Aに示すように、この5点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第三の肩甲骨モデルとする。第三の肩甲骨モデルの距離は、例えば、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aとの距離(1)と、胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの距離(2)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cとの距離(3)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dとの距離(4)と、胸椎点T1と左肩甲骨下点Cとの距離(5)と、胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの距離(6)とを挙げることが出来る。更に、距離(2)と距離(1)の差分と、距離(6)と距離(5)の差分とを求めることが出来る。角度は、例えば、左肩甲骨下点Cと左肩甲骨上点Aと胸椎点T1との間の角度(1)と、右肩甲骨下点Dと右肩甲骨上点Bと胸椎点T1との間の角度(2)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cと胸椎点T1との間の角度(3)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dと胸椎点T1との間の角度(4)と、左肩甲骨上点Aと胸椎点T1と左肩甲骨下点Cとの間の角度(5)と、右肩甲骨上点Bと胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの間の角度(6)とを挙げることが出来る。更に、角度(2)と角度(1)の差分と、角度(4)と角度(3)の差分と、角度(6)と角度(5)の差分とを求めることが出来る。
【0060】
又、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの6点の3次元座標値が取得された場合は、
図7Bに示すように、この6点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第四の肩甲骨モデルとする。第四の肩甲骨モデルの距離は、頸椎点C7と胸椎点T1との距離(1)と、頸椎点C7と左肩甲骨下点Cとの距離(2)と、頸椎点C7と右肩甲骨下点Dとの距離(3)と、胸椎点T1と左肩甲骨下点Cとの距離(4)と、胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの距離(5)とを挙げることが出来る。更に、距離(3)と距離(2)の差分と、距離(5)と距離(4)の差分とを求めることが出来る。角度は、例えば、左肩甲骨下点Cと胸椎点T1と頸椎点C7との間の角度(1)と、右肩甲骨下点Dと胸椎点T1と頸椎点C7との間の角度(2)と、頸椎点C7と左肩甲骨下点Cと胸椎点T1との間の角度(3)と、頸椎点C7と右肩甲骨下点Dと胸椎点T1との間の角度(4)と、左肩甲骨下点Cと頸椎点C7と胸椎点T1との間の角度(5)と、右肩甲骨下点Dと頸椎点C7と胸椎点T1との間の角度(6)とを挙げることが出来る。更に、角度(2)と角度(1)の差分と、角度(4)と角度(3)の差分と、角度(6)と角度(5)の差分とを求めることが出来る。
【0061】
又、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの5点の3次元座標値が取得された場合は、
図8Aに示すように、この5点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第五の肩甲骨モデルとする。第五の肩甲骨モデルの距離は、例えば、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aとの距離(1)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの距離(2)と、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの距離(3)と、左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの距離(4)と、頸椎点C7と左肩甲骨下点Cとの距離(5)と、頸椎点C7と右肩甲骨下点Dとの距離(6)とを挙げることが出来る。更に、距離(2)と距離(1)の差分と、距離(6)と距離(5)の差分とを求めることが出来る。角度は、例えば、左肩甲骨上点Aと頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの間の角度(1)と、左肩甲骨下点Cと頸椎点C7と右肩甲骨下点Dとの間の角度(2)と、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの間の角度(3)と、頸椎点C7と左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの間の角度(4)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bと左肩甲骨上点Aとの間の角度(5)と、頸椎点C7と右肩甲骨下点Dと左肩甲骨下点Cとの間の角度(6)とを挙げることが出来る。更に、角度(2)と角度(1)の差分と、角度(4)と角度(3)の差分と、角度(6)と角度(5)の差分とを求めることが出来る。
【0062】
又、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの5点の3次元座標値が取得された場合は、
図8Bに示すように、この5点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第六の肩甲骨モデルとする。第六の肩甲骨モデルの距離は、例えば、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aとの距離(1)と、胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの距離(2)と、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの距離(3)と、左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの距離(4)と、胸椎点T1と左肩甲骨下点Cとの距離(5)と、胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの距離(6)とを挙げることが出来る。更に、距離(2)と距離(1)の差分と、距離(6)と距離(5)の差分とを求めることが出来る。角度は、例えば、左肩甲骨上点Aと胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの間の角度(1)と、左肩甲骨下点Cと胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの間の角度(2)と、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの間の角度(3)と、胸椎点T1と左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの間の角度(4)と、胸椎点T1と右肩甲骨上点Bと左肩甲骨上点Aとの間の角度(5)と、胸椎点T1と右肩甲骨下点Dと左肩甲骨下点Cとの間の角度(6)とを挙げることが出来る。更に、角度(2)と角度(1)の差分と、角度(4)と角度(3)の差分と、角度(6)と角度(5)の差分とを求めることが出来る。
【0063】
又、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの6点の3次元座標値が取得された場合は、
図9Aに示すように、この6点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第七の肩甲骨モデルとする。第七の肩甲骨モデルの距離は、例えば、胸椎点T1と胸椎点T1との距離(1)と、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aとの距離(2)と、胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの距離(3)と、胸椎点T1と左肩甲骨下点Cとの距離(4)と、胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの距離(5)と、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aとの距離(6)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの距離(7)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cとの距離(8)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dとの距離(9)と、左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの距離(10)とを挙げることが出来る。角度は、例えば、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aとの間の角度(1)と、頸椎点C7と胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの間の角度(2)と、左肩甲骨上点Aと胸椎点T1と左肩甲骨下点Cとの間の角度(3)と、右肩甲骨上点Bと胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの間の角度(4)と、左肩甲骨下点Cと胸椎点T1と右肩甲骨下点Dとの間の角度(5)と、左肩甲骨上点Aと頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの間の角度(6)と、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cとの間の角度(7)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dとの間の角度(8)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの間の角度(9)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dと左肩甲骨下点Cとの間の角度(10)とを挙げることが出来る。
【0064】
又、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの6点の3次元座標値が取得された場合は、
図9Bに示すように、この6点の線の組み合わせで構成される肩甲骨モデルを第八の肩甲骨モデルとする。第八の肩甲骨モデルの距離は、例えば、頸椎点C7と左肩甲骨上点Aとの距離(1)と、頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの距離(2)と、胸椎点T1と左肩甲骨上点Aとの距離(3)と、胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの距離(4)と、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bとの距離(5)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cとの距離(6)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dとの距離(7)と、左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの距離(8)とを挙げることが出来る。角度は、例えば、左肩甲骨上点Aと頸椎点C7と右肩甲骨上点Bとの間の角度(1)と、左肩甲骨上点Aと胸椎点T1と右肩甲骨上点Bとの間の角度(2)と、右肩甲骨上点Bと左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cとの間の角度(3)と、左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dとの間の角度(4)と、左肩甲骨上点Aと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの間の角度(5)と、右肩甲骨上点Bと右肩甲骨下点Dと左肩甲骨下点Cとの間の角度(6)とを挙げることが出来る。
【0065】
このように、算出制御部104が、二点間の距離と三点間の角度とを算出することで、被験者Sの左右の肩甲骨の位置を数値的に把握することが可能となる。そして、算出制御部104は、作成した被験者Sの肩甲骨モデルを液晶ディスプレイ等の表示部に表示することで、測定者は、被験者Sの肩甲骨モデルを使いながら、被験者Sの左右の肩甲骨の位置を被験者Sに説明したり評価したりすることが出来る。
【0066】
尚、上述のように、第一の肩甲骨モデルから第八の肩甲骨モデルまでに必要となる点は異なる。そのため、第一の取得制御部102と第二の取得制御部103とは、対象とする肩甲骨モデルに応じて、取得対象の点を適宜変更しても良い。
【0067】
又、上述では、算出制御部104が、二点間の距離と三点間の角度とを算出しているが、これらに追加して、複数点の間の距離や複数点間の角度を算出しても構わない。
【0068】
さて、被験者Sの左右の肩甲骨の位置について、更に、詳細に検討したい場合は、下記の処理を行っても構わない。即ち、算出制御部104が算出を完了すると、端末装置12の評価制御部105は、所定の姿勢(通常姿勢)と異なる姿勢(例えば、猫背姿勢、背伸姿勢)における被験者Sの背中の表面の3次元点群の測定と、複数の点の取得とを行わせ、算出した距離と角度とで用いた点の組み合わせと同一の点の組み合わせでの距離と角度とを算出し、所定の姿勢と異なる姿勢との距離の変化と、所定の姿勢と異なる姿勢との角度の変化とを算出することで、被験者Sの左右の肩甲骨の位置の変化を評価する(
図2:S105)。ここで、複数の点は、例えば、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとのいずれかの組み合わせとなる。
【0069】
評価制御部105の評価方法に特に限定は無い。例えば、
図10に示すように、第四の肩甲骨モデルを採用した場合、最初は、被験者Sに通常姿勢を取ってもらった上で、被験者Sの背中の表面の3次元点群の測定と、頸椎点C7と胸椎点T1と左肩甲骨上点Aと右肩甲骨上点Bと左肩甲骨下点Cと右肩甲骨下点Dとの6点の取得が行われ、これらの6点の組み合わせにより、通常姿勢での距離と角度とが算出されている。そこで、測定者は、次に、被験者Sに通常姿勢と異なる猫背姿勢を取ってもらって、端末装置11に指示することで、端末装置11の評価制御部105は、上述のS101からS104までを各制御部に行わせることで、猫背姿勢での距離と角度とを算出する。そして、評価制御部105は、通常姿勢と猫背姿勢との距離の変化と、通常姿勢と猫背姿勢との角度の変化とを算出する。ここで、変化は、例えば、通常姿勢と猫背姿勢との距離の差分や通常姿勢の距離に対する猫背姿勢の距離の比率を挙げることが出来る。このように、同一の被験者Sに異なる姿勢を取ってもらった上で、姿勢毎の距離と角度とを算出して、その変化を算出することで、被験者Sの姿勢の変化に伴う左右の肩甲骨の位置の変化を数値化することが可能となり、左右の肩甲骨の周囲の筋肉の緊張具合や弛緩具合を推定することが出来る。
【0070】
ここで、異なる姿勢は、猫背姿勢の他に背伸姿勢を挙げることが可能であり、測定者が、更に、被験者Sに背伸姿勢を取ってもらって、上述と同様にして、評価制御部105は、背伸姿勢での距離と角度とを算出し、通常姿勢と背伸姿勢との距離の変化と、通常姿勢と背伸姿勢との角度の変化とを算出しても良い。複数の姿勢における各点の距離と角度を算出し、姿勢変化に伴う距離と角度の変化を算出することで、より具体的に左右の肩甲骨の位置の変化を評価することが出来る。
【0071】
このように、左右の肩甲骨の位置の変化を数値化することで、複数の被験者Sのデータベースを作成することが出来る。上述のように、精神的障害や心理的状況・心理的負荷と、左右の肩甲骨の位置には密接な関係が示唆されていることから、例えば、被験者Sの左右の肩甲骨の位置又はその変化と、被験者Sの心理的状態とを関連付けておくことで、例えば、所定の被験者Sの左右の肩甲骨の位置又はその変化を測定することで、その被験者Sの心理的状態を推定することも可能となる。もちろん、被験者Sのストレートネックの程度を検証する上でも有力なツールとなる。
【0072】
又、本発明では、被験者Sの左右の肩甲骨の位置又はその変化を数値化することが出来るため、様々な分野への応用が期待される。例えば、肩こりの他に五十肩や腱板損傷、ストレートネックやヘルニア等の整形外科的な治療やリハビリ、マッサージ療法、温熱療法、運動療法、安静・薬物療法、鍼灸等の処置を行う前後の被験者Sの左右の肩甲骨の位置又はその変化を数値化することで、具体的な治療効果を数値的に把握することが可能となる。処置は、医療に限らず、多種多様な分野へ積極的に活用することが出来る。例えば、スポーツ分野であればパフォーマンスの低下の検証、美容分野であれば若く見える姿勢の検証等を挙げることが出来る。更に、本発明では、被験者Sの左右の肩甲骨の位置又はその変化から、被験者Sのストレス度合いも評価することが出来る。
【0073】
又、本発明では、端末装置11が各制御部を備えるよう構成したが、当該各制御部を実現するプログラムを記憶媒体に記憶させ、当該記憶媒体を提供するよう構成しても構わない。当該構成では、プログラムを所定の端末装置に読み出させ、当該端末装置が各制御部を実現する。その場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が本発明の作用効果を奏する。
【0074】
又、各制御部が実行する工程を本発明に係る肩甲骨位置算出方法としてとして提供することも可能である。例えば、測定者が、3次元点群測定器具10を用いて、被験者Sの背中の表面の3次元点群を測定し、その中から、脊椎点と左肩甲骨点と右肩甲骨点とを取得し、これらの点の距離及び角度を用いて被験者Sの左右の肩甲骨の位置を算出しても構わない。
【実施例】
【0075】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
<実施例1>
【0076】
測定者は、3次元点群測定器具10として、校正プレート10aとカメラ10bを用意した。そして、
図11Aに示すように、測定者は、被験者Sに通常姿勢を取ってもらい、長方形状の校正プレート10aを被験者Sの背中に沿わせて設置して、被験者Sの背中の表面のうち、第7頸椎C7の棘突起C7aと第1胸椎T1の棘突起T1aと左右の肩甲棘と左右の下角とのそれぞれに対応する突起部に円状のシールを貼った。次に、測定者は、校正プレート10aを含む被験者Sの背中を第一の方向からカメラ10bで撮影し、次に、測定者が、被験者Sの背中を動かすことなく、カメラ10bを動かして、第一の方向と異なる第二の方向から、校正プレート10aを含む被験者Sの背中を撮影した。これにより、第一の方向と第二の方向で撮影された二枚の撮影画像を取得した。
【0077】
一方、端末装置11に、二枚の撮影画像と校正プレート10aの4つのマークの相対的な位置情報とに基づいて撮影画像内の被験者Sの背中の表面の3次元点群を算出するソフトウェアをインストールしておき、測定者は、そのソフトウェアを起動して、二枚の撮影画像をソフトウェアに入力することで、撮影画像内の被験者Sの背中の表面の3次元点群を測定した。ここでは、ソフトウェアが測定制御部101として機能した。
【0078】
ここで、ソフトウェアでは、校正プレート10aの四隅の円状のマークと被験者Sの背中の表面の貼った円状のシールとを自動で認識して、マークとシールのそれぞれの3次元座標値を取得するように構成している。そのため、
図10Bに示すように、二枚の撮影画像をソフトウェアに入力すると、マークとシールのそれぞれの3次元座標値が自動的に取得された。ここでは、ソフトウェアが第一の取得制御部102と第二の取得制御部103として機能した。尚、表示した3次元座標値の原点は所定位置で示している。
【0079】
又、このソフトウェアでは、取得した点の3次元座標値を3次元空間のxyz座標系にプロットして、各点を線で結ぶように構成している。ここで、各点で第一の肩甲骨モデルを構成する場合、例えば、ソフトウェアは、第一の肩甲骨モデルに対応して、各点の組み合わせによる距離と角度とを算出し、
図12に示すように、骸骨模型において各点の位置を示した写真と、各点を用いた第一の肩甲骨モデルと、各点を用いた距離と角度とを表示する。ここでは、ソフトウェアが算出制御部104として機能する。これにより、測定者は、被験者Sの左右の肩甲骨の位置やその傾き具合を一見して把握することが出来る。
【0080】
ここで、ソフトウェアは、第一の肩甲骨モデルの他に、
図13~
図19に示すように、第二の肩甲骨モデルから第八の肩甲骨モデルに対応して、同様に、各点の組み合わせによる距離と角度とを算出して表示する。第一の肩甲骨モデルから第八の肩甲骨モデルまでの距離と角度との算出は、例えば、測定者が、切り替え指示をソフトウェアに入力することでなされる。このように、各点の組み合わせから距離と角度の算出が可能である。
【0081】
次に、測定者は、被験者Sに通常姿勢と異なる猫背姿勢を取ってもらい、ソフトウェアを使って、
図20に示すように、猫背姿勢における被験者Sの背中の表面の3次元点群の測定と、複数の点の取得とを行った。更に、測定者は、被験者Sに背伸姿勢を取ってもらい、同様に、背伸姿勢における被験者Sの背中の表面の3次元点群の測定と、複数の点の取得とを行った。そして、測定者は、評価指示をソフトウェアに入力すると、ソフトウェアは、通常姿勢での距離と角度とを基準として、通常姿勢で算出した距離と角度とで用いた点の組み合わせと同一の点の組み合わせでの猫背姿勢での距離と角度とを算出し、通常姿勢と猫背姿勢との距離の変化と、通常姿勢と猫背姿勢との角度の変化とを算出した。ここで、変化は、通常姿勢と猫背姿勢との距離の差分と、通常姿勢の距離に対する猫背姿勢の距離の比率を採用した。ソフトウェアは、同様に、通常姿勢と背伸姿勢との距離の変化と、通常姿勢と背伸姿勢との角度の変化とを算出した。ここでは、ソフトウェアが評価制御部105として機能する。
【0082】
ソフトウェアは、
図21に示すように、通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での第一の肩甲骨モデルとそれぞれの距離と角度と、距離の変化と角度の変化とを表示する。これにより、測定者は、被験者Sの姿勢の変化に伴う左右の肩甲骨の位置の変化を容易に把握することが出来る。又、ソフトウェアは、第一の肩甲骨モデルの他に、
図22~
図28に示すように、第二の肩甲骨モデルから第八の肩甲骨モデルに対応して、同様に、通常姿勢と猫背姿勢と背伸姿勢での距離と角度と、距離の変化と角度の変化とを表示する。このように、様々な肩甲骨モデルから距離と角度の検証が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明に係る肩甲骨位置算出装置及び肩甲骨位置算出方法は、医学に限らず、看護、介護、心理学、スポーツ医学等の分野に広く有用であり、非接触で被験者の肩甲骨の位置を3次元的に算出することが可能な肩甲骨位置算出装置及び肩甲骨位置算出方法として有効である。
【符号の説明】
【0084】
1 肩甲骨位置算出装置
10 3次元点群測定器具
11 端末装置
101 測定制御部
102 第一の取得制御部
103 第二の取得制御部
104 算出制御部
105 評価制御部