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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】カプセル化された光ガイド光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20241125BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20241125BHJP
   B24B 9/14 20060101ALI20241125BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241125BHJP
   B29D 11/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
B24B37/08
B24B9/14 Z
G02B5/00 Z
B29D11/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022500636
(86)(22)【出願日】2020-07-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-20
(86)【国際出願番号】 IL2020050805
(87)【国際公開番号】W WO2021009766
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】62/875,533
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518010049
【氏名又は名称】ルムス エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】Lumus Ltd.
【住所又は居所原語表記】8 Pinchas Sapir Street, 7403631 Ness Ziona, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マジール,アミット
(72)【発明者】
【氏名】オフィル,ユバール
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-096883(JP,A)
【文献】特表2018-522262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01-27/02
B24B 37/08
B24B 9/14
G02B 5/00
B29D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ガイド光学素子(LOE)を製造する方法であって、
第1の屈折率を有する透明な基板からなる光学コンバイナ素子を形成するステップであって、前記コンバイナ素子が、その長さに沿った一対の平行な外面と、相互に平行な少なくとも部分的に反射する複数の内面と、を有し、前記相互に平行な内面が、前記一対の外面に対して斜めに角度付けられている、光学コンバイナ素子を形成するステップと、
成形プロセスを用いて、前記コンバイナ素子の少なくとも一部を透明なポリマー樹脂でカプセル化して、カプセル化された構造を形成するステップであって、前記樹脂が、前記第1の屈折率と整合する第2の屈折率を有する、カプセル化された構造を形成するステップと、を含み、
前記カプセル化された構造が、前記樹脂から形成された光学品質の一対の平行な外面を含み、
前記成形プロセスが、
内部空洞を有する中空の鋳型を提供することと、
前記コンバイナ素子が少なくとも部分的に前記空洞内に延在するように、前記コンバイナ素子を前記鋳型に固定することと、
前記コンバイナ素子が少なくとも部分的に前記樹脂によってカプセル化されるように、前記空洞を前記樹脂で充填し、前記樹脂を硬化させることと、を含み、
前記空洞が、主空洞と、前記主空洞の長手方向の端部の副空洞と、を含み、前記コンバイナ素子を前記鋳型から取り外すと、前記カプセル化された構造がその長手方向の端部に楔形部分を含むように、前記副空洞が、楔形を有し、
前記成形プロセスが、2つの段階で行われ、第1の段階が、前記副空洞を前記樹脂の第1の部分で充填することを含み、第2の段階が、前記樹脂の前記第1の部分の硬化後に、前記主空洞を前記樹脂の第2の部分で充填することを含む、方法。
【請求項2】
前記樹脂の前記一対の平行な外面を研磨することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LOEの一方の長手方向の端部に角度付けられた面を形成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
楔形プリズムを前記角度付けられた面に接合することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記鋳型が、少なくとも上部と、下部と、を備え、前記成形プロセスが、前記空洞を樹脂で充填する前に、前記上部および前記下部を相互に位置合わせさせて、前記カプセル化された構造の前記一対の外面間の平行度を得ることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記カプセル化された構造の前記平行な外面が、前記LOEの1つ以上の構造パラメータを満たすように、樹脂を充填する前に前記鋳型の能動領域を研磨することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記LOEの1つ以上の構造パラメータが、25nmのピーク値(Ra)以下の粗度と、直径20mmの円上で2パワー不規則性を有する6フリンジパワー以下の平坦度と、のうちの少なくとも一方を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
成形後に、前記カプセル化された構造が平行な外面を含むように、前記上部および前記下部が、能動的位置合わせプロセスを用いて位置合わせされる、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の主題は、光ガイド光学素子に関し、より具体的には、ニアアイディスプレイシステム用の光ガイド光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光ガイド光学素子(LOE)は、拡張現実用途に使用されることもあり、ヘッドマウントデバイスなどのニアアイディスプレイシステム内に含まれる場合がある。特定のタイプのLOEは、一対の平行な外面と、相互に平行な部分的に反射する内面(ファセット)の非平行な一式を有する透明な基板で作成される。場合によっては、これらのLOEは、外面に、楔形のプリズムをさらに含み、それを通して画像がプロジェクタを介して結合される。一対の平行な外面間の内部全反射(TIR)を介して画像はLOE内を伝播し、一式のファセットを介して視認者の瞳孔に向かって結合される。
【0003】
概要
本開示の主題の一態様によれば、光ガイド光学素子(LOE)を製造する方法が提供され、当該方法は、第1の屈折率を有する透明な基板からなる光学コンバイナ素子を形成するステップであって、コンバイナ素子は、その長さに沿った一対の平行な外面と、相互に平行な少なくとも部分的に反射する複数の内面と、を有し、相互に平行な内面は、一対の外面に対して斜めに角度付けられている、形成するステップと、成形プロセスを用いて、コンバイナ素子の少なくとも一部を透明なポリマー樹脂でカプセル化して、カプセル化された構造を形成するステップであって、樹脂は、第1の屈折率と整合する第2の屈折率を有する、形成するステップと、を含み、カプセル化された構造は、樹脂から形成された光学品質の一対の平行な外面を含む。
【0004】
いくつかの実施形態では、成形プロセスは、内部空洞を有する中空の鋳型を提供することと、コンバイナ素子が少なくとも部分的に空洞内に延在するように、コンバイナ素子を鋳型に固定することと、コンバイナ素子が少なくとも部分的に樹脂によってカプセル化されるように、空洞を樹脂で充填し、樹脂を硬化させることと、を含む。
【0005】
いくつかの実施形態では、方法は、樹脂の一対の平行な外面を研磨することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、方法は、LOEの一方の長手方向の端部に角度付けられた面を形成することを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、方法は、楔形プリズムを角度付けられた面に接合することを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、鋳型は、少なくとも上部と、下部と、を含み、成形プロセスは、空洞を樹脂で充填する前に上部および下部を相互に位置合わせさせて、カプセル化された構造の一対の外面間の平行度を得ることをさらに含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、空洞は、主空洞と、主空洞の長手方向の端部の副空洞と、を含み、コンバイナ素子を鋳型から取り外すと、カプセル化する樹脂は、その長手方向の端部に楔形部分を含むように、副空洞が楔形を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、成形プロセスは、2つの段階で行われ、第1の段階は、副空洞を樹脂の第1の部分で充填することを含み、第2の段階は、樹脂の第1の部分の硬化後に、主空洞を樹脂の第2の部分で充填すること含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、成形プロセスは、カプセル化された構造の平行な外面がLOEの1以上の所望の構造パラメータを満たすように、樹脂を充填する前に鋳型の能動領域を研磨することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、1つ以上の構造パラメータは、25nmのピーク値(Ra)以下の粗度と、直径20mmの円上で2パワー不規則性を有する6フリンジパワー以下の平坦度と、のうちの少なくとも一方を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、成形後に、カプセル化された構造が平行な外面を含むように、上部および下部は、能動的位置合わせプロセスを用いて位置合わせされる。
【0014】
本開示の主題の別の態様によれば、光ガイド光学素子(LOE)が提供され、LOEは、第1の屈折率を有する透明な基板であって、基板は、その長さに沿った一対の平行な外面と、相互に平行な少なくとも部分的に反射する複数の内面と、を有し、相互に平行な内面は、一対の外面に対して斜めに角度付けられている、基板と、基板の少なくとも一部をカプセル化して、カプセル化された構造を形成する透明なポリマー樹脂であって、ポリマー樹脂は、第1の屈折率と整合する第2の屈折率を有する、ポリマー樹脂と、を含み、カプセル化された構造は、樹脂から形成された光学品質の一対の平行な外面を備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、カプセル化する樹脂の一対の外面をカプセル化する外面は、最大1.5分角の公差で平行である。
【0016】
いくつかの実施形態では、LOEは、その一方の長手方向の端部に角度付けられた面を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、LOEは、角度付けられた面に接合された楔形プリズムを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、カプセル化する樹脂は、その一方の長手方向の端部に楔形部分を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、基板は、成形プロセスを用いて樹脂によって少なくとも部分的にカプセル化されている。
【0020】
いくつかの実施形態では、成形プロセスは、カプセル化された構造の外面間に所望の平行度を達成するために、1つ以上の鋳型部品の能動的位置合わせを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、成形プロセスは、1つ以上の鋳型部品を機械加工して、成形プロセス中にLOEの所望の構造パラメータを満たすことを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、1つ以上の構造パラメータは、25nmのピーク値(Ra)以下の粗度と、直径20mmの円上で2パワー不規則性を有する6フリンジパワー以下の平坦度と、の少なくとも一方を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施され得るかを認識するために、実施形態を非限定的な例として添付の図面を参照して説明する。
図1A】先行技術によるLOEの側面図を示す。
図1B】先行技術によるLOEのトップダウン図を示す。
図2A】開示された主題の第1の実施形態によるLOEの側面図を概略的に示す。
図2B】開示された主題の第1の実施形態によるLOEのトップダウン図を概略的に示す。
図3】開示された主題の特定の態様による例示的な鋳型30を概略的に示す。
図4】開示された主題の特定の態様による、カプセル化されたLOEの両面研磨プロセスを概略的に示す。
図5】開示された主題の特定の態様による、LOEの一方の長手方向の端部に角度付けられた面を形成することを概略的に示す。
図6】開示された主題の特定の態様による、LOEの角度付けられた面に楔形プリズムを接合させることを概略的に示す。
図7A】開示された主題の第2の実施形態によるLOEの側面図を概略的に示す。
図7B】開示された主題の第2の実施形態によるLOEのトップダウン図を概略的に示す。
図8A】開示された主題の実施形態による例示的な鋳型の分解図を概略的に示す。
図8B】開示された主題の実施形態による、垂直に配向された例示的な鋳型の断面図を示す。
図9】開示された主題の実施形態による、位置合わせプロセスを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために多くの具体的な詳細が示される。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても、現在開示されている主題が実施され得ることが、当業者によって理解されるであろう。他の場合には、現在開示されている主題を曖昧にしないように、既知の方法、手順、および構成要素は詳細に説明していない。
【0025】
図面は一定の縮尺で描かれておらず、場合によっては、他の方法では明らかにならないことがある特定の詳細を強調するために誇張されている場合があることを理解されたい。
【0026】
図1Aおよび図1Bは、先行技術によるLOEの側面図およびトップダウン図をそれぞれ示している。LOEは、その長さに沿った一対の平行な外面12a、12bと、相互に平行な少なくとも部分的に反射する複数の内面14と、を有する透明な基板から作成された光学コンバイナ素子10を含み、相互に平行な内面は、一対の外面に対して斜めに角度付けられている。LOEは、コンバイナ素子の平行な面12a、12bに接合された一対の透明な光学プレート16a、16bをさらに含む。プレートは、通常、コンバイナ素子の長さに沿って伝播する光線の、プレートの外面間における内部全反射を容易にするために、基板の屈折率に光学的に整合した屈折率を有する。光学プレート16a、16bの外面17a、17bもまた、相互に平行であり、コンバイナ素子の面12a、12bに平行である。通常、ガラスプレートを接合した後、そのプレートは、正確な平行度を実現するために、両面研磨プロセスを用いて研磨される。場合によっては、LOEは、その一方の長手方向の端部に接合された楔形プリズム18を含む。場合によっては、LOEは、楔形プリズム18の反対側の長手方向端部にコーナー19をさらに含む。
【0027】
LOEを製造する先行技術の方法における問題の中には、ガラスプレートをコンバイナ素子に接合する困難なプロセスがあり、これは繊細かつ正確に実行されなければならない。その結果、接合プロセスは長くなり、かつ、費用かかる。
【0028】
楔形プリズムを接合するプロセスには別の困難が存在し、これも非常に正確に実行する必要があり、その結果、大量生産が困難となり、かつ、費用がかかる。
【0029】
上記の先行技術のLOEとは対照的に、本明細書に開示されるLOEは、ガラスプレートの代わりに使用される光学樹脂の内部にコンバイナ素子をカプセル化することによって、ガラスプレートを接合することにより生じる問題を解決する。
【0030】
さらに、本明細書に開示されるいくつかの実施形態によれば、楔形プリズムはカプセル化する樹脂と一体的に形成され、それにより、上記の第2の困難を解決し、LOEの大量生産能力を向上させる。
【0031】
図2Aおよび図2Bは、開示された主題の第1の実施形態によるLOEの側面図およびトップダウン図をそれぞれ示している。LOEは、その長さに沿った一対の平行な外面12a、12bと、相互に平行な少なくとも部分的に反射する複数の内面14と、を有する透明な基板から作成された光学コンバイナ素子10を含み、相互に平行な内面14は、一対の外面12a、12bに対して斜めに角度付けられている。コンバイナ素子10は、基板の屈折率(RI)に光学的に整合するRIを有する透明なポリマー樹脂20によって少なくとも部分的にカプセル化されている。全体的にカプセル化された構造は、樹脂から形成された光学品質の一対の平行な外面を含み、カプセル化された構造の一対の平行な外面は、コンバイナ素子の面12a、12bに平行である。本明細書および特許請求の範囲において、「平行な外面」は、好ましくは1.5分角のオフセット以下の公差内で平行な外面を指す。
【0032】
上記およびこの説明全体で使用されているように、「透明」は、完全ではない透明性を含むと理解されるべきである。実際には、基板と樹脂は、外界からの光を容易に透過させながら、注入された画像を(例えば、プロジェクタを介して)伝播するのに十分に透明であればよい。さらに、「整合した」という用語は、基板のRIと樹脂のRIが相互に+/-1E-4以内、または、少なくとも相互に0.002%以内であり、好ましくは、界面が明らかに可視的な光学的不連続性を生成しない程度に双方のRIが十分に近接していることを意味すると理解されるべきである。「光学的品質」の外面は、それが光の有意な散乱を引き起こさない程度に十分に平滑であり、それゆえ視認者がそれを通して投影された画像および/または実世界を観察することができる表面として好適であることを意味すると理解されるべきである。
【0033】
いくつかの実施形態では、図2Aおよび図2Bに示されるように、LOEは、一方の長手方向の端部に、カプセル化されたLOEの角度付けられた研磨面に接合された楔形プリズム18を含むことができる。
【0034】
好ましくは、コンバイナ素子のカプセル化は、成形プロセスを用いて実行される。図3は、成形プロセスに使用され得る例示的な鋳型30を概略的に示しており、そのさらなる詳細がここで提示される。鋳型30は、好ましくは、内部空洞31を有する中空の鋳型である。鋳型30は、好ましくは、相互に取り付け可能な少なくとも2つの部品32a、32bからなり、各部品は、取り付けられたときに位置合わせして鋳型の内部空洞を形成する内部くぼみをそれぞれ有する。鋳型は、それぞれの部品32a、32bの相互の取り付けを容易にする第1の取り付け機構33をさらに含む。図3に示すように、鋳型は、コンバイナ素子が空洞31内へ少なくとも部分的に延在するように、鋳型へのコンバイナ素子の固定を容易にする第2の取り付け機構34をさらに含み、同時に、表面12a、12bと空洞壁との間の空間を、好ましくは0.25~0.35mmに保っている。鋳型は、部品32a、32bが相互に取り付けられ、かつ、コンバイナ素子10が所定の位置に固定されたときに、空洞に液体または半液体形態のポリマー樹脂を充填することを可能にする、空洞31につながる開口または穴35をさらに含む。いくつかの実施形態では、上部に穴35がくるように鋳型が垂直に位置決めされている状態で、樹脂が空洞全体を充填するように、樹脂が鋳型の中に挿入される。
【0035】
したがって、コンバイナ素子をカプセル化するための例示的な成形プロセスは、上記の例示的な鋳型を使用し、i)コンバイナ素子が少なくとも部分的に空洞内に延在するようにコンバイナ素子を鋳型に固定することと、ii)空洞をポリマー樹脂で充填することと、iii)樹脂を硬化させることと、iv)カプセル化された構造を鋳型から取り外すことと、を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、LOEに必要な設計仕様に従い、かつ、必要性に応じて、カプセル化されたLOEに対してさらなる処理が実行され得る。例えば、いくつかの実施形態では、さらなる処理は、以下のうちの1つ以上を含み得る。
1、例えば、図4に示すような両面研磨機40、または、当業者に知られている他の好適な技術を使用してカプセル化されたLOEの主要な平行外面21a、21bを研磨して、外面間の正確な平行度を達成する。
2、図5に示すように、例えば、角度研削とそれに続く研磨によって、LOEの一方の長手方向の端部に角度付けられた面50を形成する。
3、図6に示すように、光学接着剤を使用して楔形プリズムを角度付けられた面に接合する。場合によっては、接合前に角度付けられた面と楔形プリズムの間の界面に反射コーティングを施すことができる。
4、カプセル化されたLOEの最終的な輪郭を成形する。
【0037】
図7Aおよび図7Bは、開示された主題の第2の実施形態によるLOEの側面図および上面図をそれぞれ示す。本実施形態は、LOEが、カプセル化する樹脂と一体的に形成され、かつ、成形プロセス中にポリマー樹脂から作成された楔形部分18’を一方の長手方向の端部に含む点で、第1の実施形態とは異なる。
【0038】
本実施形態によれば、成形プロセスは、楔形部分の成形を含むようにいくらか変更される。さらに、楔形部分18’の存在により両面研磨がより困難になるので、いくつかの実施形態は、樹脂を充填する前に鋳型部品を正確に位置合わせすることを含み、その結果、成形プロセス中に、完成したLOEの所望の構造パラメータを達成するための追加の処理は必要とされない。
【0039】
本実施形態によれば、鋳型の空洞は、主空洞と、その主空洞内に、主空洞の一方の長手方向の端部に副空洞と、を含む。主空洞は、楔形部分を除いて、カプセル化されたLOEの所望の形状に基づいて寸法および形状が決定され、一方では、副空洞は楔を形成するように成形される。いくつかの実施形態では、鋳型は、主空洞および副空洞を形成するために組み合わされる複数の異なる形状の構成要素を有することができる。
【0040】
図8Aは、本実施形態による例示的な鋳型を示している。鋳型30’は、少なくとも最終のLOEの上面を成形する能動領域81aを有する上部32a’と、少なくともLOEの底面を成形する能動領域81bを有する下部32b’と、を含む。特に好ましい実施形態では、鋳型30’は、LOEの楔形部分の少なくとも一部を成形する能動領域81cを有する、上部と下部との間に挟まれた中間部32c’をさらに含む。他の実施形態では、楔形部分は、上部および下部32a’、32b’のうちの1つから、または、双方の組み合わせのから形成することができる。本文脈において、「能動領域」は、樹脂と接触する鋳型30’の内面(すなわち、空洞壁)を指す。
【0041】
図8Bは、挿入された樹脂が最初に副空洞31aを充填し、次に主空洞31bを充填するように、上部に穴35がくるように、垂直に配向された例示的な鋳型30’を示す。図8Bでは、主空洞および副空洞の形状および位置に視認者の注意を引くためにコンバイナ素子が省略されているが、実際には、コンバイナ素子は、少なくとも部分的に主空洞内に延在するように鋳型に固定されることに留意されたい。
【0042】
本実施形態によれば、鋳型30’は、成形後にカプセル化されたLOEが、おそらく最終輪郭を成形する以外のさらなる処理が不要となり得るように、特定の所定の設計特性を満たすように製造および処理され得る。
【0043】
特に好ましい実施形態では、成形プロセス中に、完成したLOEの1つ以上の構造パラメータに関する特定の設計要件を満たすために、鋳型の能動領域が樹脂で充填される前に機械加工される。典型的な構造パラメータには、例えば、外部光学面の平坦度、粗度、および平行度に関する最小許容値が含まれる。例えば、LOEの外面の典型的な設計要件としては、平均25nmのピーク値(25nmRa)以下の粗度と、直径20mmの円上で6フリンジパワーおよび2パワー不規則性以下の平坦度が挙げられる。これらの要件は、成形プロセスで、例えば、ダイヤモンド旋削研磨機を使用して鋳型の能動領域(特に外部の平行な表面を成形する能動領域)を研磨して、上記のパラメータを満たすか、または、上回る粗度と平坦度を達成することで達成することができる。平行度は、以下で説明するように、鋳型の能動領域を位置合わせすることで達成することができる。
【0044】
図8Aを再び参照すると、特に好ましい実施形態では、鋳型の上部と下部は、例えば、一連のチルトネジ82を使って所定の位置に固定する前に、相互に回転可能な3軸で回転可能であり、その結果、上部と下部の鋳型部分は、そこに形成された空洞に樹脂を充填する前に、(例えば、1つ以上のオートコリメータを使用して)正確かつ能動的に位置合わせすることができる。
【0045】
平行度に関する特定の設計要件は、樹脂を充填する前に鋳型部品を正確に位置合わせすることにより、最も好ましくは能動的位置合わせプロセスを用いて、成形プロセス中に達成ですることがきる。図9は、例示的な能動的位置合わせプロセスを概略的に示している。オートコリメータ90は、平行光ビーム92a、92bを放出する。ビーム92bは、上部の能動領域またはそれに平行な面を照射するように方向付けられ、その一方では、ビーム92aは、配置された反射レンズ93を使用して、下部の能動領域またはそれに平行な面を照射するように方向付けられている。次に、上部および下部は、ビーム92a、92bの各々が、それぞれの能動領域、または、それに平行な面に正確に直交するまで、相互に回転される。次に、上部および下部の鋳型部分が所定の位置にしっかりと固定され、それにより、カプセル化された構造全体の外面を成形する能動領域間の平行度が保証され、その結果、成形後にカプセル化された構造が平行な外面21a、21bを含む。
【0046】
完成したLOEの追加の設計要件により、最大許容応力複屈折(例えば、50nm/cm)が規定される場合がある。主空洞が比較的狭く、副空洞がより広い鋳型の場合に発生し得る1つの課題は、硬化プロセス中に副空洞内の樹脂が収縮し、2つの空洞間の「通路」を通る樹脂の流れが不均一になり、ポリマーでカプセル化された完成LOEにそれに応じた局所的な内部応力が発生することである。光学的には、これらの内部応力は複屈折として知られる偏光遅延を引き起こす可能性がある。この望ましくない影響は、樹脂を2段階で鋳型に挿入することによって、低減、またはさらには排除することができる。最初に、樹脂を副空洞に挿入して硬化させる。その後、樹脂を主空洞に挿入して硬化させる。
【0047】
上述の成形プロセスを用いることで、おそらく最終的な輪郭を成形する以外には、さらなる処理を行うことなく、典型的な要求設計仕様を満たすLOEを完成させることができることが、当業者によって理解されるはずである。したがって、楔形プリズムをLOEに接合するステップを排除し、カプセル化した後の処理ステップを低減または排除することにより、本実施形態によるLOEは、迅速、効率的、かつ低減されたコストで大量生産され得る。
【0048】
本明細書に開示されている原理は、記載され、かつ図面に示された特定のコンバイナ素子に限定されるものではなく、必要に応じて適切な修正を加えれば、例えば、2次元拡張コンバイナ素子を含む、任意の好適なコンバイナ素子に適用可能であることが、当業者によってさらに理解されるはずである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9