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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用の非水電解液
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241125BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20241125BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241125BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241125BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022556617
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 KR2021016905
(87)【国際公開番号】W WO2022260222
(87)【国際公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0073895
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・グ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ウン・ヨム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ミ・イ
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093532(WO,A1)
【文献】特表2019-535101(JP,A)
【文献】特開2007-287518(JP,A)
【文献】特開2020-194782(JP,A)
【文献】特開2014-072050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05 - 10/0587
H01M 10/36 - 10/39
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒、および第1添加剤を含み、
前記第1添加剤は、下記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物を含む群から選択された1種以上である、リチウム二次電池用の非水電解液。
【化1】
(前記化学式1aにおいて、前記nは1~18の自然数であり、R はメチル基である。)
【化2】
(前記化学式1bにおいて、前記nは1~18の自然数であり、R はメチル基である。)
【請求項2】
前記第1添加剤は、下記化学式1cで表される化合物および化学式1dで表される化合物から選択される少なくとも一つである、請求項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【化3】
【化4】
【請求項3】
前記第1添加剤は、前記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物の双方を含み、前記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物のモル割合は2:8~8:2である、請求項またはに記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【請求項4】
前記第1添加剤は、電解液の総重量に対して0.01~5重量%含まれる、請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【請求項5】
前記第1添加剤は、電解液の総重量に対して0.1~3重量%含まれる、請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【請求項6】
ハロゲン置換または非置換されたハロゲン置換または非置換された環状カーボネート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸塩系化合物、ホウ酸塩系化合物、スルトン系化合物、リチウム塩系化合物および硫酸塩系化合物からなる群から選択された少なくとも一つ以上の第2添加剤をさらに含む、請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【請求項7】
前記リチウム塩は、LiPF、LiAsF、LiN(SOF)、LiCFSO、LiN(CFSO)、LiBF、LiSbF、LiN(CSO)、LiAlO、LiAlCl、LiSOCFおよびLiClOを含む群から選択される少なくとも一つである、請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【請求項8】
前記有機溶媒は、線状カーボネート、環状カーボネート、エステル、エーテル、ケトンまたはこれらの組み合わせを含む、請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液。
【請求項9】
請求項1からの何れか一項に記載のリチウム二次電池用の非水電解液を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2021年06月08日付の韓国特許出願第10-2021-0073895号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用の非水電解液およびそれを含む二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、エネルギー貯蔵技術の開発に対する関心がより高まり、携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコン、ひいては電気自動車にいたるまで電気化学素子の適用分野が拡大されており、その研究と開発に対する努力がますます具体化されている。
【0004】
電気化学素子の中でも、充放電が可能な二次電池の開発に対する関心が台頭しており、特に1990年代の初めに開発されたリチウム二次電池は、作動電圧が高く、エネルギー密度がけた外れに大きいというメリットから脚光を浴びている。
【0005】
リチウム二次電池システムの場合、リチウム金属を直接システムに適用した草創期とは異なり、リチウムを含有している遷移金属酸化物材料を正極材として使用し、負極材としては黒鉛などの炭素系材料とシリコンなどの合金系材料などを負極に適用するなど、リチウム金属が直接的に電池の内部に使用されないシステムとして具現されている。
【0006】
このようなリチウム二次電池の場合、リチウムを含有している遷移金属酸化物からなる正極、リチウムを貯蔵し得る負極、リチウムイオンを伝達する媒体となる電解液、分離膜で構成されている。この中で、電解液の場合、電池の安定性(stability)と安全性(safety)などに大きな影響を与える構成成分として知られ、それについての多くの研究が行われている。
【0007】
リチウム二次電池用の電解液の場合、リチウム塩とそれを溶解させる有機溶媒、そして機能性添加剤などで構成されるが、電池の電気化学的特性を改善するためには、この構成要素の好適な選定が重要である。
【0008】
それと関連して、従来の電解液の場合、電解液溶媒の低い還元分解安定性に起因する、寿命減少および貯蔵中の電解質分解と関連する問題が深刻に現れることになる。電解液の分解反応は、負極と電解質との間の界面に抵抗層として作用するSEI皮膜を形成すると同時にガスが発生されて、電池の性能低化を促進させる。
【0009】
また、負極と電解質との間の界面が不安定である場合、持続的な電解質分解によって電解質の枯渇が発生し得る。それは、リチウムの析出または遷移金属の析出に起因する電池の劣化および故障を引き起こし得る。さらに、上記のような金属成分の析出は、電解質の分解をさらに促進し得る媒体として機能する。
【0010】
特に、シリコンが含まれた負極の場合、充放電時の体積変化によってSEI皮膜が破壊される。それにより、不安定な負極の表面が露出されて電解質の消耗がさらに加速され得る。
【0011】
したがって、電解質と負極との間の界面の安定性を向上させることができる技術開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような課題を解決するために案出されたものであって、負極-電解質界面の安定性を確保して充放電過程で電解液分解現象を緩和することで、常温および高温での寿命特性を向上させることができるリチウム二次電池用の非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液はリチウム塩、有機溶媒、および第1添加剤を含み、上記第1添加剤は下記化学式1で表される化合物を含む。
【化1】
(上記化学式1において、Rは置換または非置換された炭素数2~20の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基および置換または非置換された炭素数3~8の環型アルキル基からなる群から選ばれたものである。)
【0014】
具体的な例において、上記化学式1において、上記Rは、置換または非置換された炭素数2~20のアルケニル基および置換または非置換された炭素数2~20のアルキニル基であり得る。
【0015】
より具体的には、上記第1添加剤は、下記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物を含む群から選択された1種以上であり得る。
【化2】
(上記化学式1aにおいて、上記nは1~18の自然数であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基および置換または非置換された炭素数3~8の環状アルキル基からなる群から選択されたものである。)
【化3】
(上記化学式1bにおいて、上記nは1~18の自然数であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基および置換または非置換された炭素数3~8の環状アルキル基からなる群から選択されたものである。)
【0016】
より具体的には、上記第1添加剤は、下記化学式1cで表される化合物および化学式1dで表される化合物から選択される少なくとも一つであり得る。
【化4】
【化5】
【0017】
一方、上記第1添加剤は、上記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物の双方を含み、上記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物のモル割合は、2:8~8:2であり得る。
【0018】
具体的な例において、上記第1添加剤は、電解液の総重量に対して0.01~5重量%を含み得る。
【0019】
より具体的には、上記第1添加剤は、電解液の総重量に対して0.1~3重量%含まれ得る。
【0020】
また、本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液は、ハロゲン置換または非置換された環状カーボネート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸塩系化合物、ホウ酸塩系化合物、スルトン系化合物、リチウム塩系化合物および硫酸塩系化合物からなる群から選択された少なくとも1つ以上の第2添加剤をさらに含み得る。
【0021】
また、上記リチウム塩は、LiPF、LiAsF、LiN(SOF)、LiCFSO、LiN(CFSO)、LiBF、LiSbF、LiN(CSO)、LiAlO、LiAlCl、LiSOCFおよびLiClOを含む群から選択される少なくとも一つであり得る。
【0022】
さらに、上記有機溶媒は、線状カーボネート、環状カーボネート、エステル、エーテル、ケトン、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0023】
本発明は、上述したようなリチウム二次電池用の非水電解液を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液は、負極の表面に炭素-酸素の単一結合又は二重結合ベースの被膜を形成させることで、負極-電解質の界面の安定性を向上させることができる。また、充放電過程における電解液分解現象を緩和することで、常温および高温での寿命特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳細に説明する。その前に、本明細書および特許請求の範囲で使用された用語または単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者が彼自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に立脚して、本発明の技術的思想に合致する意味と概念として解釈されるべきである。
【0026】
本出願において、「含む」または「有する」などの用語は、本明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはそれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あるとする場合、これは他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0027】
一方、本明細書内での「炭素数a~b」の記載において、「a」および「b」は、具体的な官能基に含まれる炭素原子の個数を意味する。すなわち、上記官能基は「a」~「b」個の炭素原子を含み得る。例えば、「炭素数1~5のアルキレン基」は、炭素数1~5の炭素原子を含むアルキレン基、すなわち、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH-および-CH(CH)CHCH-等を意味する。
【0028】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0029】
リチウム二次電池用の非水電解液
本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液は、リチウム塩、有機溶媒、および第1添加剤を含み、上記第1添加剤は、下記化学式1で表される化合物を含む。
【化6】
(上記化学式1において、Rは置換または非置換された炭素数2~20の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換された炭素数3~8の環型アルキル基からなる群から選ばれるものである。)
【0030】
(1) リチウム塩
本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池用の非水電解液において、上記リチウム塩はLiPFを含み、LiPFに追加的にリチウム二次電池用の電解液に通常的に用いられるものが制限なく使用され得る。例えば、上記リチウム塩のカチオンとしてLi+を含み、アニオンとしては、F、Cl、Br、I、NO 、N(CN) 、ClO 、BF 、B10Cl10 、PF 、 CFSO 、CHCO 、CFCO 、AsF 、SbF 、AlCl 、AlO 、CHSO 、BF 、BC 、PF 、PF 、(CFPF 、(CFPF3 、(CFPF 、(CFPF、CSO 、CFCFSO 、(CFSO、(FSO、CFCF(CFCO、(CFSOCH、(SF、(CFSO、CF(CFSO 、SCNおよび(CFCFSOからなる群から選択された少なくともいずれか一つを挙げることができる。
【0031】
具体的には、上記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCHCO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiAlO、LiCHSO、LiFSI(lithium fluorosulfonyl imide、LiN(SOF))、 LiTFSI(lithium(bis)trifluoromethanesulfonimide、LiN(SOCF)およびLiBETI(lithium bisperfluoroethanesulfonimide、LiN(SO)からなる群から選択された単一物または2種以上の混合物を含み得る。より具体的には、上記リチウム塩は、LiPF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiBF、LiSbF、LiN(CSO、LiAlO、LiAlCl、LiSOCFおよびLiClOからなる群から選択される少なくとも一つであり得る。
【0032】
上記リチウム塩は通常的に使用可能な範囲内で好適に変更し得る。具体的には、電解液内に0.1M~3M、具体的には0.8M~2.5Mで含まれ得る。もし、上記リチウム塩の濃度が3Mを超える場合、非水電解液の粘度が増加されて、リチウムイオンの移動効果が低下し、非水電解液の湿潤性が低下するので、電極の表面に均一な厚さのSEI膜を形成し難いというデメリットがある。
【0033】
(2) 有機溶媒
上記有機溶媒は、二次電池の充放電過程で酸化反応等による分解を最小限に抑えることができ、添加剤とともに目的とする特性を発揮できるものであれば、その種類に制限はない。例えば、線状カーボネート、環状カーボネート、エステル、エーテル、ケトン、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0034】
具体的には、上記環状カーボネート系有機溶媒は、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1、2-ブチレンカーボネート、2、3-ブチレンカーボネート、1、2-ペンチレンカーボネート、2、3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネート(FEC)からなる群から選択される少なくとも1つ以上を含む。具体的には、高誘電率を有するエチレンカーボネートおよびエチレンカーボネートに比べて、相対的に低融点を有するプロピレンカーボネートの混合溶媒を含み得る。
【0035】
また、上記線状カーボネート系有機溶媒は、低粘度および低誘電率を有する溶媒であって、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネートおよびエチルプロピルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つ以上を含み得る。より具体的には、ジメチルカーボネートを含み得る。
【0036】
上記エーテル系有機溶媒は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテルおよびエチルプロピルエーテルからなる群から選択されるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物を使用し得るが、それに限定されない。
【0037】
上記エステル系有機溶媒は、線状エステル系有機溶媒および環状エステル系有機溶媒からなる群から選択された少なくとも1種以上を挙げることができる。
【0038】
このとき、上記線状エステル系有機溶媒は、その具体例として、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートからなる群から選択されるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物等が代表的に使用され得るが、それに限定されない。
【0039】
上記環状エステル系有機溶媒は、その具体例として、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトンおよびε-カプロラクトンからなる群から選択されるいずれか一つ又はこれらのうち2種以上の混合物を使用し得るが、それに限定されない。
【0040】
上記有機溶媒は、誘電率が高くて電解質内のリチウム塩をよく解離させる、高粘度の環状カーボネート系有機溶媒を使用し得る。また、より高い電気伝導率を有する電解質を製造するために、上記有機溶媒は上記環状カーボネート系有機溶媒とともに、ジメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートのような低粘度、低誘電率の線状カーボネート系化合物および線状エステル系化合物を程よい割合で混合して使用し得る。
【0041】
より具体的には、上記有機溶媒は、環状カーボネート系化合物と線状カーボネート系化合物とを混合して使用することができ、上記有機溶媒のうちの環状カーボネート系化合物、線状カーボネート系化合物の重量比は10:90~70:30であり得る。
【0042】
(3) 第1添加剤
一方、本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液は、第1添加剤として化学式1で表される化合物を含み得る。
【化7】
(上記化学式1において、Rは置換または非置換された炭素数2~20の不飽和炭化水素基であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基、置換または非置換された炭素数3~8の環状アルキル基からなる群から選ばれたものである。)
【0043】
具体的に、上記化学式1において、上記Rは、置換または非置換された炭素数2~20のアルケニル基および置換または非置換された炭素数2~20のアルキニル基であり得る。詳細には、Rは炭素数2~16、2~12、2~8または3~5のアルケニル基またはアルキニル基であり、Rは炭素数1~8、1~6、1~4または1または1~3のアルキル基または炭素数3~6の環状アルキル基であり得る。
【0044】
また、上記化学式1において、上記Rは末端アルケニル基または末端アルキニル基であり得る。ここで、末端アルケニル基とは、鎖末端に二重結合が形成されたものであり、末端アルキニル基とは、鎖末端に三重結合が形成されていることを意味する。
【0045】
具体的には、上記第1添加剤は、下記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物を含む群から選択される1種以上であり得る。
【化8】
(上記化学式1aにおいて、上記nは1~18の自然数であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基および置換または非置換された炭素数3~8の環状アルキル基からなる群から選択されたものである。)
【化9】
(上記化学式1bにおいて、上記nは1~18の自然数であり、Rは水素、置換または非置換された炭素数1~10のアルキル基および置換または非置換された炭素数3~8の環状アルキル基からなる群から選択されたものである。)
【0046】
化学式1aおよび1bにおいて、nは1~18、1~14、1~10、1~6または1~3であり得る。
【0047】
これらの化合物の非限定的な例としては、化学式1cで表される5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-allyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)および化学式1dで表される5-メチル-5-プロパルギルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-propargyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)であり得る。
【化10】
【化11】
【0048】
上記化学式1で表される化合物は、分子構造内にエステル官能基および不飽和炭化水素基を含有し、二次電池の初期充電過程で電解液の他の成分より先に分解されて、負極の表面に炭素-酸素の単一結合(C-O)又は炭素-酸素の二重結合(C=O)をベースとする化合物を主要成分とする皮膜を形成する。さらに、上記第1添加剤は、アリル基、プロパルギル基のような不飽和炭化水素官能基を含んでいる。そのため、負極表面で還元されやすく、負極表面に被膜を形成するのが容易になる。このような皮膜は、一般的な電解液の還元分解で形成されるSEI皮膜より高い安定性を有し、電子伝導性が低くて追加的な電解液の分解反応を抑制し、負極の体積変化にも容易に損傷されないというメリットがある。すなわち、上記化学式1のような化合物を電解液の添加剤として用いることで、負極と電解質との界面の安定性を確保し得る。
【0049】
このとき、上記第1添加剤は、上記化学式1aのように末端アルケニル基を含む化合物および化学式1bのように末端アルキニル基を含む化合物を単独で使用することもできるが、2種類の化合物を混合して使用することもできる。このように、第1添加剤が上記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物の双方を含む場合、上記化学式1aで表される化合物および化学式1bで表される化合物のモル割合は2:8~8:2、3:7~7:3、または4:6~6:4の範囲にあり得る。
【0050】
一方、本発明において、上記第1添加剤は、電解液の総重量に対して0.01~5重量%含まれ得る。詳細には0.1~3重量%、さらに詳しくは0.5~2重量%含まれ得る。第1添加剤の含量が上記範囲内であると、電池の抵抗を上昇させず、かつ安定した被膜を形成することができる。
【0051】
第1添加剤の含量が上記範囲を外れて0.01重量%未満の場合、所望の効果を達成することが不十分である。また、第1添加剤の含量が5重量%を超える場合、添加剤が十分に分解されず、添加剤が抵抗として作用して電池の性能が低下し得る。
【0052】
(4) 第2添加剤
また、本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液は、上記混合添加剤とともに使用されて、上記混合添加剤が発現する効果とともに初期抵抗を大きく増加させずに、負極および正極の表面に安定した皮膜を形成するか、非水電解液内の溶媒の副反応に起因する分解を抑制し、リチウムイオンの移動性を向上させる補完剤としての役割を果たし得る第2添加剤をさらに含み得る。
【0053】
具体的には、本発明に係るリチウム二次電池用の非水電解液は、ハロゲン置換または非置換された環状カーボネート系化合物、ニトリル系化合物、リン酸塩系化合物、ホウ酸塩系化合物、スルトン系化合物、リチウム塩系化合物および硫酸塩系化合物からなる群から選択された少なくとも1つ以上の添加剤をさらに含み得る。
【0054】
具体的には、ハロゲン置換または非置換された環状カーボネート系化合物は、電池活性化時に主として負極の表面に安定なSEI膜を形成し、電池の耐久性の向上を図り得る。
【0055】
このようなハロゲン置換された環状カーボネート系化合物としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)が挙げられる。また、非置換された環状カーボネート系化合物としては、ビニレンカーボネート(VC)およびビニルエチレンカーボネート(VEC)が挙げられる。
【0056】
上記ハロゲン置換または非置換された環状カーボネート系化合物は、非水電解液全体の重量を基準にして8重量%以下、詳細には5重量%以下で含み得る。上記非水電解液中に環状カーボネート系化合物の含量が8重量%を超えると、セルの膨潤抑制性能および初期抵抗が劣化され得る。
【0057】
上記ニトリル系化合物は、上述した混合添加剤と共に使用される場合、正/負極の皮膜安定化で高温特性の改善などの効果を期待し得る。すなわち、負極SEI皮膜を形成するのに補完剤として役割を果たし得る。また、電解質内の溶媒の分解を抑制する役割を果たし得る。そして、リチウムイオンの移動性を向上させる役割を果し得る。このようなニトリル系化合物は、その代表的な例として、スクシノニトリル、アジポニトリル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリル、1、4-ジシアノ-2-ブテン、グルタロニトリル(glutaronitrile)、1、3、6-ヘキサントリカルボニトリルおよびピメロニトリル(pimelonitrile)からなる群から選択される少なくとも一つ以上の化合物が挙げられる。
【0058】
上記ニトリル系化合物は、非水電解液全体の重量を基準にして8重量%以下、詳細には5重量%以下で含まれ得る。上記非水電解液の中でニトリル系化合物全体の含量が8重量%を超えると、電極の表面に形成される皮膜の増加で抵抗が大きくなり、電池性能が低化され得る。
【0059】
また、上記リン酸塩系化合物は、電解液内のPFアニオンなどを安定化し、正極および負極の皮膜形成に役立つため、電池の耐久性の向上を図り得る。このようなリン酸塩系化合物は、リチウムジフルオロ(ビスオキサラト)リン酸塩(LiDFOP)、リチウムジフルオロリン酸塩(LiDFP、LiPO)、リチウムテトラメチルトリメチルシリルホスフェート、トリメチルシリルホスファイト(TMSPi)、トリメチルシリルホスフェート(TMSPa)、エチルジ(プロ-2-イン-1-イル)ホスフェート(ethyl di(prop-2-yn-1-yl)phosphate)、アリルジホスフェート(allyl diphosphate)、トリス(2、2、2-トリフルオロエチル)ホスフェート(TFEPa)およびトリス(トリフルオロエチル)ファスファイトからなる群から選択された1種以上の化合物が挙げられ、非水電解液全体の重量を基準にして3重量%以下、詳細には1重量%以下で含まれ得る。
【0060】
上記ホウ酸塩系化合物は、リチウム塩のイオン対の分離を促進させてリチウムイオンの移動度を向上させることができ、SEI皮膜の界面抵抗を低下させることができ、電池反応時に生成されて上手く分離されないLiFなどの物質も解離させることで、フッ酸ガスの発生などの問題を解決し得る。このようなホウ酸塩系化合物としては、リチウムビオキサリルボレート(LiBOB、LiB(C)、リチウムオキサリルジフルオロボレートまたはテトラメチルトリメチルシリルボレート(TMSB)が挙げられ、非水電解液全体の重量を基準にして3重量%以下、詳細には1重量%以下で含まれ得る。
【0061】
上記スルトン系化合物は、1、3-プロパンスルトン(PS)、1、4-ブタンスルトン、エテンスルトン、1、3-プロペンスルトン(PRS)、1、4-ブテンスルトン、および1-メチル-1、3-プロペンスルトンからなる群から選択された少なくとも一つ以上の化合物が挙げられる。これは、非水電解液全体の重量を基準にして0.3重量%~5重量%、具体的には1重量%~5重量%で含まれ得る。上記非水電解液中のスルトン系化合物の含量が5重量%を超えると、電極の表面に過渡に厚い皮膜が形成されて、抵抗増加と出力低化が発生し得る。また、非水電解液中の過量の添加剤による抵抗が増加して、出力特性が低化され得る。
【0062】
また、上記リチウム塩系化合物は、上記非水電解液に含まれるリチウム塩とは異なる化合物であって、硫酸リチウムメチル、硫酸リチウムエチル、リチウム2-トリフルオロメチル-4、5-ジシアノイミダゾール(lithium2-trifluoromethyl-4、5-dicyanoimidazole)、リチウムテトラフルオロオキサラトホスフェート(lithium tetrafluoro oxalato phosphate)、LiODFBおよびLiBF4からなる群から選択された1種以上の化合物が挙げられる。また、非水電解液全体の重量を基準にして3重量%以下、詳細には1重量%以下で含まれ得る。
【0063】
また、上記硫酸塩系化合物としては、エチレン硫酸塩(ethylene sulfate)、トリメチレン硫酸塩(trimethylenesulfate、TMS)、またはメチルトリメチレン硫酸塩(methyl trimethylene sulfate; MTMS)が挙げられ、非水電解液の全重量を基準にして3重量%以下、詳細には1重量%以下で含まれ得る。
【0064】
より具体的には、上記第2添加剤は、ビニルエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1、3-プロパンスルトンおよびリチウムオキサリルジフルオロボレート(ODFB)を含む群から選択される1種又は2種以上の組み合わせを含み得る。
【0065】
このように追加的に添加され得る添加剤は、2種以上を混合して使用可能であり、電解液の総量を基準にして20重量%以下、具体的には0.01重量%~15重量%、好ましくは0.1~10重量%で含まれ得る。
【0066】
上記追加的に添加され得る添加剤の含量が0.01重量%未満である場合は、上記添加剤から具現しようとする高温貯蔵の特性およびガス低減の効果が僅かであり、20重量%を超える場合は、電池の充放電時に電解液中の副反応が過度に発生する可能性がある。特に、過量の添加剤が添加されると十分に分解されずに、常温の電解液内で未反応物または析出されたままで存在し得る。これにより、抵抗が増加して二次電池の寿命特性が低下され得る。
【0067】
リチウム二次電池
また、本発明の一実施形態においては、本発明のリチウム二次電池用の非水電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0068】
本発明のリチウム二次電池は正極、負極、分離膜および上述のリチウム二次電池用の非水電解液を含む。具体的には、上記リチウム二次電池は、正極、負極および正極と負極との間に介在された分離膜が順次に積層されてなる電極組立体に、本発明の非水電解液を注入して、製造し得る。このとき、電極組立体を成す正極、負極および分離膜は、リチウム二次電池の製造に通常的に用いられているものが全て使用され得る。
【0069】
一方、本発明のリチウム二次電池を構成する正極および負極は、通常の方法で製造されて使用され得る。
【0070】
(1) 正極
上記正極は、正極集電体上に正極合剤層を形成して製造し得る。上記正極合剤層は、正極活物質、バインダー、導電材および溶媒などを含む正極スラリーを正極集電体上にコーティングした後、乾燥および圧延して形成し得る。
【0071】
上記正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せず導電性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどが使用され得る。
【0072】
上記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物であって、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル又はアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム金属酸化物を含み得る。より具体的には、上記リチウム金属酸化物は、電池の容量特性および安定性を高めることができるという点において、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMnr1)O(ここで、0<p<1、 0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+ q1+r2=2)など)、又はリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3s2)O(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、MgおよびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3およびs2はそれぞれ自立的な元素の原子分率であって、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である)など)を含み得る。
【0073】
このような正極活物質は、その代表的な例として、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.35Mn0.28Co0.37)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)O、Li(Ni0.8Mn0.1Co0.1)O、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)Oなどが挙げられる。
【0074】
上記正極活物質の含量は、正極スラリー中の固形分全体の重量を基準にして90重量%~99重量%、具体的には93重量%~98重量%で含まれ得る。
【0075】
上記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、通常的に正極スラリー中の固形分の全体重量を基準にして1~30重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0076】
上記導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特に限定されない。例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、またはサーマルブラック等の炭素粉末、結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、またはグラファイトなどの黒鉛粉末、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維、フッ化炭素、アルミニウム、ニッケル粉末などの導電性粉末、酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用され得る。
【0077】
上記導電材は、通常、正極スラリー中の固形分の全体重量を基準にして1~30重量%で添加される。
【0078】
上記溶媒は、NMP(N-methyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含み得る。また、上記正極活物質および選択的にバインダーおよび導電材などを含むとき、好ましい粘度になる量で使用され得る。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含むスラリー中の固形分の濃度が10重量%~70重量%、好ましくは20重量%~60重量%になるように含まれ得る。
【0079】
(2) 負極
上記負極は、負極集電体上に負極合剤層を形成して製造し得る。上記負極合剤層は、負極集電体上に負極活物質、バインダー、導電材および溶媒などを含むスラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して形成し得る。
【0080】
上記負極集電体は、一般的に、3~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用され得る。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で使用され得る。
【0081】
また、上記負極活物質は、リチウム金属、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションし得る炭素物質、金属またはこれらの金属とリチウムの合金、金属酸化物、リチウムをドープおよび脱ドープし得る物質、および遷移金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1つ以上を含み得る。
【0082】
上記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションし得る炭素物質としては、リチウムイオン二次電池で一般的に使用される炭素系負極活物質であれば、特に制限なく使用し得る。その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを一緒に使用し得る。上記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状又は繊維状の天然黒鉛又は人造黒鉛のような黒鉛が挙げられる。上記非晶質炭素の例としてはソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェースピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0083】
上記金属又はこれらの金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムとの合金が使用され得る。
【0084】
上記金属酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、およびSnMe'Y(Me:Mn、Fe、Pb、Ge、Me':Al、B、P、Si、周期表の第1族、第2族、第3族の元素、ハロゲン、0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)からなる群から選択されるものを使用され得る。
【0085】
上記リチウムをドープおよび脱ドープし得る物質としては、Si、SiOx(0<x≦2)、Si-Y合金(上記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれる元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(上記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられる。また、これらのうちの少なくとも1つとSiOを混合して使用することもできる。上記元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、 Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0086】
上記遷移金属酸化物としては、リチウム含有チタン酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0087】
上記負極活物質は、負極スラリー中の固形分の全体重量を基準にして、80重量%~99重量%で含まれ得る。
【0088】
上記負極において、バインダーおよび導電材等は、上述した正極で用いられるものと同じ種類を使用し得る。
【0089】
上記溶媒は、水またはNMP、アルコールなどの有機溶媒を含むことができ、上記負極活物質および選択的にバインダーおよび導電材などを含むときに、好ましい粘度になる量で使用され得る。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含むスラリー中の固形分の濃度が50重量%~75重量%、好ましくは50重量%~65重量%になるように含まれ得る。
【0090】
(3) 分離膜
また、分離膜としては、有機分離膜または有機および無機物複合分離膜を使用し得る。
【0091】
上記有機分離膜は、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体等のようなポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独で、又はこれらを積層して使用し得る。または、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用し得る。
【0092】
上記有機および無機物の複合分離膜は、上記多孔性ポリオレフィン系分離膜の基材上に無機物粒子とバインダー高分子を含む多孔性コーティング層が塗布された有機/無機複合多孔性のSRS(Safety-Reinforcing Separators)分離膜を使用し得る。
【0093】
上記無機物粒子は、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子またはこれらの混合体を用いることが好ましい。代表的な例としては、BaTiO、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1である)、ハフニア(HfO)、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiCおよびこれらの混合物からなる群から選択された単一物または2種以上の混合物が挙げられる。
【0094】
本発明のリチウム二次電池の外形は特に制限がないが、缶を用いた円筒形、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などになり得る。
【0095】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を挙げて詳細に説明する。しかし、本発明に係る実施例は種々の異なる形態に変形され得るので、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業界において平均的な知識を有する者に、本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0096】
実施例1
<非水電解液の製造>
エチレンカーボネート(EC)、炭酸プロピレン(PC)、プロピオン酸エチル(EP)およびプロピルプロピオネート(PP)を重量比で20:10:25:45となるように混合して非水性有機溶媒を製造し、LiPFを濃度が1.0Mとなるように溶解させた。ここに、第1添加剤として、5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-allyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)を電解液の総重量を基準にして0.5重量%添加した後に混合して非水電解液を製造した。
【0097】
<電極の製造>
正極活物質(Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O)、導電材(カーボンブラック)およびバインダー(ポリビニリデンフルオリド)を90:5:5重量の割合で溶剤であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極活物質スラリー(固形分濃度50重量%)を製造した。上記正極活物質スラリーを厚さ10μmである正極集電体(Al薄膜)に塗布し、乾燥し、ロールプレス(roll press)を行って、正極を製造した。
【0098】
負極活物質(人造黒鉛)、バインダー(PVDF)、導電材(カーボンブラック)を95:2:3重量の割合で溶剤であるNMPに添加して負極活物質スラリー(固形分濃度60重量%)を製造した。負極活物質スラリーを厚さ8μmの負極集電体(Cu薄膜)に塗布し、乾燥し、ロールプレス(roll press)を行って、負極を製造した。
【0099】
<二次電池の製造>
上述の方法で製造した正極と負極をポリエチレン多孔性フィルムと共に順次に積層して電極組立体を製造した後、それを電池ケースに入れて上記非水電解液を注液し、密封してリチウム二次電池を製造した。
【0100】
実施例2
第1添加剤として、5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-allyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)を電解液の総重量を基準にして1.0重量%添加したことを除いては実施例1と同一に非水電解液および二次電池を製造した。
【0101】
実施例3
第1添加剤として、5-メチル-5-プロパルギルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-propargyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)を電解液の総重量を基準にして0.5重量%添加したことを除いては実施例1と同一に非水電解液および二次電池を製造した。
【0102】
比較例1
第1添加剤を溶媒に添加しなかったことを除いては、実施例1と同一に非水電解液および二次電池を製造した。
【0103】
比較例2
第1添加剤として、5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-allyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)を電解液の総重量を基準にして0.005重量%添加したことを除いては、実施例1と同一に非水電解液および二次電池を製造した。
【0104】
比較例3
第1添加剤として、5-メチル-5-アリルオキシカルボニル-1、3-ジオキサン-2-オン(5-Methyl-5-allyloxycarbonyl-1、3-dioxan-2-one、MACBD)を電解液の総重量を基準にして7重量%添加したことを除いては、実施例1と同一に非水電解液および二次電池を製造した。
【0105】
実験例1-常温寿命評価
上記実施例および比較例で製造された二次電池を常温(25℃)で0.5Cのレートで4.2Vまで定電流/定電圧の条件で充電を行い、0.5Cのレートで2.5Vに放電した。この時、上記充放電をPNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて行い、このとき測定された放電容量を初期放電容量として定義した。
【0106】
上記充放電過程を1サイクルとして合計200サイクルの充放電を行った後、測定された初期放電容量および200サイクル後の放電容量を下記式(1)に代入して容量維持率(capacity retention)を測定し、その結果を下記表1に記載した。
式(1):容量維持率(%)=(200サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0107】
ただし、比較例3の場合、添加剤が電解液に均一に溶解されず、評価が不可能であった。
【0108】
【表1】
【0109】
実験例2-高温貯蔵特性の評価
上記実施例および比較例で製造された二次電池を常温(25℃)で0.5Cのレートで4.2Vまで定電流/定電圧の条件で充電を行い、0.5Cのレートで2.5Vに放電した。この時、上記充放電をPNE-0506充放電器(製造社:(株)PNE溶液、5V、6A)を用いて行い、このとき測定された放電容量を初期放電容量として定義した。
【0110】
上記二次電池を60℃条件下で2週間を保管した後、同じ方法で測定された放電容量を下記式(2)に代入して容量維持率を測定し、その結果を下記表2に記載した。
式(2):容量維持率(%)=(2週間を保管後の放電容量/初期放電容量)×100
【0111】
【表2】
【0112】
上記表1および表2を参照すると、化学式1のような形態の添加剤が電解液に含まれた場合、具体的には化学式1a又は1bのような構造の添加剤を単独で使用するか、又は2種類を混合して使用した場合、添加剤を含まなかった比較例1と比べて200回充放電時の容量維持率および高温貯蔵時の容量維持率に優れていた。これは、添加剤が充放電過程で還元分解されて安定的なSEI皮膜を形成して、電解質と負極との間の界面の安定性が向上されたからであることが分かる。また、上記添加剤が添加されていないか、又は微量で添加された比較例2および3の場合、実施例と比べて容量維持率が減少したことが分かる。これは、添加剤の量が少なくて、目的とする効果を達成できなかったか、または添加剤が過剰に残っていて、添加剤が抵抗として作用したことがわかる。
【0113】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎないものであって、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で多様な修正および変形が可能といえる。したがって、本発明に開示された図面は、本発明の技術思想を限定するものではなく説明するためのものであり、このような図面によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈されるべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
【0114】
なお、本明細書において、上、下、左、右、前、後のような方向を示す用語が用いられたが、これらの用語は説明の便宜のためのものであり、対象となる物の位置や観測者の位置などによって変わり得ることは自明である。