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▶ ペレグリン オフサルミク ピーティーイー リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】脂肪細胞数を減少させる方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5575 20060101AFI20241125BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241125BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20241125BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61K31/5575
A61K9/127
A61K47/24
A61P3/06
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2022570124
(86)(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020037266
(87)【国際公開番号】W WO2021236128
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】16/880,531
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522446546
【氏名又は名称】ペレグリン オフサルミク ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー シー-ホーン
(72)【発明者】
【氏名】ホーデン ティナ
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129107(JP,A)
【文献】国際公開第2007/111806(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/138426(WO,A1)
【文献】特表2016-518416(JP,A)
【文献】特表2014-503560(JP,A)
【文献】特表2016-520561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脂肪を減少させるための組成物であって、リポソームに被包化されたラタノプロストを含み、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記沈着脂肪は、皮下沈着脂肪又は内臓沈着脂肪であり、
記沈着脂肪中の脂肪細胞数を5%~90%減少させる、組成物
【請求項2】
前記沈着脂肪中の脂肪細胞数は、10%~90%減少する、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記沈着脂肪の脂肪細胞数は、35%~90%減少する、請求項2に記載の組成物
【請求項4】
記沈着細胞中に直接注射れる、請求項1に記載の組成物
【請求項5】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項4に記載の組成物
【請求項6】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項5に記載の組成物
【請求項7】
記沈着脂肪0.5cm~1.0cmあたり体積25μL~75μlが注射される、請求項4に記載の組成物
【請求項8】
記沈着細胞に隣接する組織間隙中に注れる、請求項1に記載の組成物
【請求項9】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項8に記載の組成物
【請求項10】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項9に記載の組成物
【請求項11】
記沈着脂肪0.5cm~1.0cmあたり体積25μL~75μlが注射される、請求項8に記載の組成物
【請求項12】
前記沈着脂肪は、皮下沈着脂肪であり、前記組成物は、前記皮下沈着脂肪中に又は隣接して皮下注射れる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項12に記載の組成物
【請求項14】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項13に記載の組成物
【請求項15】
記沈着脂肪0.5cm~1.0cmあたり体積25μL~75μlが注射される、請求項12に記載の組成物
【請求項16】
対象において脂肪眼瞼を治療するための組成物であって、リポソームに被包化されたラタノプロストを含み、前記対象の眼瞼における沈着脂肪に注射され、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記組成物の有効量は、前記沈着脂肪中の脂肪細胞数を5%~90%減少させる、組成物
【請求項17】
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、10%~90%減少する、請求項16に記載の組成物
【請求項18】
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、35%~90%減少する、請求項17に記載の組成物
【請求項19】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項16に記載の組成物
【請求項20】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項19に記載の組成物
【請求項21】
記沈着脂肪0.5cm~1.0cmあたり体積25μL~75μlが注射される、請求項16に記載の組成物
【請求項22】
対象において眼球突出を治療するための組成物であって、リポソームに被包化されたラタノプロストを含み、前記対象の筋円錐内空間に注され、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記組成物の有効量は、前記筋円錐内空間の脂肪細胞数を少なくとも35%減少させる、組成物
【請求項23】
前記眼球突出は、甲状腺関連眼窩疾患の結果である、請求項22に記載の組成物
【請求項24】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項23に記載の組成物
【請求項25】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項24に記載の組成物
【請求項26】
前記対象は、グレーブス病又は橋本甲状腺炎に罹患している、請求項22に記載の組成物
【請求項27】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項26に記載の組成物
【請求項28】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項27に記載の組成物
【請求項29】
対象において上気道の過剰脂肪に関連した閉塞性睡眠時無呼吸を治療するための組成物であって、リポソームに被包化されたラタノプロストを含み、前記対象の上気道沈着脂肪に注され、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記組成物の有効量は、前記上気道沈着脂肪の脂肪細胞数を5%~90%減少させる、組成物
【請求項30】
前記上気道沈着脂肪は、口蓋、舌、又は咽頭に位置している、請求項29に記載の組成物
【請求項31】
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、10%~90%減少する、請求項29に記載の組成物
【請求項32】
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、35%~90%減少する、請求項30に記載の組成物
【請求項33】
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、請求項29に記載の組成物
【請求項34】
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、請求項33に記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
医学的症状の中には、或る解剖学的部位において脂肪量を減少させることが望ましいものが複数存在する。
【0002】
脂肪眼瞼(Steatoblepharon)とは、眼瞼脂肪体の前部脱出であり、目袋と称することが多く、これは、目の膨らんだ外観をもたらす。この症状には、眼瞼から沈着脂肪を除去する手術、すなわち、眼瞼形成術による治療が行われる。手術は、副作用を伴う可能性があり、副作用としては、例えば、感染、出血、目の乾燥と痛み、目を閉じにくくなる、目立つ瘢痕、眼筋の損傷、皮膚の変色、再手術の必要性、一時的なかすみ目、そして稀な場合として、視野の喪失がある。
【0003】
眼球突出は、目が眼窩でのその正常な位置に比べて前方に移動しているものとして定義され、これは、より重篤な症状である。眼球突出の最も一般的な原因は、甲状腺眼疾患であり、この場合、甲状腺機能の異常が、眼の周囲の筋肉、脂肪、及び他の組織の腫脹を引き起こす。制御されなかった場合、眼球突出は、瞬き時及び睡眠時に眼瞼が適切に閉じることができなくなるという結果をもたらし、角膜損傷を招く可能性がある。沈着脂肪を含む目周囲の組織の腫脹は、目が十分に働くことを妨げる可能性があり、このことが、目の位置及び目の動きに影響して複視を招く。重篤な場合では、目の背後の組織、筋肉、及び沈着脂肪の炎症及び拡大により、視神経が圧迫され、視力喪失をもたらす。
【0004】
眼球突出は、眼窩除圧術により治療可能である。この手術に関連するリスクとして、複視、流涙症、鼻涙管閉塞、瘢痕、鼻中又は目周囲の出血、目又は副鼻腔感染症、視力喪失、視神経損傷、脳脊髄液漏出、眼瞼位置異常、目周囲の疼痛又は痺れ、角膜の引っ掻き傷、及び結膜の腫脹が挙げられる。
【0005】
眼球突出の代替治療は、テプロツムマブ(TEPEZZA(商標))の静脈点滴である。副作用として、筋肉の痙攣又は攣縮、悪心、脱毛、下痢、疲労感、高血糖、聴覚障害、味覚の変化、頭痛、及び皮膚の乾燥が挙げられる。テプロツムマブは、既存の炎症性腸疾患、例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎症候を悪化させる可能性もある。
【0006】
さらに、上気道の過剰沈着脂肪に関連した閉塞性睡眠時無呼吸の専用治療は存在しない。肥満患者では、肥満手術が行われることが多い。手術は、閉塞性睡眠時無呼吸を改善する可能性があるものの、どのような手術にも付きものである典型的なリスクを伴う。
【0007】
脂肪眼瞼、眼球突出、及び閉塞性睡眠時無呼吸等の症状用の治療であって、既存の方法の副作用を伴わずに過剰沈着脂肪を除去する治療を開発する必要が存在する。
【発明の概要】
【0008】
上記の必要を満たすため、in vivoで皮下沈着脂肪又は内臓沈着脂肪を減少させる方法が提供される。本方法は、沈着脂肪に、リポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を有効量で接触させることにより行われる。リポソームは、卵ホスファチジルコリン(EggPC)又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)単独で形成されており、有効量の組成物は、沈着脂肪の脂肪細胞数を5%~90%減少させる。
【0009】
対象の眼瞼の沈着脂肪に、EggPC又はPOPCリポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を注射することにより、対象において脂肪眼瞼を治療する類似の方法が提供される。組成物は、沈着脂肪の脂肪細胞数を5%~90%減少させる。
【0010】
同じく開示されるのは、対象の目の筋円錐内(intraconal)空間に、上述のEggPC又はPOPCリポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を注射することにより、眼球突出を治療する方法である。この方法を行うことで、筋円錐内空間の脂肪細胞数の少なくとも35%減少がもたされる。
【0011】
さらに、提供されるのは、上気道の過剰脂肪に関連した閉塞性睡眠時無呼吸の治療法である。この方法は、上気道沈着脂肪に、EggPC又はPOPCリポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を有効量で注射し、それにより上気道沈着脂肪の脂肪細胞数を5%~90%減少させることで達成される。
【0012】
本発明の複数の実施形態の詳細を、以下の説明及び図面の両方に記載する。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、明細書から、及び添付の特許請求の範囲からも明らかとなるだろう。最後に、本明細書中で引用される全ての参照は、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。
【0013】
以下の説明は、添付の図面について言及する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】前駆脂肪細胞、分化脂肪細胞、及び分化脂肪細胞をEggPC-ラタノプロストリポソーム組成物(LIPOLat-E)で処理したものを、オイルレッドO(ORO)で脂質染色した光学顕微鏡画像を示す。中性脂質は赤色に染色され、核は青色に染色される(倍率200倍)。
図1B】指定のオイルレッドO染色した前駆脂肪細胞、分化脂肪細胞、及び分化脂肪細胞をEggPC-ラタノプロストリポソーム組成物(LIPOLat-E)で処理したものの492nmでの吸光度(OD492)を示す棒グラフである。エラーバーは、標準偏差である。
図2A】9日間(暗色バー)又は15日間(明色バー)培養して前駆脂肪細胞から分化させた脂肪細胞をビヒクル処理した場合(対照)又は指定の製剤で処理した場合の、脂肪細胞中のペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ(PPAR-γ)の相対mRNA発現を示す棒グラフである。p<0.05、対照(9日間分化後)群と比較;p<0.05、対照(15日間分化後)群と比較。
図2B】9日間(暗色バー)又は15日間(明色バー)培養して前駆脂肪細胞から分化させた脂肪細胞を、ビヒクルで処理した場合(対照)又は指定の製剤で処理した場合の、脂肪細胞中のCCAAT-エンハンサー-結合タンパク質α(C/EBPα)の相対mRNA発現を示す棒グラフである。p<0.05、対照(9日間分化後)群と比較。
図2C】9日間(暗色バー)又は15日間(明色バー)培養して前駆脂肪細胞から分化させた脂肪細胞を、ビヒクルで処理した場合(対照)又は指定の製剤で処理した場合の、脂肪細胞中のリポタンパク質リパーゼ(LPL)の相対mRNA発現を示す棒グラフである。
図3】リン酸緩衝食塩水(PBS;対照)、ラタノプロスト、EggPC-ラタノプロストリポソーム組成物(LIPOLat-E)、POPC-ラタノプロストリポソーム組成物(LIPOLat-P)、非担持EggPCリポソーム(LipoLat-E対照)、及び非担持POPCリポソーム(LipoLat-P対照)を注射された鼠径部脂肪体の重量変化を、対側の未注射脂肪体に対して正規化したものを示す棒グラフである。
図4A】未処置ラット目の眼窩領域を通る切片の4倍拡大光学顕微鏡像である。脂肪細胞は、+記号で印を付けてある。
図4B】EggPC-ラタノプロスト製剤の球後注射7日後の、ラット目(図4Aに示す目の対側)の眼窩領域を通る切片の4倍拡大光学顕微鏡像である。脂肪細胞は、+記号で印を付けてある。
図4C】POPC-ラタノプロスト製剤の球後注射7日後の、ラット目の眼窩領域を通る切片の4倍拡大光学顕微鏡像である。脂肪細胞は、+記号で印を付けてある。
図4D】遊離ラタノプロストの球後注射7日後の、ラット目の眼窩領域を通る切片の4倍拡大光学顕微鏡像である。脂肪細胞は、+記号で印を付けてある。
図4E】デオキシコール酸(DCA)の球後注射7日後の、ラット目の眼窩領域を通る切片の4倍拡大光学顕微鏡像である。脂肪細胞は、+記号で印を付けてある。
図4F】未処置ラット目(図4Eに示す目の対側)の眼窩領域を通る切片の4倍拡大光学顕微鏡像である。脂肪細胞は、+記号で印を付けてある。
図5A】指定の製剤の球後注射により対側の目が処置されたラットの未処置目における眼圧(IOP)を示す棒グラフである。IPOは、注射前(各対における第一のバー)及び注射3週間後(各対における第二のバー)に測定した。
図5B】指定の製剤の球後注射により目が処置されたラットの眼圧(IOP)を示す棒グラフである。IPOは、注射前(各対における第一のバー)及び注射3週間後(各対における第二のバー)に測定した。
図6】A~Eは、(A)EggPC-ラタノプロスト、(B)POPC-ラタノプロスト、(C)ラタノプロスト、(D)デオキシコール酸の球後注射21日後の、ラット目の眼窩領域を通る切片の光学顕微鏡像である。(E)は、未注射目を通る切片である。左側パネルは、1倍拡大を示し、右側画像は4倍拡大を示す。
図7】A~Eは、それぞれ図6のA~Eに示す画像からコンピューター生成させた切り抜き画像であり、眼窩脂肪の領域を定め、個別の脂肪細胞を同定する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記に要約したとおり、in vivoで沈着脂肪、例えば、皮下沈着脂肪又は内臓沈着脂肪を減少させる方法が提供される。本方法は、沈着脂肪にリポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を接触させることにより行われる。接触工程は、組成物を沈着脂肪に直接注射することにより達成可能である。あるいは、組成物は、沈着脂肪に隣接する組織間隙に注射することができる。特定の方法において、沈着脂肪は、皮下沈着脂肪であり、組成物は、皮下沈着脂肪中に又はその隣に、皮下注射される。沈着脂肪を覆う皮膚への組成物の外用塗布も、本発明の範囲内にある。
【0016】
上記方法で使用される組成物は、EggPC又はPOPC単独で形成されたリポソームに被包化されたラタノプロストを含む。言い換えると、リポソームは、他のどのような成分も含まず、他の成分とは、例えば、脂質及びステロールである。ラタノプロストを担持したEggPCリポソーム及びPOPCリポソームは、それぞれ、米国特許第10,272,040号及び同第9,956,195号に記載のものが可能である。組成物も、これら2つの米国特許に記載されるとおりに調製可能である。
【0017】
組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLの範囲(例えば、0.5mg/mL、1.0mg/mL、1.5mg/mL、2.0mg/mL、2.5mg/mL、及び3.0mg/mL)が可能である。範囲の1つの例において、ラタノプロストの濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mL(例えば、1.0mg/mL、1.1mg/mL、1.2mg/mL、1.3mg/mL、1.4mg/mL、1.5mg/mL、1.6mg/mL、1.7mg/mL、1.8mg/mL、1.9mg/mL、2.0mg/mL、2.1mg/mL、2.2mg/mL、及び2.3mg/mL)である。
【0018】
脂肪細胞数を減少させるのに必要な組成物の量は、沈着脂肪の寸法によって変化する。特定の方法において、沈着脂肪0.5cm~1.0cmあたり体積25μL~75μlの上記組成物が注射される。
【0019】
上記方法で沈着脂肪に適用される組成物の量は、脂肪細胞数を5%~90%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、及び90%)減少させるのに有効である。脂肪細胞数の減少は、10%~90%又は35%~90%の範囲になる可能性がある。
【0020】
発明の概要のセクションに記載されるのは、上記のリポソームラタノプロスト組成物を、対象の眼瞼の沈着脂肪に注射することにより、脂肪眼瞼を治療する方法である。組成物の注射は、上記の方法においてそうであるとおり、沈着脂肪の脂肪細胞数を5%~90%(例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、及び90%)減少させる。ラタノプロスト組成物及びその濃度も、上記の脂肪減少法について記載されるものと同じである。例えば、組成物中のラタノプロストの濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLの範囲であり、沈着脂肪0.5cm~1.0cmあたり体積25μL~75μlの組成物が注射される。
【0021】
上記の繰り返しになるが、眼球突出を治療する方法も提供される。本方法は、対象の目の筋円錐内空間に、上述のEggPC又はPOPCリポソーム被包化ラタノプロスト組成物を注射することを特徴とする。
【0022】
この方法の例において、眼球突出は、甲状腺関連眼窩疾患の結果である。別の例において、眼球突出である患者は、グレーブス病又は橋本甲状腺炎に罹患している。
【0023】
眼球突出の治療法において、注射される組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mL(例えば、1.0mg/mL~2.3mg/mL)の範囲である。この注射は、筋円錐内空間における脂肪細胞数の減少を少なくとも35%かつ最高90%(例えば、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、及び90%)でもたらす。
【0024】
最後に、上気道沈着脂肪に関連した閉塞性睡眠時無呼吸を治療する上述の方法は、ラタノプロスト濃度が0.5mg/mL~3.0mg/mL(例えば、1.0mg/mL~2.3mg/mL)であるEggPC又はPOPCリポソーム被包化ラタノプロスト組成物を、上気道沈着脂肪に注射することにより行われる。
【0025】
組成物の注射は、上気道沈着脂肪における脂肪細胞数の5%~90%(例えば、10%~90%及び35%~90%)減少をもたらす。
【0026】
上気道沈着脂肪は、口蓋、舌、及び咽頭に位置することが可能であるが、これらに限定されない。
【0027】
更に詳述することなしに、当業者であれば、本明細書の開示に基づき、本開示を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の具体的な実施例は、単に説明的なものであって、決して本開示の残りの部分を限定するものではないと解釈されるべきである。本明細書で引用される特許文献を含む全ての刊行物は、引用することによりその全体が本明細書の一部をなす。
[項1]
in vivoで沈着脂肪を減少させる方法であって、前記方法は、前記沈着脂肪に、リポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を有効量で接触させることを含み、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記沈着脂肪は、皮下沈着脂肪又は内臓沈着脂肪であり、前記組成物の前記有効量は、前記沈着脂肪中の脂肪細胞数を5%~90%減少させる、方法。
[項2]
前記沈着脂肪中の脂肪細胞数は、10%~90%減少する、項1に記載の方法。
[項3]
前記沈着脂肪の脂肪細胞数は、35%~90%減少する、項2に記載の方法。
[項4]
前記接触工程は、前記沈着細胞中に前記組成物を直接注射することにより行われる、項1に記載の方法。
[項5]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項4に記載の方法。
[項6]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項5に記載の方法。
[項7]
前記組成物は、前記沈着脂肪0.5cm3~1.0cm3あたり体積25μL~75μlが注射される、項4に記載の方法。
[項8]
前記接触工程は、前記沈着細胞に隣接する組織間隙中に前記組成物を注射することにより行われる、項1に記載の方法。
[項9]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項8に記載の方法。
[項10]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項9に記載の方法。
[項11]
前記組成物は、前記沈着脂肪0.5cm3~1.0cm3あたり体積25μL~75μlが注射される、項8に記載の方法。
[項12]
前記沈着脂肪は、皮下沈着脂肪であり、前記接触工程は、前記組成物を前記皮下沈着脂肪中に又は隣接して皮下注射することにより行われる、項1に記載の方法。
[項13]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項12に記載の方法。
[項14]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項13に記載の方法。
[項15]
前記組成物は、前記沈着脂肪0.5cm3~1.0cm3あたり体積25μL~75μlが注射される、項12に記載の方法。
[項16]
対象において脂肪眼瞼を治療する方法であって、前記方法は、脂肪眼瞼の治療を必要としている対象を同定することと、前記対象の眼瞼における沈着脂肪に、リポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を有効量で注射することとを含み、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記組成物の前記有効量は、前記沈着脂肪中の脂肪細胞数を5%~90%減少させる、方法。
[項17]
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、10%~90%減少する、項16に記載の方法。
[項18]
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、35%~90%減少する、項17に記載の方法。
[項19]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項16に記載の方法。
[項20]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項19に記載の方法。
[項21]
前記組成物は、前記沈着脂肪0.5cm3~1.0cm3あたり体積25μL~75μlが注射される、項16に記載の方法。
[項22]
対象において眼球突出を治療する方法であって、前記方法は、眼球突出の治療を必要としている対象を同定することと、前記対象の筋円錐内空間に、リポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を有効量で注射することとを含み、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記組成物の前記有効量は、前記筋円錐内空間の脂肪細胞数を少なくとも35%減少させる、方法。
[項23]
前記眼球突出は、甲状腺関連眼窩疾患の結果である、項22に記載の方法。
[項24]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項23に記載の方法。
[項25]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項24に記載の方法。
[項26]
前記対象は、グレーブス病又は橋本甲状腺炎に罹患している、項22に記載の方法。
[項27]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項26に記載の方法。
[項28]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項27に記載の方法。
[項29]
対象において上気道の過剰脂肪に関連した閉塞性睡眠時無呼吸を治療する方法であって、前記方法は、閉塞性睡眠時無呼吸の治療を必要としている対象を同定することと、前記対象の上気道沈着脂肪に、リポソームに被包化されたラタノプロストの組成物を有効量で注射することとを含み、前記リポソームは、卵ホスファチジルコリン又はパルミトイルオレオイルホスファチジルコリン単独で形成されており、前記組成物の前記有効量は、前記上気道沈着脂肪の脂肪細胞数を5%~90%減少させる、方法。
[項30]
前記上気道沈着脂肪は、口蓋、舌、又は咽頭に位置している、項29に記載の方法。
[項31]
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、10%~90%減少する、項29に記載の方法。
[項32]
前記沈着脂肪の前記脂肪細胞数は、35%~90%減少する、項30に記載の方法。
[項33]
前記組成物中のラタノプロスト濃度は、0.5mg/mL~3.0mg/mLである、項29に記載の方法。
[項34]
前記ラタノプロスト濃度は、1.0mg/mL~2.3mg/mLである、項33に記載の方法。
【実施例
【0028】
実施例1:前駆脂肪細胞分化の阻害
脂肪細胞由来間葉系幹細胞、すなわち、前駆脂肪細胞を、確立されたプロトコルに従って、培養し、脂肪細胞へと分化させた。簡単に述べると、脂肪細胞由来間葉系幹細胞を、ATCCから入手し(PCS500011(商標)、マナッサス、VA)、間葉系幹細胞基礎培地(ATCC(商標)PCS500030(商標))中で、増殖キット(ATCC(商標)PCS500040(商標))を用いて、5%CO中37℃で培養した。分化を誘導するため、ADMSC培養物を70%~80%の集密度に成長させ、培地を脂肪生成分化培地(StemPro(商標)脂肪生成分化キット;Gibco Life Technologies(商標)、USA)に置き換えた。培地は週に2回交換した。
【0029】
9日後及び15日後、播種した細胞は、それぞれ部分的及び完全に脂肪細胞へと分化した。部分的及び完全分化脂肪細胞は両方とも、脂肪滴を蓄積していた。播種後15日目、脂肪細胞を、ビヒクルで、又はEggPCリポソーム被包化ラタノプロスト(EggPC-ラタノプロスト;10μg/mLのラタノプロストに等しい)で、24時間処理した。脂質の存在は、オイルレッドO染色後の光学顕微鏡により観察し、492nmでの吸光度を測定することにより定量した。結果を、それぞれ図1A及び図1Bに示す。
【0030】
脂肪細胞をEggPC-ラタノプロストで処理すると、ビヒクル処理した細胞と比べた場合に、脂肪滴に貯蔵される脂質の量が5分の1に減少した。
【0031】
処理及び未処理脂肪細胞における遺伝子発現を、定量的リアルタイムPCR解析により検査した。脂肪細胞の総RNAを、RNAzol(商標)RT試薬(Molecular Research Center, Inc.、シンシナティ、OH、USA)を用いて単離し、QuantiTect逆転写キット(Qiagen Inc.、チャッツワース、CA、USA)を用いて、供給元説明書に従って逆転写した。脂肪生成促進遺伝子であるC/EBPα、PPARγ、及びLPLのメッセンジャーRNA発現を、LightCycler(商標)480リアルタイムPCRシステム(Roche Applied Science、ドイツ)でFastStart Universal SYBR Green Master Mix(Roche Applied Science)を用いて、リアルタイムPCR(RT-PCR)の定量分析により特定した。熱サイクル条件は、95℃で10分間、続いてサイクル(95℃で10秒、50℃で5秒、及び72℃で13秒)を55回であった。全ての試料は、2つ組で試験し、相対mRNA発現を、ΔΔC法により計算し、ハウスキーピング遺伝子の発現に対して正規化した。結果を図2A図2Cに示す。
【0032】
EggPC-ラタノプロスト、POPC-ラタノプロスト、及び遊離ラタノプロストは、それぞれが、脂肪細胞促進遺伝子C/EBPα、PPARγ、及びLPLの発現を抑制した。
【0033】
実施例2:in vivo脂肪減少
リポソーム被包化ラタノプロストがin vivoで沈着脂肪を減少させる能力を、マウスの鼠径部脂肪体に直接注射することにより試験した。
【0034】
3匹の動物それぞれに対し、1つの鼠径部脂肪体にビヒクル100μL、ラタノプロスト100μgを含有する100μL、ラタノプロスト100μgを含有するEggPC-ラタノプロスト100μL、又はラタノプロスト100μgを含有するPOPC-ラタノプロスト100μLを注射した。7日後、マウスを屠殺し、注射した鼠径部脂肪体及び対側の未注射脂肪体両方の重量を測定した。結果を図3に示す。
【0035】
遊離ラタノプロストの単回注射は、対側の未注射鼠径部脂肪体と比べた場合、7日後、注射した鼠径部脂肪体において何ら重量減少をもたらさなかった。実際のところ、ラタノプロスト注射後に脂肪体重量は増加していた。
【0036】
驚くべきことに、EggPC-ラタノプロストの注射は、未注射脂肪体と比べた場合、注射の7日後、注射した鼠径部脂肪体の重量を9%と有意に減少させた。
【0037】
実施例3:眼窩筋円錐内領域の脂肪細胞数の短期的減少
遊離ラタノプロスト、EggPC-ラタノプロスト、及びPOPC-ラタノプロストをそれぞれ、ラットの目の眼窩に球後注射することにより導入して、筋円錐内沈着脂肪に対するその効果を確認した。陽性対照として、デオキシコール酸(DCA;KYBELLA(商標))を、同じく注射した。DCAは、合衆国食品医薬品局により、下顎での脂肪細胞減少用に認可されたものである。
【0038】
6匹のラットの、片方の目に、治療薬それぞれを注射した。各動物の対側の目には注射せず、したがって対側の目は陰性対照としての役割を果たした。各群の動物の投薬量及び注射体積を、以下の表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
注射後7日目に筋円錐内沈着脂肪に存在する脂肪細胞の数を、組織病理学検査画像のコンピューター解析により計数し、対側の未注射目の脂肪細胞数と比較した。結果を、図4A図4Fに、及び以下の表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
結果から、EggPC-ラタノプロスト及びPOPC-ラタノプロストの注射は、単回注射後の脂肪細胞数の減少に最も有効であったことが示された。
【0043】
実施例4:ラットモデルにおける、眼窩脂肪への球後注射
材料
遊離ラタノプロスト、EggPC-ラタノプロスト、POPC-ラタノプロスト、及びDCAをそれぞれ、ラットの目の眼窩に球後注射することにより導入し、3週間にわたり筋円錐内沈着脂肪に対するその効果を確認した。
【0044】
EggPC-ラタノプロスト及びPOPC-ラタノプロストは、1mg/mLのラタノプロストを含有する滅菌液として調製し、各溶液0.5mLを、バイアル中2℃~8℃で貯蔵した。
【0045】
XALATAN(商標)は、ラタノプロストの透明、等張性、緩衝化、貯蔵無色溶液(50μg/mL)である。これは、5mLの透明ボトルに入った2.5mL溶液として供給され、2℃~8℃で貯蔵した。
【0046】
KYBELLA(商標)(DCA)は、2mLバイアルに入った10mg/mLの滅菌液として入手し、20℃~25℃で貯蔵した。
【0047】
試験薬物を、使用前に最短で30分間、室温で昇温させた。無菌技法を用いて、貯蔵バイアルから直接、投薬シリンジに詰めた。
【0048】
実験プロトコル
8週齢~10週齢のオスLewisラット(ラッタス・ノーベギカス(Rattus norvegicus))24匹を、試験に使用した。試験開始時のラットの重量は、250g~300gの範囲であった。
【0049】
類似した群平均体重を達成するように設計された選択を用いて、薬物投与の少なくとも1日前に、4つの群のそれぞれに6匹のラットを割り当てた。4つの群を、実施例3のとおり、及び上記の表1に示すとおりに処置した。群A~群Dの動物の体重を、注射前及びその後毎週測定した。
【0050】
ラットを麻酔し、30ゲージ針を用いて、薬物を、各動物の右眼窩の球後空間に注射した。左眼窩は、対側の対照としての役割を担った。全てのラットは、合併病変なく麻酔から覚醒した。
【0051】
眼圧(IOP)測定は、ラット全24匹のそれぞれの目で注射前及び注射3週間後に行った。
【0052】
注射3週間後である21日目、4%パラホルムアルデヒドを用いた心臓灌流によりラットを安楽死させた。灌流後、各ラットを断頭し、頭部を、2日間、10%ホルマリン液に入れておいた。メスで、各眼窩を、骨膜下から慎重に摘出し、10%ホルマリン液に戻して1日間入れておき(1群あたり3匹の動物から6つの眼窩)、残りの眼窩は、10%ホルマリン液に戻して2週間入れておいた。摘出した眼窩を、パラフィンに包埋し、切断して5μm切片にした。筋円錐内脂肪及び視神経周辺を中心とする切片を、熟練した眼科病理学者及び二次評価者が、盲検様式で、組織検査用にヘマトキシリンイオシン染色した。
【0053】
試料分析
切片を、視神経損傷、眼窩脂肪の萎縮、脂肪細胞密度、及び細胞毒性について、例えば、脂肪細胞溶解、血管の損傷及び修復、好中球性炎症、局在する好中球の溶解、出血、脂質湖(lipid lake)形成、及び血管新生により証拠立てることで組織学的に検査した。
【0054】
眼窩切片の筋円錐内脂肪を、光学顕微鏡下で検査し、更なる分析用に画像をスキャニングした。ImageJソフトウェア(Rasband W.S., 米国国立衛生研究所、ベセスダ、MD)を用いて、筋円錐内眼窩脂肪の範囲を切り抜き、脂肪細胞を計数して、以前に記載された方法を用いて脂肪細胞密度を特定した。Park et al., 2011, Jpn. J. Ophthalmol. 55:22-27を参照。筋円錐内眼窩脂肪範囲の脂肪細胞密度を計算し、両側スチューデントのt検定により群間で比較した。
【0055】
MATLAB(Mathworks、ネイティック、MA)で実行される最大値安定極値領域(maximally stable extremal region)に基づくセグメンテーションアルゴリズムを用いて、脂肪細胞寸法の不均一性を、筋円錐内脂肪光の切り抜き画像で分析した。VL_FEATと名付けられた最大値安定極値領域アルゴリズムを用いて、パラメーターを、デルタ=1、最大変動=0.2、最小多様性=0.5として極値領域を見つけた。最大値安定極値領域から決定された領域で寸法が10ピクセル未満又は偏心が0.9超であるものを、偽陽性として廃棄した。各画像の平均分割脂肪細胞寸法を計算し、スチューデントのt検定を用いて群を比較した。
【0056】
結果
IOPは、ナイーブ(未注射)対照の目において安定したままであり、3週間の実験プロトコル中、IOPに有意な変化はなかった。図5Aを参照。EggPC-ラタノプロスト、POPC-ラタノプロスト、及びラタノプロストの球後注射を受けた目のIOPも、3週間安定したままであった。図5Bを参照。DCAを注射されたラットのIOPは、IOPの有意な上昇を示した。同上参照。
【0057】
画像定量分析は、球後脂肪複合体の面積が、POPC-ラタノプロスト、ラタノプロスト、及びDCAの注射後には有意に増加したが、EggPC-ラタノプロストの注射後には増加しなかったことを示した。以下の表3を参照。
【0058】
【表3】
【0059】
理論には固執しないが、球後脂肪複合体の面積の増加は、脂肪細胞、線維芽細胞、又はT細胞の減少と連動した外眼筋肉体積の増加に由来すると思われる。異なる製剤を注射した際の面積変化の差は、筋肉及び脂肪組織の再造形が個別の速度で生じることに由来する可能性がある。
【0060】
画像定量分析は、注射した目全ての脂肪細胞の密度が有意に上昇したことも明らかにした。結果を以下の表4に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
4つの試験群のうち、POPC-ラタノプロストを注射した群は、最も高い増加パーセントを示した(64%)。
【0063】
画像分析により、脂肪細胞絶対数も得た。結果を、以下の表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
POPC-ラタノプロスト注射は、他のどの試験処置と比較した場合にも、脂肪細胞数の最大減少(68%)を誘導した。
【0066】
更なる統計分析から、POPC-ラタノプロストが誘導する脂肪細胞減少は、他のどの処置が誘導する減少とも有意に異なっていたことが明らかとなった。以下の表6を参照。
【0067】
【表6】
【0068】
眼窩組織の組織病理学的評価から、注射した眼窩とナイーブ対照のどちらにも、炎症細胞浸潤はなかったことが明らかとなった。光学顕微鏡定量分析から、眼窩脂肪は、ナイーブ対照の検体において影響を受けていないように見えることが示された。図6Eを参照。
【0069】
対照的に、注射した目では、単位面積あたりの脂肪細胞密度が高い、小さな不規則形状の断片化脂肪細胞が見られた。図6A図6Dを参照。この知見は、筋円錐内脂肪の萎縮を示唆した。
【0070】
注射した目由来のこれら検体のコンピューター支援型形態学的解析は、眼窩脂肪の萎縮を、ナイーブ対照(例えば、図7Eを参照)と比較した場合に筋円錐内空間の脂肪細胞密度及び不均一性が有意に上昇(図7A図7Dを参照)したことと併せて実証した。
【0071】
まとめると、EggPC-ラタノプロスト、POPC-ラタノプロスト、ラタノプロスト、及びDCAの眼窩注射は、ナイーブな対側の対照眼窩と比較した場合、筋円錐内空間に密に詰まった脂肪細胞間での不均一性をより高める結果となった。予想外だったのは、2種の被包型ラタノプロストの間の類似性にもかかわらず、7日間試験(実施例3)では、EggPC-ラタノプロストが、脂肪細胞数の減少についてPOPC-ラタノプロストよりもはるかに有効であったが、それでも21日間試験(実施例4)は、POPC-ラタノプロストの方がEggPC-ラタノプロストよりも有効であったという反対の結果を明らかにしたことであった。
【0072】
実施例5:脂肪眼瞼管理の臨床試験
単一施設で20人の対象を採用する。各対象には、臨床的に顕著な下眼瞼の脂肪眼瞼、すなわち、目袋がある。
【0073】
POPC-ラタノプロスト(1mg/mlのラタノプロスト)120μg~240μgの単回注射を、重篤度の高い方の目の下眼瞼に行う。重篤度の低い方の眼瞼には、同じ組成だがラタノプロストが欠けている溶液を同体積で注射する。
【0074】
POPC-ラタノプロストを下眼瞼に注射する際の安全性及び忍容性を、12週間の期間にわたり分析する。POPC-ラタノプロストの薬物動態もまた、同じ期間中に測定する。
【0075】
その他の実施形態
本明細書に開示されるあらゆる特徴は、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書に開示されるそれぞれの特徴は、同じ目的、同等の目的又は同様の目的を担う代替的な特徴により置き換えることができる。特段の定めがない限り、開示されるそれぞれの特徴は、包括的な一連の同等の特徴又は同様の特徴の1つの例であるにすぎない。
【0076】
上記説明から、当業者は本発明の必須の特性を容易に把握することができ、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に様々な変化及び変更を加えることで、本発明を様々な用途及び条件に適合させることができる。したがって、その他の実施形態も添付の特許請求の範囲の範囲内である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図6
図7