IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社新川の特許一覧

特許7592331ワイヤボンディング装置及び該装置の較正方法
<>
  • 特許-ワイヤボンディング装置及び該装置の較正方法 図1
  • 特許-ワイヤボンディング装置及び該装置の較正方法 図2
  • 特許-ワイヤボンディング装置及び該装置の較正方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ワイヤボンディング装置及び該装置の較正方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
H01L21/60 321Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023045652
(22)【出願日】2023-03-22
(65)【公開番号】P2024135120
(43)【公開日】2024-10-04
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】笠間 広幸
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-010510(JP,A)
【文献】特開2017-216314(JP,A)
【文献】特開平11-345835(JP,A)
【文献】特開平08-203955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-H01L 21/449
H01L 21/60 -H01L 21/607
B06B 1/00 -B06B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤボンディング装置の機種間で超音波ホーンが発する超音波振動の出力の差異を較正する方法であって、
ワイヤにフリーエアボールを形成してボンディング対象に当接させること、
前記フリーエアボールに加えている荷重を測定すること、
前記フリーエアボールに前記超音波ホーンを用いて前記超音波振動を加えること、
前記超音波振動によって前記荷重が最小値を経て設定値になるまでの荷重変化を測定すること、及び、
前記荷重変化における最小値と前記設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくように、前記超音波ホーンの特性に関連するワイヤボンディング装置の設定項目の値を調整すること、を含み、
前記差分が前記標準を含む規定の範囲内になるまで、前記ボンディング対象に当接させること、前記加えている荷重を測定すること、前記超音波振動を加えること、及び、前記荷重変化を測定すること、前記設定項目の値を調整すること、の手順を繰り返す
ワイヤボンディング装置の較正方法。
【請求項2】
前記荷重変化を測定することにおいて、前記荷重が前記設定値に近づくようにフィードバック制御することを含む、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置の較正方法。
【請求項3】
前記ワイヤボンディング装置は、前記荷重を実測する荷重センサを備え、
前記荷重変化は、前記荷重センサの実測値によって測定する、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置の較正方法。
【請求項4】
前記ワイヤボンディング装置は、前記フリーエアボールを押圧するボンディングツールと、該ボンディングツールを駆動するモータと、を備え、
前記荷重変化は、前記モータに供給した電流値によって測定する、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置の較正方法。
【請求項5】
前記設定項目の値を調整することにおいて、前記超音波ホーンに接続された超音波振動子に供給する設定電流及び前記超音波振動子に印加する設定電圧の少なくとも一方を調整する、
請求項1に記載のワイヤボンディング装置の較正方法。
【請求項6】
複数のワイヤボンディング装置の機種間で超音波ホーンが発する超音波振動の出力の差異を較正する方法であって、
ワイヤにフリーエアボールを形成してボンディング対象に当接させること、
前記フリーエアボールに加えている荷重を測定すること、
前記フリーエアボールに前記超音波ホーンを用いて前記超音波振動を加えること、
前記超音波振動によって前記荷重が最小値を経て設定値になるまでの荷重変化を測定すること、及び、
前記荷重変化における最小値と前記設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくように、前記超音波ホーンの特性に関連するワイヤボンディング装置の設定項目の値を調整すること、を含み、
規定の回数に到達するまで、前記ボンディング対象に当接させること、前記加えている荷重を測定すること、前記超音波振動を加えること、及び、前記荷重変化を測定すること、前記設定項目の値を調整すること、の手順を繰り返す
イヤボンディング装置の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤボンディング装置において超音波ホーンが発する超音波振動の出力の較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置に取り付けられている超音波ホーンの固有振動数は、超音波ホーンとホルダとの組立て精度、超音波ホーンをホルダに固定する締付けねじのトルク等の要因に影響され、超音波ホーンの振幅は、超音波ホーンの固有振動数、超音波振動を発振して超音波ホーンに伝播させる超音波振動子の個体差等の要因に影響される。以下の説明において、超音波ホーンの振幅を左右するそれらの要因を超音波ホーンの特性と呼ぶ。
【0003】
複数のワイヤボンディング装置を設置したとき、設定項目に同じ値を入力しても1号機と2号機との機種間で超音波ホーンが発する超音波振動の出力に差異が生じる。生産ラインを稼働させる準備として、超音波ホーン振幅等によって決まる超音波振動の出力が同じになるように較正を行う必要がある。また、超音波ホーンを交換したときも、交換前と交換後とで超音波振動の出力に差異が生じる。交換後に再度較正を行う必要がある。
【0004】
複数のワイヤボンディング装置の機種間で超音波振動の出力を較正する方法の一例として、特許文献1には、フリーエアボールが押し潰される際の高さ変化から超音波ホーンが発する超音波振動の出力を測定して較正する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第9153554号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、フリーエアボールが押し潰される際の高さ変化は、上記した超音波ホーンの特性以外の要因にも更に影響される。超音波振動の出力を簡易に較正するために、それらの要因を排除してより確実に超音波ホーンの特性を可視化したい。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、超音波ホーンが発する超音波振動の出力を簡易に較正できるワイヤボンディング装置の較正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、超音波ホーンが発する超音波振動の出力を較正する方法である。ワイヤボンディング装置の較正方法は、ワイヤにフリーエアボールを形成してボンディング対象に当接させること、フリーエアボールに加えている荷重を測定すること、フリーエアボールに超音波ホーンを用いて超音波振動を加えること、超音波振動によって荷重が最小値を経て設定値になるまでの荷重変化を測定すること、及び、荷重変化における最小値と設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくようにワイヤボンディング装置の設定項目の値を調整すること、を含んでいる。
【0009】
本発明の他の一態様のワイヤボンディング装置は、ワイヤの先端に形成されたフリーエアボールに荷重を加えるボンディングツールと、ボンディングツールが取り付けられた超音波ホーンと、超音波ホーンが固定されたボンディングアームを駆動するモータと、ボンディングツールがフリーエアボールに加えている荷重を測定可能な荷重センサと、ボンディングツールがフリーエアボールに加える荷重を設定値に近づけるようにモータの動作を制御する制御部と、を備えている。制御部は、超音波ホーンがボンディングツールを通じてフリーエアボールに加えた超音波振動によって荷重が最小値を経て設定値になるまでの荷重変化を測定し、該荷重変化における最小値と設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくようにワイヤボンディング装置の設定項目の値を調整することにより、超音波ホーンが発する超音波振動の出力を較正するように構成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波ホーンが発する超音波振動の出力を簡易に較正できるワイヤボンディング装置の較正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の較正方法に用いるワイヤボンディング装置の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の較正方法で測定するボンディング中の荷重変化の一例を模式的に示すグラフである。
図3】本発明の一実施形態の較正方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。以下、図1から図3を参照して各構成について詳しく説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態の較正方法に用いるワイヤボンディング装置1の一例を示すブロック図である。図示した例では、ワイヤボンディング装置1が、基台10、ボンディングアーム30、超音波振動子40、超音波ホーン50、ボンディングツール60、荷重センサ70、ボンディングステージ100、ワイヤクランパ110、ワイヤテンショナ120、接地検出部130、制御部200、記憶部210、表示部220、操作部230等を備えている。
【0014】
ワイヤボンディング装置1によってワイヤをボンディングされるボンディング対象4は、ボンディングステージ100の上に載置される。後述する較正方法において、ボンディング対象4は、特に限定されず、量産と同じ半導体チップやリードフレーム等であってもよいし、較正のために用意したダミー品であってもよい。
【0015】
基台10は、XYテーブル11、Zテーブル12等を備えている。XYテーブル11は、ボンディング面に平行なX軸方向及びY軸方向に沿って移動し、ボンディングツール60の先端の位置を調整する。同様に、Zテーブル12は、ボンディング面に垂直なZ方向に沿って移動し、ボンディングツール60の先端の位置を調整する。
【0016】
ボンディングアーム30は、XYテーブル11及びZテーブル12に対して揺動可能に構成され、ボンディングステージ100に向かって延出している。ボンディングアーム30を揺動させるモータ20は、例えば基台10に設けられている。モータ20がボンディングアーム30を揺動させると、ボンディングツール60の先端をボンディング対象4の表面に接近させたり離間させたりすることができる。
【0017】
ボンディングアーム30は、基台10に取り付けられたアーム基端部31、アーム基端部31とは反対側のアーム先端部33、アーム基端部31及びアーム先端部33を連結する可撓性のアーム連結部32等を有している。ボンディングアーム30の底面には、アーム先端部33からアーム基端部31まで延在する凹部34が形成されている。
【0018】
超音波ホーン50は、凹部34に収容されて締付けねじ59でアーム先端部33に固定されているホーン基端部51、凹部34から突出してボンディングツール60を挟持しているホーン先端部53等を有している。超音波振動を発振する超音波振動子40は、凹部34に設けられ、ホーン基端部51に接続されている。
【0019】
超音波ホーン50は全体として超音波振動子40の振動に共鳴する共振構造を備え、共振時の振動の腹にボンディングツール60が位置するように構成されている。超音波ホーン50は電気的な駆動信号を機械的な振動に変換するトランスデューサとして機能する。超音波振動子40が発振した超音波振動は、超音波ホーン50に伝播し、超音波ホーン50に取り付けられたボンディングツール60を通じて図示しないトーチ電極によりワイヤ2の先端に形成されたフリーエアボール3に加えられる。
【0020】
荷重センサ70は、アーム基端部31とアーム先端部33との間に挟みこまれるように配置され、締付けねじ79によってアーム先端部33に固定されている。ボンディング対象4からの反力によってボンディングツール60の先端に荷重が加えられると、アーム基端部31に対してアーム先端部33が撓み、荷重センサ70が荷重を検出する。荷重センサ70は、例えばピエゾ荷重センサであってもよい。
【0021】
ボンディングツール60は、筒状に形成されたキャピラリ等であってボンディングに使用するワイヤ2が挿通されている。ボンディングツール60の上方には、ワイヤクランパ110が設けられている。ワイヤクランパ110は、一対のアームを備え、任意のタイミングでワイヤ2を把持したり解放したりすることができる。
【0022】
ワイヤクランパ110の更に上方には、ワイヤテンショナ120が設けられている。ワイヤテンショナ120は、ボンディング中のワイヤ2に適度なテンションを付与するよう構成されている。ワイヤ2の材料は、加工の容易さと電気抵抗の低さから選択される。通常、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)等が用いられる。
【0023】
接地検出部130は、荷重センサ70に接続され、。荷重センサ70が検出した荷重、またはモータ20の位置偏差などにより接地を検出する。なお、接地検出部130は、ボンディング対象4とワイヤ2との間に電気信号を印加し、該電気信号を測定してワイヤ2の先端のフリーエアボール3がボンディング対象4に接触したか否かを電気的に検出することにより設置を検出してもよい。
【0024】
制御部200は、CPU及びメモリ等を備えるコンピュータ装置であって、メモリにはワイヤボンディングに必要な処理を行うためのボンディングプログラム等があらかじめ格納されている。制御部200は、XYテーブル11、Zテーブル12、モータ20、超音波振動子40、荷重センサ70、ワイヤクランパ110、ワイヤテンショナ120、接地検出部130等の各構成と直接的又は間接的に接続され、それらの動作を制御する。
【0025】
制御部200は、ボンディングアーム30を駆動するモータ20の動作を制御するボンディング荷重制御部201を備えている。ボンディング荷重制御部201は、荷重センサ70からの測定結果、モータ20の電流値、電圧値等に基づいてボンディングツール60がフリーエアボール3に加える荷重を設定値に近づけるようにモータ20をフィードバック制御する。
【0026】
制御部200には、各種情報を記憶する記憶部210、設定項目の情報を出力するための表示部220、ワイヤボンディング装置1の動作を設定する設定項目の値を入力するための操作部230等が接続されている。作業者は、表示部220に出力された設定項目の情報を確認しながら操作部230に設定項目の値を入力することができる。作業者が入力可能な設定項目には、後述する超音波ホーン50の特性を調整するための設定項目が含まれる。
【0027】
図2は、本発明の一実施形態の較正方法で測定するボンディング中の荷重変化の一例を模式的に示すグラフである。図3は、本発明の一実施形態の較正方法の一例を示すフローチャートである。図2及び図3を参照して本発明の一実施形態の較正方法を説明する。この較正方法は、まず、ボンディングツール60の先端から繰り出されたワイヤ2の先端にトーチ電極からの放電等によりフリーエアボール3を形成する(手順S1)。ボンディングアーム30を揺動させてフリーエアボール3をボンディング対象4に当接させる(手順S2)。
【0028】
ボンディングツール60がフリーエアボール3に加えている荷重を測定する(手順S3)。荷重は、荷重センサ70の実測値によって測定してもよいし、モータ20に供給する電流値によって測定してもよい。ボンディング荷重制御部201は、モータ20に電力を供給するサーボアンプに接続され、手順3によって測定された荷重があらかじめ定められた設定値に近づくようにモータ20の動作をフィードバック制御する(手順S4)。
【0029】
超音波振動子40に電力を供給して超音波振動を発振させる。超音波振動を超音波ホーン50に伝播させてフリーエアボール3に加える(手順S5)。荷重及び超音波のエネルギーによってしてフリーエアボール3が軟化し、図2に示すように、測定された荷重が小さくなる。
【0030】
測定された荷重が設定値に近づくようにボンディング荷重制御部201がモータ20の動作をフィードバック制御しているため、小さくなった荷重は、図2に示すように、すぐに設定値に復帰する。このときの荷重変化を測定すると、荷重変化における最小値と設定値との間の差分から超音波ホーン50の特性を定量的に可視化できる(手順S6)。
【0031】
荷重変化における最小値と設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準の荷重変化における最小値と設定値との差分に近づくようにワイヤボンディング装置1の設定項目の少なくとも一つを調整して値を変更する(手順S7)。ワイヤボンディング装置1の設定項目は、超音波振動子40に供給する設定電流であってもよいし、超音波振動子40に印加する設定電圧であってもよいし、他の設定項目であってもよい。
【0032】
例えば、測定された差分が標準の差分よりも大きいとき、超音波振動子40の設定電流及び/又は設定電圧を小さくする調整を行って標準の差分に近づける。例えば、測定された差分が標準の差分よりも小さいとき、超音波振動子40の設定電流及び/又は設定電圧を大きくする調整を行って標準の差分に近づける。
【0033】
上記手順S1からS7を繰り返せば、次第に荷重変化における最小値と設定値との間の差分を、あらかじめ定めておいた標準の荷重変化における最小値と設定値との標準の差分に近づけることができる。測定された差分が標準の差分を含む規定の範囲内になるまで手順を繰り返してもよいし、測定された差分が標準の差分を含む規定の範囲内になっても止めないで規定の回数に到達するまで手順を繰り返してもよい(手順S8)。
【0034】
図3に示された較正方法は、作業者によって手動で実施されてもよいし、プログラムによって自動で実施されてもよい。自動化プログラムは、ワイヤボンディング装置1のハードディスクドライブやフラッシュメモリ等の記憶装置に格納されていてもよいし、光ディスク等の着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることによってワイヤボンディング装置1の記憶装置にインストールされていてもよい。
【0035】
本発明の一実施形態の較正方法によれば、荷重変化における最小値と設定値との間の差分から超音波ホーン50の特性を可視化することができるため、超音波ホーン50が発する超音波振動の出力を簡易に較正できる。
【0036】
フリーエアボール3が押し潰される際の高さ変化は、図2に示すように、フリーエアボール3の高さが下がり続けてピークがない。これに対し、超音波振動が加えられた際の荷重変化は、荷重が一時的に小さくなってから設定値に復帰するまでの間に最小値のピークがあるため、変化の大きさや変化の終了を特定しやすい。また、荷重変化は、超音波振動が始まってから僅かな時間で終了するため、フリーエアボール3が押し潰される際の高さ変化よりも早い時点で終了する。超音波ホーン50の特性を示す結果を特定しやすく、結果が分かる時点も早いため、機械学習等と組み合わせた較正作業の自動化に好適である。
【0037】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0038】
[付記1]
超音波ホーン50が発する超音波振動の出力を較正する方法であって、ワイヤ2にフリーエアボール3を形成してボンディング対象4に当接させること、フリーエアボール3に加えている荷重を測定すること、フリーエアボール3に超音波ホーン50を用いて超音波振動を加えること、超音波振動によって荷重が最小値を経て設定値に復帰するまでの荷重変化を測定すること、及び、荷重変化における最小値と設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくようにワイヤボンディング装置1の設定項目の値を調整すること、を含む、ワイヤボンディング装置1の較正方法。
【0039】
[付記8]
ワイヤ2の先端に形成されたフリーエアボール3に荷重を加えるボンディングツール60と、
ボンディングツール60が取り付けられた超音波ホーン50と、
超音波ホーン50が固定されたボンディングアーム30を駆動するモータ20と、
ボンディングツール60がフリーエアボール3に加えている荷重を測定可能な荷重センサ70と、
ボンディングツール60がフリーエアボール3に加える荷重を設定値に近づけるようにモータ20の動作を制御する制御部200と、を備え、
制御部200は、超音波ホーン50がボンディングツール60を通じてフリーエアボール3に加えた超音波振動によって荷重が最小値を経て設定値になるまでの荷重変化を測定し、該荷重変化における最小値と設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくようにワイヤボンディング装置1の設定項目の値を調整することにより、超音波ホーン50が発する超音波振動の出力を較正するように構成されている、
ワイヤボンディング装置1。
【0040】
上記付記1及び8によれば、荷重変化における最小値と設定値との間の差分から超音波ホーン50の特性を可視化することができるため、超音波ホーン50が発する超音波振動の出力を簡易に較正できる。
【0041】
[付記2]
上記付記1では、荷重変化を測定することにおいて、荷重が設定値に近づくようにフィードバック制御することを含んでいてもよい。つまり、ワイヤ2にフリーエアボール3を形成してボンディング対象4に当接させること、フリーエアボール3に加えている荷重を測定すること、測定された荷重が設定値に近づくようにフィードバック制御すること、フリーエアボール3に超音波ホーン50を用いて超音波振動を加えること、超音波振動によって一時的に小さくなった荷重が設定値に復帰するまでの荷重変化を測定すること、及び、荷重変化における最小値と設定値との間の差分が、あらかじめ定めておいた標準に近づくようにワイヤボンディング装置1の設定項目の値を調整すること、を含む、ワイヤボンディング装置1の較正方法であってもよい。
【0042】
上記付記2によれば、超音波振動によって一時的に小さくなった荷重を設定値に近づけることができる。荷重変化における最小値と設定値との間の差分から超音波ホーン50の特性を可視化することができるため、超音波ホーン50が発する超音波振動の出力を簡易に較正できる。
【0043】
[付記3]
上記付記1又は2において、ワイヤボンディング装置1は、荷重を実測する荷重センサ70を備えていてもよい。荷重変化は、荷重センサ70の実測値によって測定してもよい。
【0044】
上記付記3によれば、荷重センサ70の実測値のピークから超音波ホーン50の特性を可視化することができる。
【0045】
[付記4]
上記付記1から3において、ワイヤボンディング装置1は、フリーエアボール3を押圧するボンディングツール60と、該ボンディングツール60を駆動するモータ20と、を備えていてもよい。荷重変化は、モータ20に供給した電流値によって測定してもよい。
【0046】
上記付記4では、荷重センサ70があってもよいし、なくてもよい。上記付記3によれば、荷重センサ70がなくてもモータ20に供給した電流値のピークから超音波ホーン50の特性を可視化することができる。
【0047】
[付記5]
上記付記1から4のいずれか一つでは、設定項目の値を調整することにおいて、超音波ホーン50に接続された超音波振動子40に供給する設定電流及び超音波振動子40に印加する設定電圧の少なくとも一方の設定を調整してもよい。
【0048】
上記付記5によれば、機械加工等が不要で簡易に値を変更できる設定電流や設定電圧の調整で荷重変化における最小値と設定値との間の差分を標準に近づける調整を行うことができる。
【0049】
[付記6]
上記付記1から5のいずれか一つにおいて、差分が標準を含む規定の範囲内になるまで、ボンディング対象4に当接させること、加えている荷重を測定すること、超音波振動を加えること、及び、荷重変化を測定すること、設定項目の値を調整すること、の手順を繰り返してもよい。
【0050】
上記付記6によれば、標準に十分に近づくようにワイヤボンディング装置1を較正することができる。
【0051】
[付記7]
上記付記1から5のいずれか一つにおいて、規定の回数に到達するまで、ボンディング対象4に当接させること、加えている荷重を測定すること、超音波振動を加えること、及び、荷重変化を測定すること、設定項目の値を調整すること、の手順を繰り返してもよい。
【0052】
上記付記7によれば、差分が標準を含む規定の範囲内になってからも規定の回数に到達するまで手順を繰り返してワイヤボンディング装置1を更に標準に近づけることができる。
【符号の説明】
【0053】
1…ワイヤボンディング装置、2…ワイヤ、3…フリーエアボール、4…ボンディング対象、10…基台、11…XYテーブル、12…Zテーブル、20…モータ、30…ボンディングアーム、31…アーム基端部、32…アーム連結部、33…アーム先端部、34…凹部、40…超音波振動子、50…超音波ホーン、51…ホーン基端部、53…ホーン先端部、59…締付けねじ、60…ボンディングツール、70…荷重センサ、79…締付けねじ、100…ボンディングステージ、110…ワイヤクランパ、120…ワイヤテンショナ、130…接地検出部、200…制御部、201…ボンディング荷重制御部、210…記憶部、220…表示部、230…操作部。
図1
図2
図3