(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電気自動車又はドローン装置の給電システム
(51)【国際特許分類】
B60L 50/62 20190101AFI20241125BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20241125BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241125BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241125BHJP
H01M 12/08 20060101ALI20241125BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20241125BHJP
H01M 4/90 20060101ALI20241125BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241125BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20241125BHJP
B64U 50/32 20230101ALI20241125BHJP
【FI】
B60L50/62
B60L50/64
B60L58/12
H01M10/44 Q
H01M12/08 K
H01M12/06 D
H01M12/06 F
H01M4/90 Y
H02J7/00 P
H02J7/00 302C
B64U10/13
B64U50/32
(21)【出願番号】P 2023569542
(86)(22)【出願日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2022047409
(87)【国際公開番号】W WO2023120657
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2021208385
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520114030
【氏名又は名称】AZUL Energy株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100195796
【氏名又は名称】塩尻 一尋
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃寿
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/045761(WO,A1)
【文献】特開2014-217194(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167407(WO,A1)
【文献】特開2017-109553(JP,A)
【文献】特開2019-121144(JP,A)
【文献】国際公開第2021/182092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00- 3/12
B61L 7/00-13/00
B61L 15/00-58/40
H01M 4/86- 4/98
B64C 39/00-39/12
H01M 12/00-16/00
H02J 7/00- 7/12
H02J 7-24- 7/36
B64U 10/13
B64U 50/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モビリティ装置の給電システムであって、
前記電動モビリティ装置の駆動ユニットに給電するための電池システムと、
前記電池システムの充電容量が減少したとき、前記電池システムに給電するためのレンジエクステンダーユニットとを備え、
前記レンジエクステンダーユニットの動力供給源は、
金属空気電池であって、
負極は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、リチウム及びカルシウムの少なくとも1つを含み、
空気極は、金属錯体又はその付加体を含み、
前記金属錯体は、下記式(1)又は式(2)で表される
【化1】
Mは金属原子であり、
D
1
からD
28
はそれぞれ独立に、窒素原子、硫黄原子又は炭素原子であり、
式(1)においてD
1
からD
16
のうちの窒素原子の数は2から12個であり、D
1
からD
16
が炭素原子である場合、前記炭素原子のうちの少なくとも1つにはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合している、
式(2)においてD
17
からD
28
が炭素原子である場合、前記炭素原子はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合していてもよい、
あるいは以下の式のいずれかで表される
【化2】
金属空気電池である、電動モビリティ装置の給電システム。
【請求項2】
電気自動車の給電システムであって、
前記電気自動車の駆動ユニットに給電するための電池システムと、
前記電池システムの充電容量が減少したとき、前記電池システムに給電するためのレンジエクステンダーユニットとを備え、
前記レンジエクステンダーユニットの動力供給源は、
金属空気電池であって、
負極は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、リチウム及びカルシウムの少なくとも1つを含み、
空気極は、金属錯体又はその付加体を含み、
前記金属錯体は、下記式(1)又は式(2)で表される
【化3】
Mは金属原子であり、
D
1
からD
28
はそれぞれ独立に、窒素原子、硫黄原子又は炭素原子であり、
式(1)においてD
1
からD
16
のうちの窒素原子の数は2から12個であり、D
1
からD
16
が炭素原子である場合、前記炭素原子のうちの少なくとも1つにはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合している、
式(2)においてD
17
からD
28
が炭素原子である場合、前記炭素原子はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合していてもよい、
あるいは以下の式のいずれかで表される
【化4】
金属空気電池である、電気自動車の給電システム。
【請求項3】
前記金属錯体は、下記のいずれかの化合物である
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
請求項2に記載の電気自動車の給電システム。
【請求項4】
前記レンジエクステンダーユニットは、前記電池システムの充電容量が減少することにより所定条件が満たされたとき、前記電池システムに給電するようにさらに構成され、
前記所定条件は、前記充電容量が第1の閾値以下になった場合、前記充電容量の減少速度が第2の閾値以下になった場合、又は前記充電容量が前記第1の閾値以下になり、かつ前記充電容量の減少速度が前記第2の閾値以下になった場合である
請求項2に記載の電気自動車の給電システム。
【請求項5】
前記レンジエクステンダーユニットの前記金属空気電池の収容部は、前記電気自動車の車中、トランク内、又はボンネット内に備えられる、請求項2に記載の電気自動車の給電システム。
【請求項6】
前記レンジエクステンダーユニットの前記金属空気電池の収容部は、前記電気自動車の車中に備えられ、前記金属空気電池は前記車中から交換可能である、請求項2に記載の電気自動車の給電システム。
【請求項7】
ドローン装置の給電システムであって、
前記ドローン装置の駆動ユニットに給電するための電池システムと、
前記電池システムの充電容量が減少したとき、前記電池システムに給電するためのレンジエクステンダーユニットとを備え、
前記レンジエクステンダーユニットの動力供給源は、
金属空気電池であって、
負極は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、リチウム及びカルシウムの少なくとも1つを含み、
空気極は、金属錯体又はその付加体を含み、
前記金属錯体は、下記式(1)又は式(2)で表される
【化9】
Mは金属原子であり、
D
1
からD
28
はそれぞれ独立に、窒素原子、硫黄原子又は炭素原子であり、
式(1)においてD
1
からD
16
のうちの窒素原子の数は2から12個であり、D
1
からD
16
が炭素原子である場合、前記炭素原子のうちの少なくとも1つにはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合している、
式(2)においてD
17
からD
28
が炭素原子である場合、前記炭素原子はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合していてもよい、
あるいは以下の式のいずれかで表される
【化10】
金属空気電池である、ドローン装置の給電システム。
【請求項8】
前記レンジエクステンダーユニットは、前記電池システムの充電容量が減少することにより所定条件が満たされたとき、前記電池システムに給電するようにさらに構成され、
前記所定条件は、前記充電容量が第1の閾値以下になった場合、前記充電容量の減少速度が第2の閾値以下になった場合、又は前記充電容量が前記第1の閾値以下になり、かつ前記充電容量の減少速度が前記第2の閾値以下になった場合である
請求項
7に記載のドローン装置の給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車又はドローン装置の給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やドローン装置の給電システムは、複数のリチウムイオン電池やニッケル水素電池パック又はスーパーキャパシタからなる、動力を供給するための電池システムや、充電及びエネルギー回生システムから構成されている。長距離の移動・飛行のためには、電池システムの電池容量を大きくする必要がある。従って、重いリチウムイオン電池を多く搭載する必要があり、電池の重量増による燃費悪化という問題が発生していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題へのアプローチとして、従来では、リチウムイオン電池等の二次電池以外に、ガソリン等の燃料油発電ユニット(いわゆるエンジン)や、水素燃料電池のような発電ユニットを含む航続距離延長装置(レンジエクステンダー)を併設することが考案されてきた(特許文献1)。しかし、燃料油発電ユニットや、水素燃料電池のような発電ユニットは大規模かつ複雑な機構を有するため、給電システムは重量が増え、大型化し、さらに故障が増加するといった課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、電気自動車又はドローン装置のための軽量でかつ小型の給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、電気自動車の給電システムであって、電気自動車の駆動ユニットに給電するための電池システムと、電池システムの充電容量が減少したとき、電池システムに給電するためのレンジエクステンダーユニットとを備え、レンジエクステンダーユニットの動力供給源は、金属空気電池である、電気自動車の給電システムである。
【0007】
また、本発明の一態様は、ドローン装置の給電システムであって、ドローン装置の駆動ユニットに給電するための電池システムと、電池システムの充電容量が減少したとき、電池システムに給電するためのレンジエクステンダーユニットとを備え、レンジエクステンダーユニットの動力供給源は、金属空気電池である、ドローン装置の給電システムである。
【発明の効果】
【0008】
上記態様のうち少なくともいずれかの態様によれば、レンジエクステンダーユニット2から電池システム3に補助的に給電が行われるため、電池システム3自体は、長距離移動等に備えた容量である必要がない。そのため、モータの駆動に不可欠の電池システム3に用いるリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体電池の容量および重量を最小化することが可能となる。それにより、給電システム全体を小型化、軽量化、かつシンプル化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る電気自動車の給電システムを含む装置の全体構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る給電システム1について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る電気自動車の給電システム1の全体構成を示す図である。
【0011】
給電システム1は、レンジエクステンダーユニット2と、電池システム3と、電気自動車の駆動ユニット4とを備える。電池システム3は、動力を駆動ユニット4に供給する。駆動ユニット4は、モータ等の電気自動車に搭載された電力により作動する装置である。レンジエクステンダーユニット2は、直流電流を発生して、電池システム3に対して動力を供給する。例えば、電気自動車の長距離移動等により電池システム3の充電容量が減少したとき、レンジエクステンダーユニット2は、電池システム3に給電を行う。電池システム3から駆動ユニット4に対して動力が供給されない場合等の非常時には、レンジエクステンダーユニット2は、駆動ユニット4に動力を供給してもよい。レンジエクステンダーユニット2は、動力供給源として、金属空気電池を備える。当該金属空気電池は、交換型である。
当該金属空気電池は、動力供給源として必要な電圧、出力、容量に応じて、複数の金属空気電池セルが直列または並列に複数スタックされたものが用いられることが好ましい。
【0012】
レンジエクステンダーユニット2は、電池システム3の充電容量が減少することにより所定条件が満たされたとき、電池システム3に給電するようにさらに構成されてもよい。例えば、所定条件は、充電容量が第1の閾値以下になった場合、充電容量の減少速度が第2の閾値以下になった場合、又は充電容量が第1の閾値以下になり、かつ充電容量の減少速度が第2の閾値以下になった場合であってもよい。なお、所定条件はこれらの条件に限定されない。
【0013】
ユーザが金属空気電池を交換可能なように、レンジエクステンダーユニット2の金属空気電池の収容部は、乗用席付近等の車中、トランク内、又はボンネット内に備えられてもよい。当該収容部が車中に備えられている場合、ユーザは車中から金属空気電池を交換することができる。金属空気電池の容量が減少したとき、金属空気電池は交換される。金属空気電池の交換はまた、機械的に自動で行われてもよい。
【0014】
電池システム3は、1つ以上の電池パックと、各電池パックに対応するBMS(Battery Management System)を備えてもよい。電池システム3に使われる電池の方式としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体電池などが挙げられる。BMSは、電池パックの駆動ユニット4に対する接続及び切離を制御する。また、給電システム1は、レンジエクステンダーユニット2の給電モードを制御し、レンジエクステンダーユニット2と電池システム3との接続状態、レンジエクステンダーユニット2と駆動ユニット4との接続状態、及び/又は電池システム3と駆動ユニット4との接続状態を制御するためのコントローラを備えてもよい。
【0015】
金属空気電池とは、正極(空気極)の活物質に酸素、負極の活物質に金属を用いる電池である。例えば、負極は、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、リチウム、及びカルシウムの少なくとも1つを含む。空気極は金属錯体又はその付加体を含む。
【0016】
金属錯体は、下記式(1)又は式(2)である。
【化1】
Mは金属原子である。D
1からD
28はそれぞれ独立に、窒素原子、硫黄原子、又は炭素原子である。D
1からD
28が炭素原子である場合、炭素原子はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、又はアルキルチオ基が結合していてもよい。
【0017】
窒素原子とMとの間の結合は、窒素原子のMへの配位を意味する。Mには配位子としてハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1~8の炭化水素基がさらに結合していてもよい。また、電気的に中性になるように、アニオン性対イオンが存在していてもよい。さらに、電気的に中性の分子が付加した付加体として存在していてもよい。
【0018】
Mの価数は特に制限されない。金属錯体又はその付加体が電気的に中性となるように、配位子(例えば、軸配位子)としてハロゲン原子、水酸基、又は、炭素数1~8の(アルキルオキシ基)アルコキシ基が結合していてもよく、アニオン性対イオンが存在していてもよい。アニオン性対イオンとしては、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、硫酸イオンが例示される。また、炭素数1~8の(アルキルオキシ基)アルコキシ基が有するアルキル基の構造は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよい。
【0019】
Mとしては、スカンジウム原子、チタン原子、バナジウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、イットリウム原子、ジルコニウム原子、ニオブ原子、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、ランタン原子、セリウム原子、プラセオジム原子、ネオジム原子、プロメチウム原子、サマリウム原子、ユウロピウム原子、ガドリニウム原子、テルビウム原子、ジスプロシウム原子、ホルミウム原子、エルビウム原子、ツリウム原子、イッテルビウム原子、ルテチウム、アクチニウム原子、トリウム原子、プロトアクチニウム原子、ウラン原子、ネプツニウム原子、プルトニウム原子、アメリシウム原子、キュリウム原子、バークリウム原子、カリホルニウム原子、アインスタイニウム原子、フェルミウム原子、メンデレビウム原子、ノーベリウム原子、及びローレンシウム原子が例示される。これらの中でも、Mは、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、又は亜鉛原子であることが好ましく、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、又は銅原子であることがより好ましい。
【0020】
本発明においてハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0021】
本発明においてアルキル基とは、直鎖状又は分岐鎖状の一価の炭化水素基を表す。アルキル基の炭素原子数は1~20個であることが好ましく、1~12個であることがより好ましく、1~6個であることがさらに好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、及びn-ヘキシル基が例示される。
【0022】
本発明においてシクロアルキル基としては、環状の一価の炭化水素基を表す。シクロアルキル基の炭素原子数は3~20個であることが好ましく、3~12個であることがより好ましく、3~6個であることがさらに好ましい。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-メチルシクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、及び2,2-ジメチルシクロプロピル基が例示される。
【0023】
本発明においてアルケニル基とは、二重結合を含有する直鎖状又は分岐鎖状の一価の炭化水素基を表す。アルケニル基の炭素原子数は2~20個であることが好ましく、2~12個であることがより好ましく、2~6個であることがさらに好ましい。アルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、及び5-ヘキセニル基が例示される。
【0024】
本発明においてアルキニル基とは、三重結合を含有する直鎖状又は分岐鎖状の一価の炭化水素基を表す。アルキニル基の炭素原子数は2~20個であることが好ましく、2~12個であることがより好ましく、2~6個であることがさらに好ましい。アルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、(1-ブチニル基)1-ブチン-1-イル基、(2-ブチニル基)2-ブチン-1-イル基、(3-ブチニル基)3-ブチン-1-イル基、(1-メチル-2-プロピニル基)1-メチル-2-プロピン- 1-イル基、(2-メチル-3-ブチニル基)2-メチル-3-ブチン-2イル基、(1-ペンチニル基)1-ペンチン-1-イル基、(2-ペンチニル基)2-ペンチン-1-イル基、(3-ペンチニル基)3-ペンチン-2-イル基、(4-ペンチニル基)4-ペンチン-1-イル基、1-メチル-2-ブチニル基(1-メチル-2-ブチン-1-イル基)、(2-メチル-3-ペンチニル基)2-メチル-3-ペンチン-1-イル基、(1-ヘキシニル基)1-ヘキシン-1-イル基、及び(1,1-ジメチル-2-ブチニル基)1,1-ジメチル-2-ブチン-1-イル基が例示される。
【0025】
本発明においてアリール基とは、一価の芳香族炭化水素基を表す。アリール基の炭素原子数は6~40個であることが好ましく、6~30個であることがより好ましい。アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、フェナントリル基、アントラセニル基、ベンゾフェナントリル基、ベンゾアントラセニル基、クリセニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ベンゾフルオランテニル基、ジベンゾアントラセニル基、ペリレニル基、及びヘリセニル基が例示される。
【0026】
本発明においてアルキルスルホニル基とは、スルホニル基にアルキル基が結合した一価の基を表す。アルキルスルホニル基中のアルキル基としては上記「アルキル基」として記載した基であることができる。アルキルスルホニル基の炭素原子数は1~20個であることが好ましく、1~12個であることがより好ましく、1~6個であることがさらに好ましい。メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルプロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、n-ブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基、n-ペンチルスルホニル基、イソペンチルスルホニル基、tert-ペンチルスルホニル基、ネオペンチルスルホニル基、2,3-ジメチルプロピルスルホニル基、1-エチルプロピルスルホニル基、1-メチルブチルスルホニル基、n-ヘキシルスルホニル基、イソヘキシルスルホニル基、及び1,1,2-トリメチルプロピルスルホニル基が例示される。
【0027】
本発明においてアルコキシ基とは、エーテル結合を介して炭化水素基が結合した一価の基を表す。アルコキシ基の炭素原子数は1~20個であることが好ましく、1~12個であることがより好ましく、1~6個であることがさらに好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、t ert-ブトキシ基、及びイソヘキシルオキシ基が例示される。
【0028】
本発明においてアルキルチオ基とは、アルコキシ基のエーテル結合における酸素原子が硫黄原子に置換された基を表す。アルキルチオ基の炭素原子数は1~20個であることが好ましく、1~16個であることがより好ましく、1~12個であることがさらに好ましい。アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、n-ヘキシルチオ基、及びイソプロピルチオ基が例示される。
【0029】
アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルコキシ基、及びアルキルチオ基は、無置換の置換基であってもよいが、それぞれハロゲン、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、シリル基、及びスルホ基等の1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0030】
D1からD16は、窒素原子又は炭素原子であることが好ましく、D17からD28は、硫黄原子又は炭素原子であることが好ましい。D1からD16のうちの窒素原子の数は2~12個であることが好ましく、4~8個であることがより好ましい。D17からD28のうちの硫黄原子の数は2~10個であることが好ましく、4~8個であることがより好ましい。
【0031】
好ましくは、金属錯体又はその付加体は、以下の式で表される化合物である。
【0032】
【0033】
金属錯体又はその付加体の製造方法は特に限定されないが、例えば、ピリジン-2,3-ジカルボニトリル等のジシアノ化合物と金属原子とを塩基性物質の存在下にアルコール溶媒中で加熱する方法が例示される。ここで塩基性物質としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及び酢酸ナトリウム等の無機塩基;トリエチルアミン、トリブチルアミン、及びジアザビシクロウンデセン等の有機塩基が例示される。
【0034】
(作用、効果)
第1の実施形態に係る給電システム1は、電気自動車の駆動ユニット4に給電するための電池システム3と、電池システム3の充電容量が減少したとき、電池システム3に給電するためのレンジエクステンダーユニット2とを備え、レンジエクステンダーユニット2の動力供給源は、金属空気電池である。金属空気電池は、リチウムイオン電池等の二次電池と比較して3倍から10倍超のエネルギー密度を有する。また、このような金属空気電池を動力供給源とするレンジエクステンダーユニット2から電池システム3に補助的に給電が行われるため、電池システム3自体は、長距離移動等に備えた容量である必要がない。そのため、モータの駆動に不可欠の電池システム3に用いるリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体電池の容量および重量を最小化することが可能となる。それにより、給電システム全体を小型化、軽量化、かつシンプル化することが可能となる。
【0035】
<第2の実施形態>
第2の実施形態として、第1の実施形態に係る給電システムと同様の機能及び構成を備える給電システムが、ドローン装置に備えられる。
【0036】
(作用、効果)
すなわち、第2の実施形態に係る給電システム1は、ドローン装置の駆動ユニット4に給電するための電池システム3と、電池システム3の充電容量が減少したとき、電池システム3に給電するためのレンジエクステンダーユニット2とを備え、レンジエクステンダーユニット2の動力供給源は、金属空気電池である。金属空気電池は、リチウムイオン電池等の二次電池と比較して3倍から10倍超のエネルギー密度を有する。また、このような金属空気電池を動力供給源とするレンジエクステンダーユニット2から電池システム3に補助的に給電が行われるため、電池システム3自体は、長距離移動等に備えた容量である必要がない。そのため、モータの駆動に不可欠の電池システム3に用いるリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、全固体電池の容量および重量を最小化することが可能となる。それにより、給電システム全体を小型化、軽量化、かつシンプル化することが可能となる。
【実施例1】
【0037】
電気自動車、ドローン用の給電システムの実施例として、レンジエクステンダーユニットの電池を異なる構成としたときの、電圧、容量、電力量の比較を説明する。(表1)
【0038】
実施例1では、金属空気電池の負極として亜鉛を用いた。空気極用触媒としては、化合物28の金属錯体をカーボンブラックに担持させた複合体を含むカーボン電極を用いたラミネートセルを用いた。
【実施例2】
【0039】
実施例2では、空気極用触媒として、実施例1のラミネートセルにおける化合物28の金属錯体の代わりに二酸化マンガンを担持させたものを用いた。
【0040】
比較例として、レンジエクステンダーユニットに単3形アルカリ電池を用いたものを比較例1とした。
【0041】
実施例1、実施例2、比較例1のそれぞれの電池モジュールは、電池を5個直列にすることで電池モジュール電圧が一般的なドローン用バッテリー7.38Vと同等となるように設計されている。また、実施例1、実施例2、比較例1のそれぞれの電池モジュールの重さが同等となるように、実施例1と実施例2のラミネートセルを作製した。
【0042】
比較例1のアルカリ電池の場合と比較して、実施例1、2の亜鉛空気電池のモジュールにおいて、同じ重さでの電力量は約5倍以上と大幅に向上し、エネルギー密度が優れることが確認された。また、実施例1と実施例2を比較すると、亜鉛空気電池において、空気極用触媒を二酸化マンガンから化合物28に示される金属錯体とすることで、電圧が向上することが確認された。
【0043】
また、最大出力を比較すると、実施例2が10W/モジュールに対して、実施例1は25W/モジュールと約2.5倍に向上することがわかり、空気極用触媒としては、化合物28を含む金属錯体が優れることが確認された。
【0044】
【0045】
上述した実施形態1及び2は、電気自動車及びドローン装置についてであるが、レンジエクステンダーを備えることが有益となる他の電動モビリティ装置に適用されてもよい。
具体的には、電動バイク(2輪、3輪)、e-scooter(電動キックボード)のような陸上モビリティ装置、航空機、eVTOL(電動垂直離着陸機、空飛ぶ車等)のようなエアモビリティ装置、又は、電気船舶、潜水艦、水中ドローンのような水上若しくは水中モビリティ装置に適用されてもよい。
【0046】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 給電システム
2 レンジエクステンダーユニット
3 電池システム
4 駆動ユニット