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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】吸引具
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024043828
(22)【出願日】2024-03-19
【審査請求日】2024-03-27
【審判番号】
【審判請求日】2024-07-03
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518270470
【氏名又は名称】森田通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤阪 岩彦
【合議体】
【審判長】井上 哲男
【審判官】土田 嘉一
【審判官】安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-504248(JP,A)
【文献】実開昭62-202848(JP,U)
【文献】特開平7-222800(JP,A)
【文献】特表2009-533111(JP,A)
【文献】特開昭52-98393(JP,A)
【文献】特開昭53-100695(JP,A)
【文献】特開平8-224309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体と、前記筒体に対し中心軸で相対回転可能に結合する回転体と、外部と連通する吸引部と、を備える吸引具であって、
前記筒体は、カプセルを保持する保持部を有し、
前記回転体は、前記カプセルを破壊可能なブレード部を有し、
前記保持部は、軸方向に高さを付けて設けられている仕切りで内部空間が仕切られ、前記仕切りの軸方向に高さを付けた周面で画定され、前記中心軸から離れた位置に前記カプセルを内部で格納して保持するカプセル台とを有し、
前記ブレード部は、前記回転体が相対回転する際に、移動経路に沿って相対移動し、前記カプセル台の内部に貫入するように設けられ、
前記カプセル台は、前記移動経路上に複数配置され、
前記仕切りは、前記移動経路上に、前記カプセル台同士を連通する経路孔を有し、
前記経路孔は、前記ブレード部の幅よりも幅広に設けられ、前記ブレード部を通過可能に設けている吸引具。
【請求項2】
前記カプセル台と、前記吸引部と、の間には、
前記カプセルの内部の液剤を保持可能な担体が配置されている請求項1に記載の吸引具。
【請求項3】
前記ブレード部は、前記中心軸と平行に突出する請求項1に記載の吸引具。
【請求項4】
前記ブレード部は、間隔を空けて複数設けられる請求項1に記載の吸引具。
【請求項5】
前記カプセル台は、前記移動経路上に複数設けられている請求項1に記載の吸引具。
【請求項6】
前記保持部は軸方向に複数設けられており、
前記ブレード部は、それぞれの前記保持部に相対している請求項1から5のいずれか一項に記載の吸引具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルに入った剤を吸入するために用いる吸引具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体や粉末状の剤を吸引する道具として、剤を封入したカプセルを格納する吸引具が知られている。このような吸引具は、使用時に機械的手段でカプセルを破壊し、カプセル外に漏出して揮発した液剤や拡散した粉末を吸引することで、場所や時間を問わず使用できる。このような吸引具として、例えば特許文献1に示すものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2010-538790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明では、軸中心に配置されたカプセルを破断することで内部の剤を取り出す仕様であり、取り扱いは容易だが設計の自由度が低く、破壊のギミックに工夫が必要で小型化しにくい点や、カプセルの形状や容量も限られる点で課題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、コンパクトでありながら取り扱いの性能を高められる吸引具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、筒体と、前記筒体に対し中心軸で相対回転可能に結合する回転体と、外部と連通する吸引部と、を備える吸引具であって、前記筒体は、前記カプセルを保持する保持部を有し、前記回転体は、前記カプセルを破壊可能なブレード部を有し、前記保持部は、前記中心軸から離れた位置に前記カプセルを保持するカプセル台を有し、前記ブレード部は、前記回転体が相対回転する際に、移動経路に沿って相対移動するように設けられ、前記カプセル台は、前記移動経路上に配置されている。
このような構成によって、シンプルな構造で全体の構成をコンパクトにしつつ、内部のカプセルを回転操作で簡単に破壊できる吸引具を提供できる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記カプセル台と、前記吸引部と、の間には、前記液を保持可能な担体が配置される。このような構成によって、吸引の持続性が向上する。また、前記ブレード部が、前記中心軸と平行に突出すること、前記ブレード部は、間隔を空けて複数設けられること、前記保持部は、前記移動経路上に複数設けられていることで、ブレード部の構造をシンプルかつ強固にし、確実にカプセルを破壊できる。また、前記保持部は軸方向に複数設けられており、前記ブレード部は、それぞれの前記保持部に相対していることで、取り扱いの性能がさらに高まる。
【0008】
本発明は、前述した吸引具の使用方法であって、前記回転体を前記筒体に対し相対回転させる回転工程を含む。このような構成によって、回転させるだけで簡単に内部のカプセルを破壊できる。
【発明の効果】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、コンパクトでありながら取り扱いの性能を高められる吸引具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一の実施形態に係る、吸引具の斜視図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る、吸引具の分解斜視図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る、吸引具の断面模式図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る、筒体の説明図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係る、回転体の説明図である。
図6】本発明の第二の実施形態に係る、吸引具の分解斜視図である。
図7】本発明の第二の実施形態に係る、吸引具の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて、本発明の各実施形態に係る吸引具について説明する。説明は、実施形態の構成、実施の方法、他の実施形態の順に詳述する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の各実施形態に限定するものではない。また、出願書類中の「略」は、その後に続く形状に面取りや丸め加工がなされていること、また形状を構成する要素がその構成の目的を阻害しない範囲内で変形や長さ変更されているものを含むことを意味する概念である。
【0012】
《第一の実施形態》
吸引具Xは、図1図3に示すように、筒体1と、筒体1に対し中心軸Aで相対回転可能に接続する回転体2と、内部と外部とを連通する吸引部3と、を備える。筒体1は、カプセルCを保持する保持部13を有し、回転体2は、カプセルCを破壊可能なブレード部22を有し、保持部13は、中心軸Aから離れた位置にカプセルCを保持するカプセル台132を有し、ブレード部22は、回転体2が相対回転する際に、移動経路Rに沿って相対移動するように設けられ、カプセル台132は移動経路R上に配置されている。
【0013】
さらに、吸引具Xは、カプセルC内部の液体を保持可能な担体4と、下端を保持して内部空間を画定する底台5と、筒体1と底台5との間に設けられ、筒体1と同様にカプセルCを保持する副筒体6と、副筒体6に対応して担体4と同様に液体を保持可能な副担体7と、を有する。さらに、上記のパーツは何れも同質のプラスチック部材で設けられており、製造コストを下げるとともに分別の手間を削減している。
【0014】
実施形態でカプセルCは、内部に液剤を密閉した状態で格納する部材であって、両側を半球状とした筒状、球状、楕円球状等種々の形状の材である。カプセルCの殻は、ブレード部22による力で割れる又は潰れる程度の剛性であり、液剤は揮発性である。
【0015】
また、実施形態における中心軸Aは、全体として筒型に設けられている吸引具Xの中心軸であり、この軸を中心に、吸引具Xの構成材が回転する。また、吸引具Xの構成材は、中心軸Aに沿って伸びる剛性の軸部A1と、軸部A1を貫入する軸孔A2と、を有する。
【0016】
筒体1は、図2図4に示すように、カプセルCを保持する筒型部材であって、筒型の筒本体11と、軸方向に垂直な方向に面張され筒本体11の内部の空間を二分する隔壁12とを備える。また、隔壁12のそれぞれの面には、カプセルCを保持する保持部13と、担体4を保持して収納するための担体収納部14と、が隔壁12の表裏にそれぞれ設けられている。また、筒体1は、吸引部3と筒体1とを協働して回転させるための保持部篏合部15と、を有し、底台5の方向に伸びる軸部A1が設けられている。
なお、図4(a)は、軸部A1を省略した筒体1の斜視図を表し、図4(b)は底台5側から見た筒体1の面を表し、図4(c)は吸引部3側から見た筒体1の面を表す。
【0017】
実施形態において、筒本体11は、回転体2及び吸引部3の内周面に篏合して略全体が覆われる材である。これにより、全体の構造をコンパクトにして、耐久性が向上する。また、筒体1において回転体2と篏合する部分には、滑らかで径が小さくする段が設けられて取付位置を画定している。また、吸引具Xの外周面は全体として均一の面としている。
【0018】
保持部13は、筒本体11の内側に設けられている部分であり、回転体2と相対する。保持部13は、軸方向と平行に突出する仕切り131と、仕切り131によって画定され、単一のカプセルCを保持するための面であるカプセル台132と、ブレード部22と仕切り131とが干渉しないように設けられる経路孔133と、カプセルCから漏出する液剤を担体4に送るために、隔壁12を挿通する開口134と、を有する。
【0019】
仕切り131は、隔壁12と筒体1の内周面で囲まれた保持部13の内部空間を仕切る材であって、筒体1と一体に形成されている。詳述すると、仕切り131は軸部A1の周面を取り囲むように設けられる部分と、筒体1の内周面から突出している部分を含み、それぞれの部分が平面視で相対するように曲面状に設けられる。また仕切り131の高さは、少なくともカプセルCの短軸の高さより高く設けられ、また好ましくは、筒体1の端面までの高さと略同一高さとして強度を高めている。
【0020】
カプセル台132は、隔壁12及び仕切り131の周面で画定される部分であり、カプセルCを一つ格納するための空間を形成している。実施形態においては3つのカプセル台132が点対称かつ等間隔に設けられているが、筒体1の径に応じて4以上設けられていてもよい。また、カプセル台132は、平面視でカプセルCの断面の一部と略同一又は少し大きい形状・大きさとすることが好ましく、カプセルCを定位置に保持することで、ブレード部22が作用したときにカプセルCを割れやすくするとともに、衝撃により意図せず割れてしまうことを防ぐ。また、隣接するカプセル台132の間には、ブレード部22の幅よりも広い空間が設けられ、初期状態(回転させていない状態、図3図7の状態)でブレード部22がここに位置するようにし、カプセルCと当接しないようにしている。
【0021】
経路孔133は、図4(a)(b)に破線で示す移動経路R上に位置するように設けられる、仕切り131の面に設けられている孔である。経路孔133は、仕切り131の上端から切り取られており、その幅は、少なくともブレード部22の幅よりも広く、カプセルCの外径よりも狭くして、カプセルCがカプセル台132から脱出しないが、かつブレード部22と干渉しないようにしている。また経路孔133の高さは、ブレード部22の回転体2からの突出高さよりも長くしてブレード部22と干渉しないようにしている。
【0022】
開口134は、カプセル台132と担体収納部14とが貫通するように、隔壁12に設けられる孔である。これを通過した液剤は担体4に保持される。また開口134は、カプセルCの断面の一部と略同一の形状であり、開口134の最大径は少なくともカプセルCの最大径よりも小さく設けられていることで、カプセルCの一部が開口134の周縁に常に当接するようにしてカプセル台132の内側への保持性能を高めている。
【0023】
担体収納部14は、隔壁12から見て保持部13の背面側に設けられ、吸引部3と相対する。担体収納部14は、筒体1の内周面と隔壁12とによって画定される部分であり、内部で担体4を挟持することで保持する。担体収納部14の高さは、保持部13の高さよりも低くしてコンパクトにすることが好ましい。
【0024】
保持部篏合部15は、筒体1の外周面に設けられ、吸引部3に設けられている吸引篏合部33と、キーとキー溝の関係となって篏合することで、筒体1と吸引部3とを協働して回転するようにしている。
【0025】
軸部A1は、隔壁12から底台5に向けて伸びる棒状の部材であって、後述する回転体2、副筒体6及び副担体7に設けられる軸孔A2を貫通し、底台5に設けられている底軸孔A21と篏合する。これにより中心軸Aを軸として貫入された部材が回転しやすくなる。また軸部A1の端部は、非円形(例えば、周面の一部に切欠きや面取りを設けた形状)に設けられており、同様の形状に設けられた底軸孔A21と篏合することで、筒体1と底台5が協働して回転するようにしている。
【0026】
回転体2は、図2、3に示すように、筒体1と副筒体6の間に設けられ、それらの材に対して相対的に回転可能に設けられている部材であって、円盤型の回転盤21と、回転盤21から伸びるブレード部22と、回転盤21の外周面を覆う回転筒23と、を有する。
【0027】
回転盤21は、図5に示すように、吸引部3から吸引したときに、副筒体6ないし副担体7から供給される揮発した剤を通過させる複数の通気孔211と、軸部A1によって貫通される軸孔A2と、を有する。なお、図5(a)は回転体2の側面図であり、図5(b)は平面図である。
【0028】
通気孔211は、回転盤21の厚み方向を貫通するように複数設けられている孔であり、回転盤21の全体に占める通気孔211の面積は10%~50%程度として、耐久性と通気性を両立できるようにする。
また、回転盤21の軸孔A2は円形の孔であり、その径を軸部A1の径よりも少し大きくして緩篏合するようにしている。これにより、軸部A1を軸に回転体2を筒体1等に対して相対的に回転させることができる。
【0029】
ブレード部22は、回転盤21の中心軸Aから離れた位置において軸方向に平行に突出する部材であって、その長さは少なくともカプセル台132に貫入する長さであり、筒体1よりも短い。実施形態において、ブレード部22は、中心軸Aから等距離に複数設けられており、その数はカプセル台132の個数と等しい。さらに、その間隔はカプセル台132の間隔と等しい。これにより、一度に複数のカプセルを破壊可能とし、吸引できる剤の量を高めることができる。また、実施形態において、ブレード部22は回転盤21と一体に設けられているが、金属製やセラミック製等のものを取り付けるようにしてもよい。
【0030】
また、実施形態のブレード部22は、回転盤21の表面と裏面において、筒体1の保持部13に向けて複数伸びる第一ブレード22Aと、副筒体6の副保持部63に向けて延びる方向に向けて複数伸びる第二ブレード22Bを有する。これにより、筒体1及び副筒体6に格納されたカプセルCをそれぞれ破壊できるようになり、吸引できる剤の量をさらに高めている。
【0031】
また、ブレード部22は、回転体2が筒体1に対して相対回転した際に、中心軸Aを中心にカプセル台132に対して相対回転する。このとき、保持部13の内部でブレード部22が移動する軌跡を移動経路Rとし、実施形態では軸部A1を中心とする円形である。
ここで、ブレード部22の初期位置は、図3に示すように、カプセル台132の間であることが好ましく、これにより不意にカプセルが破壊されることを防止する。また、第一ブレード22Aを構成するブレードは何れも同一の移動経路Rをもち、第二ブレード22Bを構成するブレードは何れも同一の移動経路Rであり、構造を単純化している。
【0032】
ブレード部22は、軸部A1と相対する部分が幅広な薄板部材となるように設けられている。詳述すると、ブレード部22の薄板部材は、中心軸から側端部にかけてさらに幅が狭まるように設けられ、その幅狭の側面端部が移動経路Rに沿うように設けられることで、カプセルCと当接する部分の圧力を高めて破壊しやすくしている。また、上述の構造はブレード部22の移動経路R上の両端に設けられていることで、回転体2をどちら向きに回転させてもカプセルCを破壊できるようにしている。
【0033】
回転筒23は、中間部分に回転盤21が配置され、回転盤21の外周縁を覆うように突出して設けられている。回転筒23の内周面は、筒体1の外周面の一部を緩く篏合することで、位置決めと中心軸Aを中心とした回転を行いやすくするとともに、カプセルCの液剤が吸引具Xの外部に漏れ出ることを防ぐ。また、回転筒23の外周面には、軸方向に平行に凹凸が設けられ、ここを把持した状態で使用者が回しやすくしている。
【0034】
吸引部3は、使用者が吸い込み動作を行う際に鼻や口に当てて、吸引動作を行うための部分であって、全体として先細り形状に設けられる。実施形態では吸引具Xの一端部に設けられ、使用時に使用者と当接する吸引部本体31と、筒体1の外周面を覆う筒被覆部32と、保持部篏合部15と篏合する吸引篏合部33と、を有する。
【0035】
吸引部本体31は、筒被覆部32と隣接して端部に向かって先細りになる先細り部分と、筒被覆部32よりも小径の筒型部分と、により設けられている。小径の筒型部分は、その端部にある吸引口311で内側に折り返され、返し312を形成している。
【0036】
返し312は、筒型部分の外周から離間しており、軸部と略平行に先細り部分まで伸びている。返し312の内径は、軸部A1の径よりも小さく設けられ、担体4に保持されなかった液体がそのまま吸引されることを防ぐ。
【0037】
筒被覆部32は、その内周面で筒体1の外周面を篏合するように設けられている。また、筒被覆部32の内周面には、保持部篏合部15と篏合する吸引篏合部33が一体に設けられ、これがキーとキー溝の関係になることで、筒体1と吸引部3が協働して回転する。
【0038】
担体4は、筒体1と吸引部3との間に格納されている部材であって、例えばスポンジや綿、不織布などの多孔質の材が挙げられる。担体4は外径が担体収納部14の内径と略同一か少し大きい柔軟性の円柱材であり、担体収納部14と吸引部3の間に収納された状態で保持されるようにしている。担体4は、少なくとも保持部13に保持されるカプセルC内部の液の合計容量よりも体積が大きく設けられ、カプセルCの液体が揮発されるまで担持する。また中心軸A等に孔が設けられ、表面積を増やして液剤の揮発性を高めている。
【0039】
底台5は、軸方向の端部に配置され、内部に気体が吸入される部分であって、筒型の底筒51と、底筒51に面張されるように配置される底面部52と、を有する。
【0040】
底筒51は、副筒体6を挿入する挿入部511と、挿入部511と一体に設けられ、端部方向に延長するように突出する延長部512と、挿入部511に設けられる底台篏合部513とを有する。挿入部511の内周面は、副筒体6の外周面と篏合し、底台篏合部513が後述する副保持部篏合部65と、キーとキー溝の関係になることで、底台5と副筒体6とが協働して回転する。延長部512の端面は中心軸Aに略垂直であり、底面部52の端部よりも外側に設けられるため、吸引部3が地面に接しないように吸引具Xを立てることができる。
【0041】
底面部52は、中心軸A上に軸部A1と篏合可能に設けられる底軸孔A21と、底軸孔A21の周辺に設けられ、空気を吸入するための孔である吸入孔521と、を有する。
また、底面部52は、中心軸Aを中心に端部側に膨らむように設けられ、底軸孔A21のスペースを確保するとともに強度を高めている。
【0042】
底軸孔A21は、軸孔A2の一部であり、底面部52から筒型の材が吸引部3の方向に延在するように設けられ、この延在している部分の内周面が軸部A1の外周と篏合する。なお、底軸孔A21の内周にネジ穴が設けられ、さらに軸部A1がネジを取り付け可能となるように中空に設けられていてもよい。この場合、ネジを取り付けることで、底台5と筒体1とが固定接続され、その間にある回転体2等も安定して保持できる。
【0043】
吸入孔521は、連通する孔部分であり、底軸孔A21から離れて副担体7と相対するように設けられることで、空気の吸引を可能とする。ここで、吸入孔521は、副担体7との間に空隙を形成するように相対しており、他の部品と接触していない副担体7の表面積を増やすことで、吸引しやすくしている。
【0044】
副筒体6は、筒体1と略同一の構造であり、筒型の副筒本体61と、副筒体6の内側に面張して設けられ、副筒本体61内部の空間を二分する副隔壁62と、内部でカプセルを保持する副保持部63と、副担体7を収納する副担体収納部64と、底台5と篏合する副保持部篏合部65と、軸孔A2と、を備えている。
【0045】
副保持部63は保持部13と略同一の機能及び構造であり、仕切りと、カプセル台と、経路孔と、開口と、を有する。ここで、副保持部63の仕切りは軸部A1を緩篏合する筒型に設けられる軸孔A2を取り囲む部分を含む。
また、副担体収納部64は担体収納部14と略同一の構造であるが、副担体収納部64の容量は担体収納部14の容量よりも大きい。
【0046】
副保持部篏合部65は、副筒本体61の外周面に設けられ、底台篏合部513と、キーとキー溝の関係となることで、副筒体6と底台5とが協働して回転する。なお、副保持部篏合部65を含め、キーとキー溝の関係となる篏合部は複数設けられていてもよく、形状は図のように半円筒型の部分が篏合するようにしても、単に突片としてもよい。
【0047】
副担体7は、担体4と同様に吸水性を有する円柱型の材であり、副担体収納部64と底筒51の間に挟持されるように設けられている。副担体7は、担体4と略同一の構造・機能・形状であるが、担体4よりも容量を大きくし、重力に従い底台5に向かう液剤を確実に保持して漏れ出ないようにしてあり、またその厚みを副担体収納部64の高さよりも高くしてもよい。また、中心を貫通する軸孔A2を有する。
【0048】
副担体7も軸孔A2を有し、これは中心軸A上に軸部A1を貫通するための円形の孔である。この軸孔A2は、底軸孔A21の外径と内径が略同一か少し大きくなるように設けられ、底台5と協働して回転するようにしている。この軸孔A2の内径は、中心軸Aから副隔壁62の開口までの距離よりも小さくなるように設けられていることで、カプセルCの液剤が副担体7の上で漏出して確実に保持できるようにしている。
【0049】
以下、図1図5を用いて、本発明の実施の方法について詳述する。本発明は、カプセルCの内部の液剤を揮発させ、吸引する使用者によって実施される。また、以下に示す実施の方法は一例であり、実施の方法はこれに限られず、順番は前後してもよい。
【0050】
まず使用者は、回転工程として、吸引部3又は底台5を保持しながら回転体2を回転させる。これによって、回転体2が吸引部3の内部に設けられている筒体1及び底台5の内部に設けられている副筒体6に対して相対的に回転し、ブレード部22が移動経路R上を移動する。このとき、ブレード部22は経路孔133を通ってカプセル台132に移動し、さらにここに保持されているカプセルCを、押しつぶすか、切断することで破壊する。使用者は回転操作のみで内部のカプセルを簡単に破壊できる。またこのとき、複数のブレード部22が略同時にカプセルCを破壊できるようにして、一度に吸引できる液剤の量を増やしている。
【0051】
次に使用者は、待機工程として、カプセルCから漏れ出した液が、筒体1や副筒体6の開口や通気孔211を通じて担体4や副担体7に保持され、揮発されるまで待機する。
【0052】
最後に使用者は、吸引工程として吸引部3を口や鼻につけて吸引する。副担体7から揮発した剤は、副保持部63を通過し、通気孔211、開口134を通って担体収納部14に到達する。ここで、担体4から揮発する剤と合流し、そのまま吸引部3の開口から吸引される。このとき、吸入孔521から空気が吸入することで、吸引具Xの内部が減圧して吸引しにくくなることを防ぐ。また軸部A1は、筒状であるが貫通していないため揮発した剤の濃度を高められる。
【0053】
《第二の実施形態》
以下に、図6及び図7を用いて、本発明の第二の実施形態に係る吸引具Xについて説明する。ここで、第一の実施形態と同様の機能を有する部品については、同じ符号を用いて説明を省略する。
【0054】
吸引具Xは、内部にカプセルCを保持する筒体1と、中心軸Aを軸に筒体1に対して相対的に回転可能な回転体2と、使用者が吸引する吸引部3と、液を保持する担体4と、下端を保持する底台5と、を有する。実施形態において、筒体1は、回転体2と副回転体8との間に挟まれるように設けられ、筒体1と副回転体8の間に副担体7が設けられている。また、中心軸A上には、軸部A1と軸孔A2とを有する。
【0055】
筒体1は、筒本体11と、筒本体11を中心軸Aに垂直に仕切る隔壁12と、を備え、内部空間が二分されている。また、筒体1は、カプセルCを保持する保持部13と、担体4及び副担体7を保持して収納するための担体収納部14と、軸孔A2とを有する。
【0056】
実施形態において、隔壁12の両側に保持部13及び担体収納部14がそれぞれ設けられ、吸引部3に向く側に第一保持部13A及び担体4を収納する第一担体収納部14Aが設けられ、底台5に向く側に第二保持部13B及び副担体7を収納する第二担体収納部14Bが設けられている。
【0057】
筒本体11は、キーやキー溝となる篏合部は設けられておらず、回転体2、吸引部3及び底台5から独立して相対回転できるようにしている。このように吸引部3と底台5の間の材が外部に露出して相対回転することで、使用者は使用方法を簡単に認識できる。また、筒本体11の外周面には軸方向に平行な凹凸が等間隔に設けられている。
【0058】
保持部13は、第一保持部13Aと第二保持部13Bの何れにおいても、第一実施形態と同様に隔壁12から突出する仕切り131、カプセル台132、経路孔133と、隔壁12に設けられる開口134とを有する。ここで、仕切り131の端部は、筒本体11の端部から離れて端面が開放されるように設けられ、仕切り131と筒本体11の端部との間の空間ないしその周面を覆う筒体が担体収納部14となる。これにより、カプセル台132に保持されたカプセルCは、担体4又は副担体7と直接相対し、漏出した液を保持しやすくできる。
【0059】
担体収納部14は、筒本体11の両端から延在するように設けられる筒型の部材であって、内側で担体4ないし副担体7を保持できるようにしている。担体収納部14において、一端の外周面は吸引部3の内周面と篏合し、他端の外周面が底台5の内周面と篏合して取り付けられる。これらの外周面は平滑で内側に凹む段となっており、取付位置を画定している。
【0060】
また、実施形態において開口134は、第一保持部13Aと第二保持部13Bが貫通するように隔壁12の上に設けられている開口であって、液を通過させて一の保持部13と反対側にある担体に液剤を保持できるように連通し、気体を通過させ吸引を容易にする。
軸孔A2は、仕切り131と略同一の高さの筒型材に設けられている孔である。仕切り131はこの筒型材の周囲を取り囲むように配置される。
【0061】
回転体2は、筒体1と吸引部3の間に挟持され、吸引部3と協働し、筒体1に対して相対的に回転できるように設けられている。回転体2は、外径が吸引部3の内径と略同一か少し小さい円盤型の回転盤21と、回転盤21から筒体1に向けて伸びるブレード部22と、回転体篏合部24と、底台5に向けて伸びる軸部A1と、を有する。
【0062】
実施形態において、回転盤21は軸方向で筒体1と吸引部3の間に挟持され、筒体1側の面は担体4と当接する。また、回転盤21は、吸引部3に揮発した液を挿通させるための通気孔211が設けられている。また、ブレード部22は、担体4を貫通し、さらにカプセル台132の内部まで伸びて、カプセルCを破壊できるようにしている。また、回転体篏合部24は、吸引篏合部33と、キーとキー溝の関係になるようにして、回転体2と吸引部3とが協働して回転できるようにしている。また、回転盤21の中心からは、筒型の軸部A1が伸びており、その端部は副回転軸孔A22の内側と篏合することで、回転体2と副回転体8が協働して回転する。
【0063】
担体4は、第一担体収納部14Aに収納され、ブレード部22が貫入する貫入孔41と、軸孔A2が設けられている。また担体4は、第一保持部13Aのカプセル台132と協働してカプセルCを保持するための空間を形成する。また、副担体7は、担体4よりも厚みが大きい同一の構造で、軸孔A2を有し、第二担体収納部14Bに収納される。
【0064】
底台5は、底筒51と、底面部52と、底軸孔A21とを備える。実施形態で底軸孔A21は、軸部A1から離れる単なる開口として設けられ、吸入孔521の役割も持つ。
【0065】
副回転体8は、筒体1と底台5の間に挟持され、底台5と協働し、筒体1に対して相対的に回転できるように設けられている。その構造は回転体2と略同一であって、円盤型の副回転盤81と、副回転盤81から筒体1に向けて伸びる副ブレード部82と、副回転体篏合部83と、軸部A1が貫入する副回転軸孔A22と、を有する。
【0066】
副回転盤81は回転盤21と略同一の機能・構造でありその面に含む副通気孔811は底台5と副担体7とを開通させて吸入を容易にしている。また、副ブレード部82は副担体7を貫通できるようにブレード部22よりも長く設けられている。副回転体篏合部83は、底台篏合部513と篏合することで底台5と協働して回転する。
【0067】
副回転軸孔A22は、副回転盤81から吸引部3の方向に伸びる筒型の部材であって、その内周面が軸部A1と篏合する。この内周面は非円形に設けられているため、軸部A1と協働して回転するようになり、回転体2と副回転体8は協働して回転する。
【0068】
本実施形態に係る吸引具の使用方法について、先ず使用者は吸引部3又は底台5を保持しながら筒体1を回転させて、内部のカプセルCを破壊する。次に使用者は担体4又は副担体7に保持された液剤の揮発が開始されるまで待機し、その後吸引を行う。
【0069】
ここで、吸引部3と、底台5との間にカプセルC内部の液剤を保持可能な担体4が配置されていることで、液剤を揮発して吸引することを容易にしている。またカプセル台132と、吸引部3との間に担体4が配置されていることで、吸引部3に液剤が直接流入することを阻止している。さらに、担体4はカプセル台132と隣接することで漏出する液剤が確実に保持されるようにしている。
【0070】
また、ブレード部22は、中心軸Aと平行に突出することで、シンプルな構造でブレード部22を干渉させることなくカプセルCに作用させられる。一方、ブレード部22は、筒型とした回転体2の内周面から中心軸Aに向けて突出するように設けてもよく、これによれば中心軸Aからの距離を最大限長くしてカプセルCへの破壊力を向上できる。
【0071】
また、ブレード部22は、間隔を空けて複数設けられることで、カプセルCを割るために必要な回転の量を減じ、使用性能を高められる。さらに複数のブレード部22が同一の移動経路にあり、さらに経路孔133が設けられていることで、一部のブレード部22が割れても他のブレード部22が作用可能でありフェイルソフトになる。
【0072】
また、カプセル台132は、移動経路R上に複数設けられていることで、一の吸引具Xで吸入できる液剤の量を高めることができる。カプセル台132が中心軸Aから離れることで、この設計を容易にできる。
【0073】
また、保持部13は軸方向に複数設けられており、前記ブレード部は、それぞれの前記保持部に相対していることで、さらに吸入できる液剤の量を増やしている。なお筒体1と底台5の間において、軸方向でさらに別の筒体や回転体を連結して設けることで一の吸引具Xから吸引できる液剤の量を増やしてもよい。
【0074】
他の変更例として、副筒体6を設けず回転体2に隣接するように底台5を設けてよりコンパクトにしてもよい。実施形態においては、ブレード部22が一度に複数のカプセルCを破壊できるようにしているが、ブレード部22の数をカプセルCの数よりも少なくし、カプセルCを一個又は数個ずつ破壊できるようにしてもよい。この場合、さらに回転体2が所定の相対角度となったときに一時停止できる機構を設けることが好ましい。また、第一実施形態では筒体1、吸引部3、底台5及び副筒体6は一体に回転するように設けられているが、筒体1と副筒体6は別々に回転できるようにしてもよく、第二実施形態では回転体2と副回転体8とを別々に回転できるようにしてもよい。これにより、それぞれの保持部に格納されているカプセルCを別に吸引できる。この場合、カプセルCに封入される液剤をそれぞれ異なるものとすれば、カプセルCのバリエーションが増えて使用性能がさらに高まる。また、軸部A1については、筒体1、回転体2、吸引部3又は底台5の何れか一つの中心軸A上に設けられ、その他の材の中心軸Aに当たる位置に軸部を貫入するための軸孔A2が設けられていればよく、軸部A1は両方向に伸びるようにしてもよい。また、複数のブレード部22の長さや材質をそれぞれ異なるようにして、カプセルCを段階的に破壊できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
X 吸引具
1 筒体
11 筒本体
12 隔壁
13 保持部
131 仕切り
132 カプセル台
133 経路孔
134 開口
13A 第一保持部
13B 第二保持部
14 担体収納部
14A 第一担体収納部
14B 第二担体収納部
15 保持部篏合部
2 回転体
21 回転盤
211 通気孔
22 ブレード部
22A 第一ブレード
22B 第二ブレード
23 回転筒
24 回転篏合部
3 吸引部
31 ノズル本体
311 吸引孔
312 返し
32 筒被覆部
33 吸引篏合部
4 担体
5 底台
51 底筒
511 挿入部
512 延長部
513 底台篏合部
52 底面部
521 吸入孔
6 副筒体
61 副筒本体
62 副隔壁
63 副保持部
64 副担体収納部
65 副保持部篏合部
7 副担体
8 副回転体
81 副回転盤
811 副通気孔
82 副ブレード部
83 副回転体篏合部
C カプセル
A 中心軸
A1 軸部
A2 軸孔
A21 底軸孔
A22 副回転軸孔
R 移動経路
【要約】
【課題】
コンパクトでありながら取り扱いの性能を高められる吸引具を提供することを目的とする。
【解決手段】
上記課題を解決する本願発明は、筒体1と、筒体1に対し中心軸Aで相対回転可能に接続する回転体2と、外部と連通する吸引部3と、を備える。筒体1は、カプセルCを保持する保持部13を有し、回転体2は、カプセルCを破壊可能なブレード部22を有し、保持部13は、中心軸Aから離れた位置にカプセルCを保持するカプセル台113を有し、ブレード部22は、回転体2が相対回転する際に、移動経路Rに沿って相対移動するように設けられ、カプセル台113は、移動経路R上に配置されている。
【選択図】図3

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7