(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/00 20060101AFI20241125BHJP
F16H 57/00 20120101ALI20241125BHJP
F16H 57/031 20120101ALI20241125BHJP
【FI】
F16H61/00
F16H57/00
F16H57/031
(21)【出願番号】P 2024509228
(86)(22)【出願日】2023-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2023011612
(87)【国際公開番号】W WO2023182449
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022047608
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004141
【氏名又は名称】弁理士法人紀尾井坂テーミス
(72)【発明者】
【氏名】神谷 将弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武司
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 智也
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-223452(JP,A)
【文献】国際公開第2021/015205(WO,A1)
【文献】特開2018-179253(JP,A)
【文献】特開平9-145487(JP,A)
【文献】特開2019-65885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
F16H 57/00
F16H 57/031
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の回転要素を有する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケース内の下部に配置されるセンサと、
前記センサとコネクタ部とを電気的に接続する電線と、を備える動力伝達装置であって、
前記ケースは、前記動力伝達機構を収容し、周壁により規定される第1室と、前記動力伝達機構のコントロールバルブを収容する第2室と、を有し、
前記第1室と前記第2室は、車両前後方向で隣り合っており、
前記周壁は、前記車両前後方向における
前記第2室側に、前記複数の回転要素のうちの1つを収容する収容部を有しており、
前記電線は、前記収容部の開口を塞ぐカバー部材に支持されており、
前記センサは、前記第1室の下部に配置され、
前記コネクタ部は、前記第2室の上部に配置され、
前記電線は、前記第1室と前記第2室との間で配策され、
前記動力伝達機構の回転軸方向から見て、前記電線は、前記複数の回転要素のうちの1つに対し前記第2室と反対側の領域において、前記複数の回転要素の間を通って前記第1室の下部から前記第2室の上部まで配策されている、動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ケースは、前記第1室と前記第2室とを区画する隔壁部を有しており、
前記隔壁部の上部に、前記第1室と前記第2室とを連通させる開口部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項3】
請求項
2において、
前記ケースは、前記第2室の領域を囲む囲繞壁と、前記囲繞壁の開口を塞ぐカバーと、を有しており、
前記囲繞壁は、前記動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした車両前方側に、前記開口を向けて設けられている、動力伝達装置。
【請求項4】
請求項
2において、
前記コントロールバルブには、前記開口部を通って前記第1室と前記第2室との間で配策された前記電線の係止部が設けられている、動力伝達装置。
【請求項5】
請求項
4において、
前記コントロールバルブは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を有しており、前記係止部は、前記セパレートプレートに設けた切欠部である、動力伝達装置。
【請求項6】
請求項
1から請求項
5の何れか一項において、
前記カバー部材において前記電線は、前記カバー部材の突起と、前記カバー部材を前記ケースに固定するボルトを利用して位置決めされている、動力伝達装置。
【請求項7】
請求項
1から請求項
5の何れか一項において、
前記第1室内では、前記動力伝達機構の入力軸と前記動力伝達機構の出力軸が、水平線方向に離れて位置しており、
前記第1室内では、前記動力伝達装置の回転軸方向から見て、前記入力軸と前記出力軸との間にストレーナが配置されており、
前記センサは、前記第1室の下部のオイル貯留部に配置される油温センサであり、
前記油温センサは、前記オイル貯留部に配置された前記ストレーナに付設されている、動力伝達装置。
【請求項8】
請求項
7において、
前記動力伝達装置の回転軸方向から見て、前記第1室では、前記ストレーナから見て前記第2室側に、一対の回転体にチェーンを巻き掛けた回転伝達機構が設けられており、
前記一対の回転体のうちの一方の回転体は、前記カバー部材で回転可能に支持されており、
前記カバー部材に支持された前記電線は、前記一方の回転体の外周に沿って前記第1室の下部から上部に配策されている、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用の自動変速機における油温検出装置の取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、油温センサ(センサ)を、ストレーナとオイルパンとの間のデッドスペースに配置することが開示されている。
油温センサは、当該油温センサの検出信号を出力するための電線を有している。電線の端部には、他の端子に接続するコネクタ部が設けられている。
【0005】
ケース内に油温センサを配置するに際し、油温センサは、ケース内に貯留されたオイル内に油没させる必要がある。一方で、コネクタ部は、ケース内に貯留されたオイルに油没しない位置で他の端子に接続する必要がある。
【0006】
そのため、ストレーナに油温センサを取り付けるに際し、油温センサから延びる配線のレイアウト(取り回し)によっては、ケースが大型化する。
そこで、ケースを大型化させることなくセンサを配置できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は、
複数の回転要素を有する動力伝達機構と、
前記動力伝達機構を収容するケースと、
前記ケース内の下部に配置されるセンサと、
前記センサとコネクタ部とを電気的に接続する電線と、を備える動力伝達装置であって、
前記動力伝達機構の回転軸方向から見て、前記電線は、前記複数の回転要素の間を通って前記ケースの上部まで配策されて、前記コネクタ部を前記ケースの上部に配置させる、動力伝達装置とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明のある態様によれば、ケースを大型化させることなくセンサ部を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、車両における動力伝達装置の配置を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、動力伝達装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ケースを第2カバー側から見た模式図である。
【
図4】
図4は、ハウジングを車両前方側から見た模式図である。
【
図5】
図5は、第1室と第2室とを連通させる開口部周りの拡大図である。
【
図6】
図6は、コントロールユニットにおける係止部を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、第1室における電線の配策を説明する図である。
【
図8】
図8は、電線を支持するダミーカバーを説明する図である。
【
図9】
図9は、取付具による電線の支持を説明する図である。
【
図10】
図10は、第1室における電線の配策を説明する模式図である。
【
図11】
図11は、変形例にかかる動力伝達装置を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
始めに、本明細書における用語の定義を説明する。
動力伝達装置は、少なくとも動力伝達機構を有する装置であり、動力伝達機構は、例えば、歯車機構と差動歯車機構と減速機構の少なくともひとつである。
以下の実施形態では、動力伝達装置1がエンジンの出力回転を伝達する機能を有する場合を例示するが、動力伝達装置1は、エンジンとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の出力回転を伝達するものであれば良い。
【0011】
「所定方向視においてオーバーラップする」とは、所定方向に複数の要素が並んでいることを意味し、「所定方向にオーバーラップする」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいることが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていることを説明した文章があるとみなして良い。
【0012】
「所定方向視においてオーバーラップしていない」、「所定方向視においてオフセットしている」とは、所定方向に複数の要素が並んでいないことを意味し、「所定方向にオーバーラップしていない」、「所定方向にオフセットしている」と記載する場合と同義である。「所定方向」は、たとえば、軸方向、径方向、重力方向、車両前後方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
図面上において複数の要素(部品、部分等)が所定方向に並んでいないことが図示されている場合は、明細書の説明において、所定方向視においてオーバーラップしていないことを説明した文章があるとみなして良い。
【0013】
「所定方向視において、第1要素(部品、部分等)は第2要素(部品、部分等)と第3要素(部品、部分等)との間に位置する」とは、所定方向から観察した場合において、第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが観察できることを意味する。「所定方向」とは、軸方向、径方向、重力方向、車両走行方向(車両前進方向、車両後進方向)等である。
例えば、第2要素と第1要素と第3要素とが、この順で軸方向に沿って並んでいる場合は、径方向視において、第1要素は第2要素と第3要素との間に位置しているといえる。図面上において、所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることが図示されている場合は、明細書の説明において所定方向視において第1要素が第2要素と第3要素との間にあることを説明した文章があるとみなして良い。
【0014】
軸方向視において、2つの要素(部品、部分等)がオーバーラップするとき、2つの要素は同軸である。
「軸方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸の軸方向を意味する。「径方向」とは、動力伝達装置を構成する部品の回転軸に直交する方向を意味する。部品は、例えば、モータ、歯車機構、差動歯車機構等である。
【0015】
コントロールバルブの「縦置き」とは、バルブボディの間にセパレートプレートを挟み込んだ基本構成を持つコントロールバルブの場合、コントロールバルブのバルブボディが、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした水平線方向で積層されていることを意味する。ここでいう、「水平線方向」とは、厳密な意味での水平線方向を意味するものではなく、積層方向が水平線に対して傾いている場合も含む。
【0016】
さらに、コントロールバルブの「縦置き」とは、コントロールバルブ内の複数の調圧弁を、動力伝達装置の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向に並べた向きで、コントロールバルブが配置されていることを意味する。
「複数の調圧弁を鉛直線VL方向に並べる」とは、コントロールバルブ内の調圧弁(弁体)が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置されていることを意味する。
【0017】
この場合において、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に一列に厳密に並んでいる必要はない。
例えば、複数のバルブボディを積層してコントロールバルブが形成されている場合には、縦置きされたコントロールバルブにおいては、複数の調圧弁が、バルブボディの積層方向に位置をずらしつつ、鉛直線VL方向に並んでいても良い。
【0018】
さらに、調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向に間隔をあけて並んでいる必要はない。
調圧弁が備える弁体の軸方向(進退移動方向)から見たときに、複数の調圧弁が、鉛直線VL方向で隣接している必要もない。
【0019】
よって、例えば、鉛直線VL方向に並んだ調圧弁が、バルブボディの積層方向(水平線方向)に位置をずらして配置されている場合には、積層方向から見たときに、鉛直線VL方向で隣接する調圧弁が、一部重なる位置関係で設けられている場合も含む。
【0020】
さらに、コントロールバルブが「縦置き」されている場合には、コントロールバルブ内の複数の調圧弁が、当該調圧弁が備える弁体(スプール弁)の移動方向を水平線方向に沿わせる向きで配置されていることを意味する。
この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、厳密な意味の水平線方向に限定されるものではない。この場合における弁体(スプール弁)の移動方向は、動力伝達装置の回転軸Xに沿う方向である。この場合において、回転軸X方向と、弁体(スプール弁)の摺動方向が同じになる。
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1は、車両Vにおける動力伝達装置1の配置を説明する模式図である。
図2は、動力伝達装置1の概略構成を説明する模式図である。
【0022】
図1に示すように、車両Vの前部において動力伝達装置1は、左右のフレームFR、FRの間に配置される。動力伝達装置1のハウジングHSは、ケース6と、第1カバー7と、第2カバー8と、第3カバー9とから構成される。
図2に示すように、ハウジングHSの内部に、トルクコンバータT/C、前後進切替機構2、バリエータ3、減速機構4、差動装置5、電動オイルポンプEOP、メカオイルポンプMOP、コントロールバルブCVなどが収容される。
【0023】
動力伝達装置1では、エンジンENG(駆動源)の出力回転が、トルクコンバータT/Cを介して、前後進切替機構2に入力される。
前後進切替機構2に入力された回転は、順回転または逆回転で、バリエータ3のプライマリプーリ31に入力される。
【0024】
バリエータ3では、プライマリプーリ31とセカンダリプーリ32におけるベルト30の巻き掛け半径を変更することで、プライマリプーリ31に入力された回転が、所望の変速比で変速されて、セカンダリプーリ32の出力軸33から出力される。
【0025】
セカンダリプーリ32の出力回転は、減速機構4を介して差動装置5(差動歯車機構)に入力された後、左右の駆動軸55A、55Bを介して、駆動輪WH、WHに伝達される。
【0026】
減速機構4は、アウトプットギア41と、アイドラギア42と、リダクションギア43と、ファイナルギア45とを、有する。
アウトプットギア41は、セカンダリプーリ32の出力軸33と一体に回転する。
アイドラギア42は、アウトプットギア41に回転伝達可能に噛合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44にスプライン嵌合している。アイドラギア42は、アイドラ軸44と一体に回転する。アイドラ軸44には、アイドラギア42よりも小径のリダクションギア43が設けられている。リダクションギア43は、差動装置5のデフケース50の外周に固定されたファイナルギア45に、回転伝達可能に噛合している。
【0027】
動力伝達装置1では、プライマリプーリ31の回転軸X1(第1軸:動力伝達機構の入力軸)上で、前後進切替機構2と、トルクコンバータT/Cと、エンジンENGの出力軸が、同軸(同芯)に配置される。
セカンダリプーリ32の出力軸33と、アウトプットギア41とが、セカンダリプーリ32の回転軸X2(第2軸)上で、同軸に配置される。
アイドラギア42と、リダクションギア43とが、共通の回転軸X3(第3軸)上で同軸に配置される。
ファイナルギア45と、駆動軸55A、55Bが、共通の回転軸X4(第4軸:動力伝達機構の出力軸)上で同軸に配置される。動力伝達装置1では、これら回転軸X1~X4が互いに平行となる位置関係に設定されている。以下においては、必要に応じて、これら回転軸X1~X4を総称して、動力伝達装置1(動力伝達機構)の回転軸Xとも表記する。
【0028】
図3は、ケース6を、第2カバー8側から見た状態を示す模式図である。
図3に示すように、ケース6は、筒状の周壁部61と、隔壁部62と、を有する。周壁部61の車両前方側の外周に、後記する第2室S2を形成する収容部68が付設されている。
隔壁部62は、動力伝達機構の回転軸(回転軸X1~回転軸X4)を横切る範囲に設けられる。
図2に示すように、隔壁部62は、周壁部61の内側の空間を、回転軸X1方向で2つに区画する。回転軸X1方向における隔壁部62の一方側が第1室S1、他方側が第3室S3である。
【0029】
第1室S1には、前後進切替機構2と減速機構4と差動装置5と、が収容される。第3室S3には、バリエータ3が収容される。
ケース6では、第1室S1側の開口が、第2カバー8(トルコンカバー)で封止される。第3室S3側の開口が、第1カバー7(サイドカバー)で封止される。
ケース6では、第1カバー7と第2カバー8との間の空間(第1室S1、第3室S3)の下部に、動力伝達装置1の作動や、動力伝達装置1の構成要素の潤滑に用いられるオイルが貯留される。
【0030】
図3に示すように、ケース6は、第2カバー8側(紙面手前側)の端面が、第2カバー8との接合部611となっている。接合部611は、隔壁部62の第2カバー8側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。接合部611には、第2カバー8側の接合部811(
図2参照)が全周に亘って接合される。ケース6と第2カバー8は、互いの接合部611、811同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、ケース6の開口が第2カバー8で封止された状態で保持されて、閉じられた第1室S1が形成される。
【0031】
図3に示すように、ケース6では、接合部611の内側に、隔壁部62が位置している。
ケース6の隔壁部62は、回転軸(回転軸X1~X4)に対して略直交する向きで設けられている。隔壁部62には、貫通孔621、622、624と、支持穴623が設けられている。
貫通孔621は、回転軸X1を中心として形成されている。隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔621を囲む円筒状の支持壁部631と、支持壁部631の外周を、間隔をあけて囲む周壁部641とが、設けられている。
図3において支持壁部631と周壁部641は、紙面手前側(
図2における第2カバー8側)に突出している。
【0032】
支持壁部631と周壁部641の間の領域651は、前後進切替機構2のピストン(図示せず)や、摩擦板(前進クラッチ、後進ブレーキ)などを収容するリング状の空間である。
支持壁部631の内周には、ベアリングBを介して、プライマリプーリ31の入力軸34(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0033】
図3に示すように、貫通孔622は、回転軸X2を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X2は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方に位置している。
【0034】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔622を囲む円筒状の支持壁部632が設けられている。支持壁部632の内周には、ベアリングBを介して、セカンダリプーリ32の出力軸33(
図2参照)が回転可能に支持される。
【0035】
図3に示すように、支持穴623は、回転軸X3を中心として形成された有底穴である。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X3は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め上方、かつ回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方に位置している。
【0036】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、支持穴623を囲む円筒状の支持壁部633が設けられている。支持壁部633の内周には、ベアリングBを介して、減速機構4のアイドラ軸44(
図2参照)の一端側が、回転可能に支持される。
【0037】
図3に示すように、貫通孔624は、回転軸X4を中心として形成されている。
車両Vに搭載された動力伝達装置1において、回転軸X4は、回転軸X1から見て車両後方側の斜め下方、回転軸X2から見て車両後方側の斜め下方、そして、回転軸X3から見て車両前方側の斜め下方に位置している。
【0038】
隔壁部62における第1室S1側(紙面手前側)の面では、貫通孔624を囲む円筒状の支持壁部634が設けられている。支持壁部634の内周には、ベアリングBを介して、差動装置5のデフケース50(
図2参照)が、回転可能に支持される。
図2に示すように、デフケース50の外周には、回転軸X4方向から見てリング状を成すファイナルギア45が固定されている。ファイナルギア45は、デフケース50と一体に回転軸X4周りに回転する。
【0039】
図3に示すようにケース6では、前記した円弧状の周壁部641の下側であって、ファイナルギア45よりも車両前方側の領域が、オイル貯留部67となっている。
オイル貯留部67は、開口を第2カバー8側(
図3における紙面手前側)に向けた有底の空間である。
【0040】
動力伝達装置1の車両への設置状態を基準とした鉛直線VL方向で、ケース6内の下部領域が、第1室S1におけるオイル貯留部67である。
オイル貯留部67内には、隔壁部62で支持されたストレーナ10が、吸入口11を下方に向けて配置されている。
【0041】
動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、ストレーナ10は、動力伝達機構の入力軸(回転軸X1)と、動力伝達機構の出力軸(回転軸X4)との間に位置している。
ストレーナ10は、接線Lmおよび直線Lnと交差する位置に設けられている。接線Lmは、周壁部641の外周と、ファイナルギア45の外周とを結ぶ直線である。直線Lnは、周壁部641とファイナルギア45との間を通り、接線Lmに直交する直線である。
【0042】
動力伝達装置1では、周壁部641とファイナルギア45との間の領域が使用されないデッドスペースとなる傾向が高い。このデッドスペースで、ストレーナ10を鉛直線VL方向の上側に寄せて配置することで、ケース6が鉛直線VL方向に大型化することを抑制している。
本実施形態では、車両Vの走行時の加速や減速により、ハウジングHS(ケース6)内のオイルOLの高さ位置(オイルレベル)が変動しても、常にオイルOLが存在するケース6内の領域に、オイル貯留部67が設定されている。
そのため、オイル貯留部67内でストレーナ10を、吸入口11を下方に向けて配置することで、オイルOLの吸入口11が、オイル貯留部67内のオイルに油没するようにされている。これにより、オイル貯留部67内のオイルOLをストレーナ10内に吸引する際に、いわゆるエア吸いを起こし難くしている。
【0043】
図3に示すように、動力伝達機構の入力軸(回転軸X1)は、動力伝達機構の出力軸(回転軸X4)よりも上側に位置している。そのため、ストレーナ10から見て車両前方側には、鉛直線VL方向に空間的な余裕がある。
本実施形態では、ストレーナ10から見て車両前方側に、メカオイルポンプMOPが配置されている。ストレーナ10の接続部105は、メカオイルポンプMOPの接続口120に接続されている。メカオイルポンプMOPが駆動されると、オイル貯留部67内のオイルOLがストレーナ10を介して、メカオイルポンプMOP側に吸引される。
ストレーナ10の下部では、メカオイルポンプMOP寄りの位置(図中、右寄りの位置)に吸入口11が位置している。吸入口11は、動力伝達機構の入力軸(回転軸X1)を通る鉛直線VLの車両後方側の近傍に位置している。
【0044】
なお、ストレーナ10は、接続部106を有している。接続部106は、接続部105に対して直交する向きで設けられている。接続部106は、
図3における紙面奥側に延びている。接続部106は、前記した隔壁部62内の油路に接続する。接続部106は、隔壁部62内の油路(図示せず)を介して、電動オイルポンプEOPに連絡している。
ストレーナ10の接続部105は、隔壁部62に固定されたメカオイルポンプMOPに支持されている。ストレーナ10の接続部106は、隔壁部62に支持されている。
ストレーナ10は、メカオイルポンプMOPと隔壁部62の2点で支持されている。
【0045】
図2に示すように、ケース6では、車両前方側の側面に、収容部68が付設されている。
収容部68は、開口を車両前方側に向けて設けられている。収容部68は、回転軸X1に沿う向きで設けられている。回転軸X1の径方向から見て収容部68は、ケース6の周壁部61の領域から、第1カバー7の側方まで及ぶ回転軸X1方向の範囲を持って形成されている。
【0046】
収容部68の底壁部682は、エンジンENG側の略半分の領域が、周壁部61と一体になっている。底壁部682の反対側の略半分の領域は、周壁部61の延長上で、第1カバー7の外周との間に隙間を開けて設けられている。
以下の説明においては、底壁部682における周壁部61と一体となった領域(周壁部61と共用する領域)を、必要に応じて、区画壁685と表記する。区画壁685と表記した場合には、
図6に示した底壁部682のうち、ケース6の周壁部61と重なる領域を示すものとする。
なお、
図2では、区画壁685の領域を明確にするために、区画壁685の領域に交差したハッチングを付している。
【0047】
図4は、ハウジングHSを、車両前方側から見た状態を示す模式図である。
図4に示すように、車両前方側から見て収容部68は、底壁部682の外周を全周に亘って混む囲繞壁681を有している。囲繞壁681の紙面手前側の端面は、第3カバー9との接合部683となっている。接合部683は、囲繞壁681の第3カバー9側の開口を全周に亘って囲むフランジ状の部位である。
図2に示すように、接合部683には、第3カバー9側の接合部911が全周に亘って接合される。収容部68と第3カバー9は、互いの接合部683、911同士を接合した状態で、図示しないボルトで連結される。これにより、収容部68の開口が第3カバー9で封止された状態で保持されて、閉じられた第2室S2が形成される。
【0048】
第2室S2内には、コントロールバルブCVと、電動オイルポンプEOPが収容される。
図2に示すように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。コントロールバルブCVの内部には、油圧制御回路(図示せず)が形成されている。油圧制御回路には、制御装置(図示せず)からの指令に基づいて駆動するソレノイドや、ソレノイドで発生させた信号圧などで作動する調圧弁(スプール弁)が設けられている。
【0049】
図4に示すように、第2室S2内では、コントロールバルブCVが、バルブボディ921、921の積層方向を車両前後方向(紙面、手前奥方向)に沿わせた向きで、縦置きされている。
第2室S2では、コントロールバルブCVが、以下の条件を満たすように、縦置きされている。(a)コントロールバルブCV内の複数の調圧弁SP(スプール弁)が、動力伝達装置1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線VL方向(上下方向)に並ぶ、(b)調圧弁SP(スプール弁)の進退移動方向Xpが水平線方向に沿う向きとなる。
【0050】
これにより、コントロールバルブ内のスプール弁の進退移動方向が、水平線方向に沿う向きで配置される。さらに、コントロールバルブ内のスプール弁が、鉛直線VL方向に位置をずらして配置される。よって、スプール弁の進退移動が阻害されないようにしつつ、第2室S2が車両前後方向に大型化しないようにされている。
【0051】
図4に示すように、車両前方側から見てコントロールバルブCVは、矩形形状のバルブボディ921に切欠部923を設けた略L字形状を成している。第2室S2において切欠部923は、車両前方側から見て第1カバー7と重なる領域の下部に位置している。
車両前方側から見て切欠部923には、電動オイルポンプEOPが収容されている。
【0052】
電動オイルポンプEOPは、制御部931と、モータ部932と、ポンプ部933が、モータの回転軸Z1方向で直列に並んだ基本構成を有する。
電動オイルポンプEOPは、回転軸Z1を、動力伝達装置1の回転軸Xに直交させた向きで設けられている。この状態において、ポンプ部933は、第2室S2内の最下部に位置している。ポンプ部933の吸入口933aと吐出口933bは、モータ部932との境界側に位置している。ポンプ部933の吸入口933aは、ケース6内の油路を介してストレーナ10に接続されている。ポンプ部933の吐出口933bは、ケース6内の他の油路を介して、コントロールバルブCVに接続されている。
【0053】
コントロールバルブCVは、ストレーナ10が配置される第1室S1(
図3参照)とは別の第2室S2に収容されている。
図4では、車両前方側から見てストレーナ10は、第2室S2の下部の紙面奥側に配置されている(図中、隠れ線参照)。
本実施形態では、電動オイルポンプEOPのポンプ部933を、第2室S2内の下部に位置させることで、ポンプ部933の吸入口933aと、ストレーナ10との鉛直線VL方向の位置が近づくようにしている。ストレーナ10と電動オイルポンプEOPの吸入口933aとを接続する油路の油路長が最短となるようにするためである。
【0054】
コントロールバルブCVの上部側は、電動オイルポンプEOPの上方まで及んでいる。鉛直線VL方向(電動オイルポンプEOPの回転軸Z1方向)から見ると、電動オイルポンプEOPが、コントロールバルブCVと重なる位置関係で設けられている。
コントロールバルブCV内の油圧制御回路は、オイルポンプで発生させた油圧から、動力伝達機構(トルクコンバータT/Cなど)の作動油圧を調圧する。
【0055】
動力伝達装置1は、オイルポンプとして、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPを1つずつ備えている。これらオイルポンプは、ハウジングHS内の下部に貯留されたオイルOLを吸引、加圧して、コントロールバルブCV内の油圧制御回路に供給する。これらオイルポンプは、動力伝達装置1を搭載した車両の走行中に少なくとも一方が駆動される。尚、以下の説明においては、メカオイルポンプMOPと、電動オイルポンプEOPを区別しない場合には、単純にオイルポンプOPと標記する。
【0056】
本実施形態では、ストレーナ10が、電動オイルポンプEOPとメカオイルポンプMOPで共用される。
メカオイルポンプMOPが駆動されると、ハウジングHSの下部のオイル貯留部67に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して、メカオイルポンプMOPに吸引される。メカオイルポンプMOPに吸引されたオイルOLは、加圧されたのち、ケース内油路を通って、コントロールバルブCVに供給される。
電動オイルポンプEOPが駆動されると、ハウジングHSの下部のオイル貯留部67に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10とケース内油路を介して、電動オイルポンプEOP側に吸引される。電動オイルポンプEOPに吸引されたオイルOLは、加圧されたのち、コントロールバルブCVに供給される。
【0057】
第2室S2では、区画壁685の領域における最上部に、開口部95が設けられている。
開口部95は、第2室S2と第1室S1とを連通させている。
図5は、第1室S1と第2室S2とを連通させる開口部95周りの拡大図である。
図6は、コントロールバルブCVにおける係止部99を説明する斜視図である。なお、
図5では、開口部95の位置を判り易くするために、開口部95の領域に、接合部683の領域と同様の交差したハッチングを付して示している。
【0058】
図5に示すように、車両前方側(紙面手前側)から見て開口部95は、略L字形状を成している。開口部95は、第1領域951と第2領域952とを有する。第1領域951は、囲繞壁681の内側を車幅方向(図中、左右方向)に延びている。第1領域951の下縁951aは、コントロールバルブCVの上端縁925よりも上側に位置している。
第2領域952は、第1領域951の第2カバー8側(図中、左側)の領域から、コントロールバルブCV側の下方に延びている。
【0059】
コントロールバルブCVのバルブボディ921では、第2カバー8側の上部に凹部924が設けられている。
開口部95の第2領域952は、コントロールバルブCVの凹部924まで及んで設けられている。
第2領域952の下辺952aは、コントロールバルブCVの凹部924の上縁924aと略同じ高さ位置に位置している。
車両前方側から見ると、第2領域952と、コントロールバルブCV側の係止部99とが重なる位置関係で設けられている。
【0060】
前記したように、コントロールバルブCVは、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有する(
図6参照)。
本実施形態では、バルブボディ921、921の上部の角に凹部924を設けることで、セパレートプレート920の上部側の角の領域を、凹部924内に露出させている。そして、セパレートプレート920における凹部924内に露出した領域を、温度センサ90(
図7参照)から延びる電線91の係止部99として用いている。
係止部99は、切欠孔97を有している。切欠孔97は、第1領域971と第2領域972とを有する。第1領域971は、電線91の直径Dよりも僅かに大きい内径の略円形の領域である。第2領域972は、第1領域971の第2カバー8側(図中、左側)の上部の切り欠かれた領域である。
第2領域972は、電線91の直径Dよりも僅かに小さい間隙Lxの隙間を持って形成されている。間隙Lxは、開口部95(第2領域952)を通って紙面手前側に延びる電線91を、第2領域972の部分から第1領域971の内部に挿入できることが可能な幅で設定されている。
本実施形態では、係止部99は、第1室S1と第2室S2とに跨がって配置された電線91のうち、第2室S2内に位置する領域を保持するために設けられている。
【0061】
図7は、第1室S1における電線91の配策を説明する図である。
図8は、電線91を支持するダミーカバー21を説明する図である。
図9は、固定具96による電線91の支持を説明する図である。
【0062】
図3および
図7に示すように、動力伝達装置1では、ストレーナ10から見て収容部68(図中、右側)に、回転伝達機構150により駆動されるメカオイルポンプMOPが位置している。
図7に示すように、回転伝達機構150は、ドライブスプロケット151と、ドリブンスプロケット152と、チェーン153と、から構成される。
図2に示すように、ドライブスプロケット151は、トルクコンバータT/Cのインペラスリーブ155を介して入力される回転駆動力で、回転軸X1回りに回転する。
インペラスリーブ155は、前後進切替機構2の入力軸20に外挿されている。入力軸20は、周壁部641の開口を塞ぐダミーカバー21で回転可能に支持されている。
ドライブスプロケット151とインペラスリーブ155は、前後進切替機構2の入力軸20で回転可能に支持されている。
【0063】
図7に示すように、ドライブスプロケット151に入力された回転は、チェーン153を介して、ドリブンスプロケット152に伝達される。ドリブンスプロケット152は、伝達された回転で回転軸X5回りに回転する。ドリブンスプロケット152が回転すると、ドリブンスプロケット152が連結されたメカオイルポンプMOPの回転軸が回転して、メカオイルポンプMOPが駆動される。
これにより、ケース6の下部に貯留されたオイルOLが、ストレーナ10を介して吸引される。
【0064】
ストレーナ10は、当該ストレーナ10に吸入されるオイルOLの温度を測定するための温度センサ90(センサ、油温センサ)を有している。温度センサ90は、ストレーナ10の側面に付設されている。温度センサ90は、先端側のセンサ部901を、ストレーナ10の吸入口11の側方に配置させている。温度センサ90は、少なくともセンサ部901が、オイル貯留部67内に貯留されたオイルOLに油没する位置に設けられている。
【0065】
温度センサ90のセンサ部901には、電線91の一端が接続されている。
図2に示すように、電線91の他端には、相手側コネクタ93に接続されるコネクタ部92(
図4参照)が接続されている。電線91は、温度センサ90とコネクタ部92とを電気的に接続している。センサ部901の出力信号が、電線91を介して、外部の処理装置(例えば、動力伝達装置1の制御装置)に出力される。
【0066】
図4に示すように、本実施形態では、コネクタ部92は、コントロールバルブCVを収容する第2室S2内で、相手側コネクタ93に接続されている。相手側コネクタ93は、図示しない制御装置に接続すると共に、配線94を介して外部との接続端子98に接続されている。
図7に示すように、接続端子98は、第3カバー9の表面に露出している。この接続端子98には、車両側のコネクタが接続される。
【0067】
ここで、温度センサ90は、センサ部901を油没させる一方で、コネクタ部92を、油没しない位置で相手側コネクタ93に接続する必要がある。そのため、本実施形態では、コネクタ部92を、第1室S1から区画された第2室S2内で、相手側コネクタ93に接続している。
【0068】
図7に示すように、第1室S1では、温度センサ90から見て第2室S2側(コネクタ部92を配置する収容部68側)に、前記した回転伝達機構150が位置している。温度センサ90と収容部68(開口部95:
図10参照)とを最短で繋ぐ経路Rmを、回転伝達機構150のチェーン153が鉛直線VL方向(図中、上下方向)に横切っている。
そのため、回転軸X方向から見て動力伝達装置1では、温度センサ90から延びる電線91を、回転伝達機構150を迂回して配策する必要がある。
電線91の配策経路には、ドライブスプロケット151の上側を迂回する経路1と、ドリブンスプロケット152の下側を迂回する経路2がある。
【0069】
しかし、(a)ストレーナ10に付設した温度センサ90は、センサ部901を下方に向けて配置するために、電線91が、温度センサ90の上側から引き出されている。(b)回転伝達機構150の第2室S2側(図中、右側)には周壁部61が近接配置されているために、電線91を配置する空間的な余裕に乏しい。(c)周囲の回転体(回転要素)との干渉を避けるために、電線91を位置決めする保持具が必要となるが、回転伝達機構150の第2室S2側(図中、右側)には、保持具を設定するための空間的な余裕が乏しい。
そのため、本実施形態では、ドライブスプロケット151の上側を迂回するように電線91を配策している。
【0070】
図8は、電線91を支持するダミーカバー21を説明する図である。
図9は、固定具96による電線91の支持を説明する図である。なお、
図8では、動力伝達装置1の車両への設置状態を基準とした鉛直線VLと水平線HLを重畳表示している。
【0071】
図3に示すように、ケース6では、前後進切替機構2の収容部を形成するための周壁部641が、紙面手前側(第2カバー8)側に開口を向けて設けられている。この周壁部641の開口を塞ぐダミーカバー21(
図2参照)が、第2カバー8側から周壁部641に組み付けられて、ボルトBL、BL1、BL2で固定される(
図7参照)。
【0072】
図8に示すように、ダミーカバー21は、ボルト孔221、221A、221Bを有する周縁部220を有している。周縁部220の内側は、前後進切替機構2の第2カバー8側(紙面手前側)の側面を覆うカバー部230となっている。カバー部230の中央部に、挿通孔231が開口している。
図2に示すように、ダミーカバー21は、回転軸X1方向に所定の厚みを持つ板状部材であり、中央の挿通孔231を、前後進切替機構2の入力軸20が回転軸X1方向に貫通する。
【0073】
周縁部220では、ボルト孔221が、中心軸(回転軸X1)周りの周方向に間隔を空けて設けられている。周縁部220では、中心軸(回転軸X1)方向から見て、挿通孔231の中心を通る鉛直線VLよりも車両後方側の2箇所に、電線91を支持する固定具96A、96Bが取り付けられている。これら固定具96A、96Bは、ボルト孔221Aよりも車両前方側(図中、右側)で、挿通孔231の中心を通る水平線HLの上側と下側にそれぞれ位置している。
【0074】
さらに、鉛直線VLよりも車両前方側であって、水平線HLよりも上側にも、固定具96Cが取り付けられている。なお、以下においては、固定具96A、96B、96Cを特に区別しない場合には、単純に固定具96と表記する。
【0075】
図9に示すように、固定具96は、円板部961の一方側に、電線91の挿通孔962aを有する支持部962が位置すると共に、他方側に、4つの脚部963が設けられている。脚部963は、円板部961で片持ち支持されている。脚部963の先端側は、固定具96の中心線C96の径方向に弾性変位可能である。
【0076】
固定具96は、周縁部220に設けた取付孔222に脚部963を挿入すると、脚部963に設けた返し部963aが、取付孔222の周縁に係止されることで、取付孔222からの脱落が規制された状態で、周縁部220に取り付けられる。
【0077】
そのため、挿通孔962aに電線91が挿通された状態の固定具96を、取付孔222に取り付けることで、電線91の固定具96近傍での変位が規制される。
【0078】
図8に示すように、鉛直線VL方向における固定具96A、96Bの間には、内部に油路を持つリブ240が位置している。
リブ240は、周縁部220やカバー部230よりも紙面手前側に膨出している。リブ240は、挿通孔231の上側を水平線方向に横切る範囲に設けられている。リブ240の車両後方側の端部240aは、固定具96A、96Bよりも車両後方側に位置している。リブ240は、境界点240cよりも車両後方側(図中、左側)が、車両後方側に向かうにつれて鉛直線VL方向の高さが低くなる向きで傾斜している。
【0079】
リブ240の端部240a側の延長上に、ボルト孔221Aが位置している。リブ240の端部240aにはR加工が施されている。このR加工が施された端部240aには、電線91における固定具96A、96Bの間の領域が、車両後方側から圧接している。
【0080】
リブ240は、境界点240cよりも車両前方側が、車両前方側の端部240bに向かうにつれて鉛直線VL方向の高さが低くなる向きで傾斜している。
【0081】
鉛直線VLよりも車両前方側では、リブ240の上側に、固定具96Cが位置している。
リブ240の上側では、固定具96B、96Cが、鉛直線VL方向の略同じ高さ位置に配置されている。これら固定具96B、96Cよりも上側に、ボルト孔221Bが位置している。
【0082】
以下、動力伝達装置1への温度センサ90の設置過程を説明する。
図2に示すように、温度センサ90は、電線91を介して、コネクタ部92に接続されている。
温度センサ90の動力伝達装置1への設置は、コネクタ部92側から実施される。
【0083】
図4に示すように、コントロールバルブCVに付設された配線94の一部が、相手側コネクタ93に接続している。始めに、温度センサ90から延びる電線91のコネクタ部92を、相手側コネクタ93に接続する。そして、コネクタ部92から延びる電線91を、開口部95が位置する第2カバー8側(図中、左側)に向けて配策する。
図5および
図6に示すように、コントロールバルブCVでは、車両前方側から見て開口部95と重なる領域に、凹部924が設けられており、この凹部924の部分で、セパレートプレート920の係止部99が露出している。
【0084】
係止部99は、切欠孔97を有している。切欠孔97は、電線91を保持するための第1領域971と、電線91の第1領域971への挿入を可能とする第2領域972とを有する。
【0085】
そのため、コネクタ部92側から配策した電線91を、コントロールバルブCVの凹部924の角に引っかけて、開口部95側に配策する。そして、電線91を第2領域972の部分から第1領域971の内部に挿入して、係止部99の切欠孔97に電線91を係止させる。
これにより、第2室S2内では、電線91におけるコネクタ部92と係止部99との間の領域が、大きくたるむことなく配置される。
【0086】
図10に示すように、第1室S1内では、開口部95から延びる電線91が、電線91を挿通させた固定具96A、96B、96Cを、ダミーカバー21の取付孔222に挿入することで、固定具96A、96B、96Cの部分で固定される。
始めに、固定具96B、96Cを、ダミーカバー21の取付孔222に挿入したのち、電線91における固定具96Cと固定具96Bとの間の領域を、周縁部220のボルト孔221Bに螺入したボルトBL2の回転軸X1側(図中、下側)に位置させる。これにより、電線91における固定具96Cと固定具96Bとの間の領域の上側への変位が、ボルトBL2により規制される。
【0087】
さらに、電線91における固定具96Bと固定具96Aとの間の領域を、リブ240の端部240aと、ボルトBL1との間に嵌入した後、電線91を、車両後方側からリブ240の端部240aに圧接させつつ、固定具96Aをダミーカバー21に取り付ける。
そして、温度センサ90を、ストレーナ10に付設された係止片13に係止させて、温度センサ90のセンサ部901を、吸入口11の側方であって、オイル貯留部67内のオイルOLに油没する位置に配置する。ここで、係止片13は、ストレーナ10の側面で片持ち支持されており、係止片13の先端は、ストレーナ10の側面(温度センサ90の設置面)に対して接離する方向に弾性変位可能である。よって、温度センサ90のストレーナ10の側面への取り付けが容易に行えるようになっている。
【0088】
このようにして電線91を配策すると、温度センサ90から延びる電線91が、ダミーカバー21の周縁部220に沿って配置される。これにより、電線91は、ダミーカバー21で支持されたドライブスプロケット151(
図7参照)の外周に沿って略円弧状に配置される。
すなわち、電線91は、回転軸X1から見て、他の回転軸X2、X3、X4側を迂回して、回転軸Xと、他の回転軸X2、X3、X4との間の領域を通って、ケース6の下部から上部まで配策される。この状態において電線91は、固定具96A、96B、96Cで位置決めされると共に、ボルトBL1とリブ240との間で位置決めされる。
これにより、ダミーカバー21で電線91が強固に支持されて、電線91が周囲の回転体と干渉しないようになっている。
【0089】
さらに、温度センサ90からケース6の上部に引き出された電線91は、鉛直線VL方向における回転軸X1の上側を通って、第2室S2内に引き出されている。最終的に電線91は、温度センサ90とは反対側の端部に接続するコネクタ部92を、第2室S2内の上部で、相手側コネクタ93に接続している。
第2室S2における電線91が配策される領域には、第1室S1のようにオイルOLが貯留されていないので、オイルOLが、コネクタ部92と相手側コネクタ93との接続部に干渉しないようになっている。
【0090】
以上の通り、本実施形態にかかる動力伝達装置1は、以下の構成を有している。
(1)動力伝達装置1は、
複数の回転要素を有する動力伝達機構と、
動力伝達機構を収容するハウジングHS(ケース)と、
ハウジングHS内の下部に配置される温度センサ90(センサ)と、
温度センサ90とコネクタ部92とを電気的に接続する電線91と、を備える。
温度センサ90は、ハウジングHSの下部のオイル貯留部67に配置される。
動力伝達機構の回転軸X方向から見て、電線91は、複数の回転要素の間を通ってハウジングHS内の上部まで配策されて、コネクタ部92をハウジングHSの上部に配置させる。
【0091】
このように構成すると、ハウジングHS内の下部に配置された温度センサ90と、ハウジングHS内の上部に配置されたコネクタ部92が、複数の回転要素の間を通って配策した電線91で接続される。
複数の回転要素を迂回して電線91を配策する場合には、電線91の全長が長くなると共に、複数の回転要素を迂回して電線91を配策するためにハウジングHSが大型化する。
上記のように構成すると、電線91の全長が長くなることを防ぎつつ、ハウジングHSの大型化を防止できる。
【0092】
(2)ハウジングHSは、前後進切替機構2(第1の回転要素)を収容する収容部となる領域651を有している。
電線91は、領域651の開口を塞いで、前後進切替機構2の側方を覆うダミーカバー21(カバー部材)に支持されている。
【0093】
複数の回転要素の間を通って電線91を配策するに際し、回転要素と電線91との干渉を避けるために、電線91を支持する必要がある。ハウジングHS内の既存の部品であるダミーカバー21に電線91を支持させることで、電線91を支持するための専用の別部品を追加する必要が無い。別部品を追加する場合には、ハウジングHS内のレイアウトの見直しなどが必要となる場合もあり、ハウジングHSが大型化する可能性もある。既存の部品であるダミーカバー21に電線91を支持させることで、部品点数の増加と、ハウジングHSの大型化を好適に防止できる。
【0094】
(3)ハウジングHSは、動力伝達機構を収容する第1室S1と、動力伝達機構のコントロールユニットであるコントロールバルブCVを収容する第2室S2と、を有する。
温度センサ90は、第1室S1の下部のオイル貯留部67に配置される。
コネクタ部92は、第2室S2に配置される。
電線91は、第1室S1の上部と第2室S2との間で配策されている。
【0095】
このように構成すると、第1室S1内の複数の回転要素の間を通って、第1室S1の下部から上部まで配策した電線91が、そのまま第2室S2まで配策されて、コネクタ部92が第2室S2に配置される。
これにより、複数の回転要素の外側を迂回して、電線91を第2室S2まで配策する場合よりも、電線91の全長を短くできる。さらに、ハウジングHSおける第1室S1の部分が、複数の回転要素の外側を迂回して電線91を配策する場合のように大型化することを好適に防止できる。
【0096】
(4)ハウジングHSは、第1室S1と第2室S2とを区画する区画壁685(隔壁部)を有する。
区画壁685の上部に、第1室S1と第2室S2とを連通させる開口部95が設けられている。
【0097】
このように構成すると、電線91を、ハウジングHSの外部を迂回させずに、第1室S1の上部と第2室S2との間で配策できる。電線91をハウジングHSの外部を迂回させる場合には、外部を迂回させた電線91の分だけ、動力伝達装置1が大型化する。
上記のように構成すると、動力伝達装置1の大型化を好適に防ぐことができる。
【0098】
(5)ハウジングHSは、第2室S2の領域を囲む囲繞壁681と、囲繞壁681の開口を塞ぐ第3カバー9(カバー)と、を有する。
囲繞壁681は、動力伝達装置1の車両への設置状態を基準とした車両前方側に、開口を向けて設けられている。
【0099】
このように構成すると、コネクタ部92が配置される第2室S2は、車両前方側に開口している。動力伝達装置1が搭載された車両では、動力伝達装置1の車両前方側のほうが、車幅方向よりも空間的な余裕がある。第3カバー9を外すだけで、第2室S2へのアクセスできるので、第2室S2内において電線91のコネクタ部92を、第2室S2内に位置する相手側コネクタ93に接続する作業を簡単に実施できる。
【0100】
(6)コントロールバルブCVには、開口部95を通って第1室S1と第2室S2との間で配策された電線91の係止部99が設けられている。
【0101】
第2室S2内に配置したコントロールバルブCVに、係止部99を設けることで、第2室S2内に位置する電線91を、コントロールバルブCVに支持させることができる。
これにより、第2室S2に電線91を支持するための部品を別途用意する必要が無い。別途部品を用意する場合には、第2室S2の大型化や、動力伝達装置1の重量増加が懸念されるが、かかる事態の発生を好適の防止できる。
【0102】
(7)コントロールバルブCV(コントロールユニット)は、バルブボディ921、921の間にセパレートプレート920を挟み込んだ基本構成を有している。
係止部99は、セパレートプレート920に設けた切欠孔97(切欠部)である。
【0103】
このように構成すると、バルブボディ921の本体に係止部を設ける場合よりも、セパレートプレート920に係止部に相当する切欠孔97を設けるほうが、係止部を簡便に設けることができる。
【0104】
(I)バルブボディ921、921には、セパレートプレート920の切欠孔97の領域を露出させる凹部924が設けられている。
バルブボディ921、921の積層方向(車両前方側)から見て、凹部924と、切欠孔97の領域とが重なる位置関係で設けられている。
【0105】
このように構成すると、セパレートプレート920の切欠孔97に、電線91を係止させるために、セパレートプレート920を、バルブボディ921、921から大きく突出させる必要が無い。かかる場合、セパレートプレート920が大型する。セパレートプレート920が大型すると、ハウジングHSもまた大型化する。
上記のように、バルブボディ921、921側に凹部924、924を設けたことで、コントロールバルブCVを大型化させることなく、電線91の係止部を設けることができるので、ハウジングHSの大型化を好適に防止できる。
【0106】
(8)ダミーカバー21において電線91は、ダミーカバー21から第2カバー8側に突出するリブ240(突起)と、ダミーカバー21をハウジングHS(ケース6)に固定するボルトBL1とを利用して、位置決めされている。
【0107】
このように構成すると、ボルトBL1とリブ240との間に電線91を把持させて設けることができるので、電線91をダミーカバー21上の所定位置に保持できる。
さらに、回転伝達機構150の構成要素との干渉を避けて、温度センサ90から延びる電線91を配策するに際し、電線91をダミーカバー21に支持させるために用いる固定具96の数を減らすことができる。
【0108】
(9)第1室S1内では、動力伝達機構の入力軸(回転軸X1)と動力伝達機構の出力軸(回転軸X4)が、水平線HL方向に沿う車両前後方向に離れて位置している。
第1室S1内では、動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、入力軸(回転軸X1)と出力軸(回転軸X2)との間にストレーナ10が配置されている。温度センサ90は、ハウジングHS(第1室S1)内の下部のオイル貯留部67に配置された油温センサである。温度センサ90は、ストレーナ10に付設されている。
【0109】
このように構成すると、オイル貯留部67内のオイルOLに油没するストレーナ10に温度センサ90を取り付けることができるので、温度センサ90は、オイルOLに確実に油没させることができる。これにより、温度センサ90は、オイル貯留部67内のオイルOLの温度を適切に測定できる。また、ストレーナ10は、メカオイルポンプMOPと隔壁部62の2点で支持されているので、支持安定性が高い。支持安定性の高いストレーナ10に温度センサ90を付設することで、温度センサ90の設置安定性を確保できる。
【0110】
(II)ストレーナ10の第2カバー8側の側面に、ストレーナ10の本体部で片持ち支持された係止片13が設けられている。
温度センサ90は、ストレーナ10の本体部と係止片13との間で把持されている。
温度センサ90は、センサ部901を下方に向けて配置されている。第2カバー8側から見てセンサ部901は、ストレーナ10の吸入口11を重なる位置関係で設けられている。
電線91は、温度センサ90の上部に接続されている。
【0111】
このように構成すると、温度センサ90をストレーナ10に簡単に取り付けることができる。また、センサ部901がオイルOLの吸入口11の近傍に配置されるので、ストレーナ10内に吸引されるオイルOLの温度を適切に測定できる。
ストレーナ10内に吸引されたオイルOLは、動力伝達機構の駆動や潤滑に用いられるので、動力伝達機構に供給されるオイルOLの温度を適切に検出できる。
【0112】
(10)動力伝達装置1の回転軸X方向から見て、第1室S1では、ストレーナ10から見て第2室S2側に、ドライブスプロケット151とドリブンスプロケット152とにチェーン153を巻き掛けた回転伝達機構150が設けられている。
ドライブスプロケット151は、ダミーカバー21で回転可能に支持されている。
ダミーカバー21に支持された電線91は、ドライブスプロケット151の外周に沿って第1室S1の下部から上部に配策されている。
【0113】
このように構成すると、回転伝達機構150の構成要素との干渉を避けて、温度センサ90から延びる電線91を配策できる。
【0114】
(III)回転伝達機構150は、一対の回転体(ドライブスプロケット151、ドリブンスプロケット152)と、一対の回転体(ドライブスプロケット151、ドリブンスプロケット152)に巻き掛けられたチェーン153と、から構成される。
一対の回転体は、チェーンスプロケットである。
温度センサ90と収容部68(開口部95)とを最短で繋ぐ経路Rmを、回転伝達機構150のチェーン153が鉛直線VL方向に横切っている。
【0115】
回転伝達機構150が、温度センサ90から延びる電線91を、第2室S2に向けて最短距離で配策する経路を横切って配置されているので、上記のように構成することで、回転伝達機構150の構成要素との干渉を避けつつ電線91を適切に配策できる。
【0116】
図11は、変形例にかかる動力伝達装置1Aを説明する模式図である。
前記した実施形態では、ストレーナ10を収容する第1室S1と、コントロールバルブCVを収容する第2室S2とが、区画壁685により完全に分かれている場合を例示した。
図11に示すように、第1室S1と第2室S2とが開口95Aを介して連通しているケース6Aを採用した動力伝達装置1Aとしても良い。
この動力伝達装置1Aでは、コントロールバルブCVが開口95Aを塞いで、第1室S1と第2室S2とを区画するように配置される。
このような構成の動力伝達装置1Aであっても、動力伝達装置1Aの大型化を防ぎつつ、ハウジングHS内に空間的な余裕が生じさせて、ハウジングHS内のレイアウト性を向上させることができる。
【0117】
前記した実施形態では、温度センサ90から延びる電線91を、配策する場合を例示したが、例えば、前後進切替機構2の入力軸20の回転を検出するセンサ(回転センサ)から延びる電線の配策に、ダミーカバー21での支持や、係止部99による支持を用いても良い。
また、温度センサ90から延びる電線91と、回転センサから延びる電線とを束ねて、束ねた配線の配策にダミーカバー21での支持や、係止部99による支持を用いても良い。
【0118】
前記した実施形態では、動力伝達装置1がエンジンENGの回転を駆動輪WH、WHに伝達する場合を例示したが、動力伝達装置1は、エンジンENGとモータ(回転電機)のうちの少なくとも一方の回転を駆動輪WH、WHに伝達するものであっても良い。例えば、1モータ、2クラッチ式(エンジンENGと動力伝達装置の間にモータが配置され、エンジンENGとモータの間に第1のクラッチが配置され、動力伝達装置1内に第2のクラッチが配置された形式)の動力伝達装置であっても良い。
また、前記した実施形態では、動力伝達装置1が変速機能を有している場合を例示したが、動力伝達機構は変速機能を持たず、単に減速する(増速であってもよい)ものであっても良い。動力伝達装置が変速機能を有しておらず、動力伝達装置が、モータの回転を減速して駆動輪WH、WHに伝達する構成である場合には、モータの冷却用のオイルOLと、減速機構の潤滑用のオイルOLを供給するための油圧制御回路を、電動オイルポンプEOP共に、第2室S2に配置することになる。また、前記した実施形態では、動力伝達装置1のコントロールユニットがコントロールバルブCVを備えた場合を例示したが、動力伝達装置1が、変速機構をも持たず、また、駆動源がエンジンENGではなく、モータ(回転電機)の場合にあっては、モータを駆動制御するインバータ等を備えたコントロールユニットであっても良い。
【0119】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は、これら実施形態に示した態様のみに限定されるものではない。発明の技術的な思想の範囲内で、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0120】
1 動力伝達装置
10 ストレーナ
11 吸入口
13 係止片
150 回転伝達機構
151 ドライブスプロケット(一対の回転体)
152 ドリブンスプロケット(一対の回転体)
2 前後進切替機構(動力伝達機構:第1の回転要素)
21 ダミーカバー(カバー部材)
240 リブ(突起)
3 バリエータ(動力伝達機構)
4 減速機構(動力伝達機構)
5 差動装置(動力伝達機構)
651 領域(収容部)
681 囲繞壁
685 区画壁(隔壁部)
67 オイルOL貯留部
9 第3カバー(カバー)
90 温度センサ(センサ、油温センサ)
91 電線
92 コネクタ部
920 セパレートプレート
921 バルブボディ
924 凹部
95 開口部
97 切欠孔(切欠部)
99 係止部
BL1、BL2、BL ボルト
CV コントロールバルブ(コントロールユニット)
S1 第1室
S2 第2室
T/C トルクコンバータ
HS ハウジング(ケース)