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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】生体電極及び生体信号測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/24 20060101AFI20241125BHJP
   A61B 5/263 20210101ALI20241125BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20241125BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20241125BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01B1/24 Z
A61B5/263
C08K3/01
C08K3/04
C08L83/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019162702
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021044066
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】泊 省吾
(72)【発明者】
【氏名】山田 渉
(72)【発明者】
【氏名】井戸 聞多
(72)【発明者】
【氏名】須藤 正
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】中野 浩昌
【審判官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-242855(JP,A)
【文献】特開2008-163282(JP,A)
【文献】国際公開第2018/230445(WO,A1)
【文献】特開平2-206546(JP,A)
【文献】特開昭62-47374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B1/24
A61B5/263
C08L83/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体と接触する生体接触部として下記の導電部材を備える、
生体電極;
シリコーンゴムと導電剤とを含有し、
前記導電剤が、DBP吸油量が200cm/100g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm/100g以上の第二のカーボンブラックとを含み、
ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm以下であり、
体積抵抗率が1×10 Ω・cm以下であり、
ゴム硬度が30°以上60°以下である、
導電部材。
【請求項2】
ケイ素数が3以上12以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が500ppm以下である前記導電部材を備える、請求項1に記載の生体電極
【請求項3】
前記第一のカーボンブラックが、DBP吸油量が130cm/100g以上200cm/100g未満のカーボンブラックである前記導電部材を備える、請求項1又は請求項2に記載の生体電極
【請求項4】
前記第二のカーボンブラックの含有量が、シリコーンゴム100質量部に対して、15質量部以上25質量部以下である前記導電部材を備える、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の生体電極
【請求項5】
前記導電部材に含まれるカーボンブラック全体のDBP吸油量が、120cm/100g以上300cm/100g以下である前記導電部材を備える、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の生体電極
【請求項6】
前記第一のカーボンブラックのDBP吸油量と前記第二のカーボンブラックのDBP吸油量との差の絶対値が70cm/100g以上400cm/100g以下である前記導電部材を備える、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の生体電極
【請求項7】
体積抵抗率が1×10 Ω・cm以下である前記導電部材を備える、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の生体電極
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の生体電極を備え、生体信号を測定する生体信号測定装置。
【請求項9】
前記生体信号が脳波である、請求項に記載の生体信号測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材、生体電極及び生体信号測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面が金、銀又は白金で覆われた粒子が分散した樹脂層を備える生体電極が開示されている。
特許文献2には、AS樹脂とABS樹脂と炭素繊維と含有する生体電極が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-11931号公報
【文献】特開2018-33769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、シリコーンゴムと導電剤とを含有しケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm超である導電部材に比べ、体積抵抗率を低減した導電部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
【0006】
<1> シリコーンゴムと導電剤とを含有し、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm以下である導電部材。
<2> ケイ素数が3以上12以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が500ppm以下である、<1>に記載の導電部材。
<3> 前記導電剤がカーボンブラックを含む、<1>又は<2>に記載の導電部材。
<4> 前記カーボンブラックが、DBP吸油量が異なる2種以上のカーボンブラックを含む、<3>に記載の導電部材。
<5> 前記カーボンブラックが、DBP吸油量が200cm/100g未満の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm/100g以上の第二のカーボンブラックとを含む、<3>又は<4>に記載の導電部材。
<6> 前記第一のカーボンブラックのDBP吸油量と前記第二のカーボンブラックのDBP吸油量との差の絶対値が70cm/100g以上400cm/100g以下である<5>に記載の導電部材。
<7> 体積抵抗率が1×10Ω・cm以下である、<1>~<6>のいずれか1項に記載の導電部材。
<8> ゴム硬度が30°以上60°以下である、<1>~<7>のいずれか1項に記載の導電部材。
<9> 生体と接触する生体接触部として、<1>~<8>のいずれか1項に記載の導電部材を備える生体電極。
<10> <9>に記載の生体電極を備え、生体信号を測定する生体信号測定装置。
<11> 前記生体信号が脳波である、<10>に記載の生体信号測定装置。
【発明の効果】
【0007】
<1>又は<3>に係る発明によれば、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm超である導電部材に比べ、体積抵抗率を低減した導電部材が提供される。
<2>に係る発明によれば、ケイ素数が3以上12以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が500ppm超である導電部材に比べ、体積抵抗率を低減した導電部材が提供される。
<4>、<5>又は<6>に係る発明によれば、DBP吸油量が同じである1種のカーボンブラックのみを含む導電部材に比べ、導電部材の低抵抗化と動的追随性の両方に優れる導電部材が提供される。
<7>に係る発明によれば、体積抵抗率が1×10Ω・cm超である導電部材に比べ、生体信号の検出精度に優れる導電部材が提供される。
<8>に係る発明によれば、ゴム硬度が60°超である導電部材に比べ、動的追随性に優れる導電部材が提供される。
<9>に係る発明によれば、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm超である導電部材を備える場合に比べ、生体信号の検出精度に優れる生体電極が提供される。
<10>に係る発明によれば、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm超である導電部材を備える場合に比べ、生体信号の検出精度に優れる生体信号測定装置が提供される。
<11>に係る発明によれば、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppm超である導電部材を備える場合に比べ、脳波の検出精度に優れる生体信号測定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る生体電極の一例を示す概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る生体電極の他の一例を示す概略斜視図である。
図3】本実施形態に係る生体信号測定装置の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0011】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0013】
本開示において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0015】
<導電部材>
本実施形態に係る導電部材は、シリコーンゴムと導電剤とを含有し、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンの総含有量(質量基準)が5000ppm以下である。ppmは、parts per million(百万分率)の略である。
【0016】
ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンは、下記の化学式で表される化学物質である。下記の化学式中のnは、3以上24以下の整数である。
本開示において、ケイ素数がnである環状ジメチルポリシロキサンを「Dn環状ジメチルポリシロキサン」といい、ケイ素数が3以上24以下である環状ジメチルポリシロキサンを「D3~D24環状ジメチルポリシロキサン」という。
【0017】
【化1】
【0018】
従来、生体電極の生体接触部を構成する導電部材として、シリコーンゴムに導電剤(例えばカーボンブラック)を配合した導電部材が知られている。シリコーンゴムは、生物学的安全性に優れているが絶縁性であるので、導電剤を配合して導電性を付与している。
本発明者が検討したところ、出来上がりの導電部材の体積抵抗率が設計値よりも高いことが分かった。さらに検討したところ、D3~D24環状ジメチルポリシロキサンの含有量を低減することにより、体積抵抗率を低減できることが分かった。
これまで、分子量の小さいオルガノポリシロキサンが電気機器内で揮発して部材表面に二酸化ケイ素からなる絶縁皮膜を形成することは知られていたが、本実施形態が体積抵抗率を低減した導電部材を提供できる機序は、絶縁皮膜の形成抑制ではなく、導電部材内に含まれているD3~D24環状ジメチルポリシロキサン量の低減自体によるものと推測される。なぜなら、導電部材の製造直後に開放空間において試験を行って(つまり、導電部材表面に絶縁皮膜が形成されにくい状態で)、導電部材の体積抵抗率とD3~D24環状ジメチルポリシロキサン含有量とに相関があることが示されたからである。
【0019】
シリコーンゴムと導電剤とを含有する導電部材において、D3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総含有量が5000ppmを超えると、導電部材の体積抵抗率が高過ぎ、生体信号を精度高く測定することが困難になる。導電部材の体積抵抗率を低減する観点から、導電部材に含まれるD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総含有量は5000ppm以下であり、4000ppm以下がより好ましく、3000ppm以下が更に好ましい。導電部材の体積抵抗率を低減する観点からは、導電部材に含まれるD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総含有量は少ないほど好ましい。
【0020】
導電部材の体積抵抗率を低減する観点からは、本実施形態に係る導電部材においてD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総含有量は少ないほど好ましく、0ppmであることが最も好ましいと言える。ただし、導電部材からD3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去する手段(詳しくは後述する。)によってシリコーンゴムのゴム硬度が高まり導電部材の柔軟性が低下することがあるので、D3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去する手段を穏やかに実施することが好ましく、したがって、ある程度のD3~D24環状ジメチルポリシロキサン含有量は許容される。本実施形態に係る導電部材に含まれるD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの含有量の下限は、例えば、0ppm以上、0ppm超、1ppm以上、5ppm以上、10ppm以上、50ppm以上、100ppm以上、又は500ppm以上である。
【0021】
本実施形態においてD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総含有量(ppm)は、{導電部材に含まれるD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総量÷導電部材の全体量}を百万分率に換算した値であり、質量基準である。
【0022】
導電部材に含まれるD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総量は、ガスクロマトグラフ質量分析計((株)島津製作所製、GCMS-QP2020)及び無極性カラム(Restek社製、Rtx-1、10157、膜厚1.00μm、長さ60m、内径0.32mm)を用いて、ヘッドスペース法により測定する。具体的な特定方法は次のとおりである。
シリコーンゴムを溶解する溶剤(例えば、n-テトラデカン(20μg/ml)含有アセトン10ml)に導電部材を浸し、シリコーンゴムを溶解させ、液体成分の一部を取り、バイアル瓶に入れる。バイアル瓶にキャップをして密封し、加熱時間3分間で190℃まで昇温させる。バイアルビン内の揮発成分をカラムに導入し、下記の条件でD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの検出を行う。
・キャリアガス種:ヘリウム
・キャリアガス圧:120kPa(圧力一定)
・オーブン温度:40℃(5分間)→(15℃/分)→250℃(6分間)(合計25分間)
・イオン源温度:260℃
・インターフェース温度:260℃
基準物質(D4環状ジメチルポリシロキサン、即ちオクタメチルシクロテトラシロキサン)をエタノールで希釈して濃度を振った標準液を用いて検量線を作成する。試料のクロマトグラフに現れたD3、D4、・・・、D23、D24それぞれのピーク面積と、基準物質の検量線とから、D3、D4、・・・、D23、D24の各量を求め、D3~D24の合計量を求める。さらに、導電部材の全体量に対するD3~D24環状ジメチルポリシロキサンの総含有量(ppm)を算出する。
【0023】
本実施形態に係る導電部材は、体積抵抗率を低減する観点から、ケイ素数が3以上12以下である環状ジメチルポリシロキサン(「D3~D12環状ジメチルポリシロキサン」という。)の総含有量が500ppm以下であることが好ましく、400ppm以下であることがより好ましく、300ppm以下であることが更に好ましい。
本実施形態に係る導電部材に含まれるD3~D12環状ジメチルポリシロキサンの含有量の下限は、例えば、0ppm以上、0ppm超、1ppm以上、5ppm以上、10ppm以上、50ppm以上、又は100ppm以上である。
【0024】
本実施形態に係る導電部材の用途としては、例えば、生体電極の生体接触部、イヤーピース、メガネの鼻あて先セル、帽子のスベリ部などが挙げられる。
【0025】
以下、本実施形態に係る導電部材の成分、組成、物性などについて詳細に説明する。
【0026】
-シリコーンゴム-
シリコーンゴムのゴム原料としては、例えば、ミラブルシリコーンゴム、液状シリコーンゴム、室温硬化型シリコーンゴム、高温硬化型シリコーンゴム、縮合反応型シリコーンゴム、付加反応型シリコーンゴム、紫外線硬化型シリコーンゴム等が挙げられる。
【0027】
シリコーンゴムのゴム原料としては、例えば、メチルシリコーンゴム(MQ)、ビニルメチルシリコーンゴム(VMQ)、フェニルメチルシリコーンゴム(PMQ)、フェニルビニルメチルシリコーンゴム(PVMQ)、フルオロビニルメチルシリコーンゴム(FVMQ)等が挙げられる。
【0028】
シリコーンゴムのゴム原料には、硬化反応の種類に応じて各種の添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、架橋のための白金触媒、付加反応制御剤(例えば、低温環境下で白金触媒の作用を抑制するクエンチャー)、架橋剤、光酸発生剤、光ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0029】
-導電剤-
導電剤は、電子伝導性導電剤、イオン伝導性導電剤、導電性ポリマー等のいずれでもよい。導電剤は、導電粒子であることが好ましく、例えば、カーボンブラック;金、銀、銅等の金属の粒子;酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物の粒子;硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子;などが挙げられる。これらの中でも、シリコーンゴムとのなじみがよい観点から、カーボンブラックが好ましい。
【0030】
導電剤の平均一次粒径は、シリコーンゴムへの分散性の観点から、10nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上80nm以下がより好ましく、25nm以上50nm以下が更に好ましい。
【0031】
導電剤の平均一次粒径は、次の方法により測定される。
導電部材をミクロトームで切断して、厚さ200nmの試料を採取し、断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する。導電剤の一次粒子50個の長径を測定して、その算術平均を平均一次粒径とする。
【0032】
導電剤の総含有量は、シリコーンゴム100質量部に対して、例えば40質量部以上80質量部以下である。
【0033】
-カーボンブラック-
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カラーブラック等が挙げられる。
【0034】
導電部材の低抵抗化を実現するためには、DBP吸油量が低いカーボンブラックよりも、DBP吸油量が高いカーボンブラックが有効である。
一方で、DBP吸油量が高いカーボンブラックは、DBP吸油量が低いカーボンブラックに比べてゴム材料の補強作用が高いので、DBP吸油量が高いカーボンブラックを配合すると導電部材のゴム硬度が高くなる傾向がある。したがって、導電部材の動的追随性をよくするためには、DBP吸油量が高いカーボンブラックよりも、DBP吸油量が低いカーボンブラックが有効である。また、導電部材からD3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去する手段(詳しくは後述する。)によってシリコーンゴムのゴム硬度が高まり導電部材の柔軟性が低下することがあるので、これを考慮して、DBP吸油量が低いカーボンブラックを使用することが望ましい。
したがって、本実施形態に係る導電部材は、導電部材の低抵抗化と動的追随性とを両立する観点から、DBP吸油量が比較的低いカーボンブラックと、DBP吸油量が比較的高いカーボンブラックとを両方含むことが好ましく、具体的には、DBP吸油量が200cm/100g未満(好ましくは50cm/100g以上200cm/100g未満)の第一のカーボンブラックと、DBP吸油量が200cm/100g以上(好ましくは200cm/100g以上500cm/100g未満)の第二のカーボンブラックとを含むことが好ましい。
【0035】
カーボンブラックのDBP吸油量は、カーボンブラック100gに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の量(cm)であり、ASTM D2414-6TTに定義される値である。
【0036】
第一のカーボンブラックと第二のカーボンブラックとは、導電部材の低抵抗化と動的追随性とを両立する観点から、両者のDBP吸油量の差の絶対値が、
70cm/100g以上400cm/100g以下であることが好ましく、
100cm/100g以上350cm/100g以下であることがより好ましく、
120cm/100g以上300cm/100g以下であることが更に好ましく、
150cm/100g以上250cm/100g以下であることが更に好ましい。
第一のカーボンブラックを2種以上併用する場合、第一のカーボンブラックのDBP吸油量とは、第一のカーボンブラックに当たる各カーボンブラックのDBP吸油量を各カーボンブラックの含有量比(質量基準)で重みづけした加重平均である。第二のカーボンブラックを2種以上併用する場合、第二のカーボンブラックのDBP吸油量とは、第二のカーボンブラックに当たる各カーボンブラックのDBP吸油量を各カーボンブラックの含有量比(質量基準)で重みづけした加重平均である。
【0037】
導電部材に含まれるカーボンブラック全体のDBP吸油量(各カーボンブラックのDBP吸油量を各カーボンブラックの含有量比(質量基準)で重みづけした加重平均を意味する。)は、
80cm/100g以上450cm/100g以下が好ましく、
90cm/100g以上400cm/100g以下がより好ましく、
100cm/100g以上350cm/100g以下が更に好ましく、
120cm/100g以上300cm/100g以下が更に好ましい。
【0038】
第一のカーボンブラックとしては、例えば、下記のカーボンブラックが挙げられる。
・アサヒサーマル、旭カーボン(株)製、DBP吸油量28cm/100g
・旭#50U、旭カーボン(株)製、DBP吸油量63cm/100g
・旭#70L、旭カーボン(株)製、DBP吸油量75cm/100g
・#3030B、三菱ケミカル(株)製、DBP吸油量130cm/100g
・#3050B、三菱ケミカル(株)製、DBP吸油量175cm/100g
【0039】
第二のカーボンブラックとしては、例えば、下記のカーボンブラックが挙げられる。
・旭F-200SHS、旭カーボン(株)製、DBP吸油量220cm/100g
・ECP200L、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、DBP吸油量300cm/100g
・EC300J、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、DBP吸油量365cm/100g
・ECP600JD、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、DBP吸油量495cm/100g
【0040】
カーボンブラックとしては、酸化処理によりその表面に酸素含有官能基(カルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等)が形成された酸化処理カーボンブラックであることが好ましい。酸化処理カーボンブラックは、カーボンブラックを高温雰囲気下で空気と接触させ反応させる空気酸化法、常温下で窒素酸化物やオゾン等と反応させる酸化法、高温下での空気酸化後、低温下でオゾン酸化する酸化法等により得られる。
【0041】
カーボンブラックのpHは、2以上10以下が好ましく、5以上9以下がより好ましい。カーボンブラックのpHは、20℃の水1000mlにカーボンブラック50gを加えて攪拌して調製した分散液のpHであり、JIS Z8802:2011規定のpH測定方法によって測定される値である。
【0042】
カーボンブラックの平均一次粒径は、シリコーンゴムへの分散性の観点から、10nm以上100nm以下が好ましく、20nm以上80nm以下がより好ましく、25nm以上50nm以下が更に好ましい。
【0043】
カーボンブラックの平均一次粒径は、次の方法により測定される。
導電部材をミクロトームで切断して、厚さ200nmの試料を採取し、断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する。カーボンブラックの一次粒子50個の長径を測定して、その算術平均を平均一次粒径とする。
【0044】
カーボンブラックの総含有量は、導電部材の低抵抗化と動的追随性とを両立する観点から、シリコーンゴム100質量部に対して、40質量部以上80質量部以下が好ましく、50質量部以上70質量部以下がより好ましい。
第二のカーボンブラックの含有量は、導電部材の低抵抗化と動的追随性とを両立する観点から、シリコーンゴム100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下が好ましく、15質量部以上25質量部以下がより好ましい。
第二のカーボンブラックの含有量は、第一のカーボンブラック及び第二のカーボンブラックの合計に対して、例えば、10質量%以上80質量%以下、15質量%以上75質量%以下、20質量%以上70質量%以下、25質量%以上65質量%以下である。
【0045】
-その他添加剤-
その他添加剤としては、例えば、発泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、整泡剤、充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム)、カップリング剤(例えば、カーボンブラックの分散性を向上させる目的で添加する。)、着色剤等が挙げられる。
【0046】
-導電部材の製造方法-
本実施形態に係る導電部材の製造方法は、特に制限されない。本実施形態に係る導電部材は、例えば、シリコーンゴム原料、導電剤及びその他添加剤を含むゴムコンパウンドを金型に入れ加熱して製造する。
【0047】
シリコーンゴムに含まれるD3~D24環状ジメチルポリシロキサンは、シリコーンゴムを加熱することで揮発させて除去することができる。したがって、本実施形態に係る導電部材の製造方法は、シリコーンゴム原料を硬化させるための加硫工程と、硬化後のシリコーンゴムからD3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去するための加熱工程と、を含むことが好ましい。
【0048】
加硫工程は、例えば、金型に入れたゴムコンパウンドを加熱する工程である。加硫工程における加熱温度及び加熱時間は、シリコーンゴム原料の硬化反応の種類及びシリコーンゴム原料の組成に応じて選択する。
【0049】
硬化後のシリコーンゴムからD3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去するための加熱工程は、シリコーンゴムの厚さに応じて加熱条件を設定することが望ましい。D3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去するためには、シリコーンゴムが厚いほど加熱温度を高く又は加熱時間を長くすることが望ましい。一方で、加熱温度が高いほど又は加熱時間が長いほどシリコーンゴムが硬くなる傾向があるので、シリコーンゴムの動的追随性を損なわない加熱条件に設定することが望ましい。加熱温度の例として、100℃~300℃、150℃~250℃が挙げられる。加熱温度は、一定でもよく変動してもよい。加熱時間の例として、1時間~14時間、3時間~12時間が挙げられる。
加熱工程は、D3~D24環状ジメチルポリシロキサンの揮発を促進するために、減圧下で実施してもよい。揮発したD3~D24環状ジメチルポリシロキサンが導電部材の表面に付着することを抑制するために、加熱炉内の気体を真空ポンプで引きながら加熱処理を行うことも好ましい。
【0050】
加熱処理終了後の導電部材の表面に、ショットブラスト、サンドブラスト、液体ブラスト等のブラスト処理を施してもよい。
【0051】
-導電部材の物性値-
本実施形態に係る導電部材は、生体表面に設置した電極によって生体内部の微弱な電位を測定する生体電極の生体接触部に好適である。本実施形態に係る導電部材を生体電極の生体接触部に適用した場合の望ましい物性値は次のとおりである。
【0052】
導電部材の体積抵抗率は、低抵抗化の観点から、1×10Ω・cm以下が好ましく、1×10Ω・cm以下がより好ましく、1×10Ω・cm以下が更に好ましい。
導電部材の体積抵抗率は、次の方法により測定される値である。
【0053】
シート状の導電部材に対し、JIS K6911:1995に従って、測定治具(R12702A/Bレジスティビティ・チェンバ、アドバンテスト社製)と高抵抗測定器(R8340Aデジタル超高抵抗/微小電流計、アドバンテスト社製)とを用い、電場(印加電圧/試料厚)が1000V/cmになるよう調節した電圧を30秒間印加した後、電流値を読み取り、下記式を用いて算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)=19.63cm×印加電圧(V)/(電流値(A)×試料厚(cm))
【0054】
導電部材のゴム硬度は、動的追随性の観点から、20°以上80°以下が好ましく、30°以上60°以下がより好ましく、35°以上55°以下が更に好ましい。
ここでゴム硬度は、ショアA硬度である。ショアA硬度は、JIS K6253-3:2012に準拠し、タイプAデュロメータを用い測定時間15秒の数値を読み取る。
【0055】
導電部材における生体接触面の表面粗さは、生体表面への密着性の観点から、5μm以上50μm以下が好ましく、10μm以上40μm以下がより好ましい。
ここで表面粗さは、JIS B0601:1994が規定する十点平均粗さRzである。十点平均粗さRzは、表面粗さ測定機(東京精密社製サーフコム1400A)を用い、カットオフ0.8mm、測定長4.0mm、トラバーススピード0.3mm/secの条件で測定する。3カ所の十点平均粗さRzを算術平均して、生体接触面の表面粗さとする。
【0056】
<生体電極>
本実施形態に係る生体電極は、生体と接触する生体接触部として、本実施形態に係る導電部材を備える。本実施形態に係る生体電極は、少なくとも生体と接触する生体接触部が本実施形態に係る導電部材であればよく、電極全体が本実施形態に係る導電部材であってもよい。
【0057】
本実施形態に係る生体電極は、例えば、脳波、心拍、脈拍等の生体信号を測定する生体測定装置の電極として適用される。具体的には、生体電極は、例えば、1)外耳道に挿入される脳波測定用の生体電極、2)耳介に掛けられる脳波測定用の生体電極、3)額又は頭部全体に設置される脳波測定用の生体電極、4)腕、足、胸部又は腹部に設置される脈拍測定用又は心拍測定用の生体電極などに適用される。
【0058】
本実施形態に係る生体電極は、例えば、シート状の形状を有する。シート状の生体電極は、例えば、本実施形態に係る導電部材のみからなる構造体(つまり、全体が本実施形態に係る導電部材である構造体、図1)、又は、基材と基材上に配置された本実施形態に係る導電部材とを有する構造体(つまり、本実施形態に係る導電部材とそれ以外の部材とを有する構造体)である。図1中、10は生体電極、12は導電部材を示す。
【0059】
本実施形態に係る生体電極の形状は、シート状に制限されるものではない。本実施形態に係る生体電極の形状は、用途に応じて選択される。本実施形態に係る生体電極の形状は、基材と、基材上に配置された複数の突起状の導電部材とで構成された構造体(図2)であってもよい。図2中、10は生体電極、12は導電部材、14は基材を示す。
【0060】
<生体信号測定装置>
本実施形態に係る生体信号測定装置は、生体信号を測定する装置であって、本実施形態に係る生体電極を備える。
【0061】
本実施形態に係る生体信号測定装置は、生体電極が低抵抗であることによって測定精度に優れることから、脳波を測定する脳波測定装置に適している。
【0062】
本実施形態に係る生体信号測定装置は、例えば、1)外耳道に挿入される生体電極を備える脳波測定装置、2)耳介に掛けられる生体電極を備える脳波測定装置、3)額又は頭部全体に設置される生体電極を備える脳波測定装置、4)腕、足、胸部又は腹部に設置される生体電極を備える脈拍測定装置又は心拍測定装置などである。
【0063】
本実施形態に係る生体信号測定装置は、例えば、図3に示す構成を有する。生体信号測定装置101は、生体電極10と、生体電極10を保持する保持部材20と、生体電極10で得た生体信号(例えば、脳波、脈拍、心拍等の信号)を処理するための生体信号処理部22と、生体信号に関する情報を含む各種情報を表示する表示部24と、生体信号測定装置101に操作情報等を入力するための入力部26と、処理された信号を外部装置に送信する通信インターフェース28と、生体信号測定装置101の各部を制御する制御部30と、を備えている。
【0064】
保持部材20は、例えば、外耳道に挿入される脳波測定用、耳介に掛けられる脳波測定用、額又は頭部全体に設置される脳波測定用、及び、腕、足、胸部又は腹部に設置される脈拍測定用又は心拍測定用などの用途に応じた形状の部材である。
【0065】
生体信号処理部22は、例えば、信号増幅回路等の各種処理回路で構成される。
表示部24は、例えば、液晶ディスプレイ等で構成される。表示部24は、タッチパネル方式を採用して、入力部26として機能してもよい。
入力部26は、ポインティングデバイス(マウス等)、キーボード、ボタン等の各種入力機器で構成される。
通信インターフェース28は、外部装置(生体信号測定用のパーソナルコンピュータ、携帯端末)と通信するためのインターフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0066】
制御部30は、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージ、及び入出力インターフェース(I/O)を備え、各構成がバスを介して相互に通信可能に接続されている。
CPUは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPUは、ROM又はストレージからプログラムを読み出し、RAMを作業領域としてプログラムを実行する。CPUは、ROM又はストレージに記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。ROMは、各種プログラム及び各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージは、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)又はフラッシュメモリにより構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0067】
本実施形態に係る生体信号測定装置は、その構成に制限はなく、測定する対象の生体信号に応じた構成が採用される。生体信号測定装置は、測定した生体信号に関する情報を表示せず、測定した生体信号を外部装置にのみ送信する端末装置であってもよい。
【実施例
【0068】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。
【0069】
<実施例1>
下記の材料を加圧ニーダーで混合し、ベースコンパウンドを作製した。
・シリコーンゴム原料(ジメチルシロキサン単位99.825mol%、メチルビニルシロキサン単位0.15mol%及びジメチルビニルシロキサン単位0.025mol%からなり平均重合度が約5000であるゴム状オルガノポリシロキサン) 100質量部
・DBP吸油量130cm/100gのカーボンブラック(三菱ケミカル(株)製、#3030B) 40質量部
・DBP吸油量365cm/100gのカーボンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、EC300J) 20質量部
・ヒュームドシリカ(EVONIK社製、AEROSIL R202) 2質量部
・シランカップリング剤(信越化学工業社製、KBM-1003) 0.5質量部
【0070】
ベースコンパウンドに硬化剤C-8A(信越化学工業社製)1.5質量部を添加してゴムコンパウンドを得た。ゴムコンパウンドを厚さ2mmの金型に入れ、165℃で15分間加熱し(加硫工程)、次いで、200℃で8時間加熱し(D3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去するための加熱工程)、ゴムシートを得た。ゴムシートを50mm四方に裁断し生体電極とした。
【0071】
<実施例2~14、比較例1~2>
表1に記載のとおり、D3~D24環状ジメチルポリシロキサンを除去するための加熱工程の温度及び時間(表1に記載の「追加加熱温度」及び「追加加熱時間」)を変更した以外、又は、カーボンブラックの種類及び量(質量部)を変更した以外は、実施例1と同様にしてゴムシートを得て生体電極とした。
【0072】
<性能評価>
-物性値の測定-
各実施例及び比較例のゴムシートについて、D3~D24環状ジメチルポリシロキサン含有量(ppm)、体積抵抗率(Ω・cm)、ゴム硬度(ショアA硬度、°)を既述の測定方法で測定した。
【0073】
-電圧波形の測定-
脳波の測定を模擬した実験を次のとおり行った。
ファンクションジェネレーター(ヒューレットパッカード社製33120A、15MHzファンクション/任意波形発生器)と周波数測定装置とを用意した。
まず、リファレンスとなる電圧波形を得る目的で、生体電極を介さず、ファンクションジェネレーターの出力側と周波数測定装置の入力側とを接続した。この接続には、全長10cmのワニ口クリップケーブル2本をつなげて用いた。ファンクションジェネレーターから10μV/10Hzの交流電圧信号を発信し、周波数測定装置で電圧波形を測定し、電圧波形データをパーソナルコンピュータ(PC)に出力した。1サイクルのピークピーク値を50サイクル分平均した平均値を求めた(この平均値を「Rpp」という。)。
次に、2本のワニ口クリップケーブルの間に生体電極(ゴムシート)を入れ、生体電極を介してファンクションジェネレーターと周波数測定装置とを接続した(つまり、ファンクションジェネレーター-ワニ口クリップケーブル-生体電極-ワニ口クリップケーブル-周波数測定装置の接続順とした。)。ファンクションジェネレーターから10μV/10Hzの交流電圧信号を発信し、周波数測定装置で電圧波形を測定し、電圧波形データをPCに出力した。1サイクルのピークピーク値を50サイクル分平均した平均値を求めた(この平均値を「Spp」という。)
そして、下記の式により差分の割合を求め、A~Dに分類した。
式・・・|Rpp-Spp|÷Rpp×100(%)
【0074】
A(◎):差分の割合が0.5%以下。
B(○):差分の割合が0.5%超、1.0%以下。
C(△):差分の割合が1.0%超、1.5%以下。
D(×):差分の割合が1.5%超。
表1に記載したカッコ内の数字は、(Rpp-Spp)の値である。
【0075】
【表1】
【0076】
上記の結果から、本実施形態の生体電極は、比較例の生体電極に比べて、電圧波形の測定精度に優れていることがわかる。
【0077】
表1に記載されたカーボンブラックの詳細は、次のとおりである。
・アサヒサーマル:カーボンブラック、旭カーボン(株)製、DBP吸油量28cm/100g、平均一次粒径80nm。
・旭#50U:カーボンブラック、旭カーボン(株)製、DBP吸油量63cm/100g、平均一次粒径70nm。
・#3030B:カーボンブラック、三菱ケミカル(株)製、DBP吸油量130cm/100g、平均一次粒径55nm。
・FX35:カーボンブラック、デンカ(株)製、DBP吸油量220cm/100g、平均一次粒径26nm。
・ECP200L:ケッチェンブラック、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、DBP吸油量300cm/100g、平均一次粒径35nm。
・EC300J:ケッチェンブラック、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、DBP吸油量365cm/100g、平均一次粒径39.5nm。
・ライオナイトCB:カーボンブラック、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、DBP吸油量378cm/100g、平均一次粒径28nm。
・HS500:カーボンブラック、旭カーボン(株)製、DBP吸油量500cm/100g、平均一次粒径38nm。
【符号の説明】
【0078】
10 生体電極
12 導電部材
14 基材
20 保持部材
22 生体信号処理部
24 表示部
26 入力部
28 通信インターフェース
30 制御部
101 生体信号測定装置
図1
図2
図3