(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、ポリイミドの製造方法および硬化レリーフパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20241125BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20241125BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20241125BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 514
G03F7/075 501
G03F7/004 503B
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020041280
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019074130
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】坂田 勇男
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 孝亘
(72)【発明者】
【氏名】平田 竜也
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/038001(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170249(WO,A1)
【文献】特開2014-145957(JP,A)
【文献】特開2000-122299(JP,A)
【文献】特開2009-294538(JP,A)
【文献】特開2019-053220(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129092(WO,A1)
【文献】特開2010-009052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/027
G03F 7/075
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分:
(A)ポリイミド前駆体;
(B)光重合開始剤;
(C)下記一般式(1):
【化1】
{式中、aは1~3の整数であり、nは1~6の整数であり、R
21はそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、R
22はヒドロキシル基又は炭素数1~4のアルキル基であり、そしてR
20は
フェニルアミノ基を含む置換基
である。}
で表されるシランカップリング剤;及び
(D)γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール, アセト酢酸エチル、こはく酸ジメチル、マロン酸ジメチル、及びε―カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、有機溶媒;
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(E)熱塩基発生剤を更に含む、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)有機溶媒が、γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール, アセト酢酸エチル、こはく酸ジメチル、マロン酸ジメチル、及びε―カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも2種を含有する、請求項1
または2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(2):
【化2】
{式中、X
1は4価の有機基であり、Y
1は2価の有機基であり、n
1は2~150の整数であり、そしてR
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、そしてR
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基である。}
で表される構造単位を有する、請求項1~
3のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記一般式(2)において、R
1及びR
2の少なくとも一方は、下記一般式(3):
【化3】
{式中、L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~3の有機基であり、そしてm
1は、2~10の整数である。}
で表される1価の有機基である、請求項
4に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記一般式(2)において、X
1が、下記一般式(20a):
【化4】
で表される構造を有する、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(2)において、X
1が、下記一般式(20b):
【化5】
で表される構造を有する、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記一般式(2)において、X
1が、下記一般式(20c):
【化6】
で表される構造を有する、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
前記一般式(2)において、Y
1が、下記一般式(21b):
【化7】
で表される構造を含む、請求項
6~
8のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記一般式(2)において、Y
1が、下記一般式(21c):
【化8】
{式中、R
6は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~10の炭化水素基、及び炭素数1~10の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる1価の基であり、そしてnは、0~4から選ばれる整数である。}
で表される構造を含む、請求項
6~
8のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(4):
【化9】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項12】
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(5):
【化10】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項13】
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(4):
【化11】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}で表される構造単位と、
下記一般式(5):
【化12】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。これらは、一般式(4)中のR
1、R
2、及びn
1と同じであっても、又は異なっていてもよい。}
で表される構造単位を同時に含む、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項14】
前記(A)ポリイミド前駆体が、前記一般式(4)と(5)で表される構造単位の共重合体である、請求項
13に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項15】
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(6):
【化13】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、請求項
4又は
5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項16】
100質量部の前記(A)ポリイミド前駆体と、
前記(A)ポリイミド前駆体100質量部を基準として0.1~20質量部の前記(B)光重合開始剤と、
前記(A)ポリイミド前駆体100質量部を基準として0.1~20質量部の前記(C)シランカップリング剤と、
を含む、請求項1~
15のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物をポリイミドに変換する工程を含むポリイミドの製造方法。
【請求項18】
以下の工程:
(1)請求項1~
16のいずれか1項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を前記基板上に形成する工程;
(2)前記感光性樹脂層を露光する工程;
(3)露光後の前記感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程;及び、
(4)前記レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程;
を含む、硬化レリーフパターンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、ポリイミドの製造方法および硬化レリーフパターンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品の絶縁材料、及び半導体装置のパッシベーション膜、表面保護膜、層間絶縁膜等には、優れた耐熱性、電気特性及び機械特性を併せ持つポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノール樹脂等が用いられている。これらの樹脂の中でも、感光性樹脂組成物の形態で提供されるものは、該組成物の塗布、露光、現像、及びキュアによる熱イミド化処理によって、耐熱性のレリーフパターン皮膜を容易に形成することができる。このような感光性樹脂組成物は、従来の非感光型材料に比べて、大幅な工程短縮を可能にするという特徴を有している。
【0003】
ところで、半導体装置(以下、「素子」とも言う。)は、目的に合わせて、様々な方法でプリント基板に実装される。従来の素子は、素子の外部端子(パッド)からリードフレームまで細いワイヤで接続するワイヤボンディング法により作製されることが一般的であった。しかしながら、素子の高速化が進み、動作周波数がGHzまで到達した今日、実装における各端子の配線長さの違いが、素子の動作に影響を及ぼすまでに至った。そのため、ハイエンド用途の素子の実装では、実装配線の長さを正確に制御する必要が生じ、ワイヤボンディングではその要求を満たすことが困難となった。
【0004】
したがって、半導体チップの表面に再配線層を形成し、その上にバンプ(電極)を形成した後、該チップを裏返して、プリント基板に直接実装する、フリップチップ実装が提案されている(例えば特許文献1参照)。このフリップチップ実装では、配線距離を正確に制御できるため、高速な信号を取り扱うハイエンド用途の素子に、又は実装サイズの小ささから携帯電話等に、それぞれ採用され、需要が急拡大している。フリップチップ実装にポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、フェノール樹脂等の材料を使用する場合、該樹脂層のパターンが形成された後に、金属配線層形成工程を経る。金属配線層は、通常、樹脂層表面をプラズマエッチングして表面を粗化した後、メッキのシード層となる金属層を、1μm以下の厚みでスパッタにより形成した後、その金属層を電極として、電解メッキにより形成される。このとき、一般に、シード層となる金属としてはチタン(Ti)が、電解メッキにより形成される再配線層の金属としては銅(Cu)が用いられる。
【0005】
また、近年、ファンアウト型半導体パッケージが注目されている。ファンナウト型の半導体パッケージでは、半導体チップを封止材(樹脂層)で覆うことにより半導体チップのチップサイズよりも大きいチップ封止体を形成する。更に、半導体チップ及び封止材の領域にまで及ぶ再配線層を形成する。再配線層は、薄い膜厚で形成される。また、再配線層は、封止材の領域まで形成できるため、外部接続端子の数を多くすることができる。
【0006】
このような金属再配線層について、信頼性試験後に再配線された金属層と樹脂層との密着性が高いことが求められる。特に近年では、再配線層を加熱硬化させる温度がより低温であることが求められている。信頼性試験としては、例えば、空気中、125℃以上の高温で100時間以上保存する、高温保存試験;配線を組んで電圧を印加しながら、空気中で、125℃程度の温度で100時間以上に亘る保存下での動作を確認する、高温動作試験;空気中で、-65℃~-40℃程度の低温状態と、125℃~150℃程度の高温状態とをサイクルで行き来させる、温度サイクル試験;85℃以上の温度で湿度85%以上の水蒸気雰囲気下で保存する、高温高湿保存試験;高温高湿保存試験と同じ試験を、配線を組んで電圧を印加しながら行なう、高温高湿バイアス試験;並びに空気中又は窒素下で260℃のはんだリフロー炉を複数回通過させる、はんだリフロー試験等を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、上記信頼性試験の中で、高温保存試験の場合、試験後、再配線されたCu層の、樹脂層に接する界面でボイドが発生する、という問題があった。特に、加熱硬化させる温度が低温の場合、より顕著となる傾向にある。Cu層と樹脂層との界面でボイドが発生すると、両者の密着性が低下してしまう。
【0009】
また、ボイドの問題に加えて、金属再配線層には耐薬品性が求められ、また、微細化要求も大きくなっている。このため、特に半導体の再配線層の形成に用いられる感光性樹脂組成物には、ボイドの発生を抑制するとともに、高い耐薬品性と解像性を示すことが求められる。
【0010】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、高い耐薬品性および解像度が得られ、かつ、高温保存(high temperature storage)試験後、Cu層の、樹脂層に接する界面でボイドの発生を抑制することができるネガ型感光性樹脂組成物(以下、本明細書において単に「感光性樹脂組成物」ともいう。)を提供することを目的の一つとする。また、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターンの形成方法を提供することも目的の一つである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、特定のポリイミド前駆体と、特定の構造を有するシランカップリング剤、および特定の有機溶媒を組み合わせることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
以下の成分:
(A)ポリイミド前駆体;
(B)光重合開始剤;
(C)下記一般式(1):
【化1】
{式中、aは1~3の整数であり、nは1~6の整数であり、R
21はそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、R
22はヒドロキシル基又は炭素数1~4のアルキル基であり、そしてR
20はエポキシ基、フェニルアミノ基、ウレイド基、及びイソシアネート基を含む置換基からなる群から選択される少なくとも1種である。}
で表されるシランカップリング剤;及び
(D)γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール, アセト酢酸エチル、こはく酸ジメチル、マロン酸ジメチル、及びε―カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種を含有する、有機溶媒;
を含む、ネガ型感光性樹脂組成物。
[2]
前記一般式(1)において、R
20がフェニルアミノ基、及びウレイド基を含む置換基からなる群から選択される少なくとも1種である、[1]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[3]
前記一般式(1)において、R
20がフェニルアミノ基を含む置換基である、[1]または[2]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[4]
(E)熱塩基発生剤を更に含む、[1]~[3]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[5]
前記(D)有機溶媒が、γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール, アセト酢酸エチル、こはく酸ジメチル、マロン酸ジメチル、及びε―カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも2種を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[6]
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(2):
【化2】
{式中、X
1は4価の有機基であり、Y
1は2価の有機基であり、n
1は2~150の整数であり、そしてR
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、そしてR
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基である。}
で表される構造単位を有する、[1]~[5]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[7]
前記一般式(2)において、R
1及びR
2の少なくとも一方は、下記一般式(3):
【化3】
{式中、L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~3の有機基であり、そしてm
1は、2~10の整数である。}
で表される1価の有機基である、[6]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[8]
前記一般式(2)において、X
1が、下記一般式(20a):
【化4】
で表される構造を有する、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[9]
前記一般式(2)において、X
1が、下記一般式(20b):
【化5】
で表される構造を有する、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[10]
前記一般式(2)において、X
1が、下記一般式(20c):
【化6】
で表される構造を有する、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[11]
前記一般式(2)において、Y
1が、下記一般式(21b):
【化7】
で表される構造を含む、[6]~[10]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[12]
前記一般式(2)において、Y
1が、下記一般式(21c):
【化8】
{式中、R
6は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~10の炭化水素基、及び炭素数1~10の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる1価の基であり、そしてnは、0~4から選ばれる整数である。}
で表される構造を含む、[6]~[10]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[13]
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(4):
【化9】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[14]
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(5):
【化10】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[15]
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(4):
【化11】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}で表される構造単位と、
下記一般式(5):
【化12】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。これらは、一般式(4)中のR
1、R
2、及びn
1と同じであっても、又は異なっていてもよい。}
で表される構造単位を同時に含む、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[16]
前記(A)ポリイミド前駆体が、前記一般式(4)と(5)で表される構造単位の共重合体である、[15]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[17]
前記(A)ポリイミド前駆体が、下記一般式(6):
【化13】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有する、[6]又は[7]に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[18]
100質量部の前記(A)ポリイミド前駆体と、
前記(A)ポリイミド前駆体100質量部を基準として0.1~20質量部の前記(B)光重合開始剤と、
前記(A)ポリイミド前駆体100質量部を基準として0.1~20質量部の前記(C)シランカップリング剤と、
を含む、[1]~[17]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物。
[19]
[1]~[18]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物をポリイミドに変換する工程を含むポリイミドの製造方法。
[20]
以下の工程:
(1)[1]~[18]のいずれかに記載のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を前記基板上に形成する工程;
(2)前記感光性樹脂層を露光する工程;
(3)露光後の前記感光性樹脂層を現像して、レリーフパターンを形成する工程;及び、
(4)前記レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程;
を含む、硬化レリーフパターンの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い耐薬品性と解像度が得られ、高温保存(high temperature storage)試験後、Cu層の、樹脂層に接する界面でボイドの発生を抑制するネガ型感光性樹脂組成物およびポリイミドの製造方法を提供することができ、また該ネガ型感光性樹脂組成物を用いた硬化レリーフパターンの形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書を通じ、一般式において同一符号で表されている構造は、分子中に複数存在する場合に、互いに同一であるか、又は異なっていてもよい。
【0014】
<ネガ型感光性樹脂組成物>
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、以下の成分:
(A)ポリイミド前駆体;
(B)光重合開始剤;
(C)特定の構造を有するシランカップリング剤;および
(D)特定の有機溶媒;
を含む。
【0015】
ネガ型感光性樹脂組成物は、高い解像度を得るという観点から、100質量部の(A)ポリイミド前駆体と、(A)ポリイミド前駆体100質量部を基準として0.1~20質量部の(B)光重合開始剤と、(A)ポリイミド前駆体100質量部を基準として0.1~20質量部の(C)特定の構造を有するシランカップリング剤とを含むことが好ましい。
【0016】
(A)ポリイミド前駆体
本実施形態における(A)ポリイミド前駆体は、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる樹脂成分であり、加熱環化処理を施すことによってポリイミドに変換される。
ポリイミド前駆体は、下記一般式(2):
【化14】
{式中、X
1は4価の有機基であり、Y
1は2価の有機基であり、n
1は2~150の整数であり、そしてR
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基である。}
で表される構造単位を有するポリアミドであることが好ましい。
【0017】
R
1及びR
2の少なくとも一方は、好ましくは、下記一般式(3):
【化15】
{式中、L
1、L
2及びL
3は、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1~3の有機基であり、そしてm
1は、2~10の整数である。}
で表される1価の有機基である。
【0018】
一般式(2)におけるn1は、2~150の整数であれば限定されないが、ネガ型感光性樹脂組成物の感光特性及び機械特性の観点から、3~100の整数が好ましく、5~70の整数がより好ましい。
【0019】
一般式(2)中、X
1で表される4価の有機基は、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、好ましくは炭素数6~40の有機基であり、より好ましくは、-COOR
1基及び-COOR
2基と-CONH-基とが互いにオルト位置にある芳香族基、又は脂環式脂肪族基である。X
1で表される4価の有機基として、具体的には、芳香族環を含有する炭素原子数6~40の有機基、例えば、下記一般式(20):
【化16】
{式中、R
6は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~10の炭化水素基、及び炭素数1~10の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる1価の基であり、lは、0~2から選ばれる整数であり、mは0~3から選ばれる整数であり、そしてnは0~4から選ばれる整数である。}で表される構造を有する基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、X
1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。上記式(20)で表される構造を有するX
1基は、耐熱性と感光特性とを両立するという観点から好ましい。
【0020】
X
1基としては、上記式(20)で表される構造のなかでも、下記式(20A)、(20B)、または(20C):
【化17】
【化18】
【化19】
で表される構造は、耐薬品性、解像度、及び高温保存試験後のボイド抑制の観点から、より好ましく、下記式(20a)、(20b)または(20c):
【化20】
【化21】
【化22】
で表される構造が特に好ましい。
【0021】
上記一般式(2)中、Y
1で表される2価の有機基は、耐熱性と感光特性とを両立するという観点で、好ましくは炭素数6~40の芳香族基であり、例えば、下記式(21):
【化23】
{式中、R
6は、水素原子、フッ素原子、炭素数1~10の炭化水素基、及び炭素数1~10の含フッ素炭化水素基から成る群から選ばれる1価の基であり、そしてnは、0~4から選ばれる整数である。}
で表される構造が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、Y
1の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。上記式(21)で表される構造を有するY
1基は、耐熱性及び感光特性を両立するという観点で好ましい。
【0022】
Y
1基としては、上記式(21)で表される構造のなかでも、下記式(21A)、(21B)または(21C):
【化24】
【化25】
【化26】
で表される構造は、耐薬品性、解像度、及び高温保存試験後のボイド抑制の観点から好ましく、下記式(21b)または(21c):
【化27】
【化28】
で表される構造が特に好ましい。
【0023】
上記一般式(3)中のL1は、水素原子又はメチル基であることが好ましく、L2及びL3は、感光特性の観点から水素原子であることが好ましい。また、m1は、感光特性の観点から2以上10以下の整数、好ましくは2以上4以下の整数である。
【0024】
一実施形態において、(A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(4):
【化29】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが好ましい。
一般式(4)において、R
1及びR
2の少なくとも一方は、上記一般式(3)で表される1価の有機基であることがより好ましい。(A)ポリイミド前駆体が、一般式(4)で表されるポリイミド前駆体を含むことで、特に解像性の効果が高くなる。
【0025】
一実施形態において、(A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(5):
【化30】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが好ましい。
一般式(5)において、R
1及びR
2の少なくとも一方は、上記一般式(3)で表される1価の有機基であることがより好ましい。(A)ポリイミド前駆体が、一般式(4)で表されるポリイミド前駆体に加えて、一般式(5)で表されるポリイミド前駆体を含むことにより、特に解像性の効果がさらに高くなる。
【0026】
これらの中で、(A)ポリイミド前駆体は、上記一般式(4)と(5)で表される構造単位を同時に含むか、又は、上記一般式(4)と(5)で表される構造単位の共重合体であることが、耐薬品性、解像度、及び高温保存試験後のボイド抑制の観点から特に好ましい。(A)ポリイミド前駆体が一般式(4)と(5)で表される構造単位の共重合体である場合には、一方の式中のR1、R2、及びn1が、それぞれ、他方の式中のR1、R2、及びn1とは同じであるか、又は異なってよい。
【0027】
一実施形態において、(A)ポリイミド前駆体は、下記一般式(6):
【化31】
{式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基であり、R
1及びR
2の少なくとも一方は、1価の有機基であり、そしてn
1は2~150の整数である。}
で表される構造単位を有するポリイミド前駆体であることが好ましい。
一般式(6)において、R
1及びR
2の少なくとも一方は、上記一般式(3)で表される1価の有機基であることがより好ましい。(A)ポリイミド前駆体が、一般式(6)で表されるポリイミド前駆体を含むことで、特に耐薬品性の効果が高くなる。
【0028】
(A)ポリイミド前駆体の調製方法
(A)ポリイミド前駆体は、まず前述の一般式(2)中の4価の有機基X1を含むテトラカルボン酸二無水物と、光重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類及び任意に不飽和二重結合を有さないアルコール類とを反応させて、部分的にエステル化したテトラカルボン酸(以下、アシッド/エステル体ともいう)を調製した後、これと、前述の一般式(2)中の2価の有機基Y1を含むジアミン類とをアミド重縮合させることにより得られる。
【0029】
(アシッド/エステル体の調製)
本実施形態では、(A)ポリイミド前駆体を調製するために好適に用いられる、4価の有機基X1を含むテトラカルボン酸二無水物としては、上記一般式(20)に示される構造を有するテトラカルボン酸二無水物をはじめ、例えば、無水ピロメリット酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルメタン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)プロパン、2,2-ビス(3,4-無水フタル酸)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン等を、好ましくは無水ピロメリット酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独で用いることができるのは勿論のこと2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本実施形態では、(A)ポリイミド前駆体を調製するために好適に用いられる、光重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類としては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルアルコール、1-アクリロイルオキシ-3-プロピルアルコール、2-アクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2-ヒドロキシエチルビニルケトン、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-t-ブトキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルオキシプロピルアクリレート、2-メタクリロイルオキシエチルアルコール、1-メタクリロイルオキシ-3-プロピルアルコール、2-メタクリルアミドエチルアルコール、メチロールビニルケトン、2-ヒドロキシエチルビニルケトン、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-t-ブトキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルオキシプロピルメタクリレート等を挙げることができる。
【0031】
上記光重合性の不飽和二重結合を有するアルコール類に、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、tert-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、3-オクタノール、1-ノナノール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、ベンジルアルコールなどの不飽和二重結合を有さないアルコール類を一部混合して用いることもできる。
【0032】
また、ポリイミド前駆体として、上記不飽和二重結合を有さないアルコール類のみで調製された非感光性ポリイミド前駆体を、感光性ポリイミド前駆体と混合して用いてもよい。解像性の観点から、非感光性ポリイミド前駆体は、感光性ポリイミド前駆体100質量部を基準として、200質量部以下であることが好ましい。
【0033】
上記の好適なテトラカルボン酸二無水物と上記のアルコール類とを、ピリジン等の塩基性触媒の存在下、後述するような溶剤中、温度20~50℃で4~10時間撹拌溶解し、混合することにより、酸無水物のエステル化反応が進行し、所望のアシッド/エステル体を得ることができる。
【0034】
(ポリイミド前駆体の調製)
上記アシッド/エステル体(典型的には後述する溶剤中の溶液)に、氷冷下、適当な脱水縮合剤、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エトキシカルボニル-2-エトキシ-1,2-ジヒドロキノリン、1,1-カルボニルジオキシ-ジ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N,N’-ジスクシンイミジルカーボネート等を投入混合してアシッド/エステル体をポリ酸無水物とした後、これに、本実施形態で好適に用いられる2価の有機基Y1を含むジアミン類を別途溶媒に溶解又は分散させたものを滴下投入し、アミド重縮合させることにより、目的のポリイミド前駆体を得ることができる。代替的には、上記アシッド/エステル体を、塩化チオニル等を用いてアシッド部分を酸クロライド化した後に、ピリジン等の塩基存在下に、ジアミン化合物と反応させることにより、目的のポリイミド前駆体を得ることができる。
【0035】
本実施形態で好適に用いられる2価の有機基Y1を含むジアミン類としては、上記一般式(21)に示される構造を有するジアミンをはじめ、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕エーテル、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノプロピルジメチルシリル)ベンゼン、オルト-トリジンスルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、及びこれらのベンゼン環上の水素原子の一部が、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ハロゲン等で置換されたもの、例えば3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、及びそれらの混合物等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
アミド重縮合反応終了後、当該反応液中に共存している脱水縮合剤の吸水副生物を必要に応じて濾別した後、水、脂肪族低級アルコール、又はそれらの混合液等の貧溶媒を、得られた重合体成分に投入し、重合体成分を析出させ、さらに、再溶解、再沈析出操作等を繰り返すことにより、重合体を精製し、真空乾燥を行い、目的のポリイミド前駆体を単離する。精製度を向上させるために、陰イオン及び/又は陽イオン交換樹脂を適当な有機溶剤で膨潤させて充填したカラムに、この重合体の溶液を通し、イオン性不純物を除去してもよい。
【0037】
上記(A)ポリイミド前駆体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算重量平均分子量で測定した場合に、8,000~150,000であることが好ましく、9,000~50,000であることがより好ましい。重量平均分子量が8,000以上である場合、機械物性が良好であり、150,000以下である場合、現像液への分散性が良好で、レリーフパターンの解像性能が良好である。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの展開溶媒としては、テトラヒドロフラン、及びN-メチル-2-ピロリドンが推奨される。また重量平均分子量は標準単分散ポリスチレンを用いて作成した検量線から求める。標準単分散ポリスチレンとしては、昭和電工社製 有機溶媒系標準試料 STANDARD SM-105から選ぶことが推奨される。
【0038】
(B)光重合開始剤
本実施形態に用いられる(B)光重合開始剤について説明する。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤であることが好ましく、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2’-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のベンゾイン誘導体、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等のオキシム類、N-フェニルグリシン等のN-アリールグリシン類、ベンゾイルパークロライド等の過酸化物類、芳香族ビイミダゾール類、チタノセン類、α-(n-オクタンスルフォニルオキシイミノ)-4-メトキシベンジルシアニド等の光酸発生剤類等が好ましく挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記の光重合開始剤の中では、特に光感度の観点で、オキシム類がより好ましい。
【0039】
ネガ型感光性樹脂組成物中の(B)光重合開始剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上20質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上8質量部以下である。上記配合量は、光感度又はパターニング性の観点で0.1質量部以上であり、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂層の物性の観点から20質量部以下である。
【0040】
(C)特定の構造を有するシランカップリング剤
本実施形態に用いられる(C)特定の構造を有するシランカップリング剤について説明する。
本実施の形態にかかる(C)特定の構造を有するシランカップリング剤は下記一般式(1)で表される構造を有する。
【化32】
{式中、aは1~3の整数であり、nは1~6の整数であり、R
21はそれぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、R
22はヒドロキシル基または炭素数1~4のアルキル基であり、そしてR
20はエポキシ基、フェニルアミノ基、及びウレイド基を含む置換基からなる群から選択される少なくとも1種である。}
一般式(1)において、aは、1~3の整数であれば限定されないが、金属再配線層との接着性などの観点から、2または3が好ましく、3がより好ましい。
nは1~6の整数であれば限定されないが、金属再配線層との接着性の観点から、1以上4以下が好ましい。現像性の観点から、2以上5以下が好ましい。
R
21は炭素数1~4のアルキル基であれば限定されない。メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基などを例示することができる。
R
22は、ヒドロキシル基、または炭素数1~4のアルキル基であれば限定されない。炭素数1~4のアルキル基としては、R
21と同様のアルキル基を例示することができる。
R
20は、エポキシ基、フェニルアミノ基、ウレイド基、イソシアネート基を含む置換基であれば限定されない。これらの中で、現像性や金属再配線層の接着性の観点から、フェニルアミノ基を含む置換基、およびウレイド基を含む置換基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フェニルアミノ基を含む置換基がより好ましい。
エポキシ基を含有するシランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、などを例示することができる。
フェニルアミノ基を含有するシランカップリング剤としては、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランを例示することができる。
ウレイド基を含有するシランカップリング剤としては、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランを例示することができる
イソシアネート基を含有するシランカップリング剤としては、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを例示することができる。
【0041】
(D)特定の構造を有する有機溶媒
本実施の形態にかかる有機溶媒は、γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール, アセト酢酸エチル、こはく酸ジメチル、マロン酸ジメチル、及びε―カプロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種を含有すれば限定されない。上記有機溶媒を含むことにより、封止材との密着性を十分に発現しうる。その中で、(A)ポリイミド前駆体の溶解性の観点から、γ―ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフルフリルアルコール, アセト酢酸エチル、ε―カプロラクトンが好ましく、銅表面ボイド抑制の観点から、上記群から選択される有機溶媒を少なくとも2種含むことがより好ましい。
【0042】
本実施の形態にかかる特定の構造を有する有機溶媒が、封止材との密着性が良好である理由は定かではないが、本発明者らは下記のように推定している。
従来、ポリイミド前駆体を含む感光性樹脂組成物を溶解させる有機溶媒は、N-メチル-2-ピロリドンやN,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒が用いられてきた。これらの溶媒は、ポリイミド前駆体の溶解能は極めて高いものの、近年求められている加熱硬化温度が低温(例えば200℃未満)の場合には、生成するポリイミドとの親和性が高いためにフィルム中に多量に残存する傾向にある。そのため、上記(C)特定の構造を有するシランカップリング剤との相互作用などにより、性能を低下させてしまう。一方で、上記の溶媒を含むことにより、加熱硬化温度が低温となっても、加熱硬化後にフィルムに残存する溶媒を十分に低減することができるために、封止材との密着性が良好である傾向にある。
【0043】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物において、有機溶媒の使用量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは100~1000質量部であり、より好ましくは120~700質量部であり、さらに好ましくは125~500質量部の範囲である。
【0044】
(E)熱塩基発生剤
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、上記(A)~(D)成分以外の成分をさらに含有していてもよい。特に、加熱硬化温度の低温化に対応するため、(E)熱塩基発生剤を含むことがより好ましい。
塩基発生剤とは、加熱することで塩基を発生する化合物をいう。熱塩基発生剤を含有することで、感光性樹脂組成物のイミド化をさらに促進することができる。
【0045】
熱塩基発生剤としては、その種類を特に定めるものではないが、tert-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミン化合物や、国際公開第2017/038598号公報に開示された熱塩基発生剤等が挙げられる。しかしながら、これらに限定されず、その他にも公知の熱塩基発生剤を用いることができる。
【0046】
tert-ブトキシカルボニル基によって保護されたアミン化合物としては、エタノールアミン、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-1-ブタノール、1-アミノ-2-ブタノール、3-アミノ-2,2-ジメチル-1-プロパノール、4-アミノ-2-メチル-1-ブタノール、バリノール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、2-アミノ-1,3-プロパンジオール、チラミン、ノルエフェドリン、2-アミノ-1-フェニル-1,3-プロパンジオール、2-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサノール、4-アミノシクロヘキサンエタノール、4-(2-アミノエチル)シクロヘキサノール、N-メチルエタノールアミン、3-(メチルアミノ)-1-プロパノール、3-(イソプロピルアミノ)プロパノール、N-シクロヘキシルエタノールアミン、α-[2-(メチルアミノ)エチル]ベンジルアルコール、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、3-ピロリジノール、2-ピロリジンメタノール、4-ヒドロキシピペリジン、3-ヒドロキシピペリジン、4-ヒドロキシ-4-フェニルピペリジン、4-(3-ヒドロキシフェニル)ピペリジン、4-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンエタノール、2-ピペリジンエタノール、2-(4-ピペリジル)-2-プロパノール、1,4-ブタノールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、1,14-ジアミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン、1-アザ-15-クラウン 5-エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,11-ジアミノ-3,6,9-トリオキサウンデカン、又は、アミノ酸及びその誘導体のアミノ基をtert-ブトキシカルボニル基によって保護した化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
(E)熱塩基発生剤の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上20質量部以下である。上記配合量は、イミド化促進効果の観点で0.1質量部以上であり、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化後の感光性樹脂層の物性の観点から20質量部以下であることが好ましい。
【0048】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、上記(A)~(E)成分以外の成分をさらに含有していてもよい。
(A)~(E)成分以外の成分としては、限定されないが、含窒素複素環化合物、ヒンダードフェノール化合物、有機チタン化合物、増感剤、光重合性不飽和モノマー、熱重合禁止剤等が挙げられる。
【0049】
<含窒素複素環化合物>
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて銅又は銅合金から成る基板上に硬化膜を形成する場合には、銅上の変色を抑制するために、ネガ型感光性樹脂組成物は、含窒素複素環化合物を任意に含んでよい。具体的には、アゾール化合物、及びプリン誘導体等が挙げられる。
【0050】
アゾール化合物としては、1H-トリアゾール、5-メチル-1H-トリアゾール、5-エチル-1H-トリアゾール、4,5-ジメチル-1H-トリアゾール、5-フェニル-1H-トリアゾール、4-t-ブチル-5-フェニル-1H-トリアゾール、5-ヒドロキシフェニル-1H-トリアゾール、フェニルトリアゾール、p-エトキシフェニルトリアゾール、5-フェニル-1-(2-ジメチルアミノエチル)トリアゾール、5-ベンジル-1H-トリアゾール、ヒドロキシフェニルトリアゾール、1,5-ジメチルトリアゾール、4,5-ジエチル-1H-トリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1H-ベンゾトリアゾール、1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-メチル-1H-テトラゾール等が挙げられる。
【0051】
特に好ましくは、トリルトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、及び4-メチル-1H-ベンゾトリアゾールが挙げられる。また、これらのアゾール化合物は、1種で用いても2種以上の混合物で用いても構わない。
【0052】
プリン誘導体の具体例としては、プリン、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、テオブロミン、カフェイン、尿酸、イソグアニン、2,6-ジアミノプリン、9-メチルアデニン、2-ヒドロキシアデニン、2-メチルアデニン、1-メチルアデニン、N-メチルアデニン、N,N-ジメチルアデニン、2-フルオロアデニン、9-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、グアニンオキシム、N-(2-ヒドロキシエチル)アデニン、8-アミノアデニン、6-アミノ‐8-フェニル‐9H-プリン、1-エチルアデニン、6-エチルアミノプリン、1-ベンジルアデニン、N-メチルグアニン、7-(2-ヒドロキシエチル)グアニン、N-(3-クロロフェニル)グアニン、N-(3-エチルフェニル)グアニン、2-アザアデニン、5-アザアデニン、8-アザアデニン、8-アザグアニン、8-アザプリン、8-アザキサンチン、8-アザヒポキサンチン等及びその誘導体が挙げられる。
【0053】
ネガ型感光性樹脂組成物が上記アゾール化合物又はプリン誘導体を含有する場合の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.1~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5~5質量部がより好ましい。アゾール化合物の(A)ポリイミド前駆体100質量部に対する配合量が0.1質量部以上である場合、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を銅又は銅合金の上に形成した場合に、銅又は銅合金表面の変色が抑制され、一方、20質量部以下である場合には光感度に優れる。
【0054】
<ヒンダードフェノール化合物>
また、銅表面上の変色を抑制するために、ネガ型感光性樹脂組成物は、ヒンダードフェノール化合物を任意に含んでもよい。ヒンダードフェノール化合物としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4’-メチレンビス(2、6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-イソプロピルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-s-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-(1-エチルプロピル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-フェニルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5,6-トリメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5,6-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5‐エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が特に好ましい。
【0055】
ヒンダードフェノール化合物の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.1~20質量部であることが好ましく、光感度特性の観点から0.5~10質量部であることがより好ましい。ヒンダードフェノール化合物の(A)ポリイミド前駆体100質量部に対する配合量が0.1質量部以上である場合、例えば銅又は銅合金の上に本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を形成した場合に、銅又は銅合金の変色・腐食が防止され、一方、20質量部以下である場合には光感度に優れる。
【0056】
<有機チタン化合物>
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、有機チタン化合物を含有してもよい。有機チタン化合物を含有することにより、低温で硬化した場合であっても耐薬品性に優れる感光性樹脂層を形成できる。
【0057】
使用可能な有機チタン化合物としては、チタン原子に有機化学物質が共有結合又はイオン結合を介して結合しているものが挙げられる。
有機チタン化合物の具体的例を以下のI)~VII)に示す:
I)チタンキレート化合物:中でも、ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性及び良好なパターンが得られることから、アルコキシ基を2個以上有するチタンキレートがより好ましい。具体的な例は、チタニウムビス(トリエタノールアミン)ジイソプロポキサイド、チタニウムジ(n-ブトキサイド)ビス(2,4-ペンタンジオネート、チタニウムジイソプロポキサイドビス(2,4-ペンタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)等である。
【0058】
II)テトラアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、チタニウムテトラエトキサイド、チタニウムテトラ(2-エチルヘキソキサイド)、チタニウムテトライソブトキサイド、チタニウムテトライソプロポキサイド、チタニウムテトラメトキサイド、チタニウムテトラメトキシプロポキサイド、チタニウムテトラメチルフェノキサイド、チタニウムテトラ(n-ノニロキサイド)、チタニウムテトラ(n-プロポキサイド)、チタニウムテトラステアリロキサイド、チタニウムテトラキス[ビス{2,2-(アリロキシメチル)ブトキサイド}]等である。
【0059】
III)チタノセン化合物:例えば、ペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウムトリメトキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウム等である。
IV)モノアルコキシチタン化合物:例えば、チタニウムトリス(ジオクチルホスフェート)イソプロポキサイド、チタニウムトリス(ドデシルベンゼンスルホネート)イソプロポキサイド等である。
【0060】
V)チタニウムオキサイド化合物:例えば、チタニウムオキサイドビス(ペンタンジオネート)、チタニウムオキサイドビス(テトラメチルヘプタンジオネート)、フタロシアニンチタニウムオキサイド等である。
VI)チタニウムテトラアセチルアセトネート化合物:例えば、チタニウムテトラアセチルアセトネート等である。
VII)チタネートカップリング剤:例えば、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート等である。
【0061】
中でも、有機チタン化合物は、上記I)チタンキレート化合物、II)テトラアルコキシチタン化合物、及びIII)チタノセン化合物から成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが、より良好な耐薬品性を奏するという観点から好ましく、チタニウムジイソプロポキサイドビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラ(n-ブトキサイド)、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムが特に好ましい。
【0062】
有機チタン化合物を配合する場合の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.05~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~2質量部である。該配合量が0.05質量部以上である場合、良好な耐熱性及び耐薬品性が発現し、一方では10質量部以下である場合、保存安定性に優れる。
【0063】
<増感剤>
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、光感度を向上させるために、増感剤を任意に含んでもよい。該増感剤としては、例えば、ミヒラーズケトン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,5-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)-4-メチルシクロヘキサノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p-ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p-ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2-(p-ジメチルアミノフェニルビフェニレン)-ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)ベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノフェニルビニレン)イソナフトチアゾール、1,3-ビス(4’-ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3-ビス(4’-ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3’-カルボニル-ビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-アセチル-7-ジメチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-ベンジロキシカルボニル-7-ジメチルアミノクマリン、3-メトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、3-エトキシカルボニル-7-ジエチルアミノクマリン、N-フェニル-N’-エチルエタノールアミン、N-フェニルジエタノールアミン、N-p-トリルジエタノールアミン、N-フェニルエタノールアミン、4-モルホリノベンゾフェノン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、2-メルカプトベンズイミダゾール、1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ナフト(1,2-d)チアゾール、2-(p-ジメチルアミノベンゾイル)スチレン等が挙げられる。これらは単独で又は例えば2~5種類の組合せで用いることができる。
【0064】
光感度を向上させるための増感剤をネガ型感光性樹脂組成物が含有する場合の配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、0.1~25質量部であることが好ましい。
【0065】
<光重合性不飽和モノマー>
ネガ型感光性樹脂組成物は、レリーフパターンの解像性を向上させるために、光重合性の不飽和結合を有するモノマーを任意に含んでもよい。このようなモノマーとしては、光重合開始剤によりラジカル重合反応する(メタ)アクリル化合物が好ましく、特に以下に限定するものではないが、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレートなどの、エチレングリコール又はポリエチレングリコールのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、グリセロールのモノ、ジ又はトリアクリレート及びメタクリレート、シクロヘキサンジアクリレート及びジメタクリレート、1,4-ブタンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールのジアクリレート及びジメタクリレート、ネオペンチルグリコールのジアクリレート及びジメタクリレート、ビスフェノールAのモノ又はジアクリレート及びメタクリレート、ベンゼントリメタクリレート、イソボルニルアクリレート及びメタクリレート、アクリルアミド及びその誘導体、メタクリルアミド及びその誘導体、トリメチロールプロパントリアクリレート及びメタクリレート、グリセロールのジ又はトリアクリレート及びメタクリレート、ペンタエリスリトールのジ、トリ、又はテトラアクリレート及びメタクリレート、並びにこれら化合物のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物等の化合物を挙げることができる。
【0066】
レリーフパターンの解像性を向上させるための上記の光重合性の不飽和結合を有するモノマーを感光性樹脂組成物が含有する場合、光重合性の不飽和結合を有するモノマーの配合量は、(A)ポリイミド前駆体100質量部に対し、1~50質量部であることが好ましい。
【0067】
<熱重合禁止剤>
また、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、特に溶剤を含む溶液の状態での保存時のネガ型感光性樹脂組成物の粘度及び光感度の安定性を向上させるために、熱重合禁止剤を任意に含んでもよい。熱重合禁止剤としては、例えば、ヒドロキノン、N-ニトロソジフェニルアミン、p-tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、N-フェニルナフチルアミン、エチレンジアミン四酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、2,6-ジ-tert-ブチル-p-メチルフェノール、5-ニトロソ-8-ヒドロキシキノリン、1-ニトロソ-2-ナフトール、2-ニトロソ-1-ナフトール、2-ニトロソ-5-(N-エチル-N-スルホプロピルアミノ)フェノール、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、N-ニトロソ-N(1-ナフチル)ヒドロキシルアミンアンモニウム塩等が用いられる。
【0068】
<硬化レリーフパターンの製造方法及び半導体装置>
また、本発明は、(1)上述した本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布して、感光性樹脂層を上記基板上に形成する工程と、(2)上記感光性樹脂層を露光する工程と、(3)露光後の上記感光性樹脂層を現像してレリーフパターンを形成する工程と、(4)上記レリーフパターンを加熱処理して、硬化レリーフパターンを形成する工程とを含む、硬化レリーフパターンの製造方法を提供する。
【0069】
(1)感光性樹脂層形成工程
本工程では、本発明のネガ型感光性樹脂組成物を基材上に塗布し、必要に応じて、その後乾燥させて、感光性樹脂層を形成する。塗布方法としては、従来から感光性樹脂組成物の塗布に用いられていた方法、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等で塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法等を用いることができる。
【0070】
必要に応じて、ネガ型感光性樹脂組成物を含む塗膜を乾燥させることができる。乾燥方法としては、風乾、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等の方法が用いられる。具体的には、風乾又は加熱乾燥を行う場合、20℃~140℃で1分~1時間の条件下で乾燥を行うことができる。以上のとおり、基板上に感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)を形成できる。
【0071】
(2)露光工程
本工程では、上記で形成したネガ型感光性樹脂層を、コンタクトアライナー、ミラープロジェクション、ステッパー等の露光装置を用いて、パターンを有するフォトマスク又はレチクルを介して又は直接に、紫外線光源等により露光する。
【0072】
この後、光感度の向上等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる露光後ベーク(PEB)及び/又は現像前ベークを施してもよい。ベーク条件の範囲については、温度は40℃~120℃であり、そして時間は10秒~240秒であることが好ましいが、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の諸特性を阻害するものでない限り、この範囲に限らない。
【0073】
(3)レリーフパターン形成工程
本工程では、露光後の感光性樹脂層のうち未露光部を現像除去する。露光(照射)後の感光性樹脂層を現像する現像方法としては、従来知られているフォトレジストの現像方法、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理を伴う浸漬法等の中から任意の方法を選択して使用することができる。また、現像の後、レリーフパターンの形状を調整する等の目的で、必要に応じて、任意の温度及び時間の組合せによる現像後ベークを施してもよい。
【0074】
現像に使用される現像液としては、例えば、ネガ型感光性樹脂組成物に対する良溶媒、又は該良溶媒と貧溶媒との組合せが好ましい。良溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等が好ましい。貧溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び水等が好ましい。良溶媒と貧溶媒とを混合して用いる場合には、ネガ型感光性樹脂組成物中のポリマーの溶解性によって良溶媒に対する貧溶媒の割合を調整することが好ましい。また、各溶媒を2種以上、例えば数種類組合せて用いることもできる。
【0075】
(4)硬化レリーフパターン形成工程
本工程では、上記現像により得られたレリーフパターンを加熱して感光成分を希散させるとともに、(A)ポリイミド前駆体をイミド化させることによって、ポリイミドから成る硬化レリーフパターンに変換する。加熱硬化の方法としては、例えば、ホットプレートによるもの、オーブンを用いるもの、温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いるもの等種々の方法を選ぶことができる。加熱は、例えば、170℃~400℃で30分~5時間の条件で行うことができる。加熱硬化時の雰囲気気体としては、空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。
【0076】
<ポリイミド>
上記ポリイミド前駆体組成物から形成される硬化レリーフパターンに含まれるポリイミドの構造は、下記一般式(8)で表される。
【化33】
{式中、X
1及びY
1は、一般式(2)中のX
1及びY
1と同じであり、mは正の整数である。}
一般式(2)中の好ましいX
1とY
1は、同じ理由により、一般式(8)のポリイミドにおいても好ましい。一般式(8)の繰り返し単位数mは、正の整数であればよく、特に限定は無いが、2~150の整数、又は3~140の整数であってもよい。
【0077】
また、上記で説明されたネガ型感光性樹脂組成物をポリイミドに変換する工程を含むポリイミドの製造方法も本発明の一態様である。
【0078】
<半導体装置>
本実施形態では、上述した硬化レリーフパターンの製造方法により得られる硬化レリーフパターンを有する、半導体装置も提供される。したがって、半導体素子である基材と、上述した硬化レリーフパターン製造方法により該基材上に形成されたポリイミドの硬化レリーフパターンとを有する半導体装置が提供されることができる。また、本発明は、基材として半導体素子を用い、上述した硬化レリーフパターンの製造方法を工程の一部として含む半導体装置の製造方法にも適用できる。本発明の半導体装置は、上記硬化レリーフパターン製造方法で形成される硬化レリーフパターンを、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、又はバンプ構造を有する半導体装置の保護膜等として形成し、既知の半導体装置の製造方法と組合せることで製造することができる。
【0079】
<表示体装置>
本実施形態では、表示体素子と該表示体素子の上部に設けられた硬化膜とを備える表示体装置であって、該硬化膜は上述の硬化レリーフパターンである表示体装置が提供される。ここで、当該硬化レリーフパターンは、当該表示体素子に直接接して積層されていてもよく、別の層を間に挟んで積層されていてもよい。例えば、該硬化膜として、薄膜トランジスタ(TFT)液晶表示素子及びカラーフィルター素子の表面保護膜、絶縁膜、及び平坦化膜、マルチドメイン垂直配向(MVA)型液晶表示装置用の突起、並びに有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子陰極用の隔壁を挙げることができる。
【0080】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、上記のような半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例、比較例、及び製造例においては、ポリマー又はネガ型感光性樹脂組成物の物性を以下の方法に従って測定及び評価した。
【0082】
<測定及び評価方法>
(1)重量平均分子量
各樹脂の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(標準ポリスチレン換算)を用いて以下の条件下で測定した。
ポンプ:JASCO PU-980
検出器:JASCO RI-930
カラムオーブン:JASCO CO-965 40℃
カラム:昭和電工(株)製Shodex KD-806M 直列に2本、又は
昭和電工(株)製Shodex 805M/806M直列
標準単分散ポリスチレン:昭和電工(株)製Shodex STANDARD SM-105
移動相:0.1mol/L LiBr/N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
流速:1mL/min.
【0083】
(2)Cu上の硬化レリーフパターンの作製
6インチシリコンウェハー(フジミ電子工業株式会社製、厚み625±25μm)上に、スパッタ装置(L-440S-FHL型、キヤノンアネルバ社製)を用いて200nm厚のTi、400nm厚のCuをこの順にスパッタした。続いて、このウェハー上に、後述の方法により調製したネガ型感光性樹脂組成物をコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)を用いて回転塗布し、110℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、約7μm厚の塗膜を形成した。この塗膜に、テストパターン付マスクを用いて、プリズマGHI(ウルトラテック社製)により500mJ/cm2のエネルギーを照射した。次いで、この塗膜を、現像液としてシクロペンタノンを用いてコーターデベロッパー(D-Spin60A型、SOKUDO社製)でスプレー現像し、プロピレングリコールメチルエーテルアセテートで、リンスすることにより、Cu上のレリーフパターンを得た。
Cu上に該レリーフパターンを形成したウェハーを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、窒素雰囲気下、表1に記載のキュア温度で2時間加熱処理することにより、Cu上に約4~5μm厚の樹脂から成る硬化レリーフパターンを得た。
【0084】
(3)Cu上の硬化レリーフパターンの解像性評価
上記の方法で得た硬化レリーフパターンを光学顕微鏡下で観察し、最少開口パターンのサイズを求めた。このとき、得られたパターンの開口部の面積が、対応するパターンマスク開口面積の1/2以上であれば解像されたものとみなし、解像された開口部のうち最小面積を有するものに対応するマスク開口辺の長さを解像度とした。
解像度が10μm未満のものを「優」、10μm以上14μm未満のものを「良」、14μm以上18μm未満のものを「可」、18μm以上のものを「不可」とした。
【0085】
(4)Cu上の硬化レリーフパターンの高温保存(high temperature storage)試験と、その後のボイド面積評価
Cu上に該硬化レリーフパターンを形成したウェハーを、昇温プログラム式キュア炉(VF-2000型、光洋リンドバーグ社製)を用いて、空気中、150℃で168時間加熱した。続いて、プラズマ表面処理装置(EXAM型、神港精機社製)を用いて、Cu上の樹脂層を全てプラズマエッチングにより除去した。プラズマエッチング条件は下記のとおりである。
出力:133W
ガス種・流量:O2:40mL/分 + CF4:1mL/分
ガス圧:50Pa
モード:ハードモード
エッチング時間:1800秒
【0086】
樹脂層を全て除去したCu表面を、FE-SEM(S-4800型、日立ハイテクノロジーズ社製)によって観察し、画像解析ソフト(A像くん、旭化成社製)を用いて、Cu層の表面に占めるボイドの面積を算出した。比較例1に記載の感光性樹脂組成物を評価した際のボイドの総面積を100%とした際に、ボイドの総面積比率が50%未満のものを「優」、50%以上75%未満のものを「良」、75%以上100%未満のものを「可」、100%以上のものを「不可」と判定した。
【0087】
(5)硬化レリーフパターン(ポリイミド塗膜)の耐薬品性評価
Cu上に形成した該硬化レリーフパターンを、レジスト剥離液{ATMI社製、製品名ST-44、主成分:2-(2-アミノエトキシ)エタノール、及び1-シクロヘキシル-2-ピロリドン}を50℃に加熱したものに5分間浸漬し、流水で1分間洗浄し、風乾した。その後、膜表面を光学顕微鏡で目視観察し、クラック等の薬液によるダメージの有無、及び/又は薬液処理後の膜厚の変化率に基づいて耐薬品性を評価した。評価基準として、クラック等のダメージが発生せず、膜厚変化率が薬品浸漬前の膜厚を基準として10%以内のものを「優」、10~15%のものを「良」、15~20%のものを「可」とし、クラックが発生したもの、または膜厚変化率が20%を超えるものを「不可」とした。
【0088】
(6)封止材との密着性試験
エポキシ系封止材として長瀬ケムテックス社製のR4000シリーズを用意した。
次いで、アルミスパッタしたシリコーンウエハー上に封止材を厚みが約150ミクロンになるようにスピンコートし、130℃で熱硬化させてエポキシ系封止材を硬化させた。 上記エポキシ系硬化膜上に実施例、比較例で作製した感光性樹脂組成物を最終膜厚が10ミクロンになるように塗布した。塗布した感光性樹脂組成物を500mJ/cm2の露光条件で全面を露光した後、180℃2時間熱硬化させて、厚み10ミクロンの1層目の硬化膜を作製した。
上記1層目の硬化膜上に1層目の硬化膜形成で使用した感光性樹脂組成物を塗布し、1層目の硬化膜作製時と同じ条件で全面を露光した後、熱硬化させて、厚み10ミクロンの2層目の硬化膜を作製した。
上記サンプルの感光性樹脂硬化膜上にエポキシ樹脂を塗布し、続いてピンを立て、引取試験機(クワッドグループ社製、セバスチャン5型)を用いて密着性試験を行った。以下の基準に従い、評価した。
評価:接着強度70MPa以上:密着力 優
50MPa以上-70MPa未満:密着力 良
30MPa以上-50MPa未満:密着力 可
30MPa未満:密着力 不可
【0089】
製造例1:(A)ポリイミド前駆体としてのポリマーA-1の合成
4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gを2L容量のセパラブルフラスコに入れ、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)131.2gとγ-ブチロラクトン400mLを入れて室温下で攪拌し、攪拌しながらピリジン81.5gを加えて反応混合物を得た。反応による発熱の終了後に反応混合物を室温まで放冷し、16時間放置した。
次に、氷冷下において、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)206.3gをγ-ブチロラクトン180mLに溶解した溶液を攪拌しながら40分掛けて反応混合物に加え、続いて4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gをγ-ブチロラクトン350mLに懸濁したものを攪拌しながら60分掛けて加えた。更に室温で2時間攪拌した後、エチルアルコール30mLを加えて1時間攪拌し、次に、γ-ブチロラクトン400mLを加えた。反応混合物に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応液を得た。
【0090】
得られた反応液を3Lのエチルアルコールに加えて、粗ポリマーから成る沈殿物を生成した。生成した粗ポリマーを濾別し、テトラヒドロフラン1.5Lに溶解して、粗ポリマー溶液を得た。得られた粗ポリマー溶液を28Lの水に滴下してポリマーを沈殿させ、得られた沈殿物を濾別した後、真空乾燥して粉末状のポリマー(ポリマーA-1)を得た。ポリマー(A-1)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は20,000であった。
【0091】
製造例2:(A)ポリイミド前駆体としてのポリマーA-2の合成
製造例1の4,4’-オキシジフタル酸二無水物(ODPA)155.1gに代えて、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)147.1gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(A-2)を得た。ポリマー(A-2)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は22,000であった。
【0092】
製造例3:(A)ポリイミド前駆体としてのポリマーA-3の合成
製造例1の4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gに代えて、p-フェニレンジアミン50.2gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(A-3)を得た。ポリマー(A-3)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は19,000であった。
【0093】
製造例4:(A)ポリイミド前駆体としてのポリマーA-4の合成
製造例1の4,4’-オキシジフタル酸二無水物をフルオレン酸二無水物(229.2g)、4,4’-オキシジアニリンを2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)(148.5g)に変えた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(A-4)を得た。ポリマー(A-4)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は12,000であった。
【0094】
製造例5:(A)ポリイミド前駆体としてのポリマーA-5の合成
製造例1の4,4’-オキシジアニリン(ODA)93.0gに代えて、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジアミン(m-TB)98.6gを用いた以外は、前述の製造例1に記載の方法と同様にして反応を行い、ポリマー(A-5)を得た。ポリマー(A-5)の分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は21,000であった。
【0095】
製造例6:(E)熱塩基発生剤E-1の合成
容量1Lのナス型フラスコ中へ、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル(東京化成工業株式会社製)100gとエタノール100gを加えてスターラーで混合撹拌して均一溶液とし、氷水で5℃以下に冷却した。これに、二炭酸ジ-tert-ブチル(東京化成工業株式会社製)215gをエタノール120gに溶解したものを滴下ロートにより滴下した。この際、反応液温が50℃以下を保つように滴下速度を調整しながら滴下を行った。滴下終了から2時間後、反応液を50℃で3時間減圧濃縮することにより、目的の化合物E-1を得た。
【0096】
<実施例1>
ポリマーA-1を用いて以下の方法でネガ型感光性樹脂組成物を調製し、調製した組成物の評価を行った。(A)ポリイミド前駆体としてポリマーA-1:100g、(B)光重合開始剤として1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシム(光重合開始剤B-1に該当):3gを、(C)KBM-403(1.5g)(D)有機溶剤γ-ブチルラクトン(以下ではGBLと表記):150gに溶解した。得られた溶液の粘度を、少量のGBLをさらに加えることによって、約30ポイズに調整し、ネガ型感光性樹脂組成物とした。該組成物を、前述の方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0097】
<実施例2~13、比較例1~3>
表1に示すとおりの成分と配合比で調製すること以外は、実施例1と同様のネガ型感光性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。表1に記載されている、化合物はそれぞれ以下のとおりである。
【0098】
B-1:1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)-オキシム
C-1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403)
C-2:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573)
C-3:3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン(KBE-585)
C-4:3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(KBE-9007)
C-5:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-903)
D-1:γ-ブチルラクトン(以下ではGBLと表記)
D-2:ジメチルスルホキシド(DMSO)
E-1:製造例5で表される化合物
E-2:1-(tert-ブトキシカルボニル)-4-ヒドロキシピペリジン(東京化成工業株式会社製)
【0099】
【0100】
表1から明らかなように、上記一般式(1)で表される特定構造を有する(C)シランカップリング剤を含む実施例1~13では、上記一般式(1)で表される特定構造を有する(C)シランカップリング剤を含まない比較例1~3に比べて、高い耐薬品性および解像度が得られた。さらに、高温保存試験後、Cu層の樹脂層に接する界面でボイドの発生も抑制することができ、封止材との密着性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明によるネガ型感光性樹脂組成物を用いることで、高い耐薬品性と解像性を持つ硬化レリーフパターンを得ることができ、かつ、Cu表面のボイド発生を抑制することができる。本発明は、例えば半導体装置、多層配線基板等の電気・電子材料の製造に有用な感光性材料の分野で好適に利用できる。