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特許7592399接続構造体、接続構造体の製造方法、接続材料、及び被覆導電粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】接続構造体、接続構造体の製造方法、接続材料、及び被覆導電粒子
(51)【国際特許分類】
   H01B 5/00 20060101AFI20241125BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20241125BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20241125BHJP
   H01B 5/16 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20241125BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20241125BHJP
   H05K 3/32 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B1/00 C
H01B1/00 G
H01B1/22 D
H01B5/00 G
H01B5/16
H01L21/60 311S
H01R11/01 501E
H05K3/32 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020076961
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2020184530
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019087150
(32)【優先日】2019-05-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄介
(72)【発明者】
【氏名】青木 正治
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 早織
(72)【発明者】
【氏名】波木 秀次
(72)【発明者】
【氏名】久我 生子
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046010(JP,A)
【文献】特開2013-209648(JP,A)
【文献】特開2014-143189(JP,A)
【文献】国際公開第2006/080289(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0081368(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/16
H01L 21/60
H01R 11/01
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端子を有する第1の電子部品と、
第2の端子を有する第2の電子部品と、
前記第1の電子部品と前記第2の電子部品との間に、芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備える被覆導電粒子を含有する接続材料が硬化した硬化膜とを備え、
前記第1の端子と前記第2の端子との間の被覆導電粒子は、前記導電層の金属原子が、前記金属微粒子の金属中に拡散してなるとともに、前記第1の端子の金属原子及び前記第2の端子の金属原子が、前記金属微粒子の金属中に拡散してなり、
前記被覆導電粒子が、前記導電層の表面に複数の突起を有し、前記突起が、芯材を有する接続構造体。
【請求項2】
前記芯材粒子が、樹脂粒子からなる請求項記載の接続構造体。
【請求項3】
前記導電層が、最外表面に金メッキ層を有し、
前記第1の端子及び前記第2の端子が、最外表面に金メッキ層を有する請求項1又は2記載の接続構造体。
【請求項4】
前記第1又は第2の電子部品は、カメラモジュールである請求項1乃至のいずれか1項に記載の接続構造体。
【請求項5】
芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備える被覆導電粒子を含有する接続材料を介して、第1の端子を有する第1の電子部品と、第2の端子を有する第2の電子部品とを所定温度で熱圧着し、
前記第1の端子と前記第2の端子との間の被覆導電粒子について、前記導電層の金属原子を前記金属微粒子の金属中に拡散させるとともに、前記第1の端子の金属原子及び前記第2の端子の金属原子を前記金属微粒子の金属中に拡散させ
前記被覆導電粒子が、前記導電層の表面に複数の突起し、前記突起が、芯材を有する接続構造体の製造方法。
【請求項6】
芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備える被覆導電粒子が絶縁性バインダー中に分散されてなり、
前記導電層の金属原子が、熱圧着時の所定温度で前記金属微粒子の金属中に拡散し、
前記被覆導電粒子が、前記導電層の表面に複数の突起を有し、前記突起が、芯材を有する接続材料。
【請求項7】
前記芯材粒子が、樹脂粒子からなる請求項記載の接続材料。
【請求項8】
前記導電層が、最外表面に金メッキ層を有する請求項6又は7記載の接続材料。
【請求項9】
異方性導電接着剤である請求項6乃至8のいずれか1項に記載の接続材料。
【請求項10】
異方性導電フィルムである請求項6乃至9のいずれか1項に記載の接続材料。
【請求項11】
芯材粒子と、
前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、
前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備え、
前記導電層の金属原子が、熱圧着時の所定温度で前記金属微粒子の金属中に拡散し、
前記導電層の表面に複数の突起を有し、前記突起が、芯材を有する被覆導電粒子。
【請求項12】
前記芯材粒子が、樹脂粒子からなる請求項11記載の被覆導電粒子。
【請求項13】
前記導電層が、最外表面に金メッキ層を有する請求項11又は12記載の被覆導電粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電子部品を接続させた接続構造体、接続構造体の製造方法、接続材料、及び被覆導電粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路等の電気的接続において、導電粒子を含有する接続材料が用いられている。導電粒子としては、例えば、表面に凹凸部を有しているもの(例えば、特許文献1参照)表面に金属フィラーを被覆させたもの(例えば、特許文献2参照)、表面に絶縁性フィラーを被覆させたもの(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
しかしながら、近年、導電粒子を用いて接続する対象物は、多様化してきており、絶縁性能の向上とは別に、導通抵抗値をより低く、安定化させることが求められている。このため、従来の導電粒子では、このような要求に対して導通抵抗値が大きく、信頼性試験後の導通抵抗値のバラつきも大きい場合も生じつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-317270号公報
【文献】特開2013-041683号公報
【文献】特開2018-145418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、導通抵抗値の低抵抗化及び安定化を図ることができる接続構造体、接続構造体の製造方法、接続材料、及び被覆導電粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る接続構造体は、第1の端子を有する第1の電子部品と、第2の端子を有する第2の電子部品と、前記第1の端子と前記第2の端子との間に、芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備える被覆導電粒子を含有する接続材料が硬化した硬化膜とを備え、前記第1の端子と前記第2の端子との間の被覆導電粒子は、前記導電層の金属原子が、前記金属微粒子の金属中に拡散してなるとともに、前記第1の端子の金属原子及び前記第2の端子の金属原子が、前記金属微粒子の金属中に拡散してなる。
【0007】
本技術に係る接続構造体の製造方法は、芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備える被覆導電粒子を含有する接続材料を介して、第1の端子を有する第1の電子部品と、第2の端子を有する第2の電子部品とを所定温度で熱圧着し、前記第1の端子と前記第2の端子との間の被覆導電粒子について、前記導電層の金属原子を前記金属微粒子の金属中に拡散させるとともに、前記第1の端子の金属原子及び前記第2の端子の金属原子を前記金属微粒子の金属中に拡散させる。
【0008】
本技術に係る接続材料は、芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備える被覆導電粒子が絶縁性バインダー中に分散されてなり、前記導電層の金属原子が、熱圧着時の所定温度で前記金属微粒子の金属中に拡散する。
【0009】
本技術に係る被覆導電粒子は、芯材粒子と、前記芯材粒子の表面に設けられた導電層と、前記導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備え、前記導電層の金属原子が、熱圧着時の所定温度で前記金属微粒子の金属中に拡散する。
【発明の効果】
【0010】
本技術によれば、熱圧着により、端子間の被覆導電粒子について、導電層の金属原子が金属微粒子の金属中に拡散するとともに、端子の金属原子も金属微粒子の金属中に拡散するため、導通抵抗値の低抵抗化及び安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、接続構造体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、カメラモジュールを実装した接続構造体を模式的に示す断面図である。
図3図3は、実施例2で用いた樹脂コア導電粒子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ(Au=35μm、Ni=210nm)、樹脂コア、突起有)を観察したSEM写真である。
図4図4は、実施例2で用いた被覆導電粒子(金属微粒子:銀粒子60μm)を観察したSEM写真である。
図5図5は、実施例2で作製した接続構造体の接続部の断面を観察したSEM写真である。
図6図6は、図5に示す四角部分のセラミック基板側の拡大写真である。
図7図7は、図6に示す拡大写真部分の銀(Ag)のマッピング画像である。
図8図8は、図7に示す拡大写真部分のニッケル(Ni)のマッピング画像である。
図9図9は、図8に示す拡大写真部分の金(Au)のマッピング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら下記順序にて詳細に説明する。
1.被覆導電粒子
2.接続材料
3.接続材料の製造方法
4.接続構造体
5.接続構造体の製造方法
6.実施例
【0013】
<1.被覆導電粒子>
本実施の形態に係る被覆導電粒子は、芯材粒子と、芯材粒子の表面に設けられた導電層と、導電層の表面を被覆してなる金属微粒子とを備え、導電層の金属原子が、熱圧着時の所定温度で金属微粒子の金属中に拡散するものである。
【0014】
ここで、本明細書において「拡散」とは、熱、圧力、変形などにより、導電層の金属の原子や電子部品の端子の金属の原子が金属微粒子の金属中に拡散すること、又は金属微粒子の金属の原子が導電層の金属中や電子部品の端子の金属中に拡散することをいう。このような拡散状態は、透過型電子顕微鏡FE-TEMを用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、被覆導電粒子と電子部品の端子との接触部分を線分析、又は、元素マッピングすることにより、観察することができる。
【0015】
芯材粒子としては、樹脂粒子、有機無機ハイブリッド粒子、金属粒子などが挙げられる。樹脂粒子を構成する樹脂としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、ベンゾグアナミン樹脂、架橋ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン-シリカ複合樹脂などが挙げられる。有機無機ハイブリッド粒子としては、例えば、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された粒子などが挙げられる。金属粒子としては、例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム、半田などが挙げられる。これらの中でも、応力緩和性に優れる樹脂粒子や有機無機ハイブリッド粒子を用いることが好ましい。
【0016】
導電層は、芯材粒子の表面に設けられる。導電層の金属は、その金属原子が熱圧着時の所定温度で金属微粒子の金属中に拡散するものであることが好ましく、また、拡散するものでなくとも、金属微粒子との接触で導電性が得られるものであれば、使用することができる。熱圧着時の所定温度は、一例として200℃以下、好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。導電層の金属は、金属微粒子の金属に応じて適宜選択することができる。導電層は、ニッケル、銀、銅、金、及びパラジウムの少なくともいずれかの単体金属又は合金であることが好ましい。また、導電層は、半田であってもよい。芯材粒子が金属粒子である場合、導電層は、表面酸化を防ぐために金、及びパラジウムの少なくともいずれかの単体金属又は合金であることが好ましい。また、導電層は、導電性及び表面酸化の観点から、芯材粒子の表面上に第1の導電層と第2の導電層とをこの順に有することが好ましく、第1の導電層が、ニッケルメッキ層であり、第2の導電層が金メッキ層であることが好ましい。
【0017】
導電層の厚みは、好ましくは50nm以上300nm以下、より好ましくは80nm以上250nm以下である。導電層が複数の金属層で構成される場合は、総厚みが前記範囲を満たすことが好ましい。導電層の厚みが小さすぎると導電粒子として機能させるのが困難となる。なお、芯材粒子が金属粒子である場合、その表面を導電層とみなすこともでき、導電層の厚みは特に考慮する必要はない。以下では、芯材粒子の種類に関わらず、芯材粒子と導電層とから構成されるものを「導電粒子」という。なお、芯材粒子が樹脂粒子であるものを「樹脂コア導電粒子」という場合がある。
【0018】
導電粒子は、導電層の表面に複数の突起を有することが好ましい。突起を有する導電粒子の構成としては、導電層の表面が突起を有する形状であれば特に制限はなく、例えば、次の第1の構成例~第3の構成例を挙げることができる。第1の構成例は、芯材粒子と、芯材粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、芯材粒子及び絶縁性粒子を被覆する導電層とを備える。第2の構成例は、芯材粒子と、芯材粒子の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、芯材粒子及び絶縁性粒子の表面を被覆する第1の導電層と、第1の導電層を被覆する第2の導電層とを備える。第3の構成例は、芯材粒子と、芯材の表面を被覆する第1の導電層と、第1の導電層の表面に複数付着され、突起の芯材となる絶縁性粒子と、第1の導電層及び絶縁性粒子の表面を被覆する第2の導電層とを備える。導電層の表面に複数の突起を有することにより、突起を核として金属微粒子の付着量を増大させることができ、導通抵抗値をさらに低抵抗化させ、安定化させることができる。また、突起が接続対象の端子表面に食い込むことにより、導電層を被覆する金属微粒子及び端子表面の金属原子の拡散の効果を顕著にさせることができる。これは、導電層を被覆する金属微粒子への圧力が突起により増大すること、単純に接触面積が増加することなど、様々な理由が類推できる。
【0019】
導電粒子の粒子径の下限は、2μm以上であることが好ましい。導電粒子の粒子径の上限は、特に制限されないが、例えば、接続構造体における導電粒子の捕捉効率の観点から、例えば50μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。なお、導電粒子の粒子径は、画像型粒度分布計(一例として、FPIA-3000:マルバーン社製)により測定した値とすることができる。この個数は1000個以上、好ましくは2000個以上であることが好ましい。
【0020】
金属微粒子は、芯材粒子の表面に設けられた導電層の表面を被覆してなる。金属微粒子の金属は、導電層の金属及び電子部品の端子の金属に応じて適宜選択することができる。金属微粒子は、ニッケル、銀、銅、金、及びパラジウムの少なくともいずれかの単体金属又は合金であることが好ましい。また、金属微粒子は、半田であってもよい。これらの中でも、低抵抗化の観点から銀又は銀合金であることが好ましい。
【0021】
金属微粒子の粒子径の上限は、導電粒子の14%以下、好ましくは0.3%以下とすることができる。もしくは100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましい。これにより、熱圧着により金属微粒子の金属中に導電層の金属及び電子部品の端子の金属を拡散させることができる。また、導電粒子の表面積に対して金属微粒子の粒子径が大きすぎないことにより、導電粒子の表面に傷がつく等の不具合を抑制することができる。また、金属微粒子の粒子径の下限は、2nm以上あればよく、10nm以上であることが好ましい。導電粒子の表面積に対して金属微粒子が小さすぎないことで、導電粒子の凝集をより効果的に抑制することができる。金属微粒子が小さすぎる場合、接続材料の粘度が上昇しすぎることで分散性への影響も懸念される。なお、金属微粒子の粒子径の粒子径は、例えば、電子顕微鏡(例えば、TEM)で観察し、任意の100個の平均値とすることができ、200個以上とすることでより精度を高めることもできる。
【0022】
また、被覆導電粒子は、前述したように、金属微粒子として半田粒子を好適に用いることができる。半田粒子は、前述した樹脂コア導電粒子の表面を被覆することが好ましい。樹脂コア導電粒子を用いることにより、樹脂コア導電粒子の樹脂コアが接続時に変形および反発するため、均一な接続状態を得やすくなる。また、一般的に樹脂コア導電粒子は、金属粒子よりも粒子径のバラツキが少ない。具体的には、樹脂コア導電粒子の変動係数(CV値:Coefficient of Variation)は、20%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。粒子径のバラツキが少ないことで、接続時に樹脂コアにかかる圧力が均等になり易くなる。このように樹脂コアの変形および反発や樹脂コア導電粒子の粒子径の均一性によって、導電粒子の端子間への挟持が安定し易くなることから、金属粒子を用いるよりも端子間の接続状態(接合状態)がより安定しやくなり、導通抵抗の安定化が期待できる。これは、端子と電極の接触状態が安定するためであり、電極に半田接合される状態(量や面積)が担保されることで、接続不良が発生しにくくなる効果が期待できるためである。
【0023】
半田粒子は、例えばJIS Z 3282-1999に規定されている、Sn-Pb系、Pb-Sn-Sb系、Sn-Sb系、Sn-Pb-Bi系、Bi-Sn系、Sn-Cu系、Sn-Pb-Cu系、Sn-In系、Sn-Ag系、Sn-Pb-Ag系、Pb-Ag系などから、電極材料や接続条件などに応じて適宜選択することができる。半田粒子の融点の下限は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは130℃以上である。半田粒子の融点の上限は、好ましくは240℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下である。半田粒子を所定温度まで加熱することにより、半田粒子の金属原子と導電層の金属原子とを容易に相互拡散させることができるとともに、半田粒子の金属原子と端子の金属原子とを容易に相互拡散させることができる。また、半田粒子には、Niなど樹脂コア導電粒子に含まれる金属と同じ金属を含ませてもよい。半田粒子に樹脂コア導電粒子と同じ金属が含まれていることにより、半田粒子と樹脂コア導電粒子の金属層との親和性を高める効果が期待できる。なお、半田粒子の粒子径は、前述の金属微粒子と同様の範囲である。
【0024】
また、被覆導電粒子は、芯材粒子である樹脂粒子の表面を半田粒子で被覆したものであってもよい。また、被覆導電粒子は、芯材粒子である樹脂粒子の表面を半田粒子以外の金属微粒子で被覆したものであってもよい。半田粒子が樹脂粒子の表面を被覆することにより、加熱により半田粒子が溶融して樹脂粒子の表面に半田の導電層を形成することができる。また、被覆導電粒子は、上述したように半田粒子の金属原子と端子の金属原子とを容易に相互拡散させることができる金属微粒子がさらに被覆したものであってもよい。
【0025】
また、被覆導電粒子は、樹脂コア導電粒子又は樹脂粒子の表面を半田粒子とフラックス化合物とを混在させたもので被覆したものであってもよい。フラックス化合物としては、例えば、レブリン酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸等のカルボン酸などが挙げられる。フラックス化合物を用いることにより、良好な接合状態を得ることができる。
【0026】
また、被覆導電粒子は、前述のように、第1の構成例~第3の構成例に示す突起を有する導電粒子の表面を金属微粒子で被覆したものであってもよく、突起となる絶縁性粒子を金属微粒子に混在させて被覆してもよい。絶縁性粒子のモース硬度は、7より大きいことが好ましい。絶縁性粒子としては、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、経済性の観点からアルミナを用いることが好ましい。絶縁性粒子の硬度が高いことにより、突起が電極表面に酸化物がある場合、その酸化物を突き破ることができ、良好な接合状態を得ることができる。
【0027】
金属微粒子の被覆は、例えば特開2018-145418号公報に記載された方法を適用することができる。また、後述する実施例に記載された方法に限定されるものでもなく、同様の効果が得られれば特に制限はない。乾式で被覆する以外に、液状成分や粘性液状成分を混在させて同様の操作で被覆させてもよい、
【0028】
<2.接続材料>
本実施の形態に係る接続材料は、前述した被覆導電粒子が絶縁性バインダー中に分散されてなる。接続材料としては、第1の電子部品と第2の電子部品とを接続するために導電性を示す導電性接着剤、圧力印加方向のみに導電性を示す異方性導電接着剤などが挙げられる。また、接続材料は、配線基板の層間を接続するビア材(充填材)、配線パターンの配線材料などにも適用可能である。
【0029】
以下、異方性導電接着剤を例に挙げて説明する。異方性導電接着剤は、フィルム状の異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、又はペースト状の異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)のいずれであってもよい。取り扱いのし易さの点では異方性導電フィルムが好ましく、コストの面では異方性導電ペーストが好ましい。また、異方性導電フィルムの厚みの下限は、例えば粒子径と同じであってもよく、好ましくは粒子径の1.3倍以上もしくは10μm以上とすることができる。また、異方性導電フィルムの厚みの上限は、例えば40μm以下もしくは粒子径の2倍以下とすることができる。また、異方性導電フィルムは、剥離フィルム上に形成することができる。また、異方性導電フィルムは、導電粒子を含有していない接着剤層や粘着剤層が積層されていてもよく、その層数や積層面は、対象や目的に合わせて適宜選択することができる。また、接着剤層や粘着剤層の絶縁性樹脂としては、異方性導電フィルムと同様のものを使用することができる。
【0030】
絶縁性バインダー(絶縁性樹脂)は、公知の絶縁性バインダーを用いることができる。硬化型としては、熱硬化型、光硬化型、光熱併用硬化型などが挙げられる。例えば、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂組成物、(メタ)アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂組成物、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂組成物、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂組成物などが挙げられる。また、公知の粘着剤組成物を用いてもよい。なお、本技術は、上述の絶縁性バインダー(絶縁性樹脂)に限定されるものではない。また、下記実施の形態における(メタ)アクリレート化合物についても、発明を説明するための一例にすぎない。
【0031】
本実施の形態では、熱圧着時の所定温度で硬化する熱硬化型の絶縁性バインダーが好適である。以下では、具体例として、膜形成樹脂と、エラストマーと、(メタ)アクリルモノマーと、重合開始剤と、シランカップリング剤とを含有する熱ラジカル重合型の絶縁性バインダーを挙げて説明する。なお、(メタ)アクリルモノマーとは、アクリルモノマー、及びメタクリルモノマーのいずれも含む意味である。
【0032】
膜形成樹脂としては、特に制限はなく、例えば、フェノキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。膜形成樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の点からフェノキシ樹脂を用いることが特に好ましい。フェノキシ樹脂は、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンより合成される樹脂であって、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。膜形成樹脂の含有量としては、特に制限はなく、例えば、10質量%~60質量%であることが好ましい。
【0033】
エラストマーとしては、特に制限はなく、例えば、ポリウレタン樹脂(ポリウレタン系エラストマー)、アクリルゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0034】
(メタ)アクリルモノマーとしては、特に制限はなく、例えば、単官能(メタ)アクリルモノマーであっても、2官能以上の多官能(メタ)アクリルモノマーであってもよい。重合体の応力緩和の観点から、絶縁性バインダー中の(メタ)アクリルモノマーのうち、80質量%以上が単官能(メタ)アクリルモノマーであることが好ましい。
【0035】
また、接着性の観点から、単官能(メタ)アクリルモノマーは、カルボン酸を有することが好ましい。また、カルボン酸を有する単官能(メタ)アクリルモノマーの分子量は、100~500であることが好ましく、200~350であることがより好ましい。また、カルボン酸を有する単官能(メタ)アクリルモノマーの絶縁性バインダーにおける含有量は、3質量%~20質量%であることが好ましく、5質量%~10質量%であることがより好ましい。
【0036】
重合開始剤としては、熱圧着時の所定温度で(メタ)アクリルモノマーを硬化できるものであれば特に制限はなく、例えば、有機過酸化物などが挙げられる。有機過酸化物としては、例えばラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、ベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の絶縁性バインダーにおける含有量は、特に制限はなく、例えば0.5質量%~15質量%であることが好ましい。なお、熱圧着時の所定温度は、重合開始剤及びこれと反応する重合性化合物との反応開始温度から求めることができる。一般的に、熱圧着時の所定温度は、反応開始温度よりも高く設定するからである。熱圧着時の所定温度は、接続時間や反応性(潜在性、ライフ)にも依存するため、接続条件にも起因することになる。
【0037】
シランカップリング剤としては、特に制限はなく、例えば、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤、チオール系シランカップリング剤、アミン系シランカップリング剤などが挙げられる。シランカップリング剤の絶縁性バインダーにおける含有量は、特に制限はなく、例えば0.1質量%~5.0質量%であることが好ましい。
【0038】
<3.接続材料の製造方法>
本実施の形態に係る接続材料の製造方法は、以下の工程(A)と、工程(B)とを有する。
【0039】
[工程(A)]
工程(A)では、前述した導電粒子と、金属微粒子とを撹拌することにより、導電粒子を金属微粒子で被覆させた被覆導電粒子を得る。また、導電層の表面に複数の突起を有する導電粒子を用いることにより、突起が金属微粒子の付着の核となり、金属微粒子の付着量を増大させることができる。
【0040】
導電粒子及び金属微粒子の粒子径は、前述した被覆導電粒子で説明した範囲と同様である。また、導電粒子及び金属微粒子は、市販品を使用することができる。また、導電粒子は、金属微粒子で被覆させる観点から、乾粉状態のものを用いることが好ましい。
【0041】
また、工程(A)では、導電粒子に対する金属微粒子の量が例えば200体積%未満となるように導電粒子と金属微粒子とを配合することが好ましい。導電粒子に対する金属微粒子の量(体積%)は、次式により求めた値とすることができる。
【0042】
導電粒子(A)に対する金属微粒子(B)の量(体積%)
={(Bw/Bd)/(Aw/Ad)}×100
Aw:導電粒子(A)の質量組成(質量%)
Bw:金属微粒子(B)の質量組成(質量%)
Ad:導電粒子(A)の比重
Bd:金属微粒子(B)の比重
【0043】
このような条件を満たすことにより、工程(A)で導電粒子の表面への金属微粒子の被覆を容易に進行させることができる。なお、上述したようにフラックス化合物などの液状、粘性液状成分を金属微粒子と同時に攪拌する場合であっても、上記条件を満たせばよい。
【0044】
導電粒子と金属微粒子とを撹拌する方法は、乾式法、湿式法のいずれであってもよく、乾式法が好ましい。公知のトナー等で用いられている手法を適用できるためである。導電粒子と金属微粒子とを撹拌するための装置は、例えば、遊星式撹拌装置、振とう機、ラボミキサー、撹拌プロペラ等が挙げられる。特に、導電粒子を粒子径の小さい金属微粒子で被覆させる観点から、高シェアのかかる遊星式撹拌装置が好ましい。遊星式撹拌装置は、導電粒子と金属微粒子とを含む容器を自転させながら公転させることにより、被覆導電粒子と金属微粒子とを含む混合物を得ることができる。
【0045】
[工程(B)]
工程(B)では、被覆導電粒子と金属微粒子とを含む混合物と、絶縁性バインダーとを撹拌することにより、被覆導電粒子が絶縁性バインダー中に分散された接続材料が得られる。
【0046】
また、工程(B)では、被覆導電粒子における金属微粒子に導電粒子との摩擦や高シェアがかかることで、金属微粒子が導電粒子から乖離することがあるが、乖離した金属微粒子が、被覆導電粒子間に介在されるため、被覆導電粒子の凝集が抑制される。
【0047】
このように、工程(B)を行うことにより、被覆導電粒子の凝集を抑制でき、絶縁性バインダー中に被覆導電粒子を分散させることができる。また、工程(B)では、工程(A)で得た被覆導電粒子と金属微粒子とを含む混合物に、絶縁性バインダーを加えればよいため、同一容器、同一装置を用いることができ、材料コストや製造コストを低減することができる。
【0048】
なお、本実施の形態に係る接続材料の製造方法は、必要に応じて、前述した工程(A)及び工程(B)以外の他の工程をさらに有していてもよい。例えば、接続材料をフィルム状の異方性導電フィルムとする場合、被覆導電粒子が絶縁性バインダー中に分散されてなる異方性導電接着剤組成物を塗布法により成膜し、乾燥させる工程が挙げられる。
【0049】
<4.接続構造体>
図1は、本実施の形態に係る接続構造体の接続部を模式的に示す断面図である。本実施の形態に係る接続構造体は、第1の端子1aを有する第1の電子部品1と、第2の端子2aを有する第2の電子部品2と、第1の電子部品1と第2の電子部品2との間に、前述の接続材料が硬化した硬化膜とを備え、第1の端子1aと第2の端子2aとの間の被覆導電粒子3は、導電層の金属原子が、金属微粒子の金属中に拡散してなるとともに、第1の端子の金属及び第2の端子の金属原子が、金属微粒子の金属中に拡散してなる。これにより、第1の端子の金属及び第2の端子の金属が、金属微粒子の金属と金属結合・合金化がした状態となるため、導通抵抗値の低抵抗化及び安定化を図ることができる。上記では、電子部品の配線がライン・アンド・スペース(L/S)を有する異方性導電接続について説明したが、電子部品の端子(配線)がいわゆるベタパターンであってもよく、異方性のない導電接続、導電接着剤として使用してもよい(図示せず)。なお、端子は、必ずしも凸形状でなくてもよく、電気接続される通電部位であればよい。
【0050】
第1の電子部品及び第2の電子部品は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第1の電子部品としては、例えば、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。また、第2の電子部品としては、例えば、カメラモジュール、IC(Integrated Circuit)モジュール、ICチップ等が挙げられる。第2の電子部品は、センサーが搭載された機能性モジュールであってもよい。カメラモジュールでは、電気的絶縁性、熱的絶縁性に優れる観点からセラミック基板が使用されることがある。セラミック基板や機能性モジュールは、小型化(例えば1cm以下)での寸法安定性に優れるなどの利点がある。また、本技術が適用された接続構造体は、例えば、半導体装置(ドライバICの他、光学素子や熱電変換素子、光電変換素子など半導体を利用したものは全て含む)、表示装置(モニター、テレビ、ヘッドマウントディスプレイなど)、携帯機器(タブレット端末、スマートフォン、ウェアラブル端末など)、ゲーム機、オーディオ機器、撮像装置(カメラモジュールなどのイメージセンサを用いるもの)、車両(移動装置)用電装実装、医療機器、センサーデバイス(タッチセンサー、指紋認証、虹彩認証など)などの電気的接続を用いるあらゆる電子機器に用いることができる。
【0051】
以下では、具体例として、カメラモジュールを実装した接続構造体を挙げて説明する。図2は、カメラモジュールを実装した接続構造体を模式的に示す断面図である。図2に示すように、この接続構造体は、第1の端子を有するフレキシブル基板10と、第2の端子を有するカメラモジュール20と、第1の端子と第2の端子との間に、前述の接続材料が硬化した硬化膜30とを備える。
【0052】
フレキシブル基板10には、カメラモジュールの第2の端子に対向する位置に第1の端子が設けられている。また、フレキシブル基板10には、カメラモジュール実装部以外にカメラモジュール駆動用IC11が実装されていてもよい。
【0053】
図2に示すように、カメラモジュール20は、実装面に凹部(キャビティ)を有し、凹部の周縁部に第2の端子を有するセラミック基板21と、凹部に収容されるイメージセンサ22と、イメージセンサ22上に配置され、セラミック基板21上に固定された保護ガラス23と、イメージセンサ22上に配置され、筐体に設置されたレンズ24とを有する。図2に示すように、セラミック基板21には、矩形の実装面において、対抗する2辺又は3辺に第2の端子が形成される。
【0054】
硬化膜30は、前述の接続材料が硬化したものであり、例えば、図3に示すように、セラミック基板21の矩形の実装面上に異方性導電フィルム31を貼り付け、異方性導電フィルム31上にフレキシブル基板10を搭載した状態で熱圧着することにより得られる。
【0055】
このような構成の接続構造体によれば、イメージセンサ22とフレキシブル基板30との間の距離T1を短くすることができる。なお、メージセンサ22とレンズ24との間の距離は、光学的に短くすることが困難である。
【0056】
また、カメラモジュール20は、実装面に凹部を有するため、実装後凹部にガスが溜まり易くなり、例えば高気圧の信頼性評価試験を行った場合、ガスの影響でフレキシブル基板10が膨らむことがある。本実施の形態によれば、被覆導電粒子の導電層の金属原子が、金属微粒子の金属中に拡散してなるとともに、第1の端子の金属原子及び第2の端子の金属原子が、金属微粒子の金属中に拡散してなる。これにより、金属結合・合金化が進行し、カメラモジュール20とフレキシブル基板10とが強固に接着されるため、低抵抗化を安定して維持することができる。よって、イメージセンサ22と信号を安定して送受信することができ、ノイズが抑制された撮像画像(電気信号)を得ることができる。
【0057】
本技術において、接続対象となる導通箇所の金属と、導電粒子の導電層の金属と、導電粒子を被覆している金属微粒子の金属とは、その組み合わせに応じて適宜選択することができる。例えば、第1の端子の金属、第2の端子の金属、及び導電粒子の導電層の金属は、同一種であることが好ましい。これにより、同種の金属結合・合金化が進行し、異種金属間のマイグレーションを防ぐことができる。また、端子の構成の一例として、第1の端子及び第2の端子が、導体上にニッケルメッキ層と金メッキ層とがこの順に形成されてなることが好ましい。これにより、被覆導電粒子の導電層が、ニッケル又はニッケル合金である第1の導電層と、金又は金合金である第2の導電層とから形成され、金属微粒子が銀又は銀合金である場合、熱圧着により銀又は銀合金中に金原子が拡散し、金と銀の金属間化合物が形成されるため、銀やニッケルのマイグレーションを防ぐことができる。本技術における金属原子の拡散は、金属の自由電子の影響であると思われ、金属微粒子の金属の自由電子の移動度が大きいことにより、金属微粒子(上記の銀)と対象金属(上記の金)との合金化に寄与していると推察される。
【0058】
<5.接続構造体の製造方法>
本実施の形態に係る接続構造体の製造方法は、前述の接続材料を介して、第1の端子を有する第1の電子部品と、第2の端子を有する第2の電子部品とを所定温度で熱圧着し、導電層の金属原子を金属微粒子の金属中に拡散させるとともに、第1の端子の金属原子及び第2の端子の金属原子を金属微粒子の金属中に拡散させる。これにより、導通抵抗値の低抵抗化及び安定化を図ることができる。ここで、熱圧着時の所定温度は、一例として200℃以下、好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。200℃以下とは、後述する接続時の対象部材への熱衝撃を抑制させる(基板の反りの低減化など)効果や、の硬化後の歪みを抑制する、といった観点から設けた指標である。金属微粒子の金属中に第1の端子の金属原子、第2の端子の金属原子、及び導電粒子の導電層の金属原子を拡散させるのに、200℃以上の温度が必要な場合には、接続時の対象部材、接続材料の材質や厚みなどを耐熱性に合わせて用いればよい。なお、熱圧着時の所定温度は、接続材料の硬化開始温度以上であるため、硬化開始温度を測定することにより熱圧着時の所定温度を判別することができる。
【0059】
熱圧着の温度は、金属拡散が起こる200℃以下の温度であればよく、好ましくは160℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。熱圧着の温度が低温であるほど、第1の電子部品及び第2の電子部品に熱衝撃が加わらないため好ましい。
【0060】
第1の電子部品及び第2の電子部品は、前述した接続構造体における第1の電子部品及び第2の電子部品と同様である。また、接続材料についても、前述した接続材料と同様である。
【実施例
【0061】
以下、本技術の実施例について説明する。本実施例では、金属微粒子として銀粒子を用いた被覆導電粒子を作製した。そして、被覆導電粒子を含有する異方性導電フィルムを用いて接続構造体を作製し、導通特性について評価した。また、接続構造体の接続部の断面を観察した。
<実施例1>
【0062】
[導電粒子の作製]
平均粒径20μmの樹脂コア導電粒子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ、樹脂コア、突起無)3質量部に対し、金属粒子として平均粒径60nmの銀粒子1質量部を、遊星式撹拌装置(製品名:あわとり錬太郎、THINKY社製)に投入し、5分間撹拌して、被覆導電粒子を含む混合物を作製した。
【0063】
[異方性導電フィルムの作製]
被覆導電粒子を含む混合物5質量部と、以下の各成分からなる絶縁性バインダー95質量部とを遊星式撹拌装置(製品名:あわとり錬太郎、THINKY社製)に投入し、1分間撹拌して異方性導電接着組成物を作製した。そして、異方性導電接着組成物をPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンで5分間乾燥させ、異方性導電接着組成物からなる粘着層をPETフィルム上に形成し、幅2.0mm、厚さ25μmの異方性導電フィルムを作製した。
【0064】
絶縁性バインダーは、フェノキシ樹脂(商品名:YP-50、新日化エポキシ製造株式会社製)47質量部、単官能モノマー(商品名:M-5300、東亞合成株式会社製)3質量部、ウレタン樹脂(商品名:UR-1400、東洋紡績株式会社製)25質量部、ゴム成分(商品名:SG80H、ナガセケムテックス株式会社製)15質量部、シランカップリング剤(商品名:A-187、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製)2質量部、及び有機過酸化物(商品名:ナイパーBW、日油株式会社製)3質量部を、固形分が50質量%となるように含有する、酢酸エチルとトルエンとの混合溶液とした。
【0065】
[接続構造体の作製]
異方性導電フィルムを介して、カメラモジュール評価用基板(セラミック基板、200μmピッチ、ライン:スペース=1:1、端子厚み10μm、Ni(下地)/Au(表面)メッキ、キャビティ構造有)と、FPC(ポリイミドフィルム、200μmピッチ、ライン:スペース=1:1、端子厚み12μm、Ni(下地)/Au(表面)メッキ)とを熱圧着し、接続構造体を作製した。熱圧着は、FPC上の厚み200μmのシリコンラバーを介してツールを押し下げ、温度:120℃、圧力:1MPa、時間:6secの条件で行った。
【0066】
<実施例2>
平均粒径20μmの樹脂コア導電粒子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ、樹脂コア、突起有)3質量部に対し、金属粒子として平均粒径60nmの銀粒子0.5質量部を、遊星式撹拌装置に投入して被覆導電粒子を含む混合物を作製した以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルム及び接続構造体を作製した。
【0067】
<実施例3>
平均粒径20μmの樹脂コア導電粒子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ、樹脂コア、突起有)3質量部に対し、金属粒子として平均粒径60nmの銀粒子1質量部を、遊星式撹拌装置に投入して被覆導電粒子を含む混合物を作製した以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルム及び接続構造体を作製した。
【0068】
<比較例1>
平均粒径20μmの樹脂コア導電粒子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ、樹脂コア、突起有)5質量部と絶縁性バインダー95質量部とを遊星式撹拌装置に投入して異方性導電接着組成物を作製した以外は、実施例1と同様にして、異方性導電フィルム及び接続構造体を作製した。
【0069】
<導通特性の評価>
デジタルマルチメータ(横河電機社製)を用いて、4端子法にて電流1mAを流したときの接続構造体の導通抵抗値を測定した。また、温度121℃、湿度100%、気圧2atmの条件の信頼性評価試験後(12h、24h)の接続構造体の導通抵抗値を測定した。接続構造体の導通抵抗値の測定は、サンプル1個当たり6チャンネル行い、20サンプル行った(合計120チャンネル)。
【0070】
表1に、初期及び信頼性評価試験後(12h、24h)における接続構造体の導通抵抗値(最大値、平均値、最小値)を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
表1に示すように、銀微粒子で被覆していない突起有導電粒子を用いた比較例1では、導通抵抗値の最大値と最小値との幅が大きく、信頼性評価試験後に導通抵抗値の最大値と最小値との幅がさらに大きくなった。また、比較例1では、信頼性評価試験後に導通抵抗値の平均値が上昇した。
【0073】
一方、突起無導電粒子を銀微粒子で被覆した被覆導電粒子を用いた実施例1、及び突起有導電粒子を銀微粒子で被覆した被覆導電粒子を用いた実施例2、3では、導通抵抗値の最大値と最小値との幅が小さく、信頼性評価試験後に導通抵抗値の最大値と最小値との幅がさらに小さくなった。また、実施例1~3では、信頼性評価試験後に導通抵抗値の平均値が低下した。これは、信頼性評価試験後に金属の拡散がより広がったためと考えられる。また、導電粒子3質量部に対し、銀粒子0.5~1.0質量部を混合攪拌することにより、良好な結果が得られることが分かった。
【0074】
<接続部の断面観察>
図3は、実施例2で用いた樹脂コア導電粒子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ(Au=35μm、Ni=210nm)、樹脂コア、突起有)を観察したSEM(Scanning Electron Microscope)写真であり、図4は、実施例2で用いた被覆導電粒子(金属微粒子:銀粒子60μm)を観察したSEM写真である。図3及び図4より、突起有導電粒子と銀粒子とを混合攪拌することにより、突起を覆うように銀粒子が付着していることが分かる。
【0075】
また、透過型電子顕微鏡FE-TEMを用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、実施例2の接続構造体における被覆金属粒子とセラミック基板側の端子(Ni(下地)/Au(表面)メッキ)との接触部分を元素マッピングすることにより、金属の拡散状態を観察した。
【0076】
図5は、実施例2で作製した接続構造体の接続部の断面を観察したSEM写真であり、図6は、図5に示す四角部分のセラミック基板側の拡大写真である。図7は、図6に示す拡大写真部分の銀(Ag)のマッピング画像である。図8は、図6に示す拡大写真部分のニッケル(Ni)のマッピング画像である。図9は、図6に示す拡大写真部分の金(Au)のマッピング画像である。
【0077】
図7より、被覆金属粒子とセラミック基板側の端子との接触部分に、金属微粒子である銀が存在しているのが分かる。また、図8より、被覆金属粒子の導電層のニッケルとセラミック基板側の端子のニッケルとの間に、ニッケル以外の金属が存在しているのが分かる。また、図9より、被覆金属粒子の導電層のニッケルとセラミック基板側の端子のニッケルとの間に存在する銀中まで金が拡散しているのがわかる。すなわち、図7図9より、セラミック基板の端子のAuメッキのAu原子と、被覆導電粒子の導電層のAuメッキのAu原子とが、金属微粒子のAg中に拡散しているのが分かる。これは、金属微粒子の粒径が小さいことにより、導電層の最表面のAu及び端子の最表面のAuと接触する金属微粒子が増加し、金属微粒子のAg中にAuが拡散し易くなったためと推測され、上述したように、金属微粒子の金属の自由電子の移動度が比較的大きいことにより、導電層と端子のメッキ層との合金化に影響を与えていると類推される。
【0078】
上述の実施例では、金属微粒子の拡散について説明したが、これに限られるものではなく、例えば、金属微粒子との単純な接触や合金化などであってもよい。金属微粒子は、その材質によって、樹脂コア導電粒子の導電層や導電粒子と、相互間で導通性能が得られれば目的が達成できる場合がある。被覆導電粒子は、金属微粒子が被覆されることで、金属微粒子の導電粒子への接触点や接触面積の増加といった、導通に寄与する要因も重なるためである。上述した金属微粒子の拡散の効果は、これらの要因に置き換えられることもあり得る。
【符号の説明】
【0079】
1 第1の電子部品、1a 第1の端子、2 第2の電子部品、2a 第2の端子、3 被覆導電粒子、10 フレキシブル基板、11 カメラモジュール駆動用IC、20 カメラモジュール、21 セラミック基板、22 イメージセンサ、23 保護ガラス、24 レンズ、30 硬化膜、31 異方性導電フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9