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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/00 20060101AFI20241125BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G03G15/00 550
H05K5/02 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020086348
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021179582
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】石川 林
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-069241(JP,U)
【文献】特開2018-142025(JP,A)
【文献】特開平10-232528(JP,A)
【文献】特開2009-145507(JP,A)
【文献】特開2005-335348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートにトナー像を形成する画像形成ユニットを支持する支持部材と、
前記支持部材の鉛直方向の下方に配置され、前記支持部材が固定される、底面が略四角形の底板と、
前記底板の底面における第1隅部の近傍に取り付けられる第1キャスターと、
前記底板の底面における前記第1隅部と隣接する第2隅部の近傍に取り付けられる第2キャスターと、
前記底板の底面における前記第1隅部と前記第2隅部とを結ぶ第1辺に対向する第2辺の近傍に取り付けられる第3キャスターであって、前記第1キャスターと前記第2キャスターと前記第3キャスターとを結ぶ仮想線で形成される三角形の内側に画像形成装置の重心が位置するように配置される第3キャスターと、
前記底板の底面に取り付けられる第4キャスターであって、前記三角形の外側で、前記第1辺に直交する方向において画像形成装置の重心と前記第2辺との距離より、前記第4キャスターと前記第2辺との距離のほうが小さくなる位置で、且つ、前記第1辺が延びる方向において前記第3キャスターと異なる位置に配置される第4キャスターと、
を備える画像形成装置の枠体と、
前記支持部材に支持され、シートにトナー像を形成する画像形成ユニットと、
前記支持部材に支持され、前記画像形成装置に装着される装着位置と、前記装着位置から第1方向に引き出された引出位置と、の間を移動可能に構成され、前記画像形成ユニットによりトナー像が形成されるシートが収納されるシートカセットと、
を有し、
前記画像形成装置を水平の設置面に設置する場合、前記第1キャスター、前記第2キャスター、前記第3キャスターは前記設置面に設置され、前記第4キャスターは前記設置面から離れた位置に位置し、
前記第1キャスターと前記重心との距離、及び前記第2キャスターと前記重心との距離は、前記第3キャスターと前記重心との距離よりも小さ
前記第1辺が延びる方向と前記第1方向とは同一方向である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
シートにトナー像を形成する画像形成ユニットを支持する支持部材と、
前記支持部材の鉛直方向の下方に配置され、前記支持部材が固定される、底面が略四角形の底板と、
前記底板の底面における第1隅部の近傍に取り付けられる第1キャスターと、
前記底板の底面における前記第1隅部と隣接する第2隅部の近傍に取り付けられる第2キャスターと、
前記底板の底面における前記第1隅部と前記第2隅部とを結ぶ第1辺に対向する第2辺の近傍に取り付けられる第3キャスターであって、前記第1キャスターと前記第2キャスターと前記第3キャスターとを結ぶ仮想線で形成される三角形の内側に画像形成装置の重心が位置するように配置される第3キャスターと、
前記底板の底面に取り付けられる第4キャスターであって、前記三角形の外側で、前記第1辺に直交する方向において画像形成装置の重心と前記第2辺との距離より、前記第4キャスターと前記第2辺との距離のほうが小さくなる位置で、且つ、前記第1辺が延びる方向において前記第3キャスターと異なる位置に配置される第4キャスターと、
を備える画像形成装置の枠体と、
前記支持部材に支持され、シートにトナー像を形成する画像形成ユニットと、
前記支持部材に支持され、前記画像形成装置に装着される装着位置と、前記装着位置から第1方向に引き出された引出位置との間を移動可能に構成され、前記画像形成ユニットによって形成されたトナー像をシートに定着させる定着ユニットと、
を有し、
前記画像形成装置を水平の設置面に設置する場合、前記第1キャスター、前記第2キャスター、前記第3キャスターは前記設置面に設置され、前記第4キャスターは前記設置面から離れた位置に位置し、
前記第1キャスターと前記重心との距離、及び前記第2キャスターと前記重心との距離は、前記第3キャスターと前記重心との距離よりも小さく
前記第1辺が延びる方向と前記第1方向とは同一方向である、
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
前記第3キャスターは、前記第1キャスターと前記第3キャスターとを結ぶ仮想線と、
前記第2キャスターと前記第3キャスターとを結ぶ仮想線と、でなす角の二等分線上に前記重心が位置するように配置される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1辺が延びる方向において、前記第4キャスターは、前記第3キャスターの少なくとも一部と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記直交する方向において、前記第4キャスターと前記第2辺との距離は、前記第3キャスターと前記第2辺との距離よりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1キャスターと前記重心との距離及び前記第2キャスターと前記重心との距離の少なくてもいずれか一方は、前記第4キャスターと前記重心との距離よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記底板の底面に取り付けられる第5キャスターであって、前記三角形の外側で、前記第1辺に直交する方向において前記第5キャスターと前記重心との距離が前記第5キャスターと前記第2辺との距離よりも大きくなる位置で、且つ、前記第1辺が延びる方向において前記第3キャスターと異なる位置に配置される第5キャスターをさらに備え、
前記画像形成装置を水平の設置面に設置する場合、前記第5キャスターは、前記設置面から離れた位置に位置することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザビームプリンタ、LEDプリンタ等)などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置の枠体として、画像を形成する画像形成ユニットを支持する側板や支柱などの支持部材と、支持部材の鉛直方向の下方に配置され、支持部材が固定される底板を備える構成が知られている。また底板の底面にキャスターを取り付けて、画像形成装置をキャスターを介して設置面に設置する構成も知られている。なお、底板の底面の形状は、略四角形で構成されることが多い。
【0003】
底板は、支持部材を介して、画像形成ユニットや画像が形成されるシートなどの全ての重量を受けることになる。ここで底板の底面の略四角形の四隅にキャスターをそれぞれ取り付ける場合、設置面に微小な凹凸があると、四つのキャスターの全てが設置面に設置されるのではなく、その中のいずれか三つのキャスターが設置面に設置されることになる。
【0004】
この場合、底板における設置面から離れているキャスターの周囲に画像形成ユニットや支持部材の重量がかかり、このキャスターの周囲が変形するおそれがある。このように底板が変形する場合、底板に支持されている支持部材の位置がずれ、画像形成ユニットを構成する各部材間の相対位置精度が低下して、画像品質に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】
これに対して特許文献1では、底板に三つのキャスターを次に説明する配置によってバランス良く取り付ける構成が記載されている。二つのキャスターは、底板の底面の略四角形の四つの隅部のうち、隣接する二つの隅部の近傍にそれぞれが取り付けられている。もう一つのキャスターは、底板の底面の略四角形において、上記二つのキャスターが取り付けられている二つの隅部を結ぶ一辺と対向する辺の中央付近に取り付けられている。このように画像形成装置を三つのキャスターにより三点で設置することで、設置面に微小な凹凸がある場合でも、凹凸により設置面に設置されるキャスターが変化せず、画像形成装置を設置面に倣って設置することができる。従って、底板の変形を抑制して支持部材の位置がずれることを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-142025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の構成では、ユーザが画像形成装置に体重を預けた場合など、底板の底面におけるキャスターが配置されていない二つの隅部の周囲に通常の使用では想定されない荷重が付与された場合、次の課題が生じ得る。即ち、この荷重をキャスターを介して設置面で受けることができないため、枠体における荷重が付与された部分が下がり、画像形成装置全体が傾いて姿勢が不安定となるおそれがある。
【0008】
そこで本発明はこのような現状に鑑み、底板にキャスターが取り付けられている画像形成装置の枠体において、底板の変形を抑制するとともに、画像形成装置の姿勢が不安定になることを抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、シートにトナー像を形成する画像形成ユニットを支持する支持部材と、前記支持部材の鉛直方向の下方に配置され、前記支持部材が固定される、底面が略四角形の底板と、前記底板の底面における第1隅部の近傍に取り付けられる第1キャスターと、前記底板の底面における前記第1隅部と隣接する第2隅部の近傍に取り付けられる第2キャスターと、前記底板の底面における前記第1隅部と前記第2隅部とを結ぶ第1辺に対向する第2辺の近傍に取り付けられる第3キャスターであって、前記第1キャスターと前記第2キャスターと前記第3キャスターとを結ぶ仮想線で形成される三角形の内側に画像形成装置の重心が位置するように配置される第3キャスターと、前記底板の底面に取り付けられる第4キャスターであって、前記三角形の外側で、前記第1辺に直交する方向において画像形成装置の重心と前記第2辺との距離より、前記第4キャスターと前記第2辺との距離のほうが小さくなる位置で、且つ、前記第1辺が延びる方向において前記第3キャスターと異なる位置に配置される第4キャスターと、を備える画像形成装置の枠体と、前記支持部材に支持され、シートにトナー像を形成する画像形成ユニットと、前記支持部材に支持され、前記画像形成装置に装着される装着位置と、前記装着位置から第1方向に引き出された引出位置と、の間を移動可能に構成され、前記画像形成ユニットによりトナー像が形成されるシートが収納されるシートカセットと、を有し、前記画像形成装置を水平の設置面に設置する場合、前記第1キャスター、前記第2キャスター、前記第3キャスターは前記設置面に設置され、前記第4キャスターは前記設置面から離れた位置に位置し、前記第1キャスターと前記重心との距離、及び前記第2キャスターと前記重心との距離は、前記第3キャスターと前記重心との距離よりも小さ前記第1辺が延びる方向と前記第1方向とは同一方向である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、底板にキャスターが取り付けられている画像形成装置の枠体において、底板の変形を抑制するとともに、画像形成装置の姿勢が不安定となることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】画像形成装置の断面概略図である。
図2】画像形成装置の枠体の斜視図である。
図3】画像形成装置の枠体の分解斜視図である
図4】画像形成装置の枠体の斜視図である。
図5】底板を矢印-Z方向から見た図である。
図6】底板を矢印X方向から見た図である。
図7】底板を矢印-Z方向から見た図である。
図8】底板の変形量を比較した実験の結果を示すグラフである。
図9】画像形成装置の断面概略図である。
図10】底板を矢印-Z方向から見た図である。
図11】底板を矢印Y方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<画像形成装置>
以下、本発明に係る画像形成装置の全体構成を画像形成時の動作とともに図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0013】
本実施形態に係る画像形成装置Aは、イエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックKの4色のトナーを中間転写ベルトに転写した後、シートに画像を転写して画像を形成する中間タンデム方式の画像形成装置である。なお、以下の説明において、上記各色のトナーを使用する部材には添え字としてY、M、C、Kを付するものの、各部材の構成や動作は使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じであるため、区別を要する場合以外は添え字を適宜省略する。
【0014】
図1は、画像形成装置Aの断面概略図である。図1に示す様に、画像形成装置Aは、シートSに画像を形成する画像形成ユニット10と、画像形成ユニット10に向けてシートSを給送する給送ユニット20を備える。
【0015】
画像形成ユニット10は、感光ドラム1(1Y、1M、1C、1K)、帯電ローラ2(2Y、2M、2C、2K)、現像装置4(4Y、4M、4C、4K)を備える。また画像形成ユニット10は、一次転写ローラ5(5Y、5M、5C、5K)、レーザスキャナユニット3、中間転写ベルト6、二次転写ローラ7、二次転写対向ローラ8などを備える。
【0016】
給送ユニット20は、シートSが収納されるシートカセット11a~11cと、シートカセット11a~11cに収納されているシートSをピックアップするピックローラ12a~12cを備える。またピックローラ12a~12cによりピックアップされたシートSを搬送パスに給送する給送ローラ13a~13cと、搬送パスにおいてシートSを搬送する搬送ローラ14a~14dと、レジストローラ15を備える。
【0017】
画像形成装置Aにより画像を形成する際は、まず不図示の制御部に画像形成ジョブ信号が入力される。これによりシートカセット11a~11cのいずれかに収納されたシートSがピックローラ12a~12cによってピックアップされる。次に、シートSは、給送ローラ13a~13c、搬送ローラ14a~14dによってレジストローラ15に送られる。その後、シートSは、レジストローラ15によって斜行の補正がなされた後、所定のタイミングで二次転写ローラ7と二次転写対向ローラ8から形成される二次転写部に送り込まれる。
【0018】
一方、画像形成ユニット10においては、まず帯電ローラ2Yにより感光ドラム1Y表面が帯電させられる。その後、不図示の外部機器から送信された画像データに応じてレーザスキャナユニット3が感光ドラム1Y表面にレーザ光を照射し、感光ドラム1Y表面に静電潜像を形成する。その後、現像装置4Yにより感光ドラム1Yの表面に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させ、感光ドラム1Y表面にイエローのトナー像を形成する。感光ドラム1Y表面に形成されたトナー像は、一次転写ローラ5Yに一次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト6に一次転写される。
【0019】
同様のプロセスにより、感光ドラム1M、1C、1Kにも、マゼンダ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。そして一次転写ローラ5M、5C、5Kに一次転写バイアスが印加されることで、これらのトナー像が中間転写ベルト6上のイエローのトナー像に対して重畳的に転写される。これにより中間転写ベルト6の表面に画像信号に応じたフルカラーのトナー像が形成される。なお、一次転写後に感光ドラム1Y、1M、1C、1Kに付着したトナーは、不図示のクリーニング部材によって除去されて、回収トナー容器18に回収される。
【0020】
その後、中間転写ベルト6が周回移動することで、フルカラーのトナー像が二次転写部に送られる。そして二次転写部において二次転写ローラ7に二次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルト6上のフルカラーのトナー像がシートSに転写される。トナー像が転写されたシートSは、搬送ローラ14eによって定着装置9に搬送され、定着装置9において加熱、加圧処理が施され、これによりシートS上のトナー像がシートSに定着される。その後、トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ17によって排出トレイ19に排出される。
【0021】
<画像形成装置の枠体>
次に、画像形成装置Aの枠体100の構成について説明する。
【0022】
図2は、画像形成装置Aの枠体100の斜視図である。図3は、画像形成装置Aの枠体100の分解斜視図である。図2図3に示す様に、画像形成装置Aの枠体100は、上部フレーム50と下部フレーム70が連結されて構成されている。上部フレーム50と下部フレーム70はそれぞれ板金で形成されており、上部フレーム50は下部フレーム70の鉛直方向の上部に配置される。なお、下部フレーム70は、枠体100として画像形成装置Aに標準的に搭載されるものであり、収容可能なシートSの枚数を増やす等の機能拡張のためにオプションとして任意に取り付けられるカセットペディスタルユニットとは異なる。また図1に示す一点鎖線Vは、上部フレーム50と下部フレーム70との境目を示している。
【0023】
上部フレーム50は、前側板53、後側板52、前側板53と後側板52とを連結するステー58、59、60、61から構成されている。前側板53は、右上支柱54、左上支柱55、右上支柱54と左上支柱55を連結するステー56、57から構成されている。ステー56、57は、右上支柱54と左上支柱55に溶接されている。ステー58は、右上支柱54と後側板52に溶接されている。ステー59は、左上支柱55と後側板52に溶接されている。ステー60、61は、ステー56と後側板52に溶接されている。
【0024】
下部フレーム70は、底板71、前側板73、後側板72、前側板73と後側板72と底板71に連結されたステー77、78から構成されている。前側板73は、右下支柱74、左下支柱75、右下支柱74と左下支柱75を連結するステー76から構成されている。右下支柱74は、上部フレーム50の右上支柱54に対して不図示のビスによって固定されている。左下支柱75は、上部フレーム50の左上支柱55に対して不図示のビスにより固定されている。後側板72、右下支柱74、左下支柱75は、底板71に対して不図示のビスにより固定されている。ステー76は、右下支柱74と左下支柱75に溶接されている。ステー77は、右下支柱74と後側板72と底板71に対して不図示のビスにより固定されている。ステー78は、左下支柱75と後側板72と底板71に不図示のビスにより固定されている。
【0025】
また下部フレーム70の底板71の底面71v(取付面)には、五つのキャスター90a~90eが取り付けられている。これらのキャスター90a~90eは、画像形成装置Aを移動させる際や画像形成装置Aを設置する際に用いられる。キャスター90a~90eの詳しい構成については後述する。
【0026】
図4は、画像形成装置Aの枠体100に対して感光ドラム1やシートカセット11を支持する部材を取り付けた状態を示す図である。図4に示す様に、上部フレーム50の右上支柱54と左上支柱55には、感光ドラム1や現像装置4を支持するドラム支持部材81が位置決めされて取り付けられている。ドラム支持部材81は、感光ドラム1や現像装置4が備える不図示の現像スリーブの回転軸線方向の一端部を回転可能に支持する。感光ドラム1や現像スリーブの回転軸線方向の他端部は、後側板52によって回転可能に支持される。
【0027】
また上部フレーム50の右上支柱54と左上支柱55には、中間転写ベルト6を支持するベルト支持部材82が位置決めされて取り付けられている。ベルト支持部材82は、中間転写ベルト6が張架される二次転写対向ローラ8やその他のローラの回転軸線方向の一端部を回転可能に支持する。二次転写対向ローラ8の回転軸線方向の他端部は、後側板52によって回転可能に支持される。
【0028】
また上部フレーム50の右上支柱54と左上支柱55には、定着装置9と搬送ローラ14eがユニット化された定着搬送ユニット84(定着ユニット)の正面側の枠体である前側板が取り付けられている。右上支柱54と左上支柱55に対する定着搬送ユニット84の位置は、右上支柱54に形成された嵌合孔54a2cと左上支柱55に形成された嵌合孔55aに対して定着搬送ユニット84の前側板の不図示のそれぞれピンが嵌合することで決められる。また定着搬送ユニット84は、画像形成装置Aに装着されて定着処理を行う装着位置と、装着位置から引き出されてユーザがジャム処理等を行う引出位置との間を移動可能に構成されている。
【0029】
つまり画像形成ユニット10の一部を構成する感光ドラム1、現像装置4、中間転写ベルト6などは、ドラム支持部材81やベルト支持部材82を介して、後側板52、右上支柱54、左上支柱55によって支持されている。また後側板52、右上支柱54、左上支柱55に対して鉛直方向の下方で連結される後側板72、右下支柱74、左下支柱75は、感光ドラム1、現像装置4、中間転写ベルト6の荷重を受け、これらの部材を間接的に支持している。つまりドラム支持部材81、ベルト支持部材82、上部フレーム50の後側板52、右上支柱54、左上支柱55と、下部フレーム70の後側板72、右下支柱74、左下支柱75は、それぞれが画像形成ユニット10を支持する支持部材である。また底板71は、画像形成ユニット10を支持する支持部材の鉛直方向の下方に配置され、画像形成ユニット10を支持する支持部材の一部である後側板72、右下支柱74、左下支柱75が固定される。
【0030】
また定着搬送ユニット84の枠体には、搬送ローラ14dが支持される。つまり右上支柱54と左上支柱55に対する定着搬送ユニット84の位置が決まることで搬送ローラ14dの位置も決まる。また右下支柱74には、搬送ローラ14dにシートSを受け渡す搬送ローラ14aの回転軸線方向の一端部が位置決めされた上で回転可能に支持されている。搬送ローラ14aの回転軸線方向の他端部は、後側板52に回転可能に支持されている。
【0031】
また下部フレーム70の右下支柱74と左下支柱75には、シートカセット11aを支持する支持レール83a、シートカセット11bを支持する支持レール83bと、シートカセット11cを支持する支持レール83cが位置決めされて取り付けられている。支持レール83a、83b、83cは、右下支柱74及び左下支柱75と後側板72とを連結するステーである。シートカセット11a~11cは、右下支柱74と左下支柱75との間の位置において、支持レール83a~83cにガイドされながらスライド移動し、矢印-Y方向に挿入されて画像形成装置Aに装着される。画像形成装置Aに装着されたシートカセット11a~11cは、支持レール83a~83cや後側板72に支持される。またシートカセット11a~11cは、画像形成装置Aに装着される装着位置と、装着位置から矢印Y方向に引き出された引出位置との間を移動可能に構成されている。ユーザは、引出位置においてシートカセット11a~11cに対してシートSの補充を行う。
【0032】
ここで本実施形態では、シートカセット11a~11cが引き出される方向である矢印Y方向に画像形成装置Aの正面が位置し、シートカセット11a~11cが挿入される方向である矢印-Y方向に画像形成装置Aの背面が位置する。また矢印Y、-Y方向と鉛直方向である矢印Z、-Z方向と直交する方向である矢印X方向に画像形成装置Aの右側面が位置し、その反対方向である矢印-X方向に画像形成装置Aの左側面が位置する。つまりシートカセット11a~11cの移動方向において、下部フレーム70の右下支柱74及び左下支柱75と後側板72は互いに対向して配置されている。また右下支柱74と左下支柱75は、シートカセット11a~11cの移動方向と鉛直方向に直交する方向において互いに対向して配置されている。
【0033】
<キャスター>
次に、キャスター90a~90eの構成について説明する。
【0034】
図5は、底板71を矢印-Z方向から見た図である。図6は、底板71を矢印X方向から見た図である。図5図6に示す様に、底板71の底面71vは、辺71b1~71b4の四辺から形成されて角が面取りされた略四角形であり、五つのキャスター90a~90eが取り付けられている。ここでいう底板71の底面71vとは、底板71における画像形成装置Aの設置面に対向する面である。また換言すれば、底板71は、キャスター90a~90eの取付面側から見た場合の外郭が略四角形となっている。なお、底板71の底面71vの略四角形には、底面71vの辺71b1~71b4の各辺が交わる角度が直角でない形状も含まれる。また本実施形態では、矢印X方向は辺71b1に直交する方向であり、矢印Y方向は辺71b1が延びる方向である。
【0035】
キャスター90a~90eの構成は同様であるため、キャスター90dを例に挙げて説明する。図6に示す様に、キャスター90dは、対を成す車輪90d1と、車輪90d1の回転軸となるシャフト90d3と、シャフト90d3を保持するホルダ90d4を有する。二つの車輪90d1は、設置面に設置され、シャフト90d3を回転中心として矢印R1方向に回転する。またホルダ90d4は、底板71に保持されている旋回軸90d2に支持されており、旋回軸90d2を中心に矢印R2方向に旋回可能に構成されている。
【0036】
図5に示す様に、キャスター90a、90b、90d、90eは、底板71の底面71vにおける略四角形の四隅の近傍にそれぞれ配置される。具体的には、キャスター90a(第1キャスター)は、底板71の底面71vの隅部71a1(第1隅部)の近傍に配置される。キャスター90b(第2キャスター)は、底板71の底面71vの隅部71a2(第2隅部)の近傍に配置される。キャスター90d(第4キャスター)は、底板71の底面71vの隅部71a3の近傍で、且つ、後述する三角形Tの外側に配置される。キャスター90e(第5キャスター)は、底板71の底面71vの隅部71a4の近傍で、且つ、後述する三角形Tの外側に配置される。なお、キャスター90a~90eのうち、キャスター90bは画像形成装置Aの重心位置Gに最も近い位置に位置するキャスターである。
【0037】
ここでキャスター90a、90b、90d、90eが配置される底板71の底面71vの隅部71a1~71a4の近傍とは、次の位置を意味する。まず図7に示す様に、底板71の底面71vの略四角形を格子状の3×3の9つの領域(領域E1~E9)に分割する。この場合、キャスター90aの旋回軸90a2は、隅部71a1が位置する領域E1内に配置される。キャスター90bの旋回軸90b2は、隅部71a2が位置する領域E7内に配置される。キャスター90dの旋回軸90d2は、隅部71a3が位置する領域E3内に配置される。キャスター90eの旋回軸90e2は、隅部71a4が位置する領域E9内に配置される。なお、キャスター90a、90b、90d、90eを、底板71の底面71vにおける縁部に近い位置に配置する程、画像形成装置Aは安定して設置面に設置される。
【0038】
またキャスター90c(第3キャスター)は、底板71の底面71vの略四角形における隅部71a1と隅部71a2とを結ぶ辺71b1(第1辺)に対向する辺71b3(第2辺)の近傍に取り付けられる。ここでキャスター90cが配置される底板71の底面71vの略四角形における辺71b3の近傍とは次の位置を意味する。即ち、キャスター90cの旋回軸90c2は、図7に示す領域E1~E9のうち、辺71b3に近い一列の領域である領域E3、E6、E9の内側に配置される。
【0039】
またキャスター90cは、キャスター90a、90b、90cを結ぶ仮想線T1で形成される三角形Tの内側に画像形成装置の重心位置Gが位置するように配置される。具体的には、キャスター90cは、キャスター90a、90cを結ぶ仮想線と、キャスター90b、90cを結ぶ仮想線とでなす角θ1の二等分線T2上に重心位置Gが位置するように配置される。このようにキャスター90cを配置することで、シートカセット11a~11cに収納されるシートSの量や、トナーを収容する不図示のトナーボトルの内のトナー量が変化して重心位置Gが変化した場合でも、重心位置Gが三角形Tの内側に位置しやすくなる。
【0040】
なお、本実施形態では、画像形成装置Aの重心位置Gを、現像装置4に補給されるトナーを収容する不図示のトナーボトルが満たされた状態、且つ、シートカセット11a~11cにシートSが収容されていない状態で測定している。また本実施形態では、画像形成装置Aの重心位置Gは、画像形成装置Aの中心位置Wからずれた位置に位置する。また本実施形態において、三角形Tはキャスター90a、90b、90cの旋回中心を結ぶ仮想線T1で形成されている。
【0041】
図6に示す様に、キャスター90d、90eは、キャスター90cよりも鉛直方向の上方に配置されている。またキャスター90a、90bは、キャスター90cと鉛直方向において同じ位置に配置される。つまりキャスター90a~90cは、キャスター90d、90eよりも低い位置に配置されている。本実施形態では、キャスター90d、90eの車輪の下端部は、キャスター90a~90cの車輪の下端部よりも3mm低い位置に配置されている。このような構成により、画像形成装置Aが水平の設置面に設置されている場合、キャスター90a~90cは設置面に設置され、キャスター90d、90eは設置面から離れた位置に位置する。
【0042】
このように画像形成装置Aを三つのキャスター90a~90cにより三点で設置面に設置することで、設置面に微小な凹凸がある場合でも、設置面に設置されるキャスターが変化せず、画像形成装置Aを設置面に倣って設置させることができる。また画像形成装置Aの重心位置Gを内包する三角形Tを形成するように三つのキャスター90a~90cをバランス良く配置することで、三つのキャスター90a~90cにかかる荷重が均等になりやすくなる。従って、底板71における意図しない部分に過度な力が付与されることが抑制され、底板71の変形が抑制されて、画像形成ユニット10を支持する後側板72などの支持部材の位置がずれることが抑制される。このため、画像形成ユニット10を構成する各部材間の相対位置精度が低下することが抑制され、画像品質が悪化することを抑制することができる。
【0043】
またユーザが画像形成装置Aに体重を預けた場合など、底板71の底面71vの隅部71a3の周囲に通常の使用では想定されない荷重が付与された場合、隅部71a3の周囲が下方に下がり、キャスター90a、90bが設置面から離れようとする。即ち、画像形成装置Aの全体が傾こうとする。底板71の底面71vの隅部71a4の周囲に通常の使用では想定されない荷重が付与された場合も同様である。この時、キャスター90d、90eは、三角形Tの外側で、矢印X方向において画像形成装置Aの重心位置Gより辺71b3に近い位置で、且つ、矢印Y方向においてキャスター90cと異なる位置に配置されているため、設置面と接触する。これによりキャスター90d、90eが補助輪として機能し、設置面から反力を受けて画像形成装置Aの傾こうとするのを抑制する。従って、画像形成装置Aの姿勢が不安定になることを抑制することができる。なお、キャスター90d、90eのうちのいずれか一つを設ける構成でも、画像形成装置Aの姿勢が不安定になることを抑制する効果を得ることができる。
【0044】
またキャスター90cは、次の理由により、矢印Y方向において、キャスター90dとキャスター90eとの間の位置に配置されるのが好ましい。図8は、本実施形態の構成と比較例の構成で、画像形成装置Aの自重による底板71の隅部71a3の周囲の変形量を比較した実験の結果を示すグラフである。比較例の構成は、キャスター90a、90b、90eが設置面に設置される構成である。図8に示す様に、本実施形態の構成では、比較例の構成と比較して、底板71の隅部71a3の変形量が約半分に抑えられている。これは本実施形態の構成のようにキャスター90cが設置面に設置される場合、キャスター90eが設置面に設置される比較例の構成と比較して、底板71の底面71vの辺71b3側に設けられたキャスターと隅部71a3との間の距離が短くなるためである。
【0045】
なお、本実施形態では、矢印X方向において、キャスター90d、90eを、キャスター90cよりも底板71の底面71vの辺71b3に近い位置に配置している。しかしながら、キャスター90d、90eを、少なくとも矢印X方向において画像形成装置Aの重心位置Gより辺71b3に近い位置に配置する構成であれば、キャスター90d、90eを補助輪として機能させて画像形成装置Aが傾くことを抑制することができる。またキャスター90d、90eを辺71b3に近づける程、画像形成装置Aが傾くことを抑制しやすくなる。従って、矢印X方向において、キャスター90d、90eを、その一部とキャスター90cの一部とが重なる位置に配置する構成が好ましい。
【0046】
また図5に示す様に、矢印X方向において、キャスター90dは、キャスター90cよりも底板71の底面71vの辺71b3に5mm近い位置に配置されている。同様に、キャスター90eは、キャスター90cよりも底板71の底面71vの辺71b3に5mm近い位置に配置されている。このような構成により、画像形成装置Aを矢印X方向に向かって移動させて段差を乗り越える際に、キャスター90cが段差に衝突する前にキャスター90d、90eを段差に衝突させ、キャスター90cに付与される衝撃を低減させることができる。従って、補助輪として機能するキャスター90d、90eにより、通常使用されるキャスター90cを保護することができる。
【0047】
また本実施形態では、矢印Y方向において、キャスター90dとキャスター90aを同じ位置に配置しているものの、キャスター90dをキャスター90aよりも底板71の底面71vの辺71b2に近い位置に配置する構成としてもよい。これにより画像形成装置Aを矢印Y方向に向かって移動させて段差を乗り越える際に、キャスター90aが段差に衝突する前にキャスター90dを段差に衝突させて、キャスター90aに付与される衝撃を低減させることができる。
【0048】
また本実施形態では、矢印Y方向において、キャスター90eとキャスター90bを同じ位置に配置しているものの、キャスター90eをキャスター90aよりも底板71の底面71vの辺71b4に近い位置に配置する構成としてもよい。これにより画像形成装置Aを矢印-Y方向に向かって移動させて段差を乗り越える際に、キャスター90bが段差に衝突する前にキャスター90eを段差に衝突させて、キャスター90bに付与される衝撃を低減させることができる。
【0049】
また本実施形態において、上部フレーム50や下部フレーム70に支持される部材の配置は適宜変更することができる。例えば図9に示す様に、下部フレーム70に支持されるシートカセット11aを小型化してサイズが小さいシートSを収納する構成とし、これによって形成された空間に回収トナー容器18を配置する構成としてもよい。
【0050】
このように上部フレーム50や下部フレーム70に支持される部材の配置が変更される場合、画像形成装置Aの重心位置Gも変化する。例えば枠体100に支持される部材の配置が変化して、図10に示す様に、画像形成装置Aの重心位置Gが、図5に示す位置よりも矢印X方向に移動した場合を考える。
【0051】
この場合、図10に示す様に、底板71の底面71vの略四角形における隅部71a2と隅部71a4とを結ぶ辺71b4に対向する辺71b2の近傍にキャスター90cを取り付ける。ここでキャスター90cが配置される底板71の底面71vの略四角形における辺71b2の近傍とは次の位置を意味する。即ち、キャスター90cの旋回軸90c2は、図7に示す領域E1~E9のうち、辺71b2に近い一列の領域である領域E1、E2、E3の内側に配置される。またキャスター90b、90c、90eを結ぶ仮想線T1により形成された三角形Tの内側に画像形成装置Aの重心位置Gが位置するようにキャスター90cを配置する。具体的には、キャスター90cは、キャスター90b、90cを結ぶ仮想線と、キャスター90c、90eを結ぶ仮想線とでなす角θ2の二等分線T2上に重心位置Gが位置するように配置される。
【0052】
また図11に示す様に、キャスター90a、90dを、キャスター90b、90c、90eよりも鉛直方向の上方に配置する。これにより画像形成装置Aが水平の設置面に設置されている場合、キャスター90b、90c、90eは設置面に設置され、キャスター90a、90dは設置面から離れた位置に位置する。これによりキャスター90a、90dに補助輪としての機能を持たせ、画像形成装置Aの傾きを抑制し、画像形成装置Aの姿勢が不安定になることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…画像形成ユニット
11a~11c…シートカセット
71…底板
72…後側板(支持部材)
74…右下支柱(支持部材)
75…左下支柱(支持部材)
84…定着搬送ユニット(定着ユニット)
90a…キャスター(第1キャスター)
90b…キャスター(第2キャスター)
90c…キャスター(第3キャスター)
90d…キャスター(第4キャスター)
90e…キャスター(第5キャスター)
100…枠体
A…画像形成装置
図1
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