(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物およびその硬化物、ならびに立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 290/06 20060101AFI20241125BHJP
B29C 64/264 20170101ALI20241125BHJP
B29C 64/30 20170101ALI20241125BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20241125BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20241125BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20241125BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241125BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241125BHJP
【FI】
C08F290/06
B29C64/264
B29C64/30
B29C64/295
B29C64/188
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y70/00
(21)【出願番号】P 2020089617
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2020075420
(32)【優先日】2020-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019097824
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】平谷 卓之
(72)【発明者】
【氏名】和田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】小川 涼
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-213952(JP,A)
【文献】特開2004-051665(JP,A)
【文献】特開2021-169597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F285
C08F290
C08F291
C08F2
B33Y10
B29C64
B33Y70
C09D175
C09D151
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシェル型ゴム粒子と、
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物と、
ラジカル重合開始剤と、を含有
する硬化性樹脂組成物であって、
前記コアシェル型ゴム粒子は、コア層と、側鎖に脂環式炭化水素基を有する重合体を含有するシェル層を有し、
前記
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物中に
おいて、分子量500以上のラジカル重合性化合物
の含有量が2質量%以上70質量%以下
であり、
分子量500未満の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の
含有量が
0質量%以上50質量%未満であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物中において、前記分子量500未満の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の含有量が0質量%より多く50質量%未満であることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記分子量500以上のラジカル重合性化合物が、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基と少なくとも2個のウレタン基とを有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートであることを特徴とする請求項
1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記コアシェル型ゴム粒子の含有量は、前記
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物100質量部に対して7質量部以上65質量部以下であることを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記分子量500以上のラジカル重合性化合物が、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基と少なくとも2個のウレタン基とを有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートであり、前記コアシェル型ゴム粒子の含有量は、前記
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物100質量部に対して7質量部以上65質量部以下であることを特徴とする請求項
1または2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
前記コアシェル型ゴム粒子の含有量は、前記
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物100質量部に対して10質量部以上60質量部以下であることを特徴とする請求項
1乃至5のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
前記
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物中に
おいて、
前記分子量500以上のラジカル重合性化合物
の含有量が5質量%以上65質量%以下
であることを特徴とする請求項
1乃至6のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項8】
前記コアシェル型ゴム粒子の平均粒径は、0.02μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項9】
前記コアシェル型ゴム粒子の前記コア層は、ブタジエンゴム、架橋ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム、およびウレタンゴムから選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1乃至
8のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
前記コアシェル型ゴム粒子の前記コア層と前記シェル層の質量比率は、前記コア層100質量部に対して、前記シェル層が1質量部以上200質量部以下であることを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
前記分子量500以上のラジカル重合性化合物が、少なくともポリエーテル構造またはポリエステル構造を含有することを特徴とする請求項1乃至1
0のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1乃至1
1のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化してなることを特徴とする硬化物。
【請求項13】
前記硬化物のシャルピー衝撃強さが8.6kJ/m
2以上であることを特徴とする請求項1
2に記載の硬化物。
【請求項14】
スライスデータに基づいて硬化性樹脂組成物を層毎に光硬化させて造形物を造形する工程を有する立体造形物の製造方法であって、
前記硬化性樹脂組成物が、請求項1乃至1
1のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物であることを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項15】
さらに、前記造形物に熱処理を施して立体造形物を得る工程を有することを特徴とする請求項
14に記載の立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物およびその硬化物、ならびに立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂組成物に、三次元モデルの立体形状に基づいて選択的に光照射して硬化樹脂層を形成する工程を繰り返すことにより、硬化樹脂層が一体的に積層されてなる造形物を作製する光学的立体造形法(以下、「光造形法」と称する。)が知られている。
【0003】
具体的には、作製する三次元モデルの立体形状データから生成したスライスデータに従って、容器内に収容された液状の光硬化性樹脂組成物の液面に紫外線レーザー等の光を照射し、所定の厚みで所望のパターンを有する硬化樹脂層を形成する。次いで、この硬化樹脂層の上に、一層分の光硬化性樹脂組成物を供給し、同様に光を照射することにより、先に形成された硬化樹脂層と連続した新しい硬化樹脂層を積層形成する。このように、スライスデータに基づいたパターンで硬化樹脂層を積層していくことで、所望の立体造形物を得ることができる。このような光造形法によれば、三次元モデルの立体形状データがあれば、複雑な形状の立体物でも容易に作製することが可能となる。
【0004】
光造形法は、形状確認のための試作品の造形(ラピッドプロトタイピング)や、機能性検証のためのワーキングモデルの造形や型の造形(ラピッドツーリング)への応用が進んでいる。さらに、近年は、光造形法の用途は実製品の造形(ラピッドマニュファクチャリング)にも広がり始めている。
【0005】
このような背景から、汎用のエンジニアリングプラスチックに匹敵するような高い耐衝撃性を有する立体造形物の造形が可能な、光硬化性樹脂組成物が求められている。
【0006】
特許文献1では、ウレタン(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性化合物と、コア/シェル構造を有するエラストマー粒子とを含有する硬化性樹脂組成物が開示され、柔軟なウレタン(メタ)アクリレート成分とエラストマー粒子との併用による耐衝撃性の改善が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1では、ウレタン(メタ)アクリレートを含有するラジカル重合性化合物の粘度が高く、硬化物作製時の作業性を損なわないため、顕著な粘度上昇を引き起こすエラストマー粒子の添加量を低く抑える必要があり、硬化物の耐衝撃性は十分ではなかった。
【0009】
そのため、本発明は、耐衝撃性に優れた硬化物を得ることができる、低粘度の硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態に係る硬化性樹脂組成物は、
コアシェル型ゴム粒子と、
分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物と、
ラジカル重合開始剤と、を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記コアシェル型ゴム粒子は、コア層と、側鎖に脂環式炭化水素基を有する重合体を含有するシェル層を有し、
前記分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物中において、分子量500以上のラジカル重合性化合物の含有量が2質量%以上70質量%以下であり、分子量500未満の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の含有量が0質量%以上50質量%未満であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐衝撃性に優れた硬化物の形成が可能であり、粘度が低く抑えられ硬化物作製時の作業性に優れた硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも本発明の実施形態の一つであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<コアシェル型ゴム粒子>
コアシェル型ゴム粒子は、コア層と、側鎖に脂環式炭化水素基を有する重合体を含有するシェル層を有する。コアシェル型ゴム粒子のシェル層が、側鎖に脂環式炭化水素基を有する重合体を含有することにより、ラジカル重合性化合物を含む硬化性樹脂組成物中に、コアシェル型ゴム粒子を分散させた際の硬化性樹脂組成物の粘度上昇を抑制することができる。
【0014】
コアシェル型ゴム粒子のコア層は、ゴム状弾性体を含有するポリマーの粒子で構成される。コア層を構成するゴム状弾性体を含有するポリマーの粒子の種類は特に限定されるものではない。好ましいポリマーとしては、例えば、ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、これらのジエンゴムを水素添加または部分水素添加した飽和ゴム、架橋ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、シリコンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー三元共重合ゴム、アクリルゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。粒子中らのポリマーは、これらを単独で、または2種以上を組み合せて用いてもよい。中でも、柔軟性の観点から、ポリマーとして、ブタジエンゴム、架橋ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム、およびウレタンゴムから選ばれる少なくとも一種を用いることが特に好ましい。コア層を構成するポリマーのガラス転移温度は、20℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満である場合、室温下の硬化物中において衝撃吸収剤として機能し易くなるため好ましい。
【0015】
シェル層は、側鎖に脂環式炭化水素基を有する重合体を含有する。具体的には、コア層となるポリマー粒子の表面が、脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物等の重合体を含むシェル層で被覆された構造を有する。
【0016】
側鎖に脂環式炭化水素基を有する重合体は、コア層の表面に化学結合を介してグラフト重合しており、コア層の表面の一部または全体を覆っていることが好ましい。シェル層がコア層にグラフト重合されてなるコアシェル型ゴム粒子は、コア層となる粒子の存在下において、公知の方法でシェル層を形成する脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物をグラフト重合させることで形成することができる。例えば、乳化重合やミニエマルション重合、懸濁重合、等で調製され得る、水中に分散されたラテックス粒子に対して、シェル層を形成する脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物を加えて重合させることで製造することができる。なお、コア層の表面に、シェル層がグラフト重合され得るエチレン性不飽和基等の反応性部位が存在しない、または極めて少ない場合には、反応性部位を含有する中間層をコア層となる粒子の表面に設けてから、シェル層を形成する脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物をグラフト重合させてもよい。すなわち、コアシェル型ゴム粒子は、中間層を介してコア層にシェル層が設けられたコアシェル型ゴム粒子も含む。
【0017】
シェル層を形成する脂環式炭化水素基を含有するラジカル重合性化合物としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミド、などが挙げられる。
【0018】
また、シェル層は、その他の重合体を含んでいてもよい。その他の重合体としては、特に限定されないが、分子内に1個のラジカル重合性官能基を有する単官能ラジカル重合性化合物の重合体を好適に用いることができる。なお、単官能ラジカル重合性化合物は、コア層との相性や、樹脂組成物中での分散性の観点から適宜選択することができ、後述する硬化性樹脂組成物を構成するラジカル重合性化合物として例示した化合物の中から、1種、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
また、シェル層は、その他の重合体として、多官能ラジカル重合性化合物の重合体を併用してもよい。多官能ラジカル重合性化合物は、シェル層の形成のために用いるラジカル重合性化合物100質量部に対して、0質量部以上40質量部以下であることが好ましい。さらに、0質量部以上30質量部以下がより好ましく、0質量部以上25質量部以下が特に好ましい。多官能ラジカル重合性化合物の含有量が40質量部以下であれば、コアシェル型ゴム粒子の添加による、耐衝撃性の向上効果が得られ易くなる。なお、多官能ラジカル重合性化合物は、コア層との相性や、樹脂組成物中での分散性の観点から適宜選択することができ、後述する硬化性樹脂組成物を構成するラジカル重合性化合物の中から、1種、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
シェル層を形成するラジカル重合性化合物のラジカル重合性官能基としては、エチレン性不飽和基が挙げられる。具体的に、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基を意味する。
【0021】
(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド系化合物や(メタ)アクリレート系化合物が挙げられる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルアミド系化合物とは、メタクリルアミド基を分子内に有する化合物またはアクリルアミド基を分子内に有する化合物を意味する。また、(メタ)アクリレート系化合物とは、アクリレート基を分子内に有する化合物またはメタクリレート基を分子内に有する化合物を意味する。
【0022】
[単官能ラジカル重合性化合物]
分子内にラジカル重合性官能基を1個有する単官能(メタ)アクリルアミド系化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-tert-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、などが挙げられる。
【0023】
また、分子内にラジカル重合性官能基を1個有する単官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-オキセタニル-メチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、フェニルセロソルブ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ビフェニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルフォスフェート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性ブチル(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン変性フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性フタル酸(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸(メタ)アクリレート、アリルオキシアクリル酸メチル(製品名:AO-MA、日本触媒社製)、イミド基を有する単官能(メタ)アクリレート類(製品名:M-140、東亞合成社製)、シロキサン構造を有する単官能(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリロイル基以外のエチレン性不飽和基を有する単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩、などのスチレン誘導体、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、などのマレイミド類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどのビニルエステル類、(メタ)アクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルアセトアミドなどのN-ビニル化合物などが挙げられる。
【0025】
これらの単官能ラジカル重合性化合物は、単独でも、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0026】
硬化速度を速める観点から、単官能ラジカル重合性化合物を含有させる場合、単官能(メタ)アクリルアミド系化合物、単官能(メタ)アクリレート系化合物、N-ビニル化合物の中から選ばれる少なくとも1種類を含有することが好ましい。特に、単官能アクリルアミド系化合物、またはN-ビニル化合物を含有することが好ましい。
【0027】
[多官能ラジカル重合性化合物]
分子内にラジカル重合性官能基を2個以上有する多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート系化合物、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、多官能(メタ)アクリルアミド系化合物、多官能ウレタン(メタ)アクリレート系化合物、多官能マレイミド系化合物、多官能ビニルエーテル系化合物、多官能芳香族ビニル系化合物などが挙げられる。
【0028】
多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサメチレンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(メタクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレートヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε-カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物のジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、多官能ウレタン(メタ)アクリレート、フッ素原子を有する多官能(メタ)アクリレート、シロキサン構造を有する多官能(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。
【0029】
多官能ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
多官能(メタ)アクリルアミド系化合物としては、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-エチレンビスアクリルアミド、N,N’-(1,2-ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N,N’,N’’-トリアクリロイルジエチレントリアミンなどが挙げられる。
【0031】
多官能マレイミド系化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンなどが挙げられる。
【0032】
多官能ビニルエーテル系化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
多官能芳香族ビニル系化合物としては、例えば、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0034】
なお、これらの多官能ラジカル重合性化合物は、単独でも2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0035】
シェル層における、脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物の重合体の比率は、シェル層を形成する重合体100質量部に対して、好ましくは2質量部以上100質量部以下、より好ましくは5質量部以上100質量部以下である。脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物の比率が上記範囲を満たす場合、硬化性樹脂組成物中に含有させた際の粘度上昇を効果的に抑制することが可能となる。
【0036】
コアシェル型ゴム粒子におけるコア層とシェル層の比率としては、コア層100質量部に対して、シェル層が1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上180質量部以下である。シェル層の質量比率が1質量部以上であれば、コアシェル型ゴム粒子を含有させることによる耐衝撃性の向上効果、および粘度上昇の低減効果が十分に得られる。また、シェル層が200質量部以下であれば、多量のコアシェル型ゴム粒子を添加しなくても、十分な耐衝撃性の向上効果が得られるため、硬化性樹脂組成物の粘度が適度となり取り扱いが容易になる。
【0037】
コアシェル型ゴム粒子は、平均粒径が0.02μm以上5μm以下であることが好ましく、より好ましくは、50nm以上2μm以下である。平均粒径が0.02μm以上の場合、添加に伴う粘度上昇や、ゴム粒子の比表面積の増加に伴うゴム粒子間の相互作用が起こりにくく、硬化物の耐熱性や耐衝撃性を十分に得られる。また、平均粒径が5μm以下の場合には、硬化性樹脂組成物中におけるゴム粒子の分散性が十分に得られ、耐衝撃性の向上効果が十分に得られる。本発明におけるコアシェル型ゴム粒子の平均粒径は、算術(個数)平均粒径であって、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、有機溶剤にゴム粒子を分散させ、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0038】
硬化性樹脂組成物中におけるコアシェル型ゴム粒子の含有量は、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは7質量部以上65質量部以下、より好ましくは10質量部以上60質量部以下である。コアシェル型ゴム粒子の含有量が上記の範囲内である場合に、硬化性樹脂組成物の粘度上昇の抑制効果が顕著に発揮される。コアシェル型ゴム粒子の含有量が7質量部以上の場合、粒子添加による耐衝撃性の向上効果が得られ易いため好ましい。また、コアシェル型ゴム粒子の含有量が65質量部以下の場合は、硬化性樹脂組成物中における粒子間の強制的な近接が起こり難く、シェル層に脂環式炭化水素基を含有させることによる粘度低減効果が得られ易くなり、適度な粘度により取扱いが容易になるため好ましい。
【0039】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有する。本発明の硬化性樹脂組成物において、ラジカル重合性化合物中に、分子量500以上のラジカル重合性化合物は2質量%以上70質量%以下の割合で含有される。また、ラジカル重合性化合物中に、さらに脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物を50質量%未満の割合で含有してもよい。なお、本発明において、分子量500以上且つ、脂環式炭化水素基を有するラジカル重合性化合物は、分子量500以上のラジカル重合性化合物に含めることとする。したがって、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の分子量は500未満であり、ラジカル重合性化合物中の分子量500以上のラジカル重合性化合物の割合と脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の割合との合計が100質量%を超えることはない。
【0040】
[分子量500以上のラジカル重合性化合物]
ラジカル重合性化合物は、分子量500以上のラジカル重合性化合物を2質量%以上70質量%以下の割合で含有する。好ましくは、分子量500以上のラジカル重合性化合物を5質量%以上65質量%以下の割合で含有する。分子量500以上のラジカル重合性化合物の割合が2質量%以上の場合、分子量500以上のラジカル重合性の硬化物の耐衝撃性が十分となるため好ましい。また、分子量500以上のラジカル重合性化合物の割合が70質量%以下の場合には、粘度低減効果が得られ易くなり、硬化物作製時に十分な作業性を確保できるため好ましい。
【0041】
分子量500以上のラジカル重合性化合物としては、エチレン性不飽和基を有する従来公知のラジカル重合性化合物を用いることができる。具体的に、エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、などが挙げられる。分子量500以上のラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性化合物、特に分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能ラジカル重合性化合物を好適に用いることができる。例えば、ウレタン系(メタ)アクリレート、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0042】
ウレタン系(メタ)アクリレートは、下記に示すポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得られる。さらに、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートは、下記に例示する各々に対応するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0043】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドの共重合体、テトラヒドロフランとエチレンオキサイドの共重合体、テトラヒドロフランとプロピレンオキサイドの共重合体、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体等を挙げることができる。
【0044】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールのようなジオール化合物とε-カプロラクタムまたはβ-メチル-δ-バレロラクトンとの付加物;上記ジオール化合物とコハク酸、アジピン酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸のような二塩基酸との反応生成物;上記ジオール化合物と上記二塩基酸とε-カプロラクタムまたはβ-メチル-δ-バレロラクトンとの三成分の反応生成物等を挙げることができる。
【0045】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,4-ビス-(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2-メチルプロパンジオール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ビスフェノールAのようなジオール化合物、あるいはこれらジオール化合物とエチレンオキシド2乃至6モル付加反応物と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の短鎖ジアルキルカーボネートとの反応生成物からなるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
【0046】
さらに、これらポリカーボネートポリオールのエチレンオキシド、プロピレンオキシドとε-カプロラクタムまたはβ-メチル-δ-バレロラクトン付加反応物であるポリエステルジオール等も用いることができる。
【0047】
また、上記イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、水添4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が使用される。
【0048】
分子量500以上のラジカル重合性化合物としては、ウレタン系(メタ)アクリレートであることが好ましい。中でも、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリロイル基と少なくとも2個のウレタン基とを有する多官能ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ウレタン系(メタ)アクリレートは、少なくともポリエーテル構造、またはポリエステル構造を含有することが好ましい。より好ましくは、ウレタン系(メタ)アクリレートは、ポリエーテル構造を含有する。このようなウレタン系(メタ)アクリレートを用いることにより、コアシェル型ゴム粒子のシェル層に脂環式炭化水素基を含有させることによる、硬化性樹脂組成物の粘度の低減効果が得られ易くなる。また、硬化性樹脂組成物の硬化物の耐衝撃性の向上効果が得られ易くなる。
【0049】
[脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物]
ラジカル重合性化合物は、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物を50質量%未満の割合で含有する。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の割合は、好ましくは48質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。ラジカル重合性化合物は、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物を上記割合で含んでいることが好ましいが、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物を含有しなくてもよい。脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の割合が50質量%以上の場合、硬化性樹脂組成物の粘度が上昇する傾向があり、硬化物作製時の作業性が損なわれるため好ましくない。
【0050】
脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0051】
ラジカル重合性化合物は、分子量500以上のラジカル重合性化合物、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物の他に、分子内に1個以上のラジカル重合性官能基を有するラジカル重合性化合物を含んでもよい。分子量500以上のラジカル重合性化合物、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物以外のラジカル重合性化合物(以下、「その他のラジカル重合性化合物」と称することもある。)としては、コアシェル型ゴム粒子のシェル層を形成するラジカル重合性化合物として例示した化合物の中から、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
<ラジカル重合開始剤(成分)>
ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0053】
[光ラジカル重合開始剤]
光ラジカル重合開始剤は、主に分子内開裂型と水素引抜き型に分類される。分子内開裂型の光ラジカル重合開始剤では、特定波長の光を吸収することで、特定の部位の結合が切断される。そして、その切断された部位にラジカルが発生し、それが重合開始剤となり(メタ)アクリロイル基を含有するエチレン性不飽和化合物等のラジカル重合性化合物の重合が始まる。一方、水素引き抜き型の場合は、特定波長の光を吸収し励起状態になり、その励起種が周囲にある水素供与体から水素引き抜き反応を起こし、ラジカルが発生し、それが重合開始剤となりラジカル重合性化合物の重合が始まる。
【0054】
分子内開裂型光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤、オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤が知られている。これらはカルボニル基に隣接した結合がα開裂して、ラジカル種を生成するタイプのものである。アルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤等がある。具体的な化合物としては、例えば、ベンジルメチルケタール系光ラジカル重合開始剤としては、2,2’-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)651、BASF社製)等があり、α-ヒドロキシアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(例えば市販品として、商品名:ダロキュア(商標)1173、BASF社製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)184、BASF社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)2959、BASF社製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)127、BASF社製)等があり、アミノアルキルフェノン系光ラジカル重合開始剤としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)907、BASF社製)あるいは2-ベンジルメチル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)369、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。アシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(例えば市販品として、商品名:ルシリンTPO、BASF社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)819、BASF社製)等があるが、これに限定されることはない。オキシムエステル系光ラジカル重合開始剤としては、(2E)-2-(ベンゾイルオキシイミノ)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]オクタン-1-オン(例えば市販品として、商品名:イルガキュア(商標)OXE-01、BASF社製)等が挙げられるが、これに限定されることはない。括弧内に商品名の一例を併記しておく。
【0055】
水素引き抜き型光ラジカル重合開始剤としては、2-エチル-9,10-アントラキノン、2-t-ブチル-9,10-アントラキノン等のアントラキノン誘導体、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン誘導体が挙げられるが、これに限定されることはない。
【0056】
これらの光ラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、後述する熱ラジカル重合開始剤と併用していてもよい。
【0057】
光ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。光ラジカル重合開始剤が0.1質量部以上の場合、重合が十分である。光ラジカル重合開始剤が15質量部以下の場合、分子量が十分に増大し、耐熱性あるいは耐衝撃性が十分に得られる。
【0058】
[熱ラジカル重合開始剤]
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを発生するものであれば特に制限されず従来既知の化合物を用いることが可能であり、例えば、アゾ系化合物、過酸化物および過硫酸塩等を好ましいものとして例示することができる。アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(メチルイソブチレ-ト)、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等が挙げられる。過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレートおよびジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムおよび過硫酸カリウム等の過硫酸塩等が挙げられる。
【0059】
熱ラジカル重合開始剤の添加量としては、ラジカル重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上10質量部以下である。熱ラジカル重合開始剤が0.1質量部以上の場合、重合が十分となる。熱ラジカル重合開始剤が15質量部以下の場合、分子量が十分に増大し、耐熱性あるいは耐衝撃性が十分に得られる。
【0060】
<その他の成分(添加剤)>
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その他の任意成分として各種の添加剤が含有されていてもよい。添加剤の添加量としては、コアシェル型ゴム粒子とラジカル重合性化合物とラジカル重合開始剤の合計100質量部に対して、0.05質量部以上25質量部以下であることが好ましい。より好ましくは0.1質量部以上20質量部以下である。
【0061】
例えば、硬化物に所望の物性を付与するための物性改質剤として、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリクロロプレン、ポリエステル、ポリシロキサン、石油樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、セルロース樹脂などの樹脂、あるいはポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、液晶ポリマー、ポリトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのエンジニアリングプラスチック、フッ素系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー、ポリスルフィド系オリゴマー、金、銀、鉛などの軟質金属、黒鉛、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、窒化ケイ素、セレン化モリブデンなどの層状結晶構造物質を添加しても良い。
【0062】
また、光増感剤として、フェノチアジン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等の重合禁止剤、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ケタール化合物、ベンゾフェノン化合物、3級アミン化合物、およびキサントン化合物などを添加しても良い。
【0063】
他の添加剤としては、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、無機充填剤、顔料、染料、酸化防止剤、難燃剤、増粘剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0064】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の組成物は、コアシェル型ゴム粒子、ラジカル重合性化合物、ラジカル重合開始剤、並びに、必要に応じてその他の任意成分の適量を攪拌容器に仕込んで、通常、20℃以上120℃以下、好ましくは40℃以上100℃以下で攪拌する。そして、必要に応じて揮発性の溶剤等を除去することにより製造することができる。
【0065】
本発明に係る硬化性樹脂組成物は、光造形法に用いる造形材料として好適に用いることができる。すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物に対して、紫外・可視光線、電子線、X線、放射線などの活性エネルギー線を選択的に照射して硬化に必要なエネルギーを供給することにより、所望の形状の造形物を製造することができる。本発明の硬化性樹脂組成物を光造形法の造形材料として用いる場合、25℃における粘度が50mPa・s以上5,000mPa・s以下であるのが好ましく、より好ましくは70mPa・s以上4,000mPa・s以下である。
【0066】
<硬化物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物を、活性エネルギー線照射や熱照射といった公知の方法を用いて硬化せしめることによって硬化物を製造することができる。活性エネルギー線としては、紫外・可視光線、電子線、X線、放射線などを挙げることができる。なかでも、入手が容易な点と、光ラジカル重合開始剤との相性の点で、300nm以上450nm以下の波長を有する紫外・可視光線を好ましく用いることができる。紫外・可視光線の光源としては、紫外・可視光線レーザー(例えばArレーザー、He-Cdレーザーなど)、水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯などを使用することができる。なかでも、レーザー光源が、エネルギーレベルを高めて造形時間を短縮でき、しかも集光性に優れていて高い造形精度を得ることができる点から、好ましく採用される。硬化方法は、硬化性樹脂組成物が含有するラジカル重合開始剤の種類に合わせて適宜選択することができる。また、硬化方法は単独でも、複数組み合わせて用いてもよい。
【0067】
<立体造形物の製造方法>
本発明の硬化性樹脂組成物は、光造形法の造形材料として好適に用いることができる。本発明の硬化性樹脂組成物を硬化せしめてなる立体造形物は、公知の光造形法および装置を用いて作製することができる。好ましい光造形法の代表例としては、三次元モデルの三次元形状データから生成したスライスデータに基づいて、硬化性樹脂組成物を層毎に光硬化させて造形物を造形する工程を有する方法である。具体的には、液状の硬化性樹脂組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように、スライスデータに基づいて前記活性エネルギー線を選択的に照射して硬化層を形成する。次いで、この硬化層に接して、液状の硬化性樹脂組成物からなる未硬化層を供給し、同様にスライスデータに基づいて前記活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成する。この積層工程を繰り返すことによって最終的に三次元モデルに対応した目的とする立体造形物を得る方法を挙げることができる。
【0068】
硬化性樹脂組成物よりなる未硬化層に活性エネルギー線を照射して、所望の形状パターンを有する各硬化樹脂層を形成するに当たっては、レーザー光のように点状に絞られた活性エネルギー線を、点描方式または線描方式で照射してもよい。また、液晶シャッターまたはデジタルマイクロミラーシャッターなどのような微小光シャッターを複数配列して形成した面状描画マスクを通して未硬化層に活性エネルギー線を面状に照射する方式を採用してもよい。
【0069】
光造形法の代表的な例を説明すると、次のとおりである。まず、液状の硬化性樹脂組成物を収容した容器内において、昇降自在に設けられた支持ステージを、樹脂組成物の液面からスライスデータに基づく所定量だけ降下(沈降)させることにより、支持ステージ上に硬化性樹脂組成物の薄層(1)を形成する。次いで、この薄層(1)に対して選択的に光を照射することにより、固体状に硬化した硬化層(1)を形成する。次いで、この硬化層(1)上に硬化性樹脂組成物を供給して新たに薄層(2)を形成し、この薄層(2)に対して選択的に光を照射することにより、硬化層(1)上にこれと連続して一体的に積層されるように新しい硬化層(2)を形成する。そして、スライスデータに基づいて光照射されるパターンを変化させ、或いは変化させずに、この工程を所定回数繰り返すことにより、複数の硬化層(1,2,・・・n)が一体的に積層されてなる造形物が造形される。
【0070】
このようにして得られる造形物を容器から取り出し、必要に応じて洗浄するなどして、その表面に残存する未反応の硬化性樹脂組成物を除去する。洗浄剤としては、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類に代表されるアルコール系有機溶剤;アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等に代表されるケトン系有機溶剤;テルペン類に代表される脂肪族系有機溶剤を用いることができる。なお、未反応の硬化性樹脂組成物を除去した後には必要に応じて、活性エネルギー線または熱によるポストキュアーを行っても良い。ポストキュアーを施すことによって、造形物の表面、および内部に残存する未反応の硬化性樹脂組成物を硬化させることができ、造形物の表面のべたつきを抑えることができる他、造形物の初期強度を向上させることができる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0072】
<材料>
以下、実施例、および比較例にて使用した材料を列記する。
【0073】
[ラジカル重合性化合物]
B-1:二官能ウレタンアクリレート(商品名:KAYARAD UX-6101、日本化薬社製、重量平均分子量(実測値):6.7×103)
B-2:二官能ウレタンアクリレート(商品名:KAYARAD UX-8101、日本化薬社製、重量平均分子量(実測値):3.3×103)
B-3:アクリロイルモルホリン(商品名:ACMO、KJケミカルズ社製)
B-4:N-フェニルマレイミド(商品名:イミレックス-P、日本触媒社製)
B-5:イソボルニルメタクリレート
B-6:イソボルニルアクリレート
B-7:N-ビニル-ε-カプロラクタム
B-8:ポリカーボネートジオールジアクリレート(商品名:UM-90(1/3)DM、宇部興産社製、分子量:約900)
なお、B-1~B-8において、B-1、B-2、およびB-8が分子量500以上のラジカル重合性化合物であり、B-5およびB-6が脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系化合物であり、B-3、B-4、およびB-7がその他のラジカル重合性化合物である。
【0074】
[ラジカル重合開始剤]
C-1:光ラジカル発生剤(商品名:Irgacure819、BASF社製)
【0075】
<評価・測定方法>
[コアシェル型ゴム粒子の平均粒径]
粒度分布計(マルバーン社製、ゼータサイザーナノZS)を用い、ガラス製セルにコアシェル型ゴム粒子のアセトン分散液を約1ml入れて25℃で算術(個数)平均粒径を測定した。
【0076】
[ラジカル重合性化合物中の分子量500以上の化合物比率]
ゲルパーミエションクロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography;GPC)装置(東ソー社製、HLC-8220GPC)に、Shodex GPC LF-804カラム(昭和電工社製、排除限界分子量:2×106、分離範囲:300から2×106)を2本直列に配置し、40℃、展開溶媒としてTHFを用い、RI(Refractive Index、示差屈折率)検出器により分子量分布(保持時間-検出強度曲線)を得た。標準ポリスチレン換算の検量線より導かれた分子量500に相当する保持時間で分子量分布を区分し、全領域面積(X)に対する分子量500以上の領域面積(Y)の比率(Y/X×100[%])を算出することによって、分子量500以上の化合物比率を得た。
【0077】
[シャルピー衝撃強さ]
JIS K 7111に準じて、切欠き形成機(商品名:ノッチングツール A-4、東洋精機製作所製)にて試験片中央部に深さ2mm、45°の切欠き(ノッチ)を入れた。衝撃試験機(商品名:IMPACT TESTER IT、東洋精機製作所製)を用い、試験片の切欠きの背面から2Jのエネルギーで破壊する。150°まで振り上げたハンマーが試験片破壊後に振りあがる角度から破壊に要したエネルギーを算出し、それをシャルピー衝撃強さとし、耐衝撃性の指標とした。
【0078】
[硬化性樹脂組成物の粘度]
粘度は、回転式レオメーター法で測定した。具体的には、粘弾性測定装置(商品名:Physica MCR302、アントンパール社製)を用いて、下記のように測定した。
コーンプレート型測定治具(商品名:CP25-2、アントンパール社製;25mm径、2°)を取り付けた測定装置に試料約0.5mLを充填し、25℃に調整する。5s-1の一定せん断速度条件下、データ間隔6秒で測定し、120秒時の値を粘度とした。
【0079】
<コアシェル型ゴム粒子のアセトン分散液の製造>
[製造例1]
1Lガラス容器に、ポリブタジエンラテックス(商品名:Nipol LX111A2、日本ゼオン社製)185質量部(ポリブタジエンゴム粒子100質量部相当)および脱イオン水315質量部を仕込み、窒素置換を行いながら60℃で撹拌した。その後、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.005質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001質量部、およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部を加え、コア層としてのポリブタジエンゴム粒子を調製した。その後、シェル層を形成するラジカル重合性化合物35質量部(メチルメタクリレート(MMA)17.5質量部およびイソボルニルメタクリレート(IBMA)17.5質量部)、およびクメンヒドロパーオキサイド0.1質量部の混合物を2時間かけて連続的に添加することにより、ポリブタジエンゴム粒子の表面にラジカル重合性化合物をグラフト重合した。添加終了後、さらに2時間撹拌して反応を終了させ、ポリブタジエンゴムをコア層、MMAとIBMAの共重合体をシェル層として有するコアシェル型ゴム粒子の水分散液を得た。
【0080】
上記のようにして得られたコアシェル型ゴム粒子の水分散液をアセトン450質量部中に投入し、均一に混合した。遠心分離機を用い、回転数12000rpm、温度10℃にて30分間遠心した後、上澄み液を除去した。沈降したコアシェル型ゴム粒子にアセトンを加えて再分散し、上記と同条件で遠心分離、上澄み液の除去を2回繰り返し行うことにより、コアシェル型ゴム粒子A-1のアセトン分散液を得た。コアシェル型ゴム粒子A-1の平均粒径は0.25μmであった。
【0081】
[製造例2乃至5]
シェル層を形成するラジカル重合性化合物の組成を表1に示す通りに変更した以外は製造例1同様にしてコアシェル型ゴム粒子のアセトン分散液を得た。コアシェル型ゴム粒子の平均粒径は表1に示す通りであった。
【0082】
[製造例6]
1Lガラス容器に、ポリブタジエンラテックス(商品名:Nipol LX111A2、日本ゼオン社製)185質量部(ポリブタジエンゴム粒子100質量部相当)および脱イオン水300質量部を仕込み、窒素置換を行いながら室温で撹拌した。その後、シェル層を形成するラジカル重合性化合物35質量部(メチルメタクリレート(MMA)17.5質量部およびイソボルニルメタクリレート(IBMA)17.5質量部)、およびクメンヒドロパーオキサイド0.1質量部の混合物を一気に添加して2時間室温で撹拌した。60℃に加熱した後、脱イオン水15質量部にエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)0.005質量部、硫酸第一鉄・7水和塩0.001質量部、およびナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.2質量部を溶解させた水溶液を一気に添加することにより、コア層としてのポリブタジエンゴム粒子の表面にラジカル重合性化合物の重合体からなるシェル層を形成した。60℃で2時間撹拌して反応を終了させ、ポリブタジエンゴムをコア層、MMAとIBMAの共重合体をシェル層として有するコアシェル型ゴム粒子の水分散液を得た。
【0083】
上記のようにして得られたコアシェル型ゴム粒子の水分散液をアセトン450質量部中に投入し、均一に混合した。遠心分離機を用い、回転数12000rpm、温度10℃にて30分間遠心した後、上澄み液を除去した。沈降したコアシェル型ゴム粒子にアセトンを加えて再分散し、上記と同条件で遠心分離、上澄み液の除去を2回繰り返し行うことにより、コアシェル型ゴム粒子A-4のアセトン分散液を得た。コアシェル型ゴム粒子A-4の平均粒径は0.26μmであった。
【0084】
【0085】
<実施例1>
コアシェル型ゴム粒子A-1のアセトン分散液(固形分18質量部)と、分子量500以上のラジカル重合性化合物としてB-1(30質量部)およびB-2(10質量部)、その他のラジカル重合性化合物としてB-3(50質量部)、脂環式炭化水素基を有するメタアクリレート系化合物としてB-5(10質量部)、並びにラジカル重合開始剤としてC-1(2質量部)とを配合し、均一に混合した。揮発分であるアセトンを除去することによって硬化性樹脂組成物を得た。
【0086】
調製した硬化性樹脂組成物から、下記の方法で硬化物を作成した。まず、二枚の石英ガラスの間に長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの金型を挟み、ここに硬化性樹脂組成物を流し込んだ。流し込んだ硬化性樹脂組成物に対して紫外線照射機(商品名:LIGHT SOURCE EXECURE 3000、HOYA CANDEO OPTRONICS社製)で5mW/cm2の紫外線を金型の両面から交互に120秒間ずつ4回照射した。得られた硬化物を50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの試験片を得た。
【0087】
表2に硬化性樹脂組成物の粘度、および硬化物のシャルピー衝撃強さを示した。
【0088】
<実施例2乃至9、比較例1乃至5>
表2に示す成分を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂組成物、および硬化物を得た。表2に硬化性樹脂組成物の粘度、および硬化物のシャルピー衝撃強さを示した。
【0089】
<実施例10>
実施例1と同様に調整した硬化性樹脂組成物を用いて、3Dプリンター(DWS社製DWSー020X、規制液面法の光造形装置)を用い、80mm×10mm×4mmの大きさの直方体の三次元形状に基づくスライスデータに従って造形した。得られた造形物を、UVCuring Unit M(DWS社製)を用いて30分間紫外光を照射し、その後50℃の加熱オーブン内に入れて1時間、さらに100℃の加熱オーブン内に入れて2時間熱処理を行うことで、試験片を得た。
【0090】