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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】撮像装置とその制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/71 20230101AFI20241125BHJP
   G03B 7/091 20210101ALI20241125BHJP
【FI】
H04N23/71
G03B7/091
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020123846
(22)【出願日】2020-07-20
(65)【公開番号】P2022020382
(43)【公開日】2022-02-01
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 朱里
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-177301(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0267506(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/71
G03B 7/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直同期信号の同一期間内に複数の電荷蓄積を行うことが可能な撮像素子と、
前記撮像素子の駆動を制御する駆動制御手段と、
前記撮像素子から出力される画像信号を用いて適正露出を求める露出制御手段と、を備える撮像装置であって、
前記露出制御手段は、
現在の制御値により得られる測光結果に基づいて、前記垂直同期信号の同一期間内に前記撮像素子での電荷蓄積を行うための、追従制御値と、前記現在の制御値から前記追従制御値への変化方向に前記追従制御値よりも離れた第1の予測制御値と、を設定する設定手段と、
前記追従制御値とその測光値の適正差分および前記第1の予測制御値とその測光値の適正差分の少なくとも一方が所定の許容値以下か否かを判定する判定手段と、
前記所定の許容値以下の適正差分に対応する測光値を適正露出に決定する決定手段と、を有し、
前記現在の制御値は、初期値、または、前記許容値以下の適正差分がない場合の前記追従制御値と前記第1の予測制御値のそれぞれの測光値のうちの一方の測光値であることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記第1の予測制御値で蓄積された電荷の読み出しを前記追従制御値で蓄積された電荷の読み出しよりも先に行うことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記現在の制御値から前記追従制御値への変化方向に前記第1の予測制御値よりも離れた第2の予測制御値を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記設定手段は、前記現在の制御値から前記追従制御値への変化方向の逆方向に第2の予測制御値を設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記第2の予測制御値での電荷蓄積を、前記追従制御値と前記第1の予測制御値での電荷蓄積が行われた前記垂直同期信号の同一期間の次の期間に行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記決定手段は、前記追従制御値とその測光値の適正差分および前記第1の予測制御値とその測光値の適正差分の両方が前記所定の許容値より大きく、且つ、前記第2の予測制御値とその測光値の適正差分が前記所定の許容値以下である場合に、前記第2の予測制御値での測光値を適正露出に決定することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記設定手段は、AE精度の許容値と、前記撮像素子のダイナミックレンジから求められる制御値と測光値の許容露出差分と、に基づいて前記第2の予測制御値を設定することを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記設定手段は、AE精度の許容値と、前記撮像素子のダイナミックレンジから求められる制御値と測光値の許容露出差分と、に基づいて前記第1の予測制御値を設定することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記決定手段は、最初の前記追従制御値の設定から所定の時間が経過するまでに適正露出が決定されない場合に、前記所定の時間の経過時に設定されている追従制御値での測光値を適正露出に決定することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記決定手段は、撮影指示が入力された場合、前記撮影指示があった時点での最適な測光値を適正露出に決定することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
撮像素子と、
前記撮像素子の駆動を制御する駆動制御手段と、
前記撮像素子を用いて電荷蓄積を行うことにより得られた信号に基づいて測光を行う測光手段と、
前記撮像素子を用いて被写体を撮像する際の露出制御値を制御する露出制御手段と、
前記被写体を撮像する際の露出制御値が設定された際に、前記撮像素子を用いた電荷蓄積により得られた信号に基づく第1の測光結果と前記露出制御値とを比較することで、前記第1の測光結果が適正露出であるか否かを判定する判定手段と、を備え、
前記駆動制御手段は、連続する同期信号の間の1フレーム期間において、同期信号に同期した第1のタイミングと、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングのそれぞれで電荷蓄積を行うように、且つ、前記第1のタイミングで行われる第1の電荷蓄積と前記第2のタイミングで行われる第2の電荷蓄積が前記撮像素子の異なる領域で実行されるように前記撮像素子の駆動を制御し、
前記露出制御手段は、第1のフレーム期間で行われる電荷蓄積により得られた前記第1の測光結果が適正露出であると前記判定手段により判定された場合、前記被写体を撮像する際の露出制御値を前記第1の測光結果に基づく露出制御値に変更し、前記第1の電荷蓄積により得られた信号に基づく測光結果が適正露出ではないと前記判定手段により判定された場合に、次のフレーム期間において、前記第1の電荷蓄積により得られた信号と前記第2の電荷蓄積により得られた信号とに基づく前記測光手段による測光結果を用いて、前記被写体を撮像する際の露出制御値を決定することを特徴とする撮像装置。
【請求項12】
前記測光手段は、前記第1の測光結果が適正露出ではないと前記判定手段により判定された場合に、前記第1のフレーム期間の次の第2のフレーム期間において前記第1の電荷蓄積により得られた信号に基づく第2の測光結果と、前記第2の電荷蓄積により得られた信号に基づく第3の測光結果と、を求めることを特徴とする請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記露出制御手段は、前記第2の測光結果を得るための前記第1の電荷蓄積を行う際の露出制御値を前記第1の測光結果に基づいて決定し、前記第3の測光結果を得るための前記第2の電荷蓄積を行う際の露出制御値を前記第1の測光結果に基づく露出制御値とは異ならせることを特徴とする請求項12に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記駆動制御手段は、同一のフレーム期間において行われる、前記第1の電荷蓄積と前記第2の電荷蓄積に基づく前記撮像素子からの信号の読み出しをそれぞれ異なるタイミングで行うことを特徴とする請求項11乃至13のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
垂直同期信号の同一期間内に複数の電荷蓄積を行うことが可能な撮像素子を備える撮像装置の制御方法であって、
前記撮像素子から出力される画像信号を用いて適正露出を求める処理は、
現在の制御値により得られる測光結果に基づいて、前記垂直同期信号の同一期間内に前記撮像素子での電荷蓄積を行うための、追従制御値と、前記現在の制御値から前記追従制御値への変化方向に前記追従制御値よりも離れた第1の予測制御値と、を設定する工程と、
前記追従制御値とその測光値の適正差分および前記第1の予測制御値とその測光値の適正差分の少なくとも一方が所定の許容値以下か否かを判定する工程と、
前記許容値以下の適正差分に対応する測光値を適正露出に決定する工程と、を有し、
前記現在の制御値は、初期値、または、前記許容値以下の適正差分がない場合の前記追従制御値と前記第1の予測制御値のそれぞれの測光値のうちの一方の測光値であることを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項16】
撮像素子を備えた撮像装置の制御方法であって、
前記撮像素子の駆動を制御する駆動制御工程と、
前記撮像素子を用いて被写体を撮像する際の露出制御値を制御する露出制御工程と、
前記露出制御工程にて前記被写体を撮像する際の露出制御値が設定された際に、前記撮像素子を用いた電荷蓄積により得られた信号に基づく第1の測光結果と前記露出制御値とを比較することで、前記第1の測光結果が適正露出であるか否かを判定する判定工程と、を有し、
前記駆動制御工程では、連続する同期信号の間の1フレーム期間において、同期信号に同期した第1のタイミングと、前記第1のタイミングとは異なる第2のタイミングのそれぞれで電荷蓄積を行い、且つ、前記第1のタイミングで行われる第1の電荷蓄積と前記第2のタイミングで行われる第2の電荷蓄積を前記撮像素子の異なる領域で実行し、
前記露出制御工程では、前記判定工程にて第1のフレーム期間で行われる電荷蓄積により得られた前記第1の測光結果が適正露出であると判定された場合、前記被写体を撮像する際の露出制御値を前記第1の測光結果に基づく露出制御値に変更し、前記判定工程にて前記第1の電荷蓄積により得られた信号に基づく測光結果が適正露出ではないと判定された場合に、次のフレーム期間において、前記第1の電荷蓄積により得られた信号と、前記第2の電荷蓄積により得られた信号とに基づく測光結果を用いて、前記被写体を撮像する際の露出制御値を決定することを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項17】
コンピュータを請求項1乃至14のいずれか1項に記載の撮像装置の前記露出制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置とその制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
CCDセンサやCMOSセンサ等の撮像センサを備える撮像装置でのAE(自動露出)制御では、露出制御値に従って撮像センサで電荷が蓄積され、当該蓄積された電荷に基づく信号に応じて適正な露出値の演算(測光演算)が行われる。しかし、被写体の明るさに対して露出制御値が適切ではない場合には、撮像センサのダイナミックレンジの影響で、電荷蓄積による階調飽和が発生して精度の高い露出値を算出することできない場合がある。この問題を解決する手法として、測光演算で得られた測光値に基づく最適な制御値を設定して測光演算を繰り返す「追い込み」という手法があり、追い込みを行うことにより精度の高い露出条件を算出する(AE精度を高める)ことが可能になる。
【0003】
しかしながら、AE精度を高めるために追い込みを行うと、適正露出が得られるまでに時間を要してしまうことによって、撮影タイミングを逃してしまうことや被写体に対する合焦精度が低下してしまう等の問題が生じることがある。一方で、これら問題が生じないように追い込みを行わない場合には、前述したようにAE精度が低下してしまう。
【0004】
そこで、追い込みを行うことによるメリットとデメリットのトレードオフの関係を改善して、必要なAE精度を保ちながら適正露出を取得するまでの時間を短縮する技術が求められている。このような課題に関連する技術として、例えば、特許文献1は、AF(オートフォーカス)サーチ中に垂直同期信号(VD)ごとに露出を変更して得られる複数の測光結果から適正露出を算出する技術を提案している。また、特許文献2は、同一VD中に予想される複数の制御値を設定して複数の電荷蓄積結果を取得することで、適正露出を得るまでの時間を短縮する技術を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-341342号公報
【文献】特開2015-177301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された技術では、AFサーチ中に追い込みを行うが、追い込み時間そのものが短縮されているわけではない。また、AFとAEが同一のセンサで行われる撮像センサでAFサーチ中に追い込みを行うと、AEでの露出変動がAF精度を左右してしまうという問題がある。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された技術では、事前に設定された複数の制御値を用いて複数の電荷蓄積を行う。そのため、設定された制御値が適正露出となる制御値から乖離していた場合には、適正露出値を得るまでに追い込みを行う場合よりも長い時間を要する場合がある。
【0008】
本発明は、適正露出を取得するまでの時間を短縮すると共に高いAE精度を得ることが可能な撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る撮像装置は、垂直同期信号の同一期間内に複数の電荷蓄積を行うことが可能な撮像素子と、前記撮像素子の駆動を制御する駆動制御手段と、前記撮像素子から出力される画像信号を用いて適正露出を求める露出制御手段と、を備える撮像装置であって、前記露出制御手段は、現在の制御値により得られる測光結果に基づいて、前記垂直同期信号の同一期間内に前記撮像素子での電荷蓄積を行うための、追従制御値と、前記現在の制御値から前記追従制御値への変化方向に前記追従制御値よりも離れた第1の予測制御値と、を設定する設定手段と、前記追従制御値とその測光値の適正差分および前記第1の予測制御値とその測光値の適正差分の少なくとも一方が所定の許容値以下か否かを判定する判定手段と、前記所定の許容値以下の適正差分に対応する測光値を適正露出に決定する決定手段と、を有し、前記現在の制御値は、初期値、または、前記許容値以下の適正差分がない場合の前記追従制御値と前記第1の予測制御値のそれぞれの測光値のうちの一方の測光値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適正露出を取得するまでの時間を短縮すると共に高いAE精度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る撮像装置の概略構成を示すブロック図である
図2図1の撮像装置の露出制御部の構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る露出制御方法のフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る露出制御方法でのタイミングチャートである。
図5】第2実施形態に係る露出制御方法のフローチャートである。
図6図5のフローチャートの続きを示す図である。
図7】第2実施形態に係る露出制御方法でのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置100の概略構成を示すブロック図である。撮像装置100は、具体的には、デジタルカメラ又はデジタルビデオカメラであるが、これに限られず、撮像素子による撮像機能を備える各種の電子機器、例えば、スマートフォン、タブレットPC、携帯ゲーム機等であってもよい。
【0013】
撮像装置100は、レンズ群101、レンズ制御部102、撮像素子103、信号処理部104、記憶処理部105、記憶媒体106、カメラ制御部107、操作部108及び露出制御部109を有する。
【0014】
レンズ群101は、絞りや減光フィルタにより露出を制御する機構と、合焦動作(ピント合わせ)やズーム動作を行うためのレンズ及び駆動機構を含み、被写体からの入射光を撮像素子103に結像させる。レンズ制御部102は、カメラ制御部107からの指令に従ってレンズ群101による露出制御、合焦動作及びズーム動作を制御する。
【0015】
撮像素子103は、例えばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサである。撮像素子103は、その結像面に結像した光学像を光電変換によりアナログ電気信号に変換し、更にアナログ電気信号をデジタル信号からなる画像信号に変換して、信号処理部104へ出力する。信号処理部104は、撮像素子103から取得した画像信号に対して、ゲイン補正等の輝度補正、ホワイトバランス補正等の色補正及びその他の所定の信号処理等を行って画像データを生成し、生成した画像データを記憶処理部105へ送る。
【0016】
記憶処理部105は、信号処理部104から送られてきた画像データを記憶媒体106に保存可能な形式のデータに変換し、また、必要な圧縮処理等を施して、記憶媒体106へ書き込む。なお、画像データの形式変換は信号処理部104で行うようにしてもよい。記憶媒体106としては、撮像装置100に内蔵された半導体記憶装置(EEPROM)や撮像装置100に対して着脱可能なSDカード等が挙げられるが、これらに限られず、周知の記憶媒体を用いることができる。
【0017】
操作部108は、ユーザからの操作を受け付けるボタンやスイッチ、タッチパネル等を含む。カメラ制御部107は、所謂マイクロコンピュータであり、操作部108からの入力を受けて、撮像装置100での全体的な動作を制御する。例えば、カメラ制御部107は、操作部108を通じて撮影が指示されると、露出制御部109に対して露出演算を指示する。そして、カメラ制御部107は、露出制御部109から取得した露出演算結果に基づいて、絞りの駆動や減光フィルタの変更をレンズ制御部102へ指示する。更に、カメラ制御部107は、撮像動作のための撮像素子103の駆動制御(蓄積時間の制御や電気信号の増幅率の制御等)を行う。そして、カメラ制御部107は、撮像動作によって撮像素子103から出力される画像信号に対する一連の画像処理を制御する。露出制御部109は、撮像装置100での露出に関する各種の設定値(以下「カメラ設定」という)等をカメラ制御部107から取得して露出演算を行い、露出演算結果をカメラ制御部107へ送る。露出制御部109の詳細については後述する。
【0018】
なお、レンズ制御部102、信号処理部104、記憶処理部105、カメラ制御部107及び露出制御部109の各機能は、ハードウェアにより実現されてもよいし、CPUが所定のプログラムを実行することによって(ソフトウェアにより)実現されてもよい。また、露出制御部109は、撮像装置100の特徴的構成であるためにカメラ制御部107の機能から分離させているが、露出制御部109の機能をカメラ制御部107に持たせてもよい。
【0019】
図2は、露出制御部109の構成を示すブロック図である。露出制御部109は、評価値生成部201、測光演算部202、測光演算メモリ203、制御値演算部204及び露出演算部205を有する。
【0020】
カメラ制御部107を介して、画像信号と、その画像信号を生成するために実行された電荷蓄積時の制御値情報(以下「画像信号取得時の制御値情報」という)と、カメラ設定が評価値生成部201へ入力される。評価値生成部201は、色成分の信号値を算出するための評価枠を設定して評価値を生成し、生成した評価値を測光演算部202へ送る。測光演算部202は、カメラ設定に基づき、評価値生成部201から取得した評価値を用いて測光演算を行う。測光演算部202が生成した測光演算結果(測光結果)と画像信号取得時の制御値情報は紐付けされて(対応関係がわかるように)測光演算メモリ203に保存され、蓄積されていく。こうして測光演算メモリ203に保存された複数の測光演算結果と画像信号取得時の制御値情報に基づき、制御値演算部204によって次回の制御値が決定される。次回の制御値は複数生成可能であり、その詳細については図4乃至図7を参照して後述する。露出演算部205は、次回の制御値とカメラ設定に基づいて露出設定を決定し、カメラ制御部107に伝達する。なお、画像信号を取得する際の制御値としては、撮像素子103の電荷蓄積時間、撮影感度(アナログゲイン以外にデジタルゲインを含んでいてもよい)、レンズ群101に含まれる不図示の絞りの開口径に関する絞り値に関する情報がある。
【0021】
次に、撮像装置100での第1実施形態に係る露出制御方法(追い込み制御)について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、第1実施形態に係る露出制御方法での露出追従の開始から適正露出の決定までの処理を説明するフローチャートである。図3のフローチャートの各処理は、カメラ制御部107が所定のプログラムを実行して、撮像装置100の各部の動作を統括的に制御することにより実現される。図4は、第1実施形態に係る露出制御方法でのタイミングチャートの一例である。
【0022】
撮像装置100が起動すると、S301にてカメラ制御部107は、垂直同期信号(VD)にしたがって、事前に指定された制御値の初期値(以下「制御値1」という)で撮像素子103での電荷蓄積(露出)を行う。そして、露出制御部109は、制御値1と、電荷蓄積により得られた信号に基づく測光演算により測光値1を算出する。なお、連続する、1つの垂直同期信号から次の垂直同期信号が出力されるまでの期間を、撮像素子103を用いて被写体を撮像する際の1フレーム期間とする。
【0023】
ここで、本実施形態における露出制御に係る制御値(露出制御値)及び測光値は、所謂APEX(ADDITIVE SYSTEM OF PHOTOGRAPHIC EXPOSURE)システムで表されるBv値を基準として求める構成であればよい。すなわち、APEXシステムにおける1Bv分の明るさの違いが、制御値に含まれる各露出パラメータ(蓄積時間Tv、撮影感度Sv、絞り値Av)の1段分の違いに相当する構成であればよい。なお、露出制御値および測光値は、上述したAPEXシステムとは異なる単位系で制御する構成であってもよい。
【0024】
S302にてカメラ制御部107は、適正差分を用いて測光値1が適正露出であるか否かを判定する。適正差分とは制御値と測光値との差分であり、適正差分が小さい場合には階調飽和が変化しないため、適正露出を算出することができる。測光演算により算出される測光値(測光結果)は、被写体を撮像する際の制御値(露出制御値)に依存して変化する。そのため、被写体を撮像する際の制御値が、撮像装置100において予め定められている、被写体が適正な明るさとなるような露出基準(目標露出)から大きく乖離していると、測光演算の結果である測光値と制御値との差分も大きくなる。したがって、測光値1が適正露出であるか否かは、適正差分が許容値以下か否かによって判定される。適正差分の許容値(許容露出差分)を‘Diff’として、許容値Diffは、下記式1により求めることができる。ここで、‘Range’は撮像素子103のダイナミックレンジの幅の段数、‘Limit’はAE測光誤差の許容値である。許容値Diffを用いることで、撮像素子103の性能と必要なAE精度を追い込みに反映することができる。
【0025】
【数1】
【0026】
カメラ制御部107は、制御値1と測光値1の適正差分が許容値Diff以下である(測光値1が適正露出である)と判定した場合(S302でYES)、処理をS307へ進める。S307にてカメラ制御部107は、許容位置Diff以下と判定された測光値を適正露出に決定し、追い込みを終了する。処理がS302からS307へ進んだ場合には、測光値1が適切露出に設定されることになる。
【0027】
一方、カメラ制御部107は、制御値と測光値1の適正差分が許容値Diffより大きい(測光値1が適正露出ではない)と判定した場合(S302でNO)、処理をS303へ進める。なお、図4には、測光値1は適正露出から外れており、且つ、適正露出よりも明るいと判定されて、S302からS303へ処理が進んだ状態が示されている。
【0028】
S303~S306の処理については、S302から最初にS303へ進んだ場合について具体的に説明する。S303にてカメラ制御部107は、制御値1での測光値1を次の制御値(以下「追従制御値2」という)に設定する。また、S303にてカメラ制御部107は、制御値1と追従制御値2の変化方向に、許容値Diffに基づく制御値(以下「予測制御値3」という)を設定する。なお、S303~S306のルーチンが繰り返される場合を考慮し、図3では単に、‘測光値’、‘追従制御値’及び‘予測制御値’と記している。
【0029】
予測制御値3をBvとし、追従制御値2をBvとし、制御値1をBv´として、これらと許容値Diffを用いて予測制御値3を下記式2により求めることができる。その際、本実施形態では、追従制御値2と予測制御値3は、許容値Diffの2倍の幅が持てるように設定される。
【0030】
【数2】
【0031】
S304にてカメラ制御部107は、追従制御値2と予測制御値3での電荷蓄積を行う。追従制御値2と予測制御値3での電荷蓄積は、制御値1の演算終了タイミングの次のVD信号の同一期間内に行うことができる。追従制御値2と予測制御値3での電荷蓄積が完了すると、追従制御値2と予測制御値3でのそれぞれの蓄積電荷が、図4に示されるように、異なるタイミングで読み出される。S305にて露出制御部109は、追従制御値2とその電荷蓄積結果から測光演算により測光値2を算出し、また、予測制御値3とその電荷蓄積結果から測光演算により測光値3を算出する。なお、図4に示されるように、測光演算はそれぞれの電荷蓄積完了後に速やかに行われる。
【0032】
ここで、追従制御値2による蓄積電荷の読み出しと予測制御値3による蓄積電荷の読み出しを異なるタイミングで制御する場合、予測制御値3での蓄積電荷の読み出しが先に完了するよう制御する。これは、追従制御値2に対する測光演算後に直ぐに比較演算を行うことが可能になることによって、撮像動作等のシーケンスを変更する場合に露光開始までのタイムラグを短縮することができるからである。
【0033】
S306にてカメラ制御部107は、追従制御値2と測光値2の適正差分及び予測制御値3と測光値3の適正差分の少なくとも一方が許容値Diff以下か否かを判定する。つまり、測光値2と測光値3の少なくとも一方が適正露出であるか否かが判定される。S306での判定手法は、S302での判定手法と同じであり、ここでの説明は省略する。
【0034】
カメラ制御部107は、追従制御値2と測光値2の適正差分及び予測制御値3と測光値3の適正差分の少なくとも一方が許容値Diff以下であると判定した場合(S306でYES)、処理をS307へ進める。S307にてカメラ制御部107は、許容値Diff以下の適正差分となっている測光値を適正露出に決定して、追い込みを終了する。なお、適正露出となる複数の測光値がある場合(許容値Diff以下の複数の適正差分がある場合)には、適正差分が小さい方の測光値を適正露出に決定して、S307の処理を行うことが望ましい。
【0035】
一方、カメラ制御部107は、追従制御値2と測光値2の適正差分及び予測制御値3と測光値3の適正差分の両方が許容値Diffより大きいと判定した場合(S306でNO)、処理をS303へ戻す。こうして、適正露出が得られるまでS303~S306のループが繰り返される。なお、図4には、測光値2は適正露出ではないと判定され、測光値3が適正露出であると判定された例が示されている。
【0036】
本実施形態では、処理がS303に戻された場合のS303では、直前のS306での判定対象となった2つの測光値のうち、制御値の変化方向に離れている方の測光値が次の追従制御値に設定されると共に次の予測制御値が演算されて設定される。但し、必ずしも直前のS306での判定対象となった2つの制御値のうち制御値の変化方向に離れている方の測光値を次の追従制御値に設定しなければならないわけではなく、例えば、現在の追従制御値での測光値を常に次の追従制御値に設定するようにしてもよい。
【0037】
次に、撮像装置100での第2実施形態に係る露出制御方法について、図5乃至図7を参照して説明する。図5及び図6は、第2実施形態に係る露出制御方法での露出追従の開始から適正露出の決定までの処理を説明するフローチャートである。図5及び図6のフローチャートの各処理は、カメラ制御部107が所定のプログラムを実行して、撮像装置100の各部の動作を統括的に制御することにより実現される。図7は、第2実施形態に係る露出制御方法のタイミングチャートである。
【0038】
S501~S503の処理は、第1実施形態で説明した図3のフローチャートのS301~S303の処理と同じであるため、ここでの説明を省略する。但し、S503で設定される予測制御値を本実施形態では「第1の予測制御値」と称呼する。また、S502からS503へ進んだ際に設定される第1の予測制御値を「第1の予測制御値3」とし、S503以降の処理については、S502から最初にS503へ進んだ場合を例にして具体的に説明する。なお、S503~S507,S509~S516のルーチンが繰り返される場合を考慮し、図5及び図6では、単に、‘測光値’、‘追従制御値’、‘第1の予測制御値’及び‘第2の予測制御値’と記している。
【0039】
S504にて露出制御部109は第2の予測制御値4を設定する。第2の予測制御値4をBv、追従制御値2をBv、制御値1をBv´、第1の予測制御値3をBvとすると、これらと許容値Diff用いて第2の予測制御値4は下記式3により求めることができる。
【0040】
【数3】
【0041】
第2の予測制御値4は測光値2及び測光値3を用いずに計算により求めることができるため、追従制御値2及び第1の予測制御値3での蓄積電荷の読み出しや測光演算を待つ必要がない。第2実施形態では、図7に示すように、第1の予測制御値での電荷蓄積を行ったVD期間の次の同一期間内に追従制御値2の電荷蓄積と第2の予測制御値4の電荷蓄積を行うようにしている。
【0042】
S504の後のS505~S507の処理はそれぞれ、図3のフローチャートのS304~S306の処理と同じであるため詳細な説明を省略するが、ここでは、追従制御値2と第1の予測制御値3での測光値が算出されて適正差分が判定される。
【0043】
カメラ制御部107は、追従制御値2と測光値2の適正差分及び第1の予測制御値3と測光値3の適正差分の少なくとも一方が許容値Diff以下であると判定した場合(S507でYES)、処理をS508へ進める。S508の処理は、図3のフローチャートのS307の処理と同じであり、カメラ制御部107は、許容値Diff以下と判定された適正差分となっている測光値を適正露出に決定して、追い込みを終了する。
【0044】
カメラ制御部107は、追従制御値2と測光値2の適正差分及び第1の予測制御値3と測光値3の適正差分のいずれもが許容値Diffより大きいと判定した場合(S507でNO)、処理をS509へ進める。図7にはS507の判定がNOとなった状態が示されており、そのため、後述するように第2の予測制御値4での電荷蓄積が行われ、測光値4が算出されている。
【0045】
S509にてカメラ制御部107は、追い込み開始からの経過時間が許容時間内か否かを判定する。カメラ制御部107は、追い込み開始からの経過時間が許容時間内であると判定した場合(S509でYES)、処理をS510へ進める。
【0046】
S510の処理は、図3のフローチャートにおいてS306の判定がNOとなってS303に戻った際のS303の処理と同じである。つまり、S507又は後述のS513で用いた追従制御値での測光値又は第1の予測制御値での測光値のうち、制御値の変化方向に離れている方の測光値を次の追従制御値に設定すると共に次の第1の予測制御値を演算する。S510が最初に実行される際に設定される追従制御値と第1の予測制御値をそれぞれ、以下、追従制御値5と第1の予測制御値6とする。なお、本実施形態では、具体的には、第1の予測制御値3での測光値を追従制御値5としている。
【0047】
S511にてカメラ制御部107は、第2の予測制御値4での電荷蓄積を行う。S512にて露出制御部109は、第2の予測制御値4とその電荷蓄積結果から測光演算により測光値4を算出する。S513にてカメラ制御部107は、測光値4が適正露出であるか否か、つまり、第2の予測制御値4と測光値4の適正差分が許容値Diff以下か否かを判定する。S513での判定手法は、S507(S306)での判定手法と同じであるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0048】
カメラ制御部107は、第2の予測制御値4と測光値4の適正差分が許容値Diff以下であると判定した場合(S513でYES)、処理をS508へ進める。これにより、測光値4が適正露出に設定される。カメラ制御部107は、第2の予測制御値4と測光値4の適正差分が許容値Diffより大きいと判定した場合(S513でNO)、処理をS514へ進める。図7にはS513の判定はNOとなった状態が示されており、そのため、後述するように追従制御値5と第1の予測制御値6での各測光値(測光値5,6)が求められている。
【0049】
S514~S516の処理は、実質的にS505~S507(S304~S306)の処理と同様になる。つまり、S514にてカメラ制御部107は、追従制御値5と第1の予測制御値6での電荷蓄積を行う。追従制御値5と第1の予測制御値6での電荷蓄積が完了すると、S515にて露出制御部109は、追従制御値5とその電荷蓄積結果から測光演算により測光値5を算出し、また、第1の予測制御値6とその電荷蓄積結果から測光演算により測光値6を算出する。S516にてカメラ制御部107は、追従制御値5と測光値5の適正差分及び第1の予測制御値6と測光値6の適正差分の少なくとも一方が許容値Diff以下か否かを判定する。
【0050】
カメラ制御部107は、追従制御値5と測光値5の適正差分及び第1の予測制御値6と測光値6の適正差分のいずれか一方が許容値Diff以下である判定した場合(S516でYES)、処理をS508へ進める。一方、カメラ制御部107は、追従制御値5と測光値5の適正差分及び第1の予測制御値6と測光値6の適正差分のいずれもが許容値Diffより大きいと判定した場合(S516でNO)、処理をS503へ戻す。これにより、追い込みが続行されることになる。
【0051】
S516からS503へ戻った際の追従制御値と第1の予測制御値の設定方法は、S510での処理に準ずる。なお、処理がS516からS503に戻った後には、それまでに得られた測光値が適正露出に近付いているものと考えられるため、S504,S511~S513の処理をスキップする(第2の予測制御値を設定しない)ようにしてもよい。
【0052】
図7には、第1の予測制御値6と測光値6の適正差分が許容値Diff以下と判定されて適正露出として設定された状態が示されている。不図示であるが、例えば、最初のS513の判定がYESとなった場合には、追従制御値5と第1の予測制御値6での電荷蓄積が完了する前に測光値4を適正露出に設定して、追い込みを終了することができる。つまり、複数の予測制御値を設定していることによって、追い込みに要する時間を短縮することが可能になる。
【0053】
ところで、S509でカメラ制御部107は、追い込み開始からの経過時間が許容時間外になったと判定した場合(S509でNO)、処理をS517へ進める。S517にてカメラ制御部107は、直前のS507又はS516で用いた追従制御値での測光値又は第1の予測制御値での測光値のうち、制御値の変化方向に離れている方の測光値を適正露出に設定し、これにより本処理を終了させる。
【0054】
以上の通り、第1実施形態では当初の制御値に対して追従制御値と予測制御値を設定して追い込みを行うことにより、適正露出に到達するまでの時間を短縮することが可能になる。また、第2実施形態では、当初の制御値に対して追従制御値と2つの予測制御値を設定して追い込みを行うことにより、適正露出に到達するまでの時間を更に短縮することが可能になる。
【0055】
なお、本実施形態では、適正露出の算出を目標としているため、追い込み終了後も蓄積を中断しなかった。しかし、シーケンスを大きく変えるような指示(例えば撮影指示等)が操作部108を通じて入力された場合、実行中の測光を停止させ、指示があった時点での最適な測光値を適正露出に設定して、撮像動作に移行するようにしてもよい。
【0056】
また、本実施形態では1VD期間内に追従制御値と予測制御値を1つずつ設定することできるものとしているが、1VD期間内に複数の予測制御値を設定することが可能な場合には、許容値Diffに基づいて複数の予測制御値を1VD期間内に取得してもよい。その場合、1VD内に新たに設定する予測制御値Bvpiは1つ前に設定した予測制御値Bvpi-1が許容値Diffの2倍の幅が持てるよう設定できるように下記式4により設定する。
【0057】
【数4】
【0058】
そして、複数の予測制御値を設定する場合には、被写体の輝度の急激な変動に対応することができるように、下記式5で表されるように、予測制御値Bvpiを追従制御値Bvの変化方向の逆方向に設定してもよい。
【0059】
【数5】
【0060】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。
【0061】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0062】
100 撮像装置
103 撮像素子
107 カメラ制御部
108 操作部
109 露出制御部
202 測光演算部
204 制御値演算部
205 露出演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7