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特許7592421読取装置及びその制御方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】読取装置及びその制御方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20241125BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20241125BHJP
   B65H 1/14 20060101ALI20241125BHJP
   G03G 15/23 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H04N1/00 567M
H04N1/12 Z
B65H1/14 322A
G03G15/23
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020125735
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021871
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】平尾 豊実
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-037043(JP,A)
【文献】特開2008-050139(JP,A)
【文献】特開2010-163256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/04
B65H 1/14
G03G 15/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿トレイに置かれた原稿を搬送し、搬送された原稿の画像を読取る読取装置であって、
前記原稿トレイに原稿が置かれた状態で前記読取装置の第1の機能選択された場合に前記原稿トレイを上昇する上昇制御を実行し、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記読取装置の第2の機能選択された場合に前記原稿トレイを下降する下降制御を実行する実行手段と、
時間情報を取得する取得手段と、
所定の時間が経過したか否かを、前記取得手段によって取得された前記時間情報に基づいて判定する判定手段とを有し、
前記実行手段は、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第2の機能選択されても、前回の上昇制御が実行された後に前記所定の時間が経過していないと前記判定手段によって判定されたことに基づいて前記下降制御を実行せず、
前記実行手段は、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第2の機能選択され、前記所定の時間が経過したと前記判定手段によって判定されたことに基づいて前記下降制御を実行することを特徴とする読取装置。
【請求項2】
原稿トレイに置かれた原稿を搬送し、搬送された原稿の画像を読取る読取装置であって、
前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で第1の機能選択された場合に前記原稿トレイを上昇する上昇制御を実行し、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で第2の機能選択された場合に前記原稿トレイを下降する下降制御を実行する実行手段と、
前回の下降制御を開始した後に所定の時間が経過したか否かを判定する判定手段とを有し、
前記実行手段は、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第1の機能選択されても、前記所定の時間が経過していないと前記判定手段によって判定された場合に前記上昇制御を実行しないことを特徴とする読取装置。
【請求項3】
前記第の機能は、帳票を読み取るための帳票読取機能であることを特徴とする請求項1または2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記第の機能は、前記帳票読取機能とは異なるコピー機能であることを特徴とする請求項に記載の読取装置。
【請求項5】
前記原稿トレイに置かれた前記原稿を搬送し、搬送された前記原稿の第1面の画像と前記第1面とは異なる第2面の画像を読取ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の読取装置。
【請求項6】
原稿トレイに置かれた原稿を搬送し、搬送された原稿の画像を読取る読取装置の制御方法であって、
前記原稿トレイに原稿が置かれた状態で前記読取装置の第1の機能選択された場合に前記原稿トレイを上昇する上昇制御を実行し、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記読取装置の第2の機能選択された場合に前記原稿トレイを下降する下降制御を実行する実行工程と、
時間情報を取得する取得工程と、
所定の時間が経過したか否かを、前記取得工程で取得された前記時間情報に基づいて判定する判定工程とを有し、
前記実行工程では、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第2の機能選択されても、前回の上昇制御が実行された後に前記所定の時間が経過していないと前記判定工程で判定されたことに基づいて前記下降制御を実行せず、
前記実行工程では、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第2の機能選択され、前記所定の時間が経過したと前記判定工程で判定されたことに基づいて前記下降制御を実行することを特徴とする読取装置の制御方法。
【請求項7】
原稿トレイに置かれた原稿を搬送し、搬送された原稿の画像を読取る読取装置の制御方法であって、
前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で第1の機能選択された場合に前記原稿トレイを上昇する上昇制御を実行し、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で第2の機能選択された場合に前記原稿トレイを下降する下降制御を実行する実行工程と、
前回の下降制御を開始した後に所定の時間が経過したか否かを判定する判定工程とを有し、
前記実行工程では、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第1の機能選択されても、前記所定の時間が経過していないと前記判定工程で判定された場合に前記上昇制御を実行しないことを特徴とする読取装置の制御方法。
【請求項8】
請求項又はに記載の制御方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置及びその制御方法並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動原稿搬送部(AUTO Document Feeder、以下ADFと称する)及び原稿読取部からなる原稿読取装置が知られている。原稿読取装置では、ADFの原稿トレイ上に載置された原稿を一枚ずつ、原稿読取部の予め定められた位置(以下、流し読み位置と称する)に固定したイメージセンサまで搬送する。これにより、ADFにより搬送された各原稿を連続して読み取るスキャン動作(以下、流し読みと称する)が一般的に行われている。
【0003】
特許文献1では、原稿トレイ上にある原稿の有無を検知する原稿有無検知センサにより、原稿が有ると検知された時は、原稿トレイを上昇させ給紙部の給紙ローラへ原稿を押圧し、原稿搬送を行うADFが提案されている。
【0004】
また、特許文献2ではさらに、ADFで原稿トレイにある複数の異なるサイズの原稿を給紙ローラで一枚ずつイメージセンサまで搬送する際、その各原稿の用紙サイズがセンサで検知される。これにより、搬送された原稿の用紙サイズに応じた読取サイズでスキャン動作が行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-263452号公報
【文献】特開2001-350225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の原稿読取装置では、ISO216やJIS P 0138によって定められた規格の原稿サイズ(A3,A4、B4、B5等)を複数枚、原稿トレイ上に積置して読取を行う混載モードが一般的であった(定型サイズの混載原稿読取)。しかし、近年では領収書や小切手等、上述の定められた規格に当てはまらないサイズの原稿も原稿トレイ上に積置して読取を行いたいという要望がある(不定型サイズ混載原稿読取)。例えば、画像形成装置の機能として、入出金処理のための帳票処理アプリケーション搭載されている場合、かかるアプリケーションの実行中は、不定型サイズ混載原稿読取を行うことが要求される。これに対して、画像形成装置の伝統的な機能である、コピーや送信処理のためのアプリケーションの実行中は、定型サイズの混載原稿読取を行うことが要求される。このように画像形成装置には、多種多様なアプリケーションが搭載され、各アプリケーションの実行中には、そのアプリケーションに適した方法で、原稿読取、読み取った原稿の後処理、及びユーザの必要な画像処理が実施される。
【0007】
ここで、定型サイズの混載原稿読取時には、給紙搬送時に原稿が斜めに搬送される(いわゆる斜行)が起きにくくするため、ADFの原稿トレイ上に存在するトレイ上ガイド板に原稿を突き当てて積置する。これにより、ADFの給紙ローラによって、原稿トレイの原稿が一枚ずつ斜行することなく搬送され、原稿読取部で原稿が読み取られる(図4A)。
【0008】
しかしながら、不定型サイズの混載原稿読取の場合、混載させる原稿サイズによってはトレイ上ガイド板に突き当てて原稿を積置するとADFの給紙ローラで給紙できる位置に原稿を積置できず、給紙ができなくなる場合がある(図4B)。この場合、原稿は給紙ローラで給紙可能な位置、例えば原稿トレイの中央位置(図4C)に積置する必要がある。
【0009】
この場合、従来のように、トレイ上ガイド板に突き当てて原稿を積置できないため、斜行が起きやすく(図4D)、原稿トレイ上に一度原稿を積置した後にもう一度原稿を積置し直す可能性が高い(いわゆる置き直し)。
【0010】
この時、特許文献1,2のADFのように、一度原稿を原稿トレイに積置すると原稿トレイが上昇し、上昇した位置で給紙ローラが原稿を把持するようにすると、ユーザが原稿を積置し直すのが困難となる(図5)。
【0011】
このような課題は、原稿読取を実行するアプリケーションからの指示に応じて、原稿トレイを上昇させるタイミングを切り替えるようにすれば解決することができる。具体的には、定型サイズの混載原稿読取を行うアプリケーションの場合、原稿トレイ上に原稿が積置されたタイミングで、自動で原稿トレイを上昇させ、不定型サイズの混載原稿読取を行うアプリケーションの場合、ジョブ実行時に上昇させればよい。この原稿トレイの上昇は、読取実行の前準備であるため、読取速度の向上のために、読取を行う前の、ユーザがアプリケーションの実行待機(アプリケーション選択時)の状態で制御が行われることが望ましい。
【0012】
しかしながら、画像形成装置には、多種多様なアプリケーションが搭載される。アプリケーションからの指示により、積置トレイの上昇を行わせると、ユーザの操作ミスなどで、別のアプリケーションが選択されたような場合、不要な原稿トレイの上昇、下降が発生してしまう。このような不要な原稿トレイの上昇、下降は、その昇降にかかわる部品、例えばモータなどの寿命を縮めてしまう恐れがある。
【0013】
そこで本発明は、原稿トレイの昇降にかかわる部品の寿命が、原稿トレイの昇降を短時間のうちに繰り返すことによって短くなってしまうことを抑制することができる仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の請求項1に係る読取装置は、原稿トレイに置かれた原稿を搬送し、搬送された原稿の画像を読取る読取装置であって、前記原稿トレイに原稿が置かれた状態で前記読取装置の第1の機能選択された場合に前記原稿トレイを上昇する上昇制御を実行し、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記読取装置の第2の機能選択された場合に前記原稿トレイを下降する下降制御を実行する実行手段と、時間情報を取得する取得手段と、所定の時間が経過したか否かを、前記取得手段によって取得された前記時間情報に基づいて判定する判定手段とを有し、前記実行手段は、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第2の機能選択されても、前回の上昇制御が実行された後に前記所定の時間が経過していないと前記判定手段によって判定されたことに基づいて前記下降制御を実行せず、前記実行手段は、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第2の機能選択され、前記所定の時間が経過したと前記判定手段によって判定されたことに基づいて前記下降制御を実行することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項2に係る読取装置は、原稿トレイに置かれた原稿を搬送し、搬送された原稿の画像を読取る読取装置であって、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で第1の機能選択された場合に前記原稿トレイを上昇する上昇制御を実行し、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で第2の機能選択された場合に前記原稿トレイを下降する下降制御を実行する実行手段と、前回の下降制御を開始した後に所定の時間が経過したか否かを判定する判定手段とを有し、前記実行手段は、前記原稿トレイに前記原稿が置かれた状態で前記第1の機能選択されても、前記所定の時間が経過していないと前記判定手段によって判定された場合に前記上昇制御を実行しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、原稿トレイの昇降にかかわる部品の寿命が、原稿トレイの昇降を短時間のうちに繰り返すことによって短くなってしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1における原稿読取装置の斜視図である。
図2図1の原稿読取装置の断面図である。
図3図1の自動原稿読取部のリーダコントローラ及びシステムコントローラの構成例を示すブロック図である。
図4A】原稿トレイ上に定型原稿をトレイ規制板に突き当ててセットした時の自動原稿読取部の上面図である。
図4B】原稿トレイ上に不定型原稿をトレイ規制板に突き当ててセットした時の自動原稿読取部の上面図である。
図4C】原稿トレイ上に不定型原稿を給紙ローラ位置に合わせてセットした時の自動原稿読取部の上面図である。
図4D】原稿トレイ上に原稿を給紙ローラ位置に合わせてセットしたが斜めにセットしてしまった時の自動原稿読取部の上面図である。
図5】原稿の置き直しが困難な状態を示す自動原稿読取部の斜視図である。
図6】原稿トレイが非読取待機位置にいる時の自動原稿読取部の断面図である。
図7】原稿トレイが読取待機位置にいる時の自動原稿読取部の断面図である。
図8図3における操作部に表示される、HOME画面を示す図である。
図9】不定型サイズの混載読取を行う「帳票読取」アプリケーションの起動中に操作部に表示される帳票読取設定画面を示す図である。
図10】定型サイズの原稿読み取りを行う「コピー」アプリケーション起動中に操作部に表示されるコピー設定画面を示す図である。
図11】実施例1における、原稿トレイの昇降制御処理のフローチャートである。
図12】実施例2における、原稿トレイの昇降制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る原稿読取装置の構成例について図面を参照して説明する。
【0019】
(実施例1)
図1は、本実施例における原稿読取装置1000の斜視図である。
【0020】
図1において、原稿読取装置1000は、原稿を読み取る原稿読取部100と、原稿読取部100へ向けて原稿を搬送する自動原稿搬送装置(以下、ADF)200から構成される。
【0021】
原稿読取装置1000は、図3で後述するリーダコントローラ300及びシステムコントローラ400によりその全体が制御される。
【0022】
ADF200は原稿読取部100に対して、原稿読取部100上面奥側に設けられた開閉ヒンジにより、開閉自在となるように接続されている。
【0023】
<原稿読取部100構成例>
原稿読取部100について、図2の原稿読取装置1000の断面図を参照しながら説明する。
【0024】
原稿読取部100は、原稿台ガラス101と、表面流し読みガラス102と、表面読取部105と、図には図示しない光学モータ306及び読取移動ガイド109とを有する。
【0025】
表面読取部105は、表面LED103a,103b(以下、表面LED103と総称する)、複数のミラー104a,104b,104c(以下、ミラー104と総称する)、及び表面読取センサ108を備える。
【0026】
原稿読取部100は、原稿読取制御時は、光学モータ306を用いて表面読取部105を読取移動ガイド109に沿って移動させながら、原稿台ガラス101上に載置された原稿の表面を表面読取部105により1ラインずつ読み取る。これにより原稿表面読取画像が生成される。また、流し読み制御時は、表面読取部105の位置を固定し、ADF200により表面流し読みガラス102と表面ガラス対向部材6の間にある表面読取位置にまで搬送されてきた原稿の画像を表面読取部105により読み取る。
【0027】
<ADF200の構成例>
ADF200について、図2を参照しながら説明する。
【0028】
ADF200は、原稿トレイ30と、分離パッド21と、分離ローラ2と、給紙ローラ1と、引抜ローラ3と、搬送ローラ4と、リード上流ローラ5と、表面読取上流ローラ51と、リード下流ローラ7と、排紙ローラ16と、排紙トレイ17とを備える。尚、ADF200の構成の一部である分離センサ11、引抜センサ12、搬送センサ13、リードセンサ14、及び排紙センサ15については、図3を用いて後述する。
【0029】
原稿トレイ30は、1枚以上の原稿シートで構成される原稿束Sを積載する積載部である。
【0030】
分離パッド21及び分離ローラ2は、分離機構として、原稿の搬送開始前に、原稿束Sが原稿トレイ30より突出して下流へ進出するのを規制する。
【0031】
また原稿トレイ30は、原稿トレイ30上の原稿の有無を検知する原稿有無センサ10と、原稿トレイ30上にある原稿サイズを判断するためのトレイ上長さセンサ9とを有する。
【0032】
またADF200は、表面ガラス対向部材6と、裏面流し読みガラス201と、裏面ガラス対向部材8と、裏面読取部202とを備える。
【0033】
表面ガラス対向部材6は、表面読取上流ローラ51及び表面読取下流ローラ52にその両端が固定される部材である。
【0034】
裏面ガラス対向部材8は、裏面読取上流ローラ53と裏面読取下流ローラ54にその両端が固定される部材である。
【0035】
裏面読取部202は、裏面LED203a,203b(以下裏面LED203と総称する)、ミラー204a,204b,204c(以下ミラー204と総称する)、及び裏面読取センサ208を備える。
【0036】
原稿の読取搬送時は、原稿トレイ30上に積置された原稿を確実に搬送させるために、給紙ローラ1と原稿束Sとを接触させ、接触されている部分に対して適正な圧がかかっている状態を作る必要がある。そのための手段として、原稿トレイ30を一定の高さまで上昇させて、原稿トレイ30に積載された原稿束Sの最上面に給紙ローラ1を押圧させる。この状態で回転させることにより、原稿束Sの最上面の原稿から搬送される。給紙ローラ1によって搬送された原稿は、分離パッド21と分離ローラ2の作用によって最上面の一枚が分離・搬送される。この分離は公知の分離技術によって実現されている。
【0037】
分離パッド21と分離ローラ2によって分離された最上面の一枚の原稿は、引抜ローラ3へと搬送される。
【0038】
さらに引抜ローラ3により搬送ローラ4へと搬送される。搬送ローラ4の下流側には、搬送ローラ4を通過した原稿を表面流し読みガラス102の方向へ搬送する搬送路が配置されている。搬送路に送られた原稿は、リード上流ローラ5及び表面読取上流ローラ51によって表面読取位置へ搬送される。
【0039】
≪片面流し読み≫
原稿読取装置1000における原稿の片面流し読みは以下のように行われる。
【0040】
表面読取位置へと搬送された原稿の表面は、表面流し読みガラス102と表面ガラス対向部材6の間を通過する間、表面LED103で照射され、その反射光は複数のミラー104で屈曲されながら表面読取センサ108によって受光される。これにより、表面読取位置において、原稿の表面画像が表面読取部105により1ラインずつ読み取られる(表面読み取り)。
【0041】
原稿は、表面読取部105により表面画像が読み取られた後、表面と裏面を読み取る位置の間にあるリード下流ローラ7と排紙ローラ16によって、排紙トレイ17に排出される。
【0042】
原稿が原稿トレイ30上に複数枚有る場合、最終原稿の表面読取及び排紙トレイ17への排紙が終了するまで、原稿束Sからの給紙、分離、搬送処理、表面読取位置での片面読取処理、及び排紙処理を繰り返す。
【0043】
≪両面流し読み≫
原稿読取装置1000における原稿の両面流し読みとは、片面流し読みにおける原稿表面の読み取りに、原稿裏面の読み取り動作を加えた処理を意味する。原稿の給紙、分離、搬送、及び表面読み取りについては前述の片面読み取り時と同様であるので説明を省略する。
【0044】
表面読取下流ローラ52により搬送された原稿は、リード下流ローラ7及び裏面読取上流ローラ53によって裏面読取位置に搬送される。原稿が裏面読取位置に達するより前に、移動可能に構成された裏面流し読みガラス201を図2に示す位置に移動させておく。
【0045】
裏面読取位置へと搬送された原稿の裏面は、裏面流し読みガラス201と裏面ガラス対向部材8の間を通過する間、裏面LED203で照射され、その反射光は複数のミラー204で屈曲されながら裏面読取センサ208によって受光される。これにより、裏面読取位置において、原稿の裏面画像が裏面読取部202により1ラインずつ読み取られる(裏面読み取り)。
【0046】
原稿は、裏面読取部202により裏面画像が読み取られた後、裏面読取下流ローラ54と排紙ローラ16によって、排紙トレイ17まで搬送される。
【0047】
原稿が原稿トレイ30上に複数枚有る場合、最終原稿の表面読み取り、裏面読み取り及び排紙トレイ17への排紙が終了するまで、原稿束Sからの給紙、分離、搬送処理、表面読取位置及び裏面読取位置での表裏それぞれの読取処理、及び排紙処理を繰り返す。
【0048】
尚、本実施例では、表面読取部105の表面読取センサ108及び裏面読取部202の裏面読取センサ208は、CCDにより構成されるが、これに限定されない。例えば、表面読取センサ108及び裏面読取センサ208を、CISセンサなどにより構成するようにしてもよい。
【0049】
<ブロック図の説明>
図3は、原稿読取装置1000のリーダコントローラ300及びシステムコントローラ400の構成例を示すブロック図である。
【0050】
リーダコントローラ300及びシステムコントローラ400は、夫々コマンドデータバス317及び画像データバス318を介して接続する。
【0051】
リーダコントローラ300は、リーダCPU301、リーダROM302、リーダRAM303、リーダ画像処理部304、及びリーダ用画像メモリ305を備える。また、リーダコントローラ300は、光学モータ306、搬送モータ307、トレイ幅ガイドセンサ309、給紙モータ310、給紙ローラ昇降モータ311、及びトレイ昇降モータ312(積載部昇降部)を備える。
【0052】
さらに、リーダコントローラ300は、図2に示す構成の一部を備える。具体的には、表面LED103、裏面LED203、表面読取センサ108、裏面読取センサ208、トレイ上長さセンサ9、原稿有無センサ10、分離センサ11、引抜センサ12、搬送センサ13、リードセンサ14、及び排紙センサ15を備える。リーダコントローラ300のこれらの各構成要素はバスを介して互いに接続する。
【0053】
リーダCPU301は、中央演算処理装置であり、リーダROM302に格納された、後述の図11に示すフローチャートを実行することで原稿読取部100を制御する。
【0054】
リーダROM302は、制御プログラムが格納されるリードオンリーメモリである。
【0055】
リーダRAM303は、入力データや作業用データが格納されるランダムアクセスメモリである。
【0056】
給紙モータ310と搬送モータ307は、リーダCPU301には原稿搬送機能を実現するために、搬送用の各ローラを駆動させるモータである。給紙モータ310が駆動することで、給紙モータ310と繋がっている給紙ローラ1、分離ローラ2が回転する。また、それ以外の搬送用の各ローラ(引抜ローラ3、搬送ローラ4、リード上流ローラ5、リード下流ローラ7、及び排紙ローラ16)は、搬送モータ307に直接接続され、搬送モータ307の回転に連動して駆動、停止する。
【0057】
本実施例では、給紙モータ310と搬送モータ307はパルスモータであり、リーダCPU301は駆動パルス数を制御する事で各モータの回転量を管理している。そのため、パルス数は搬送中の原稿の搬送距離として捉えることができ、リーダCPU301は、給紙モータ310と搬送モータ307の駆動パルス数を数えることで、原稿の搬送距離を測定することができる。
【0058】
分離センサ11、引抜センサ12、搬送センサ13、リードセンサ14、及び排紙センサ15は、搬送経路の各所に設けられた搬送系センサである。
【0059】
トレイ上長さセンサ9は、原稿トレイ30上にあって、原稿トレイ30に積載される原稿の長さを検知するためのセンサである。
【0060】
トレイ幅ガイドセンサ309は、原稿トレイ30上にあって、、原稿トレイ30に積載される原稿の幅を検知するためのセンサである。本実施例では、トレイ上長さセンサ9とトレイ幅ガイドセンサ309を使って原稿トレイ30上に積置された原稿のサイズを予測している。
【0061】
リーダCPU301は、原稿トレイ30上に原稿が積置された際、図3に記載はないが、まず給紙ローラ昇降機構と接続されている給紙ローラ昇降モータ311を動作させて給紙ローラ1(図2)を下降させる。その後、リーダCPU301は、図3に記載はないが原稿トレイ30を昇降させるための昇降機構と接続されているトレイ昇降モータ312を動作させて原稿トレイ30を上昇させる。
【0062】
原稿トレイ30は前述した下降した給紙ローラ1と原稿トレイ30上に積置された原稿が当接する位置(読取待機位置)で上昇を停止し、給紙モータ310により給紙ローラ1を駆動させてADF200の機体内に原稿を給紙する。
【0063】
リーダCPU301には、画像読取機能を実現するために、表面LED103、裏面LED203、表面読取センサ108、及び裏面読取センサ208が接続される。リーダCPU301は、表面読取センサ108及び裏面読取センサ208によって読み取られた画像データを、リーダ画像処理部304で各種画像処理を実施してからリーダ用画像メモリ305に格納する。リーダCPU301は、リーダ用画像メモリ305に格納された画像データを、システムコントローラ400の後述するシステムCPU411からコマンドデータバス317経由で画像出力要求を受信する。また、リーダCPU301は、かかる画像出力要求を受信すると、画像データバス318を介してシステムコントローラ400の後述する画像処理部414へ送信する。さらに、リーダCPU301は、原稿画像データの先端の基準となる垂直同期信号および1ラインの画素先端の基準となる水平同期信号を、原稿読み取りタイミングに合わせて、画像データバス318を通してシステムコントローラ400へ通知する。
【0064】
システムコントローラ400は、システムCPU411、HDD412、RAM413、画像処理部414、画像メモリ415、及び操作部416を備え、これらは互いにバスを介して接続する。
【0065】
システムCPU411は、リーダCPU301とコマンドデータバス317を介して接続し、画像読取制御に関するデータの授受を行う。
【0066】
画像処理部414は、リーダ画像処理部304で処理された画像データを、画像データバス318を介してリーダ画像処理部304から受信し、色の判断などの所定の画像処理をその受信した画像データに対して施した後に、画像メモリ415に格納する。
【0067】
操作部416は、ユーザとのインターフェースであり、その制御はシステムCPU411によって行われる。
【0068】
HDD412は、原稿読取及び、読取原稿に対して帳票処理などを実行するアプリケーションをソフトウェアとして格納する。
【0069】
RAM413には、HDDに格納されるアプリケーションが必要に応じて読みだされ、システムCPU411にて実行される。
【0070】
すなわち、本実施例では、原稿読取の実行指示やそれに伴う予備動作の指示、操作部416に表示されるユーザインタフェースなどの制御は、システムCPU411上で動作するシステム制御アプリケーションによって制御される。
【0071】
≪原稿混載読取について≫
異なる原稿サイズの読取方法について説明する。
【0072】
リーダCPU301は、前述した読取方法(片面流し読み、両面流し読み)と同様に、原稿トレイ30に積載された原稿を給紙ローラ1、分離ローラ2を使用して1枚ずつADF200内の搬送路へ原稿を給紙搬送する。この時、分離センサ11を用いて搬送された原稿の長さを検知する。すなわち、給紙ローラ1で原稿トレイ30の原稿束Sから原稿が給紙され、分離ローラ2と分離パッド21によって、その最上面の1枚が分離・搬送されると、その搬送された原稿の先端が分離センサ11を通過した時点で、分離センサ11がONとなる。その後、そのまま原稿がADF200内で搬送され、原稿の後端が分離センサ11を通過した時点で、分離センサ11がOFFとなる。この分離センサ11がONとなった時点からOFFとなった時点までの時間を計測し、搬送速度に応じて原稿の長さを測定する。この技術は公知技術として一般的に使われる。
【0073】
そして、原稿は搬送されて表面読取位置まで搬送され、表面読取部105によって原稿の表面画像が読み取られる。その後、リーダ画像処理部304が、その読取った原稿の表面画像から原稿の端部にあるエッジを検出し、検出したエッジから原稿の幅を測定する。測定された原稿幅と前述した原稿の長さ測定方法の両方の結果から、原稿のサイズを特定し、特定したサイズで読取画像を切り取って、リーダ用画像メモリ305に保存する。
【0074】
≪トレイ上への原稿セット位置に関して≫
原稿トレイ30は、トレイ昇降モータ312とギアの連結で繋がっており、トレイ昇降モータ312が駆動する事で、原稿トレイ30の上昇、下降といった昇降動作を行う。
【0075】
原稿読取を行わない時、原稿トレイ30は下降した位置(待機位置)で待機している(図6)。原稿トレイ30に原稿束Sをセットして原稿有無センサ10で原稿有とリーダCPU301が判断した場合は、給紙ローラ1を下げて、原稿を給紙するために原稿が積置されている状態の原稿トレイ30を上昇させる。その後、給紙ローラ1が下がっている時に原稿束Sと当接できる位置(読取待機位置)で原稿トレイ30の上昇を停止させる。原稿トレイ30が上昇して停止した際には、原稿束Sと給紙ローラ1が当接しているため、すぐに給紙ローラ1を駆動させて給紙する事ができ、素早く読取を開始することが可能な状態となる(図7)。
【0076】
原稿トレイ30上には、原稿を正しい位置(センター位置)でセットするためのトレイ規制板aとトレイ規制板bが設置されている(図4A)。トレイ規制板a,bは、原稿幅に合わせて手動で合わせることができるようになっており、リーダCPU301は、トレイ幅ガイドセンサ309が検知したトレイ規制板a,bの間隔を原稿の幅サイズとして検知する。原稿読取装置1000により読み取る予定の原稿のサイズが1種類のみである場合、リーダCPU301はここで検知した幅サイズ情報を使用する。
【0077】
一方、混載原稿の場合、複数の異なる原稿が原稿トレイ30に設置されるため、給紙搬送時に原稿が斜めに搬送される事態(いわゆる斜行)を起きにくくすべく、原稿トレイ30上に存在するトレイ規制板a,bの一方に突き当てて原稿を積置する。これにより、給紙ローラ1によって、原稿トレイ30の原稿が一枚ずつ斜行することなく搬送され、原稿読取部100で原稿が読み取られる(図4A)。
【0078】
上記の方法は前述した通り規格で定められているサイズの原稿に対しては有効である。しかし、規格外のサイズの原稿(レシートなどの領収書、または小切手や、伝票)を原稿トレイ30上に混載させた場合に上記の方法をとると、その原稿の幅によっては、給紙ローラ1に接する位置に積置されず給紙ローラ1で給紙できなくなる(図4B)。
【0079】
そのため、不定型サイズの混載を行う際には、図4Cに示すように、給紙ローラ1により原稿が給紙できる位置に原稿の積置して貰うように、ユーザに通知する必要がある。
【0080】
一方、この場合、ユーザがこの通知に応じて原稿を積置すると、原稿をトレイ規制板a,bのいずれにも突き当てた状態にはできず、結果として図4Dに示すような斜行が生じる場合がある。この場合、ユーザが原稿トレイ30上に一度原稿を積置した後にもう一度原稿を積置し直す、いわゆる原稿の置き直しが発生する。
【0081】
従来の自動原稿読取部の場合、ユーザが原稿の置き直しをしようとした時点ですでに原稿トレイ30上に原稿束Sをセットされ、原稿トレイ30が上昇して停止しているため、原稿束Sを給紙ローラ1で圧をかけている状態となっている(図5)。このような状態では、原稿搬送方向(副走査方向V)と直行方向(主走査方向H)における原稿位置の修正が行いにくく、原稿の置き直しが困難となっていた。
【0082】
ここで、ユーザは、原稿読取を一度終了すべく、実行中のアプリケーションの切り替え操作を行えば、原稿トレイ30は下降するので、原稿の置き直しが容易となる。しかし、かかる切り替え操作は、原稿トレイ30を上昇させた後にすぐ下降させることとなり、トレイ昇降モータ312やこれと連動して動作する給紙ローラ昇降モータ311の負荷が大きくなってしまう。
【0083】
そこで、本実施例では、不定型サイズの原稿混載読取を実行する場合、原稿トレイ30に原稿が積置されてから、一定時間が経過するまでは、トレイ昇降モータ312による原稿トレイ30の上昇、下降動作が抑制するよう制御される。これにより、トレイ昇降モータ312の負荷が大きくなるのを防止する。以下、この不定型サイズの原稿混載読取を実行する際の制御について具体的に説明する。
【0084】
《不定型サイズの原稿混載読取について》
本実施例における不定型サイズの原稿混載読取について、図8図11を用いて説明する。
【0085】
図8は、原稿読取装置1000の電源起動後、読取動作をしていない時に操作部416に表示されるHOME画面である。
【0086】
図8中に示される画面上選択ボタン801~806は、HOME画面上に触れることで選択が可能となっている。
【0087】
操作部416へのユーザ操作によりHOME画面上の画面上選択ボタン804が選択されると、原稿読取装置1000において不定型サイズの原稿の混載読取を実行する「帳票読取」アプリケーション(不定型混載原稿読取アプリケーション)が起動する。起動後、「帳票読取」アプリケーションは、予備動作の指示をシステム制御アプリケーションに対して行う。システム制御アプリケーションはこの予備動作の指示を受けて、操作部416に図9に示す帳票読取設定画面を表示させ、ユーザに原稿は中央に積載する事を通知すると共に、後述する規定時間経過後に原稿トレイ30を下降させる。またユーザは、図9に示す帳票読取設定画面を用いてユーザが希望する詳細な読取設定を選択する事が可能となる。ユーザがその後、帳票読取設定画面のスタートキーを選択すると、「帳票読取」アプリケーションは、システム制御アプリケーションに対して原稿読取の実行指示を行う。システム制御アプリケーションはこの指示を受けると、リーダ制御アプリケーションに原稿トレイ30を上昇させる指示を行い、その後、リーダコントローラ300から上昇終了の制御イベントが通知されると、原稿トレイ30の原稿の給紙・読取を開始する。その後、リーダコントローラ300から原稿トレイ30の原稿がない旨の制御イベントが通知されると、システム制御アプリケーションは、操作部416の画面をHOME画面に戻す。また、この際、リーダ制御アプリケーションは、原稿トレイ30を下降終了位置まで下降させる。
【0088】
(経過時間による上昇、下降動作の抑制制御)
図10は、画面上選択ボタン801が選択されたときに操作部416に表示されるコピー設定画面である。
【0089】
操作部416へのユーザ操作によりHOME画面上の画面上選択ボタン801が選択されると、定型原稿(非不定型原稿)の読取処理をする定型原稿読取アプリケーションの一つである、コピーを実行する「コピー」アプリケーションが起動する。起動後、「コピー」アプリケーションは、予備動作の指示をシステム制御アプリケーションに対して行う。システム制御アプリケーションはこの予備動作の指示を受けて、操作部416に図10に示すコピー設定画面を表示させると共に、後述する規定時間経過後に原稿トレイ30を上昇させる。またユーザは、図10に示すコピー設定画面を用いてユーザが希望する詳細な読取設定を選択する事が可能となる。ユーザがその後、コピー設定画面のスタートキーを選択すると、「コピー」アプリケーションは、システム制御アプリケーションに対して、原稿読取の実行指示を行う。システム制御アプリケーションはこの指示を受けると、リーダ制御アプリケーションに原稿トレイ30を上昇させる指示を行い、その後、リーダコントローラ300から上昇終了の制御イベントが通知されると、原稿トレイ30の原稿の給紙・読取を開始する。その後、リーダコントローラ300から原稿トレイ30の原稿がない旨の制御イベントが通知されると、システム制御アプリケーションは、操作部416の画面をHOME画面に戻す。この際、リーダ制御アプリケーションは、原稿トレイ30を下降終了位置まで下降させる。
【0090】
本実施例では、「コピー」アプリケーションは定型原稿の読取を目的としており、不定型混載原稿の読取を行わないが、「コピー」アプリケーションにおいても不定型混載原稿の読取を行うようにしてもよい。また、本実施例では、HOME画面でユーザが選択した画面上選択ボタンに応じて、「コピー」アプリケーション及び「帳票読取」アプリケーションの一方に実行中のアプリケーションが切り替えられる場合について説明するが、これに限定されない。例えば、これらのアプリケーション以外にも、図8のHOME画面の画面上選択ボタン802や画面上選択ボタン803などを選択することにより起動する、画像送信処理やボックス蓄積処理など、他の読取ジョブを行う複数のアプリケーションがあってもよい。また、一つのアプリケーションにおいて、不定型サイズの混載読取ジョブと定型原稿の読取ジョブのいずれも実行するアプリケーションがあってもよい。
【0091】
また、ユーザによる実行中のアプリケーションの切り替えは、本実施例においては以下のように行われる。まず、図9の帳票読取設定画面又は図10のコピー設定画面の一方が表示されている状態において、操作部416に設けられる不図示のHOMEボタンがユーザにより押下されると、操作部416に図8のHOME画面が表示される。ユーザは、このHOME画面で、帳票読取設定コピー設定画面の他方の画面が表示されるよう画面上選択ボタン801,804の一方を選択することで、実行中のアプリケーションの切り替えが行われる。
【0092】
尚、操作部416に、帳票読取設定画面とコピー設定画面の一方がユーザ切替可能に表示される構成であれば、本実施例の構成に限定されない。例えば、帳票読取設定画面及びコピー設定画面には夫々の上部に他方の画面への切り替え可能なタブが設けてもよい。これにより、現在操作部416に帳票読取設定コピー設定画面の一方が表示される場合、ユーザはそのタブによりその他方の画面に簡単に表示を切り替えることができる。
【0093】
また、図9の帳票読取設定画面の「その他設定」キーがユーザ選択された場合に表示される設定画面において、ユーザがコピー設定画面の切り替えを可能にするようにしてもよい。
【0094】
次に、本実施例における、原稿トレイ30に原稿が積置されたときの、原稿トレイ30の昇降制御処理について、図11のフローチャートを用いて詳述する。本処理は、上述の方法で操作部416に表示される画面の切り替えがユーザにより行われ、実行中アプリケーションが切り替えられたたときに開始する。
【0095】
本実施例では、原稿トレイ30の昇降制御は、システムCPU411上で動作するシステム制御アプリケーションからリーダCPU301上で動作するリーダ制御アプリケーションに上昇指示、下降指示が通知される形で実現される。尚、上昇指示や下降指示を通知する代わりに、読取を行うアプリケーション種別や読取設定をシステム制御アプリケーションからリーダ制御アプリケーションに通知してもよい。この場合、リーダ制御アプリケーション側でその通知された内容に応じて適宜原稿トレイ30の昇降制御がおこなわれる。
【0096】
また、リーダコントローラ300からは、原稿トレイ30の上昇中(読取待機位置への移動中)、下降中(待機位置への移動中)、上昇終了、下降終了、などの制御イベントが、システム制御アプリケーションに通知される。また、原稿トレイ30に原稿が積置された、原稿トレイ30から原稿が抜き取られた、などの制御イベントもリーダコントローラ300からシステム制御アプリケーションに通知される。
【0097】
図11は、本実施例に係る原稿トレイ30の昇降制御処理のフローチャートである。
【0098】
本処理は、原稿有無センサ10により原稿トレイ30上に原稿があると検知された状態で、図8のHOME画面上の画面上選択ボタン801,804の一方がユーザ選択されると開始する。
【0099】
まず、ステップS1101にて、システム制御アプリケーションが、現在時刻を取得する。
【0100】
次に、ステップS1102にて、システム制御アプリケーションが、実行中アプリケーションが不定型混載原稿読み取りを行うかどうかを判別し、その判別の結果、実行中アプリケーションが不定型混載原稿読み取りを行う場合は、ステップS1103に進む。
【0101】
ステップS1103にて、システム制御アプリケーションが、原稿トレイ30が上昇状態かどうかの判定を行う。原稿トレイ30が上昇状態でなければ(ステップS1103でNO)、ステップS1106に進み、上昇状態であれば(ステップS1103でYES)、ステップS1104に進む。ここで上昇状態とは、原稿トレイ30の上昇中または上昇終了を示す制御イベントがリーダコントローラ300からシステム制御アプリケーションに通知された状態を指す。
【0102】
ステップS1104にて、システム制御アプリケーションは、前回の原稿トレイ30の下降動作から、規定時間が経過しているかどうかを判断する。具体的には、システム制御アプリケーションは、RAM413上に確保された前回動作時刻保持領域に蓄積されている前回時刻と、ステップS1101にて取得した現在の時刻とを比較し、規定時間が経過しているかどうかによりこの判断を行う。
【0103】
ここで規定時間の値は、システム制御アプリケーションに固定値として予め記憶されているが、システム管理者により設定される可変値としてもよい。また、トレイ昇降モータ312の動作回数と部品寿命から、部品寿命に余裕がある場合は規定時間を短くし、寿命が残り少なくなった場合は規定時間を長くする、などの動的制御を行ってもよい。
【0104】
ステップS1104の判断の結果、規定時間が経過していない場合は、一定時刻の間を置いたのち、ステップS1101に戻る一方、規定時間が経過している場合は、ステップS1105に遷移する。
【0105】
ステップS1105にて、システム制御アプリケーションは、リーダコントローラ300に原稿トレイ30の下降指示を発行する(第1の昇降指示手段)。リーダコントローラ制御アプリケーションは、原稿トレイ30の下降指示に対して、トレイ昇降モータ312と給紙ローラ昇降モータ311を制御し、原稿トレイ30を下降させる。
【0106】
その後、ステップS1106にて、システム制御アプリケーションは、ステップS1101にて取得した現在時刻を、次回の上昇、下降制御に使う前回時刻として、RAM413上の前回時刻保持領域に書き込み、本処理を終了する。
【0107】
一方、ステップS1102にて、システム制御アプリケーションが、実行中アプリケーションが不定型混載読取動作を行わないと判別した場合、ステップS1107へと遷移する。具体的には、現在操作部416に表示されている画面が図10のコピー設定画面である場合は、実行中アプリケーションがコピージョブを行うと判別する。
【0108】
ステップS1107にて、システム制御アプリケーションが、原稿トレイ30が下降状態かどうかの判定を行う。原稿トレイ30が下降状態でなければ(ステップS1107でNO)、ステップS1106に進み、下降状態であれば(ステップS1107でYES)、ステップS1108に進む。ここで下降状態とは、原稿トレイ30の下降中または下降終了を示す制御イベントがリーダコントローラ300から通知された状態を指す。
【0109】
ステップS1108にて、システム制御アプリケーションは、ステップS1104と同様に前回時刻から規定時間が経過しているかどうかを判定する。ステップS1108の判断の結果、規定時間が経過していない場合は、ステップS1104の制御と同様に、ステップS1101に戻る一方、規定時間が経過していた場合は、ステップS1109に遷移する。
【0110】
ステップS1109にて、システム制御アプリケーションは、リーダコントローラ300に原稿トレイ30の上昇指示を発行した後(第2の昇降指示手段)、ステップS1106に進む。この上昇指示を受けてリーダコントローラ制御アプリケーションは、トレイ昇降モータ312と給紙ローラ昇降モータ311を制御し、原稿トレイ30を上昇させる。
【0111】
ステップS1106にて、システム制御アプリケーションは、前回時刻をRAM413上の前回時刻保持領域に書き込んだ後、本処理を終了する。
【0112】
尚、本処理は、帳票読取設定画面又はコピー設定画面におけるスタートキーのユーザ選択という割り込み処理がなされると、現在実行中のステップの処理を中断し、ステップS1106に進む。
【0113】
本処理によれば、ユーザにより帳票読取設定画面からコピー設定画面への切り替え、またはその逆の切り替えが短時間になされたとしても、規定時間が経過していない場合は、その切替えられた画面に応じた原稿トレイ30の昇降動作を保留する。
【0114】
例えば、ユーザが、図8のHOME画面上で画面上選択ボタン804でなく誤って画面上選択ボタン801を押下してしまった場合、「不定型サイズの混載読取」アプリケーションではなく、「コピー」アプリケーションが起動してしまう。このような場合、ユーザは、現在操作部416に表示されているコピー設定画面を、帳票読取設定画面に短時間に切り替える操作を行うことが想定される。さらに、かかる場合に、ユーザが、現在操作部416に表示されているコピー設定画面を規定時間が経過した後のタイミングで帳票読取設定画面に切り替える操作を行うことがある。かかるタイミングでの画面切替操作が行われると、すでにステップS1109の処理が実行されているため、原稿トレイ30は上昇状態となる。この場合、帳票読取設定画面に表示される通知に基づき原稿トレイ30上の原稿を置き直すべく、何とか、原稿トレイ30を下降状態にさせようと、帳票読取設定画面とコピー設定画面の切り替え操作をユーザが短時間に何度も繰り返すことが想定される。
【0115】
また、オペレーションミスにより、ユーザが、表示中の帳票読取設定画面を短時間でコピー設定画面に切り替えてしまうことも想定される。
【0116】
かかる保留を行うことにより、ユーザが本来、実行したかった画面への遷移が完了することを待ち、その画面に応じた上昇、下降の指示が発行される。これにより、不要な原稿トレイ30の上昇、下降を抑制することが可能となる。
【0117】
(実施例2)
実施例1においては、帳票読取設定画面からコピー設定画面への切り替え、またはその逆の切り替えがあった後、規定時間を経過するまでは原稿トレイ30の上昇、下降を抑制した。これに対し、本実施例では、読取動作が実行されるまでに行われた上昇、下降動作の動作回数をカウントし、カウントされた動作回数が規定回数を上回る場合、読取動作が実行されるまでに行われる上昇、下降を抑制する。ここで、動作回数とは、すなわち、原稿トレイ30の上昇指示と下降指示の総発行回数である。
【0118】
よって、本実施例に係る原稿読取装置1000のハードウェア構成及びソフトウェア構成は、実施例1と同一であるため、同一の構成については同一の符号を用い、重複した説明は省略する。
【0119】
以下、本実施例の原稿トレイ30に原稿が積置されたときの、原稿トレイ30の昇降制御処理について図12のフローチャートを用いて説明する。本処理も図11の処理と同様、上述の方法で操作部416に表示される画面の切り替えがユーザにより行われ、実行中アプリケーションが切り替えられたたときに開始する。
【0120】
尚、図12のフローチャートの基本的な動作は、図11のフローチャートの動作と変わりがないため、異なる点のみに絞って詳述する。
【0121】
まず、ステップS1201では、システム制御アプリケーションが、RAM413上に確保された領域に記憶されている、現在動作回数を取得する。
【0122】
ステップS1202,S1203,S1206での動作は、ステップS1102,S1103,S1107と同じである。すなわち、実行中のアプリケーションが不定型混載読取を行う場合は、ステップS1203に遷移し、そうでない場合は、ステップS1206に遷移する。
【0123】
ステップS1203にて、システム制御アプリケーションは、原稿トレイ30が上昇状態かどうかの判定を行う。原稿トレイ30が上昇状態でなければ(ステップS1203でNO)、ステップS1205に遷移する。一方、上昇状態であれば(ステップS1203でYES)、現在動作回数が規定回数以内であるか否かに関わらず、直接ステップS1204に進み、システム制御アプリケーションは、リーダコントローラ300に原稿トレイ30の下降指示を発行する。その後、ステップS1205に遷移する。
【0124】
ステップS1206にて、システム制御アプリケーションは、原稿トレイ30が下降状態かどうかの判定を行う。原稿トレイ30が下降状態でなければ(ステップS1206でNO)、ステップS1205に進み、下降状態であれば、ステップS1207に遷移し、現在動作回数が規定回数以内かどうかを判定する。現在動作回数が規定回数以内である場合(ステップS1207でYES)、ステップS1208に遷移し、システム制御アプリケーションは、原稿トレイ30の上昇指示を発行する。その後、ステップS1205に遷移する。一方、現在動作回数が規定回数を上回った際は(ステップS1207でNO)、システム制御アプリケーションは、原稿トレイ30の上昇指示を発行することなく、そのまま本処理を終了する。
【0125】
ステップS1205では、現在動作回数を1増やし、本処理を終了する。
【0126】
ここで規定回数の値は、システム制御アプリケーションに固定値として予め記憶されているが、システム管理者により設定される可変値としてもよい。
【0127】
また本実施例では、実行中アプリケーションが不定型混載読取を行う場合は、現在動作回数が規定回数以内であるか否かにかかわらず、一回のみ原稿トレイ30の下降指示を発行し、トレイ昇降モータ312を動作させて原稿トレイ30の下降動作を発生させる。その一方、実行アプリケーションが不定型混載読取を行わない場合は、現在動作回数が規定回数以内である場合のみ、原稿トレイ30の上昇指示を発行することで、原稿トレイ30の上昇動作を抑制する。これにより、原稿トレイ30の上昇、下降を抑制する。
【0128】
尚、RAM413上に蓄積された現在動作回数は、「帳票読取」アプリケーション又は「コピー」アプリケーションからシステム制御アプリケーションに原稿読取の実行指示が行われるたびにリセットされ、ゼロに戻される。したがって、本実施例では、1回の読み取り動作に対して、規定回数以上の上昇、下降動作の発生を抑制することができる。
【0129】
また、本実施例でも実施例1と同様、システム制御アプリケーションは、「帳票読取」アプリケーションや「コピー」アプリケーションより原稿読取の実行指示があると、リーダコントローラ300に原稿トレイ30の上昇指示を発行する。その後、リーダコントローラ300から上昇終了の制御イベントが通知されると、システム制御アプリケーションは原稿トレイ30の原稿の給紙・読取を開始することはいうまでもない。
【0130】
以上、実施例1において規定時間による上昇、下降動作の抑制について、実施例2において規定回数による上昇、下降動作の抑制について述べた。
【0131】
上記実施例1,2では、システム制御アプリケーションからリーダ制御アプリケーションに、原稿トレイ30の上昇、下降動作の抑制制御を通知したが、これに限定されない。例えば、実行中アプリケーションの切り替えを、システム制御アプリケーションがリーダ制御アプリケーションに通知し、リーダ制御アプリケーション側で原稿トレイ30の上昇、下降動作の抑制制御を行うようにしてもよい。
【0132】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワークまたは記憶媒体を介してシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0133】
コンピュータは、1または複数のプロセッサーまたは回路を有し、コンピュータ実行可能命令を読み出し実行するために、分離した複数のコンピュータまたは分離した複数のプロセッサーまたは回路のネットワークを含みうる。
【0134】
プロセッサーまたは回路は、中央演算処理装置(CPU)、マイクロプロセッシングユニット(MPU)、グラフィクスプロセッシングユニット(GPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートウェイ(FPGA)を含みうる。また、プロセッサーまたは回路は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、データフロープロセッサ(DFP)、またはニューラルプロセッシングユニット(NPU)を含みうる。
【符号の説明】
【0135】
1 給紙ローラ
30 原稿トレイ
100 原稿読取部
105 表面読取部
200 ADF
300 リーダコントローラ
312 トレイ昇降モータ
400 システムコントローラ
416 操作部
1000 原稿読取装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12