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特許7592422目地構造、及び、目地構造用部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】目地構造、及び、目地構造用部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20241125BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
E04B1/684 Z
E04F13/02 K
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020129201
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025969
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 章子
(72)【発明者】
【氏名】中馬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】片岡 弘安
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠治
(72)【発明者】
【氏名】堀 長生
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0122999(US,A1)
【文献】特開2019-190126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和反応で固結された第1部材と、
水和反応で固結された第2部材と、
水和反応で固結された第3部材と、
水和反応で固結された第4部材と、
前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、
を備える目地構造であって、
前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、
前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、
前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、
前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、
を備え、
前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、
前記目地空間において、前記第1延出部、前記第2延出部、前記第3延出部、及び前記第4延出部が折り曲げられて接触している部位がある、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項2】
水和反応で固結された第1部材と、
水和反応で固結された第2部材と、
水和反応で固結された第3部材と、
水和反応で固結された第4部材と、
前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、
を備える目地構造であって、
前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、
前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、
前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、
前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、
を備え、
前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、
各シート部材は、それぞれ、
表層シートと、
前記表層シートの裏面側に設けられた裏層シートと、
を有し、
前記裏層シートの角部は切り欠かれており、
各延出部の前記表層シート及び裏層シートが折り曲げられて、前記表層シート同士が接触している、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項3】
水和反応で固結された第1部材と、
水和反応で固結された第2部材と、
水和反応で固結された第3部材と、
水和反応で固結された第4部材と、
前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、
を備える目地構造であって、
前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、
前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、
前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、
前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、
を備え、
前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、
各シート部材は、それぞれ、
表層シートと、
前記表層シートの裏面側に設けられた裏層シートと、
を有し、
前記表層シートと前記裏層シートの位置がずれており、
各シート部材の前記表層シート同士と、前記裏層シート同士が接触している、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の目地構造であって、
前記第1シート部材の前記第1延出部と、前記第4シート部材の前記第4延出部も接触している、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の目地構造であって、
前記目地空間において、前記第1延出部、前記第2延出部、前記第3延出部、及び前記第4延出部が重なっている部位がある、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項6】
水和反応で固結された第1部材と、
水和反応で固結された第2部材と、
水和反応で固結された第3部材と、
水和反応で固結された第4部材と、
前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、
を備える目地構造であって、
前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、
前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、
前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、
前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、
を備え、
前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、
所定方向に並ぶシート部材は、それぞれの延出部が重ねられて接触しており、
前記所定方向と交差する方向に並ぶシート部材は、それぞれの延出部が折り曲げられて接触している、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の目地構造であって、
各シート部材は、樹脂製のシートであり、
各延出部同士の接触した部位は、溶着剤によって溶着されている、
ことを特徴とする目地構造。
【請求項8】
水和反応で固結されたセメント系組成物部材と、
前記セメント系組成物部材に前記水和反応によって固着されて埋設された埋設部と、前記セメント系組成物部材から延出する延出部と、を有するシート部材と、
を備えた目地構造用部材の製造方法であって、
型枠の内側の側面に前記延出部の一方の面を対向させるとともに、前記延出部の他方の面に縁切り材を設けるシート部材配置工程と、
前記埋設部を前記型枠の内部に維持しつつ、前記型枠にセメント系組成物を打ち込む打設工程と、
前記セメント系組成物が固結した後、前記型枠を脱型する脱型工程と、
前記縁切り材を除去して、前記延出部を前記セメント系組成物部材から延出させる延出工程と、
を有することを特徴とする目地構造用部材の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の目地構造用部材の製造方法であって、
前記シート部材配置工程よりも前に、前記型枠の内部に鉄筋を配置する鉄筋配置工程をさらに有し、
前記シート部材配置工程において、前記シート部材の前記埋設部を前記鉄筋に固定させる、
ことを特徴とする目地構造用部材の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の目地構造用部材の製造方法であって、
前記シート部材の前記埋設部には塩化ビニル鋼板が溶着されており、
前記鉄筋と前記埋設部との固定は、前記鉄筋と前記塩化ビニル鋼板とを溶接することにより行う、
ことを特徴とする目地構造用部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地構造、及び、目地構造用部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、外壁材や内装材の目地部分に防水性能が必要な場合、目地部分に不定形のシーリング材を充填し、止水性を持たせている。しかし、シーリング材は、基材のコンクリート等が乾燥するまで所定の養生期間を取ってから施工する必要があり、また、シーリング材が硬化するまで、防水機能が完全に発現しなかった。さらに、シーリング材に塗装を行う場合も養生期間が必要であった。加えて、シーリング工事において外足場が必要になる場合があった。このように、施工に手間がかかるとともに、工期短縮が困難であった。
【0003】
そこで、合成樹脂あるいは合成ゴム系のフィルムやシートを目地防水材としてコンクリート部材に設け、目地空間においてコンクリート部材から延出した部分同士を接触させるようした目地構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。これにより施工の簡易化、工期短縮、防水の信頼性向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-190126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した目地構造においても、交差部のある目地(例えばT字状目地や十字状目地)では、交差部分で意匠性が悪化するおそれがあった。また、隙間が発生することにより、シーリング材を施工する必要が生じてしまい、工程や工期が増加するおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、交差部がある目地において、施工の簡易化、工期短縮、防水機能の信頼性向上、及び意匠性の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために本発明の目地構造は、水和反応で固結された第1部材と、水和反応で固結された第2部材と、水和反応で固結された第3部材と、水和反応で固結された第4部材と、前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、を備える目地構造であって、前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、を備え、前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、前記目地空間において、前記第1延出部、前記第2延出部、前記第3延出部、及び前記第4延出部が折り曲げられて接触している部位がある、ことを特徴とする。
【0008】
このような目地構造によれば、十字状目地において意匠性や防水機能の信頼性の向上を図ることが可能である。また、施工の簡易化、工期短縮を図ることができる。
【0009】
また、かかる目的を達成するために本発明の目地構造は、水和反応で固結された第1部材と、水和反応で固結された第2部材と、水和反応で固結された第3部材と、水和反応で固結された第4部材と、前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、を備える目地構造であって、前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、を備え、前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、各シート部材は、それぞれ、表層シートと、前記表層シートの裏面側に設けられた裏層シートと、を有し、前記裏層シートの角部は切り欠かれており、各延出部の前記表層シート及び裏層シートが折り曲げられて、前記表層シート同士が接触している、ことを特徴とする。
【0010】
このような目地構造によれば、施工をより簡易にすることができる。
【0011】
また、かかる目的を達成するために本発明の目地構造は、水和反応で固結された第1部材と、水和反応で固結された第2部材と、水和反応で固結された第3部材と、水和反応で固結された第4部材と、前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、を備える目地構造であって、前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、を備え、前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、各シート部材は、それぞれ、表層シートと、前記表層シートの裏面側に設けられた裏層シートと、を有し、前記表層シートと前記裏層シートの位置がずれており、各シート部材の前記表層シート同士と、前記裏層シート同士が接触している、ことを特徴とする。
【0012】
このような目地構造によれば、目地の交差部を平滑に形成することができ、意匠性を高めることができる。また、止水性を高めることができる。
【0013】
かかる目地構造であって、前記第1シート部材の前記第1延出部と、前記第4シート部材の前記第4延出部も接触していることが望ましい。
【0014】
このような目地構造によれば、防水機能の信頼性をより高めることができる。
【0015】
かかる目地構造であって、前記目地空間において、前記第1延出部、前記第2延出部、前記第3延出部、及び前記第4延出部が重なっている部位があることが望ましい。
【0016】
このような目地構造によれば、止水性を高めることができる。
【0017】
また、かかる目的を達成するために本発明の目地構造は、水和反応で固結された第1部材と、水和反応で固結された第2部材と、水和反応で固結された第3部材と、水和反応で固結された第4部材と、前記第1部材と前記第2部材と前記第3部材と前記第4部材との間の目地空間と、を備える目地構造であって、前記第1部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第1埋設部と、前記第1部材から前記目地空間に延出した第1延出部と、を有する第1シート部材と、前記第2部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第2埋設部と、前記第2部材から前記目地空間に延出した第2延出部と、を有する第2シート部材と、前記第3部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第3埋設部と、前記第3部材から前記目地空間に延出した第3延出部と、を有する第3シート部材と、前記第4部材に前記水和反応によって固着されて埋設された第4埋設部と、前記第4部材から前記目地空間に延出した第4延出部と、を有する第4シート部材と、を備え、前記第1シート部材の前記第1延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触し、前記第4シート部材の前記第4延出部が前記第2シート部材の前記第2延出部と前記第3シート部材の前記第3延出部とに接触しており、 所定方向に並ぶシート部材は、それぞれの延出部が重ねられて接触しており、 前記所定方向と交差する方向に並ぶシート部材は、それぞれの延出部が折り曲げられて接触している、ことを特徴とする。
【0018】
このような目地構造によれば、目地の交差部にシート部材を隙間なく配置することができる。
【0019】
かかる目地構造であって、各シート部材は、樹脂製のシートであり、各延出部同士の接触した部位は、溶着剤によって溶着されていることが望ましい。
【0020】
このような目地構造によれば、シート部材を簡易に且つ確実に接合することができる。
【0023】
また、かかる目的を達成するために本発明の目地構造用部材の製造方法は、水和反応で固結されたセメント系組成物部材と、前記セメント系組成物部材に前記水和反応によって固着されて埋設された埋設部と、前記セメント系組成物部材から延出する延出部と、を有するシート部材と、を備えた目地構造用部材の製造方法であって、型枠の内側の側面に前記延出部の一方の面を対向させるとともに、前記延出部の他方の面に縁切り材を設けるシート部材配置工程と、 前記埋設部を前記型枠の内部に維持しつつ、前記型枠にセメント系組成物を打ち込む打設工程と、前記セメント系組成物が固結した後、前記型枠を脱型する脱型工程と、前記縁切り材を除去して、前記延出部を前記セメント系組成物部材から延出させる延出工程と、を有することを特徴とする。

【0024】
このような目地構造によれば、施工の簡易化、工期短縮、防水機能の信頼性向上、及び意匠性の向上を図れる目地構造用部材を製造することができる。
【0025】
かかる目地構造用部材の製造方法であって、前記シート部材配置工程よりも前に、前記型枠の内部に鉄筋を配置する鉄筋配置工程をさらに有し、前記シート部材配置工程において、前記シート部材の前記埋設部を前記鉄筋に固定させることが望ましい。
【0026】
このような目地構造用部材の製造方法によれば、型枠の内部にシート部材(埋設部)を維持させることができる。
【0027】
かかる目地構造用部材の製造方法であって、前記シート部材の前記埋設部には塩化ビニル鋼板が溶着されており、前記鉄筋と前記埋設部との固定は、前記鉄筋と前記塩化ビニル鋼板とを溶接することにより行うことが望ましい。
【0028】
このような目地構造用部材の製造方法によれば、シート部材(埋設部)を鉄筋に確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、施工の簡易化、工期短縮、防水機能の信頼性向上、及び意匠性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1実施形態の目地構造の正面図である。
図2図2A図2Dは、第1コンクリート部材10の製造方法を示す概略説明図である。
図3図3Aは、第1シート部材12の型枠60への固定方法を示す概略斜視図である。図3Bは、第1シート部材12と型枠60との固定部分の断面図である。
図4図4A図4Cは、第1コンクリート部材10の角部(コーナー部)への第1シート部材12の設置例を示す説明図である。
図5図5A図5Cは、第1実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。
図6図6A図6Cは、第2実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。
図7図7A図7Bは、第3実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。
図8図8A図8Dは、第4実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。
図9】目地空間50がT字状の場合の一例を示す図である。
図10図10A図10Bは、アルミサッシと接する場合の概略説明図である。
図11】塩ビ樹脂サッシと接する場合の概略説明図である。
図12】塩ビ樹脂サッシ80と第1シート部材12との接合(溶着)例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0032】
===第1実施形態===
<<目地構造について>>
図1は、第1実施形態の目地構造の正面図である。
図1に示す目地構造は、第1コンクリート部材10(第1部材に相当)、第2コンクリート部材20(第2部材に相当)、第3コンクリート部材30(第3部材に相当)、第4コンクリート部材40(第4部材に相当)、及び目地空間50を備えている。本実施形態において、これらの各コンクリート部材は、建物の壁(外壁)に用いられており、室内と屋外との間に設けられている。図1において、縦方向と、当該縦方向と交差する横方向を定めている。縦方向は、例えば鉛直方向であり、横方向は、例えば水平方向である。また、縦方向及び横方向と交差する方向(紙面に垂直な方向)を厚さ方向とし、厚さ方向の一方側(例えば屋外側)を表側とし、その反対側(例えば室内側)を裏側とする。
【0033】
図1に示す各コンクリート部材(第1コンクリート部材10~第4コンクリート部材40)は、平面形状が矩形のパネル状の部材である。具体的には、本実施形態(図1)の各コンクリート部材は、長辺(縦方向)の長さが約4.4m、短辺(横方向)の長さが約2.2mの矩形状である。図1A及び図1Bに示すように、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20は、目地空間50を隔てて横方向に並んでいる。同様に、第3コンクリート部材30と第4コンクリート部材40は、目地空間50を隔てて横方向に並んでいる。また、第1コンクリート部材10と第3コンクリート部材30は目地空間50を隔てて縦方向に並んでいる。同様に、第2コンクリート部材20と第4コンクリート部材40は、目地空間50を隔てて縦方向に並んでいる。
【0034】
第1コンクリート部材10(第1部材に相当)は、セメントと水との水和反応で固結されたセメント系組成物部材である。本実施形態の第1コンクリート部材10は、内部に鉄筋14(図2図3参照)が配置された鉄筋コンクリートであり、PC(プレキャストコンクリート)工法で作製されている。なお、PC工法とは、工場において予めコンクリート製品(部材)を作製した後、現場へ運搬して設置を行う工法である。本実施形態の第1コンクリート部材10には第1シート部材12が設けられている。
【0035】
第1シート部材12は、止水性を有するシート状の部材である。第1シート部材12としては、合成樹脂系あるは合成ゴム系のフィルムやシートを用いることができる。合成樹脂系としては、例えば、塩化ビニル系、アクリル系、ABS系(アクリロニトル・ブタジエン・スチレン共重合)、TPE系(熱可塑性エラストマー)、フッ素樹脂(例えばPFA:四フッ化エチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体)などを用いることができる。本実施形態では、第1シート部材12として、塩化ビニル系の合成樹脂(以下、塩ビ樹脂ともいう)を用いている。なお、他のコンクリート部材に設けられたシート部材(第2シート部材22、第3シート部材32、第4シート部材42)についても同じである。
【0036】
シートの厚さは、目地幅や目地設置深さに応じて最適なものを選択できる。シート厚さの適用範囲としては、例えば0.5~7mmであり、本実施形態では2mmの厚さのものを用いている。
【0037】
第1シート部材12は、第1コンクリート部材10に水和反応によって固着されて埋設された埋設部12a(第1埋設部に相当)と、第1コンクリート部材10から延出した延出部12b(第1延出部に相当)とを有している。埋設部12a及び延出部12bは、第1コンクリート部材10の周囲を囲んで形成されている(すなわち、第1コンクリート部材10の角部にも形成されている)。第1コンクリート部材10の製造方法については後述する。
【0038】
第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30、及び、第4コンクリート部材40も第1コンクリート部材10と同様の部材(セメント系組成物部材)である。
【0039】
なお、第2コンクリート部材20には、第2シート部材22が設けられている。第2シート部材22は、第2コンクリート部材20に水和反応によって固着されて埋設された埋設部22a(第2埋設部に相当)と、第2コンクリート部材20から延出した延出部22b(第2延出部に相当)とを有している。
【0040】
また、第3コンクリート部材30には、第3シート部材32が設けられている。第3シート部材32は、第3コンクリート部材30に水和反応によって固着されて埋設された埋設部32a(第3埋設部に相当)と、第3コンクリート部材30から延出した延出部32b(第3延出部に相当)とを有している。
【0041】
また、第4コンクリート部材40には、第4シート部材42が設けられている。第4シート部材42は、第4コンクリート部材40に水和反応によって固着されて埋設された埋設部42a(第4埋設部に相当)と、第4コンクリート部材40から延出した延出部42b(第4延出部に相当)とを有している。
【0042】
目地空間50は、4つの各コンクリート部材(第1コンクリート部材10、第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30、第4コンクリート部材40)の間に設けられた空間である。本実施形態の目地空間50は、縦方向に沿った部位と横方向に沿った部位が十字状に交差する十字状目地である。目地空間50には、第1シート部材12の延出部12b、第2シート部材22の延出部22b、第3シート部材32の延出部32b、第4シート部材42の延出部42b、がそれぞれ延出し、溶着などにより互いに接合されている。なお、溶着とは樹脂や金属を溶かして接合する接合方法である。本実施形態の溶着の方法については後述する。
【0043】
<<目地構造の施工方法について>>
<コンクリート部材の製造>
目地構造の施工方法の説明の前に、本実施形態のコンクリート部材(目地構造用部材に相当)の製造方法について説明する。ここでは第1コンクリート部材10の製造方法について説明するが、第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30、及び、第4コンクリート部材40についても同様に製造することができる。
【0044】
図2A図2Dは、第1コンクリート部材10の製造方法の一例を示す概略説明図である。また、図3Aは、第1シート部材12の型枠60への固定方法の一例を示す概略斜視図であり、図3Bは、第1シート部材12と型枠60との固定部分の断面図である。
【0045】
まず、図2A及び図3Aに示すように、型枠60の内部に鉄筋14を配置し、型枠60の内側の側面に第1シート部材12を固定する。本実施形態では、図3A図3Bに示すように、第1シート部材12うちの埋設部12aとなる部位の片面に塩化ビニル鋼板13(以下、塩ビ鋼板13ともいう)を設けている。塩ビ鋼板13は、芯材(鋼板)にポリ塩化ビニル樹脂を被覆した樹脂化粧鋼板である。第1シート部材12(塩ビ樹脂)と塩ビ鋼板13は、予め溶着により一体化されている。なお、塩ビ鋼板13のうち、第1シート部材12と溶着されていない側の面(鉄筋14と対向する側の面)は、ポリ塩化ビニル樹脂が設けられていなくてもよい。
【0046】
図3A及び図3Bに示すように、第1シート部材12をL字状に折り曲げ、鉄筋14に塩ビ鋼板13を溶接する。なお、鉄筋14に対して第1シート部材12が固定されればよく、塩ビ鋼板13と重なる位置のすべての鉄筋14と塩ビ鋼板13とを溶接する必要はない。例えば、複数個置きに溶接してもよいし、溶接でなくとも接着やテープ又はワイヤー固定等でも構わない。
【0047】
また、L字状の他方側の部位(延出部12bとなる部位)を両面テープ16で型枠60の内側の側面に固定する。さらに、両面テープ16とは反対側の面(第1シート部材12の面)には、コンクリートに固着しないように縁を切るための剥離紙18(縁切り材に相当)を設ける。
【0048】
次に、図2Bに示すように、型枠60内にコンクリート(セメント系組成物)を打設する(打ち込む)。そして、セメントと水との水和反応によりコンクリートが固結した後、図2Cに示すように、型枠60を脱型する。第1シート部材12は、コンクリートと一体化されている。
【0049】
そして、図2Dに示すように、両面テープ16及び剥離紙18を第1シート部材12から外し、第1シート部材12のL字状に折り曲げていた部位を直線状に延ばす。
【0050】
このようにして、第1シート部材12を備えた第1コンクリート部材10を製造することができる。また、第1シート部材12には、第1コンクリート部材10に水和反応によって固着されて埋設された埋設部12a(鉄筋14に固定された部位)と、第1コンクリート部材10から延出した延出部12bが形成される。
【0051】
なお、本実施形態では、第1シート部材12のうちの埋設部12aとなる部位に塩ビ鋼板13を設けて、鉄筋14に塩ビ鋼板13を溶接していたが、第1シート部材12の固定方法はこれには限られない。例えば、第1シート部材12(埋設部12aとなる部位)の適宜の位置に孔を設け、針金などで鉄筋14と緊結してもよい。また、本実施形態では、第1シート部材12(延出部12bとなる部位)と型枠60の内側の側面とを両面テープ16で固定していたが、両面テープ16は無くてもよい。
【0052】
図4A図4Cは、第1コンクリート部材10の角部(コーナー部)における第1シート部材12の設置例を示す説明図である。
【0053】
図4Aでは、第1コンクリート部材10の辺に沿って、第1シート部材12と第1シート部材12´が設けられており、コーナー部においてこの2枚のシート部材の一部を重ねている(溶着している)。
【0054】
図4Bでは、図4Aと同様に第1シート部材12と第1シート部材12´が設けられており、コーナー部において、2枚のシートをすべて重ねている。
【0055】
図4Cでは、コーナー部に、当該コーナー部の形状に対応した形状のシート部材(第1シート部材12″を設け、直線状の2枚のシート部材(第1シート部材12、第1シート部材12´)とコーナー部のシート部材(第1シート部材12″)をそれぞれ重ねている。
【0056】
なお、コンクリート部材へのシート部材の設置方法は、上述したものには限られない。例えば、コンクリート部材の角を挟む2辺(短辺と長辺)に対応した形状(L字状)のシート部材を用いて、2枚のL字状のシート部材をコンクリート部材の周囲に配置するようにしてもよい。あるいは、1枚のロの字状のシート部材をコンクリート部材の周囲に配置するようにしてもよい。また、コンクリート部材の製造方法は、上記のものには限られず、他の方法で製造してもよい。例えば、型枠60の側部を高さ方向の所定位置で分割可能に構成し、その間にシート部材を挟んで(シート部材の一部を型枠内に配置させ)、内部にコンクリートを打ち込んでもよい。
【0057】
<目地構造の施工方法>
図5A図5Cは、第1実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。なお、図5A図5Cでは、各コンクリート部材として平面形状が正方形の縮小模型を用いている。
【0058】
まず、図5Aに示すように、第3コンクリート部材30と第4コンクリート部材40を横方向に並べ、第3コンクリート部材30の第3シート部材32の延出部32bと、第4コンクリート部材40の第4シート部材42の延出部42bを重ね合わせる。ここでは、延出部32bの裏面が延出部42bの表面と接触するように、シート部材を重ねているが、逆でもよい。そして、重ね合わせた延出部32bと延出部42bを溶着する。具体的には、専用の溶着剤を含浸させた刷毛(不図示)などで、延出部32bと、延出部42bとの間に溶着剤を塗布する。これにより、溶着剤の塗布された延出部32bと延出部42bの部位が溶けた状態で接触し、その後硬化することで溶着する。このように、溶着剤を塗布することにより第3シート部材32と第4シート部材42を簡易に且つ確実に接合(溶着)することができる。なお、シート部材(塩ビシート)の溶着剤としては、例えば、サンロイドDN溶着剤(住べシート防水株式会社製)を用いることができる。
【0059】
次に、図5Bに示すように、第2コンクリート部材20を第4コンクリート部材40と縦方向に並ぶように配置する。そして、第2コンクリート部材20の第2シート部材22の延出部22bを、第4コンクリート部材40の第4シート部材42の延出部42b及び第3コンクリート部材30の延出部32bに重ね合わせて溶着する。
【0060】
次に、図5Cに示すように、第1コンクリート部材10を、第3コンクリート部材30と縦方向に並ぶように、且つ、第2コンクリート部材20と横方向に並ぶように配置する。そして、第1コンクリート部材10の第1シート部材12の延出部12bを、第2コンクリート部材20の第2シート部材22の延出部22b、第3コンクリート部材30の延出部32b、及び、第4コンクリート部材40の第4シート部材42の延出部42bに重ね合わせて溶着する。
【0061】
これにより、第1コンクリート部材10、第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30、第4コンクリート部材40の間には十字状の目地空間50が形成される。この目地空間50には隙間なくシート部材が配置されている。特に十字状の交差部分では、第1シート部材12、第2シート部材22、第3シート部材32、第4シート部材42の各延出部が、厚さ方向に重なっている。これにより、止水性を高めることができる。なお、第1シート部材12、第2シート部材22、第3シート部材32、第4シート部材42の重なる順序はこの例には限定されず、どの順序でもよい。また、上述した例において、第1シート部材12の延出部12bと第4シート部材42の延出部42bが接触しない場合もあるが、シートの位置をずらして(あるいはシートの大きさを調整して)、延出部12bと延出部42bとが接触(溶着)するようにしてもよい。これにより、防水機能の信頼性をより高めることができる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態では、各コンクリート部材に予めシート部材を設けておくことにより、各シート部材の延出部を重ねることで簡易に十字状の目地空間50の防水性を確保できる。よって、シーリング材を施工するなどして隙間が生じないようにする必要がないので、施工の簡易化、工期短縮、防水機能の信頼性向上、及び意匠性の向上を図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、コンクリート部材を配置しつつシート部材同士を溶着していたが、各コンクリート部材の配置が終了した後に、シート部材同士を溶着するようにしてもよい。
【0064】
===第2実施形態===
図6A図6Cは、第2実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。第2実施形態においても、図5と同様の縮小模型を用いている。
【0065】
第2実施形態では、図6Aに示すように第1コンクリート部材10の第1シート部材12が2層構成になっている。具体的には、第1シート部材12(埋設部12a及び延出部12b)は、表層シート12Uと裏層シート12Lが厚さ方向に重なって構成されている。裏層シート12Lの角部には切り欠き部が形成されている。ここでは、表層シート12Uは、裏層シート12Lよりも薄く形成されているがこれには限られず、同じ厚さでもよい。また、なお、他のコンクリート部材(第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30、第4コンクリート部材40)のシート部材についても同様の構成となっている。
【0066】
次に、これらの各コンクリート部材のシート部材(延出部)を裏側方向に向けて折り曲げ、図6Bに示すように、並べて配置していく。シート部材の裏層シートには角部に切り欠き部が形成されており、切り欠き部上の表層シートは薄いため、角部が折り曲げやすくなっている。
【0067】
これにより、図6Cに示すように、各コンクリート部材を配置できる。この例では図6Cに示すように、目地空間50の交差部分の中央において、各シート部材の表層シート同士が接触している。そして、刷毛等で各シート部材の間に溶着剤を塗布する。これにより、接触した表層シート同士が溶着により接合される。
【0068】
この第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。またた、施工をより簡易化することができる。
【0069】
===第3実施形態===
図7A図7Bは、第3実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。第3実施形態においても、図5と同様の縮小模型を用いている。なお、図7A及び図7Bの側面図では、各コンクリート部材の図示を省略している(シート部材のみを示している)。
【0070】
第3実施形態では、各コンクリート部材のシート部材を2層構成にするとともに、図に示すように、2層のシート部材をずらして配置している。例えば、第1コンクリート部材10の第1シート部材12(埋設部12a及び延出部12b)は、表層シート12Uと裏層シート12Lの2層に構成されており、この表層シート12Uと裏層シート12Lが、縦方向および横方向にずれて重ねられている。
【0071】
同様に、第2コンクリート部材20の第2シート部材22(埋設部22a及び延出部22b)は、表層シート22Uと裏層シート22Lの2層に構成されており、この表層シート22Uと裏層シート22Lが縦方向及び横方向にずれて重ねられている。また、第3コンクリート部材30の第3シート部材32(埋設部32a及び延出部32b)は、表層シート32Uと裏層シート32Lの2層に構成されており、この表層シート32Uと裏層シート32Lが縦方向及び横方向にずれて重ねられている。また、第4コンクリート部材40の第4シート部材42(埋設部42a及び延出部42b)は、表層シート42Uと裏層シート42Lの2層に構成されており、この表層シート42Uと裏層シート42Lが縦方向及び横方向にずれて重ねられている。なお、各コンクリート部材の表層シートと裏層シートのずれの方向やずれ量は同じである。
【0072】
まず、図7Aに示すように、第1コンクリート部材10の表層シート12Uと第2コンクリート部材の表層シート22U、及び、第1コンクリート部材10の裏層シート12Lと第2コンクリート部材の裏層シート22Lを突き合わせつつ、表層シート22Uと裏層シート12Lとの重なり部分を溶着する。突き合わせ部分は溶着しても溶着しなくてもよい。
【0073】
これにより、図に示すように第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20が一体となった張り合わせ体が形成される。第3コンクリート部材30と第4コンクリート部材40についても同様にして張り合わせ体を形成する。
【0074】
次に、図7Bに示すように、第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20との張り合わせ体と、第3コンクリート部材30と第4コンクリート部材40との張り合わせ体を張り合わせる。すなわち、第3シート部材32の表層シート32U及び第4シート部材42の表層シート42Uを、第1シート部材12の裏層シート12L及び第2シート部材22の裏層シート22Lに溶着する。
【0075】
このように第3実施形態の各コンクリート部材にはシート部材が複数層(ここでは2層)に設けられており、且つ、積層されたシートの位置が縦方向及び横方向にずれている。これにより、第3実施形態では、目地空間50の交差部分においてもシート表面に段差ができないようにすることができる(平滑に形成できる)。よって、意匠性をさらに高めることができる。また、2層のシートの位置がずれて配置されているので、止水性も高めることができる。なお、本実施形態では、各コンクリート部材のシート部材がそれぞれ2層に形成されていたが、これには限らず、3層以上であってもよい。
【0076】
===第4実施形態===
図8A図8Dは、第4実施形態の目地構造の施工方法の説明図である。第4実施形態においても、図5と同様の縮小模型を用いている。なお、図8A及び図8Bの側面図、及び、図8Cでは、各コンクリート部材の図示を省略している。また図8Cでは、各シート部材を仮想的にシート状に示している。
【0077】
まず、図8Aに示すように、第1コンクリート部材10と第3コンクリート部材30を縦方向に並べ、第1コンクリート部材10の第1シート部材12の延出部12bと、第3コンクリート部材30の第3シート部材32の延出部32bを厚さ方向に重ね合わせる。ここでは、図に示すように、延出部32bの裏面が、延出部12bの表面と接触するように重ねている。そして、重ね合わせた延出部12bと延出部22bを溶着する。
【0078】
次に、図8Bに示すように、第2コンクリート部材20と第4コンクリート部材40を縦方向に並べ、第2コンクリート部材20の第2シート部材22の延出部22bと、第4コンクリート部材40の第4シート部材42の延出部42bを厚さ方向に重ね合わせる。ここでは、図に示すように、延出部22bの裏面が、延出部32bの表面と接触するように重ねている。そして、重ね合わせた延出部32bと延出部42bを溶着する。
【0079】
次に、図8Cに示すように、図8Aで形成された張り合わせ体と、図8Bで形成された張り合わせ体を横方向に並べ、対向するシート部材(延出部)の端部を厚さ方向の裏側に向けて折り曲げる。そして、縦方向において、第2シート部材22(延出部22b)の端と、第3シート部材32(延出部32b)の端が同じ位置になるように張り合わせ体同士を接触させ溶着する。
【0080】
これにより、図8Dに示すように、十字状の目地空間50を備えた目地構造が形成される。本実施形態においても、目地空間50に、各シート部材を隙間なく配置することができる。よって、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0082】
<シート部材の接合について>
前述の実施形態では、シート部材(延出部)同士を溶着剤で溶着していたが、これには限られず、例えば接着剤で接合してもよい。
【0083】
<目地構造について>
前述の実施形態では、目地空間50は十字状の目地であったが、これには限られず、例えばT字状の目地であってもよい。
【0084】
図9は、目地空間50がT字状の場合の一例を示す図である。図9において、図1と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0085】
図9に示す目地構造は、第1コンクリート部材10、第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30、及び、目地空間50を備えている。
【0086】
第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20は縦方向に並んで配置されている。第3コンクリート部材30は、第1コンクリート部材10及び第2コンクリート部材20の横側において、縦方向の位置が第1コンクリート部材10と第2コンクリート部材20の間となるように配置されている。これにより、第1コンクリート部材10、第2コンクリート部材20、第3コンクリート部材30の間にはT字状の目地空間50が形成されている。目地空間50には、第1シート部材12の延出部12b、第2シート部材22の延出部22b、第3シート部材32の延出部32bがそれぞれ延出し、溶着などにより互いに接合されている。具体的には、第1シート部材12の延出部12bと第2シート部材22の延出部22bとが接合され(接触し)、第3シート部材32の延出部32bが第1シート部材12の延出部と12bと第2シート部材22の延出部22bとに接合されている(接触している)。
【0087】
このように目地空間50がT字状の場合においても、T字状の交差部を隙間なく形成できる。よって、施工の簡易化、工期短縮、防水機能の信頼性向上、及び意匠性の向上を図ることができる。
【0088】
<目地構造の他の適用例について>
図10A図10Bは、アルミサッシと接する場合の一例を示す概略説明図である。ここでは、第3実施形態の第1コンクリート部材10を、図10Aに示すように複数並べて配置している。そして、複数の第1コンクリート部材10によって形成される空間にアルミサッシ70を配置している。アルミサッシ70周辺まで、第1シート部材12(表層シート12U、裏層シート12L)同士を溶着させて目地を形成する。
【0089】
次に、図10Bに示すように、アルミサッシ70の周囲にガスケット72を施工する。ガスケット72としては、EPDM、シリコン、塩化ビニル樹脂などで製造されたものを用いることができる。あるいは、ガスケット72の代わりにシーリング材を充填してもよい。
【0090】
図11は、塩ビ樹脂サッシと接する場合の一例を示す概略説明図である。この例では、第3実施形態の第1コンクリート部材10を、図11に示すように複数並べて配置し、これらの第1コンクリート部材10によって形成される空間に塩ビ樹脂サッシ80を配置している。
【0091】
そして、塩ビ樹脂サッシ80の枠に第1シート部材12(ここでは裏層シート12L)を溶着する。
【0092】
図12は、塩ビ樹脂サッシ80と第1シート部材12との接合(溶着)例を示す断面図である。塩ビ樹脂サッシ80と裏層シート12Lとの接合(溶着)方法は、図12に示す何れであってもよい。また、図12以外の方法であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 第1コンクリート部材
12 第1シート部材
12a 埋設部
12b 延出部
12U 表層シート
12L 裏層シート
13 塩化ビニル鋼板
14 鉄筋
16 両面テープ
18 剥離紙
20 第2コンクリート部材
22 第2シート部材
22a 埋設部
22b 延出部
20 第2コンクリート部材
22 第2シート部材
22a 埋設部
22b 延出部
22U 表層シート
22L 裏層シート
30 第3コンクリート部材
32 第3シート部材
32a 埋設部
32b 延出部
32U 表層シート
32L 裏層シート
40 第4コンクリート部材
42 第4シート部材
42a 埋設部
42b 延出部
42U 表層シート
42L 裏層シート
50 目地空間
60 型枠
70 アルミサッシ
72 ガスケット
80 塩ビ樹脂サッシ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12