(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】二成分現像剤、現像装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 9/10 20060101AFI20241125BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20241125BHJP
G03G 9/107 20060101ALI20241125BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241125BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G03G9/10
G03G9/113 352
G03G9/107 321
G03G9/097 375
G03G15/08 229
(21)【出願番号】P 2020142413
(22)【出願日】2020-08-26
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】長岡 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】椿 頼尚
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武
(72)【発明者】
【氏名】紀川 敬一
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-258384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/10
G03G 9/113
G03G 9/107
G03G 9/097
G03G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア芯材および前記キャリア芯材を被覆する被覆層を備えるキャリアと、トナーとを含有する二成分現像剤
を用いて、静電潜像を現像して可視像を形成する画像形成装置であって、
現像装置と、前記静電潜像が形成される感光体と、前記感光体を帯電させる帯電装置とを備え、
前記現像装置は、前記感光体と所定の間隔を設けて対向して前記トナーを供給する現像スリーブを備え、
前記現像スリーブに印加される現像バイアスと前記感光体の表面電位との電位差を、電位差の小さい側で200V、電位差の大きい側で350Vとした場合に、
前記キャリアは、
ブリッジ抵抗測定法により電圧を1Vステップで印加し、前記キャリアを流れる電流値が1.0
×10
-7(A)に達するときの表面抵抗値に関わるキャリア電圧値をα(V)、前記電流値が1.0
×10
-5(A)に達するときの体積抵抗値に関わるキャリア電圧値をβ(V)とすると、
109≦α≦182、かつ、309≦β≦475
を満たし、
前記キャリア芯材は、Mnと、Mgと、Srとを少なくとも含有するフェライト粒子であり、
前記ブリッジ抵抗測定法により電圧を1Vステップで印加して前記キャリア芯材を流れる電流値が1.0
×10
-5(A)に達したときのキャリア芯材電圧値をγ(V)とすると、
153≦γ≦245
を満たすことを特徴とする
画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の
画像形成装置において、
前記被覆層は、0.5μm以上5.0μm以下の厚さを有する樹脂被膜とされたことを特徴とする
画像形成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の
画像形成装置において、
前記トナーは、全トナー粒子に対して含有される正帯電性トナー粒子の個数の割合が1%以下であることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1つの請求項に記載の
画像形成装置において、
前記トナーは、トナー母体粒子の表面に一次粒子が2個以上会合した会合シリカが外添されており、
前記会合シリカは、一次粒子径が10nm以上200nm以下であって、ヘキサメチルジシラザンで疎水化処理されていることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つの請求項に記載の画像形成装置
において、
前記帯電装置には、前記感光体の表面に接触して前記感光体の表面を帯電させる接触帯電ローラ方式が用いられ、
前記現像ローラと前記感光体との前記間隔は0.45mm以上0.55mm以下とされたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の画像形成装置において、
前記感光体に対する前記現像スリーブの周速比は1.5以上2.3以下とされたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアとトナーとを含有する二成分現像剤、その二成分現像剤を用いる現像装置、およびその現像装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成では、感光体等の像担持体上に形成した静電潜像がトナーによって現像され可視化される。この種の現像方式として、従来、現像剤を保持して回転する現像スリーブと感光体との回転方向によって、正転現像方式と逆転現像方式の二つの方式が知られている。これらのうち、逆転現像方式は、感光体の回転方向と現像スリーブの回転方向とが同方向である現像方式であり、現像領域においては、感光体表面と現像スリーブ表面の現像剤とが逆方向から接触することで現像される。そのため、現像ニップ幅を広げて、少ない現像剤量でも現像性を確保することが可能とされ、現像槽のコンパクト化のメリットがある一方で、現像剤との接触時間が短く、カブリ現象などの画像不良が生じやすい問題がある。
【0003】
感光体の周囲には帯電手段として帯電ローラが設けられ、接触帯電ローラ方式や非帯電ローラ方式などの帯電方法が用いられる。これらのうち、接触帯電ローラ方式では、低電圧で十分な表面電位を確保することができ、消費電力削減等のメリットがある反面、接触により帯電させるために感光体に傷をつけたり、フィルミングを生じたりしやすく、帯電むらに起因する画像不良を引き起こしやすいといった問題がある。
【0004】
現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤と、トナーとキャリアとを含む二成分現像剤に分けられる。特に、二成分現像剤は、トナーの帯電量が安定し、高画質画像を得やすいことから広く使用されている。キャリアとしては、トナーを所望の帯電量に安定して帯電させる機能を付与するため、フェライトなどの磁性を有するコア粒子の表面に樹脂が被覆されてなる樹脂被覆キャリアが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来の二成分現像剤では、逆転現像方式と接触帯電ローラ方式をともに用いることでカブリ現象が発生しやすいという問題点があった。特に高湿環境下ではカブリ現象の発生リスクが高くなることから、そのような環境下でも画像不良を低減し得る二成分現像剤とすることが求められた。
【0007】
本発明は、前記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、逆転現像方式と接触帯電ローラ方式をともに用いてもカブリ現象の発生を抑制し得て、現像性に優れた二成分現像剤を提供し、さらに、そのような二成分現像剤に適した現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題に対する本発明の解決手段は、キャリア芯材および前記キャリア芯材を被覆する被覆層を備えたキャリアと、トナーとを含有する二成分現像剤であって、ブリッジ抵抗測定法により電圧を1Vステップで印加し、前記キャリアを流れる電流値が1.0×10
-7(A)に達したときのキャリア電圧値をα(V)、前記電流値が1.0×10
-5(A)に達したときのキャリア電圧値をβ(V)とすると、前記キャリアは、100≦α≦220、かつ、300≦β≦480を満たすことを特徴としている。
【0009】
また、前記構成の二成分現像剤において、前記キャリア芯材は、Mnと、Mgと、Srとを少なくとも含有するフェライト粒子であり、前記ブリッジ抵抗測定法により電圧を1Vステップで印加して前記キャリア芯材を流れる電流値が1.0×10
-5(A)に達したときのキャリア芯材電圧値をγ(V)とすると、150≦γ≦250を満たすことが好ましい。
【0010】
また、前記被覆層は、0.5μm以上5.0μm以下の厚さを有する樹脂被膜とされることが好ましい。
【0011】
また、前記トナーは、全トナー粒子に対して含有される正帯電性トナー粒子の個数の割合が1%以下とされることが好ましい。
【0012】
また、前記トナーは、トナー母体粒子の表面に一次粒子が2個以上会合した会合シリカが外添されて、前記会合シリカは、一次粒子径が10nm以上200nm以下であって、ヘキサメチルジシラザンを疎水化処理剤とするゾルゲルシリカとされてもよい。
【0013】
前記構成に係る二成分現像剤を用いた現像装置も本発明の技術的思想の範疇であり、前記二成分現像剤を用いて、感光体に形成される静電潜像を現像して可視像を形成することを特徴としている。
【0014】
また、前記構成に係る現像装置と、静電潜像が形成される感光体と、前記感光体を帯電させる帯電装置とを備える画像形成装置も本発明の技術的思想の範疇であり、前記現像装置は、前記感光体と所定の間隔を設けて対向され、前記感光体に対して逆方向から回転して接触することで前記トナーを供給する現像スリーブを備え、前記帯電装置は、前記感光体の表面に接触して帯電させる帯電手段を備え、前記間隔は0.45mm以上0.55mm以下とされることを特徴としている。
【0015】
また、前記構成の画像形成装置において、前記感光体に対する前記現像スリーブの周速比は1.5以上2.3以下とされることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トナーの飛散等によるカブリ現象の発生を抑制することが可能となり、長期間にわたって画像不良の少ない高画質画像を安定して形成可能な現像装置および画像形成装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る現像装置および画像形成装置の概略構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る二成分現像剤を模式的に示す断面図である。
【
図3】磁性微粒子の抵抗値測定に用いる測定治具を示す模式図である。
【
図4】前記二成分現像剤のキャリアの抵抗値に係る電圧-電流特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る二成分現像剤、現像装置、および画像形成装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
本発明者らは、種々の環境下でのカブリ現象の原因等について検討を重ね、鋭意研究を進める課程で、二成分現像剤における現像剤抵抗に着目し、キャリアの抵抗値を所定の範囲に制御した構成とすることで、現像性を低下させることなく、カブリ現象の発生を抑制し得ることを見いだした。
【0020】
特に、本発明者らの検討によれば、画像形成装置におけるカブリ現象は、現像バイアスと感光体表面の電位差の小さい側と大きい側の両方で発生するが、それぞれの発生原因は異なるものであることを突き止めた。そして、二成分現像剤において、前記電位差の小さい側のカブリ現象を抑制するための構成と、前記電位差の大きい側のカブリ現象を抑制するための構成とを特定することで、好ましい結果を得られることが判明した。
【0021】
このような二成分現像剤の説明に先立ち、二成分現像剤を用いて感光体の静電潜像を現像して可視像を形成する本発明に係る現像装置、およびその現像装置を備える画像形成装置について説明する。
【0022】
<現像装置および画像形成装置>
図1は、本発明の実施形態に係る二成分現像剤を用いて現像する現像装置40、およびその現像装置40を備える画像形成装置1の概略構成を模式的に示す断面図である。
【0023】
画像形成装置1は、像担持体としての感光体10と、帯電装置20と、露光装置30と、現像装置40と、転写装置50と、クリーニング装置60と、定着装置70とを備えている。画像形成装置1は、これらの各構成要素を収容する筐体80さらに備えている。
【0024】
なお、例示の形態に係る画像形成装置1は、モノクロのプリンタ(具体的にはレーザプリンタ)とされているが、例えば、カラー画像を形成する中間転写方式のカラー画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置1は、この例ではプリンタとしたが、例えば、複写機、複合機またはファクシミリ装置であってもよい。
【0025】
感光体10は、画像形成装置1の本体に回転自在に支持され、回転方向G1(図中では時計回り方向)に回転駆動される。帯電装置20は、感光体10の表面10aを帯電させる。帯電装置20は、導電性のローラ、ブラシ、および弾性ブレード等の導電性部材を、感光体10の表面10aに接触させた狭ギャップ間で放電させることによって感光体10の表面を帯電させる接触帯電方式の帯電手段を備えている。
【0026】
このような帯電手段としては、帯電安定性の観点から、帯電ローラ21を例示することができる。この帯電方式では、導電性を有する帯電ローラ21を感光体10に当接させ、高電圧印加装置25で電圧を印加することによって感光体10を一様に帯電させる。帯電ローラ21は、感光体10の回転に伴って回転方向G1とは反対の回転方向G2(図中では反時計回り方向)に従動回転する。
【0027】
例示の形態では、帯電ローラ21は、回転軸22と、回転軸22上に形成された円筒状の弾性部材23と、弾性部材23上に形成された抵抗層24を備えている。弾性部材23は、感光体10に対する給電を確保するために適当な導電性を有している。抵抗層24は、帯電ローラ21全体の電気抵抗を調整するよう設けられている。
【0028】
露光装置30は、帯電装置20によって帯電された感光体10を露光して静電潜像を形成する。露光装置30は、画像情報に基づいて変調された光を回転駆動される感光体10の表面10aに主走査方向である感光体10の回転軸線方向に繰り返し走査する。
【0029】
現像装置40は、現像スリーブ41と、二成分現像剤100が収容される現像槽42とを備える。現像スリーブ41は、感光体10の表面10aとの間に所定の間隔を設けて対向して設けられ、感光体10に二成分現像剤100を供給する。現像スリーブ41は、内部に磁界発生手段であるマグネットローラが配設されている。二成分現像剤100は、現像スリーブ41に供給されることで、この現像スリーブ41の表面に担持される。
【0030】
現像装置40は、現像スリーブ41に定められた現像バイアスを印加することで、感光体10と現像スリーブ41とに挟まれる領域の現像領域に現像電界を形成する。二成分現像剤100は現像領域に搬送されて、現像電界下で、感光体10上の静電潜像を顕像化する。本実施形態に係る現像装置40では逆転現像方式が採用され、現像スリーブ41の回転方向G3が感光体10の回転方向G1と同方向であり、現像領域においては感光体10に対して現像スリーブ41が逆方向から回転する。感光体10の表面10aと現像スリーブ41の表面に担持された二成分現像剤100とは、逆方向から接触するものとなる。
【0031】
転写装置50は、現像装置40によって形成されたトナー像を用紙等の記録媒体S上に転写する。転写装置50は、高電圧印加装置51で感光体10と転写装置50との間に形成される転写ニップ部TNに所定の高電圧を印加する。
【0032】
クリーニング装置60は、感光体10に残留するトナーを除去し回収する。クリーニング装置60は、クリーニングブレード61と、回収用ケーシング62とを備えている。クリーニングブレード61は、感光体10の表面10aに残留するトナーを除去する。回収用ケーシング62は、クリーニングブレード61によって除去されたトナーを収容する。
【0033】
定着装置70は、転写装置50によって転写されたトナー像を記録媒体S上に定着する。定着装置70は、加熱ローラ71と、加圧ローラ72とを備えている。加圧ローラ72は、加熱ローラ71に押圧されて定着ニップ部FNを形成する。なお、
図1において、符号Fは用紙等の記録媒体Sの搬送方向を示している。
【0034】
このような画像形成装置1において、感光体10と現像スリーブ41との表面同士の間隔は0.45mm以上0.55mm以下とされることが好ましい。本実施形態では、逆転現像方式による現像方法であることから、現像時には二成分現像剤100が感光体10と現像スリーブ41の間に一定量以上保持される可能性がある。
【0035】
その際、感光体10の表面10aと現像スリーブ41の表面との間隔が0.45mm未満であると二成分現像剤100があふれ、現像性の大幅な低下につながるおそれがある。また、二成分現像剤100に含まれるキャリアも、感光体10の表面10aを傷つけるおそれがあり、画像不良を起こす原因になる。一方で、感光体10の表面10aと現像スリーブ41の表面との間隔が0.55mmを超えるとトナー消費量が増加してしまい、現像性が低下する。そのため、感光体10と現像スリーブ41との表面同士の間隔は前記範囲とされることが好ましい。
【0036】
また、感光体10の周速Vopcに対する現像スリーブ41の周速Vsの周速比(Vs/Vopc)は、1.5以上2.3以下とされることが好ましい。周速比が1.5に満たないと、感光体10に対する磁気ブラシの接触機会が減りすぎて、現像されるトナーが枯渇し、現像性が低下するおそれがある。また、周速比が2.3を超えると、二成分現像剤100に対する負荷が大きくなり、感光体10にキャリアが付着しやすくなり、二成分現像剤100に含まれるトナーまたは外添剤によるトナーへの汚染が顕著に発生するおそれがある。そのため、周速比が1.5に満たないと濃度が低くなり、2.3を超えるとトナーの飛散、キャリアの付着あるいは現像スリーブ41の耐久性等の問題が生じる。これに対して、感光体10に対する現像スリーブ41の周速比を前記範囲のものとすることによって、そのような問題の発生を回避して、高い現像性を得ることが可能となる。
【0037】
<二成分現像剤>
図2は、本実施形態に係る二成分現像剤100の構成を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、二成分現像剤100は、キャリア200とトナー300とを含む。キャリア200は、キャリア芯材200aと、そのキャリア芯材200aの表面に形成された被覆層200bとを含む。トナー300は、トナー母体粒子300aと、トナー母体粒子300aの表面に外添された粒子径の異なる複数種類の外添剤300bとを含む。
【0038】
画像形成装置において、前記のように接触帯電ローラ方式により感光体を帯電する構成であると、帯電ローラ由来の帯電むらを生じやすいという問題があった。そのために現像領域においては、現像バイアスと感光体表面の電位差の小さい側では、帯電量分布が広いトナーが飛散して、カブリ現象が発生すると考えられた。そこで、本実施形態の二成分現像剤は、現像バイアスと感光体表面の電位差の小さい側では、帯電性の制御を行って前記の問題を解決することとし、より具体的には、キャリア表面の抵抗値(表面抵抗値)を制御することとしている。
【0039】
また、前記のように逆転現像方式により現像する構成であると、二成分現像剤との接触時間が短くなる傾向にある。負帯電性トナーにおいてキャリアはプラス電荷を帯びているが、現像バイアスから受けるマイナス電荷がキャリアに流れ込むことがある。そのため、逆チャージトナー(正帯電性トナー)をキャリアに引きつけてしまい、現像バイアスと感光体表面の電位差の大きい側では、トナーの飛散を生じやすくなり、それによってカブリ現象が発生すると考えられた。
【0040】
そこで、本実施形態の二成分現像剤は、現像バイアスと感光体表面の電位差の大きい側では、現像バイアスから受けるマイナス電荷を抑制するために、キャリアの抵抗値(体積抵抗値)の制御を行うことで前記問題を解決することとしている。より具体的には、体積抵抗値を高く制御するが、高くしすぎると見かけの現像バイアスと感光体表面の電位差が大きくなって現像性が低下するおそれがあるので、現像性を担保し得る体積抵抗値に制御することとしている。
【0041】
(1)キャリア
本発明の二成分現像剤として、キャリアの抵抗値を以下のように制御する構成とすることで、カブリ現象の発生を抑制し得ることが見いだされた。すなわち、二成分現像剤を構成するキャリアは、ブリッジ抵抗測定法により電圧を1Vステップで印加して、キャリアを流れる電流値が1.0×10
-7(A)に達したときのキャリア電圧値をα(V)、キャリアを流れる電流値が1.0×10
-5(A)に達したときのキャリア電圧値をβ(V)とするとき、次式(A)と次式(B)をともに満たすものとされる。
【0042】
100≦α≦220 …(A)
300≦β≦480 …(B)
撹拌試験を行うことによって得られる前記式(A)は、キャリアの表面抵抗値に相当する。また、前記式(B)はキャリアの体積抵抗値に相当する。二成分現像剤は、これらの条件を満たすキャリアを含有することで、カブリ現象の発生を抑制することが可能とされる。
【0043】
(キャリア芯材)
キャリア芯材としては、磁性を有する粒子を使用することができ、例えば、鉄、銅、ニッケルおよびコバルトなどの磁性金属、ならびにフェライトおよびマグネタイトなどの磁性金属酸化物などを挙げることができる。キャリア芯材が磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。これらの中でも、帯電性能および耐久性に優れるとともに、適した飽和磁化を有するキャリアを実現することができるという観点から、酸化鉄、酸化マンガン、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム等のMn-Mg-Sr系フェライトからなる磁性粒子(フェライトコア)を好適に用いることができる。
【0044】
フェライトには、軟磁性を示すソフトフェライトと、硬磁性を示すハードフェライトとがあるが、本実施形態においてはソフトフェライトであることが好ましい。ハードフェライトは磁石であるため残留磁化が大きく、キャリア同士が互いに付着して二成分現像剤の流動性を阻害したり、キャリアがマグネットローラから離れにくくなったりするおそれがある。これに対して、ソフトフェライトとされることによって、キャリア芯材の残留磁化を小さくでき、二成分現像剤の流動性が良好で、マグネットローラなどから離れやすいキャリアとすることができる。
【0045】
ここで、キャリア芯材は、ブリッジ抵抗測定法により電圧を1Vステップで印加して、キャリア芯材を流れる電流値が1.0×10
-5(A)に達したときの直流電圧をγ(V)とすると、次式(C)を満たすことが好ましい。
【0046】
150≦γ≦250 …(C)
キャリア芯材における電圧値が前記式(C)を満たすことで、キャリアの体積抵抗値への影響を抑えることができる。すなわち、前記式(C)の範囲外であるキャリア芯材は、現像バイアスと感光体表面の電位差の大きい側で、マイナス電荷を引きつけやすく、好ましい結果を得られにくいものとなる。
【0047】
(被覆層)
被覆層は樹脂被膜とされ、含まれる樹脂(以下、被覆樹脂という。)としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。本実施形態では、トナーとの離型性およびキャリア芯材との密着性を両立させる観点から、例えば、シリコーン樹脂またはアクリル変性シリコーン樹脂を含むことが好ましい。これによって、現像時におけるトナーのキャリアからの離型性を向上させることができるので、現像性を良好にすることができる。また被覆層を所望の硬度にすることができ、さらにキャリア芯材との密着性を良好にできるので、長期間にわたってトナーを安定して帯電させる効果を顕著に発現させることができる。
【0048】
前記被覆樹脂の中でも、架橋型シリコーン樹脂を含有することが、より良好な結果を得ることにつながる。架橋型シリコーン樹脂が含まれることによって、現像時におけるトナーのキャリアからの離型性を一層向上させることができるので、現像性を一層良好にすることができる。また、被覆層を所望の硬度にすることができ、さらにキャリア芯材との密着性を一層良好にできるので、長期間にわたってトナーを安定して帯電させる効果をより顕著に発現させることができる。被覆層には、導電材や硬化促進剤を含有させてもよい。
【0049】
被覆層は、樹脂被膜として、0.5μm以上5.0μm以下の厚さを有することが好ましい。より好ましくは、樹脂被膜の厚さを、0.5μm以上3.0μm以下とすることである。
【0050】
樹脂被膜の厚さが0.5μmに満たないと、キャリア芯材の抵抗影響を受けやすくなり、キャリアの表面抵抗値および体積抵抗値が低下する。また、ライフが進むにつれて樹脂被膜の剥離が促進するおそれがあり、キャリアの表面抵抗値に大きな影響を及ぼす。樹脂被膜の厚さが5.0μmを超えると、キャリアの表面抵抗値および体積抵抗値が増加する。現像バイアスと感光体表面の電位差の小さい側では、カブリ現象を生じやすくなり、現像性も低下する。そのため、樹脂被膜に前記範囲の厚さを有する被覆層とすることが好ましい。
【0051】
(被覆層の形成方法)
被覆層は、樹脂組成物でキャリア芯材表面を被覆することで形成される。樹脂組成物は、架橋型シリコーン樹脂の所定量、および必要に応じて導電性粒子、アミノ基含有シランカップリング剤、シリコーン樹脂以外の樹脂、二官能シリコーンオイルなどの添加剤から選ばれる1種または2種以上の適量を混合することによって製造できる。
【0052】
樹脂組成物の一形態としては、樹脂組成物の原料を有機溶媒に溶解または分散させた溶液の形態が挙げられる。有機溶媒としては、シリコーン樹脂を溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、高級アルコール類、ならびにこれらの2種以上の混合溶媒などが挙げられる。この溶液形態の樹脂組成物を被覆用塗液として、キャリア芯材表面に塗布して塗布層を形成し、加熱によって塗布層から有機溶媒を揮発除去し、さらに乾燥時または乾燥後に塗布層を加熱硬化または単に硬化させることによって樹脂被膜とし、キャリアの芯材の表面に被覆層を形成することができる。
【0053】
キャリア芯材への被覆用塗液の塗布方法としては、例えば、キャリア芯材を被覆用塗液に含浸させる浸漬法、キャリア芯材に被覆用塗液を噴霧するスプレー法、流動気流によって浮遊状態にあるキャリア芯材に被覆用塗液を噴霧する流動層法などが挙げられる。
【0054】
塗布層の乾燥には、乾燥促進剤を用いてもよい。乾燥促進剤としては公知のものを使用でき、例えば、ナフチル酸、オクチル酸などの鉛、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛塩などの金属石鹸、エタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。
【0055】
また、塗布層(被覆用塗液)の乾燥の際には硬化促進剤を用いてもよい。その場合、架橋型シリコーン樹脂の硬化促進剤として能力の高い、Sn化合物、Al化合物、Ti化合物などの有機化合物触媒を用いることが好ましい。これらの硬化触媒は架橋型シリコーン樹脂の硬化を促進する働きがある。硬化触媒は、被覆層の樹脂組成物100重量部に対して0.2~5重量部含まれていることが好ましい。
【0056】
(導電材)
樹脂組成物は導電材として、導電性粒子を含むことが好ましい。被覆層に導電性粒子が含まれることによって、二成分現像剤を画像形成装置に充填した直後の例えば初期から2000枚の画像形成にかけてのトナーの帯電量の上昇を緩和することができる。したがって、新しい二成分現像剤を画像形成装置にセットした直後にトナーの帯電量が大きくなることを防ぐことができ、長期間にわたってトナーをより一層安定して帯電させることができる。
【0057】
導電性粒子としては、例えば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物を用いることができる。少ない添加量で導電性を発現させるには、カーボンブラックなどが好適であるが、カラートナーに対してはキャリアの被覆層からのカーボン脱離が懸念される場合がある。その場合、アンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどを用いてもよい。
【0058】
(キャリアの抵抗値測定)
図3は、磁性微粒子の抵抗値測定に用いる測定治具4の模式図である。キャリアの抵抗値は、図示するような測定治具90によって測定することができる。
【0059】
測定治具4は、磁石91、アルミニウム製の電極92、アクリル樹脂製の基盤93を備えている。電極92の間隔は1mmであり、大きさ10mm×40mmの平行平板電極が形成されている。測定に際しては、これらの電極92間に磁性微粒子を200mg挿入し、次いで、表面磁束密度1500ガウス、対向する部分の磁石面積10mm×30mmである磁石91を、N極とS極とが対向するように配置して磁性微粒子を電極92間に保持する。
【0060】
磁性微粒子としてはキャリア、キャリア芯材、キャリア芯材と同様の磁性微粒子等を用いることができる。例えば、2枚の電極92間に所定量のキャリアを配置し、この電極92間にキャリアのブリッジを形成する。その状態で電極92間に1Vステップで直流電圧を印加し、キャリアを流れる電流値を測定する。測定した電流値と、電極間距離および断面積からキャリアの抵抗値を求めることができる。キャリア芯材についても同様にして抵抗値を求めることができる。
【0061】
図4は、測定治具90を用いて二成分現像剤におけるキャリアの抵抗値を測定したときの電圧-電流特性を示すグラフである。電圧を1Vステップで印加して、キャリアを流れる電流値が1.0
×10
-7(A)に達したときのキャリア電圧値はキャリアの表面抵抗値に相当し、前記式(A)を満たすように制御することが好ましい。また、電圧を1Vステップで印加して、キャリアを流れる電流値が1.0
×10
-5(A)に達したときのキャリア電圧値はキャリアの体積抵抗値に相当し、前記式(B)を満たすように制御することが好ましい。このようにキャリアの抵抗値を制御した二成分現像剤とすることで、カブリ現象の発生を抑制することが可能となる。
【0062】
(2)トナー
トナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子の表面に外添された粒子径の異なる複数種類の外添剤とを含む。トナー母体粒子は、結着樹脂、着色剤および離型剤を必須成分とし、それ以外に、電荷制御剤などを含む。
【0063】
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナー用またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。例えば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
着色剤としては、所望の色に応じて種々の着色剤を用いることができ、例えば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。着色剤としては、これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用してもよい。着色剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。離型剤としては、この分野で常用されるものが使用できる。電荷制御剤は、トナーの摩擦帯電性を制御することを目的として添加される。
【0065】
トナーの外添剤としては、この分野で常用されるものを用いることができ、例えば、シリカ、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。外添剤の使用量は、特に制限されないが、例えば、トナー母体粒子の100重量部に対して0.1~3.0重量部とされることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態においては、トナーの外添剤として、トナー母体粒子の表面に一次粒子が2個以上会合した会合シリカを添加してもよい。ここで、会合シリカとは、シリカの一次粒子が2個以上会合したものをいう。
【0067】
会合シリカは、一次粒子径が10nm以上200nm以下であって、ヘキサメチルジシラザンを疎水化処理剤とするゾルゲルシリカであることが好ましい。会合シリカの一次粒子径が、10nm以上200nm以下の範囲内であることによって、トナー同士の凝集を防止し得て、キャリアによるトナーへの帯電を均一にすることができる。加えて、トナーから脱離しにくくなり、外添剤によるキャリア汚染を抑制でき、ライフを通じて安定した抵抗値を担保することが可能となる。
【0068】
また、会合シリカがヘキサメチルジシラザンで疎水化処理されていることによって、高湿環境下における帯電を維持したまま、低湿環境下において、シリカ内部の水分を表面に放出し電気的にリーク効果を持たせることができると考えられる。そのため、感光体との接着力を抑制することが可能となる。
【0069】
このような会合シリカを外添剤に含有させることで、帯電安定性をさらに高めることができ、キャリアの抵抗値を一定に保ちつつ各環境下でのカブリ現象の抑制効果を発揮することができる。例えば、トナー母体粒子100質量部に対し、前記のゾルゲルシリカを0.2~2.0質量部、外添することで最も効果を発揮することができる。
【0070】
また、本実施形態において、トナーは、トナーを構成する全トナー粒子において、全トナー粒子数(全トナー数)に対する正帯電性トナー粒子数(正帯電性トナー数)の割合が1%以下とされることが好ましい。前記のとおり、現像バイアスと感光体表面の電位差が大きい側では、正帯電性トナー粒子がキャリアに引きつけられることでカブリ現象が発生すると考えられる。そこで、トナーを構成する全トナー粒子において、正帯電性トナー粒子の割合を1%以下に制御することで、トナーの飛散を抑え、カブリ現象の低減化を図ることが可能となる。
【0071】
正帯電性トナー粒子の数は、後述する帯電量分布測定装置を用いて各粒子の粒径と帯電量の測定を行い、各帯電量における全トナー粒子に対する正帯電性トナー粒子の個数割合から求めることができる。
【0072】
(3)二成分現像剤の製造方法
本実施形態に係る二成分現像剤を製造する方法について説明する。
【0073】
キャリアに含まれるキャリア芯材は、例えば樹脂添加法またはシリカ粒子添加法により製造することができる。樹脂添加法を用いる方法は、秤量工程と、混合工程と、粉砕工程と、造粒工程と、仮焼工程と、焼成工程と、解砕工程と、分級工程とを含む。シリカ粒子添加法を用いる方法は、秤量工程と、混合工程と、粉砕工程と、造粒工程と、焼成工程と、解砕工程と、分級工程とを含む。そして、得られたキャリア芯材に前記被覆用塗液を塗布する被覆工程を行い、表面に被覆層を形成することでキャリアを製造することができる。
【0074】
トナーは、混練粉砕法や凝集法等の公知の方法によって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミルおよびQ型ミキサなどの混合機によって、外添剤以外のトナー原料を前混合し、得られた原料混合物を混練機によって溶融混練し、冷却固化する。冷却固化後のトナー原料の溶融混練物は、カッターミル、フェザーミルなどによって粗粉砕される。得られた粗粉砕物は、微粉砕される。微粉砕には、ジェットミル、流動層型ジェット粉砕機などを用いることができる。粉砕機は、複数の方向からトナー粒子を含む気流を衝突させることによってトナー粒子同士を衝突させ、トナー粒子の粉砕を行うものである。これにより、非磁性のトナー母体粒子を製造する。さらに、トナー母体粒子に対して外添剤を公知の方法で添加する。
【0075】
二成分現像剤は、公知の混合機を用いて、これらのトナーとキャリアとを混合することによって製造することができる。
【0076】
以上説明した、本実施形態に係る二成分現像剤を用いて、前記構成を有する現像装置および画像形成装置とすることにより、カブリ現象を抑制したトナー像を感光体に形成可能となり、長期間にわたって画像不良の少ない高画質画像を安定して形成することが可能となる。
【0077】
<実施例>
以下、本発明に係る二成分現像剤の実施例とその比較例について説明する。
【0078】
[実施例1~5]
実施例1~5では、二成分現像剤に含まれるトナーを共通のものとし、キャリアの抵抗値をそれぞれ変化させて構成した。また、実施例1~5に対する比較例として、比較例1~4では、二成分現像剤に含まれるトナーを実施例1~5と共通のものとし、キャリアの抵抗値を実施例1~5とは異なる構成とした。
【0079】
(1)キャリアの作製
9種類のキャリア(キャリア1~キャリア9)を以下のようにして作製した。
【0080】
(キャリア1)
フェライトからなる磁性微粒子(フェライトコア)であるキャリア芯材の表面に被覆層を形成した。被覆用塗液としては、シリコーン樹脂(数平均分子量:約15000)の100重量部、導電材としてカーボンブラック(一次粒子径25nm、吸油量150ml/100g)の3重量部、硬化剤としてオクチル酸の5重量部を、トルエンに溶解および分散し、調製した。この被覆用塗液を、スプレー被覆装置によりキャリア芯材に被覆し、キャリア1を作製した。キャリア1の体積平均粒子径は40μmとし、被覆層(樹脂被膜)の厚さは2.0μmとした。
【0081】
(キャリア2~9)
キャリア2~キャリア9は、シリコーン樹脂および導電材の部数を調整し作製した。キャリア3、キャリア4、キャリア6、およびキャリア9は、キャリア芯材および被覆層の組成において共通のものとする一方、異なる抵抗値により作製した。体積平均粒子径はいずれも40μmとし、被覆層の厚さは2.0μmまたは1.0μmとした。
【0082】
(体積平均粒子径の測定)
キャリア1~キャリア9の体積平均粒子径は、マイクロトラック(MT3000、日機装株式会社製)を用いて測定した。エマルゲン109P(ポリオキシエチレンラウリルエーテルHLB13.6、花王株式会社製)の5%水溶液10mlに測定試料約10~15mgを添加し、超音波分散機で1分間分散させ、このうち約1mlをマイクロトラックの所定箇所に加えた後、1分間攪拌し散乱光強度が安定したのを確認して、測定を行った。
【0083】
(抵抗値の測定)
前記の測定治具90(
図3参照)によって、キャリア1~キャリア9の抵抗値およびキャリア芯材の抵抗値を測定した。
【0084】
電圧を1Vステップで印加し、キャリアを流れる電流値が1.0×10
-7(A)に達したときのキャリア電圧値(キャリアの表面抵抗値)α(V)は、キャリア1~キャリア5では100≦α≦220(前記式(A))の範囲内とした。キャリアを流れる電流値が1.0×10
-5(A)であるときのキャリア電圧値(キャリアの体積抵抗値)β(V)は、キャリア1~キャリア5では300≦β≦480(前記式(B))の範囲内とした。
【0085】
また、キャリア芯材を流れる電流値が1.0×10
-5(A)であるときのキャリア芯材の電圧値γ(V)は、キャリア1~キャリア9で150≦γ≦250(前記式(C))の範囲内とした。
【0086】
これらのキャリア1~キャリア9における、体積平均粒子径、被覆層の厚さ、キャリア電圧値、およびキャリア芯材電圧値を、表1にまとめた。実施例1~5にはキャリア1~5をそれぞれ用い、比較例1~4にはキャリア6~キャリア9をそれぞれ用いた。
【0087】
【0088】
(2)トナーの作製
実施例1~5および比較例1~4の二成分現像剤に共通のトナーとして、トナー1を次のように作製した。
【0089】
(トナー1)
トナー母体粒子については、非晶質ポリエステル樹脂Aの60重量部、非晶質ポリエステル樹脂Bの20重量部、カーボンブラックの15重量部、ホウ素化合物(LR-147、日本カーリット株式会社製)の1重量部、およびエステルワックスの3重量部を、混合機としてのヘンシェルミキサで10分間混合した後、混練分散処理装置(ニーディックスMOS140-800、三井鉱山株式会社製)で溶融混練した。溶融混練物を冷却後、その混練物をカッティングミルで粗粉砕し、その後、ジェット式粉砕機(IDS-2型、日本ニューマチック工業株式会社製)によって微粉砕し、微粉砕後、風力分級機(MP-250型、日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて分級を行い、トナー1のトナー母体粒子を作製した。トナー1は、トナー母体粒子の体積平均粒子径を6.8μmとした。
【0090】
外添剤には、一次粒子径が20nm~40nmの導電性シリカ(RX200、日本アエロジル株式会社製)を用い、トナー母体粒子の100質量部、導電性シリカの1.5質量部を計量して容器に投入した。ヘンシェルミキサによりトナー母体粒子と導電性シリカとを混合し、付着させ、270メッシュの篩にかけてトナー1を得た。
【0091】
(正帯電性トナー粒子の割合)
トナー1において、全トナー粒子数に対する正帯電性トナー粒子数の割合は1%以下とされることが好ましい。正帯電性トナー粒子の数は、帯電量分布測定装置(E-SPART ANALYZER、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて算出した。この場合、温度25℃、湿度50%の環境中において、二成分現像剤を磁気輪に付着させ、窒素ガスを吹き付けてトナー粒子を測定部に分離落下させ、帯電量を-400μC/gから100μC/gとして、各帯電量における全トナー粒子の個数に対する正帯電性トナー粒子の個数割合を算出した。トナー1における正帯電性トナー粒子の個数割合は0.2%であった。
【0092】
(3)二成分現像剤の作製
キャリア1~キャリア5のいずれかのキャリアと、トナー1とを混合することによって、実施例1~5に係る二成分現像剤を作製した。キャリアとトナーとの混合は、キャリアの94重量部とトナーの6重量部とをV字型混合器(V-5、株式会社徳寿工作所製)に投入し、20分間撹拌混合することにより行った。
【0093】
実施例1~5に対する比較例として、キャリア6~キャリア9のいずれかのキャリアと、トナー1とを実施例1~5と同様に混合することによって、比較例1~4の二成分現像剤を作製した。
【0094】
各実施例および比較例における、キャリア1~キャリア9と、トナー1との組み合わせを、後述の表2にまとめた。
【0095】
(二成分現像剤の評価)
実施例1~5および比較例1~4の二成分現像剤を用いて、カブリ現象の発生の有無および現像性について、次の方法によって評価した。
【0096】
(カブリ現象の評価)
カブリ現象の評価については、評価機として画像形成装置(デジタルモノクロ複合機、MX-M4070、シャープ株式会社製)を改造して用いた。各実施例および比較例の二成分現像剤を画像形成装置に充填し、画像部と非画像部とを含む画像を500枚印字後、感光体の表面電位を-600Vに規定し、現像バイアスを調整した。そして、現像バイアスと感光体の表面電位との電位差を、電位差の小さい側で200V、電位差の大きい側で350Vとして、各電位差で得られた画像における非画像部の白色度を、カブリ測定器(分光式色差計、日本電色工業製)を用いて測定し、カブリ現象の抑制性(耐カブリ性)を評価した。
【0097】
耐カブリ性の評価基準は次のとおりである。
【0098】
◎:極めて良好 (白色度が0.5以下)
○:良好 (白色度が0.6以上1.0以下)
△:可、許容範囲内 (白色度が1.1以上1.5以下)
×:不良 (白色度が1.6以上)
(現像性の評価)
現像性の評価については、評価機として画像形成装置(デジタルモノクロ複合機、MX-M4070、シャープ株式会社製)を改造して用いた。各実施例および比較例の二成分現像剤を画像形成装置に充填し、500枚印字後、感光体の表面電位を-600Vに規定し、現像バイアスを調整した。そして、現像バイアスと感光体の表面電位との電位差を、電位差の小さい側で200V、電位差の大きい側で350Vとして、各電位差で得られた画像における画像濃度を分光測色濃度計(X-Rite、ビデオジェット・エックスライト株式会社製)によって測定し、現像性を評価した。
【0099】
現像性の評価基準は次のとおりである。
【0100】
◎:極めて良好 (画像濃度が1.5以上)
○:良好 (画像濃度が1.4以上1.5未満)
△:可 (画像濃度が1.3以上1.4未満)
×:不良 (画像濃度が1.3未満)
実施例1~5および比較例1~4の二成分現像剤の各評価結果および総合評価結果を表2に示す。
【0101】
【0102】
以上の結果から、実施例1~5は、カブリ現象の発生を抑制することができ、さらに現像性にも優れていることがわかる。特に、実施例1~5は、キャリア電圧値α、β(V)が前記式(A)および前記式(B)を満たすキャリア1~キャリア5をそれぞれ用いており、耐カブリ性および現像性で良好な結果を得られた。これに対して、比較例1~4では、前記式(A)および前記式(B)の範囲外にあるキャリア6~9を用いたことで、カブリ現象を生じたり、画像濃度が不良であったりする結果となった。
【0103】
[実施例6~9]
実施例6~9では、二成分現像剤に含まれるトナーはトナー1を用いて共通のものとし、キャリア芯材の抵抗値を変化させてそれぞれ構成した。
【0104】
(キャリア10~13)
キャリア1と同様に、キャリア芯材にはフェライトからなる磁性微粒子(フェライトコア)を用い、表面に被覆層を形成した。被覆用塗液としては、シリコーン樹脂(数平均分子量:約15000)の100重量部、導電材としてカーボンブラック(一次粒子径25nm、吸油量150ml/100g)の3重量部、硬化剤としてオクチル酸の5重量部を、トルエンに溶解および分散し、調製した。この被覆用塗液を、スプレー被覆装置によりキャリア芯材に被覆し、キャリア10を作製した。
【0105】
キャリア11では、キャリア10と同組成とし、キャリア抵抗値およびキャリア芯材抵抗値を異ならせて作製した。キャリア12、13では、シリコーン樹脂および導電材の部数を調整して作製した。
【0106】
これらのキャリア10~13は、いずれも体積平均粒子径を40μmとし、被覆層(樹脂被膜)の厚さを2.0μmとした。
【0107】
キャリア10~キャリア13における、体積平均粒子径、被覆層の厚さ、キャリア電圧値、およびキャリア芯材電圧値を、表3にまとめた。実施例6~9には、キャリア10~キャリア13をそれぞれ用いた。
【0108】
【0109】
(二成分現像剤の評価)
実施例6~9の二成分現像剤を用いて、カブリ現象の発生の有無および現像性について、前記実施例1~5と同様の方法によって評価した。表4に、実施例6~9の二成分現像剤の各評価結果および総合評価結果を示す。比較参考のために前記実施例1についても表4に示す。
【0110】
【0111】
以上の結果から、実施例6~9は、耐カブリ性および現像性が良好であることがわかる。特に、実施例6、実施例7、実施例1では、キャリアを流れる電流値が1.0×10
-7(A)であるときのキャリア芯材電圧値γ(V)について、前記式(C)を満たすキャリア10、キャリア11、キャリア1をそれぞれ用いており、耐カブリ性および現像性で良好な結果が得られた。
【0112】
[実施例10~13]
実施例10~13では、二成分現像剤に含まれるトナーはトナー1を用いて共通のものとし、キャリアにおける被覆層の厚さを異ならせて構成した。
【0113】
(キャリア14~17)
キャリア14~キャリア17のそれぞれについて、キャリア芯材および被覆層の被覆用塗液はキャリア1と共通とした。ただし、被覆層の厚さ(樹脂被膜の厚さ)は、0.5μm以上3.0μm以下であるキャリア14およびキャリア15と、当該範囲外の厚さであるキャリア16およびキャリア17とを用いて二成分現像剤を構成した。
【0114】
キャリア14~キャリア17は、いずれも、キャリアを流れる電流値が1.0×10
-7(A)であるときのキャリア電圧値α(V)を前記式(A)の範囲内とし、キャリアを流れる電流値が1.0×10
-5(A)であるときのキャリア電圧値β(V)を前記式(B)の範囲内とした。また、キャリア芯材を流れる電流値が1.0×10
-5(A)であるときのキャリア芯材の電圧値γ(V)についても、前記式(C))の範囲内である173Vで共通とした。
【0115】
これらのキャリア10~キャリア13における、体積平均粒子径、被覆層の厚さ、キャリア電圧値、およびキャリア芯材電圧値を、表5にまとめた。実施例10~13には、それぞれ、キャリア14~キャリア17を用いた。
【0116】
【0117】
(二成分現像剤の評価)
実施例10~13の二成分現像剤を用いて、耐カブリ性および現像性について、前記実施例1~9と同様の方法によって評価した。表6に、実施例10~13の二成分現像剤の各評価結果および総合評価結果を示す。比較参考のために前記実施例1についても表6に示す。
【0118】
【0119】
以上の結果から、実施例10~13は、耐カブリ性および現像性が良好であることがわかる。特に、実施例10、実施例11、実施例1では、被覆層の厚さが0.5μm以上3.0μm以下であるキャリア14、キャリア15、キャリア1をそれぞれ用いており、耐カブリ性および現像性において、より一層良好なものとなった。なお、実施例12では、被覆層の厚さが0.5μmに満たないため、キャリア芯材の抵抗影響を受けやすくなったものと考えられるが、現像性においては良好な結果が得られ、総合評価としては許容される範囲内の結果であった。
【0120】
[実施例14、15]
実施例14、15では、二成分現像剤に含まれるキャリアにキャリア1を用いて共通のものとした。トナーは、全トナー粒子に対する正帯電性トナー粒子の個数割合を実施例14と実施例15とで異ならせて構成した。
【0121】
(トナー2およびトナー3)
トナー2およびトナー3は、いずれもトナー母体粒子と外添剤の構成においてトナー1と共通とした。全トナー粒子数に対する正帯電性トナー粒子数の割合については、トナー2では0.9%とし、トナー3では1.3%とした。なお、各実施例における二成分現像剤に含まれるトナーの構成については、後述の表8にまとめた。
【0122】
(二成分現像剤の評価)
実施例14、15の二成分現像剤を用いて、耐カブリ性および現像性について、前記実施例1~13と同様の方法によって評価した。表7に、実施例14、15の二成分現像剤の各評価結果および総合評価結果を示す。比較参考のために前記実施例1についても表7に示す。
【0123】
【0124】
以上の結果から、実施例14および実施例15は、耐カブリ性および現像性が良好であることがわかる。特に、実施例14と実施例1は、全トナー粒子数に対する正帯電性トナー粒子数の割合が1%以下であるトナー2、トナー1をそれぞれ用いており、耐カブリ性および現像性で良好な結果が得られた。
【0125】
実施例15では、全トナー粒子数に対する正帯電性トナー粒子数の割合が1.3%であって、1%を超えるトナー3を用いた。そのため、現像バイアスと感光体表面の電位差が大きい側で、逆チャージトナー(正帯電性トナー)をキャリアに引きつけて、トナーの飛散が生じやすくなり、許容範囲内ではあるがカブリ現象を生じたと考えられる。したがって、全トナー粒子数に対する正帯電性トナー粒子数の割合は1%以下であることが好ましい。
【0126】
[実施例16、17]
実施例16、17は、二成分現像剤に含まれるトナーを共通とする一方、キャリアにはキャリア1、キャリア3をそれぞれ用いて構成した。すなわち、実施例16の二成分現像剤にはキャリア1とトナー4を用い、実施例17の二成分現像剤にはキャリア3とトナー4を用いた。
【0127】
(トナー4)
トナー4は、トナー母体粒子の表面に、一次粒子径が10nm以上200nm以下である一次粒子が2個以上会合し、かつ、ヘキサメチルジシラザンを疎水化処理剤としたゾルゲルシリカを外添して作製した。ゾルゲルシリカの外添量は、トナー母体粒子の100質量部に対してゾルゲルシリカを0.2~2.0質量部とすることが好ましい。トナー母体粒子の構成はトナー1のものと共通とした。
【0128】
以上の実施例で示した二成分現像剤に含まれるトナー1~4の各構成について表8に示す。
【0129】
【0130】
(二成分現像剤の評価)
実施例16、17の二成分現像剤を用いて、耐カブリ性および現像性について、前記実施例1~15と同様の方法によって評価した。表8に、実施例16、17の二成分現像剤の各評価結果および総合評価結果を示す。比較参考のために前記実施例1および実施例3についても表9に示す。
【0131】
【0132】
以上の結果から、実施例16および実施例17は、耐カブリ性および現像性が良好であることがわかる。特に、会合シリカのゾルゲルシリカを外添したトナー4を用いたことで、トナー1を用いた実施例1および実施例3と比較して、実施例16および実施例17は、トナー同士の凝集を防止でき、ライフを通じた帯電安定性が確保されて、現像バイアスと感光体の表面電位との電位差が小さい側でのカブリ現象を良好に抑えることができた。
【符号の説明】
【0133】
1 画像形成装置
10 感光体
20 帯電装置
21 帯電ローラ
40 現像装置
41 現像スリーブ
42 現像槽
100 二成分現像剤
200 キャリア
200a キャリア芯材
200b 被覆層
300 トナー
300a トナー母体粒子
300b 外添剤