(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20241125BHJP
G03G 9/097 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G03G9/08 381
G03G9/097 374
(21)【出願番号】P 2020151106
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】田村 順一
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正治
(72)【発明者】
【氏名】岡村 竜次
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 大輔
(72)【発明者】
【氏名】土川 黎
(72)【発明者】
【氏名】溝尾 祐一
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-338712(JP,A)
【文献】特開2012-008397(JP,A)
【文献】特開2013-020244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08
G03G 9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理前トナー粒子と無機微粒子とを混合し混合物を得る混合工程、および該混合物を熱風により熱処理して熱処理後トナー粒子を得る熱処理工程を有するトナーの製造方法であって、
該熱処理前トナー粒子は、
(i)個数平均粒径が3.0μm以上5.0μm以下であり、
(ii)2μm以下の粒子の割合が5個数%以上20個数%以下であり、
該無機微粒子は、一次粒子の個数平均粒子径が5nm~30nmであり、
該混合物中において、該熱処理前トナー粒子に対する該無機微粒子の被覆率が40%~85%
であり、粒径が3μm以下の熱処理前トナー粒子に対する該無機微粒子の被覆率が0%~20%であることを特徴とするトナーの製造方法。
【請求項2】
粒径が3μm以下の該熱処理前トナー粒子の凝集度が30%以上であり、粒径が3μmより大きい該熱処理前トナー粒子の凝集度が20%以下である請求項1に記載のトナーの製造方法。
【請求項3】
該熱処理工程において用いられる装置が、
(1)該トナー粒子の熱処理が行われる円筒形状の処理室と、
(2)該処理室の中心軸上に、該処理室の下端部から上端部に向けて突出するように配置された、断面が略円形状である柱状部材と、
(3)該処理室に該トナー粒子を供給するためのトナー粒子供給手段と、
(4)供給された該トナー粒子を熱処理するための熱風を供給する熱風供給手段と、
(5)該処理室の下端部側に設けられたトナー粒子排出口から、熱処理された該トナー粒子を処理室外に排出し、回収する回収手段と、
を有し、
該熱風供給手段は、熱風が該処理室の内周面に沿って回転しながら供給されるように設けられ、
該トナー粒子供給手段は、該処理室の外周面に設けられた複数の粒子供給口により構成され、
該トナー粒子排出口は、該トナー粒子の旋回方向を維持するように、該処理室の外周部に設けられた装置である請求項1
または2に記載のトナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式、トナージェット方式に用いられるトナーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、高い生産性が要求されるようになってきている。高い現像性や転写性を達成するため、トナー粒子の熱球形化処理が有効である(特許文献1)。これは熱処理によって大粒径微粒子がトナー粒子の表面へ固着することでトナー同士にスペーサー効果が発現するためと考えられる。またトナーにおいては、小粒径化による高画質化が進んでいる。小粒径化により細線の再現性が向上するなどのメリットが存在する。小粒径化することで付着力も増大するため、外添剤によるスペーサー効果など外添剤の固着や円形度アップなど、熱球形化処理はより重要度が増している。小粒径トナーに対して熱球形化処理を行うと、トナー粒子の合一により粒径の増大や分布のブロード化など、弊害が大きくなる傾向にあった。小粒径トナーの製造時に熱球形化を行うためには、トナー粒子の合一による粒径の増大や分布のブロード化を抑える必要があるという点に関して、更に改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記の如き問題点を解決し、熱球形化処理時の粒径増加を抑制するとともに、粒子を選択的に合一させることで粒度分布のシャープなトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱処理前トナー粒子と無機微粒子とを混合し混合物を得る混合工程、および該混合物を熱風により熱処理して熱処理後トナー粒子を得る熱処理工程を有するトナーの製造方法であって、
該熱処理前トナー粒子は、
(i)個数平均粒径が3.0μm以上5.0μm以下であり、
(ii)2μm以下の粒子の割合が5個数%以上20個数%以下であり、
該無機微粒子は、一次粒子の個数平均粒子径が5nm~30nmであり、
該混合物中において、該熱処理前トナー粒子に対する該無機微粒子の被覆率が40%~85%であり、粒径が3μm以下の熱処理前トナー粒子に対する該無機微粒子の被覆率が0%~20%であることを特徴とするトナーの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、熱球形化処理時の粒径増加を抑制するとともに、小粒径トナーの粒度分布がシャープになるトナーの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係るトナーの製造方法に用いられる熱処理装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
小粒径トナーの熱球形化処理を行うと、トナー粒子は合一しやすくなり、粒径増大や分布のブロード化など、弊害が大きくなる傾向にあった。そのため、多量の外添剤を被覆させることで合一を抑制しようとしたが、過剰に外添剤を被覆させると微粉の合一も抑制してしまうため、粒度分布をシャープにすることはできなかった。本発明者らがこの点を改良しようと検討を進めた結果、上記の熱処理前のトナー粒子に対し、無機微粒子の粒径を上記範囲とし、さらに無機微粒子の被覆率を上記範囲とすることで上記の弊害なく小粒径トナーの熱球形化を行うことに成功した。
【0009】
本発明は、熱処理前トナー粒子と無機微粒子とを混合し混合物を得る混合工程、および該混合物を熱風により熱処理して熱処理後トナー粒子を得る熱処理工程を有する。
該熱処理前トナー粒子は、
(i)個数平均粒径が3.0μm以上5.0μm以下であり、
(ii)2μm以下の割合が5個数%以上20個数%以下である。
該無機微粒子は、一次粒子の個数平均粒子径が5nm~30nmであり、
該混合物中において、該熱処理前トナー粒子に対する該無機微粒子の被覆率が40%~85%である。
本発明で弊害なく小粒径トナーの熱球形化を行うことが可能となったメカニズムについては現状確定には至っていないが、本発明者らは以下のように想定している。
本発明では、熱処理前トナー粒子の粒径等や無機微粒子の粒径等を上記範囲とすることでトナー粒子の流動性が良好となり、熱球形化時の合一による粒径増大や分布のブロード化を抑制できる。さらに、適度な被覆率により、トナー粒子に含まれている2μm以下の微粉の凝集性は保たれることで、熱球形化時に合一し、微粉の少ないシャープな粒度分布が得られると推測している。上記トナー粒子の個数平均粒径が5.0μmより大きければ上記課題は発生せず、3μm未満であると上記範囲でも上記課題を解決できない。また、上記無機微粒子の粒径が30nmより大きいと流動性が低下することで、粒径が増大してしまい、5nm未満であると微粉の合一が低下してしまう。また、上記被覆率が40%未満では流動性が足らず、粒径が増大してしまい、85%より大きいと微粉の合一が起こらず分布がシャープにならない。
【0010】
また、凝集度を適正な範囲とすることで微粉の合一と粒径増大の抑制とに効果があり、さらに良好な粒度分布が得られる。該凝集度として、該熱球形化処理前のトナー粒子中、粒径が3μm以下の粒子の凝集度が高く、粒径が3μmより大きい粒子の凝集度が低いことが良い。具体的には粒径が3μm以下の粒子の凝集度が30%以上で、かつ粒径が3μmより大きい粒子の凝集度が20%以下であるとき、微粉は合一し、粒径増大は抑えられ、良好な粒度分布が得られる。
【0011】
さらに、粒度分布を良化させるためには、粒径が3μm以下のトナー粒子に対する無機微粒子の被覆率が0%~20%となっていることが良い。その結果、微粉の合一がより促進されながら粒径が3μmより大きいトナー粒子に対する無機微粒子の被覆率は40%~85%となっていることで粒径増大が抑制されるため、より粒度分布がシャープになる。
3μm以下のトナー粒子に対する無機微粒子の被覆率を0%~20%とし、かつ3μmより大きいトナー粒子に対する無機微粒子の被覆率を40%~85%とする方法としては、特に制限はない。例えば分級機によりそれぞれの粒径に分離後、それぞれ別に外添する方法が挙げられる。
次に、本発明の製造方法によって、トナー微粒子を製造する手順について説明する。
【0012】
<トナー微粒子の製造法>
次に、本発明の製造方法によって、トナー微粒子を製造する手順について説明する。
まず、原料混合工程では、トナー内添剤として、少なくとも結着樹脂、着色剤を所定量秤量して配合し、混合する。必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤、該離型剤を分散させる分散剤、帯電制御剤などを混合してもよい。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等が挙げられる。
【0013】
更に、上記で配合し、混合したトナー原料を溶融混練して、樹脂類を溶融し、その中の着色剤等を分散させる。該溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産できる等の優位性から、1軸または2軸押出機が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が一般的に使用される。更に、トナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水冷等で冷却する冷却工程を経て冷却される。
【0014】
上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕される。更に、イノマイザー(ホソカワミクロン社製)、クリプトロン(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボミル(ターボ工業社製)等の機械式粉砕機で微粉砕される。粉砕工程では、このように段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。
【0015】
続いて、得られたトナー用粉体粒子を熱処理工程で
図1のような熱処理装置を用いて球形化処理を行う。
本発明のトナーの製造方法においては、熱処理工程の前に、得られたトナー用粉体粒子に無機微粒子等を添加することが重要である。トナー用粉体粒子に無機微粒子等を添加する方法としては、トナー用粉体粒子と公知の各種外添剤を所定量配合し、粉体にせん断力を与える高速撹拌機を外添機として用いて、撹拌・混合する。粉体にせん断力を与える高速撹拌機としては、ヘンシェルミキサー、メカノハイブリッド(日本コークス社製)、スーパーミキサー、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)等が挙げられる。
続いて、熱処理工程で
図1のような熱処理装置を用いて、トナー粒子の表面に無機微粒子を熱固着させる。
【0016】
以下、
図1に示す熱処理装置を用いて、樹脂粒子に熱処理を実施する方法を具体的に例示する。
原料定量供給手段1により定量供給された樹脂粒子は、圧縮気体流量調整手段2により調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4により均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる円筒形状の処理室6に導かれる。熱処理装置は処理室6にトナー粒子を供給するためのトナー粒子供給手段を有する。トナー粒子供給手段は、処理室6の外周面に設けられた複数の粒子供給口により構成される。
【0017】
このとき、処理室6に供給された樹脂粒子は、処理室6内に設けられた樹脂粒子の流れを規制するための規制手段(柱状部材)9によって、その流れが規制される。このため処理室6に供給された樹脂粒子は、処理室6内かつ規制手段(柱状部材)9の外を旋回しながら熱処理された後、冷却される。規制手段(柱状部材)9は、処理室6の中心軸上に、処理室6の下端部から上端部に向けて突出するように配置される。処理室6の中心軸に垂直な規制手段(柱状部材)9の断面の形状は略円形状である。
供給された樹脂粒子を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13により、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度により、熱風の旋回を制御することができる。処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段7の出口部における温度が上記の範囲内であれば、樹脂粒子を加熱しすぎることによる粒子の融着や合一を防止しつつ、粒子を均一に処理することが可能となる。
【0018】
熱風は熱風供給手段7から供給される。さらに熱処理された熱処理樹脂粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は-20℃以上30℃以下であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理樹脂粒子を効率的に冷却することができ、樹脂粒子の均一な熱処理を阻害することなく、熱処理樹脂粒子の融着や合一を防止することができる。また、冷風の絶対水分量は、0.5g/m3以上15.0g/m3以下であることが好ましい。
【0019】
次に、冷却された熱処理樹脂粒子は、処理室6の下端部側に設けられたトナー粒子排出口15から、熱処理されたトナー粒子を処理室外に排出され回収手段10によって回収される。トナー粒子排出口15は、トナー粒子の旋回方向を維持するように、処理室の外周部に設けられている。なお、回収手段10の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それにより吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された樹脂粒子の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、回収手段10も、旋回された樹脂粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に接線方向に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口14から供給される熱処理前樹脂粒子の旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前樹脂粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前樹脂粒子の分散性がさらに向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理樹脂粒子を得ることができる。
【0020】
熱処理前のトナー粒子の平均円形度をC1とし、熱処理後のトナー粒子の平均円形度をC2としたとき、本発明に係るトナーの製造方法によって、該C1および該C2が下記式(1)を満たすトナー粒子が得られる。
0.010 ≦ C2-C1 式(1)
【0021】
<トナーの原料>
次に、本発明で使用する結着樹脂及び着色剤を少なくとも含むトナー微粒子の原材料について説明する。
【0022】
<結着樹脂>
電子写真に用いられるトナーに用いられる結着樹脂としては、一般的な樹脂を用いることができ、例えば以下のものが挙げられる。ポリエステル樹脂、スチレン-アクリル酸共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など。この中でも、低温定着性を良好にするという観点から非晶性ポリエステル樹脂が用いられ、低温定着性と耐ホットオフセット性とを両立させるという観点から、低分子量ポリエステルと高分子量ポリエステルとを併用することが知られている。また、さらなる低温定着性の向上と保管時の耐ブロッキング性の向上とを図るという観点から結晶性ポリエステルを可塑剤として用いることもある。
【0023】
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
該着色剤としては、公知の有機顔料若しくは油性染料、カーボンブラック、又は磁性体などが挙げられる。
シアン系着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物などが挙げられる。
【0024】
マゼンタ系着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物などが挙げられる。
イエロー系着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物などが挙げられる。
黒色系着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、又は、前記イエロー系着色剤、マゼンタ系着色剤、及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが挙げられる。
該着色剤は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0025】
<離型剤>
必要に応じて、トナーの加熱定着時にホットオフセットの発生を抑制する離型剤を用いてもよい。該離型剤としては、低分子量ポリオレフィン類、シリコーンワックス、脂肪酸アミド類、エステルワックス類、カルナバワックス、炭化水素系ワックスなどが一般的に例示できる。
【0026】
<無機微粒子>
本発明のトナーの製造方法においては、無機微粒子を含有させることが重要である。無機微粒子は外添剤としてトナー粒子と混合する。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、個数平均粒径が5nm以上30nm以下であることが好ましい。耐久安定性を向上させるために、一次粒子の個数平均粒径が50nm~200nmの無機微粉体を併用してもよい。
無機微粒子は、トナー粒子に対して被覆率が40%以上85%以下となるように添加量を調整する。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
【0027】
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、下記の精密粒度分布測定装置と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の下記の専用ソフトを用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
50μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)
専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)
【0028】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を1μm以上30μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下のとおりである。
【0029】
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として下記の「コンタミノンN」をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
コンタミノンN:非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製。
【0030】
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの下記の超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
超音波分散器:Ultrasonic Dispension System Tetora150(日科機バイオス社製)
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
【0031】
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0032】
<トナー粒子の個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法の(7)の工程において、専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、分析/個数統計値(算術平均)画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0033】
<平均円形度の測定方法>
トナー粒子の平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
具体的な測定方法は、以下のとおりである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2mL加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(「VS-150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
【0034】
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した前記フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE-900A」(シスメックス社製)を使用した。前記手順に従い調整した分散液を前記フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定し、トナー粒子の平均円形度を求める。
【0035】
測定にあたっては、測定開始前に下記の標準ラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
標準ラテックス粒子:Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈。
【0036】
尚、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.985μm以上、39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
【0037】
<被覆率の算出>
本発明における被覆率Xは、日立超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡S-4800((株)日立ハイテクノロジーズ)にて撮影された磁性トナー表面画像を、下記の画像解析ソフトにより解析して算出する。
画像解析ソフト:Image-Pro Plus ver.5.0((株)日本ローパー)
S-4800の画像撮影条件は以下のとおりである。
【0038】
(1)試料作製
試料台(アルミニウム試料台15mm×6mm)に導電性ペーストを薄く塗り、その上にトナーを吹きつける。さらにエアブローして、余分なトナーを試料台から除去し十分に乾燥させる。試料台を試料ホルダにセットし、試料高さゲージにより試料台高さを36mmに調節する。
【0039】
(2)S-4800観察条件設定
被覆率Xの算出は、S-4800の反射電子像観察により得られた画像を用いて行う。反射電子像は2次電子像と比べて無機微粒子のチャージアップの影響を受けにくく、試料の組成変化に敏感であるため、被覆率Xを精度良く測定することができる。
S-4800の鏡体に取り付けられているアンチコンタミネーショントラップに液体窒素を溢れるまで注入し、30分間置く。S-4800の「PC-SEM」を起動し、フラッシング(電子源であるFEチップの清浄化)を行う。画面上のコントロールパネルの加速電圧表示部分をクリックし、[フラッシング]ボタンを押し、フラッシング実行ダイアログを開く。フラッシング強度が2であることを確認し、実行する。フラッシングによるエミッション電流が20~40μAであることを確認する。試料ホルダをS-4800鏡体の試料室に挿入する。コントロールパネル上の[原点]を押し試料ホルダを観察位置に移動させる。
【0040】
加速電圧表示部をクリックしてHV設定ダイアログを開き、加速電圧を[0.8kV]、エミッション電流を[20μA]に設定する。オペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、信号選択を[SE]に設置し、SE検出器を[上(U)]および[+BSE]を選択し、[+BSE]の右の選択ボックスで[L.A.100]を選択し、反射電子像で観察するモードにする。同じくオペレーションパネルの[基本]のタブ内にて、電子光学系条件ブロックのプローブ電流を[Normal]に、焦点モードを[UHR]に、WDを[3.0mm]に設定する。コントロールパネルの加速電圧表示部の[ON]ボタンを押し、加速電圧を印加する。
【0041】
(3)焦点調整
操作パネルのフォーカスつまみ[COARSE]を回転させ、ある程度焦点が合ったところでアパーチャアライメントの調整を行う。コントロールパネルの[Align]をクリックし、アライメントダイアログを表示し、[ビーム]を選択する。操作パネルのSTIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を回転し、表示されるビームを同心円の中心に移動させる。次に[アパーチャー]を選択し、STIGMA/ALIGNMENTつまみ(X,Y)を一つずつ回し、像の動きを止める又は最小の動きになるように合わせる。アパーチャダイアログを閉じ、オートフォーカスで、ピントを合わせる。その後、倍率を50000(50k)倍に設定し、上記と同様にフォーカスつまみ、STIGMA/ALIGNMENTつまみを使用して焦点調整を行い、再度オートフォーカスでピントを合わせる。この操作を再度繰り返し、ピントを合わせる。ここで、観察面の傾斜角度が大きいと被覆率の測定精度が低くなりやすいので、ピント調整の際に観察面全体のピントが同時に合うものを選ぶことで、表面の傾斜が極力無いものを選択して解析する。
【0042】
(4)画像保存
ABCモードで明るさ合わせを行い、サイズ640×480ピクセルで写真撮影して保存する。この画像ファイルを用いて下記の解析を行う。トナー粒子一つに対して写真を1枚撮影し、少なくともトナー30粒子以上について画像を得る。
【0043】
(5)画像解析
本発明では下記解析ソフトを用いて、上述した手法で得た画像を2値化処理することで被覆率Xを算出する。このとき、上記一画面を正方形で12分割してそれぞれ解析する。
画像解析ソフトImage-Pro Plus ver.5.0の解析条件は以下のとおりである。
ソフトImage-ProPlus5.1J
ツールバーの「測定」から「カウント/サイズ」、「オプション」の順に選択し、二値化条件を設定する。オブジェト抽出オプションの中で8連結を選択し、平滑化を0とする。その他、予め選別、穴を埋める、包括線は選択せず、「境界線を除外」は「なし」とする。ツールバーの「測定」から「測定項目」を選択し、面積の選別レンジに2~107と入力する。
【0044】
被覆率の計算は、正方形の領域を囲って行う。このとき、正方形の領域の面積(C)は24000~26000ピクセルになるようにする。「処理」-2値化で自動2値化し、無機微粒子の無い領域の面積の総和(D)を算出する。
正方形の領域の面積C、無機微粒子の無い領域の面積の総和Dから下記式で被覆率aが求められる。
このとき、立方体もしくは長方体をした粒子はチタン酸ストロンチウム微粒子であるので、カウントから除外する。
被覆率a(%)=100-(D/C×100)
得られた全データの平均値を本発明における被覆率とする。
【0045】
<凝集度の測定>
トナー粒子の凝集度は、パウダーテスタ「PT-X」(ホソカワミクロン社製)によって測定する。
目開きの異なる100mesh、200mesh、440meshの篩を目開きが大きい順に上から重ね、装置にセットする。一番上段の100meshの篩上にトナー粒子5gを置き、振動幅0.5mmで15秒間振動させ、各篩上のトナー粒子の質量を測定し、下記式により、凝集度を算出する。
凝集度=(U/N+M/N×3/5+L/N×1/5)×100[%]
U:上段篩上のトナー粒子の質量、M:中段篩上のトナー粒子の質量、L:下段篩上のトナー粒子の質量、N:サンプルの質量
【実施例】
【0046】
以下の実施例において、部数は質量部基準である。
<ポリエステル樹脂Lの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.0質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:
28.0質量部(0.17モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(II)(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した。
【0047】
・無水トリメリット酸:
3質量部(0.01モル;多価カルボン酸総モル数に対して4.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃に維持したまま、1時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が90℃に達したことを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル樹脂Lを得た。
【0048】
<ポリエステル樹脂Hの製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン:72.3質量部(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸:
18.3質量部(0.11モル;多価カルボン酸総モル数に対して65.0mol%)
・フマル酸:
2.9質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して15.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(II)(エステル化触媒):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180まで冷却し、大気圧に戻した。
【0049】
・無水トリメリット酸:
6.5質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤):0.1質量部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃に維持したまま、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した軟化点が137℃に達したのを確認してから温度を下げて反応を止め、ポリエステル樹脂Hを得た。
【0050】
<結晶性ポリエステル樹脂>
・1,6-ヘキサンジオール:
34.5質量部(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸:
65.5質量部(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(II):0.5質量部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した。その後、脂肪族モノカルボン酸及び脂肪族モノアルコールからなる群より選ばれた1種以上の脂肪族化合物を、原料モノマー100.0mol%に対し7.0mol%加え、常圧下にて200℃で2時間反応させた。
その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより、結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0051】
[シリカ微粒子の製造例]
シリカ粒子の製造には、燃焼炉は、内炎と外炎が形成できる二重管構造の炭化水素-酸素混合型バーナーを用いた。バーナー中心部にスラリー噴射用の二流体ノズルが接地され、原料の珪素化合物が導入される。二流体ノズルの周囲から炭化水素-酸素の可燃性ガスが噴射され、還元雰囲気である内炎及び外炎を形成する。可燃性ガスと酸素の量及び流量の制御により、雰囲気と温度、火炎の長さ等が調整される。火炎中において珪素化合物からシリカ微粒子が形成され、さらに所望の粒径になるまで融着させる。その後、冷却後、バグフィルター等により捕集することによって得られる。
【0052】
原料の珪素化合物として、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを用いて、シリカ微粒子を製造し、得られたシリカ微粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理した。得られたシリカ微粒子を無機微粒子1とし、個数平均粒子径を表1に示す。
【0053】
[無機微粒子2~4の製造例]
個数平均粒子径が表1に示す値となるように変更した以外は無機微粒子1と同様の手法で作製したシリカ微粒子2~4を無機微粒子2~4とした。
【0054】
[無機微粒子5の製造例]
無機微粒子5(チタニア粒子1)の製造には、硫酸チタニル水溶液を熱加水分解して得た含水酸化チタンスラリーをアンモニア水によりpH7に中和し、濾過し、水洗して得たケーキを、ケーキの酸化チタンを塩酸で解膠し、アナターゼ型チタニアゾルを得た。このゾルの一次粒子の平均粒径は7nmであった。
また、出発原料としてTiO2相当分を50質量%含有しているイルメナイト鉱石を使用し、この原料を150℃で2時間乾燥させた後、硫酸を添加して溶解させることによって、TiOSO4水溶液を得た。これを濃縮し、上記アナターゼ型チタニアゾルをシードとして4.0質量部を添加した後、120℃で加水分解を行い、不純物を含有しているTiO(OH)2のスラリーを得た。このスラリーをpH5~6で繰り返し水洗浄を行い、硫酸、FeSO4、不純物を十分に除去した。そして、高純度のメタチタン酸〔TiO(OH)2〕のスラリーを得た。該メタチタン酸を300℃で5時間加熱処理した後、十分に解砕処理を行い、親水性のアナターゼ型結晶の親水性酸化チタン微粒子を得た。次に、水中で上記親水性の酸化チタン100質量部に対して、疎水化剤としてTi-C4H8-Si-(OCH3)3を固形分で20質量部を、十分に分散させながら滴下混合し、疎水化処理を行った。その後、濾過し、120℃で5時間乾燥した後、170℃で5時間加熱処理し、疎水性酸化チタン微粒子の凝集体がなくなるまでジェットミルによる解砕処理を行い、疎水性酸化チタン微粒子を得た。この疎水化処理された球状の酸化チタンを無機微粒子5とする。得られた無機微粒子5の個数平均粒子径を表1に示す。
【0055】
【0056】
<熱処理前トナー粒子1の製造例>
・非晶性ポリエステル樹脂L 80質量部
・非晶性ポリエステル樹脂H 20質量部
・結晶性ポリエステル樹脂 5質量部
・フィッシャートロプシュワックス(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 8質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、二軸混練機(PCM-30型、(株)池貝製)にて混練した。混練時のバレル温度は、混練物の出口温度が120℃になるよう設定した。混練物の出口温度は、安立計器社製ハンディタイプ温度計HA-200Eを用い直接計測した。得られた混練物を冷却し、ピンミルにて個数平均粒径100μm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらに回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。回転型分級機(200TSP、ホソカワミクロン社製)の運転条件は、分級ローター回転数を50.0s-1で分級を行った。得られたトナー粒子 100質量部に、無機微粒子1(シリカ微粒子1)を1.34質量部添加し、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で、回転数30s-1、回転時間10minで混合し、熱処理前トナー粒子1を得た。表2に物性を示す。
【0057】
<熱処理前トナー粒子2~6及び8~13の製造例>
表1及び表2に示す材料、条件に変更した以外は、熱処理前トナー粒子1と同様に製造し、熱処理前トナー粒子2~6及び8~13を得た。表2に物性を示す。
【0058】
<熱処理前トナー粒子7の製造例>
熱処理前トナー粒子1と同様に製造するが、分級後、再度分級し、個数平均粒径5.2μmのトナー粒子と個数平均粒径3.0μmのトナー粒子に分けた。
その後、個数平均粒径5.2μmのトナー粒子100質量部に対して無機微粒子1を1.24部、個数平均粒径3.0μmのトナー粒子100質量部に対して無機微粒子1を0.70部添加した。そして、ヘンシェルミキサーを用いて無機微粒子1を被覆した後、混合して熱処理前トナー粒子7を得た。表2に物性を示す。
【0059】
【0060】
<熱処理後トナー粒子1の製造例>
熱処理前トナー粒子1を用い、
図1で示す表面処理装置によって熱処理を行い、熱処理後トナー粒子1を得た。運転条件は以下のとおりとした。
フィード量=5kg/hr、熱風温度C=240℃、熱風流量=6m
3/min、冷風温度E=5℃、冷風流量=4m
3/min、冷風絶対水分量=3g/m
3、ブロワー風量=20m
3/min、インジェクションエア流量=1m
3/min。得られた熱処理後トナー粒子の物性を表3に示す。
【0061】
<熱処理後トナー粒子2~13の製造例>
表1~3に示す材料、条件に変更した以外は、熱処理後トナー粒子1と同様に製造し、熱処理後トナー粒子2~13を得た。得られた熱処理後トナー粒子の物性を表3に示す。
【0062】
【0063】
<トナー1の製造例>
下記の材料を、ヘンシェルミキサー(FM-75型、三井鉱山(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、トナー1を得た。
熱処理後トナー粒子1 100質量部
疎水性シリカ(BET:200m2/g) 1.0部
イソブチルトリメトキシシランで表面処理したチタニア微粒子(BET:80m2/g) 1.0部
得られたトナーを表4に示す。
【0064】
<トナー2~13の製造例>
熱処理後トナー粒子1を熱処理後トナー粒子2~13に変更した以外は、トナー1の製造例と同様に製造し、トナー2~13を得た。得られたトナーを表4に示す。
【0065】
【0066】
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 62.7部
MnCO3 29.5部
Mg(OH)2 6.8部
SrCO3 1.0部
前記材料を前記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕・混合した。
【0067】
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記のとおりである。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
前記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
【0068】
・工程3(粉砕工程):
得られた仮焼フェライトをクラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用い、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。得られたスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
【0069】
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダー樹脂としてポリビニルアルコール2.0部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダー樹脂の有機成分を除去した。
【0070】
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
【0071】
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱により低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
【0072】
<被覆樹脂1の調製>
(1)シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
(2)メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
(3)メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
(4)トルエン 31.3質量%
(5)メチルエチルケトン 31.3質量%
(6)アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
前記材料のうち、(1)~(5)を、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、減圧乾燥して被覆樹脂1を得た。
次いで、30部の被覆樹脂1を、トルエン40部及びメチルエチルケトン30部に溶解させて、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
【0073】
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラックRegal330(キャボット製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m2/g、DBP吸油量75mL/100g)
前記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散した。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過し、被覆樹脂溶液1を得た。
【0074】
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている減圧脱気型ニーダーに、磁性コア粒子1及び被覆樹脂溶液1を投入した(被覆樹脂溶液1の投入量は、100部の磁性コア粒子1に対して樹脂成分として2.5部になる量)。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後冷却した。得られた磁性キャリアを、磁力選鉱により低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)38.2μmの磁性キャリア1を得た。
【0075】
<二成分系現像剤1の製造例>
92.0部の磁性キャリア1と8.0部のトナー1をV型混合機(V-20、セイシン企業製)により混合し、二成分系現像剤1を得た。
【0076】
<二成分系現像剤2~13の製造例>
二成分系現像剤1の製造例において、表5に示すようにトナーを変更する以外は同様の操作を行い、二成分系現像剤2~11を得た。
【0077】
【0078】
<実施例1>
トナー粒子1のとおりにトナー粒子を製造し、得られた熱処理前後のトナー粒子の個数平均粒径変化、2μm以下の個数%減少率と円形度変化を測定した。
さらに二成分系現像剤1を用いて、評価を行った。
画像形成装置として、キヤノン製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C5560改造機を用い、ブラック位置の現像器に二成分系現像剤1を入れた。装置の改造点としては、定着温度、プロセススピード、現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及び、レーザーパワーを自由に設定できるように変更した。画像出力評価は、所望の画像比率のFFh画像(ベタ画像)を出力し、FFh画像のトナーの載り量が所望になるようにVDC、VD、及びレーザーパワーを調整して、後述の評価を行った。FFhとは、256階調を16進数で表示した値であり、00hが256階調の1階調目(白地部)であり、FFhが256階調の256階調目(ベタ部)である。
【0079】
<熱処理前後のトナー粒子の個数平均粒径変化>
熱処理前トナー粒子の個数平均粒径をD1、熱処理後トナー粒子の個数平均粒径をD2としたとき、D2-D1(μm)によって粒径変化を評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:D2-D1が0.1μm以下
B:D2-D1が0.1μmより大きい、0.3μm以下
C:D2-D1が0.3μmより大きい、0.5μm以下
D:D2-D1が0.5より大きい
【0080】
<熱処理前後トナー粒子の2μm以下の個数%残存率>
熱処理前トナー粒子の2μm以下の個数%をR1、熱処理後トナー粒子の2μm以下の個数%をR2としたとき、R2/R1×100(%)によって2μm以下の個数%残存率を評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表6に示す。
(評価基準)
A:R2/R1×100が20%以下
B:R2/R1×100が20%より高く、40%以下
C:R2/R1×100が40%より高く、50%以下
D:R2/R1×100が50%より高い
【0081】
<画質性>
紙:GFC-081(81.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン(株))
Vcontrast:300V
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
評価画像:上記A4用紙に1ドット、1スペースの縦線画像を配置
試験環境:常温常湿環境:温度23℃/相対湿度50%(以下「N/N」)
定着温度:170℃
プロセススピード:377mm/sec
上記評価画像を出力し、画質性を評価した。Blur(ISO13660で定義されたラインのぼやけ方を表す数値)の値を画質性の評価指標とした。パーソナルIAS(イメージ・アナリシス・システム)(QEA社製)を用いて測定した。得られたBlurの値を下記の評価基準に従って評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表7に示す。
(評価基準)
A:Blurの値35μm未満
B:Blurの値35μm以上40μm未満
C:Blurの値40μm以上44μm未満
D:Blurの値44μm以上
【0082】
<カブリ性>
紙:CS-680(68.0g/m2)
(キヤノンマーケティングジャパン(株))
評価画像:上記A4用紙の全面に00h画像
Vback:150V
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧VD、及びレーザーパワーにより調整)
試験環境:高温高湿環境(温度30℃/相対湿度80%(以下H/H))
定着温度:170℃
プロセススピード:377mm/sec
上記評価画像を出力し、下記式によって算出したカブリの値をカブリ性の評価指標とした。
リフレクトメータ(REFLECTOMETER MODEL TC-6DS:東京電色製)を用い、通紙前の評価紙の平均反射率Ds(%)を測定する。次に、通紙後の評価紙の平均反射率Dr(%)を測定する。そして、下記式を用いてカブリの値を算出した。得られたカブリの値を下記の評価基準に従って評価した。C以上を本発明の効果が得られていると判断した。評価結果を表7に示す。
カブリ = Dr(%)-Ds(%)
(評価基準)
A:カブリ0.3%未満
B:カブリ0.3%以上、0.8%未満
C:カブリ0.8%以上、1.2%未満
D:カブリ1.2%以上
【0083】
<実施例2~7、および比較例1~6>
トナー粒子、二成分現像剤を変えた以外は、実施例1と同様に評価を行った。評価結果を表6及び表7に示す。なお、実施例1~6は、参考例として記載するものである。
【0084】
【0085】
【0086】
比較例1は、トナー粒子の粒径が大きいため熱処理前後の変化は良好だが、そもそも粒径が大きいため画質が許容できない。
比較例2は熱処理前の2μm以下の個数%が多く、許容できない量のため、減少率は50%に達しているが熱処理後も量が多いため、カブリが許容できない結果となっている。
比較例3は、熱処理前に被覆するシリカの粒径が大きく、許容できない粒径のため、被覆率は高くても流動性が足らず、熱処理前後の粒径変化が許容できないほど大きく、結果、画質も許容できない。
比較例4は、熱処理前に被覆するシリカの粒径が小さすぎ、許容できない粒径のため、流動性が高すぎて熱処理後の2μm以下の個数%減少率が許容できないほど小さく、結果、カブリも許容できない。
比較例5は、熱処理前のシリカ被覆率が高すぎるため、流動性が高くなりすぎ、結果、熱処理後の2μm以下の個数%減少率が許容できないほど小さく、結果、カブリも許容できない。
比較例6は、熱処理前のシリカ被覆率が低すぎるため、流動性が足らず、熱処理により合一が進み、熱処理前後の粒径変化が許容できず、また、粒径も大きくなってしまうことから画質も許容できない。
【符号の説明】
【0087】
1.原料定量供給手段
2.圧縮気体流量調整手段
3.導入管
4.突起状部材
5.供給管
6.処理室
7.熱風供給手段
8.冷風供給手段
9.規制手段(柱状部材)
10.回収手段
11.熱風供給手段出口
12.分配部材
13.旋回部材
14.粉体粒子供給口(粒子供給口)
15.トナー粒子排出口