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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】撮像装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/589 20230101AFI20241125BHJP
   H04N 25/76 20230101ALI20241125BHJP
【FI】
H04N25/589
H04N25/76
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020157440
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022051134
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】高堂 寿士
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-175234(JP,A)
【文献】特開2006-014117(JP,A)
【文献】特開2019-114949(JP,A)
【文献】特開2012-182657(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090509(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30-5/33
H04N 23/11
H04N 23/20-23/30
H04N 25/00
H04N 25/20-25/61
H04N 25/615-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が光電変換部を有する複数の画素が複数の行及び複数の列に渡って配された画素部と、
前記複数の画素の各々から、第1の露光期間の間に前記光電変換部で生じた電荷に基づく第1の信号と、前記第1の露光期間とは異なる長さの第2の露光期間の間に前記光電変換部で生じた電荷に基づく第2の信号と、を各フレームで出力するように前記複数の画素を制御する画素制御部と、
前記第1の信号に基づいて前記第2の露光期間の長さを判定する露光時間判定処理部と、を有し、
前記画素部は、各々が少なくとも1つの画素を含む複数のエリアを有し、
前記露光時間判定処理部は、前記複数のエリアの各々における前記第2の露光期間の長さを、前記複数のエリアの各々における前記第1の信号に基づいて判定するように構成されており、
前記画素制御部は、一のフレームにおいて、前記複数のエリアのうちの第1のエリアの画素から前記第1の信号を出力した後、前記一のフレームにおいて、前記複数のエリアのうちの第2のエリアの画素から前記第1の信号を出力する前に、前記第1のエリアの前記画素における前記一のフレームの前記第2の露光期間を開始するように構成されている
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記画素制御部は、前記複数の画素の前記第1の信号及び前記第2の信号を前記画素部の行毎に出力するように構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画素制御部は、前記複数の行のうちの少なくとも一部において、前記第1の信号と前記第2の信号とを行単位で交互に出力するように構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画素制御部は、前記複数のエリアの各々に対し、前記露光時間判定処理部により判定された露光時間情報に応じたタイミングでシャッタ走査を実行するように構成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2の信号に対し、前記第2の露光期間の長さの逆数に比例する重みで補正処理を行う信号処理部を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、前記第2の信号が飽和している場合に、前記第1の信号に対し、前記第1の露光期間の長さの逆数に比例する重みで補正処理を行う
ことを特徴とする請求項5記載の撮像装置。
【請求項7】
前記露光時間判定処理部により判定された露光時間情報を保持する露光時間情報保持部を更に有する
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画素部が設けられた第1基板と、前記露光時間情報保持部が設けられた第2基板と、前記画素制御部及び前記露光時間判定処理部が設けられた第3基板と、が積層されてなる
ことを特徴とする請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数のエリアの各々は、前記画素部の行により規定されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記複数のエリアの各々は、前記複数の画素の各々に対応している
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記複数のエリアにおける前記第1の露光期間の長さが同じである
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記複数のエリアの各々において、前記第2の露光期間の長さが前記第1の露光期間の長さよりも長い
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置から出力される信号を処理する信号処理装置と
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項14】
移動体であって、
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の撮像装置と、
前記撮像装置の前記画素から出力される信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
画素部に設定された複数のエリア毎に露光時間を設定して撮影を行い、取得したデータに画像処理を施して画像を復元することにより、ダイナミックレンジの広い画像を取得する技術が知られている。特許文献1には、予備撮影を行って露光マップを作成し、作成した露光マップに基づいて各エリアの露光時間を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-004089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の撮像装置では、露光時間の判定と実際の画像撮影との間にタイムラグが生じるため、動画像を撮影する場合はフレームレートの低下を避けることができなかった。また、動きのある被写体を撮影する場合、予備撮影時の撮影条件と本撮影時の撮影条件との間にずれが生じ、本撮影時の露光条件を最適化できないことがあった。
【0005】
本発明の目的は、フレームレートを損なうことなく高品質のハイダイナミックレンジ画像を取得しうる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、各々が光電変換部を有する複数の画素が複数の行及び複数の列に渡って配された画素部と、前記複数の画素の各々から、第1の露光期間の間に前記光電変換部で生じた電荷に基づく第1の信号と、前記第1の露光期間とは異なる長さの第2の露光期間の間に前記光電変換部で生じた電荷に基づく第2の信号と、を各フレームで出力するように前記複数の画素を制御する画素制御部と、前記第1の信号に基づいて前記第2の露光期間の長さを判定する露光時間判定処理部と、を有し、前記画素部は、各々が少なくとも1つの画素を含む複数のエリアを有し、前記露光時間判定処理部は、前記複数のエリアの各々における前記第2の露光期間の長さを、前記複数のエリアの各々における前記第1の信号に基づいて判定するように構成されており、前記画素制御部は、一のフレームにおいて、前記複数のエリアのうちの第1のエリアの画素から前記第1の信号を出力した後、前記一のフレームにおいて、前記複数のエリアのうちの第2のエリアの画素から前記第1の信号を出力する前に、前記第1のエリアの前記画素における前記一のフレームの前記第2の露光期間を開始するように構成されている撮像装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フレームレートを損なうことなく高品質のハイダイナミックレンジ画像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による撮像装置における撮像素子の概略構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態による撮像装置において撮像素子の画素部に定義される領域を説明する図である。
図4】本発明の第1実施形態による撮像装置における撮像素子の画素の構成例を示す回路図である。
図5】本発明の第1実施形態による撮像装置における撮像素子の動作を示すタイミング図である。
図6】本発明の第1実施形態による撮像装置におけるダイナミックレンジ拡大処理部の構成及び動作を説明する図である。
図7】画素への入射光量と撮像素子からの出力値との関係を示すグラフである。
図8】本発明の第2実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図である。
図9】本発明の第2実施形態による撮像装置を模式的に示す斜視図である。
図10】本発明の第2実施形態による撮像装置の動作を示すタイミング図である。
図11】本発明の第2実施形態による撮像装置におけるシャッタ制御の詳細を説明する図である。
図12】本発明の第3実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
図13】本発明の第4実施形態による撮像システム及び移動体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による撮像装置の構成例について、図1乃至図4を用いて説明する。図1は、本実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態による撮像装置における撮像素子の概略構成を示すブロック図である。図3は、本実施形態による撮像装置において撮像素子の画素部に定義される領域を説明する図である。図4は、本実施形態による撮像装置における撮像素子の画素の構成例を示す回路図である。
【0010】
本実施形態による撮像装置400は、図1に示すように、撮像素子100と、信号処理部200と、を有する。信号処理部200は、前段処理部210と、長秒信号保持部220と、短秒信号保持部230と、露光時間判定処理部240と、露光時間情報保持部250と、ダイナミックレンジ拡大処理部260と、により構成され得る。
【0011】
撮像素子100は、図示しない光学系を介して入射した光信号(被写体像)を電気信号に変換して出力する。撮像素子100は、例えば、CMOSイメージセンサやCCDイメージセンサの上にカラーフィルタ(以下、「CF」とも表記する)が配置された、いわゆる単板式のカラーセンサにより構成され得る。なお、撮像素子100は、必ずしもカラーセンサである必要はなく、モノクロセンサであってもよい。
【0012】
撮像素子100は、各々が光電変換部を有する複数の画素を有する。複数の画素の各々は、第1の露光期間の間に生成された電荷に基づく第1の信号と、第1の露光期間とは異なる長さの第2の露光期間の間に生成された電荷に基づく第2の信号を出力する。以後の説明では、相対的に短い露光時間(第1の露光期間)の間に生成された電荷に基づく信号を「短秒信号」と呼び、相対的に長い露光時間(第2の露光期間)の間に生成された電荷に基づく信号を「長秒信号」と呼ぶことがある。
【0013】
前段処理部210は、撮像素子100からの出力信号に対して、信号処理の前処理を実施する。撮像素子100からの出力信号がアナログ信号の場合には、撮像素子100の出力信号に対するアナログデジタル変換(A/D変換)処理を前段処理部210で実施してもよい。前段処理部210は、撮像素子100の出力信号(入力信号Din)に対して、オフセット(OFFSET)補正、ゲイン(GAIN)補正、等の補正(前段処理)を適宜実施して、補正後の出力信号(データDout)を生成する。この処理は、典型的には以下の式(1)のように表される。
Dout=(Din-OFFSET)×GAIN …(1)
【0014】
前段処理部210における補正は、さまざまな単位で行うことが可能である。例えば、画素毎に補正を行う場合、列増幅器毎に補正を行う場合、アナログデジタル変換部(ADC)部毎に補正を行う場合、出力増幅器毎に補正を行う場合、等が挙げられる。撮像素子100の出力信号の補正を行うことで、いわゆる固定パターンノイズを低減することができ、より高品質な画像を得ることができる。
【0015】
前段処理部210は、撮像素子100から出力される長秒信号及び短秒信号の各々に対して上述の前段処理を行い、処理後の長秒信号と短秒信号とを分離して後段の処理部へと送信する。具体的には、前段処理部210は、処理後の長秒信号を長秒信号保持部220に送信し、処理後の短秒信号を露光時間判定処理部240及び短秒信号保持部230に送信する。長秒信号保持部220は、前段処理部210から受信した長秒信号を保持する。また、短秒信号保持部230は、前段処理部210から受信した短秒信号を保持する。
【0016】
露光時間判定処理部240は、前段処理部210から受信した短秒信号に対し、露光時間の判定処理を行い、長秒信号のための露光時間を決定するシャッタ走査のタイミングを決定する。露光時間の判定方法は、特に限定されるものではなく、例えば自動露光調整を行うための測光処理であり得る。例えば、短秒信号のための露光時間と短秒信号の信号レベルとの関係に基づき、飽和しない範囲でできるだけ高いレベルの長秒信号が得られるように、長秒信号のための露光時間を決定することができる。
【0017】
露光時間の判定は、短秒信号の平均値に基づいて行ってもよいし、短秒信号の信号値の度数分布を解析することにより行ってもよい。露光時間判定処理部240は、短秒信号の判定によって決定された長秒信号のための露光時間に関する情報(露光時間情報)を、露光時間情報保持部250に送信する。露光時間情報保持部250は、露光時間判定処理部240から受信した露光時間情報を保持する。
【0018】
なお、本実施形態の撮像装置400においては、撮像素子100の画素領域(後述する画素部10)に複数のエリアを定義する。露光時間判定処理部240は、これら複数のエリアの各々について長秒信号のための露光時間に関する情報を取得する。露光時間情報保持部250は、これら複数のエリアの各々における長秒信号のための露光時間に関する情報を保持する。
【0019】
同じ画素から長秒信号が出力されるタイミングと短秒信号が出力されるタイミングとは異なる。また、露光時間判定処理部240から露光時間情報が出力されるタイミングは、長秒信号が出力されるタイミング及び短秒信号が出力されるタイミングとは異なる。長秒信号保持部220、短秒信号保持部230及び露光時間情報保持部250は、長秒信号、短秒信号及び露光時間情報を後段の処理部に同時に出力するためにこれら信号を一時的に保持するメモリである。
【0020】
長秒信号保持部220、短秒信号保持部230及び露光時間情報保持部250は、特に限定されるものではないが、例えばSRAMで構成される10行分のラインメモリにより構成され得る。
【0021】
ダイナミックレンジ拡大処理部260は、撮像素子100により取得した長秒信号及び短秒信号と露光時間情報保持部250から受信した各領域の露光時間情報とを用い、ダイナミックレンジの広い画像データを得るための処理を行う。なお、ダイナミックレンジ拡大処理部260の具体的な構成及び動作については後述する。
【0022】
撮像素子100は、図2に示すように、画素部10と、垂直走査回路20と、読み出し回路部30と、メモリ部40と、カウンタ46と、水平走査回路50と、信号出力部60と、タイミング発生回路70と、を有する。
【0023】
画素部10には、複数の行及び複数の列に渡ってマトリクス状に配された複数の画素12が設けられている。画素部10には、例えば、列方向に1920画素、行方向に1080画素、合計で2073600画素が配される。画素部10に配される画素数は限定されず、より多い画素数、若しくはより少ない画素数でもよい。
【0024】
画素部10の各行には、第1の方向(図2において横方向)に延在して、制御線14が配されている。制御線14は、第1の方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。制御線14の延在する第1の方向は、行方向或いは水平方向と呼ぶことがある。
【0025】
画素部10の各列には、第1の方向と交差する第2の方向(図2において縦方向)に延在して、垂直信号線16が配されている。垂直信号線16は、第2の方向に並ぶ画素12にそれぞれ接続され、これら画素12に共通の信号線をなしている。垂直信号線16の延在する第2の方向は、列方向或いは垂直方向と呼ぶことがある。
【0026】
図2では、画素部10が第1列から第n列までのn列の画素12を有する場合を想定し、各列の垂直信号線16の符号に列番号を付記している。例えば、第1列の垂直信号線16には「16-1」の符号を付し、第n列の垂直信号線16には「16-n」の符号を付している。以後の説明において、画素部10の列に対応して設けられた要素については、同様の表記を用いるものとする。
【0027】
各行の制御線14は、垂直走査回路20に接続されている。垂直走査回路20は、画素信号を読み出す際に画素12内の読み出し回路を駆動するための制御信号を、制御線14を介して行単位で画素12に供給する制御部である。垂直走査回路20から供給される制御信号によって選択された行(選択行)に属する画素12の画素信号は、これら画素12の各々に対応する列の垂直信号線16に同時に出力される。本実施形態において、垂直走査回路20は、複数の画素12の各々から短秒信号と長秒信号とを出力するように複数の画素12を制御する画素制御部である。
【0028】
各列の垂直信号線16は、読み出し回路部30に接続されている。読み出し回路部30は、増幅部32と、比較部34と、参照信号発生回路36と、を有する。増幅部32は、画素部10の各列に対応して設けられたn個の増幅器33-1~33-nを有する。増幅器33-1~33-nは、各々に対応する列の垂直出力線16-1~16-nを介して画素12から出力される画素信号を増幅する。比較部34は、画素部10の各列に対応して設けられたn個の比較器35-1~35-nを有する。比較器35-1~35-nは、各々に対応する列の増幅器33-1~33-nから出力される画素信号のレベルと、参照信号発生回路36から出力される参照信号のレベルとを比較し、比較結果を出力する。
【0029】
メモリ部40は、画素部10の各列に対応して設けられたn個のメモリ42-1~42-nを有する。メモリ42-1~42-nは、各々に対応する列の比較器35-1~35-nから出力される信号を受信し、受信した信号に応じてカウンタ46から出力されるカウント信号をラッチし保持する。参照信号発生回路36から出力される参照信号は、時間の経過とともに信号レベルが一定の割合で変化する信号である。メモリ42-1~42-nに保持されるカウント信号は、画素12から出力されるアナログの画素信号をAD変換したデジタル画素信号に相当する。
【0030】
水平走査回路50は、メモリ部40の各列のメモリ42-1~42-nを順次選択するための制御信号をメモリ部40に供給する制御部である。水平走査回路50から制御信号を受信したメモリ42-1~42-nは、保持するデジタル画素信号を信号出力部60へと転送する。信号出力部60は、メモリ部40から転送される各列のデジタル画素信号に対して、所定のデジタル信号処理を実行し、撮像素子100の外部へと出力する。
【0031】
タイミング発生回路70は、垂直走査回路20、読み出し回路部30、メモリ部40及び水平走査回路50等に、それらの動作やタイミングを制御する制御信号を供給するための回路部である。垂直走査回路20、読み出し回路部30、メモリ部40及び水平走査回路50等に供給する制御信号の一部又は総ては、撮像素子100の外部から供給してもよい。
【0032】
画素部10には、互いに独立した複数のエリアが定義されている。本実施形態の撮像装置400において、これら複数のエリアは画素部10の行によって規定されており、複数のエリアの各々が少なくとも1つの行を含む。図3には、画素部10に3つのエリア18a,18b,18cが定義されている場合を示している。なお、画素部10に定義するエリアの数は特に限定されるものではない。また、各エリアに含まれる画素行の数は特に限定されるものではない。例えば、複数のエリアの総てが同じ数の画素行を含んでいてもよいし、複数のエリアのうちの少なくとも2つのエリアが互いに異なる数の画素行を含んでいてもよい。
【0033】
垂直走査回路20は、エリア18a,18b,18cの各々に対して個別にシャッタ走査を行うことが可能となっている。すなわち、垂直走査回路20は、エリア18a,18b,18c毎にシャッタ走査を行い、エリア18a,18b,18c毎に露光時間の調整を行うことが可能である。なお、シャッタ走査とは、画素12の光電変換部のリセット(シャッタ動作)を行単位で順次実行する動作をいう。
【0034】
各々の画素12は、図4に示すように、フォトダイオードPDと、転送トランジスタMTXと、リセットトランジスタMRSと、増幅トランジスタMSFと、選択トランジスタMSELと、により構成され得る。フォトダイオードPDは、アノードが基準電圧ノードに接続され、カソードが転送トランジスタMTXのソースに接続されている。転送トランジスタMTXのドレインは、リセットトランジスタMRSのソース及び増幅トランジスタMSFのゲートに接続されている。転送トランジスタMTXのドレイン、リセットトランジスタMRSのソース及び増幅トランジスタMSFのゲートの接続ノードは、いわゆるフローティングディフュージョンFDである。フローティングディフュージョンFDは、容量成分を含み、電荷保持部として機能するとともに、この容量成分からなる電荷電圧変換部を構成する。リセットトランジスタMRSのドレイン及び増幅トランジスタMSFのドレインは、電源電圧ノード(電圧VDD)に接続されている。増幅トランジスタMSFのソースは、選択トランジスタMSELのドレインに接続されている。画素12の出力ノードでもある選択トランジスタMSELのソースは、垂直信号線16に接続されている。
【0035】
フォトダイオードPDは、入射光の光量に応じた電荷を生じる光電変換部である。被写体の光学像が画素部10に入射すると、各画素12のフォトダイオードPDは、入射光をその光量に応じた量の電荷に変換(光電変換)するとともに、生じた電荷を蓄積する。転送トランジスタMTXは、オンになることによりフォトダイオードPDが保持する電荷をフローティングディフュージョンFDに転送する。フローティングディフュージョンFDは、その容量成分による電荷電圧変換によって、フォトダイオードPDから転送された電荷の量に応じた電圧となる。増幅トランジスタMSFは、ドレインに電圧VDDが供給され、ソースに選択トランジスタMSELを介して図示しない電流源からバイアス電流が供給される構成となっており、ゲートを入力ノードとする増幅部(ソースフォロワ回路)を構成している。これにより増幅トランジスタMSFは、フローティングディフュージョンFDの電圧に基づく信号を、選択トランジスタMSELを介して垂直信号線16に出力する。リセットトランジスタMRSは、オンになることによりフローティングディフュージョンFDを電圧VDDに応じた電圧にリセットする。リセットトランジスタMRS及び転送トランジスタMTXは、同時にオンになることによりフォトダイオードPDを電圧VDDに応じた電圧にリセットする。
【0036】
図4に示す回路構成の画素12の場合、各行の制御線14は、転送トランジスタMTXのゲートに接続された信号線と、リセットトランジスタMRSのゲートに接続された信号線と、選択トランジスタMSELのゲートに接続された信号線と、を含む。転送トランジスタMTXには、制御線14を介して垂直走査回路20から制御信号φTXが供給される。リセットトランジスタMRSには、制御線14を介して垂直走査回路20から制御信号φRESが供給される。選択トランジスタMSELには、制御線14を介して垂直走査回路20から制御信号φSELが供給される。画素部10内の複数の画素12は、垂直走査回路20から供給される制御信号φTX,φRES,φSELにより、行単位で制御される。画素12の各トランジスタがN型トランジスタで構成される場合、これら制御信号がHighレベル(Hレベル)のときに対応するトランジスタはオン状態となり、これら制御信号がLowレベル(Lレベル)のときに対応するトランジスタはオフ状態となる。
【0037】
次に、本実施形態による撮像装置400における撮像素子100の動作タイミングについて、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態の撮像装置における撮像素子の動作を示すタイミング図である。図5には説明の簡略化のため、エリア18aが第1行から第4行までの4行により構成され、エリア18bが第5行から第7行までの3行により構成され、エリア18cが第8行から第m行までの(m-7)行により構成されている場合を示している。
【0038】
撮像素子100は、図5に示すように、1フレームの間に長秒信号の読み出し動作と短秒信号の読み出し動作とを行単位で交互に行うラインインターリーブ駆動を行う。
【0039】
あるフレーム(第Nフレーム)における信号の読み出し動作は、例えば図5に示すように、時刻T40から時刻T50までの期間に行われる。時刻T40は、当該フレームにおける1行目の画素12の長秒信号の読み出し動作が開始する時刻である。2行目以降の画素12の長秒信号の読み出し動作は、1行毎に所定の間隔を開けて順次行われる。
【0040】
長秒信号の読み出し動作が終了した時刻から次に信号(短秒信号)の読み出しが行われる時刻までの期間が、短秒信号のための露光期間である。例えば、1行目の画素12において、短秒信号のための露光時間は、時刻T40から時刻T41までの期間の長さに相当する時間となる。図5には、1行目の画素12における短秒信号のための露光期間を、期間Tsとして表している。
【0041】
1行目の画素12の短秒信号の読み出し動作は、所定の露光時間が経過した後、例えば3行目の画素12の長秒信号の読み出し動作が終了した後の時刻T41から開始される。4行目の画素12の長秒信号の読み出し動作は、1行目の画素12の短秒信号の読み出し動作が終了した後の時刻T42に開始される。
【0042】
このようにして、時刻T41以降、1行目の画素12の短秒信号の読み出し、4行目の画素12の長秒信号の読み出し、2行目の短秒信号の読み出し、5行目の長秒信号の読み出し、の順に、長秒信号と短秒信号の読み出し動作を行単位で交互に行う。最終行であるm行目の画素12の短秒信号の読み出し動作が終了することで、当該フレームの読み出し動作が完了する。時刻T40から時刻T48までの期間が、各行の画素12から長秒信号の読み出しを行う読み出し走査の期間である。また、時刻T41から時刻T50までの期間が、各行の画素12から短秒信号の読み出しを行う読み出し走査の期間である。図5には、1行目の画素12における短秒信号の読み出しから長秒信号の読み出しまでの期間を、期間TLとして表している。この期間TLには、エリア毎に所定の露光時間が設定される。
【0043】
このようにして撮像素子100から読み出された長秒信号及び短秒信号は、信号処理部200の前段処理部210に入力される。前段処理部210は、長秒信号及び短秒信号の各々に対して所定の前段処理を行ったのち、処理後の長秒信号を長秒信号保持部220へと送信し、処理後の短秒信号を露光時間判定処理部240及び短秒信号保持部230へと送信する。
【0044】
エリア18aにおける短秒信号の読み出し走査が行われる時刻T41から時刻T43までの期間には、読み出し走査と並行して、エリア18aにおける露光時間の判定処理が行われる。露光時間判定処理部240は、エリア18aの画素12から取得したデータを用いてエリア18aにおける画素12の露光時間を判定し、エリア18aの露光時間情報として露光時間情報保持部250に保持する。
【0045】
垂直走査回路20は、露光時間情報保持部250に保持されているエリア18aの露光時間情報に基づいて、エリア18aのシャッタ走査を実行する。すなわち、垂直走査回路20は、エリア18aの各画素12における露光時間が露光時間情報保持部250に保持されている露光時間情報に合致するように、エリア18aのシャッタ走査を開始する。ここでは、1行目の画素12のシャッタ動作が時刻T45から開始されるものとする。2行目から4行目の画素12のシャッタ動作は、読み出し走査と同様、1行毎に所定の間隔を開けて順次行われる。時刻T45から時刻T48までの期間が、エリア18aのシャッタ走査が行われる期間である。この場合、エリア18aの各画素12において、長秒信号のための露光時間は、時刻T45から時刻T50までの期間の長さに相当する時間となる。
【0046】
また、エリア18bにおける短秒信号の読み出し走査が行われる時刻T44から時刻T46までの期間には、読み出し走査と並行して、エリア18bにおける露光時間の判定処理が行われる。露光時間判定処理部240は、エリア18bの画素12から取得したデータを用いてエリア18bにおける画素12の露光時間を判定し、エリア18bの露光時間情報として露光時間情報保持部250に保持する。
【0047】
垂直走査回路20は、露光時間情報保持部250に保持されているエリア18bの露光時間情報に基づいて、エリア18bのシャッタ走査を実行する。すなわち、垂直走査回路20は、エリア18bの各画素12における露光時間が露光時間情報保持部250に保持されている露光時間情報に合致するように、エリア18bのシャッタ走査を開始する。ここでは、5行目の画素12のシャッタ動作が時刻T49から開始されるものとする。6行目及び7行目の画素12のシャッタ動作は、読み出し走査と同様、1行毎に所定の間隔を開けて順次行われる。時刻T49から時刻T51までの期間が、エリア18bのシャッタ走査が行われる期間である。この場合、エリア18bの各画素12において、長秒信号のための露光時間は、時刻T49から時刻T52までの期間の長さに相当する時間となる。
【0048】
また、エリア18cにおける短秒信号の読み出し走査が行われる時刻T47から時刻T50までの期間には、読み出し走査と並行して、エリア18cにおける露光時間の判定処理が行われる。露光時間判定処理部240は、エリア18cの画素12から取得したデータを用いてエリア18cにおける画素12の露光時間を判定し、エリア18cの露光時間情報として露光時間情報保持部250に保持する。
【0049】
垂直走査回路20は、露光時間情報保持部250に保持されているエリア18cの露光時間情報に基づいて、エリア18cのシャッタ走査を実行する。すなわち、垂直走査回路20は、エリア18cの各画素12における露光時間が露光時間情報保持部250に保持されている露光時間情報に合致するように、エリア18cのシャッタ走査を開始する。ここでは、露光時間判定処理部240により露光時間が最大であると判定されたことに応じて、エリア18cのシャッタ走査を行わない場合を想定する。この場合、エリア18cの各画素12において、長秒信号のための露光時間は、1フレームの期間から短秒信号のための露光時間を差し引いた期間の長さに相当する時間となる。
【0050】
次に、本実施形態の撮像装置400におけるダイナミックレンジ拡大処理部260の構成例及び動作について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、ダイナミックレンジ拡大処理部260の構成及び動作を説明する図である。図7は、画素12への入射光量と撮像素子100からの出力値との関係を示すグラフである。
【0051】
ダイナミックレンジ拡大処理部260は、例えば図6に示すように、飽和判定処理部262と、セレクタ264と、演算処理部266と、により構成され得る。セレクタ264は、長秒信号保持部220及び短秒信号保持部230に接続されている。飽和判定処理部262は、長秒信号保持部220及びセレクタ264に接続されている。演算処理部266は、セレクタ264及び露光時間情報保持部250に接続されている。
【0052】
飽和判定処理部262には、長秒信号保持部220が保持する第Nフレームの長秒信号が供給される。飽和判定処理部262は、長秒信号保持部220から受信した長秒信号のデータと予め設定されている飽和閾値とを比較する。ここで、飽和閾値とは、出力信号が飽和しているかどうかを判定するための基準となる値である。比較の結果、長秒信号のデータの値が飽和閾値を超えている場合には、飽和判定処理部262はハイレベル(“1”)の飽和判定信号JLをセレクタ264に出力する。比較の結果、長秒信号のデータの値が飽和閾値以下の場合には、飽和判定処理部262はローレベル(“0”)の飽和判定信号JLをセレクタ264に出力する。
【0053】
セレクタ264には、長秒信号保持部220が保持する第Nフレームの長秒信号と、短秒信号保持部230が保持する第(N+1)フレームの短秒信号と、が供給される。セレクタ264は、飽和判定処理部262から受信した飽和判定信号JLに応じて、長秒信号保持部220から受信した第Nフレームの長秒信号及び短秒信号保持部230から受信した第(N+1)フレームの短秒信号のうちの一方を出力値Vbとして出力する。具体的には、セレクタ264は、飽和判定信号JLがハイレベル(“1”)の場合には出力値Vbとして第(N+1)フレームの短秒信号を出力し、飽和判定信号JLがローレベル(“0”)の場合には出力値Vbとして第Nフレームの長秒信号を出力する。
【0054】
演算処理部266には、セレクタ264の出力値Vbと、セレクタ264から供給される信号がどのエリアから取得された情報であるのかを示す領域情報と、が供給される。演算処理部266は、セレクタ264から受信した出力値Vb、露光時間情報保持部250から受信した露光時間情報Ei及び領域情報を用いて出力値Vhdrを算出し、出力する。出力値Vhdrは、以下の式(1)に基づいて算出される。式(1)中、変数αは、ビット拡張を行うための所定の係数である。
Vhdr=α×(1/Ei)×Vb …(1)
【0055】
長秒信号及び短秒信号の信号レベルは、図7に示すように、画素12への入射光量が多いほど増加する。フォトダイオードPDで生成される信号電荷の量がフォトダイオードPDに蓄積可能な電荷量の上限(飽和電荷量)を超えると、信号レベルは飽和する。短秒信号に対して信号電荷の蓄積時間が相対的に長い長秒信号は、同一光量における信号レベルが短秒信号よりも大きいため、短秒信号と比較してより少ない光量で飽和する。
【0056】
そこで、飽和判定処理部262において長秒信号の飽和判定を行い、長秒信号が飽和している場合には短秒信号を用いて出力値Vhdrを算出し、長秒信号が飽和していない場合には長秒信号を用いて出力値Vhdrを算出する。長秒信号の飽和判定に用いられる飽和閾値は、例えば図7に示すように、フォトダイオードPDの飽和電荷量に対応する出力信号レベルよりも若干低い信号レベルに設定することができる。
【0057】
露光時間情報Eiには、長秒信号のための露光時間E1,E2,E3及び短秒信号のための露光時間Esが含まれる。セレクタ264によってエリア18aに配された画素12の長秒信号が選択された場合、式(1)における露光時間情報Eiにはエリア18aにおける長秒信号のための露光時間E1が適用される。セレクタ264によってエリア18bに配された画素12の長秒信号が選択された場合、式(1)における露光時間情報Eiにはエリア18bにおける長秒信号のための露光時間E2が適用される。セレクタ264によってエリア18cに配された画素12の長秒信号が選択された場合、式(1)における露光時間情報Eiにはエリア18cにおける長秒信号のための露光時間E3が適用される。セレクタ264によって短秒信号が選択された場合、式(1)における露光時間情報Eiには短秒信号のための露光時間Esが適用される。
【0058】
出力値Vbを露光時間情報Eiで正規化することにより、セレクタ264により選択した信号によらず、入射光量と出力値Vhdrとの関係を線形化することができる。ダイナミックレンジ拡大処理部260は、別の言い方をすると、出力値Vbに対し、露光期間の長さの逆数に比例する重みで補正処理を行い出力値Vhdrとして出力する信号処理部であると言える。
【0059】
本実施形態の撮像装置400では、ラインインターリーブ読み出しを用い、エリア18a,18b,18cの順に、長秒信号の読み出しと短秒信号との読み出しとを行単位で交互に行う。これにより、露光時間判定用の短秒信号の読み出しが総ての行で終了する前にエリア18aにおける露光時間の判定を終え、エリア18aにおけるシャッタ走査を開始することが可能となる。換言すると、露光時間判定用の短秒信号の読み出しが総ての行で終了する前に長秒信号の露光期間を開始することができ、長秒信号の読み出し周期、すなわちフレームレートを向上することが可能となる。また、露光時間判定用の短秒信号の露光期間と長秒信号の露光期間との間の間隔を狭めることができ、露光時間判定の精度を向上することができる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、フレームレートを損なうことなく高品質のハイダイナミックレンジ画像を取得することができる。
【0061】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による撮像装置について、図8乃至図11を用いて説明する。第1実施形態による撮像装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0062】
はじめに、本実施形態による撮像装置の構成例について、図8及び図9を用いて説明する。図8は、本実施形態による撮像装置の概略構成を示すブロック図である。図9は、本実施形態による撮像装置を模式的に示す斜視図である。
【0063】
第1実施形態では、露光時間の調整領域として画素アレイの行によって規定された複数のエリア18a,18b,18cを定義した場合の構成例を説明した。本実施形態では、露光時間の調整領域を画素12毎に定義した場合の構成例について、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0064】
本実施形態による撮像装置400は、図8に示すように、画素部10と、信号処理部200と、メモリ部300と、により構成され得る。信号処理部200は、前段処理部210と、露光時間判定処理部240と、露光時間情報保持部250と、ダイナミックレンジ拡大処理部260と、露光制御部270と、メモリコントローラ280と、により構成され得る。メモリ部300は、画像信号保持部310と、露光時間情報保持部320と、により構成され得る。
【0065】
画素部10は、基本的には第1実施形態における撮像素子100の画素部10と同様である。図8では簡略化のため記載を省略しているが、第1実施形態における撮像素子100の画素部10以外の機能ブロックは、信号処理部200等に含まれ得る。例えば、垂直走査回路20の機能は、露光制御部270が備え得る。また、読み出し回路部30、メモリ部40、カウンタ46、水平走査回路50、信号出力部60及びタイミング発生回路70の機能のうちの少なくとも一部は、前段処理部210の機能の一部として捉えることもできる。
【0066】
本実施形態の画素部10が第1実施形態の画素部10と異なる点は、画素部10を構成する複数の画素12が、画素行単位ではなく、画素単位で露光時間を制御できるように構成されていることである。すなわち、画素部10の各行に配された制御線14を構成する複数の信号線のうち、少なくとも制御信号φTXを供給する信号線及び制御信号φRESを供給する信号線が、各列の画素12に対応して複数設けられている。
【0067】
前段処理部210は、画素部10から出力される長秒信号及び短秒信号の各々に対して第1実施形態と同様の前段処理を行い、処理後の長秒信号と短秒信号とを分離して後段の処理部へと送信する。具体的には、前段処理部210は、処理後の短秒信号を露光時間判定処理部240に送信し、処理後の長秒信号及び短秒信号をメモリ部300の画像信号保持部310にメモリコントローラ280を介して送信する。画像信号保持部310は、前段処理部210から受信した長秒信号及び短秒信号を、画像信号として保持する。
【0068】
露光時間判定処理部240は、前段処理部210から受信した短秒信号に対し、露光時間の判定処理を行い、長秒信号のための露光時間を決定するシャッタ走査のタイミングを決定する。露光時間判定処理部240は、短秒信号の判定によって決定された長秒信号のための露光時間に関する情報(露光時間情報)を、キャッシュメモリとしての露光時間情報保持部250に送信する。露光時間情報保持部250は、露光時間判定処理部240から受信した露光時間情報を一旦保持する。また、露光時間情報保持部250は、メモリコントローラ280を介してメモリ部300の露光時間情報保持部320との間で露光時間情報の送受信を行う。露光時間情報保持部320は、露光時間情報保持部250から受信した露光時間情報を保持する。
【0069】
露光制御部270は、露光時間情報保持部250に保持された露光時間情報及び各エリアの垂直走査情報に基づいて、画素部10に配された画素12のシャッタ走査及び読み出し走査の制御を行う。本実施形態において、露光制御部270は、複数の画素12の各々から短秒信号と長秒信号とを出力するように複数の画素12を制御する画素制御部である。
【0070】
ダイナミックレンジ拡大処理部260は、メモリ部300の画像信号保持部310に保持された画像信号と、露光時間情報保持部250に保持された露光時間情報とを用い、ダイナミックレンジの広い画像データを得るための処理を行う。なお、ダイナミックレンジ拡大処理部260の基本的な構成及び動作は、第1実施形態と同様である。
【0071】
本実施形態による撮像装置400は、複数の基板を積層してなる積層型のイメージセンサとして構成され得る。例えば、撮像装置400は、図9に示すように、画素基板410と、メモリ基板420と、処理回路基板430と、により構成され得る。画素基板410には、図8に示される機能ブロックのうち、少なくとも画素部10が配置される。メモリ基板420には、メモリ部300を構成する画像信号保持部310及び露光時間情報保持部320が配置され得る。処理回路基板430には、信号処理部200を構成する前段処理部210、露光時間判定処理部240、露光時間情報保持部250、ダイナミックレンジ拡大処理部260、露光制御部270及びメモリコントローラ280が配置され得る。なお、各機能ブロックの配置は上記の例に限定されるものではない。
【0072】
次に、本実施形態による撮像装置400の動作について、図10及び図11を用いて説明する。図10は、本実施形態による撮像装置の動作を示すタイミング図である。図11は、本実施形態による撮像装置におけるシャッタ制御の詳細を説明する図である。
【0073】
図10には、第1列から第n列で構成される複数の画素列のうち、N列目の画素12の動作タイミングを示している(Nは、1~nの整数)。図10中、「Read1」は短秒信号の読み出し走査のタイミングを示し、「Read2」は長秒信号の読み出し走査のタイミングを示している。また、「Shutter1」,「Shutter2」,「Shutter3」,「Shutter4」はシャッタ走査のタイミングを示している。1行目の画素12に着目すると、シャッタ走査Shutter1,Shutter2,Shutter3,Shutter4は、それぞれ時刻T74,T76,T78,T79に開始する。この例では、シャッタ走査のタイミングは4パターンで固定とされており、シャッタ動作の有効/非有効を含め、各画素12の露光時間を5通りに設定することが可能となっている。なお、この例ではシャッタ走査のタイミングを4パターンとしているが、シャッタ走査のタイミングは4パターンに限定されるものではない。
【0074】
まず、1行目の画素12に着目する。
時刻T70において、読み出し走査Read2に従い、前フレームの露光期間の間に蓄積された電荷に基づく長秒信号の読み出し動作を行う。
【0075】
続く時刻T71において、読み出し走査Read1に従い、時刻T70から時刻T71までの間に蓄積された電荷に基づく信号(短秒信号)の読み出し動作を行う。時刻T70から時刻T71までの期間の長さが、短秒信号のための露光時間である。露光時間判定処理部240は、1行目の画素12から取得された短秒信号に基づき、当該画素12における長秒信号のための露光時間を判定する。ここでは判定の結果、第1行第N列の画素12に対し、シャッタ走査Shutter2のタイミングでシャッタ動作を行うことが決定されたものとする。判定結果は、当該画素12の露光時間情報として、露光時間情報保持部250及びメモリコントローラ280を介して露光時間情報保持部320に保持される。
【0076】
続く時刻T76において、露光制御部270は、露光時間情報保持部320に保持された情報に基づき、第1行第N列の画素12に対してシャッタ動作(シャッタ走査Shutter2)を行う。
【0077】
続く時刻T81において、読み出し走査Read2に従い、時刻T76から時刻T81までの間に蓄積された電荷に基づく信号(長秒信号)の読み出し動作を行う。時刻T76から時刻T81までの期間の長さが、第1行第N列の画素12における長秒信号のための露光時間である。
【0078】
次に、2行目の画素12に着目する。
2行目の画素12に対しては、読み出し走査Read1に従い、時刻T71よりも後の時刻T72において、短秒信号の読み出しを行う。露光時間判定処理部240は、2行目の画素12から取得された短秒信号に基づき、当該画素12における長秒信号のための露光時間を判定する。ここでは判定の結果、第2行第N列の画素12に対し、シャッタ走査Shutter4のタイミングでシャッタ動作を行うことが決定されたものとする。判定結果は、当該画素12の露光時間情報として、露光時間情報保持部250及びメモリコントローラ280を介して露光時間情報保持部320に保持される。
【0079】
続く時刻T80において、露光制御部270は、露光時間情報保持部320に保持された情報に基づき、第2行第N列の画素12に対してシャッタ動作(シャッタ走査Shutter4)を行う。
【0080】
続く時刻T82において、読み出し走査Read2に従い、時刻T80から時刻T82までの間に蓄積された電荷に基づく信号(長秒信号)の読み出し動作を行う。時刻T80から時刻T82までの期間の長さが、第2行第N列の画素12における長秒信号のための露光時間である。
【0081】
次に、3行目の画素12に着目する。
3行目の画素12に対しては、読み出し走査Read1に従い、時刻T72よりも後の時刻T73において、短秒信号の読み出しを行う。露光時間判定処理部240は、3行目の画素12から取得された短秒信号に基づき、当該画素12における長秒信号のための露光時間を判定する。ここでは判定の結果、第3行第N列の画素12に対し、シャッタ走査Shutter1のタイミングでシャッタ動作を行うことが決定されたものとする。判定結果は、当該画素12の露光時間情報として、露光時間情報保持部250及びメモリコントローラ280を介して露光時間情報保持部320に保持される。
【0082】
続く時刻T76において、露光制御部270は、露光時間情報保持部320に保持された情報に基づき、第3行第N列の画素12に対してシャッタ動作(シャッタ走査Shutter1)を行う。
【0083】
続く時刻T83において、読み出し走査Read2に従い、時刻T76から時刻T83までの間に蓄積された電荷に基づく信号(長秒信号)の読み出し動作を行う。時刻T76から時刻T83までの期間の長さが、第3行第N列の画素12における長秒信号のための露光時間である。
【0084】
次に、4行目の画素12に着目する。
4行目の画素12に対しては、読み出し走査Read1に従い、時刻T73よりも後の時刻T74において、短秒信号の読み出しを行う。露光時間判定処理部240は、4行目の画素12から取得された短秒信号に基づき、当該画素12における長秒信号のための露光時間を判定する。ここでは判定の結果、第4行第N列の画素12に対し、シャッタ走査Shutter3のタイミングでシャッタ動作を行うことが決定されたものとする。判定結果は、当該画素12の露光時間情報として、露光時間情報保持部250及びメモリコントローラ280を介して露光時間情報保持部320に保持される。
【0085】
続く時刻T80において、露光制御部270は、露光時間情報保持部320に保持された情報に基づき、第4行第N列の画素12に対してシャッタ動作(シャッタ走査Shutter3)を行う。
【0086】
続く時刻T84において、読み出し走査Read2に従い、時刻T80から時刻T84までの間に蓄積された電荷に基づく信号(長秒信号)の読み出し動作を行う。時刻T80から時刻T84までの期間の長さが、第4行第N列の画素12における長秒信号のための露光時間である。
【0087】
なお、読み出し走査Read2とその次の読み出し走査Read1とにおいては、第1実施形態の撮像素子100と同様、長秒信号の読み出し動作と短秒信号の読み出し動作とを行単位で交互に行うラインインターリーブ駆動を行う。図10の例では、例えば、時刻T72と時刻T73との間に5行目の画素12の読み出し動作(Read2)を行い、時刻T73と時刻T74との間に6行目の画素12の読み出し動作(Read2)を行う。
【0088】
次に、シャッタ制御の詳細について、時刻T76から時刻T77までの期間の動作を例に挙げ、図11を用いて説明する。
【0089】
時刻T71において読み出し走査Read1が開始されると、露光時間判定処理部240は、画素部10から出力される短秒信号に対して順次、長秒信号のための露光時間を規定するための判定処理を行う。露光時間判定処理部240による判定結果は、長秒信号のための露光時間を表す情報(露光時間情報)として、露光時間情報保持部250及びメモリコントローラ280を介して露光時間情報保持部320に保持される。例えば、1行目の画素12の判定処理は時刻T71から開始され、判定結果に応じた露光時間情報が露光時間情報保持部320に保持される。2行目の画素12の判定処理は時刻T72から開始され、判定結果に応じた露光時間情報が露光時間情報保持部320に保持される。3行目の画素12の判定処理は時刻T73から開始され、判定結果に応じた露光時間情報が露光時間情報保持部320に保持される。4行目の画素12の判定処理は時刻T74から開始され、判定結果に応じた露光時間情報が露光時間情報保持部320に保持される。
【0090】
長秒信号のための露光時間を表す情報は、特に限定されるものではないが、例えばシャッタ動作のタイミングに関連付けられた数値で表すことができる。図11には、シャッタ走査Shutter1,Shutter2,Shutter3,Shutter4のタイミングでシャッタ動作を行う場合を、それぞれ“1”,“2”,“3”,“4”で表している。また、シャッタ走査Shutter1,Shutter2,Shutter3,Shutter4のいずれのタイミングでもシャッタ動作を行わない場合を“0”で表している。ここでは、第1行の第1列が“1”、第1行の第(N-2)列及び第N列が“2”、第1行の第(N+1)列が“3”、第1行の第(N-1)列及び第n列が“0”であったものとする。また、第3行の第1列、第N列及び第n列が“1”、第(N-1)列が“3”、第(N-2)列及び第(N+1)列が“4”であったものとする。
【0091】
時刻T76には、図10に示すように、第1行に対してシャッタ走査Shutter2が実行され、第3行に対してシャッタ走査Shutter1が実行される。露光時間情報保持部320のキャッシュメモリとしての露光時間情報保持部250は、露光時間情報保持部320から、シャッタ走査Shutter1用の露光時間情報として、第3行目の各画素12の露光時間情報をロードする。また、露光時間情報保持部250は、シャッタ走査Shutter2用の露光時間情報として、第1行目の各画素12の露光時間情報をロードする。露光時間情報保持部250は、シャッタ走査Shutter1用にロードされた露光時間情報を参照し、露光時間情報が“1”である列に対してシャッタ走査Shutter1を許容するイネーブル信号を生成し、露光制御部270に出力する。図11の例では、第1列、第N列及び第n列に対して、シャッタ走査Shutter1のイネーブル信号が出力される。また、露光時間情報保持部250は、シャッタ走査Shutter2用にロードされた露光時間情報を参照し、露光時間情報が“2”である列に対してシャッタ走査Shutter2を許容するイネーブル信号を生成し、露光制御部270に出力する。図11の例では、第(N-2)列及び第N列に対して、シャッタ走査Shutter2のイネーブル信号が出力される。
【0092】
露光制御部270は、露光時間情報保持部250から受信したイネーブル信号に基づき、対応する画素12にシャッタパルスを供給する。図11の例では、第1行の第(N-2)列及びN列、並びに、第3行の第1列、第N列及び第n列の画素12に、露光制御部270からシャッタパルスが供給される。これにより、画素部10を構成する画素12の各々の露光時間を制御することができる。
【0093】
本実施形態の撮像装置400においても第1実施形態と同様、ラインインターリーブ読み出しを用い、長秒信号の読み出しと短秒信号との読み出しとを行単位で交互に行う。これにより、露光時間判定用の短秒信号の読み出しが総ての行で終了する前に、先に読み出しが完了した行における露光時間の判定を終え、これら行に対するシャッタ走査を開始することが可能となる。換言すると、露光時間判定用の短秒信号の読み出しが総ての行で終了する前に長秒信号の露光期間を開始することができ、長秒信号の読み出し周期、すなわちフレームレートを向上することが可能となる。また、本実施形態では画素毎に露光時間を制御しているため、より細かい露光時間制御が可能となり、ひいてはダイナミックレンジの更なる拡張が可能である。
【0094】
このように、本実施形態によれば、フレームレートを損なうことなく高品質のハイダイナミックレンジ画像を取得することができる。
【0095】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による撮像システムについて、図12を用いて説明する。図12は、本実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
【0096】
上記第1及び第2実施形態で述べた撮像装置400は、種々の撮像システムに適用可能である。適用可能な撮像システムの例としては、デジタルスチルカメラ、デジタルカムコーダ、監視カメラ、複写機、ファックス、携帯電話、車載カメラ、観測衛星などが挙げられる。また、レンズなどの光学系と撮像装置とを備えるカメラモジュールも、撮像システムに含まれる。図12には、これらのうちの一例として、デジタルスチルカメラのブロック図を例示している。
【0097】
図12に例示した撮像システム500は、撮像装置501、被写体の光学像を撮像装置501に結像させるレンズ502、レンズ502を通過する光量を可変にするための絞り504、レンズ502の保護のためのバリア506を有する。レンズ502及び絞り504は、撮像装置501に光を集光する光学系である。撮像装置501は、第1及び第2実施形態のいずれかで説明した撮像装置400であって、レンズ502により結像された光学像を画像データに変換する。
【0098】
撮像システム500は、また、撮像装置501より出力される出力信号の処理を行う信号処理部508を有する。信号処理部508は、撮像装置501が出力するデジタル信号から画像データの生成を行う信号処理装置である。また、信号処理部508は必要に応じて各種の補正、圧縮を行って画像データを出力する動作を行う。撮像装置501は、信号処理部508で処理されるデジタル信号を生成するAD変換部を備えうる。AD変換部は、撮像装置501の光電変換部が形成された半導体層(半導体基板)に形成されていてもよいし、撮像装置501の光電変換部が形成された半導体層とは別の半導体基板に形成されていてもよい。また、信号処理部508が撮像装置501と同一の半導体基板に形成されていてもよい。
【0099】
撮像システム500は、更に、画像データを一時的に記憶するためのメモリ部510、外部コンピュータ等と通信するための外部インターフェース部(外部I/F部)512を有する。更に撮像システム500は、撮像データの記録又は読み出しを行うための半導体メモリ等の記録媒体514、記録媒体514に記録又は読み出しを行うための記録媒体制御インターフェース部(記録媒体制御I/F部)516を有する。なお、記録媒体514は、撮像システム500に内蔵されていてもよく、着脱可能であってもよい。
【0100】
更に撮像システム500は、各種演算とデジタルスチルカメラ全体を制御する全体制御・演算部518、撮像装置501と信号処理部508に各種タイミング信号を出力するタイミング発生部520を有する。ここで、タイミング信号などは外部から入力されてもよく、撮像システム500は少なくとも撮像装置501と、撮像装置501から出力された出力信号を処理する信号処理部508とを有すればよい。
【0101】
撮像装置501は、撮像信号を信号処理部508に出力する。信号処理部508は、撮像装置501から出力される撮像信号に対して所定の信号処理を実施し、画像データを出力する。信号処理部508は、撮像信号を用いて、画像を生成する。
【0102】
このように、本実施形態によれば、第1及び第2実施形態による撮像装置400を適用した撮像システムを実現することができる。
【0103】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による撮像システム及び移動体について、図13を用いて説明する。図13は、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
【0104】
図13(a)は、車載カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム600は、撮像装置610を有する。撮像装置610は、上記第1及び第2実施形態のいずれかに記載の撮像装置400である。撮像システム600は、撮像装置610により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部612と、撮像システム600により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部614を有する。また、撮像システム600は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部616と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部618と、を有する。ここで、視差取得部614や距離取得部616は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部618はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0105】
撮像システム600は車両情報取得装置620と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU630が接続されている。また、撮像システム600は、衝突判定部618での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置640とも接続されている。例えば、衝突判定部618の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU630はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置640は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0106】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム600で撮像する。図13(b)に、車両前方(撮像範囲650)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置620が、撮像システム600ないしは撮像装置610に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0107】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。更に、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0108】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0109】
また、第1実施形態では行によって規定される複数のエリアを画素部10に定義した例を示し、第2実施形態では各々が1つの画素12によって規定される複数のエリアを画素部10に定義した例を示したが、エリアの規定方法はこれらに限定されるものではない。例えば、列によって規定される複数のエリアを画素部10に定義するようにしてもよいし、各々がn列未満の列とm行未満の行とからなる複数の画素ブロックを画素部10に定義するようにしてもよい。
【0110】
また、上記第1及び第2実施形態では、画像の取得を目的とした装置、すなわち撮像装置を例示したが、本発明の適用例は必ずしも撮像装置に限定されるものではない。例えば、上記第4実施形態で説明したような測距を主たる目的とする装置に適用する場合にあっては、必ずしも画像を出力する必要はない。このような場合、当該装置は、光情報を所定の電気信号に変換する光電変換装置と言うことができる。撮像装置は、光電変換装置の1つである。
【0111】
また、上記第3及び第4実施形態に示した撮像システムは、本発明の撮像装置を適用しうる撮像システム例を示したものであり、本発明の光電変換装置を適用可能な撮像システムは図12及び図13に示した構成に限定されるものではない。
【0112】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0113】
なお、上記実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0114】
10…画素部
12…画素
18a,18b,18c…エリア
20…垂直走査回路
100…撮像素子
200…信号処理部
240…露光時間判定処理部
250,320…露光時間情報保持部
260…ダイナミックレンジ拡大処理部
270…露光制御部
400…撮像装置
図1
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図13