(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】薄膜構造体、及びそれを含む電子素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
H01L21/316 M
(21)【出願番号】P 2020163497
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】10-2019-0120539
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】趙 常▲ヒョン▼
(72)【発明者】
【氏名】許 鎭盛
(72)【発明者】
【氏名】李 香淑
(72)【発明者】
【氏名】金 ▲尚▼▲ウク▼
(72)【発明者】
【氏名】李 潤姓
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0240804(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0203529(US,A1)
【文献】特開2004-336044(JP,A)
【文献】特開2002-319583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2層とを含む複数の層を含み、Hf
xA
1-xO
z(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含
み、
前記誘電体層は、
厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO
2
を含む第1層と、
ドーパントAを含み、厚みがj*t(j>i、jは、3以上の整数である)である前記最上部層と、
前記第1層上に配置され、厚みがj*tであり、ドーパントAを含む第2層と、
前記第2層上に配置され、厚みがi*tであり、HfO
2
を含む第3層と、
を含む、薄膜構造体。
【請求項2】
前記最上部層の厚みは、0.25nm以上である、請求項1に記載の薄膜構造体。
【請求項3】
前記第2層と前記第3層との対が、前記第1層と前記最上部層との間に複数回反復配置される、請求項
1に記載の薄膜構造体。
【請求項4】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2
層とを含む複数の層を含み、Hf
x
A
1-x
O
z
(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含み、
前記誘電体層は、
厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO
2
を含む第1層と、
ドーパントAを含み、厚みがj*t(j>i、jは、3以上の整数である)である前記最上部層と、
前記第1層上に配置され、厚みがm*t(i<m<j、mは、整数である)であり、ドーパントAを含む第2層と
前記第2層上に配置され、厚みがn*t(i<n<j、nは、整数である)であり、HfO
2を含む第3層と、
を含む
、薄膜構造体。
【請求項5】
前記誘電体層は、
前記第1層と前記第2層との対が、前記第3層下部に複数回反復配置される、請求項
4に記載の薄膜構造体。
【請求項6】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2
層とを含む複数の層を含み、Hf
x
A
1-x
O
z
(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含み、
前記誘電体層は、
厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO
2
を含む第1層と、
ドーパントAを含み、厚みがj*t(j≧i、jは、3以上の整数である)である前記最上部層と、
前記第1層上に配置され、厚みがi*tであり、ドーパントAを含む第2層と、
前記第2層上に配置され、厚みがj*tであり、HfO
2を含む第3層と、
を含む
、薄膜構造体。
【請求項7】
前記第1層と前記第2層との対が、前記第3層下部に複数回反復配置される、請求項
6に記載の薄膜構造体。
【請求項8】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2
層とを含む複数の層を含み、Hf
x
A
1-x
O
z
(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含み、
前記誘電体層は、
厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO
2
を含む第1層と、
ドーパントAを含み、厚みがj*t(i=j、jは、3以上の整数である)である前記最上部層と、
前記第1層上に配置され、厚みがk*t(k<i、kは、整数である)であり、ドーパントAを含む第2層と、
前記第2層上に配置され、厚みがk*tであり、HfO
2を含む第3層と、
を含む
、薄膜構造体。
【請求項9】
前記第2層と前記第3層との対が、前記第1層と前記最上部層との間に反復配置される、請求項
8に記載の薄膜構造体。
【請求項10】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2
層とを含む複数の層を含み、Hf
x
A
1-x
O
z
(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含み、
前記誘電体層は、
ドーパントAを含み、厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)である第1層と、
厚みがj*t(j>i、jは、3以上の整数である)であり、HfO
2を含む前記最上部層と、を含む
、薄膜構造体。
【請求項11】
前記誘電体層は、
前記第1層上に配置され、厚みがj*tであり、HfO
2を含む第2層と
前記第2層上に配置され、厚みがi*tであり、ドーパントAを含む第3層と、をさらに含む、請求項
10に記載の薄膜構造体。
【請求項12】
前記第2層と前記第3層との対が、前記第1層と前記最上部層との間に複数回反復配置される、請求項
11に記載の薄膜構造体。
【請求項13】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2
層とを含む複数の層を含み、Hf
x
A
1-x
O
z
(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含み、
前記誘電体層は、
厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO
2を含む第1層と、
前記第1層上に形成され、ドーパントAを含み、厚みがj*t(j>i)である第2層と、
厚みがk*t(k>i,j)であり、HfO
2を含む前記最上部層と、を含む
、薄膜構造体。
【請求項14】
ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2
層とを含む複数の層を含み、Hf
x
A
1-x
O
z
(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層と、
前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層と、を含み、
前記誘電体層は、
ドーパントAを含み、厚みがj*t(jは、整数であり、tは、実数である)である第1層と、
厚みがi*t(i>j)であり、HfO
2を含む第2層と、
ドーパントAを含み、厚みがn*t(n>i,j)である前記最上部層と、を含む
、薄膜構造体。
【請求項15】
前記tは、0.05nm以上である、請求項
1に記載の薄膜構造体。
【請求項16】
前記誘電体層の厚みは、0.5~20nmである、請求項1から
15のいずれか一項に記載の薄膜構造体。
【請求項17】
前記Aは、Zr、La、Y、Si、Al、Snのうちいずれか一つを含む、請求項1から
16のいずれか一項に記載の薄膜構造体。
【請求項18】
前記第1伝導層は、
金属、伝導性酸化物、グラフェンのうちいずれか一つを含む、請求項1から
17のいずれか一項に記載の薄膜構造体。
【請求項19】
基板を準備する段階と、
前記基板上に、ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO
2層とを含む複数の層を形成し、Hf
aA
bO
z(a、b、zは、実数である)化合物からなる誘電体層を形成する段階であって、前記複数の層において、最上部層の厚みを最も厚く形成する段階と、
前記誘電体層上に、前記最上部層に接する伝導層を形成する段階と、を含
み、
前記誘電体層を形成する段階が、
前記誘電体層のHfとAとの含量比を設定する段階と、
前記含量比により、前記最上部層の種類と厚みとを設定する段階と、を含む、薄膜構造体の製造方法。
【請求項20】
前記含量比をa:bとするとき、
a≦bである場合、前記最上部層をAドーパント層にし、
a>bである場合、前記最上部層をHfO
2層にする、請求項
19に記載の薄膜構造体の製造方法。
【請求項21】
熱処理する段階をさらに含み、
前記熱処理する段階は、
前記誘電体層を形成した後、前記伝導層を形成する前、または前記伝導層を形成した後に行われる、請求項
19または20に記載の薄膜構造体の製造方法。
【請求項22】
半導体層と、
前記半導体層上に配置された、請求項1ないし
18のうちいずれか1項に記載の薄膜構造体と、を含む、電子素子。
【請求項23】
前記半導体層と前記薄膜構造体との間に配置された絶縁層をさらに含む、請求項
22に記載の電子素子。
【請求項24】
前記絶縁層と前記薄膜構造体との間に配置された第2伝導層をさらに含む、請求項
23に記載の電子素子。
【請求項25】
第2伝導層と、
前記第2伝導層上に配置された、請求項1ないし
18のうちいずれか1項に記載の薄膜構造体と、を含む、電子素子。
【請求項26】
前記第2伝導層と前記薄膜構造体との間に配置された絶縁層をさらに含む、請求項
25に記載の電子素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜構造体、及びそれを含む電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子のダウンスケーリング(down-scaling)により、そこに具備されるトランジスタ、キャパシタのような電子素子が占める空間も急激に縮小されている。そのような空間的限界を克服し、良好な動作特性を示すことができる材料が必要になっている。
【0003】
HfO2は、電子素子において、high-k誘電物質として使われる核心的な素材である。該物質の誘電率や安定性を高めるために、多様なドーピング物質、ドーピング方式などの研究が活発になされている。最近、Zr、Si、Al、La、YなどがドーピングされたHfO2薄膜が一定厚み以下において、強誘電性(ferroelectricity)を示すことができるという結果が報告された。強誘電性は、ネガティブキャパシタンス(negative capacitance)効果を示し、それにより、強誘電性物質を採用した電子素子の消費電力を画期的に低くすることができる。
【0004】
それにより、HfO2系の誘電物質を活用した低電力ロジック素子、不揮発性メモリ(nonvolatile memory)、キャパシタなどに対する研究が活発になされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、高い誘電率を示すドープされたHfO2薄膜、その製造方法、及びそれを活用する電子素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一類型によれば、ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO2層とを含む複数の層を含み、HfxA1-xOz(0<x<1、zは、実数である)化合物をなし、前記複数の層において、最上部層の厚みが最も厚い誘電体層;及び前記誘電体層上に、前記最上部層と接するように配置された第1伝導層;を含む薄膜構造体が提供される。
前記最上部層の厚みは、0.25nm以上でもある。
【0007】
前記誘電体層は、厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO2を含む第1層と、ドーパントAを含み、厚みがj*t(j≧i、jは、3以上の整数である)である前記最上部層と、を含んでもよい。
【0008】
前記誘電体層は、j>iであり、前記第1層上に配置され、厚みがj*tであり、ドーパントAを含む第2層と、前記第2層上に配置され、厚みがi*tであり、HfO2を含む第3層と、をさらに含んでもよく、前記第2層と前記第3層との対が、前記第1層と前記最上部層との間に複数回反復配置されうる。
【0009】
または、前記誘電体層は、j>iであり、前記第1層上に配置され、厚みがm*t(i<m<j、mは、整数である)であり、ドーパントAを含む第2層と、前記第2層上に配置され、厚みがn*t(i<n<j、nは、整数である)であり、HfO2を含む第3層と、をさらに含んでもよく、前記第1層と前記第2層との対が、前記第3層下部に複数回反復配置されうる。
【0010】
または、前記誘電体層は、前記第1層上に配置され、厚みがi*tであり、ドーパントAを含む第2層と、前記第2層上に配置され、厚みがj*tであり、HfO2を含む第3層と、をさらに含んでもよく、前記第1層と前記第2層との対が、前記第3層下部に複数回反復配置されうる。
【0011】
または、前記誘電体層は、i=jであり、前記第1層上に配置され、厚みがk*t(k<i、kは、整数である)であり、ドーパントAを含む第2層と、前記第2層上に配置され、厚みがk*tであり、HfO2を含む第3層と、をさらに含んでもよく、前記第2層と前記第3層との対が、前記第1層と前記最上部層との間に反復配置されうる。
【0012】
前記誘電体層は、ドーパントAを含み、厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)である第1層と、厚みがj*t(j>i、jは、3以上の整数である)であり、HfO2を含む前記最上部層と、を含んでもよい。
【0013】
前記誘電体層は、前記第1層上に配置され、厚みがj*tであり、HfO2を含む第2層と、前記第2層上に配置され、厚みがi*tであり、ドーパントAを含む第3層と、をさらに含んでもよく、前記第2層と前記第3層との対が、前記第1層と前記最上部層との間に複数回反復配置されうる。
【0014】
前記誘電体層は、厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であり、HfO2を含む第1層と、前記第1層上に形成され、ドーパントAを含み、厚みがj*t(j>i)である第2層と、厚みがk*t(k>i,j)であり、HfO2を含む前記最上部層と、を含んでもよい。
【0015】
前記誘電体層は、ドーパントAを含み、厚みがj*t(jは、整数であり、tは、実数である)である第1層と、厚みがi*t(i>j)であり、HfO2を含む第2層と、ドーパントAを含み、厚みがn*t(n>i,j)である前記最上部層と、を含んでもよい。
【0016】
前記tは、0.05nm以上でもある。
前記誘電体層の厚みは、0.5~20nmでもある。
前記Aは、Zr、La、Y、Si、Al、Snのうちいずれか一つを含んでもよい。
【0017】
前記第1伝導層は、金属、伝導性酸化物、グラフェンのうちいずれか一つを含んでもよい。
【0018】
一類型によれば、基板を準備する段階と、前記基板上に、ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO2層とを含む複数の層を形成し、HfxA1-xOz(0<x<1、zは、実数である)化合物からなる誘電体層を形成するものの、前記複数の層において、最上部層の厚みを最も厚く形成する段階と、前記誘電体層上に、前記最上部層に接する伝導層を形成する段階と、を含む、薄膜構造体の製造方法が提供される。
【0019】
前記製造方法は、前記誘電体層のHfとAとの含量比を設定する段階と、前記含量比により、前記最上部層の種類と厚みとを設定する段階と、をさらに含んでもよい。
【0020】
前記含量比をa:bとするとき、a≦bである場合、前記最上部層をAドーパント層にし、a>bである場合、前記最上部層をHfO2層にすることができる。
【0021】
前記方法は、熱処理する段階をさらに含み、前記熱処理する段階は、前記誘電体層を形成した後、前記伝導層を形成する前、または前記伝導層を形成した後にも行われる。
【0022】
一類型によれば、半導体層と、前記半導体層上に形成された前述のいずれか1つの薄膜構造体と、を含む電子素子が提供される。
【0023】
前記電子素子は、前記半導体層と前記薄膜構造体との間に配置された絶縁層をさらに含んでもよい。
【0024】
前記電子素子は、前記絶縁層と前記薄膜構造体との間に配置された第2伝導層をさらに含んでもよい。
【0025】
一類型によれば、第2伝導層と、前記第2伝導層上に配置された前述のいずれか1つの薄膜構造体と、を含む電子素子が提供される。
【0026】
前記電子素子は、前記第2伝導層と前記薄膜構造体との間に配置された絶縁層をさらに含んでもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の薄膜構造体及び製造方法によれば、結晶性に優れ、かつ高い誘電率を示す誘電体層が提供される。
【0028】
前述の薄膜構造体は、トランジスタ、キャパシタ、集積回路素子など多様な電子素子に採用され、そのような電子素子は、良好な動作性能を示すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態による薄膜構造体の概略的な構造を示す断面図である。
【
図2】一実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の構造を概念的に示す断面図である。
【
図3A】一実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の例示的な構造を示す断面図である。
【
図3B】製造された
図3Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真である。
【
図4】
図3Aの誘電体層と比較するための、比較例による誘電体層の例示的な構造を示す断面図である。
【
図5】
図3Aの実施形態による誘電体層と、
図4の比較例の誘電体層との誘電率を比較して示す図面である。
【
図6】他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図7】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図8A】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図8B】製造された
図8Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真である。
【
図9A】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図9B】製造された
図9Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真である。
【
図10A】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図11】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図12A】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図13】
図12Aの誘電体層と比較するための、比較例による誘電体層の構造を示す断面図である。
【
図14】
図12Aの実施形態による誘電体層と、
図11の比較例の誘電体層との誘電率を比較して示す図面である。
【
図15】さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【
図16】一実施形態による、薄膜構造体の製造方法の段階を概略的に示すフローチャートである。
【
図17】一実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図18】他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図19】さらに他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図20】さらに他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
【
図21】さらに他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付された図面を参照し、本実施形態について詳細に説明する。説明される実施形態は、ただ例示的なものに過ぎず、そのような実施形態から多様な変形が可能である。以下の図面において、同一参照符号は、同一構成要素を指し、図面上において、各構成要素の大きさは、説明の明瞭性と便宜さとのために誇張されてもいる。
【0031】
以下において、「上部」や「上」と記載されたところは、接触して真上にあるものことだけではなく、非接触で上にあるものを含んでもよい。
【0032】
第1、第2のような用語は、多様な構成要素の説明にも使用されるが、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的のみに使用される。そのような用語は、構成要素の物質または構造が異なることを限定するものではない。
【0033】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、それは、特別に反対となる記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいということを意味する。
【0034】
また、明細書に記載された「…部」、「モジュール」というような用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、それは、ハードウェアまたはソフトウェアによって具現されるか、あるいはハードウェアとソフトウェアとの結合によっても具現される。
【0035】
「前記」の用語、及びそれと類似した指示用語の使用は、単数及び複数のいずれにも該当するものである。
【0036】
方法を構成する段階は、説明された順に行わなければならないという明白な言及がなければ、適切な順序によっても行われる。また、全ての例示的な用語(例えば、など)の使用は、単に技術的思想について詳細に説明するためのものであり、特許請求の範囲によって限定されない以上、そのような用語によって権利範囲が限定されるものではない。
【0037】
図1は、一実施形態による薄膜構造体の概略的な構造を示す断面図であり、
図2は、実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の構造を概念的に示す断面図である。
【0038】
薄膜構造体1000は、誘電体層500と、誘電体層500上部に配置された第1伝導層700と、を含む。
【0039】
誘電体層500は、HfxA1-xOzの化合物を含む。そのような化合物は、ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO2層とを含む複数の層構造によっても具現される。
【0040】
ドーパントAは、Zr・La・Yのような遷移金属、Si、Al、Snのうちいずれか一つを含んでもよく、二元系または三元系以上によってもなる。ドーパント層は、ZrO2・LaO2・YO2を含む遷移金属系酸化物、及びSiO2、Al2O3、SnO2のうちいずれか一つを含んでもよい。
【0041】
第1伝導層700には、TiN;W、Mo、Niなどを含む金属;RuO2、SrRuO3、ITOなどを含む伝導性酸化物;またはグラフェンを含む2D物質のうちいずれか一つが含まれてもよい。
【0042】
誘電体層500を構成する複数の層それぞれの層数、厚み、反復される形態などは、HfxA1-xOz(0<x<1、zは、実数である)の組成比、すなわち、HfとAとの含量比、及び誘電体層500の全体厚を考慮しても設定される。前記複数の層の設定形態は、与えられたHfとAとの含量比について、さらに高い誘電率を具現するようにも定められる。
【0043】
一実施形態の薄膜構造体1000は、結晶性に優れ、高い誘電率を示す誘電体層500を具現するため、第1伝導層700と接する最上部層UPの厚み、組成を適切に設定している。
【0044】
誘電体層500を構成する複数の層において、最上部層UPの厚みTHが最も厚く設定されうる。複数の層において、少なくとも1層の厚みが、最上部層UPの厚みTHと同じでもある。言い換えれば、複数の層それぞれの厚みは、最上部層UPの厚みTHと同じであるか、あるいはそれよりも薄い。最上部層UPは、HfO2層でもあり、またはドーパントAを含むドーパント層(A-dopant layer)でもある。最上部層UPが、HfO2層であるか、あるいはAドーパント層であるかということは、誘電体層500をなす化合物HfxA1-xOz内において、HfとAとの含量比を考慮しても定められる。
【0045】
また、最上部層UPの厚みは、誘電体層500の組成が同一である場合において、最上部層UPの厚みにより、誘電体層500の電気的性質が異なりうることを考慮しても定められる。最上部層UPの厚みは、約0.25nm以上でもある。
【0046】
誘電体層500の厚みは、誘電体層500の誘電率など、その他電気的性質に影響を及ぼす要素であり、誘電体層500の厚みは、所望する性能に適しても設定される。誘電体層500の総厚は、約0.5~20nmでもある。ただし、最上部層UP、誘電体層500の厚みがそのような例示に限定されるものではない。
【0047】
誘電体層500は、所定の基板SU上にも形成される。基板SUの種類は、特別に限定されるものではなく、例えば、誘電体層500が活用される電子素子の構造によっても定められる。
【0048】
以下、誘電体層の多様な実施形態について説明する。一実施形態は、向上された誘電率を示すことができる多様な構造を含んでいる。そのような実施形態は、誘電体層の組成が同一である場合においても、最上部層の厚みや種類により、製造された誘電体層の結晶性が異なり、それにより、誘電率も異なることを考慮して導き出されている。
【0049】
以下の実施形態は、
図2の誘電体層500を、HfとAとの含量比により、多様に具現した例示を示すものであるが、誘電体層500の具現形態は、後述の例示的な説明だけに制限されるものではない。すなわち、最上部層UPの厚みと種類との要件を満足する限り、最上部層UP下部に配置されるHfO
2層、Aドーパント層の位置、層数、厚みなどは、多様にも変更される。
【0050】
以下において、ドーパントAは、Zrと例示し、ドーパント層としてZrO2層を例示して説明するが、それらに限定されるものではなく、前述の多様なドーパント物質が誘電体層にも採用される。
【0051】
図3Aは、一実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の例示的な構造を示す断面図である。
図3Bは、製造された
図3Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真を示す。
【0052】
誘電体層501は、i-cycleで製造されたHfO2を含む第1層11と、j-cycle(j>i)で製造されたZrO2を含む最上部層UP1と、を含む。
【0053】
誘電体層501の形成のために、ALD(atomic layer deposition)、MOALD(metal organic atomic layer deposition)、CVD(chemical vapor deposition)、MOCVD(metal organic chemical vapor deposition)、PVD(physical vapor deposition)などの蒸着方法が使用されうる。前記方法は、チャンバ内にターゲット基板を位置させ、チャンバを所定温度に加熱し、ソースを供給する過程を含み、そのような過程により、ソース物質がターゲット基板上に蒸着される。ここで、該cycleは、温度、時間を含んで設定される所定の工程条件で定められる蒸着単位である。1cycleで形成される厚みをtとするとき、第1層11の厚みは、i*t、最上層UP1の厚みは、j*tになる。1cycleが形成する厚みをtで表現しており、tは、0.05nm以上でもある。tは、例えば、0.1~0.9nmでもあるが、ただし、それに限定されるものではない。以下において、「i-cycle」のような表現は、「厚みi*t」という表現と類似した意味にも混用される。
【0054】
誘電体層501は、また、第1層11上に配置され、厚みがj*tであり、ZrO2を含む第2層12、第2層上に配置され、厚みがi*tであり、HfO2を含む第3層13をさらに含んでもよい。第2層12と第3層13との対が、第1層11と最上部層UP1との間に複数回反復配置されうる。反復される回数は、形成しようとする誘電体層501の全体厚を考慮して決めることができる。
【0055】
誘電体層501は、HfとZrとの含量比をa:bとするとき、a<bである場合であり、すなわち、i<jの場合である。jは、例えば、3以上でもある。ZrO2を含む層が、HfO2を含む層より厚く形成されており、最上部層UP1も、ZrO2層で構成されている。
【0056】
図3Bは、製造された
図3Aの誘電体層501に係わる電子顕微鏡写真であり、i=1、j=4であり、HfO
2 1cycleとZrO
2 4cycleとの対が5回反復された場合に係わるものである。
【0057】
図3Bに示された薄膜は、Si層/SiO
2層/誘電体層501/メタル層Mの順序に形成されている。誘電体層501は、Hf
0.2Zr
0.8O
2をなす。誘電体層501は、図面に示されるように、良好な結晶性を示している。
【0058】
図4は、
図3Aの誘電体層と比較するための、比較例による誘電体層の例示的な構造を示す断面図である。
【0059】
誘電体層50は、
図3Aの誘電体層501と同一組成のHf
0.2Zr
0.8O
2をなし、ただし、ZrO
2 4cycleによってなる第1層1、HfO
2 1cycleによってなる第2層2の順序に配置された点において、誘電体層501と違いがある。
【0060】
図5は、
図3Aの実施形態による誘電体層と、
図4の比較例の誘電体層との誘電率を比較して示す図面である。
【0061】
一実施形態による誘電体層501の場合、比較例の誘電体層50より高い誘電率を示す。それは、同一組成である場合においても、伝導層と接する最上部層の形態(種類、厚み)により、結晶性が異なって示されるためであると分析される。すなわち、最上部層が、1*t厚のHfO2層である場合、最上部層が4*t厚のZrO2である実施形態の場合より低い結晶性を示し、それにより、低い誘電率特性を示している。
【0062】
図6は、他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【0063】
誘電体層502は、i-cycleで製造されたHfO2を含む第1層21と、j-cycle(j>i)で製造されたZrO2を含む最上部層UP2と、を含む。すなわち、第1層21は、i*t厚のHfO2層、最上部層UP2は、j*t厚のZrO2層になる。jは、3以上でもある。
【0064】
誘電体層502は、また、第1層21上に配置され、m-cycleで製造され、厚みがm*t(i<m<j)であり、ドーパントAを含む第2層22、第2層上に配置され、n-cycleで製造され、厚みがn*t(i<n<j)であり、HfO2を含む第3層23をさらに含んでもよい。第1層21と第2層22との対が、第3層23下部に反復配置されうる。
【0065】
本実施形態の誘電体層502も、前述の誘電体層501と類似し、HfとZrとの含量比をa:bとするとき、a<bである場合に該当する。本実施形態の誘電体層502は、そのような含量条件により、隣接形成される第1層21、第2層22の厚みを設定するが、最上部層UP2、それにすぐ隣接した第3層23の厚みは、それぞれ第2層22、第1層11より厚く設定した例示を示す。jは、例えば、3以上でもあり、また、i:m=n:jでもある。ただし、それに限定されるものではない。
【0066】
図3A、
図5の実施形態は、誘電体層501,502において、Hfの含量がZr含量より少ない場合、最上部層をZrO
2で設定したことを例示したが、他の実施形態において、そのような場合にも、最上部層をHfO
2にしながら、最も厚く設定することも可能である。
【0067】
図7は、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【0068】
誘電体層507は、i-cycleで製造されたHfO2を含む第1層71、j-cycle(j>i)で製造されたZrO2を含む第2層72、及びk-cycle(k>i,j)で製造されたHfO2を含む最上層部層UP7を含む。すなわち、第1層71は、i*t厚のHfO2層、第2層72は、j*t厚のZrO2層、最上部層UP7は、k*t(k>i,j)厚のHfO2層であり、最上部層UP7の厚みが最も厚い。
【0069】
第1層71と第2層72は、複数回反復されうる。第1層71と第2層72は、例えば、R回反復されうる。誘電体層507において、Hfの含量がZrより少ない場合であり、k<R*(j-i)でもある。例えば、k=5、R=3、j=3、i=1でもあるが、それら以外にも、多様な形態で誘電体層507を構成することができる。
【0070】
図8Aは、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図であり、
図8Bは、製造された
図8Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真を示す。
【0071】
誘電体層503は、i-cycleで製造されたHfO2を含む第1層21と、j-cycle(j>i)で製造されたZrO2を含む最上部層UP3と、を含む。第1層21と最上部層UP3との厚みは、それぞれi*t、j*tでもある。tは、0.3~0.8nmでもある。jは、3以上でもある。最上部層UP3の厚みは、約25nm以上でもある。
【0072】
誘電体層503は、また、第1層31上に配置され、i-cycleで製造されたZrO2を含む第2層32と、第2層32上に配置され、j-cycleで製造されたHfO2を含む第3層33をさらに含む。第1層31と第2層32との対が、第3層33下部に複数回反復配置されうる。反復される回数は、誘電体層503の全体厚を考慮しても定められる。
【0073】
本実施形態の誘電体層503は、HfとZrとの含量比が1:1である場合であり、Hf0.5Zr0.5O2をなす。そのような組成により、隣接配置される第1層31、第2層32を同一厚に設定するが、最上部層UP3、及びそれにすぐ隣接した第3層33は、第1層31、第2層32より厚く設定している。
【0074】
図8Bに示された薄膜は、Si層/SiO
2層/誘電体層503/メタル層Mの順序に形成されている。誘電体層503は、
図7Aにおいて、1cycleで製造された第1層31、1cycleで製造された第2層32が6回反復され、第3層33、最上部層UP3は、それぞれ6cycleで製造し、Hf
0.5Zr
0.5O
2を形成した場合である。誘電体層503は、図面に示されるように、良好な結晶性を示している。
【0075】
図9Aは、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
図9Bは、製造された
図9Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真を示す。
【0076】
誘電体層504は、j-cycleで製造されたHfO2を含む第1層41と、j-cycleで製造されたZrO2を含む最上部層UP4と、を含む。jは、3以上でもある。最上部層UP4の厚みは、25nm以上でもある。
【0077】
誘電体層504は、また、第1層41上に配置され、j-cycleで製造されたZrO2を含む第2層42と、第2層42上に配置され、j-cycleで製造されたHfO2を含む第3層43と、をさらに含む。第1層41と第2層42との対が、第3層43下部に複数回反復配置されうる。反復される回数は、誘電体層503の全体厚を考慮しても定められる。
【0078】
本実施形態の誘電体層503は、HfとZrとの含量比が1:1と同じであり、Hf0.5Zr0.5O2を形成した場合であり、複数の層がいずれも同厚に設定されている。
【0079】
図9Bは、
図9Aにおいて、jを4にし、第1層41と第2層42とを2回反復し、第3層43、最上部層UP3を形成した場合の電子顕微鏡写真である。すなわち、HfO
2層とZrO
2層とがそれぞれ4cycleで3回反復積層された形態の誘電体層503であり、厚み12tであるHf
0.5Zr
0.5O
2を製造した電子顕微鏡写真である。図面に示されるように、良好な結晶性を示している。
【0080】
図10Aは、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図であり、
図10Bは、製造された
図10Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真を示す。
【0081】
誘電体層505は、j-cycleで製造されたHfO2を含む第1層51と、j-cycleで製造されたZrO2を含む最上部層UP5と、を含む。
【0082】
誘電体層505は、また、第1層51上に配置され、k-cycle(k<j)で製造されたZrO2を含む第2層52と、第2層52上に配置され、k-cycle(k<j)で製造されたHfO2を含む第3層53と、をさらに含み、第2層52と第3層53との対が、第1層51と最上部層UP5との間に反復配置されうる。反復される回数は、誘電体層505全体厚を考慮しても定められる。
【0083】
本実施形態の誘電体層505も、誘電体層503,504と同様に、HfとZrとの含量比が1:1と同じであり、Hf0.5Zr0.5O2を形成した例である。本実施形態の誘電体層505は、第1層51と最上部層UP5とを同厚にし、それら間に、最上部層UP5の厚みより薄い厚みの第2層52、第3層53を反復配置した例である。
【0084】
図10Bの電子顕微鏡写真は、5cycleで製造されたHfO
2層と、5cycleで製造されたZrO
2層(最上部層)との間に、1cycleで製造されたZrO
2層と、1cycleで製造されたHfO
2層とが5回反復積層され、Hf
0.5Zr
0.5O
2を形成した誘電体層505に係わるものである。誘電体層505は、図面に示されるように、良好な結晶性を示している。
【0085】
図8A、
図9A、
図10Aの実施形態は、誘電体層503,504,505において、Hf含量がZr含量と同じである場合、最上部層を、ZrO
2で設定したところを例示したが、他の実施形態において、そのような場合にも、最上部層をHfO
2にしながら、最も厚く設定することも可能である。
【0086】
図11は、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【0087】
誘電体層508は、i-cycleで製造されたHfO2を含む第1層81、j-cycle(j>i)で製造されたZrO2を含む第2層82、及びm-cycle(m>i,j)で製造されたHfO2を含む最上層部層UP8を含む。すなわち、第1層81は、i*t厚のHfO2層、第2層82は、j*t厚のZrO2層、最上部層UP8は、m*t(m>i,j)厚のHfO2層であり、最上部層UP8の厚みが最も厚い。
【0088】
第1層81と第2層82は、複数回反復されうる。第1層81と第2層82は、例えば、R回反復されうる。誘電体層508において、Hf含量がZr含量と同じである場合であり、m=R*(j-i)でもある。例えば、m=6、R=3、j=3、i=1でもあるが、それら以外にも、多様な形態に誘電体層508を構成することができる。
【0089】
図12Aは、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
図12Bは、製造された
図12Aの誘電体層に係わる電子顕微鏡写真を示す。
【0090】
本実施形態の誘電体層506は、HfとZrとの含量比をa:bとするとき、a>bである場合である点において、前述の実施形態と違いがある。
【0091】
誘電体層506は、i-cycleで製造された、厚みがi*t(iは、整数であり、tは、実数である)であるZrO2を含む第1層61と、j-cycleで製造された、厚みがj*t(j>i、jは、3以上の整数である)であり、HfO2を含む最上部層UP6と、を含む。
【0092】
誘電体層506は、また、第1層61上に配置され、厚みがj*tであり、HfO2を含む第2層62と、第2層62上に配置され、厚みがi*tであり、ZrO2を含む第3層63と、をさらに含んでもよい。第2層62と第3層63との対が、第1層61と最上部層UP6との間に複数回反復配置されうる。
【0093】
図12Bは、製造された
図12Aの誘電体層506に係わる電子顕微鏡写真であり、i=1、j=4であり、ZrO
2 1cycleとHfO
2 4cycleとの対が、5回反復された場合に係わるものである。
図12Bに示された薄膜は、Si層/SiO
2層/誘電体層506/メタル層Mの順序に形成されている。誘電体層506は、Hf
0.8Zr
0.2O
2をなす。誘電体層506は、図面に示されるように、良好な結晶性を示している。
【0094】
図13は、
図12Aの誘電体層と比較するための、比較例による誘電体層の構造を示す断面図である。
【0095】
誘電体層55は、4cycleで製造されたHfO2層3と、1cycleで製造されたZrO2層4との対が、反復配置された形態であり、前記対の配置順序において、一実施形態の誘電体層506と違いがある。一実施形態の誘電体層506と異なり、比較例の誘電体層55は、最上部層が、HfO2層3より厚みが薄いZrO2層4で構成される。
【0096】
図14は、
図12Aの実施形態による誘電体層506と、
図13の比較例の誘電体層5との誘電率を比較して示す図面である。
【0097】
図14を参照すれば、同一組成のHf
0.8Zr
0.2O
2であっても、製造された方法、及び結果としてなった構造により、誘電率が異なって示されるということが分かる。最上部層UP6に、厚みが厚いHfO
2層を配置した一実施形態の誘電体層506の誘電率が、比較例より高く示されるということが分かる。
【0098】
それは、誘電体層506上部に配置される伝導性物質と接する最上部層UP6の層の種類、厚みを適切に設定することによって製造されたHf0.8Zr0.2O2の結晶性が、さらに良好に形成された結果であると分析される。
【0099】
図12Aの実施形態は、誘電体層506において、Hfの含量がZr含量より多い場合、最上部層をHfO
2に設定したところを例示したが、他の実施形態において、そのような場合にも、最上部層をZrO
2にしながら、最も厚く設定することも可能である。
【0100】
図15は、さらに他の実施形態による薄膜構造体に採用される誘電体層の他の例示的な構造を示す断面図である。
【0101】
誘電体層509は、j-cycleで製造されたZrO2を含む第1層91、i-cycle(i>j)で製造されたHfO2を含む第2層92、及びn-cycle(n>i,j)で製造されたZrO2を含む最上層部層UP9を含む。すなわち、第1層91は、j*t厚のZrO2層、第2層72は、i*t厚のHfO2層、最上部層UP9は、n*t(n>i,j)厚のZrO2層であり、最上部層UP9の厚みが最も厚い。
【0102】
第1層91と第2層92は、複数回反復されうる。第1層91と第2層92は、例えば、R回反復されうる。誘電体層509において、Hfの含量がZrより多い場合であり、n<R*(i-j)でもある。例えば、n=5、R=3、i=3、j=1でもあるが、それら以外にも、多様な形態に誘電体層509を構成することができる。
【0103】
図16は、一実施形態による、薄膜構造体の製造方法の段階を概略的に示すフローチャートである。
【0104】
一実施形態による製造方法は、基板を準備する段階(S100)、基板上に誘電体層を形成する段階(S200)、及び誘電体層上に伝導層を形成する段階(S500)を含む。
【0105】
該基板は、誘電体層が形成されるターゲット基板であり、特別に種類が限定されるものではない。
【0106】
該誘電体層は、HfaAbOz化合物であり、それを形成するために、ドーパントAを具備するドーパント層と、HfO2層とを含む複数の層を形成するものの、前記複数の層において、最上部層の厚みを最も厚く形成する。
【0107】
該ドーパントAは、Zr・La・Yのような遷移金属、Si、Al、Snのうちいずれか一つを含んでもよく、二元系または三元系以上にもなる。該ドーパント層は、ZrO2・LaO2・YO2を含む遷移金属系酸化物、及びSiO2、Al2O3、SnO2のうちいずれか一つを含んでもよい。
【0108】
該伝導層は、TiN;W、Mo、Niなどを含む金属;RuO2、SrRuO3、ITOなどを含む伝導性酸化物;またはグラフェンを含む2D物質などのうちいずれか一つを含んでもよい。該伝導層は、また、窒化金属または酸窒化金属を含んでもよい。
【0109】
該誘電体層、該伝導層の形成のために、ALD、MOALD、CVD、MOCVD、PVDのような蒸着方法が使用されうる。
【0110】
該誘電体層形成のために、まず、HfとAとの組成比a:bを決定し、総厚を決定し(S210)、次に、最上部層を設定し(S230)、HfO2層及びAドーパント層のcycleを反復する段階(S250)が遂行されうる。
【0111】
最上部層の設定(S230)は、決定されたa:b値、及び総厚を考慮して定められた組成比及び厚みにおいて、最適の誘電率を具現するように、最上部層の種類と厚みとを定める過程である。前述の誘電体層500~509の説明でのように、良好な結晶性のHfaAbOz化合物が製造されるように、最上部層を決定することができる。
【0112】
例えば、前記含量比をa:bとするとき、a≦bである場合、最上部層をAドーパント層にし、a>bである場合、最上部層をHfO2層に設定することができる。または、a≦bである場合にも、最上部層をHfO2層にし、a>bである場合にも、最上部層をAドーパント層に設定することができる。次に、最上部層の厚みが最大になるように、残り層、すなわち、HfO2層及びAドーパント層の厚み、反復回数、位置などを、全体含量比や工程条件などを考慮して設定することができる。
【0113】
誘電体層を形成した後、熱処理が遂行されうる(S300)。ただし、該段階は、省略されてもよい。
【0114】
次に、該誘電体層上に伝導層を形成した後、熱処理が遂行されうる(S500)。そのような熱処理は、誘電体層の結晶化を促進するためのものであり、2つの段階がいずれも遂行されるか、あるいはいずれか1段階だけ選択的にも遂行される。
【0115】
図17は、一実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
電子素子2000は、半導体層100、半導体層100上に形成された絶縁層200、前記絶縁層200上に形成された誘電体層500、誘電体層500上に形成された第1伝導層700を含む。
【0116】
半導体層100は、半導体基板を含んでもよい。該半導体基板は、シリコン基板、ゲルマニウム基板、またはシリコン・ゲルマニウム基板を含んでもよい。半導体層100は、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Auなどを含むグループのうちから選択された少なくとも1つの物質を含むか、あるいは少なくとも1つの物質の窒化物または酸化物を含む物質を含んでもよい。
【0117】
絶縁層200は、電気的漏れ(leakage)を抑制または防止するための層でもある。絶縁層200として、Si酸化物(SiO)、Al酸化物(AlO)、Hf酸化物(HfO)、Zr酸化物(ZrO)、または二次元絶縁体(2D insulator)などが使用されうる。二次元絶縁体として、h-BN(hexagonal boron nitride)のような物質が使用されうる。ただし、絶縁層200の物質は、それらに限定されるものではない。
【0118】
誘電体層500は、前述の誘電体層500,501,502,503,504,505,506のうちいずれか1層でもある。誘電体層500は、強誘電性のドメインスイッチング層として機能することができる。
【0119】
第1伝導層700は、TiN;W、Mo、Niなどを含む金属;RuO2、SrRuO3、ITOなどを含む伝導性酸化物;またはグラフェンを含む2D物質などのうちいずれか一つを含んでもよい。該伝導層は、また、窒化金属または酸窒化金属を含んでもよい。
【0120】
第1伝導層700は、ゲート電極でもある。半導体層100に、ソース電極(図示せず)、ドレイン電極(図示せず)が連結されうる。半導体層100上に、ソース領域(図示せず)、ドレイン領域(図示せず)が具備され、それぞれに、ソース電極、ドレイン電極が連結されうる。該ソース領域、該ドレイン領域の間の半導体層100領域がチャンネル領域にもなる。
前述の電子素子2000は、ロジックトランジスタでもある。
【0121】
図18は、他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
本実施形態の電子素子3000は、絶縁層が具備されていない形態であるという点において、
図17の電子素子2000と違いがあり、残りの構成は、
図17の電子素子2000と実質的に同一でもある。
【0122】
図19は、さらに他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
本実施形態の電子素子4000は、絶縁層200と誘電体層500との間に、第2伝導層300がさらに具備されたという点において、
図17の電子素子と違いがあり、残りの構成は、実質的に同一である。
図17ないし
図19の電子素子は、トランジスタ素子として機能することができる。
【0123】
図20は、さらに他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
電子素子5000は、第2伝導層900、第2伝導層900上に形成された誘電体層500、誘電体層500上に形成された第1伝導層700を含む。誘電体層500は、前述の誘電体層500,501,502,503,504,505,506のうちいずれか1層でもある。
【0124】
図21は、さらに他の実施形態による電子素子の概略的な構造を示す断面図である。
本実施形態の電子素子6000は、第2伝導層900と誘電体層500との間に、絶縁層200がさらに具備されたという点において、
図20の電子素子5000と違いがあり、残りの構成は、実質的に同一である。
【0125】
図20及び
図21の電子素子5000,6000は、キャパシタでもあり、高誘電率の誘電体層5000を具備し、高キャパシタンスを示すことができる。
【0126】
前述の電子素子2000,000,4000,5000,6000は、また、集積素子をなすことができる。該集積素子は、シリコン基盤で形成される集積回路の一部をなすことができ、そのような集積回路は、多数のキャパシタ、トランジスタ、メモリ素子などを含んでもよい。そのような素子に、高誘電率または強誘電性を有する誘電体層が具備されることにより、所望する高性能、小型化を具現することができる。
【0127】
前述の薄膜構造体、その製造方法、電子素子は、図面に図示された実施形態を参照して説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該分野で当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の実施形態が可能であるという点を理解するであろう。前述の説明において、多くの事項が具体的に記載されているが、それらは、発明の範囲を限定するものであるとするより、具体的な実施形態の例示として解釈されなければならない。本発明の範囲は、従って、説明された実施形態によって定められるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想によって定められるものである。
【符号の説明】
【0128】
11,21,31,41,51,61,71,81,91 第1層
12,22,32,42,52,62,72,82,92 第2層
13,23,33,43,53,63 第3層
100 半導体層
200 絶縁層
300,900 第2伝導層
500,501,502,503,504,505,506,507,508,509 誘電体層
700 第1伝導層
1000 薄膜構造体
2000,3000,4000,5000,6000 電子素子
SU 基板
UP,UP1,UP2,UP3,UP4,UP5,UP6,UP7,UP8,UP9 最上部層