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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/109 20210101AFI20241125BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241125BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241125BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241125BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241125BHJP
   H01M 50/145 20210101ALI20241125BHJP
   H01M 50/167 20210101ALI20241125BHJP
   H01M 50/545 20210101ALI20241125BHJP
   H01M 50/56 20210101ALI20241125BHJP
【FI】
H01M50/109
H01M10/0569
H01M4/505
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M50/145
H01M50/167
H01M50/545
H01M50/56
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020167642
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022059812
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 学史
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-159102(JP,A)
【文献】特開2019-160619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10
H01M 10/0569
H01M 4/505
H01M 4/48
H01M 4/36
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極缶と、ガスケットを介して前記正極缶に加締め固定された負極缶とを有する収容容器と、
電解液を含み、且つ前記収容容器の内部に収容された発電要素と、を備えたリフロー実装タイプの非水電解質二次電池であって、
前記正極缶は、底壁部、及び前記底壁部の外周縁に沿って形成された外壁部を有する有頂筒状に形成され、
前記負極缶は、頂壁部、及び前記頂壁部の外周縁に沿って形成され、前記外壁部の内側に配置された内壁部を有する有頂筒状に形成され、
前記外壁部のうち前記頂壁部側に位置する部分は、前記底壁部側から前記外壁部の開口端縁に向かうにしたがって前記内壁部側に向けて曲率半径Rで湾曲した加締め部とされ、
前記非水電解質二次電池の直径Dが4.8mmとされ、
前記非水電解質二次電池の高さH1が2.1mmとされ、
前記正極缶の高さH2が、前記非水電解質二次電池の高さH1に対して74%~79%の範囲内とされ、
前記加締め部の前記曲率半径Rが0.9mmとされていることを特徴する非水電解質二次電池。
【請求項2】
請求項に記載の非水電解質二次電池において、
前記発電要素は、
前記正極缶側に設けられ、正極活物質としてスピネル型リチウムマンガン酸化物を含有する正極と、
前記負極缶側に設けられ、負極活物質として炭素被覆SiOx(0<x<2)を含有する負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、を備え、
前記電解液が、グライム系溶媒にエチレンカーボネート(EC)及びビニレンカーボネート(VC)を含有する混合溶媒を含む、非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、密封された収納容器内に、一対の分極性電極を構成する正極及び負極と、正極と負極との間に配設されたセパレータと、支持塩及び溶媒を含む電解液とを主に備える二次電池である。この種の非水電解質二次電池は、エネルギー密度が高く軽量であることから、例えば電子機器の電源部、発電装置の発電量の変動を吸収する蓄電部等に利用される。
【0003】
特に、負極活物質として、表面に炭素被覆されたケイ素酸化物(SiOx)を含む非水電解質二次電池は、高い放電容量が得られることから、コイン型(ボタン型)の小型の非水電解質二次電池として好適に用いられている。
コイン型の非水電解質二次電池は、高電圧、高エネルギー密度で充放電特性に優れ、且つサイクル寿命が長く信頼性が高いことが知られている。そのため、コイン型の非水電解質二次電池は、例えば携帯電話、PDA、携帯用ゲーム機、デジタルカメラ等の各種小型電子機器において、半導体メモリのバックアップ用電源や時計機能のバックアップ用電源等として好適に利用されている。
【0004】
このようなコイン型の非水電解質二次電池として、例えば80℃前後の高温環境下においても、電解液の揮発や水分侵入を抑制しながら使用することができる非水電解質二次電池が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
この非水電解質二次電池では、外径が4~12mm、高さが1~3mmの範囲とされ、封口時(加締め時)における正極缶の曲面の曲率半径(R)や、肩高さ(正極缶の高さh2/二次電池の高さh1)等を規定することで、正極缶又は負極缶とガスケットとの間に隙間が生じることを抑制して封止性の向上化を図っている。これにより、電解液の揮発や電池内部への水分侵入を抑制することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-159102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コイン型の非水電解質二次電池では、外径が小さくなるほど、高温環境下における電解液の揮発や電池内部への水分侵入等の影響を受け易い。この点、各種電子機器等のさらなる小型化、薄型化等に伴って、今後、コイン型の非水電解質二次電池についても外径が4mm~6mm台のものが主流になることが予想され、電池の封止性をより一層向上させることが求められている。
【0007】
さらにコイン型の非水電解質二次電池では、実装時のはんだ付けの効率を上げるために、リフロー実装に対応できることが求められている。リフロー実装(リフローはんだ付け)を行った場合であっても、長期使用或いは長期保存時に安定的な充放電を可能とするためには、電解液の漏出を抑制し、電解液を電池内部に確保し続けることが重要とされる。
しかしながら、リフロー実装を行う場合には、例えばピーク温度が260℃程に達する、さらなる高温環境下に晒されることになるので、電池内圧が上昇して電池形状が変形するおそれがある。そのため、電池形状の変形に起因して、正極缶或いは負極缶とガスケットとの間に間隙が生じ易くなってしまい、電解液の揮発や電池内部への水分侵入等を引き起こし易くしてしまう。
【0008】
従って、特許文献1に記載の従来の非水電解質二次電池であっても、リフロー実装を想定した場合には、サイクル特性や長期保存性といった電池の信頼性の低下を招き易いうえ、漏液発生率が大きくなり易い。従って、リフロー実装を行うことを鑑みると、改善の余地が残されていた。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、高温環境下に晒された場合であっても耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性に優れた小型の非水電解質二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明に係る非水電解質二次電池は、正極缶と、ガスケットを介して前記正極缶に加締め固定された負極缶とを有する収容容器と、電解液を含み、且つ前記収容容器の内部に収容された発電要素と、を備えた非水電解質二次電池であって、前記正極缶は、底壁部、及び前記底壁部の外周縁に沿って形成された外壁部を有する有頂筒状に形成され、前記負極缶は、頂壁部、及び前記頂壁部の外周縁に沿って形成され、前記外壁部の内側に配置された内壁部を有する有頂筒状に形成され、前記外壁部のうち前記頂壁部側に位置する部分は、前記底壁部側から前記外壁部の開口端縁に向かうにしたがって前記内壁部側に向けて曲率半径Rで湾曲した加締め部とされ、前記非水電解質二次電池の直径Dが4.6mm~5.0mmとされ、前記正極缶の高さH2が、前記非水電解質二次電池の高さH1に対して74%~79%の範囲内とされ、前記加締め部の前記曲率半径Rが0.7mm~1.1mmの範囲内とされていることを特徴する。
【0011】
本発明に係る非水電解質二次電池によれば、いわゆる肩高さ(H2/H1)を74%~79%の範囲内に規定しつつ、曲率半径Rが0.7mm~1.1mmの範囲内で規定された加締め部を利用して、正極缶と負極缶とをガスケットを介して加締め固定するので、ガスケットを適切に圧縮しながら、負極缶を確実に押さえ込んだ状態で固定することができる。
【0012】
なお、加締め部の曲率半径Rが0.7mmよりも小さい場合には、加締め部は外壁部における開口端周辺の領域に集中して形成されてしまう。この場合、負極缶及びガスケットを正極缶の底壁部に向かう方向に向けて強く押さえ付けることができるものの、負極缶及びガスケットを収容容器の中心に向けて押圧する力は弱くなってしまう。従って、正極缶又は負極缶とガスケットとの間に隙間が生じ易く、漏液(電解液の揮発を含む)や水分侵入等を生じさせてしまうおそれがあった。そのため、サイクル特性や長期保存性の低下に繋がってしまう。
これとは反対に、加締め部の曲率半径Rが1.1mmよりも大きい場合には、加締め部は外壁部の広い領域に形成される。この場合、負極缶及びガスケットを収容容器の中心に向けて押圧する力が強くなるものの、負極缶及びガスケットを正極缶の底壁部に向かう方向に押さえ付ける力が弱くなってしまう。従って、この場合であっても、正極缶又は負極缶とガスケットとの間に間隙が生じ易くなってしまい、上述と同様の不都合が生じてしまう。
【0013】
さらに、肩高さ(H2/H1)が74%よりも小さい場合には、加締め時(封口時)に負極缶における内壁部の開口端側に応力が集中的に作用してしまうので、負極缶の頂壁部が膨らむような膨出変形(いわゆる出べそ現象)を招き易くなってしまう。そのため、外観不良を招き、製品不良に繋がってしまう。
これとは反対に、肩高さ(H2/H1)が79%よりも大きい場合には、封口時に負極缶に対して十分に応力を付与できず、正極缶又は負極缶とガスケットとの間に隙間が生じて、先に述べた不都合が生じてしまう。
【0014】
これに対して、本発明に係る非水電解質二次電池では、肩高さ(H2/H1)が74%~79%の範囲内とされ、加締め部の曲率半径Rが0.7mm~1.1mmの範囲内とされているので、上述した不都合が生じ難く、耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性が優れた非水電解質二次電池とすることができる。そのため、直径Dが4mm台(4.6mm~5.0mmの範囲内)の小型化を図ったとしても、耐漏液性を維持することができるうえ、高温環境下で使用或いは保存したとしても、耐漏液性を維持することができる。従って、作動信頼性が向上した使い易い非水電解質二次電池することができる。
【0015】
(2)前記加締め部の前記曲率半径Rが0.8mm~1.0mmの範囲内とされても良い。
【0016】
この場合には、正極缶又は負極缶とガスケットとの間に隙間が生ることを効果的に抑制することができ、漏液や水分侵入等がさらに生じ難い。そのため、さらに優れた耐漏液性を発揮することができると共に、長期に亘って電池容量を安定に維持することができる。
【0017】
(3)前記発電要素は、前記正極缶側に設けられ、正極活物質としてスピネル型リチウムマンガン酸化物を含有する正極と、前記負極缶側に設けられ、負極活物質として炭素被覆SiOx(0<x<2)を含有する負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータと、を備え、前記電解液が、グライム系溶媒にエチレンカーボネート(EC)及びビニレンカーボネート(VC)を含有する混合溶媒を含んでも良い。
【0018】
この場合には、スピネル型リチウムマンガン酸化物を含有する正極活物質と炭素被覆SiOxを含有する負極活物質の組み合わせに、グライム系溶媒にエチレンカーボネート(EC)及びビニレンカーボネート(VC)を含有する混合溶媒を含む電解液を組み合わせているので、リフロー実装(リフローはんだ付け)に伴う加熱を受けたとしても、溶媒が気化するおそれが少ない。従って、加熱に耐える耐熱性を得ることができると共に、正極、負極及び電解液の劣化を抑えることができる。さらに、リフロー実装に伴う加熱を受けたとしても溶媒が気化するおそれが少ないので、収容容器の内圧が上昇するおそれが少なく、収容容器に変形が生じ難い非水電解質二次電池することができる。
従って、リフロー実装可能な非水電解質二次電池とすることができる。特に、リフロー実装時に、例えば260℃という高温環境下に晒されることで内圧が上昇したとしても、先に述べたように耐漏液性に優れているので、リフロー後であっても、優れたサイクル特性及び長期保存性を維持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高温環境下に晒された場合であっても耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性に優れた小型の非水電解質二次電池を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る非水電解質二次電池の実施形態を示す断面図である。
図2図1に示す加締め部の周辺を拡大した断面図である。
図3】加締め部の曲率半径と、溶液発生率及び容量維持率との関係を示す図である。
図4】肩高さ(H2/H1)と、溶液発生率及び膨出変形の発生率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る非水電解質二次電池の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本実施形態の非水電解質二次電池とは、正極又は負極として用いる活物質とセパレータとが収容容器内に収容されることで構成された二次電池である。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン(ボタン)型の電池とされ、収容容器2と、収容容器2の内部に収容された発電要素3と、を主に備えている。
【0023】
収容容器2は、正極缶10と、ガスケット30を介して正極缶10に加締め固定された負極缶20と、を主に備えている。正極缶10及び負極缶20は、正極缶10の後述する底壁部11と負極缶20の後述する頂壁部21とが対向するように固定されている。
本実施形態では、底壁部11及び頂壁部21の中心を通り、且つ底壁部11及び頂壁部21が対向する方向に沿って延びる軸線を電池軸Oといい、電池軸O方向から見た平面視で、電池軸Oに交差する方向を径方向、電池軸O回りに周回する方向を周方向という。さらに、電池軸Oに沿って、底壁部11から頂壁部21に向かう方向を上方といい、その反対方向を下方という。
【0024】
発電要素3は、正極缶10側に設けられた正極40と、負極缶20側に設けられた負極50と、正極40と負極50との間に配置されたセパレータ60とを主に備えていると共に電解液70を含んでおり、収容容器2の内部に形成された収容空間S内に収容されている。
【0025】
(収容容器)
収容容器2について、詳細に説明する。
収容容器2は、有底円筒状に形成された金属製の正極缶10と、有頂円筒状に形成され、ガスケット30を介して正極缶10に加締め固定された金属製の負極缶20と、を主に備えている。
【0026】
正極缶10の材質としては、特定の材質に限定されるものではないが、例えばSUS316L、或いはSUS329J4L等が挙げられ、その他、従来公知のステンレス鋼を採用しても構わない。さらには、ステンレス鋼以外の金属材料を正極缶10に用いても構わない。
負極缶20の材質としては、特定の材質に限定されるものではないが、例えば正極缶10の材質と同様にSUS316L、SUS329J4L等を採用することができ、さらにはSUS304-BA等や、その他の従来公知のステンレス鋼を採用しても構わない。さらには、ステンレス鋼以外の金属材料を負極缶20に用いても構わない。例えば、ステンレス鋼に銅、ニッケル等を圧着してなるクラッド材を、負極缶20に用いても構わない。
【0027】
(正極缶)
正極缶10は、平面視円形状に形成された底壁部11と、底壁部11の外周縁に底壁部11の周方向に沿って形成されると共に上方に向かって延びた環状の外壁部12と、を備えた有底円筒状に形成されている。
外壁部12のうち底壁部11の外周縁に連設される下側壁部12aは、非水電解質二次電池1としての最大外径となる部分である。従って、下側壁部12aの外径は、非水電解質二次電池1の直径Dに相当する。
本実施形態では、直径Dが4.6mm~5.0mmの範囲内となるように、正極缶10が形成されている。
【0028】
外壁部12のうち負極缶20の頂壁部側に位置する上側壁部は、底壁部11側から外壁部12の開口端縁に向かうにしたがって径方向の内側に向けて(負極缶20の内壁部22側に向けて)曲率半径Rで湾曲した加締め部12bとされている。
本実施形態では、曲率半径Rが0.7mm~1.1mmの範囲内となるように加締め部12bが形成されている。
【0029】
図示の例では、加締め部12bの外周面の曲率半径をRとしている。ただし、加締め部12bの内周面や、加締め部12bの図示しない中性線(加締め部12bが曲げ加工されても引張り応力も圧縮応力も受けない部分)の曲率半径をRとしても構わない。
【0030】
なお、加締めを行う前段階では、加締め部12bを含めた外壁部12の全体は、電池軸Oに沿って延びると共に上方に開口した円筒状に形成されている。そして、封口時(加締め時)、加締め部12bに応力を加えることで、加締め部12bは上記曲率半径Rで径方向の内側に向けて湾曲形成される。負極缶20は、径方向の内側に向けた加締め部12bによる加締めによって、ガスケット30を介して強固に加締め固定される。
【0031】
なお、図2に示すように、加締め後における電池軸Oに沿った外壁部12全体の高さが、正極缶10としての高さH2に相当する。本実施形態では、正極缶10の高さH2が、非水電解質二次電池1の高さH1に対して74%~79%の範囲内となるように、正極缶10及び負極缶20の関係を規定している。この点については、後に再度説明する。
【0032】
(負極缶)
図1及び図2に示すように、負極缶20は、平面視円形状に形成された頂壁部21と、頂壁部21の外周縁に頂壁部21の周方向に沿って形成されると共に下方に向かって延びた環状の内壁部22と、を備えた有頂円筒状に形成されている。
負極缶20は、内壁部22が外壁部12の内側に入り込むように、正極缶10に対して上方から組み合わされた後、ガスケット30を介して加締め固定されることで正極缶10に一体に組み合わされる。従って、負極缶20は、ガスケット30によって正極缶10に対して精度良く位置決めされた状態で組み合わされている。
【0033】
頂壁部21は、正極缶10における外壁部12の加締め部12bよりも上方に配置されている。この際、正極缶10における底壁部11の下面と、負極缶20における頂壁部21の上面(頂面)との間の電池軸Oに沿った高さが、非水電解質二次電池1全体の高さH1とされている。
【0034】
本実施形態では、加締め後の非水電解質二次電池1全体の高さH1が1.0mm~3.0mmの範囲内となるように、正極缶10と負極缶20とが組み合わされている。この際、正極缶10の高さH2が非水電解質二次電池1の高さH1に対して74%~79%の範囲内となるように、正極缶10と負極缶20とが組み合わされている。
なお、正極缶10の高さH2については、いわゆる肩高さ(H2/H1)が74%~79%の範囲内に収まれば、任意に選択して構わない。
【0035】
内壁部22は、頂壁部21の外周縁から下方に向けて延びるように形成され、下端部22aがガスケット30を挟んで正極缶10における底壁部11の上方に位置するように配置されている。
図示の例では、内壁部22は上方から下方に向かうにしたがって拡径した2段の円筒状に形成されている。ただし、2段に限定されるものではなく、例えば上方から下方に向かうにしたがって段階的に3段以上拡径した多段の円筒状に内壁部22を形成しても構わない。
【0036】
さらに図示の例では、内壁部22は、下端部22aから上方に向けて折り返され、内壁部22に対して径方向の外側から重なる環状の折返し部23が一体に形成されている。従って、この折返し部23の外径が、負極缶20としての最大外径となる部分である。なお、折返し部23の外径は、外壁部12における下側壁部12aの内径よりも小さい径とされている。なお、折返し部23は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0037】
上述のように構成された負極缶20において、正極缶10の加締め部12bは、折返し部23の上方に位置するように加締めによって湾曲している。従って、負極缶20は、ガスケット30を介して上方への抜け止め等が確実になされている。
【0038】
(ガスケット)
ガスケット30は、負極缶20の内壁部22を径方向の外側及び径方向の内側から全周に亘って囲むように二重の円環状に形成されている。
ガスケット30は、正極缶10の外壁部12と負極缶20の内壁部22との間に配置された円環状の外側ガスケット部31と、負極缶20の内壁部22の内側に配置された円環状の内側ガスケット部32と、外側ガスケット部31の下端部と内側ガスケット部32の下端部とを径方向に接続する環状のフランジ部33と、を備えている。
【0039】
外側ガスケット部31は、加締め部12bによる加締めによって、外壁部12と内壁部22との間に所定の圧縮状態で配置され、外壁部12の内周面及び内壁部22の外周面に対してそれぞれ隙間なく密に嵌合されている。フランジ部33は、加締め部12bによる加締めによって、内壁部22の下端部22aと底壁部11との間に所定の圧縮状態で配置され、内壁部22の下端部22a及び底壁部11に対してそれぞれ隙間なく密に嵌合されている。内側ガスケット部32は、加締め部12bによる加締めによって、内壁部22の内周面に対して隙間なく密に嵌合されている。
【0040】
これにより、ガスケット30は、加締め部12bによる加締めによって正極缶10と負極缶20との間に強固に挟み込まれると共に、正極缶10と負極缶20との間に密閉された収容空間Sを形成した状態で正極缶10と負極缶20とを一体的に組み合わせている。
なお、収容空間Sは、正極缶10の底壁部11と、負極缶20の頂壁部21と、内側ガスケット部32とによって囲まれる空間とされている。
【0041】
上述したガスケット30は、例えば熱変形温度230℃以上の樹脂からなることが好ましい。ガスケット30に用いる樹脂材料の熱変形温度が230℃以上であれば、リフローはんだ処理や非水電解質二次電池1の使用中の加熱によってガスケット30が著しく変形し、電解液70が漏出するような不都合を抑制することが可能である。
【0042】
この種のガスケット30の材質としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、PPS、PEEKのうちの何れかを用いた場合には、高温環境下における使用或いは保管時にガスケット30が著しく変形することを抑制することが可能となり、非水電解質二次電池1の封止性をさらに向上させる観点から好ましい。
【0043】
さらには、上述の材料にガラス繊維、マイカウイスカー、セラミック微粉末等を、30質量%以下の添加量で添加したものをガスケット30に好適に用いることができる。このような材質を用いることで、リフロー時の加熱によってガスケット30が著しく変形し、電解液70が漏出するような不都合を抑制することができる。
【0044】
以上のように構成された収容容器2では、先に述べたように、以下に示す(1)~(3)の配置関係及び寸法関係を全て満足する構成とされている。
(1)非水電解質二次電池1の直径Dが、4.6mm~5.0mmの範囲内。
(2)正極缶10における加締め部12bの曲率半径Rが、0.7mm~1.1mmの範囲内。
(3)肩高さ(H2/H1)、すなわち正極缶10の高さH2が非水電解質二次電池1の高さH1に対して74%~79%の範囲内。
なお、正極缶10及び負極缶20に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1~0.3mm程度であり、例えば正極缶10或いは負極缶20の全体における平均板厚としては0.15mm程度とされている。
【0045】
(発電要素)
続いて、発電要素3について詳細に説明する。
発電要素3は、先に述べたように、正極40、負極50及びセパレータ60を主に備え、電解液70と共に収容容器2における収容空間S内に収容されている。
正極缶10側に設けられる正極40と、負極缶20側に設けられる負極50とは、セパレータ60を介して電池軸O方向に対向配置された状態で収容空間S内に配置されている。なお、正極40、負極50及びセパレータ60には、収納容器内に充填された電解液70が含浸している。
【0046】
正極40は、正極集電体41を介して正極缶10における底壁部11の上面に電気的に接続されている。これに対して負極50は、負極集電体51を介して負極缶20における頂壁部21の下面に電気的に接続されている。
ただし、この場合に限定されるものではなく、例えば正極集電体41及び負極集電体51を省略し、正極40を直接正極缶10に接続して正極缶10に集電体の機能を持たせても構わないし、負極50を直接負極缶20に接続して負極缶20に集電体の機能を持たせても構わない。
なお、セパレータ60は、収容容器2の内部において外周縁がガスケット30に接触することで、ガスケット30によって保持されている。
【0047】
(正極)
正極40において、正極活物質の種類は特に限定されないが、例えば正極活物質としてスピネル型リチウムマンガン酸化物を含有するものを用いることが好ましい。
正極40中の正極活物質の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案し決定され、例えば50~95質量%の範囲とすることができる。正極活物質の含有量が上記好ましい範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られ易く、好ましい上限値以下であれば、正極40を成形し易い。
【0048】
正極40は、導電助剤(以下、正極40に用いられる導電助剤を「正極導電助剤」ということがある)を含有しても良い。
正極導電助剤としては、例えばファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等の炭素質材料が挙げられる。
正極導電助剤は、上記のうちの1種を単独で用いても良く、或いは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0049】
正極40は、バインダ(以下、正極40に用いられるバインダを「正極バインダ」ということがある)を含有しても良い。
この種の正極バインダとして、従来公知の物質を用いることができ、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等を選択でき、これらを複数組み合わせて構成したバインダを用いることができる。
また、正極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いても良く、或いは2種以上を組み合わせて用いても良い。正極40において正極バインダの含有量は、例えば、1~20質量%とすることができる。
【0050】
なお、本明細書において数値範囲に関し「~」を用いて上限と下限を示す場合、特に説明しない限り上限と下限を含む範囲とする。従って、例えば1~20質量%と記載した場合、1質量%以上20質量%以下を意味する。
正極集電体41としては、従来公知のものを用いることができ、例えば炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤等を挙げることができる。
【0051】
さらに本実施形態において、正極活物質として、上記のリチウムマンガン酸化物に加え、他の正極活物質を含有していても良く、例えばモリブデン酸化物、リチウム鉄リン酸化合物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、バナジウム酸化物等、他の酸化物の何れか1種以上を含有していても良い。
【0052】
(負極)
負極50において、負極活物質の種類は特に限定されないが、例えば負極活物質としてシリコン酸化物を含有することが好ましい。
負極50において、負極活物質が炭素被覆SiOx、例えばSiOx(0<x<2)で表されるシリコン酸化物を炭素被覆したものからなることが好ましい。
【0053】
さらに負極50は、負極活物質として上記のSiOx(0<x<2)に加え、他の負極活物質を含有していても良く、例えばSi、C等、他の負極活物質を含有していても良い。
負極活物質として粒状のSiOx(0<x<2)を用いる場合、これらの粒子径(D50)は、特に限定されないが、例えば0.1~30μmの範囲を選択することができ、より好ましくは1~10μmの範囲を選択することができる。
SiOxの粒子径(D50)が、上記範囲の下限値未満であると、例えば非水電解質二次電池1を過酷な高温高湿環境下において保管・使用した場合や、リフローはんだ付け処理による反応性が高まることで電池特性が損なわれるおそれがあり、また上限値を超えると、放電レートが低下するおそれがある。
【0054】
負極50中の負極活物質、すなわちSiOx(0<x<2)の含有量は、非水電解質二次電池1に要求される放電容量等を勘案して決定され、50質量%以上の範囲を選択することができ、60~80質量%の範囲を選択することが好ましい。
負極50において、上記元素からなる負極活物質の含有量が、上記範囲の下限値以上であれば、充分な放電容量が得られ易く、また上限値以下であれば、負極50を成形し易い。
【0055】
負極50は、導電助剤(以下、負極50に用いられる導電助剤を「負極導電助剤」ということがある)を含有しても良い。負極導電助剤は、例えば正極導電助剤と同様のものを採用できる。
【0056】
負極50は、バインダ(以下、負極50に用いられるバインダを「負極バインダ」ということがある)を含有しても良い。
この種の負極バインダとして、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等を選択することができる。
【0057】
負極バインダは、上記のうちの1種を単独で用いても良く、或いは2種以上を組み合わせて用いても良い。
なお、負極バインダにポリアクリル酸を用いる場合には、ポリアクリル酸を、予めpH3~10程度に調整しておくことができる。この場合、pHの調整には、例えば水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物や水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属水酸化物を用いることができる。
負極50中の負極バインダの含有量は、例えば1~20質量%の範囲とされる。
【0058】
なお、本実施形態において負極50の大きさ、厚さについては、正極40の大きさ、厚さと同様に形成することが可能である。
なお、負極50の表面、すなわち負極50とセパレータ60との間に、図に示すようにリチウムフォイル等のリチウム体80を設けた構成を採用することができる。ただし、リチウム体80は必須なものではなく、具備しなくても構わない。
【0059】
(セパレータ)
セパレータ60は、正極40と負極50との間に介在され、大きなイオン透過度を有し、且つ機械的強度を有する絶縁膜が用いられる。
セパレータ60としては、従来から非水電解質二次電池のセパレータに用いられるものを何ら制限無く適用することができ、例えばアルカリガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、鉛ガラス等のガラス、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリアミド、ポリイミド(PI)等の樹脂からなる不織布等が挙げられる。
上述した中でも、セパレータ60としてはガラス製不織布が好ましく、ホウ珪酸ガラス製不織布がより好ましい。ガラス製不織布は、機械強度に優れると共に、大きなイオン透過度を有するため、内部抵抗を低減して放電容量の向上を図ることができる。
なお、セパレータ60の厚さは、非水電解質二次電池1の大きさや、セパレータ60の材質等を勘案して決定され、例えば5~300μmとすることができる。
【0060】
(電解液)
電解液70は、通常、支持塩を非水溶媒に溶解させた液体である。
本実施形態においては、電解液70をなす非水溶媒が、テトラグライム(TEG)を主溶媒とし、ジエトキシエタン(DEE)を副溶媒とし、さらにエチレンカーボネート(EC)及びビニレンカーボネート(VC)を添加剤として含有する混合溶媒を用いることができる。
非水溶媒は、通常、電解液70に求められる耐熱性や粘度等を勘案して決定されるが、本実施形態においては、上記の各溶媒からなるものを用いる。なお、グライム系溶媒を構成するための主溶媒は、テトラグライム、トリグライム、ペンタグライム、ジグライム等を利用することができる。
【0061】
本実施形態では、テトラグライム(TEG)とジエトキシエタン(DEE)とエチレンカーボネート(EC)を含有する非水溶媒を用いた電解液70を採用することができる。このような構成を採用することで、支持塩をなすLiイオンに、DEE及びTEGが溶媒和する。
このとき、DEEがTEGよりもドナーナンバーが高いため、DEEが選択的にLiイオンと溶媒和する。このように、支持塩をなすLiイオンにDEE及びTEGが溶媒和し、Liイオンを保護する。これにより、たとえ高温高湿環境下において非水電解質二次電池1の内部に水分が侵入した場合であっても、水分とLiとが反応するのを防止することができ、放電容量が低下するのを抑制し、保存安定性が向上する効果が得られる。
【0062】
電解液70中の非水溶媒における上記各溶媒の比率は、特に限定されるものではないが、例えばTEG:30質量%以上48.5質量%以下(30~48.5%)、DEE:30質量%以上48.5質量%以下(30~48.5%)、EC:0.5質量%以上10質量%以下(0.5~10%)、VC:2質量%以上13%以下(2~13%)の範囲(トータル100%)の範囲を選択できる。
【0063】
非水溶媒に含まれるTEGとDEEとECの割合が上記範囲の場合には、上述したDEEがLiイオンに溶媒和することでLiイオンが保護される作用が得られる。
上述の範囲であっても、VCの含有量について、2.5質量%以上10質量%(2.5~10%)の範囲が望ましく、5.0質量%以上7.5質量%(5.0~7.5%)の範囲がより好ましい。TEGとDEEの含有量の上限値については、48.25質量%以下が好ましく、48質量%以下がより好ましい。
【0064】
VCの含有量が2質量%以上13%以下の範囲の場合、リフローはんだ付け時の加熱を受けたとしても正極缶10と負極缶20からなる収容容器2に生じる厚みの変化が小さく、内部抵抗の増加も少なくできる。また、VCの含有量が2.5質量%以上10.0質量%以下の範囲の場合、リフローはんだ付け時の加熱を受けたとしても収容容器2に生じる厚みの変化をより小さくでき、内部抵抗の増加もより少なくできる。これらの範囲内であっても、VCの含有量が5.0質量%以上7.5質量%以下の範囲が最も好ましい。
【0065】
支持塩は、非水電解質二次電池の電解液に支持塩として用いられる公知のLi化合物を用いることができ、例えばLiCHSO、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(FSO等の有機酸リチウム塩;LiPF、LiBF、LiB(C、LiCl、LiBr等の無機酸リチウム塩等のリチウム塩等が挙げられる。
上述したなかでも、リチウムイオン導電性を有する化合物であるリチウム塩が好ましく、LiN(CFSO、LiN(FSO、LiBFがより好ましく、耐熱性及び水分との反応性が低く、保存特性を充分に発揮できるという観点から、LiN(CFSOが特に好ましい。
なお、支持塩は上記のうちの1種を単独で用いても良く、或いは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0066】
電解液70中の支持塩の含有量は、支持塩の種類等を勘案して決定でき、例えば0.1~3.5mol/Lが好ましく、0.5~3mol/Lがより好ましく、1~2.5mol/Lが特に好ましい。
電解液70中の支持塩濃度が高過ぎても、或いは支持塩濃度が低過ぎても、電導度の低下が起き、電池特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0067】
(非水電解質二次電池の作用)
上述のように構成された非水電解質二次電池1によれば、非水溶媒がテトラグライム(TEG)及びジエトキシエタン(DEE)を主体として含み、エチレンカーボネート(EC)、及びビニレンカーボネート(VC)をいずれも適量範囲含む電解液70を備えている。
従って、リフロー実装(リフローはんだ付け)時の加熱に耐える耐熱性を得ることができると共に、リフロー実装に伴う加熱を受けたとしても、溶媒が気化するおそれが少ない。従って、加熱に耐える耐熱性を得ることができると共に、正極40、負極50及び電解液70の劣化を抑えることができる。さらに、リフロー実装に伴う加熱を受けたとしても溶媒が気化するおそれが少ないので、収容容器2の内圧が上昇するおそれが少なく、収容容器2に変形が生じ難い非水電解質二次電池1することができる。
なお、溶媒としてテトラグライム(TEG)及びジエトキシエタン(DEE)を主体として含むグライム系の溶媒であるならば、これら溶媒の沸点が高いことに起因して電解液70の耐熱性を高めることができる。
【0068】
以上のことから、リフロー実装に対応した非水電解質二次電池1とすることができる。
さらに本実施形態の非水電解質二次電池1によれば、いわゆる肩高さ(H2/H1)を74%~79%の範囲内に規定しつつ、曲率半径Rが0.7mm~1.1mmの範囲内で規定された加締め部12bを利用して、正極缶10と負極缶20とをガスケット30を介して加締め固定するので、ガスケット30を適切に圧縮しながら、負極缶20を確実に押さえ込んだ状態で固定することができる。
【0069】
なお、非水電解質二次電池1がリフローはんだ付けに相当する加熱を受ける等して、電解液70を構成する溶媒の一部が気化し、収容容器2の内圧が上昇した場合には、内圧上昇に起因して収容容器2に変形が生じる可能性がある。この場合には、変形に伴って収容容器2の密閉構造に変化が生じてしまい、例えば電解液70が収容容器2の外部へ漏出する経路が形成されてしまうおそれがある。
【0070】
この場合において、加締め部12bの曲率半径Rが0.7mmよりも小さい場合には、加締め部12bは外壁部12における開口端周辺の領域に集中して形成されてしまう。この場合、負極缶20及びガスケット30を正極缶10の底壁部11に向かう方向に向けて強く押さえ付けることができるものの、負極缶20及びガスケット30を収容容器2の中心に向けて押圧する力は弱くなってしまう。
従って、正極缶10又は負極缶20とガスケット30との間に間隙が生じ易くなり、リフロー実装に相当する加熱を受けたときに、電解液70が収容容器2の外部へ漏出する経路が形成されてしまうおそれがある。従って、漏液(電解液70の揮発を含む)や水分侵入等を生じさせてしまう可能性があり、サイクル特性や長期保存性の低下に繋がってしまう。
【0071】
これとは反対に、加締め部12bの曲率半径Rが1.1mmよりも大きい場合には、加締め部12bは外壁部12の広い領域に形成される。この場合、負極缶20及びガスケット30を収容容器2の中心に向けて押圧する力については強くなるものの、負極缶20及びガスケット30を正極缶10の底壁部11に向かう方向に押さえ付ける力が弱くなってしまう。従って、この場合であっても正極缶10又は負極缶20とガスケット30との間に間隙が生じ易くなってしまい、上述と同様の不都合が生じてしまう。
【0072】
さらに肩高さ(H2/H1)が74%よりも小さい場合には、封口時(加締め時)に負極缶20における内壁部22の下端部22a側に応力が集中的に作用してしまうので、負極缶20の頂壁部21が上方に膨らむような膨出変形(いわゆるでべそ現象)を招き易くなってしまう。そのため、外観不良を招き、製品不良に繋がってしまう。
これとは反対に、肩高さ(H2/H1)が79%よりも大きい場合には、封口時に負極缶20に対して十分に応力を付与できず、正極缶10又は負極缶20とガスケット30との間に隙間が生じて、先に述べた不都合が生じてしまう。
【0073】
これに対して、本実施形態の非水電解質二次電池1では、肩高さ(H2/H1)が74%~79%の範囲内とされ、加締め部12bの曲率半径Rが0.7mm~1.1mmの範囲内とされているので、上述した各種不都合が生じ難く、耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性が優れた非水電解質二次電池1とすることができる。
従って、直径Dが4mm台(4.6mm~5.0mmの範囲内)の小型化を図ったとしても、耐漏液性を維持することができる。従って、作動信頼性が向上した使い易い非水電解質二次電池1することができる。
【0074】
さらにリフロー実装時に、例えば260℃に達するほどの高温環境下に晒されることで内圧が上昇したとしても、上述のように耐漏液性に優れているので、リフロー後であっても、優れたサイクル特性及び長期保存性を維持することができる。
【0075】
以上のことから、リフロー実装可能とされ、高温環境下に晒された場合であっても耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性に優れた小型の非水電解質二次電池1とすることができる。
なお、加締め部12bの曲率半径Rを0.8mm~1.0mmの範囲内とすることが好ましい。この場合には、正極缶10又は負極缶20とガスケット30との間に隙間が生ることを効果的に抑制することができ、漏液や水分侵入等がさらに生じ難い。そのため、さらに優れた耐漏液性を発揮することができると共に、長期に亘って電池容量を安定に維持することが可能となる。
【実施例
【0076】
次に、本発明に係る非水電解質二次電池について、図1及び図2に示す構成の非水電解質二次電池1を実際に試作したうえで後述する評価試験を行い、上述した作用効果を確認した実施例について以下に説明する。
【0077】
本評価試験を行うにあたり、以下の要件で非水電解質二次電池1を試作した。
はじめに、正極40としては、市販のリチウムマンガン酸化物(Li1.14Co0.06Mn1.80)に、導電助剤としてグラファイトを、結着剤としてポリアクリル酸を以下の割合で混合して正極合剤とした。
・割合「リチウムマンガン酸化物:グラファイト:ポリアクリル酸=95:4:1(質量比)」
【0078】
そして、上述の正極合剤16.4mgを、2ton/cmの加圧力で加圧することで、直径2.8mmの円盤形ペレットに加圧成形した。
次いで、得られたペレット(正極40)を、ステンレス鋼(SUS329J4L:厚さt=0.20mm)製の正極缶10の内面に、炭素を含む導電性樹脂接着剤を用いて接着し、これらを一体化して正極ユニットを得た。次いで、この正極ユニットを、大気中で120℃×11時間の条件で減圧加熱乾燥した。次いで、正極ユニットにおける正極缶10の外壁部12の内側面にシール剤を塗布した。
【0079】
次に、負極50として、表面全体に炭素(C)が形成されたSiO粉末を準備し、これを負極活物質とした。次いで、この負極活物質に、導電剤としてグラファイトを、結着剤としてポリアクリル酸を以下の割合で混合して負極合剤とした。
・割合「SiO粉末:グラファイト:ポリアクリル酸=75:20:5(質量比)」
【0080】
そして、上述の負極合剤3.1mgを、2ton/cm加圧力で加圧成形することで、直径2.8mmの円盤形ペレットに加圧成形した。
次いで、得られたペレット(負極50)を、ステンレス鋼(SUS316L:厚さt=0.20mm)製の負極缶20の内面に、炭素を導電性フィラーとする導電性樹脂接着剤を用いて接着し、これらを一体化して負極ユニットを得た。次いで、この負極ユニットを、大気中で160℃×11時間の条件で減圧加熱乾燥した。次いで、ペレット状の負極50の上に、直径2.8mm、厚さ0.44mmに打ち抜いたリチウムフォイルを圧着し、リチウム-負極積層電極とした。
【0081】
上述のように、本評価試験では、上記実施形態に示す正極集電体41及び負極集電体51を設けずに、正極缶10に正極集電体41の機能を持たせ、且つ負極缶20に負極集電体51の機能を持たせた状態で非水電解質二次電池1を作製した。なお、このことは、本評価試験の結果に影響を与えるものではない。
【0082】
次に、ガラス繊維からなる不織布を乾燥させた後、直径3.6mmの円盤型に打ち抜いてセパレータ60とした。そして、このセパレータ60を、負極50上に圧着されたリチウムフォイル上に載置し、負極缶20の開口部に、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)製のガスケット30を配置した。
【0083】
(電解液の作製)
電解液70としては、テトラグライム(TEG)、ジエトキシエタン(DEE)、エチレンカーボネート(EC)及びビニレンカーボネート(VC)の各溶媒を混合して非水溶媒とした。そして、得られた非水溶媒に、支持塩としてLiTFSI(1M)を溶解させることで電解液70を得た。
この際の各溶媒の混合比率は、体積比でTEG:DEE:EC:VC=44.8:42.7:5.0:7.5とした。
【0084】
次いで、上述のように準備した正極缶10及び負極缶20に、上述の手順で調整した電解液70を電池1個あたりの合計で7μL充填した。
次いで、セパレータ60が正極40に接触するように、負極ユニットを正極ユニットに組み合わせた後、正極缶10の加締め部12bを加締めることで、正極缶10と負極缶20とを密封し、その後、25℃で7日間静置することで、評価試験を行う試料電池(非水電解質二次電池1)を作製した。
【0085】
なお、試料電池を作製するにあたって、表1に示すように、加締め部12bの曲率半径Rが異なる7つの試料電池を作製した。具体的には、曲率半径Rが0.6mmから1.2mmまでの範囲内において、0.1mm間隔で異なるように合計7つの試料電池を作製した。
このうち、曲率半径Rが本願発明の範囲内(0.7mm~1.1mm)に含まれる0.7mmの試料電池を実施例1とし、0.8mmの試料電池を実施例2とし、0.9mmの試料電池を実施例3とし、1.0mmの試料電池を実施例4とし、1.1mmの試料電池を実施例4とした。また、曲率半径Rが本願発明の範囲外である0.6mmの試料電池を比較例1とし、1.2mmの試料電池を比較例2とした。
【0086】
【表1】
【0087】
なお、上述した7つの試料電池は、いずれも直径Dが本願発明の範囲内(4.6mm~5.0mm)に含まれる4.8mmとし、さらに電池高さH1を2.1mmとした。
【0088】
さらに本評価試験を行うにあたって、加締め部12bの曲率半径Rが0.9mmの場合において、表2に示すように、いわゆる肩高さ(H2/H1)の割合が異なる5つの試料電池を作製した。
具体的には、肩高さ(H2/H1)の割合が71%から81%までの範囲内において合計5つの試料電池を作製した。このうち、肩高さ(H2/H1)の割合が本願発明の範囲内(74%~79%)に含まれる74%の試料電池を実施例6とし、76%の試料電池を実施例7とし、79%の試料電池を実施例8とした。また、肩高さ(H2/H1)の割合が本願発明の範囲外である71%の試料電池を比較例3とし、81%の試料電池を比較例4とした。
【0089】
【表2】
【0090】
(評価試験)
上述の各試料電池(実施例1~実施例8、比較例1~比較例4)それぞれについて、リフロー条件での加熱を行い、加熱後の外観を観察することで、漏液の発生の有無、及び負極缶20の頂壁部21の膨出変形(いわゆる出べそ)の発生の有無を確認した。
さらに、加熱直後における電池容量(初期容量)を測定すると共に、一定時間の経過後に電池容量を再度測定して、容量維持率を算出した。
【0091】
具体的には、表1に示す実施例1~5、比較例1、2の合計7つの試料電池のそれぞれについて、260℃で10秒間加熱を行った。この際、各試料電池をそれぞれ60個用意して加熱を行った。そして、各試料電池60個の全てについて外観検査を行って、電池内部から電解液70が漏れ出ている試料電池の個数を計測して漏液発生率(%)を求めた。
なお、260℃で10秒間加熱する加熱処理は、リフロー実装(リフローはんだ付け)に伴う加熱条件に相当する。
計測した漏液発生率の結果を、表1及び図3に示す。さらに加熱後の初期容量(mAh)を計測した結果についても、表1及び図3に示す。
【0092】
さらに上述の加熱を行った後、各試料電池を80℃、相対湿度(RH:Relative Humidity)90%の雰囲気下に調整された恒温槽内で480時間保存した後、電池容量を再度計測した。そして、計測した容量と初期容量との比較によって、容量維持率(%)を算出した。これにより、高温高湿環境下での非水電解質二次電池の劣化度合いを確認することが可能となる。
算出した容量維持率の結果を、表1及び図3に示す。
【0093】
さらに、表2に示す実施例6~8、比較例3、4の合計5つの試料電池のそれぞれについて、上述と同様に260℃で10秒間加熱を行った。この際、各試料電池をそれぞれ20個用意して加熱を行った。そして、各試料電池20個の全てについて外観検査を行って、上述と同様に漏液発生率(%)を求めると共に、それに加えて膨出変形が生じたか否かを目視によって確認したうえで、膨出変形の発生率(%)を求めた。
これら計測した漏液発生率及び膨出変形の発生率の結果を、表2及び図4に示す。
【0094】
表1及び図3に示すように、加締め部12bの曲率半径Rが本願発明の範囲内(0.7mm~1.1mm)に含まれる実施例1~5の試料電池の場合には、漏液が発生することがないうえ、高温高湿環境下での保存後の容量維持率が50%を超える結果になったことを確認できた。これにより、実施例1~5の試料電池は、耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性に優れた非水電解質二次電池であることを実際に確認することができた。
特に、曲率半径Rが0.8mm~1.0mmの範囲内に含まれる実施例2~実施例4の試料電池の場合には、高温高湿環境下での保存後の容量維持率が60%を超える結果になったことが確認できた。これにより、さらに電池容量を維持することができる非水電解質二次電池であることを実際に確認することができた。
【0095】
これに対して、加締め部12bの曲率半径Rが本願発明の範囲(0.7mm~1.1mm)外に含まれる比較例1、2の試料電池の場合には、実際に漏液が発生してしまううえ、容量維持率も50%を下回る傾向にあることが確認できた。
【0096】
さらに表2及び図4に示すように、肩高さ(H2/H1)の割合が本願発明の範囲内(74%~79%)に含まれる実施例6~8の試料電池の場合には、漏液が発生することがないうえ、膨出変形(いわゆる出べそ)が発生することがない結果になったことを確認できた。これにより、実施例6~8の試料電池は、耐漏液性に優れ、サイクル特性及び長期保存性に優れた非水電解質二次電池であることを実際に確認することができた。
【0097】
これに対して、肩高さ(H2/H1)の割合が本願発明の範囲(74%~79%)外に含まれる実施例3、4の試料電池の場合には、実際に漏液及び膨出変形が発生したことが確認できた。
【0098】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【符号の説明】
【0099】
D…非水電解質二次電池の直径
R…加締め部の曲率半径
H1…非水電解質二次電池の高さ
H2…正極缶の高さ
1…非水電解質二次電池
2…収容容器
3…発電要素
10…正極缶
11…底壁部
12…外壁部
12b…加締め部
20…負極缶
21…頂壁部
22…内壁部
30…ガスケット
60…セパレータ
70…電解液
図1
図2
図3
図4