(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】磁性粒子、免疫検査用の粒子および検査試薬
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20241125BHJP
G01N 33/552 20060101ALI20241125BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G01N33/543 541A
G01N33/552
G01N33/553
G01N33/543 591
(21)【出願番号】P 2020178983
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】笹栗 大助
(72)【発明者】
【氏名】掛川 法重
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-148560(JP,A)
【文献】特開2018-146535(JP,A)
【文献】特開2006-226691(JP,A)
【文献】特開2015-025820(JP,A)
【文献】特開平06-109735(JP,A)
【文献】特開平11-148901(JP,A)
【文献】特開2013-167528(JP,A)
【文献】特開平08-201391(JP,A)
【文献】特開昭63-183909(JP,A)
【文献】特開平08-029424(JP,A)
【文献】特公平04-059587(JP,B2)
【文献】特許第2554250(JP,B2)
【文献】特開2012-013687(JP,A)
【文献】特開2009-106798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/552
G01N 33/553
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重力方向の下側に配置されたセンサーを有する光導波路型の検査システムにおいて、磁力の発生によってセンサー近傍に引き寄せられて前記センサーにおける入射光量を減衰させ、かつ、前記磁力と反対方向の磁力の発生によって前記重力方向と反対側に引き上げられる磁性粒子であって、
シリカを含むコア粒子と、前記コア粒子
を被覆するシェル層とを有
し、
前記シェル層は、前記コア粒子に近い方から順に、磁性体粒子を含む磁性体層と、
リガンドを結合できる官能基を含む樹脂層と、を有し、
前記磁性粒子の体積平均粒径が0.6μm以上3.0μm以下であり、前記磁性粒子の比重が1.8g/cm
3以上5.0g/cm
3以下である磁性粒子。
【請求項2】
前記官能基が、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、メルカプト基、チオール基、グリシジル基、マレイミド基、スクシンイミジル基、及びグリシジルオキシ基で構成される群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項3】
前記樹脂層は、ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリN-スクシンイミジルアクリレートで構成される群から選ばれる少なくとも一種を含む請求項1又は2に記載の磁性粒子。
【請求項4】
前記磁性粒子の比重が2.5g/cm
3以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項5】
前記磁性粒子の比重が2.1g/cm
3以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項6】
前記磁性粒子の体積平均粒径が0.7μm以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項7】
前記磁性粒子の体積平均粒径が2.7μm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項8】
前記磁性体粒子が、鉄、ニッケル、及び酸化鉄からなる群より選択される少なくとも一種を含む請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項9】
前記磁性体粒子がマグネタイト(Fe
3O
4)、γ-酸化鉄(III)(γ-Fe
2O
3)、フェライトで構成される群から選択される少なくとも一種を含む、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項10】
前記磁性体粒子の粒径が0nmより大きく、20nm以下である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項11】
前記コア粒子の比重が1.8g/cm
3以上である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項12】
前記磁性体粒子の飽和磁化が、18emu/g以上である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の磁性粒子。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の磁性粒子と、前記官能基に結合したリガンドとを有する免疫検査用の粒子。
【請求項14】
請求項13に記載の免疫検査用の粒子と、前記免疫検査用の粒子を分散させる分散剤とを有する免疫検査用の試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子、免疫検査用の粒子、検査試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に含まれる抗原や抗体などの測定対象物質を検出する検査システムにおいて、磁性粒子が使用されることがある。具体的には、試料から測定対象物質(例えば、抗原)を検出するために、抗原と特異的に結合する抗体を結合した磁性粒子、及び抗原と特異的に結合する抗体を固定したセンサーを用いる検査システムがある。試料に抗原が存在すると、抗原抗体反応により、抗体を固定したセンサーに、抗原を介して磁性粒子が結合する。このような検査システムとして、光導波路型の検査システムが挙げられる。光導波路型の検査システムでは、センサーに入射した光に対する出射光量の変化により抗原の有無を判定するものである。このような抗原の検出方法においては、検出までの時間をより短時間にすること、すなわち検出速度が速いことが求められる。
【0003】
一方、試料に含まれる測定対象物質の検出に用いられる従来の磁性粒子として以下のものが知られている。特許文献1では、ポリマー粒子の表面に磁性体微粒子を吸着させた診断薬用粒子が開示されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献2では、無機酸化物又はポリマーを含有するコア粒子の表面に、マグネタイト粒子を含有するシェル層を有する磁性体内包粒子が開示されている(特許文献2)。特許文献3では、酸化鉄などの超常磁性金属酸化物粒子を含有するシリカ粒子の表面上にシリカ層が形成された磁性シリカ粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-205481号公報
【文献】特開2010-132513号公報
【文献】特開2016-105066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが検討したところ、上記従来の磁性粒子は、光導波路型の検査システムにおいて、検出速度が遅いという課題や測定対象物質の有無によるセンサーからの出射光量の変化が小さい、という課題があることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、測定対象物質を検出する際に、検出速度が速く、測定対象物質の有無によるセンサーからの出射光量の変化が大きい磁性粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る磁性粒子は、シリカを含むコア粒子と、前記コア粒子の表面のシェル層とを有する磁性粒子であって、前記シェル層は、前記コア粒子に近い方から順に、磁性体粒子を含む磁性体層と、リガンドを結合できる官能基を含む樹脂層と、を有し、前記磁性粒子の体積平均粒径が0.6μm以上3.0μm以下であり、前記磁性粒子の比重が1.8g/cm3以上5.0g/cm3以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定対象物質を検出する際に、検出速度が速く、測定対象物質の有無による出射光量の変化が大きい磁性粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る磁性粒子の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例、及び比較例における磁性粒子とその分析結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に述べる。以下で示す各種の物性値は、特に断りのない限り、25℃における値である。
【0012】
また、本実施形態における磁性粒子が試料から検出する測定対象物質としては、後述するリガンドが挙げられるが、以下ではリガンドとして、抗原を例に挙げて説明する。
【0013】
(本実施形態に係る磁性粒子の構成の概要)
本実施形態に係る磁性粒子100は、シリカを含むコア粒子101と、コア粒子101の表面のシェル層102とを有し、シェル層102は、コア粒子101に近い方から順に、磁性体粒子を含む磁性体層103と、樹脂層104と、を有する。樹脂層104はリガンドを結合できる官能基(不図示)を含む。そして、磁性粒子100の体積平均粒径が0.6μm以上3.0μm以下であり、磁性粒子100の比重が1.8g/cm3以上5.0g/cm3以下である。このような構成により、光導波路型の検査システムにおいて、抗原等の測定対象物質を検出する際に、検出速度が速い。また、測定対象物質の有無による出射光量の変化が大きいため、感度が高い。以下、その理由について説明する。
【0014】
(光導波路型の検査システムにおいて、磁性粒子を用いて抗原を検出する方法)
光導波路型の検査システムでは、検体等の試料から抗原を検出する際に、抗原と特異的に結合する抗体を結合した磁性粒子と、抗原と特異的に結合する抗体を固定したセンサーを用いる。センサーを重力方向の下側に配置し、センサーの近傍に磁力を発生させる電磁石などを配置する。電磁石を作動させると、重力と磁力の作用で、センサー近傍に磁性粒子を引き寄せることができる。そして、抗原抗体反応を利用することで、センサー近傍に引き寄せられた磁性粒子は、抗原を介して、センサー面に設けられた抗体と結合する。さらに、重力方向の上側に電磁石を配置することで、センサー面に設けられた抗体と結合していない磁性粒子を重力と反対方向に引き上げることができる。これにより、センサーに結合する磁性粒子と結合していない磁性粒子とを分離することができる。
【0015】
光源からセンサーに光を入射させたときの、出射光量の変化を測定することで、抗原抗体反応を介してセンサー面に結合した磁性粒子の有無、濃度、量などを測定することができる。すなわち、センサー面に結合した磁性粒子が存在する(多い)場合は、存在しない(少ない)場合に比べて、出射光量が小さい。したがって、磁性粒子がセンサーに結合する前に検出される出射光量からの減衰量に基づいて、試料中の抗原などの測定対象物質の有無、濃度、量などを測定することができる。
【0016】
このような方法で測定対象物質を検出する際、磁性粒子への測定対象物質以外のタンパク質の非特異的な吸着を低減させることや、センサー面に抗原がない場合での吸着を低減させることで、検査エラーを減らすことが重要である。そのために、磁性粒子の表面に樹脂層が形成される。樹脂層は親水的な特性を持つものが好ましく、また、樹脂層には、抗体等のリガンドを結合できる官能基が含まれる。
【0017】
(光導波路型の検査システムにおいて、磁性粒子に求められる性能)
従来の磁性粒子は、磁性粒子にかかる重力と磁力が十分ではないため、センサー近傍に磁性粒子を引き寄せるために時間を要してしまい、その結果として検出速度が遅くなっていた。
【0018】
上記特許文献1に記載の磁性粒子は、ポリマー粒子の表面に磁性体微粒子を吸着させた構成である。本発明者らが検討したところ、特許文献1に開示されている磁性粒子の比重は、1.2~1.3g/cm3程度である。そのため磁性粒子を重力方向に移動させる推進力が弱く、センサー近傍に磁性粒子を引き寄せるために時間を要してしまい、検出速度が十分に得られない。
【0019】
上記特許文献2に記載の磁性粒子は、無機酸化物又はポリマーを含有するコア粒子の表面に、マグネタイト粒子を含有するシェル層を有する構成である。しかし、特許文献2の磁性粒子の体積平均粒径は10~500nmであり、小さい。そのため、重力と反対方向に磁場を印加した際に、抗原抗体反応を介さずにセンサー面付近に存在する磁性粒子が移動せず残存してしまい、正確な測定が難しい。
【0020】
特許文献3に記載の磁性粒子は、酸化鉄などの超常磁性金属酸化物粒子を含有するシリカ粒子の表面上にシリカ層が形成された構成である。したがって、磁性体である超常磁性金属酸化物粒子は、シリカ粒子中に分散して存在する。本発明者らが検討した結果、光導波路型の検査システムで特許文献3の磁性粒子を用いる場合に課題があることを見出した。すなわち、光導波路型の検査システムでは、センサー面に結合した磁性粒子により出射光量が変化するが、特にセンサー界面から100~150nm程度の距離にあるごく近い屈折率の高い磁性体の存在が出射光量の変化に大きく影響する。したがって、シリカ粒子中に磁性体が分散された構造では、センサー面近くの磁性体の密度が低くなる。その結果としてコア粒子の表面のシェル層に磁性体が存在する本実施形態の構造と比較して、磁性粒子1個あたりの光量変化が小さくなり、測定の感度が低くなる。また、磁性体を分散させる構成であるため、個々の磁性粒子が含有する磁性体の量がばらつきやすい。本発明者らは、光導波路型の検査システムにおいてセンサーからの出射光量の減衰量も粒子毎で大きくばらつき、検査制度が低下する、という課題があることも見出した。
【0021】
(本実施形態に係る磁性粒子の構成の詳細)
上記従来の磁性粒子の課題を踏まえ、本発明者らは、抗原抗体反応をさせる際には磁性粒子を重力方向に、抗原抗体反応をさせた後には、重力と反対方向に素早く移動させる磁性粒子の設計を検討した。その結果、本発明者らは磁性粒子の比重と、粒径(体積平均粒径)を適切な範囲にすることが重要であると考えた。
【0022】
粒径は抗原の検出感度に影響するパラメータで、粒形が小さい粒子を用いると粒子の比表面積を大きくすることができるため、抗体を多く結合でき、結果的に抗原を検出する確率が上がる。しかし、粒径が小さすぎる場合、粒子の比表面積を大きくできるが、センサーから遠ざかる方向へ、すなわち重力と反対方向の移動が困難になり、結果として正確な抗原検出ができなくなることが分かった。
【0023】
また、同じ粒径であれば、比重が大きな粒子の方が重力方向の移動速度は速くできるため、検出速度を速くすることができる。一方、比重が大きすぎると、重力と反対方向に磁性粒子を引き上げる際に時間がかかり、検出速度が遅くなる。
【0024】
そこで、本発明者らは、光導波路型の検査システムで用いられる磁性粒子は以下の3つの要件を備えることが重要であることを見出した。
【0025】
1つ目の要件は、コア粒子とコア粒子の表面のシェル層とを有する磁性粒子であることである。2つ目の要件は、磁性粒子の体積平均粒径が0.6μm以上3.0μm以下であることである。3つ目の要件は磁性粒子の比重が1.8g/cm3以上5.0g/cm3以下であることである。
【0026】
2つ目、3つ目の要件を実現する設計として、コア粒子がシリカを有し、シェル層がコア粒子に近い方から順に、磁性体粒子を含む磁性体層と樹脂層とを有する構成が適していることを見出した。コア粒子としてシリカを用いることで従来のような樹脂のコア粒子に比べて比重を大きくでき、かつ大きすぎない構成にできる。シェル層として磁性体層と樹脂層とを含むことで、磁性粒子全体の粒径を適切な範囲にすることができる。また、樹脂層がリガンドを結合できる官能基を有することで、磁性粒子の表面にリガンドを結合できる。
【0027】
よって、上記の構成により、光導波路型の検査システムにおいて、抗原等の測定対象物質を検出する際に、検出速度が速い。また、測定対象物質の有無による出射光量の変化が大きいため、測定の感度が高くなる。
【0028】
以下では、本実施形態に係る磁性粒子の各構成要素について詳細を説明する。
【0029】
<コア粒子、磁性体粒子、磁性粒子>
本実施形態において、磁性体層の領域、すなわちコア粒子とシェル層の境界は、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することができる。なぜなら、TEMは、比重の異なる成分を、コントラストを持って撮影することができるため、磁性粒子中の磁性体層の領域を同定することが可能だからである。
【0030】
本実施形態における磁性粒子の平均粒径は、乾燥粒子の場合はTEM画像で観察される20個の粒子の長径の平均値から求めることができ、溶媒中の平均粒子サイズは動的光散乱法(DLS)から求めることができる。コア粒子がシリカ等の無機粒子の場合は、乾燥粒子と溶媒中の粒子とで大きく変化しないため、以下の計算は、乾燥粒子を前提に見積もりを行った。したがって、本実施形態における磁性粒子の平均粒径は、体積平均粒径である。
【0031】
磁性粒子の比重は、磁性粒子の体積平均粒径、コア粒子の平均粒径、材料、磁性体層の組成、磁性体層の平均厚さから算出することができる。具体的には、磁性粒子の比重Dpは、磁性粒子の体積Vp、コア粒子の比重Dc、コア粒子の体積Vc、磁性体層の比重Dm、磁性体層の体積Vmから式(1)で示される。
【0032】
【数1】
磁性体層の体積Vmは、体積平均粒径Rp、コア粒子の体積平均粒径Rcから式(2)で示される。
【0033】
【数2】
シェル層は、磁性体粒子を含む磁性体層に樹脂層が積層したもので、両者の比率はX線光電子分光分析(XPS)や熱
重量分析(TG)から求めることができる。
【0034】
本実施形態に係る磁性粒子の体積平均粒径は0.6μm以上3.0μm以下である。体積平均粒径が0.6μmより小さくなると、光導波路型の検査システムのように磁場により磁性粒子を移動させるような場合において、重力と反対方向に移動させることが困難になり正しい測定が難しい。また、体積平均粒径が3.0μmを超えると、磁性粒子の単位質量あたりの表面積が小さくなるため、結合できる抗体の量が限られ、抗原抗体反応が可能な領域が小さくなり、抗原抗体反応の確率が低下してしまう。抗原の検出感度と検査時間を考えた場合、本実施形態に係る磁性粒子の体積平均粒径は、0.7μm以上であることが好ましく、2.7μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。
【0035】
また、本実施形態に係る磁性粒子の比重は、1.8g/cm3以上5.0g/cm3以下である。また、本実施形態に係る磁性粒子の比重は、3.5g/cm3以下であることが好ましく、3.0g/cm3以下であることが好ましく、2.5g/cm3以下であることがさらに好ましく、2.1g/cm3以下であることが特に好ましい。本実施形態における磁性粒子の比重は、上記式(1)より算出することができる。
【0036】
(磁性体粒子)
磁性体とは、磁場の印加により磁化される材料のことである。磁性体粒子は、金属、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。金属としては、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムが挙げられる。金属酸化物としては酸化鉄、例えば、マグネタイト(Fe3O4)、γ-酸化鉄(III)(γ-Fe2O3)、フェライトからなる群より選択される少なくとも一種が挙げられる。
【0037】
磁性体粒子の平均粒形は、0nmより大きく20nm以下であることが好ましい。特に、平均粒径が0nmより大きく20nm以下であり、マグネタイトを含む磁性体粒子は飽和磁化が大きく、かつ、超常磁性体であるため残留磁化が小さく好ましい。例えば、磁性体粒子の飽和磁化を、18emu/g以上とすることができる。
【0038】
ここで、磁化とは、磁性体に外部磁場をかける際に、その磁性体が分極して磁気モーメントを持つ現象のことであり、飽和磁化とは、磁場の強さとともに増大する磁化が飽和する値のことである。また、残留磁化とは、磁性体に外部磁場をかけた後に磁場ゼロにした場合に、磁性体に残留する磁化のことである。
【0039】
(磁性粒子の移動速度の計算)
光導波路型の検査システムのように磁性粒子に磁場を印加し移動させて抗原を検出する場合、その検出速度を向上させるためには、磁性粒子の沈降速度、つまり重力方向への移動速度を速くすることが有効である。
【0040】
磁性粒子に作用する力は、重力方向に磁場を印加した場合、磁場をOFFにした場合、重力と反対方向に磁場を印加した場合の三つのケースがあり、それぞれ、運動方程式を示すと式(3)(4)(5)となる。
【0041】
【0042】
【0043】
(重力方向と反対に磁場を印加した場合)
【数5】
ここで、mは磁性粒子の重量(g)、fは磁性粒子に作用する浮力(N)、bは速度v(cm/s)で移動する磁性粒子に作用する抵抗力(N)、Fmは磁場を印加した際の磁力(N)である。浮力fと抵抗力bは、さらに式(6)(7)(8)のようにあらわされる。
f=3×π×η×Rp×v・・・(6)
b=Vp×Df×g・・・(7)
m=Vp×Dp・・・(8)
【0044】
ここで、vは磁性粒子の移動速度(cm/s)、gは重力加速度(980.7cm/s2)、Dpは磁性粒子の比重(g/cm3)、Vpは磁性粒子の体積(cm3)、Dfは磁性粒子が分散している分散媒の密度(g/cm3)を表す。また、Rpは平均粒径(cm)、ηは前記分散媒の粘度(Pa・s)を表す。ストークスの式より、磁性粒子の移動速度vは、磁性粒子の体積平均粒形の2乗に比例して大きくなる。平均粒径が同じであれば、比重が大きい粒子の方が移動速度は速い。また、磁力Fm(N)は、磁場と磁化の積に比例し、式(9)であらわされる。ここで、qは磁性粒子1個あたりの磁化(emu/個)、Hは印加磁場(Oe)である。
Fm=q×H×105・・・(9)
【0045】
以上の関係式から分散媒中の粒子の移動速度を算出すると、重力方向に磁場を印加した場合、磁場をOFFにした場合、重力と反対方向に磁場を印加した場合の三つのケースのそれぞれの移動速度は式(10)(11)(12)であらわされる。
【0046】
【数6】
【数7】
【数8】
これらの計算式に合成した磁性粒子の物性パラメータを代入すると、磁性粒子の移動速度を算出することができる。
【0047】
磁性粒子の移動速度を式(10)(11)(12)を用いて算出した。ここで、磁性体層の厚さは100nmとし、磁性体粒子(比重が5.2g/cm3)が樹脂(比重1.1g/cm3)の中に32%含有している構造を想定した。但し、磁性体層と樹脂層が積層された構成でも同様の算出結果が得られる。印加磁場は、下磁場も上磁場も200Oeとし、コア粒子を、シリカ粒子(比重2.0g/cm3)にした場合と、ポリスチレン粒子(比重1.0g/cm3)にした場合とで比較した。算出結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
この結果から、磁性粒子の比重が大きいシリカ粒子は、比重の小さいポリスチレン粒子と比較して、重力方向への移動速度を速くすることができる。ただし、体積平均粒径が0.5μm以下のサイズになると、上磁場印加時に計算値がマイナスとなり、センサー面から粒子が移動できない結果となった。このことから、体積平均粒径は0.6μm以上であることが好ましいことがわかった。
【0049】
(磁性体層)
本実施形態において磁性体層の形成方法について説明する。
【0050】
コア粒子の表面に磁性体粒子を被覆して磁性体層を形成するためには、先ずコア粒子と磁性体粒子とを混合し、コア粒子の表面に磁性体粒子を物理的に吸着させる方法がある。本実施形態で述べる物理的に吸着させる方法とは、化学反応を伴わない吸着法、結合法を指すものである。また、その他に溶液中でコア粒子に磁性体粒子を樹脂と同時に付着させる化学的被覆法もある。
【0051】
物理的に付着させる方法でコア粒子の表面に磁性体粒子を固定するためには、物理的に強い力を外部から加えることにより複合化を実現させる方法も有効である。例えば乳鉢、自動乳鉢、ボールミル、ブレード加圧式粉体圧縮法、メカノフュージョン法のようなメカノケミカル効果を利用するもの、あるいはジェットミル、ハイブリダイザーなど高速気流中衝撃法を利用するものが挙げられる。効率よくかつ強固に複合化を実施するには物理的吸着力が強いことが望ましい。その方法としては攪拌翼付き容器中で攪拌翼の周速度が好ましくは15m/秒以上、より好ましくは30m/秒以上、さらに好ましくは40~150m/秒で実施することが挙げられる。また、コア粒子の表面は隙間が少なくなるように磁性体層で被覆されていることが好ましい。
【0052】
(樹脂層)
上記磁性体層の上に設けられる樹脂層について説明する。以下、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、「アクリレート、又はメタクリレート」を表すものとする。
【0053】
磁性体粒子の表層には、樹脂層が形成される。樹脂層は、抗体等のリガンドを結合することができる官能基を有する。抗体を結合できる官能基は、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、メルカプト基、チオール基、グリシジル基、マレイミド基、スクシンイミジル基、及びグリシジルオキシ基で構成される群から選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0054】
樹脂層を形成する際は、(メタ)アクリル酸などのカルボキシ基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有するモノマー;N-スクシンイミジルアクリレートなどのスクシンイミジル基を有するモノマー;を用いることが好ましい。言い換えると、樹脂層は、ポリ(メタ)アクリル酸ポリマー、ポリ(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリグリシジル(メタ)アクリレート、ポリN-スクシンイミジルアクリレートを含むことが好ましい。
【0055】
また、上記モノマー以外に、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの親水性基を有する(メタ)アクリレート類;スチレン、p-クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;なども用いることができる。磁性粒子への非特異的な吸着を抑制するために、親水性基を有する(メタ)アクリレート類を用いることが好ましい。
【0056】
また、抗体を結合できる官能基は、樹脂の重合の後に付加することも可能である。例えば、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマーを重合して得られる樹脂に、メルカプトジオールを付加することでチオール基を導入できる。また、重合して得られる樹脂に、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミドを付加することでマレイミド基を導入することができる。
【0057】
<免疫検査用の粒子>
本発明の免疫検査用の粒子は、上述の構成の磁性粒子と、上記リガンドを結合できる官能基に結合したリガンドとを有する。
【0058】
<リガンド>
上記の説明では、リガンドの例として抗体、測定対象物質として抗原を例に説明したが、これら以外のリガンドを用いることができる。
【0059】
ここで、リガンドとは、特定の標的物質が有する受容体に特異的に結合する化合物のことである。リガンドとして例えば、抗体、抗原、天然由来核酸、人工核酸、アプタマー、ペプチドアプタマー、オリゴペプチド、酵素又は補酵素などが挙げられる。リガンドが測定対象物質と結合する部位は決まっており、選択的または特異的に高い親和性を有する。リガンドと測定対象物質として例えば、抗原と抗体、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体、核酸などが例示される。リガンドと測定対象物質は逆にしてもよい。すなわち抗体をリガンド、抗原を測定対象物質としてもよいし、抗原をリガンド、抗体を測定対象物質としてもよい。なお、本実施形態のリガンドはこれらに限定されない。
【0060】
また、複数種の抗体が結合した免疫検査用の粒子を用いることで、複数種の測定対象物質を検出することが容易になる。また、測定対象物質が抗体に認識される認識部位が複数ある場合、複数の認識部位に応じた複数種の抗体を免疫検査用の粒子に結合させておくとよい。
【0061】
<検査試薬>
本実施形態における検査試薬は、上記の免疫検査用の粒子と、免疫検査用の粒子を分散させる分散剤とを有する。検査試薬における免疫検査用の粒子の含有量は、分散剤の全質量を100質量%として、0.001質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。検査試薬には、分散剤やブロッキング剤などを含んでいてもよい。分散剤やブロッキング剤などは、2種以上を組み合わせてもよい。分散剤としては、リン酸緩衝液、グリシン緩衝液、グッド緩衝液、トリス緩衝液、アンモニア緩衝液などの緩衝液が挙げられる。
【0062】
<検出方法>
本実施形態において、試料に含まれる測定対象物質の検出方法は以下の工程を少なくとも有する。以下ではリガンドを抗体とした例を説明する。
【0063】
(第1工程)
第1工程では、重力方向の下側に第1の抗体が固定されたセンサー容器内に、測定対象物質を含む試料と、免疫検査用の粒子と免疫検査用の粒子を分散させる分散剤を有する検査試薬とを添加する。その際に、センサー底面には光導波路が形成されていて、光導波路から出射された光量を検出している。
【0064】
(第2工程)
第2工程では、免疫検査用の粒子が測定対象物質を介して第1の抗体に結合するように、重力方向と同じ方向に磁場を印加する。この時、磁性粒子はセンサー面に粒子が複数個連なったように針状に堆積する。
【0065】
(第3工程)
第3工程では、磁場をOFFにして針状に連なった免疫検査用の粒子をセンサー面に沈降させる。この工程で、免疫検査用の粒子はセンサー面を覆うように配置される。試料に測定対象物が存在すれば、この工程で免疫検査用の粒子側の第2の抗体はセンサー面に設けられた第1の抗体と抗原を介して結合する。光導波路から出射される光の光量は、この段階で最も低くなる。
【0066】
(第4工程)
第4工程では、測定対象物質を介して第1の抗体と結合していない免疫検査用の粒子が、センサー面から遠ざかるように磁場を印加する。この工程で、センサー面から離れる免疫検査用の粒子が存在すれば、導波路からの出射光量はその粒子の数に従って増加する。また、第一の工程の光量を初期値とすると、この光量と比較して検出される光量が低い場合は、抗原を介して結合している免疫検査用の粒子が存在することがわかり、その結果、試料内に測定対象物質が存在することがわかる。
【0067】
本実施形態に係る検出方法において、第1の抗体、第2の抗体は測定対象物質に結合可能であればよい。第1の抗体、第2の抗体とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2の抗体は、異なる測定対象物質に結合するとうに複数の抗体が付与されていても良い。
【実施例】
【0068】
以下、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」、及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0069】
<実施例1>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、株式会社日本触媒製のシリカ粒子(平均粒子サイズ:0.5μm、比重:2.0g/cm3)(以下シリカコア粒子)を6g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、シリカコア粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を13g得た。
【0070】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子0.5gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0071】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0072】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。
【0073】
続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して、樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆された粒子が完成した。
【0074】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が0.7μmであることが確認できた。また、シリカコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、シリカコア粒子の比重を2.0g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体粒子の密度を見積もると約32%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は2.05g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した磁性粒子の平均粒径をDLSで測定したところ、0.77μmであった。
【0075】
(カルボキシ基形成)
得られた磁性粒子60mgの水分散液16000mgと、トリエチルアミン(東京化成工業製)145mgでpH10に調整した溶液にメルカプトこはく酸50mgを溶解させ、60℃で15時間攪拌処理した。生成した磁性粒子を純水に分散し処理を完了した。すなわち、樹脂層にカルボキシ基を有する磁性粒子を作製した。
【0076】
(免疫検査用の粒子の作製)
純水で十分に洗浄した上記磁性粒子10mgを、MES緩衝液に分散させ、水溶性カルボジイミド(WSC)、及びN-ヒドロキシスクシンイミド(su-NHS)を加えて25℃で30分間撹拌した。その後、ネオジム磁石で捕集しながら溶液を除去しながらMES緩衝液で洗浄し、MES緩衝液で再分散させて、抗体の終濃度が2mg/mLとなるように抗CRP抗体を加えた。その後、25℃で60分間撹拌し、ネオジム磁石で捕集しながら磁性粒子を回収し、磁性粒子をHEPES緩衝液で洗浄し、抗CRP抗体が結合した免疫検査用の粒子の分散液を得た。
【0077】
磁性粒子に抗CRP抗体が結合していることは、抗CRP抗体を加えたMES緩衝液中の抗体の濃度の減少量を、タンパク質を比色定量することが可能なBCA(ビシンコニン酸)アッセイで確認した。
【0078】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
上記の免疫検査用の粒子の分散液を用いて、検出感度の確認を行った。あらかじめ、抗CRP抗体を結合させた光導波路型センサーを電磁石上にセットした。また、この時、光導波路には、635nmの波長の光を入射させ、出射光を光量センサーで検出しながら感度テストを行った。
【0079】
免疫検査用の粒子は含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた。この分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で1分間重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして5分間静置した。次に、電磁石で30秒間粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用粒分散液滴下直後の光量と同等の光量で、抗原がない場合は光量の低下が無いことを確認した。
【0080】
次に、免疫検査用の粒子の含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で1分間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFにして5分間静置した。次に、電磁石で30秒間、粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の光量に対して34%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。
【0081】
<実施例2>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、株式会社日本触媒製のシリカ粒子(平均粒子サイズ:1.0μm、比重:2.0g/cm3)を12g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、シリカコア粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を20g得た。
【0082】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子1gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0083】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0084】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆されたコアシェル粒子を完成した。
【0085】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が1.2μmであることが確認できた。また、シリカコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、シリカコア粒子の比重を2.0g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体層の磁性体粒子の密度を見積もると約32%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は1.94g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ、1.28μmであった。
【0086】
(感度評価)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシル基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で1分間重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFにして4分間静置した。次に、電磁石で30秒間粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の光量に対して30%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。
【0087】
<実施例3>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、株式会社日本触媒製のシリカ粒子(平均粒子サイズ:1.3μm、比重:2.0g/cm3)を15g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、シリカコア粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を22g得た。
【0088】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子1.3gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0089】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0090】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して、樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆された粒子が完成した。
【0091】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が1.5μmであることが確認できた。また、シリカコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、シリカコア粒子の比重を2.0g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体層の磁性体粒子の密度を見積もると約33%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は1.89g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ1.57μmであった。
【0092】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシル基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で1分間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして3分30秒間静置した。次に、電磁石で30秒間、粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の光量に対して25%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。
【0093】
<実施例4>
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、株式会社日本触媒製のシリカ粒子(平均粒子サイズ:2.5μm、比重:2g/cm3)を30g秤量した。磁性体微粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体微粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、シリカコア粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を38g得た。
【0094】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子2.5gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0095】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0096】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して、樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆された粒子が完成した。
【0097】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が2.7μmであることが確認できた。また、シリカコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、シリカコア粒子の比重を2.0g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体層の磁性体粒子の密度を見積もると約32%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は1.84g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ2.82μmであった。
【0098】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシ基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用の粒子の含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で1分間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして3分10秒間静置した。次に、電磁石で30秒間、磁性粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の光量に対して20%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。
【0099】
<比較例1>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、綜研化学株式会社製のポリスチレン粒子(平均粒径:0.5μm、比重:1.1g/cm3)を3g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、ポリスチレン粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を10g得た。
【0100】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子0.7gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0101】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0102】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆されたコアシェル粒子を完成した。
【0103】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が0.7μmであることが確認できた。また、ポリスチレンコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、ポリスチレンコア粒子の比重を1.1g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体層の磁性体粒子の密度を見積もると約33%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した磁性粒子の比重は1.69g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ0.72μmであった。
【0104】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシ基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.005%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で4分30秒間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして7分20間、静置した。次に、電磁石で30秒間、磁性粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の出射光量に対して約34%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。ただし、シリカコア粒子の同じサイズと比較すると下磁場印加時と磁場OFF時にシリカコアと比較して時間を要し、検出時間を長く設定する必要があった。
【0105】
<比較例2>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、株式会社モリテックス製のポリスチレン粒子(平均粒径:1.0μm、比重:1.1g/cm3)を7g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、ポリスチレン粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を15g得た。
【0106】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子0.8gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0107】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0108】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆されたコアシェル粒子を完成した。
【0109】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が1.2μmであることが確認できた。また、ポリスチレンコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、ポリスチレンコア粒子の比重を1.1g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体層の磁性体粒子の密度を見積もると約32%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した磁性粒子の比重は1.51g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ1.27μmであった。
【0110】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシ基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.005%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で2分30秒間重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして7分40秒間静置した。次に、電磁石で30秒間粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の出射光量に対して約30%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。ただし、シリカコア粒子の同じサイズと比較すると下磁場印加時と磁場OFF時にシリカコアと比較して時間を要し、検出時間を長く設定する必要があった。
【0111】
<比較例3>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、綜研化学株式会社製のポリスチレン粒子(平均粒径:1.3μm、比重:1.1g/cm3)を7g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、ポリスチレン粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を15g得た。
【0112】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子2gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0113】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0114】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆されたコアシェル粒子を完成した。
【0115】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が1.5μmであることが確認できた。また、ポリスチレンコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、ポリスチレンコア粒子の比重を1.1g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性層の磁性体微粒子の密度を見積もると約33%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は1.45g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒子サイズをDLSで測定したところ、平均粒子サイズは1.62μmであった。
【0116】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシ基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.005%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で2分間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして7分間静置した。次に、電磁石で30秒間、粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の光量に対して約23%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。ただし、シリカコア粒子の同じサイズと比較すると下磁場印加時と磁場OFF時にシリカコアと比較して時間を要し、検出時間を長く設定する必要があった。
【0117】
<比較例4>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、株式会社モリテックス製のポリスチレン粒子(平均粒径:2.5μm、比重:1.1g/cm3)を13g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、ポリスチレン粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を20g得た。
【0118】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子3.8gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0119】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0120】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆されたコアシェル粒子を完成した。
【0121】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が2.7μmであることが確認できた。また、ポリスチレンコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、ポリスチレンコア粒子の比重を1.1g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性体層の磁性体粒子の密度を見積もると約31%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は1.31g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ2.85μmであった。
【0122】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシ基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.005%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で1.5分間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして5分30秒間、静置した。次に、電磁石で30秒間、磁性粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の出射光量に対して約19%低下しており、抗原を検出できていることを確認した。ただし、シリカコア粒子の同じサイズと比較すると下磁場印加時と磁場OFF時にシリカコアと比較して時間を要し、検出時間を長く設定する必要があった。
【0123】
<比較例5>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、シリカ粒子(平均粒径:0.3μm、比重:2g/cm3)を3g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、シリカコア粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を13g得た。
【0124】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェル構造の粒子0.3gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石でコアシェル構造の粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0125】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0126】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆されたコアシェル粒子を完成した。
【0127】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径が0.5μmであることが確認できた。また、シリカコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、シリカコア粒子の比重を2.0g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性層の磁性体粒子の密度を見積もると約33%の割合であった。また、磁性粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は2.19g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ0.52μmであった。
【0128】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシル基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用の粒子は含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた。この分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で2分間、重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして7分間静置した。次に、電磁石で30秒間、磁性粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定したが。出射光量は、免疫検査用の粒シオン分散液を滴下した直後の出射光量から80%低下しており、抗原がないにもかかわらず光量の低下が生じ正確な検出ができなかった。
【0129】
<比較例6>
(磁性粒子の作製)
(コア粒子の表面への磁性体層の形成)
コア粒子として、シリカ粒子(平均粒径:4.8μm、比重:2g/cm3)を50g秤量した。磁性体粒子は、株式会社フェローテック製の疎水化処理された磁性体粒子(EMG1400)を10g秤量した。これらの粒子を乳鉢で十分粉砕、混合した混合粒子を作製した。次に、この混合粒子をハイブリダイゼーションシステムNHS-0型(奈良機械製作所(株)製)を使用して、羽の回転数16200rpm(回転速度100m/秒で5分間処理した。この処理により、シリカコア粒子の表層に磁性体粒子が被覆された(磁性体層が形成された)コアシェル構造の粒子を53g得た。
【0130】
(樹脂層の形成)
次に、得られたコアシェルコクゾウの粒子5gを秤量し20mLのメタノールに分散させた。この分散液に、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を38μL追加して3時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で磁性粒子を捕集しながらメタノールを除去し、純水で十分洗浄した後60mLの純水を追加して水分散液を得た。
【0131】
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングしながら2時間撹拌した。続いて、この分散液にキシダ化学製スチレンモノマーを0.5mL添加して30分撹拌した。この段階で、窒素バブリングから窒素フローに切り替えた。
【0132】
次に、0.05gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を予め窒素バブリングで脱気した純水20mLに溶解して、フラスコに添加した。次に、オイルバスを用いて、60℃に昇温して5時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学製)を1mL添加して、さらに5時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して樹脂(ポリグリシジルメタクリレート)で被覆したコアシェル粒子を完成した。
【0133】
(作製した磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をTEMで観察した。20個の粒子の長径の長さを測定して平均値を算出した結果、体積平均粒径5.0μmの粒子サイズであることが確認できた。また、シリカコア粒子の表層には、平均粒径が10nmの磁性体粒子を含む層が50nmの厚さに積層されていて、その上に樹脂層50nmが形成されていた(磁性体粒子を含む層と樹脂層を合わせて磁性体層とする)。磁性体粒子(マグネタイト)の比重を5.2g/cm3、シリカコア粒子の比重を2.0g/cm3、樹脂の比重を1.0g/cm3として、TGにより加熱時の重量減少を測定して磁性層の磁性体微粒子の密度を見積もると約32%の割合であった。また、粒子の比重は、TEMとTGから算出した粒子の比重は1.72g/cm3であった。また、純水に0.01%の濃度で分散した粒子の平均粒径をDLSで測定したところ1.79μmであった。
【0134】
(免疫検査用の粒子の検出感度の確認)
実施例1と同様の手順で、粒子表面にカルボキシ基を形成し、感度特性を評価した。免疫検査用粒子の含有量が0.01%となるようにHEPES緩衝液に分散させた液200μLにCRP抗原を30μL添加し十分混合した後、免疫検査用の粒子の分散液をセンサー内に200μL滴下した。電磁石で40秒間重力方向に磁場を印加した後、磁場をOFFして2分50秒間静置した。次に、電磁石で30秒間粒子がセンサーから遠ざかる方向に磁場を印加した後出射光量を測定した。出射光量は、免疫検査用の粒子の分散液を滴下した直後の出射光量に対して約7%低下していたが、変化量が小さく正確な検出が困難であった。
【符号の説明】
【0135】
100 磁性粒子
101 コア粒子
102 シェル層
103 磁性体層
104 樹脂層