IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メモリ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-半導体記憶装置 図1
  • 特許-半導体記憶装置 図2
  • 特許-半導体記憶装置 図3
  • 特許-半導体記憶装置 図4
  • 特許-半導体記憶装置 図5
  • 特許-半導体記憶装置 図6
  • 特許-半導体記憶装置 図7
  • 特許-半導体記憶装置 図8
  • 特許-半導体記憶装置 図9
  • 特許-半導体記憶装置 図10
  • 特許-半導体記憶装置 図11
  • 特許-半導体記憶装置 図12
  • 特許-半導体記憶装置 図13
  • 特許-半導体記憶装置 図14
  • 特許-半導体記憶装置 図15
  • 特許-半導体記憶装置 図16
  • 特許-半導体記憶装置 図17
  • 特許-半導体記憶装置 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】半導体記憶装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/76 20060101AFI20241125BHJP
   H10B 41/50 20230101ALI20241125BHJP
   H10B 43/50 20230101ALI20241125BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L21/76 L
H10B41/50
H10B43/50
H01L29/78 371
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020185963
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075275
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 武裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 由美子
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-100860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0057484(US,A1)
【文献】特開2004-153173(JP,A)
【文献】特開2014-165253(JP,A)
【文献】特開2001-035915(JP,A)
【文献】特開2011-238826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/76
H10B 41/50
H10B 43/50
H01L 21/336
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成される複数の回路領域と、
一の前記回路領域と他の前記回路領域との間に形成される素子分離領域と、
を備えた半導体記憶装置であって、
底部角部にサブトレンチが形成されたトレンチを有し、また、前記素子分離領域は、第1絶縁膜と第2絶縁膜から構成され、更に、前記第1絶縁膜は、少なくとも前記サブトレンチの内壁を覆うように形成され
前記半導体基板の表面に垂直な深さ方向および前記トレンチの開口部の短手方向に沿う断面において、前記トレンチの内壁を表す曲線は、前記トレンチの底部角部において、3箇所の変曲点を有する、半導体記憶装置。
【請求項2】
前記サブトレンチの凹部先端点における曲率半径は、前記短手方向における幅の半分以下である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項3】
前記第1絶縁膜から前記半導体基板に加えられる第1応力の大きさは、前記第1絶縁膜から前記第2絶縁膜に加えられる第2応力の大きさより大きい、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項4】
前記第1絶縁膜は熱酸化により形成された絶縁膜であり、前記第2絶縁膜は、化学気相成長法により形成された絶縁膜である、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項5】
前記第1絶縁膜、及び、前記第2絶縁膜は、シリコン酸化膜である、請求項4に記載の半導体記憶装置。
【請求項6】
少なくとも一の前記回路領域には、NANDメモリセルアレイが形成されている、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【請求項7】
前記第1絶縁膜の膜厚は、前記深さ方向において、深い位置ほど膜厚が厚い、請求項1に記載の半導体記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
素子形成領域の周囲をガードリングで囲む構造の半導体記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-297174号公報
【文献】特開平10-22262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態は、ガードリングを起点として発生する結晶欠陥が、素子形成領域へ伸張することを抑制することができる半導体記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態の半導体記憶装置は、半導体基板と、前記半導体基板に形成される複数の回路領域と、一の前記回路領域と他の前記回路領域との間に形成される素子分離領域とを備えている。前記素子分離領域は、底部角部にサブトレンチが形成されたトレンチ形状を有する。また、前記素子分離領域は、第1絶縁膜と第2絶縁膜から構成されている。更に、前記第1絶縁膜は、少なくとも前記サブトレンチの内壁を覆うように形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態にかかる半導体記憶装置の構成例を示す平面図。
図2】実施形態にかかる半導体記憶装置の構成例を示すブロック図。
図3】比較例の半導体記憶装置の構成例を示す断面図。
図4】ガードリング領域に配置されるガードリング線の比較レイアウトを説明する平面図。
図5】半導体基板に伸張する転位線を説明する断面図。
図6】実施形態の半導体記憶装置の構成例を示す断面図。
図7】比較例のトレンチの形状を説明する概略断面図。
図8】サブトレンチの形状を説明する概略断面図。
図9】素子分離領域に加えられる応力を説明する図。
図10】比較例の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図11】比較例の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図12】比較例の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図13】実施形態の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図14】実施形態の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図15】実施形態の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図16】実施形態の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図。
図17】実施形態の素子分離領域の別の一例を説明する断面図。
図18】実施形態の素子分離領域の別の一例を説明する断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0008】
図1は、実施形態にかかる半導体記憶装置の構成例を示す平面図である。図2は、実施形態にかかる半導体記憶装置の構成例を示すブロック図である。また、図3は、比較例の半導体記憶装置の構成例を示す断面図であって、図1に示す半導体記憶装置のA-A´線における断面図である。図1には、ガードリング領域4を含む、半導体記憶装置1の一部分の平面図を示している。実施形態の半導体記憶装置1は、例えば、NANDメモリ(NANDフラッシュメモリ)を備えた不揮発性メモリであり、半導体チップとして形成されている。半導体記憶装置1の半導体基板10の表面は、X方向とY方向に延伸するXY平面に対して平行である。また、半導体記憶装置1は、XY平面に対して垂直であるZ方向から見たとき、X方向、及び、Y方向に沿った端辺を有する矩形の形状を有する。X方向とY方向とZ方向は、それぞれ直交する。
【0009】
図1に示すように、半導体記憶装置1には、第1回路領域2A、第2回路領域2B、及び、第3回路領域2Cが形成されている。第1回路領域2A、第2回路領域2B、第3回路領域2Cの各々は、例えば、素子形成領域として機能する。また、第1回路領域2Aと第3回路領域2Cとを囲むように、ガードリング領域4が形成されている。第1回路領域2A、及び、第2回路領域2Bには、半導体記憶装置1を構成する周辺回路が、機能ブロック単位で形成されている。
【0010】
図2に示すように、本実施形態の半導体記憶装置1は、例えば、メモリセルアレイ21、入出力回路22、ロジック制御回路24、レジスタ26、シーケンサ27、電圧生成回路28、ロウデコーダ30、センスアンプ31、入出力用パッド群32、ロジック制御用パッド群34、及び、電源入力用端子群35を備えている。
【0011】
メモリセルアレイ21は、ワード線及びビット線に関連付けられた複数の不揮発性メモリセル(図示せず)を含む。
【0012】
入出力回路22は、メモリコントローラ1との間で、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSを送受信する。入出力回路22は、信号DQ<7:0>内のコマンド及びアドレスをレジスタ26に転送する。また、入出力回路22は、書き込みデータ、及び読み出しデータをセンスアンプ31との間で送受信する。
【0013】
ロジック制御回路24は、メモリコントローラ1からチップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、及びライトプロテクト信号/WPを受信する。また、ロジック制御回路24は、レディービジー信号/RBをメモリコントローラ1に転送して、不揮発性メモリ2の状態を外部に通知する。
【0014】
電圧生成回路28は、シーケンサ27からの指示に基づき、データの書き込み、読み出し、及び、消去等の動作に必要な電圧を生成する。
【0015】
ロウデコーダ30は、レジスタ26からアドレス内のブロックアドレスおよびロウアドレスを受け取り、当該ブロックアドレスに基づいて対応するブロックを選択するとともに、当該ロウアドレスに基づいて対応するワード線を選択する。
【0016】
センスアンプ31は、データの読み出し時には、メモリセルからビット線に読み出された読み出しデータをセンスし、センスした読み出しデータを入出力回路22に転送する。センスアンプ31は、データの書き込み時には、ビット線を介して書き込まれる書き込みデータをメモリセルに転送する。
【0017】
入出力用パッド群32は、メモリコントローラ1との間でデータを含む各信号の送受信を行うため、信号DQ<7:0>、及び、データストローブ信号DQS、/DQSに対応する複数の端子(パッド)を備えている。
【0018】
ロジック制御用パッド群34は、メモリコントローラ1との間で各信号の送受信を行うため、チップイネーブル信号/CE、コマンドラッチイネーブル信号CLE、アドレスラッチイネーブル信号ALE、ライトイネーブル信号/WE、リードイネーブル信号RE、/RE、及びライトプロテクト信号/WPに対応する複数の端子(パッド)を備えている。
【0019】
電源入力用端子群35は、外部から不揮発性メモリ2に、種々の動作電源を供給するため、電源電圧Vcc、VccQ、Vppと、接地電圧Vssを入力する複数の端子を備えている。電源電圧Vccは、動作電源として一般的に外部から与えられる回路電源電圧であり、例えば3.3V程度の電圧が入力される。電源電圧VccQは、例えば1.2Vの電圧が入力される。電源電圧VccQは、メモリコントローラ1と不揮発性メモリ2との間で信号を送受信する際に用いられる。電源電圧Vppは、電源電圧Vccよりも高圧の電源電圧であり、例えば12Vの電圧が入力される。メモリセルアレイ21へデータを書き込んだり、データを消去したりする際には、20V程度の高い電圧が必要となる。この際に、約3.3Vの電源電圧Vccを電圧生成回路28の昇圧回路で昇圧するよりも、約12Vの電源電圧Vppを昇圧するほうが、高速かつ低消費電力で所望の電圧を生成することができる。一方で、例えば、高電圧を供給することができない環境において不揮発性メモリ2が用いられる場合、電源電圧Vppには電圧が供給されなくともよい。電源電圧Vppが供給されない場合であっても、不揮発性メモリ2は、電源電圧Vccが供給されていれば、各種の動作を実行することができる。すなわち、電源電圧Vccは、不揮発性メモリ2に標準的に供給される電源であり、電源電圧Vppは、例えば使用環境に応じて追加的・任意的に供給される電源である。
【0020】
図1は、半導体記憶装置1にある複数の回路領域のうち、第1回路領域2A、第2回路領域2B、及び、第3回路領域3Cに対応する部分のみを模式的に示している。例えば、第1回路領域2Aにはセンスアンプ31のセンスアンプユニット(センスアンプ31の一部)を構成する回路が形成されており、第2回路領域2Bにはシーケンサ27を構成する回路が形成されており、第3回路領域2Cにはセンスアンプ31のデータレジスタ(センスアンプ31の他の一部)を構成する回路が形成されている。第1回路領域2A、第2回路領域2B、及び、第3回路領域2Cに機能ブロック単位で形成される他の例としては、上記のものに限られない。例えば、ロウデコーダ30、レジスタ26、電圧生成回路28、ロジック制御回路24、または、メモリセルアレイ21のうちいずれか1つが、第1回路領域2A、第2回路領域2B、または、第3回路領域2Cに、機能ブロック単位で形成されてもよい。
【0021】
ガードリング領域4は、隣接する回路領域(例えば、第2回路領域2Bや第3回路領域2C)と第1回路領域2Aとの間を電気的に遮断し、外部の回路から第1回路領域2Aに形成された回路に対して電気的な干渉を防止する。また、ガードリング領域4は、隣接する回路領域(例えば、第1回路領域2Aや第2回路領域2B)と第3回路領域2Cとの間を電気的に遮断し、外部の回路から第3回路領域2Cに形成された回路に対して電気的な干渉を防止する。本実施形態の半導体記憶装置1においては、ガードリング領域4は、XY平面において第1回路領域2Aの周囲を連続的に取り囲むように、回路分離領域3に形成されている。また、ガードリング領域4は、XY平面において第3回路領域2Cの周囲を連続的に取り囲むように、回路分離領域3に形成されている。すなわち、ガードリング領域4は、XY平面において四角形状(rectangular shape)を有する。XY平面において、X方向における一方を「右」、X方向における他方を「左」、Y方向における一方を「上」、Y方向における他方を「下」とそれぞれ定義した場合、ガードリング領域4は、回路分離領域3における第1回路領域2Aと第3回路領域2Cの右左上下に対応する箇所に、形成されている。
【0022】
なお、ガードリング領域4の形状は、四角形に限られない。例えば、ガードリング領域4は、XY平面においてコの字形状(angular-U shape)を有していてもよい。この場合、ガードリング領域4は、第1回路領域2Aや第3回路領域2Cの周囲を完全に取り囲む構成ではない。例えば、第1回路領域2AにおいてY方向に延伸する辺のうち、第2回路領域2Bや第3回路領域から遠い側にある辺の左側においてY方向に延伸する部分が省略されてもよい。すなわち、ガードリング領域4の配置場所や平面形状は、外部の回路との電気的な干渉を防止したい回路領域(例えば、第1回路領域2A)と、隣接する他の回路領域(例えば、第2回路領域2B、第3回路領域2C)との相対的な位置関係や電気的な特性(例えば、許容されるノイズレベル)などを考慮して設計される。
【0023】
図3に示すように、半導体基板10には、第1回路領域2AのX方向における右側(一方側)に、回路分離領域3を介してガードリング領域4が形成されている。ガードリング領域4のX方向における右側(他方側)にも、回路分離領域3が形成されている。すなわち、ガードリング領域4は、回路分離領域3に挟まれた構造を有する。
【0024】
第1回路領域2Aには、複数のトランジスタ11が形成されている。トランジスタ11のソース/ドレインには、コンタクト電極CTaを介して、図示しない上部配線層から所定の電位が供給される。
【0025】
回路分離領域3には、素子分離領域12として、例えばSTI(Shallow Trench Isolation)が形成されている。STIは、半導体基板10に形成された所定の深さの溝部に、絶縁物としてのシリコン酸化膜が埋め込まれた構成を有する。
【0026】
ガードリング領域4にはガードリング線13が配置されている。ガードリング線13には、コンタクト電極CTgを介して、図示しない上部配線層から所定の電位が供給される。コンタクト電極CTgを介して上部配線層からガードリング線13に供給される電位は、半導体基板10を介して第1回路領域2Aの半導体基板10に供給される。すなわち、ガードリング領域4によって、第1回路領域2Aにおいてトランジスタ11が形成されるウェル電位を安定化させることができ、外部の回路からノイズが混入してウェル電位が不安定になることを防止できる。
【0027】
図4は、ガードリング領域4に配置されるガードリング線13のレイアウトを説明する平面図である。図4は、図1において点線で囲まれた矩形領域Bを切り出した平面図である。図4においては、ガードリング領域4の全ての領域がガードリング線13となっている。ここで、図4を用い、ガードリング線13下部の半導体基板10と、素子分離領域12との境界付近に発生する結晶欠陥について、説明する。
【0028】
図5は、半導体基板に伸張する転位線を説明する断面図である。図5は、図4に示す比較例のB1-B1´線における断面図である。素子分離領域12は酸化シリコンで形成されており、ガードリング線13はシリコンで形成されている。シリコン酸化膜とシリコンは熱膨張率が異なる。このため、半導体基板10上に各種半導体回路を形成する工程の中で、半導体基板に加えられる熱処理工程(熱酸化膜形成や熱酸窒化膜形成など、高温化での熱反応を用いた成膜工程や、イオン注入などにより半導体基板中に不純物をドーピングした後に行われる、不純物を熱拡散させるためのアニール処理工程など)が実施されると、素子分離領域12を構成する酸化シリコンが収縮して、ガードリング線13を構成するシリコンを膨張させる。
【0029】
酸化シリコンによって周囲のシリコンに引張り応力が加えられると、ガードリング線13に歪みが生じる。この歪みが大きくなると、歪みが生じた箇所に結晶欠陥が発生する。半導体基板10を構成するシリコン結晶は、その結晶構造に依存して、変形を生じる{111}面の「すべり面」を有している。そして、発生した結晶欠陥が起点となって、シリコンのすべり面に沿って転位DL1、DL2、DL3が伸張する。
【0030】
例えば、転位DL2、DL3のように、転位DLが素子分離領域12の下層の半導体基板10を伝わって第1回路領域2Aまで伸張する場合、例えば、転位DL2が第1回路領域2Aに形成されたトランジスタ11の電流リーク源となり、デバイス不良が引き起こされるおそれがある。従って、半導体記憶装置の信頼性を向上させるために、第1回路領域2Aまで転位DLが伸張することを抑制する必要がある。
【0031】
転位DLの伸張を抑制する方法として、転位DLが第1回路領域2Aに達する前に、伸張を食い止める方法があげられる。例えば、素子分離領域12の下層の半導体基板10中に、高濃度の不純物を注入した高歪領域を形成する。転位DLを当該高歪領域に誘導することで、第1回路領域2Aへの転位DLの到達を抑制する方法がこれに相当する。しかし、転位DLの伸張距離は、起点での応力の大きさに比例すると考えられており、起点において大きな応力かかる場合、転位DLの伸張はシリコンのすべり面を乗り換えながら、下方向(Z方向)だけでなく、水平方向(X方向やY方向)にも広がってしまう。このため、素子分離領域12の下層に設けた高歪領域に転位DLを誘導して固着させることは難しい。
【0032】
転位DLの伸張を抑制する他の方法として、ガードリング線13に生じる歪みを緩和させ、転位DLの発生起点にかかる応力を小さくする方法があげられる。すなわち、ガードリング線13に生じる歪みが小さいうちに結晶欠陥を発生させて、転位DLを伸張させる。これにより、後のウェーハ処理工程で大きな歪みが蓄積される前に歪みを緩和させ、遠方まで転位DLが伸張することを抑制する。
【0033】
結晶欠陥は、局所的に大きな歪みが生じた場所に選択的に発生する。従って、周囲よりも大きな応力が加えられる場所(応力集中点)を意図的につくると、その場所に結晶欠陥を発生させることができる。また、第1回路領域2Aまで転位線DLが延伸しても、深層であればトランジスタ11の特性に影響を及ぼさない。従って、転位線DLは、表層よりも深層で発生させることが好ましい。すなわち、図6において、素子分離領域12の上端から発生する転位線DL2、DL3よりも、素子分離領域12の下端から発生する転位線DL1のほうが、万が一第1回路領域2Aまで延伸した場合にもデバイス不良が引き起こされにくい。
【0034】
本実施形態の半導体記憶装置1では、以上を鑑みて、素子分離領域12の下端に応力集中点を積極的に形成し、歪みが小さいうちに当該応力集中点に結晶欠陥を発生させて、転位DLを発生させる。小さな歪みから発生した転位DLはその伸張距離が短くなるため、転位DLが回路の中央部表層に向かって伸張することを防止できる。その結果、ガードリング線13に生じる歪みを緩和させ、第1回路領域2Aの表層に転位DLが延伸することを抑制する。
【0035】
図6は、実施形態の半導体記憶装置の構成例を示す断面図である。図6は、図3に示す半導体記憶装置の、回路形成領域2A近傍の回路分離領域3とガードリング領域4とを拡大した図である。図6に示す実施形態の半導体記憶装置1は、素子分離領域12の構造以外は、図3に示す比較例と同様の構造である。実施形態の半導体記憶装置1の素子分離領域12は、酸化シリコン122と熱酸化膜121とから構成されている。具体的には、素子分離領域12を形成するために、半導体基板10を蝕刻して形成した溝部(トレンチ)の内壁に沿って、半導体基板1の表面に熱酸化膜121が形成され、熱酸化膜121の表面に酸化シリコン122が形成されている。また、素子分離領域12の底部角部には、サブトレンチSTが形成されている。
【0036】
ここで、図7、及び、図8を用いて、サブトレンチSTについて説明する。図7は、比較例のサブトレンチSTを有さないトレンチの形状を説明する概略断面図であり、図8は、サブトレンチSTを有するトレンチの形状を説明する概略断面図である。図7に示すように、サブトレンチSTを有さないトレンチ120nの底面と側面とのなす角は鈍角(直角よりも大きい角度)である。また、トレンチ120nの内壁(側面及び底面)を表す曲線は、トレンチ120nの底部角部において1箇所の変曲点PInを有する。
【0037】
一方、サブトレンチSTを有するトレンチ120sの形状は、図8に示すように、底面の中央が高く周辺が低い形状であり、底部角部に凹み部分が形成された形状である。サブトレンチSTを有するトレンチ120sの底面と側面とのなす角は鋭角(直角よりも小さい角度)である。例えば、トレンチ120sの底部角部における凹み部分が、サブトレンチSTとして機能する。更に、トレンチ120sの内壁(側面及び底面)を表す曲線は、トレンチ120sの底部角部において3箇所の変曲点PIs1、PIs2、PIs3を有する。
【0038】
実施形態の半導体記憶装置1に形成されたサブトレンチSTを有するトレンチ120sの底部角部(サブトレンチSTの凹部先端に位置する点PIs2)に接する円(底面及び側面に接する内接円)の曲率半径Rsは、図7に示す比較例のサブトレンチSTを有さないトレンチ120nの底部角部(点PIn)に接する円の曲率半径Rnよりも、小さい。また、曲率半径Rsは、例えば、トレンチの開口部のX方向における幅Rоの半分以下である。より好ましくは、曲率半径Rsは、幅Rоの1/5~1/10程度である。
【0039】
素子分離領域12を形成する際に、上述のようなサブトレンチSTを有するトレンチ120sの内壁に、熱酸化膜121を形成する理由について、図9を用いて説明する。図9は、素子分離領域に加えられる応力を説明する図である。図9に示すように、半導体基板10において素子分離領域12に形成されたトレンチに直接シリコン酸化膜122を埋め込んだ後、酸素雰囲気中で高温加熱することにより、半導体基板10とシリコン酸化膜122との間に熱酸化膜121が形成される。具体的には、半導体基板10とシリコン酸化膜122との界面に存在するシリコンが、加熱雰囲気中に含まれる酸素と結合してシリコン酸化物を生成することにより、熱酸化膜121が形成される。すなわち、熱酸化膜121は、半導体基板10のシリコンを消費しながら形成される。このとき、生成されるシリコン酸化物は、消費されるシリコンに比べて体積が大きくなる。この熱酸化過程における体積膨張により、半導体基板10に圧縮応力が加えられる。特に、鋭角(直角よりも小さい角度)を有するサブトレンチSTでは、拘束を受けた状態で体積が膨張するため、大きな圧縮応力が加えられる。従って、応力集中点であるサブトレンチSTに結晶欠陥が発生する。すなわち、実施形態によれば、素子分離領域12のトレンチの内壁に熱酸化膜121を形成することで、半導体基板10の歪みが小さいうちに、素子分離領域12の応力集中部で意図的に結晶欠陥を発生させて、歪みを緩和させることができる。
【0040】
このとき、サブトレンチSTが応力集中部となるため、結晶欠陥は素子分離領域12の底部角部に選択的に発生させることができる。素子分離領域12の下端に応力集中点を積極的に形成し、歪みが小さいうちに当該応力集中点に結晶欠陥を発生させて、転位DLを発生させる。小さな歪みから発生した転位DLはその伸張距離が短くなるため、転位DLが回路の中央部表層に向かって伸張することを防止できる。その結果、ガードリング線13に生じる歪みを緩和させ、第1回路領域2Aの表層に転位DLが延伸することを抑制する。
【0041】
次に、素子分離領域12の形成方法について、図面を用いて説明する。まず、比較例の素子分離領域12の形成方法について、図10図12を用いて説明する。図10図12は、比較例の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図である。
【0042】
まず、図10に示すように、半導体基板10の表面にエッチングマスク膜(例えば、レジストやAPF(Advanced Pаtterning film)など)100を成膜し、素子分離領域12の上部に形成されたエッチングマスク膜100を除去する。すなわち、エッチングマスク膜100をパターニングし、素子分離領域12となる半導体基板10表面を露出させる。そして、エッチングマスク膜100の開口部から露出した半導体基板10を、異方性エッチング(例えば、SF6とHBrの混合ガスによる平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)装置を用いたドライエッチング)によりエッチングし、トレンチ120nを形成する。
【0043】
トレンチ120n形成後、エッチングマスク膜100をアッシングなどにより全て除去し、半導体基板10の表面を露出させる。そして、図11に示すように、化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)などを用いて、半導体基板10の全面にシリコン酸化膜122を堆積させる。このとき、トレンチ120n内がシリコン酸化膜122で完全に充填される程度の膜厚で、シリコン酸化膜122を堆積する。
【0044】
最後に、化学的機械研磨(CMP:Cemical Mechanical Polishing)などを用い、素子分離領域12以外の半導体基板10表面のシリコン酸化膜122を除去しつつ表面を平坦化し、比較例の素子分離領域12の形成を完了する。
【0045】
次に、実施形態の素子分離領域12の形成方法について、図13図16を用いて説明する。図13図16は、実施形態の素子分離領域の形成工程を説明するための断面図である。
【0046】
まず、図13に示すように、半導体基板10の表面にエッチングマスク膜100を成膜し、素子分離領域12の上部に形成されたエッチングマスク膜100を除去する。すなわち、エッチングマスク膜100をパターニングし、素子分離領域12となる半導体基板10表面を露出させる。そして、エッチングマスク膜100の開口部から露出した半導体基板10を、異方性エッチングによりエッチングし、トレンチ120sを形成する。このとき、トレンチ120sの底部角部にサブトレンチSTが形成される条件で、エッチングを行う。例えば、エッチングに用いられるガスの混合比(例えば、SF6とHBrの混合比)や、ガスの圧力、半導体基板10に印加する高周波電力であるRFパワーの強度を適切な値に制御することにより、サブトレンチST付きのトレンチ120sを形成する。なお、必要に応じて、異方性エッチングの後に、等方性エッチング(例えば、HFとHNO3の混合溶液に浸漬させるウェットエッチング)を施してもよい。等方性エッチングをポストプロセスとして行うことにより、サブトレンチSTの曲率を調整することができる。
【0047】
トレンチ120s形成後、エッチングマスク膜100をアッシングなどにより全て除去し、半導体基板10の表面を露出させる。そして、図14に示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などを用いて、半導体基板10の全面にシリコン酸化膜122を堆積させる。このとき、トレンチ120n内がシリコン酸化膜122で完全に充填される程度の膜厚で、シリコン酸化膜122を堆積する。
【0048】
続いて、図15に示すように、化学的機械研磨(CMP:Cemical Mechanical Polishing)などを用い、素子分離領域12以外の半導体基板10表面のシリコン酸化膜122を除去し、表面を平坦化する。
【0049】
最後に、図16に示すように、酸素雰囲気中で一定時間アニール処理を施し、トレンチ120nの側壁に熱酸化膜121を形成し、実施形態の素子分離領域12の形成を完了する。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、素子分離領域12のトレンチが、底部角部にサブトレンチSTを有する。これにより、サブトレンチSTが応力集中部となるため、回路領域の表層から遠い素子分離領域12の底部角部に、選択的に結晶欠陥を発生させることができる。また、素子分離領域12は、熱酸化膜121とシリコン酸化膜122の2層構造を有し、半導体基板10との境界に熱酸化膜121が形成されている。これにより、半導体基板10に対し、熱酸化膜121から圧縮応力が加えられるため、歪みが小さいうちに応力集中点に結晶欠陥を発生させて、転位DLを発生させることができる。小さな歪みから発生した転位DLはその伸張距離が短くなるため、転位DLが回路の中央部表層に向かって伸張することを防止できる。その結果、ガードリング線13に生じる歪みを緩和させ、第1回路領域2Aの表層に転位DLが延伸することを抑制することができる。
【0051】
図17、20は、実施形態の素子分離領域の別の一例を説明する断面図である。図16に示す素子分離領域12は、熱酸化膜121をトレンチ120sの側壁全体に同じ膜厚で形成した一例を示したが、必ずしも均一な膜厚で熱酸化膜121を形成する必要はない。サブトレンチSTに被覆する熱酸化膜121により半導体基板10に所望の圧縮応力が印加されればよい。従って、図17に示すように、トレンチ120sの深さ方向に向かって熱酸化膜121の膜厚が厚くなるように形成してもよい。結晶欠陥を選択的に発生させる部位(サブトレンチST)の熱酸化膜121の膜厚を他の部位よりも厚くすることで、素子分離領域12の底部角部に結晶欠陥が発生する確率をより一層高める効果が期待できる。また、図18に示すように、サブトレンチSTを含むトレンチ120s底部にのみ熱酸化膜121を形成してもよい。側壁からの圧縮応力は得られないものの、底部に形成された熱酸化膜121からの圧縮応力により、素子分離領域12の底部角部に結晶欠陥を発生させることができる。
【0052】
また、素子分離領域12を構成する熱酸化膜121は、半導体基板10に圧縮応力を加えることができる材質の絶縁膜であればよく、熱酸化膜121にかえて、例えば、熱窒化膜など他の膜で構成してもよい。更に、素子分離領域12を構成するシリコン酸化膜122は、CVD法により形成されるシリコン酸化膜に限定されない。例えば、プラズマ酸化法により形成される高密度プラズマ酸化膜など、高アスペクト比のトレンチに充填可能な形成可能な手法で形成したシリコン酸化膜であればよい。
【0053】
なお、上述では、第1回路領域2Aと第2回路領域2Bとの間の素子分離領域12やその周辺の構造について説明したが、第1回路領域2Aと第3回路領域2Cとの間の素子分離領域12やその周辺構造についても同様の構成を有する。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、一例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1…半導体記憶装置、2A…第1回路領域、2B…第2回路領域、2C…第3回路領域、3…回路分離領域、4…ガードリング領域、10…半導体基板、11…トランジスタ、12…素子分離領域、13…ガードリング線、14、15…欠陥固着部、21…メモリセルアレイ、22…入出力回路、24…ロジック制御回路、26…レジスタ、27…シーケンサ、28…電圧生成回路、30…ロウデコーダ、31…センスアンプ、32…入出力用パッド群、34…ロジック制御用パッド群、35…電源入力用端子群、100…エッチングマスク膜、120n、120s…トレンチ、121…熱酸化膜、122…シリコン酸化膜、DL、DL1、DL2、DL3…転位、ST…サブトレンチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18