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特許7592470電気接続方法、液体吐出ヘッドの製造方法、構造物および液体吐出ヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電気接続方法、液体吐出ヘッドの製造方法、構造物および液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20241125BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B41J2/175 161
B41J2/01 301
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020197406
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085630
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 健三
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178253(JP,A)
【文献】特開2017-081180(JP,A)
【文献】特開2014-240182(JP,A)
【文献】特開2017-122686(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0020961(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第111532030(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有し記録を行う記録素子基板と、
前記エネルギー発生素子と電気的に接続されている電極を有する電極部材と、
前記電極部材を支持する支持部材と、
を有する液体吐出ヘッドと、コンタクトピンを有するインクジェット記録装置本体との電気接続方法において、
前記電極と電気接続するコンタクトピンを前記電極に接触させる接触工程と、
前記コンタクトピンを前記電極に接触させた状態で、前記コンタクトピンを前記電極に対して押圧方向に押圧することで、前記支持部材の前記電極と対向する位置であって前記押圧方向に対して傾斜する傾斜部の斜面に沿って前記コンタクトピンが前記電極上を移動する移動工程と、
前記傾斜部の斜面に沿って前記コンタクトピンが前記電極上を移動する移動工程と、
を有することを特徴とする電気接続方法。
【請求項2】
前記電極の表面形状は、平面形状である請求項1に記載の電気接続方法。
【請求項3】
前記電極と前記傾斜部との間には隙間が形成されており、
前記移動工程において、前記コンタクトピンから受けた力により前記電極が前記傾斜部の斜面に沿って変形し、該電極上を前記コンタクトピンが移動する請求項1または2に記載の電気接続方法。
【請求項4】
前記コンタクトピンの前記電極上での移動を停止する停止工程を有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電気接続方法。
【請求項5】
前記停止工程において、前記コンタクトピンの前記電極上での移動は、前記コンタクトピンが前記電極を介して前記傾斜部の角部に接触することで止まる請求項4に記載の電気接続方法。
【請求項6】
前記停止工程の状態において、前記電極は前記傾斜部の斜面に沿って変形し、
前記コンタクトピンの先端および側面が前記電極に接触している請求項に記載の電気接続方法。
【請求項7】
前記電極は、複数形成されており、
前記傾斜部は、複数の前記電極のそれぞれに形成されている請求項1ないし6のいずれか1項に記載の電気接続方法。
【請求項8】
前記複数の電極のそれぞれに形成された傾斜部は、すべて同じ方向に傾いている請求項7に記載の電気接続方法。
【請求項9】
前記複数の電極のそれぞれに形成された傾斜部は、第1の方向に傾く傾斜部と、第2の方向に傾く傾斜部とから構成されており、
前記第1の方向と前記第2の方向は、互いに反対方向である請求項7に記載の電気接続方法。
【請求項10】
前記第1の方向に傾く傾斜部の数と、第2の方向に傾く傾斜部の数は同じである請求項9に記載の電気接続方法。
【請求項11】
前記複数の電極のそれぞれに形成された傾斜部は、第1の方向に傾く傾斜部と、第2の方向に傾く傾斜部と、第3の方向に傾く傾斜部と、第4の方向に傾く傾斜部とから構成されており、
前記第1の方向と前記第2の方向は、互いに反対方向であり、
前記第3の方向と前記第4の方向は、互いに反対方向である請求項7に記載の電気接続方法。
【請求項12】
前記複数の電極のそれぞれに形成された傾斜部は、前記傾斜部の前記コンタクトピンから受ける力の向きが、前記電極部材を固定する固定部材に向かう向きになるよう形成されている請求項7に記載の電気接続方法。
【請求項13】
前記傾斜部は、1つの前記電極に対して複数形成されている請求項1ないし12のいずれか1項に記載の電気接続方法。
【請求項14】
前記傾斜部は、1つの前記電極に対して1つ形成されている請求項1ないし12のいずれか1項に記載の電気接続方法。
【請求項15】
前記傾斜部の上面は、平面である請求項1ないし14のいずれか1項に記載の電気接続方法。
【請求項16】
前記傾斜部の上面は、曲面である請求項1ないし14のいずれか1項に記載の電気接続方法。
【請求項17】
液体を吐出する吐出口と、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有し記録を行う記録素子基板と、
前記エネルギー発生素子と電気的に接続されている電極を有する電極部材と、
前記電極部材を支持する支持部材と、
を有する液体吐出ヘッドの製造方法において、
前記電極と電気接続するコンタクトピンを前記電極に接触させる接触工程と、
前記コンタクトピンを前記電極に接触させた状態で、前記コンタクトピンを前記電極に対して押圧方向に押圧することで、前記支持部材の前記電極と対向する位置であって前記押圧方向に対して傾斜する傾斜部の斜面に沿って前記コンタクトピンが前記電極上を移動する移動工程と、
を有することを特徴とする液体吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
液体を吐出する吐出口と、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有し記録を行う記録素子基板と、
前記エネルギー発生素子と電気的に接続されている電極を有する可撓性の電極部材と、
前記電極部材を支持する支持部材と、
を有し、
前記電極は、液体吐出装置の有するコンタクトピンを当該電極に押圧方向に押圧することで液体吐出装置と電気接続する液体吐出ヘッドにおいて、
前記支持部材の、前記電極と対向する位置には、前記押圧方向に対して傾斜する傾斜部が形成されていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項19】
前記傾斜部は、1つの前記電極に対して複数形成されている請求項18に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項20】
前記支持部材は、前記吐出口から吐出される液体を貯留する請求項18に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気接続方法、液体吐出ヘッドの製造方法、構造物および液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出して記録を行う記録装置として、インクジェット記録装置が挙げられる。インクジェット記録装置には、吐出口からインク(液体)を吐出する液体吐出ヘッドが搭載されている。この液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッドの検査時には検査機器等と、使用時にはインクジェットプリンタ本体等と電気的に接続される。液体吐出ヘッドと外部(検査機器やインクジェットプリンタ本体等)とのこの電気的な接続は、一例として、液体吐出ヘッドが有する電極に、カンチレバーやポゴピンなどのコンタクトピンを接触させることにより行われる。
【0003】
しかしながら、例えば、インクを吐出する際に生じる、霧状の微小なインク(以下、インクミストと称す)が液体吐出ヘッドの電極やコンタクトピンに付着し、コンタミネーションとなった結果、電極とコンタクトピンとの電気接続が不安定になる恐れがある。
【0004】
特許文献1では、コンタクトピンの先端部にコンタミネーションが付着しにくくし、電極とコンタクトピンとの電気的な接触を向上させることができる技術が開示されている。具体的には、コンタクトピンを電極に押し付ける方向に交差する方向にコンタクトピンの先端部を傾斜させ、その傾斜した傾斜部が電極上を滑るようにする。これにより、コンタクトピン先端部のコンタミネーションを擦り、電気的な接触を安定化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-122686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構成においては、上述した形状のコンタクトピンを電極表面上で滑らせるために、電極の表面形状を円形にする必要がある。そのため、特許文献1に記載の構成では、電極の形状によってはコンタクトピンを電極表面上で滑らせて電気接続することが困難になる場合がある。
【0007】
本発明は上記課題を鑑み、電極の表面形状に依らずにコンタクトピンを電極表面上で滑らせ、電極とコンタクトピンとを電気接続することができる電気接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明は、液体を吐出する吐出口と、前記吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子と、を有し記録を行う記録素子基板と、前記エネルギー発生素子と電気的に接続されている電極を有する電極部材と、前記電極部材を支持する支持部材と、を有する液体吐出ヘッドと、コンタクトピンを有するインクジェット記録装置本体との電気接続方法において、前記電極と電気接続するコンタクトピンを前記電極に接触させる接触工程と、前記コンタクトピンを前記電極に接触させた状態で、前記コンタクトピンを前記電極に対して押圧方向に押圧することで、前記支持部材の前記電極と対向する位置であって前記押圧方向に対して傾斜する傾斜部の斜面に沿って前記コンタクトピンが前記電極上を移動する移動工程と、前記傾斜部の斜面に沿って前記コンタクトピンが前記電極上を移動する移動工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電極の表面形状に依らずにコンタクトピンを電極表面上で滑らせ、電極とコンタクトピンとを電気接続することができる電気接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】液体吐出ヘッドおよびコンタクトユニットを示す概略図。
図2】液体吐出ヘッドおよび傾斜部を示す概略図。
図3】コンタクトピンと電極が接触する際の各工程を示す概略図。
図4図3に示す各工程のフローチャート。
図5】第2の実施形態における傾斜部を示す概略図。
図6】第2の実施形態における傾斜部を示す概略図。
図7】第2の実施形態における傾斜部を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、電気接続するための電極を有する第1の部材と、第2の部材と、を有する構造物に好適に適用できるが、構造物の一例として、液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いて、以下説明を行う。
【0012】
(第1の実施形態)
(液体吐出ヘッド)
本実施形態の液体吐出ヘッド201について説明する。図1は、液体吐出ヘッド201およびコンタクトユニット(コンタクトピン部材とも称す)210を示す概略図である。図1(a)は、電極202が見える位置から液体吐出ヘッド201およびコンタクトユニット210を見た際の概略図である。図1(b)は、コンタクトピン211が見える位置から液体吐出ヘッド201およびコンタクトユニット210を見た際の概略図である。液体吐出ヘッド201は、複数の可撓性の電極202を有する可撓性の電極部材203と、電極部材203を支持する支持部材204と、記録素子基板205および位置決め基準206等を有している。記録素子基板205は、液体を吐出する吐出口や、吐出口から液体を吐出するためのエネルギーを発生するエネルギー発生素子を有しており、エネルギー発生素子を駆動することで吐出口から液体を吐出し、記録を行う。液体吐出ヘッド201は、エネルギー発生素子を駆動するため、電極202を介してインクジェット記録装置本体から電力や信号を受け取っている。また、液体吐出ヘッド201の検査時においては、電極202を介して検査機器等と液体吐出ヘッド201を電気接続する。電極202の表面形状は、平面形状である。
【0013】
支持部材204は樹脂材料で成形されている。可撓性の電極部材203は、レーザー溶着や超音波溶着などの樹脂溶着手段を用いて支持部材204に固定されている。支持部材204には位置決め基準206が成形されている。位置決め基準206は、X軸とY軸とZ軸の位置の基準となっており、対向する方向より応力を与えられることによってインクジェット記録装置本体の任意の位置に固定される。また、図1における支持部材204は、インクを貯留するインクタンクとしての機能も兼用している。
【0014】
図1(b)に示すように、コンタクトユニット210は、複数のコンタクトピン211とコンタクトピン保持部材212を有している。コンタクトピン211はコンタクトピン保持部材212に固定されている。コンタクトユニット210は、インクジェット記録装置本体に搭載されており、コンタクトピン211を介して液体吐出ヘッド201に電力と信号を供給する。または、液体吐出ヘッド201の検査時においては、検査機器がコンタクトユニット210を有し、コンタクトユニット210を介して検査機器と液体吐出ヘッド201が電気接続される。コンタクトピン211としては、ポゴピンもしくはカンチレバーを使用することが好適である。また、コンタクトピン保持部材212としては、樹脂材料もしくはプリント基板で製作することが好適である。
【0015】
図2(a)は、液体吐出ヘッド201を電極部材203の正面から見た際の概略図である。図2(b)は、図2(a)に示す領域Aの拡大図である。図2(c)は、図2(b)に示す電極202を透過させた状態での電極部材203および支持部材204を示す概略図である。なお、図2(c)において、透過させた電極202は、破線で示している。図2(d)は、図2(b)に示すB-B断面における電極202および支持部材204の断面図である。図2(d)に示すように、支持部材(傾斜部材とも称す)204の、電極202と対向する位置には、傾斜部304が形成されている。1つの傾斜部304の大きさは、1つの電極202よりも小さく、1本のコンタクトピン211よりも大きい。具体的には、本実施形態のコンタクトピン211の直径は0.5mmであるため、傾斜部304のX方向における長さは0.5mm以上であることが好ましい。また、本実施形態の電極202のX方向における幅は10mmであるため、傾斜部304のX方向における長さは10mm以下であることが好ましい。また、同様の理由から、傾斜部のZ方向における長さも、0.5mm以上10mm以下であることが好ましい。また、傾斜部304のY方向における長さが短いと、詳しくは後述する移動工程におけるコンタクトピン211の電極上での移動が生じにくくなるため、傾斜部304のY方向における長さは0.1mm以上であることが好ましい。しかしながら、傾斜部304のY方向の長さが大きすぎると、傾斜部304が形成されている部分の支持部材204の厚みが薄くなる。これにより、支持部材204の適切な剛性を維持することができなくなる恐れがあるため、傾斜部304のY方向における長さは10mm以下であることが好ましい。また、1つの電極202に対して複数の傾斜部304が形成されており、図2においては、1つの電極202に対して3つの傾斜部304が形成されている。
【0016】
(接触方法)
次に、電極202とコンタクトピン211との電気接続のための接触方法(液体吐出ヘッドの製造方法)について説明する。図3は、コンタクトピン211と電極202が接触する際の各工程を示す概略図である。図4は、図3に示す各工程のフローチャートである。
【0017】
まず、図3(a)に示すように、電極202を有する電極部材203と、電極202と対向する位置に傾斜部304が形成された傾斜部材(支持部材)204と、を用意する(用意工程、図4のS1)。そして、コンタクトピン211を電極202に対して垂直方向(Y方向)から接近させる。このとき、傾斜部304の斜面は、コンタクトピン211が電極202に接近する方向(コンタクトピン211の押圧方向)に対して交差する方向に傾いている。
【0018】
その後、図3(b)に示すように、コンタクトピン211を電極202に接触させる(接触工程、図4のS2)。コンタクトピン211を電極202に接触させ、そのまま電極202に対して押圧すると、可撓性の電極202は、コンタクトピン211に押圧されて傾斜部304の斜面に沿うように変形する。これは、電極202と傾斜部304との間に隙間(空間305)が形成されているため、電極202が変形する余地があるためである。
【0019】
次に、図3(c)に示すように、コンタクトピン211と電極202が接触した後も、そのままコンタクトピン211を電極202に向かって(Y方向に)押圧する(移動させる)。この結果、コンタクトピン211には傾斜部に沿う力Faが作用し、これにより、コンタクトピン211は、傾斜部304の斜面に沿って電極上を滑る(移動する)(移動工程、図4のS3)。移動工程により電極上をコンタクトピン211が移動することで、コンタクトピン211が電極202の表面を擦ると同時に、コンタクトピン211の先端も擦られ、電極202またはコンタクトピン211に付着したコンタミネーションが除去される。これにより、コンタミネーションが除去された綺麗な箇所で電極202とコンタクトピン211とが接触することができるため、電極202とコンタクトピンとの電気的な接触を安定化させることができる。
【0020】
最後に、図3(d)に示すように、傾斜部304の角部404に電極202を介してコンタクトピン211が接触することで、コンタクトピン211の電極202上での移動が停止する(停止工程、図4のS4)。これにより、コンタクトピン211と電極202との接触(電気接続)が完了する。
【0021】
傾斜部304は、1つの電極202に対して、少なくとも1つ形成されていればよい。しかしながら、1つ電極202に対して、1つだけ傾斜部304が形成されている場合には、上述した移動工程においてコンタクトピン211が電極上を移動する距離が長くなる。これにより、コンタクトピン211には、傾斜部304による力Faを大きく受けることになる。この結果、力Fa方向におけるコンタクトピン211の耐荷重を超過する場合があり、コンタクトピン211が破損してしまう可能性がある。
【0022】
そこで、図2および図3に示したように、傾斜部304を1つの電極に対して複数形成することがより好ましい。これにより、一つ一つの傾斜部304を小さくすることができ、コンタクトピン211の電極202上での移動量を抑制することができる。その結果、コンタクトピン211に加わる荷重をより小さくすることができ、コンタクトピン211の破損を抑制することができる。
【0023】
なお、1つの電極202に対し1つのみ傾斜部304を形成したとしても、その傾斜部304の形成領域を小さくすればコンタクトピン211の移動量が小さくなるため、コンタクトピン211の破損を抑制することはできる。しかしながら、その場合には、コンタクトピン211が所望の位置からずれた場合に、傾斜部304にコンタクトピン211が接触しない可能性がある。上述したように、1つの電極に対して複数の傾斜部304を形成すれば、1つの傾斜部304の形成領域を小さくしながらも、所望の位置からコンタクトピン211がずれた場合には、いずれかの傾斜部304にコンタクトピン211が接触することができる。これにより、コンタクトピン211の破損を抑制しながらも、コンタクトピン211と傾斜部304との接触を確実に行うことができる。なお、形成する傾斜部304のサイズや数量は、コンタクトピン211のFa方向における耐荷重によって決定することが好ましい。
【0024】
図2および図3においては、傾斜部304の上面が平面形状のものを図示していたが、本実施形態はこれに限られない。即ち、傾斜部304の上面が曲面であってもよい。しかしながら、傾斜部304の上面が曲面であると、コンタクトピン211に押された電極202が傾斜部304に沿って変形した結果、電極202の形状も曲面となる。電極202の形状が曲面になると、コンタクトピン211と電極202との接触領域が小さくなるため、コンタクトピン211と電極202との電気接続が不安点になる場合もある。そのため、図2および図3に示すように、傾斜部304の上面の形状は、平面形状であることが好ましい。
【0025】
また、上述した本実施形態の説明においては、図3(a)に示すように、傾斜部304と電極202との間に空間305が形成されるように電極202を配置したが、本実施形態はこれに限られない。即ち、傾斜部304の斜面上に直接電極202を配置し、空間305が形成されない構成であってもよい。この構成であっても、コンタクトピン211は電極202上を移動し、上述した本発明の効果は得られる。しかしながら、傾斜部304と電極202との間に空間305が形成されていない場合には、電極202がほとんど撓まない。このため、コンタクトピン211と電極202との接触領域は、コンタクトピン211の先端と傾斜部304の角部404と接触するコンタクトピン211の側面との2点程度となることが多い。一方、空間305が形成されていると、図3(d)に示すように、電極202がコンタクトピン211の先端形状にならうように変形する。その結果、コンタクトピン211と電極202は、コンタクトピン211の先端のほぼ全域にわたって接触するようになる。これにより、コンタクトピン211と電極202との接触領域が大きくなり、コンタクトピン211と電極202との電気接続がより安定化する。したがって、電極202と傾斜部304との間には空間305が形成されていることがより好ましい。
【0026】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図5および図6を参照して説明する。なお、第1の実施形態との相違点について主に説明し、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。第1の実施形態においては、複数の傾斜部304の斜面のすべてが同じ方向(正のX方向、第1の方向)に傾いていたが、本実施形態においては、正のX方向のみならず、他の方向にも傾く傾斜部を形成している。
【0027】
図5は、本実施形態における、図2(b)のB-B断面に相当する断面図である。図5においては、負のX方向(第2の方向)に傾く傾斜部505が形成されている。即ち、第1の方向と第1の方向は互いに反対方向である。また、コンタクトピン211が電極202と接触することにより、支持部材204にはコンタクトピン211からの力が加わるが、図5においては、この力をFcおよびFdとして図示している。負のX方向に傾く傾斜部505を形成することにより、コンタクトピン211から支持部材204に加わるX方向における力を分散することができ、支持部材204の耐久性を高める観点からより好ましい。
【0028】
図6は、本実施形態の変形例を示す概略図である。図6(a)は、図2(a)に示す領域Aの拡大図である。図6(b)は、図6(a)に示すB-B断面における断面図である。図6(c)は、図6(a)に示すC-C断面における断面図である。図6(d)は、図6(a)に示すD-D断面における断面図である。図6(e)は、図6(a)に示すE-E断面における断面図である。図6(f)は、図6(a)に示すF-F断面における断面図である。図6においては、X方向に傾く傾斜部のみならず、Z方向に傾く傾斜部も形成している。具体的には、Z軸正方向(第3の方向)に傾斜する傾斜部606と、Z軸負方向(第4の方向)に傾斜する傾斜部607とが形成されている。即ち、第3の方向と第4の方向とは互いに反対方向である。これにより、コンタクトピン211から支持部材204に加わる力をZ方向の正と負方向にも分散することができ(FgとFh)、支持部材204の耐久性をより高めることができる。
【0029】
なお、力を分散させる観点から、正のX方向に傾く傾斜部304の数と、負のX方向に傾く傾斜部505の数は同じであることが好ましい。また、同様に、正のZ方向に傾く傾斜部606の数と、負のX方向に傾く傾斜部607の数は同じであることが好ましい。
【0030】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について、図7を参照して説明する。なお、第1の実施形態との相違点について主に説明し、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。図7(a)は、液体吐出ヘッド201と固定基準708を示す概略図である。図7(b)は、図7(a)に示す領域Aの拡大図である。図7(c)は、図7(b)に示すB-B断面における断面図である。図7(d)は、図7(b)に示すC-C断面における断面図である。図7(e)は、図7(b)に示すD-D断面における断面図である。図7(f)は、図7(b)に示すE-E断面における断面図である。図7(g)は、図7(b)に示すF-F断面における断面図である。
【0031】
インクジェット記録装置本体は固定部材708を有している。そして、液体吐出ヘッド201の位置決め基準206が固定部材708のX軸固定基準面709とZ軸固定基準面710に当接することで、液体吐出ヘッド201がインクジェット記録装置本体の任意の位置に固定される。
【0032】
本実施形態においては、傾斜部の斜面の向きを固定部材708に向かうようにし、コンタクトピン211が支持部材204の傾斜部を介して液体吐出ヘッド201に与える力が固定部材708に向かうようにしている。具体的には、正のX方向および負のZ方向に力(FdおよびFg)が働くように傾斜部305および傾斜部606を形成する。これにより、コンタクトピン211からの力によっても、液体吐出ヘッド201を固定部材708に押し当てることができるため、液体吐出ヘッド201の位置決め動作を補助する効果が期待できる。
【符号の説明】
【0033】
202 電極
203 電極部材
204 傾斜部材
211 コンタクトピン
210 コンタクトピン部材
304 傾斜部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7