(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/04815 20220101AFI20241125BHJP
H04N 21/442 20110101ALI20241125BHJP
H04N 21/439 20110101ALI20241125BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20241125BHJP
A63F 13/65 20140101ALI20241125BHJP
A63F 13/79 20140101ALI20241125BHJP
A63F 13/85 20140101ALI20241125BHJP
【FI】
G06F3/04815
H04N21/442
H04N21/439
G06F3/01 515
G06F3/01 510
A63F13/65
A63F13/79
A63F13/85
(21)【出願番号】P 2020199149
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大築 ともえ
(72)【発明者】
【氏名】渡部 浩行
(72)【発明者】
【氏名】塩津 真一
(72)【発明者】
【氏名】小島 幹
(72)【発明者】
【氏名】前畑 実
(72)【発明者】
【氏名】一津屋 美岐
(72)【発明者】
【氏名】原田 晴夫
【審査官】田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0089900(US,A1)
【文献】特開2018-126185(JP,A)
【文献】国際公開第2019/177002(WO,A1)
【文献】特表2018-514005(JP,A)
【文献】特許第6092437(JP,B1)
【文献】特開2010-105643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0255842(US,A1)
【文献】特開2009-135686(JP,A)
【文献】中村 卓矢,自動走行時の乗り物酔い防止を目的としたTV雑談ロボットの検討,電子情報通信学会技術研究報告 Vol.117 No.442 IEICE Technical Report,日本,一般社団法人電子情報通信学会 The Institute of Ele,2018年02月12日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/048-3/04895
H04N 21/442
H04N 21/439
A63F 13/65
A63F 13/79
A63F 13/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想空間体験を含むデジタルコンテンツのユーザに関する内外の状況を取得
し、
取得された
前記状況に基づいて、前記ユーザの酔い状況を推定
し、
推定された前記ユーザの酔い状況に応じて、前記ユーザが酔いを抑制する行動を取るよう
に誘導する
音声を出力する酔いの抑制処理を実行す
る
コントローラを備え
る情報処理装置。
【請求項2】
前記抑制処
理は、
前記ユーザが揺れを知覚しにくい方向へ視線を送るように誘導する誘導音を発生
する処理である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記抑制処
理は、
前記ユーザが前記デジタルコンテンツの映像の変動が少ない方向へ視線を送るように誘導する誘導音を発生
する処理である
請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記抑制処
理は、
前記ユーザの姿勢が酔いにくい姿勢となるように誘導する誘導音を発生
する処理である
請求項1、2または3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記抑制処
理は、
前記ユーザが移動体の乗員である場合に、予測される前記移動体の挙動に対する警告音を出力する
処理である
請求項1~4のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記抑制処
理は、
前記ユーザが発声するように促す誘導音を発生
する処理である
請求項1~5のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記抑制処
理は、
前記ユーザの眠気を誘発するように誘導音を発生
する処理である
請求項1~6のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記抑制処理
は、
映像および振動により前記ユーザが酔いを抑制する行動を取るように誘導する
処理である
請求項1~7のいずれか一つに記載の情報処理装置。
【請求項9】
仮想空間体験を含むデジタルコンテンツのユーザに関する内外の状況を取得する取得工程と、
前記取得工程において取得された
前記状況に基づいて、前記ユーザの酔い状況を推定する推定工程と、
前記推定工程において推定された前記ユーザの酔い状況に応じて、前記ユーザが酔いを抑制する行動を取るよう
に誘導する
音声を出力する酔いの抑制処理を実行する抑制処理工程と
を含む
、コントローラが実行する情報処理方法。
【請求項10】
仮想空間体験を含むデジタルコンテンツのユーザに関する内外の状況を取得する取得手順と、
前記取得手順において取得された
前記状況に基づいて、前記ユーザの酔い状況を推定する推定手順と、
前記推定手順において推定された前記ユーザの酔い状況に応じて、前記ユーザが酔いを抑制する行動を取るよう
に誘導する
音声を出力する酔いの抑制処理を実行する抑制処理手順と
をコンピュータに実行させ
るプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、HMD(Head Mounted Display)等を用いてユーザに対し、VR(Virtual Reality)やMR(Mixed Reality)といった、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツを提供する技術が知られている。
【0003】
また、かかる技術において、たとえば車両等の移動体に搭載され、かかる移動体をモーション・プラットフォームとして利用可能なVRシステムも提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術は、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツによるユーザの酔いを抑止するうえで、更なる改善の余地がある。
【0006】
たとえば、VRコンテンツの提供を受けるユーザには、乗り物酔いに似た「VR酔い」が起こりうることが知られている。VR酔いは、音声と映像の同期ズレや、音声および映像の変動が大きく脳の処理が追いつかないといった原因により生じうる動揺病の一つである。特に、車両に搭載されるVRシステムの場合、通常の乗り物酔いも加わるため、ユーザの酔いは更に酷くなる傾向にある。
【0007】
実施形態の一態様は、上記に鑑みてなされたものであって、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツによるユーザの酔いを抑止することができる情報処理装置、情報処理方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一態様に係る情報処理装置は、コントローラを備える。前記コントローラは、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツのユーザに関する内外の状況を取得し、取得された前記状況に基づいて、前記ユーザの酔い状況を推定し、推定された前記ユーザの酔い状況に応じて、前記ユーザが酔いを抑制する行動を取るように誘導する音声を出力する酔いの抑制処理を実行する。
【発明の効果】
【0009】
実施形態の一態様によれば、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツによるユーザの酔いを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係る情報処理システムの概略構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る情報処理方法の概要説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る情報処理システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、抑制処理部の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、抑制処理の処理内容を示す図である。
【
図7】
図7は、抑制処理情報の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る情報処理装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する情報処理装置、情報処理方法およびプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
また、以下では、実施形態に係る情報処理システム1が、車両に搭載される車載システムである場合を例に挙げて説明する。また、以下では、実施形態に係る情報処理システム1は、ユーザに対し、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツとしてVRコンテンツを提供するVRシステムであるものとする。
【0013】
まず、実施形態に係る情報処理方法の概要について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る情報処理システム1の概略構成を示す図である。また、
図2は、VR酔いの説明図である。また、
図3は、実施形態に係る情報処理方法の概要説明図である。
【0014】
図1に示すように、実施形態に係る情報処理システム1は、HMD3と、情報処理装置10とを含む。
【0015】
HMD3は、ユーザUに対し、情報処理装置10から提供されるVRコンテンツを提示し、ユーザにVR体験を享受させるための情報処理端末である。HMD3は、ユーザUの頭部に装着されて利用されるウェアラブルコンピュータ(wearable computer)であり、
図1の例ではゴーグル型である。なお、HMD3は眼鏡型であってもよいし、帽子型であってもよい。
【0016】
HMD3は、表示部31と、スピーカ32と、センサ部33とを備える。表示部31は、ユーザUの眼前に配置されるように設けられ、情報処理装置10から提供されるVRコンテンツに含まれる映像を表示する。
【0017】
なお、
図1の例では、表示部31は、ユーザUの左右それぞれの眼前に1つずつ設けられている例を示しているが、1つだけであってもよい。また、表示部31は、視界を完全に覆う非透過型であってもよいし、ビデオ透過型や光学透過型であってもよい。
【0018】
スピーカ32は、たとえば
図1に示すようにヘッドフォン型に設けられ、ユーザUの耳に装着される。スピーカ32は、情報処理装置10から提供されるVRコンテンツに含まれる音声を出力する。
【0019】
センサ部33は、ユーザUの内外の状況の変化を検知するデバイスであって、たとえばカメラやモーションセンサ等を含む。
【0020】
情報処理装置10は、たとえばコンピュータであり、車両に搭載される車載装置であって、有線または無線でHMD3と接続され、HMD3に対し、VRコンテンツを提供する。また、情報処理装置10は、センサ部33によって検知された状況の変化を随時取得し、かかる状況の変化をVRコンテンツに反映させる。
【0021】
たとえば、情報処理装置10は、センサ部33によって検知されたユーザUの頭部や視線の変化に応じて、VRコンテンツの仮想空間における視界の向きを変化させることが可能である。
【0022】
ところで、このようなHMD3を用いたVRコンテンツの提供にあたっては、ユーザUに、乗り物酔いに似た「VR酔い」が起こりうることが知られている。
【0023】
図2に示すように、VR酔いは、音声と映像の同期ズレや、音声および映像の変動が大きく脳の処理が追いつかないといった原因等により生じうる。また、VR酔いは、HMD3を用いて享受しているVR体験による感覚と、周囲環境の変化によるユーザU自身の生身の感覚とのズレによっても生じうる。
【0024】
特に、実施形態に係る情報処理システム1のように車載システムである場合、ユーザUが身体的にも精神的にも準備ができていない状態で不意に車両の挙動が変わり、上述した感覚のズレが生じやすい。
【0025】
そこで、実施形態に係る情報処理方法では、特にユーザUが身体的にも精神的にも準備ができていない状態に鑑み、ユーザUに関する内外の状況を取得し、取得した状況に基づいてユーザUのVR酔い状況を推定し、推定したVR酔い状況に応じて、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように少なくとも音声により誘導することとした。
【0026】
具体的には、
図3に示すように、実施形態に係る情報処理方法では、情報処理装置10が随時、ユーザUに関する内外の状況を取得し、ユーザUのVR酔い状況を推定する(ステップS1)。情報処理装置10は、たとえばユーザUの身体的状況の変化を検知することによってVR酔い状況を推定する。
【0027】
また、情報処理装置10は、たとえば提供中のVRコンテンツの種別や映像の状況、音声の状況といった、VRコンテンツの使用状況に基づいてVR酔い状況を推定する。
【0028】
また、情報処理装置10は、たとえば道路状況や車両の状況、操作状況といった、車両の走行状況に基づいてVR酔い状況を推定する。また、情報処理装置10は、たとえばユーザごとの酔いやすさ等を示す各種のパラメータ等を含むユーザ情報に基づいてVR酔い状況を推定する。
【0029】
なお、情報処理装置10は、かかるVR酔い状況の推定処理においては、たとえば機械学習のアルゴリズムを用いて生成された推定モデルを用いることができる。かかる推定モデルは、実際のVR酔い状況の推定結果に基づいて適宜強化学習される。強化学習の結果、たとえばVR酔い状況を推定するための判定閾値等が適宜更新される。
【0030】
そして、情報処理装置10は、ステップS1での推定結果に応じて、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように少なくとも音声により誘導する。たとえば、情報処理装置10は、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように誘導音を発生させる。
【0031】
一例として、情報処理装置10は、ユーザUが細かな振動や揺れを知覚しにくい方向へ視線を送るように誘導音を発生させる。かかる方向は、たとえば遠方である。かかる遠方は、表示部31が非透過型であり、現実空間から遮蔽されたVR空間においては、たとえば奥行き方向や、映像の変動が少ない方向である。また、表示部31が透過型であり、現実空間とシームレスなMR空間においては、文字通り現実空間における遠方や、走行中の車両のカメラ映像の変動が少ない方向である。
【0032】
このように、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように誘導することによって、VRコンテンツの音声および映像によって喚起される酔いやすさを緩和することができる。すなわち、VRコンテンツによるユーザUのVR酔いを抑止するのに資することができる。
【0033】
なお、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように誘導するうえでは、音声に限らず、映像や振動等を用いるようにしてもよい。このような具体例については、
図6および
図7を用いた説明で後述する。
【0034】
上述したように、実施形態に係る情報処理方法は、ユーザUに関する内外の状況を取得し、取得した状況に基づいてユーザUのVR酔い状況を推定し、推定したVR酔い状況に応じて、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように少なくとも音声により誘導するVR酔いの抑制処理を実行する。
【0035】
したがって、実施形態に係る情報処理方法によれば、VRコンテンツによるユーザUのVR酔いを抑止することができる。以下、実施形態に係る情報処理方法を適用した情報処理システム1の構成例について、より具体的に説明する。
【0036】
図4は、実施形態に係る情報処理システム1の構成例を示すブロック図である。また、
図5は、抑制処理部12dの構成例を示すブロック図である。なお、
図4および
図5では、実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0037】
換言すれば、
図4および
図5に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0038】
また、
図4および
図5を用いた説明では、既に説明済みの構成要素については、説明を簡略するか、省略する場合がある。
【0039】
図4に示すように、実施形態に係る情報処理システム1は、HMD3と、情報処理装置10とを含む。
【0040】
HMD3については
図1を用いて説明済みのため、ここでの説明は簡略するが、HMD3は、情報処理装置10から提供されるVRコンテンツを提示する提示デバイスでの一例である。したがって、HMD3の構成は、
図1に示したものに限られず、たとえば他に、図示略の骨伝導スピーカを含むものであってもよい。また、提示デバイスは、ボディソニックのように振動を提示する振動提示デバイスを含むものであってもよい。振動提示デバイスは、たとえばユーザUの頭部以外に装着され、HMD3と連動してあるいは独立に駆動するものであってもよい。
【0041】
情報処理装置10は、記憶部11と、制御部12とを備える。また、情報処理装置10は、各種センサ5が接続される。
【0042】
各種センサ5は、車両の内外の状況をセンシングするセンサ群であって、たとえばカメラ5aや、バイタルセンサ5b、加速度センサ5c、舵角センサ5d等を含む。
【0043】
カメラ5aは、車両に搭載されるフロントカメラ、リアカメラ、サイドカメラ、室内カメラ等であって、車両の内外を撮影する。室内カメラは、たとえばユーザUの状態を撮影する。
【0044】
バイタルセンサ5bは、ユーザUの身体的状況を検知するセンサであって、たとえばユーザUに装着され、ユーザUの心拍や脳波、血中酸素濃度、発汗等のバイタルデータを測定する。
【0045】
加速度センサ5cは、車両に加わる加速度や車速を測定する。舵角センサ5dは、車両の舵角を測定する。なお、各種センサ5には無論、
図4に示す各センサ5a~5d以外のセンサが含まれてよい。
【0046】
記憶部11は、たとえば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子等によって実現され、
図4の例では、VRコンテンツDB(データベース)11aと、ユーザ情報11bと、推定モデル11cと、抑制処理情報11dと、誘導情報DB11eとを記憶する。
【0047】
VRコンテンツDB11aは、HMD3へ提供されるVRコンテンツ群が格納されたデータベースである。ユーザ情報11bは、HMD3を利用するユーザに関する情報であって、上述したユーザごとの酔いやすさ等を示す各種のパラメータ等を含む。ユーザ情報11bは、ユーザUの過去のVR酔い状況の推定結果に基づいて適宜更新される。
【0048】
推定モデル11cは、上述した機械学習のアルゴリズムを用いて生成された推定モデルである。推定モデル11cはたとえば、後述する取得部12bによって取得されたユーザUの内外の各種の状況を示すデータが入力されることによって、ユーザUのVR酔い状況を示す値(たとえば、VR酔いの度合いを示すレベル値)を出力する。
【0049】
抑制処理情報11dは、ユーザUのVR酔いの度合いに応じて実行すべきVR酔いの抑制処理が定義付けられた情報である。抑制処理情報11dの具体例については、
図7を用いた説明で後述する。
【0050】
誘導情報DB11eは、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように誘導するための音声や映像等に関する情報のデータベースであり、たとえば上述した誘導音の音源データ等が格納される。
【0051】
制御部12は、コントローラ(controller)であり、たとえば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部11に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部12は、たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0052】
制御部12は、提供部12aと、取得部12bと、推定部12cと、抑制処理部12dとを有し、以下に説明する情報処理の機能や作用を実現または実行する。
【0053】
提供部12aは、VRコンテンツDB11aに格納されたVRコンテンツをHMD3に対し提供する。また、提供部12aは、HMD3のセンサ部33によって検知された状況の変化を随時取得し、かかる状況の変化をVRコンテンツに反映させる。
【0054】
取得部12bは、各種センサ5からのセンシングデータを随時取得する。また、取得部12bは、提供部12aから、提供中であるVRコンテンツの種別や映像の状況、音声の状況といったVRコンテンツの使用状況を随時取得する。また、取得部12bは、取得した各種のデータを推定部12cへ出力する。
【0055】
推定部12cは、取得部12bによって取得された各種のデータに基づき、推定モデル11cを用いてユーザUのVR酔い状況を推定する。また、推定部12cは、推定した推定結果を抑制処理部12dへ出力する。
【0056】
抑制処理部12dは、推定部12cの推定結果に応じて、VRコンテンツの音声および映像に関するVR酔いの抑制処理を実行する。かかる抑制処理の一例として、抑制処理部12dは、推定部12cの推定結果に応じて、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように少なくとも音声により誘導する。
【0057】
図5に示すように、抑制処理部12dは、音声誘導処理部12daと、映像誘導処理部12dbとを有する。音声誘導処理部12daは、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように音声により誘導する音声誘導処理を実行する。映像誘導処理部12dbは、ユーザUがVR酔いを抑止する行動を取るように映像により誘導する映像誘導処理を実行する。
【0058】
ここで、抑制処理部12dが実行する抑制処理の内容について、より具体的に
図6および
図7を用いて説明する。
図6は、抑制処理の処理内容を示す図である。また、
図7は、抑制処理情報11dの一例を示す図である。
【0059】
図6に示すように、抑制処理部12dは、たとえばユーザUの視線を誘導するように抑制処理を実行する。既に述べたが、抑制処理部12dは、たとえばユーザUが細かな振動や揺れを知覚しにくい方向(たとえば、上述した「遠方」)へ視線を送るように誘導音を発生させる。このとき、誘導音だけでなく、併せて映像により誘導してもよい。映像により誘導する場合、たとえばVR空間内に誘導のための仮想オブジェクトを表示させ、かかる仮想オブジェクトを移動させることにより、ユーザUの視線を誘導してもよい。
【0060】
また、同図に示すように、抑制処理部12dは、たとえばユーザUが酔いにくい姿勢となるように誘導する抑制処理を実行する。抑制処理部12dは、取得部12bによって取得された走行状況に基づいて、たとえばカーブ等で生じる揺れに合わせて嫌な音(蚊や蜂の羽音等)を発生させて、かかる音の音像の移動により、三半規管に揺れが生じにくい位置および向きへユーザUの頭部を誘導する。
【0061】
より具体的には、抑制処理部12dは、たとえば左カーブであれば、ユーザUの頭部の左側へ蚊や蜂の羽音を発生させて、これを反射的に避けさせることで、ユーザUの頭部が右側に傾くように誘導する。また、抑制処理部12dは、たとえば上り坂であれば、ユーザUの上部に注意喚起する音を発生させて、ユーザUの頭部が上を向くように誘導する。
【0062】
また、同図に示すように、抑制処理部12dは、たとえば予測される車両の挙動に対する警告音を出力するように抑制処理を実行する。具体的には、抑制処理部12dは、たとえば車両の前方に段差がある場合、「この先、段差があります」との具体的なガイダンスをアナウンスさせる。
【0063】
また、同図に示すように、抑制処理部12dは、たとえばユーザUが発声するように誘導する抑制処理を実行する。具体的には、抑制処理部12dは、ユーザUのVR酔い状況に応じて、たとえばVR空間にアバターを登場させ、ユーザUに会話を促す。
【0064】
また、抑制処理部12dは、たとえばVRコンテンツがゲームであれば、ゲームの一部としてユーザが発声する必要のあるミッション(一例として、歌を歌わせる、クイズやしりとりに参加させる等)を追加する。また、抑制処理部12dは、たとえば音楽を再生する。このとき、抑制処理部12dは、ユーザ情報11bに基づいてユーザUの好きな楽曲を推定し、これを再生することによって、ユーザUが歌うことを誘導してもよい。
【0065】
また、同図に示すように、抑制処理部12dは、音声および映像により、たとえばユーザUが眠くなるように誘導する。眠気を誘うことにより、ユーザUのVR酔いを軽減することが可能となる。
【0066】
また、同図に示すように、抑制処理部12dは、音声および映像だけでなく、上述した振動提示デバイスを介し、ユーザUの行動を振動で誘導するようにしてもよい。振動で誘導する場合、抑制処理部12dは、たとえばユーザUの身体のある部位に振動によりチクッとした痛覚を知覚させることにより、その方向を向くようにユーザUの頭部を誘導したり、ユーザUの姿勢を変化させたり、VR酔いの状況にあるユーザUの気を逸らせたりすることができる。
【0067】
また、
図7に示すように、抑制処理情報11dには、VR酔いの度合いに応じて抑制処理部12dが実行すべき抑制処理、本実施形態では音声誘導処理および映像誘導処理が定義付けられている。なお、同図に示すように、抑制処理情報11dには、さらにコンテンツ種別が関連付けられてもよい。
【0068】
同図の例では、酔いの度合いは、L1からL3にかけて次第に大きくなることを示している。また、コンテンツ種別は、A~Cにかけて次第に酔いやすくなることを示している。酔いやすい種別とは、たとえばアクション系やホラー系等である。
【0069】
また、同図の例では、音声誘導処理の誘導音a,b,cは、誘導音aから誘導音cにかけて次第に誘導音の強度が強くなる(たとえば音圧が上がる等)ことを示している。また、誘導音a,b,cにそれぞれ付した1,2,3の数値は、1から3にかけて次第に誘導音の強度が強くなることを示している。たとえば誘導音aに関しては、誘導音の強度は、a1<a2<a3となる。なお、各誘導音は、振動を含む。
【0070】
映像誘導処理である処理l,m,n,oについても、誘導音a,b,cと同様である。したがって、処理l,m,n,oの強度の関係は、l<m<n<oとなる。
【0071】
これを前提として、
図7の例の場合、酔いの度合いがL1であれば、抑制処理部12dは、コンテンツ種別がAの場合、誘導音a1を発生させる音声誘導処理のみを実行する。また、コンテンツ種別がBの場合、抑制処理部12dは、誘導音a1よりも強度が強い誘導音a2を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理lを実行する。また、コンテンツ種別がCの場合、抑制処理部12dは、誘導音a2よりも強度が強い誘導音a3を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理lよりも強度が強い処理mを実行する。
【0072】
また、酔いの度合いがL2であれば、抑制処理部12dは、コンテンツ種別がAの場合、誘導音a1~a3よりも強度が強い誘導音b1を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理lを実行する。また、コンテンツ種別がBの場合、抑制処理部12dは、誘導音b1よりも強度が強い誘導音b2を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理lよりも強度が強い処理mを実行する。また、コンテンツ種別がCの場合、抑制処理部12dは、誘導音b2よりも強度が強い誘導音b3を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理mよりも強度が強い処理nを実行する。
【0073】
同様に、酔いの度合いがL3であれば、抑制処理部12dは、コンテンツ種別がAの場合、誘導音b1~b3よりも強度が強い誘導音c1を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理mを実行する。また、コンテンツ種別がBの場合、抑制処理部12dは、誘導音c1よりも強度が強い誘導音c2を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理mよりも強度が強い処理nを実行する。また、コンテンツ種別がCの場合、抑制処理部12dは、誘導音c2よりも強度が強い誘導音c3を発生させる音声誘導処理とともに、映像誘導処理として処理nよりも強度が強い処理oを実行する。
【0074】
図4の説明に戻る。抑制処理部12dは、
図6および
図7を用いて説明した抑制処理を、推定部12cの推定結果、抑制処理情報11dおよび誘導情報DB11eに基づいて実行し、かかる実行結果を提供部12aがHMD3へ向けて提供するVRコンテンツに反映させる。
【0075】
次に、実施形態に係る情報処理装置10が実行する処理手順について、
図8を用いて説明する。
図8は、実施形態に係る情報処理装置10が実行する処理手順を示すフローチャートである。なお、
図8に示す処理手順は、提供部12aがHMD3へVRコンテンツを提供している間、随時繰り返される。
【0076】
図8に示すように、まず取得部12bが、ユーザUに関する内外の状況を取得する(ステップS101)。そして、推定部12cが、取得された状況に基づいてユーザUのVR酔い状況を推定する(ステップS102)。
【0077】
そして、抑制処理部12dが、推定された推定結果に応じて、ユーザUがVR酔いを抑制する行動を取るように少なくとも音声により誘導する(ステップS103)。そして、処理を終了する。
【0078】
上述してきたように、実施形態に係る情報処理装置10は、取得部12bと、推定部12cと、抑制処理部12dとを備える。取得部12bは、VRコンテンツ(「仮想空間体験を含むデジタルコンテンツ」の一例に相当)のユーザUに関する内外の状況を取得する。推定部12cは、取得部12bによって取得された状況に基づいて、ユーザUのVR酔い(「酔い」の一例に相当)状況を推定する。抑制処理部12dは、推定部12cによって推定されたユーザUのVR酔い状況に応じて、ユーザUがVR酔いを抑制する行動を取るように少なくとも音声により誘導するVR酔いの抑制処理を実行する。
【0079】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、VRコンテンツによるユーザUのVR酔いを抑止することができる。特に、実施形態に係る情報処理システム1のように車載システムである場合、ユーザUが身体的にも精神的にも準備ができていない状態で不意に車両の挙動が変わることにより生じやすい感覚のズレによるVR酔いを抑止することができる。
【0080】
また、抑制処理部12dは、ユーザUが揺れを知覚しにくい方向へ視線を送るように誘導する誘導音を発生させる。
【0081】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、ユーザUが細かい振動や揺れを知覚しにくい方向へユーザUの視線を誘導し、引いては頭部の向きを変えさせることにより、ユーザUのVR酔いを抑止することができる。
【0082】
また、抑制処理部12dは、VRコンテンツの映像の変動が少ない方向へ視線を送るように誘導する誘導音を発生させる。
【0083】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、たとえば知覚される刺激の少ない遠方へユーザUの視線、引いては頭部の向きを誘導することにより、ユーザUのVR酔いを抑止することができる。
【0084】
また、抑制処理部12dは、ユーザUの姿勢が酔いにくい姿勢となるように誘導する誘導音を発生させる。
【0085】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、たとえばカーブ等で知覚される揺れができるだけ小さくなるようにユーザUの姿勢を誘導することにより、ユーザUのVR酔いを抑止することができる。
【0086】
また、抑制処理部12dは、ユーザUが車両(「移動体」の一例に相当)の乗員である場合に、予測される車両の挙動に対する警告音を出力する。
【0087】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、予測される外部の挙動から受ける影響に対して、前もってユーザUに身体的にも精神的にも備えさせることができ、ユーザUのVR酔いを抑止することができる。
【0088】
また、抑制処理部12dは、ユーザUが発声するように促す誘導音を発生させる。
【0089】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、ユーザUに発声させることでユーザUの気を紛らわせることにより、ユーザUのVR酔いを抑止することができる。
【0090】
また、抑制処理部12dは、ユーザUの眠気を誘発するように誘導音を発生させる。
【0091】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、ユーザUの眠気を誘い、リラックスさせることで、ユーザUのVR酔いを抑止することができる。
【0092】
また、抑制処理部12dはさらに、映像および振動によりユーザUが酔いを抑制する行動を取るように誘導する。
【0093】
したがって、実施形態に係る情報処理装置10によれば、音声だけでなく映像および振動を適宜組み合わせることにより、より効果的にユーザUがVR酔いを抑制する行動を取るように誘導することができる。
【0094】
なお、上述した実施形態では、HMD3と情報処理装置10とが分離した構成である場合を例に挙げたが、これに限られるものではなく、HMD3と情報処理装置10とが一体である構成であってもよい。
【0095】
また、上述した実施形態では、ユーザUに対し、情報処理装置10から提供されるVRコンテンツを提示する提示デバイスとしてHMD3を例に挙げたが、提示デバイスはこれに限られるものではなく、たとえば骨伝導スピーカを含むものであってもよいし、ボディソニックのように振動を提示する振動提示デバイスを含むものであってもよい。
【0096】
また、提示デバイスは、ウェアラブルコンピュータに限らず、たとえば車両であれば、フロントウィンドウやサイドウィンドウ等をディスプレイで構成し、かかるディスプレイに対し映像出力を行ってもよい。また、音声出力は、車載スピーカに対し行ってもよい。車載スピーカは通常、前後左右を含む多方向に複数個を適宜配置可能であるので、3D再生には好適である。なお、車両でなければ、VRコンテンツの提供空間の壁をディスプレイで構成し、かかる空間に複数個のスピーカを車載スピーカと同様に配置することとなる。
【0097】
また、上述した実施形態では、情報処理装置10がVRコンテンツを提供する例を挙げたが、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツであればよく、AR(Augmented Reality)コンテンツやMRコンテンツであってもよい。
【0098】
また、上述した実施形態では、情報処理装置10が車両に搭載される車載装置である例を挙げたが、これに限られるものではなく、仮想空間体験を含むデジタルコンテンツを提供するゲーム機等のコンピュータであってもよい。
【0099】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0100】
1 情報処理システム
3 HMD
5 各種センサ
10 情報処理装置
11 記憶部
11a VRコンテンツDB
11b ユーザ情報
11c 推定モデル
11d 抑制処理情報
11e 誘導情報DB
12 制御部
12a 提供部
12b 取得部
12c 推定部
12d 抑制処理部
12da 音声誘導処理部
12db 映像誘導処理部
31 表示部
32 スピーカ
33 センサ部