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特許7592473光学補償層付偏光板およびそれを用いた有機ELパネル
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  • 特許-光学補償層付偏光板およびそれを用いた有機ELパネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】光学補償層付偏光板およびそれを用いた有機ELパネル
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20241125BHJP
   H10K 50/86 20230101ALI20241125BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20241125BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K50/86
H10K59/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020200008
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2022087885
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】有賀 草平
(72)【発明者】
【氏名】林 大輔
【審査官】鈴木 玲子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164045(WO,A1)
【文献】特開2008-111978(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107493(WO,A1)
【文献】特開2009-134257(JP,A)
【文献】特開2012-032418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0285093(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0129677(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と第1の光学補償層と第2の光学補償層とをこの順に備え、
該第1の光学補償層が、nx≧nz>nyの屈折率特性を示し、Re(550)が90nm~180nmであり、Nz係数が0~0.8であり、該偏光子の吸収軸方向と該第1の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度が0°±10°であり、
該第2の光学補償層が、nx>ny=nzの屈折率特性を示し、Re(550)が100nm~180nmであり、該偏光子の吸収軸方向と該第2の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度が35°~55°であり、
該第1の光学補償層のRe(450)/Re(550)が0.99~1.03であり、該第2の光学補償層がRe(550)>Re(450)を満たし、
有機ELパネルに用いられる、
光学補償層付偏光板:
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差を表す。
【請求項2】
偏光子と第1の光学補償層と第2の光学補償層とをこの順に備え、
該第1の光学補償層が、nx>nz>nyの屈折率特性を示し、Re(550)が90nm~170nmであり、Nz係数が0.1~0.5であり、該偏光子の吸収軸方向と該第1の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度が5°~25°であり、
該第2の光学補償層が、nx>ny=nzの屈折率特性を示し、Re(550)が60nm~140nmであり、該偏光子の吸収軸方向と該第2の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度が50°~70°であり、
該第1の光学補償層のRe(450)/Re(550)が0.99~1.03であり、該第2の光学補償層がRe(550)>Re(450)を満たし、
有機ELパネルに用いられる、
光学補償層付偏光板:
ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差を表す。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学補償層付偏光板を備える、有機ELパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償層付偏光板およびそれを用いた有機ELパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型ディスプレイの普及と共に、有機ELパネルを搭載したディスプレイ(有機EL表示装置)が提案されている。有機ELパネルは反射性の高い金属層を有するため、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、円偏光板を視認側に設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。一般的な円偏光板として、位相差フィルム(代表的には、λ/4板)を、その遅相軸が偏光子の吸収軸に対して約45°の角度をなすように積層したものが知られている。加えて、反射防止特性をさらに改善するために、種々の光学特性を有する位相差フィルム(光学補償層)を積層する試みがなされている。しかし、従来の円偏光板はいずれも、斜め方向の反射率が大きい(すなわち、斜め方向の反射防止特性が不十分である)という問題がある。さらに、従来の円偏光板はいずれも、斜め方向の色相に所望でない色付きがあるという問題も抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、正面方向の優れた反射防止特性を維持しつつ、斜め方向の反射防止特性にも優れ、かつ、斜め方向の色相がニュートラルである有機ELパネルを実現し得る光学補償層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の光学補償層付偏光板は有機ELパネルに用いられる。この光学補償層付偏光板は、偏光子と第1の光学補償層と第2の光学補償層とをこの順に備える。該第1の光学補償層は、nx≧nz>nyの屈折率特性を示し、Re(550)は90nm~180nmであり、Nz係数は0~0.8であり、該偏光子の吸収軸方向と該第1の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度は実質的に平行であり、該第1の光学補償層のRe(450)およびRe(550)は実質的に等しい。該第2の光学補償層は、nx>ny=nzの屈折率特性を示し、Re(550)は100nm~180nmであり、該偏光子の吸収軸方向と該第2の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度は35°~55°であり、該第2の光学補償層はRe(550)>Re(450)を満たす。ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差を表す。
1つの実施形態においては、上記第1の光学補償層は、nx>nz>nyの屈折率特性を示し、Re(550)は90nm~170nmであり、Nz係数は0.1~0.5であり、該偏光子の吸収軸方向と該第1の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度が5°~25°であり、該第1の光学補償層のRe(450)およびRe(550)は実質的に等しい。該第2の光学補償層は、nx>ny=nzの屈折率特性を示し、Re(550)は60nm~140nmであり、該第1の光学補償層の遅相軸方向と該第2の光学補償層の遅相軸方向とのなす角度は50°~70°であり、該第2の光学補償層はRe(550)>Re(450)を満たす。ここで、Re(450)およびRe(550)は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した面内位相差を表す。
本発明の別の局面によれば、有機ELパネルが提供される。この有機ELパネルは、上記の光学補償層付偏光板を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光学補償層付偏光板において、nx>nz>nyまたはnx=nz>nyの屈折率特性を示し、所定の面内位相差を有し、フラット分散特性を示す第1の光学補償層と、nx>ny=nzの屈折率特性を示し、所定の面内位相差を有し、Re(550)>Re(450)を満たす第2の光学補償層とを偏光子側からこの順に配置することにより、正面方向の優れた反射防止特性を維持しつつ、斜め方向の反射防止特性にも優れ、かつ、斜め方向の色相がニュートラルである光学補償層付偏光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学補償層付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)実質的に直交または平行
「実質的に直交」および「略直交」という表現は、2つの方向のなす角度が90°±10°である場合を包含し、好ましくは90°±7°であり、さらに好ましくは90°±5°である。「実質的に平行」および「略平行」という表現は、2つの方向のなす角度が0°±10°である場合を包含し、好ましくは0°±7°であり、さらに好ましくは0°±5°である。さらに、本明細書において単に「直交」または「平行」というときは、実質的に直交または実質的に平行な状態を含み得るものとする。
【0010】
A.光学補償層付偏光板の全体構成
図1は、本発明の1つの実施形態による光学補償層付偏光板の概略断面図である。本実施形態の光学補償層付偏光板100は、偏光子10と第1の光学補償層30と第2の光学補償層40とをこの順に備える。実用的には、図示例のように、偏光子10の第1の光学補償層30と反対側に保護層20が設けられ得る。また、光学補償層付偏光板は、偏光子10と第1の光学補償層30との間に別の保護層(内側保護層とも称する)を備えてもよい。図示例においては、内側保護層は省略されている。この場合、第1の光学補償層30が内側保護層としても機能し得る。さらに、必要に応じて、第2の光学補償層40の第1の光学補償層30と反対側(すなわち、第2の光学補償層40の外側)に導電層および基材をこの順に設けてもよい(いずれも図示せず)。基材は、導電層に密着積層されている。本明細書において「密着積層」とは、2つの層が接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層)を介在することなく直接かつ固着して積層されていることをいう。導電層および基材は、代表的には、基材と導電層との積層体として光学補償層付偏光板100に導入され得る。導電層および基材をさらに設けることにより、光学補償層付偏光板100は、インナータッチパネル型入力表示装置に好適に用いられ得る。さらに/あるいは、必要に応じて光学補償層付偏光板(実質的には、保護層20)には、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学補償層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0011】
1つの実施形態においては、第1の光学補償層30は、屈折率特性がnx≧nz>nyの関係を示し、遅相軸を有する。第1の光学補償層30の面内位相差Re(550)は90nm~180nmである。この場合、第1の光学補償層のNz係数は0~0.8であり、第1の光学補償層30の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は実質的に平行であり、第1の光学補償層のRe(450)およびRe(550)は実質的に等しい。すなわち、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラット分散特性を有する。さらに、第2の光学補償層40は、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示し、遅相軸を有する。第2の光学補償層40の面内位相差Re(550)は100nm~180nmである。この場合、第2の光学補償層30の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は35°~55°であり、好ましくは38°~52°であり、より好ましくは42°~48°であり、さらに好ましくは約45°である。さらに、第2の光学補償層はRe(550)>Re(450)を満たす。すなわち、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散特性を有する。別の実施形態においては、第1の光学補償層30は、屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示し、遅相軸を有する。第1の光学補償層30の面内位相差Re(550)は好ましくは90nm~170nmである。この場合、第1の光学補償層のNz係数は好ましくは0.1~0.5であり、第1の光学補償層30の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は好ましくは5°~25°であり、より好ましくは8°~22°であり、さらに好ましくは10°~20°であり、特に好ましくは約13°である。さらに、第2の光学補償層40は、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示し、遅相軸を有する。第2の光学補償層40の面内位相差Re(550)は60nm~140nmである。この場合、第2の光学補償層30の遅相軸と偏光子10の吸収軸とのなす角度は好ましくは50°~70°であり、より好ましくは53°~67°であり、さらに好ましくは55°~65°であり、特に好ましくは約58°である。上記の屈折率特性を示し、かつ、所定の面内位相差を有し、フラット分散特性を示す第1の光学補償層と、上記の屈折率特性を示し、かつ、所定の面内位相差を有し、逆分散特性を示す第2の光学補償層とを偏光子側からこの順に配置することにより、優れた円偏光機能による正面方向の優れた反射防止特性を維持しつつ、斜め方向から見た場合の偏光子の吸収軸の見かけ上の軸ズレによる光漏れ等を防止することができる。その結果、光学補償層付偏光板を有機ELパネルに適用した場合に、斜め方向において優れた反射防止特性を実現し、さらに、斜め方向においてニュートラルな(すなわち、所望でない色付きのない)色相を実現することができる。
【0012】
以下、光学補償層付偏光板を構成する各層および光学フィルムについて詳細に説明する。
【0013】
A-1.偏光子
偏光子10としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0014】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0015】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0016】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報(特許第5414738号)に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0017】
偏光子の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは1μm~12μmであり、さらに好ましくは3μm~12μmであり、特に好ましくは3μm~8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0018】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは42.0%~46.0%であり、より好ましくは44.5%~46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0019】
A-2.第1の光学補償層
第1の光学補償層30は、屈折率特性がnx>nz>nyまたはnx=nz>nyの関係を示し、遅相軸を有する。さらに、第1の光学補償層30は、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示す。具体的には、第1の光学補償層のRe(450)/Re(550)は好ましくは0.99~1.03である。
【0020】
1つの実施形態においては、第1の光学補償層30は、屈折率特性がnx≧nz>nyの関係を示し、面内位相差Re(550)が、90nm~180nmである。第1の光学補償層の面内位相差がこのような範囲であれば、第1の光学補償層の遅相軸方向を偏光子の吸収軸方向に対して実質的に平行とすることにより、偏光子の吸収軸の見かけ上の軸ズレに起因する斜め方向の反射防止機能の低下を防止することができる。さらに、この場合、第1の光学補償層のNz係数は、1つの実施形態においては、0~0.8である。Nz係数がこのような範囲であれば、第1の光学補償層の遅相軸と偏光子の吸収軸の角度を所定の角度に調整することにより、より優れた斜め方向の反射防止特性を達成し得る。
【0021】
別の実施形態においては、上記第1の光学補償層30は屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示し、面内位相差Re(550)は、好ましくは90nm~170nmであり、より好ましくは100nm~160nmであり、さらに好ましくは120nm~140nmである。第1の光学補償層の面内位相差がこのような範囲であれば、第1の光学補償層の遅相軸方向を偏光子の吸収軸方向に対して上記のように5°~25°(特に、約13°)の角度をなすように設定することにより、偏光子の吸収軸の見かけ上の軸ズレに起因する斜め方向の反射防止機能の低下を防止することができる。さらに、この場合、第1の光学補償層のNz係数は、好ましくは0.1~0.5であり、より好ましくは0.15~0.45であり、さらに好ましくは0.2~0.4である。Nz係数がこのような範囲であれば、第1の光学補償層の遅相軸と偏光子の吸収軸の角度を所定の角度に調整することにより、より優れた斜め方向の反射防止特性を達成し得る。
【0022】
第1の光学補償層は、代表的には、上記特性を実現し得る任意の適切な樹脂で形成された樹脂フィルムから形成される。この樹脂フィルムを形成する樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂が挙げられる。これらの中でも、環状オレフィン系樹脂またはポリカーボネート系樹脂が好適に用いられ得る。
【0023】
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸およびその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。ノルボルネン系モノマーとしては、特開2015-210459号公報等に記載されているモノマーが挙げられる。上記環状オレフィン系樹脂は、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン社製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR社製の商品名「アートン(Arton)」、TICONA社製の商品名「トーパス」、三井化学社製の商品名「APEL」が挙げられる。
【0024】
ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。より好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、本発明に好適に用いられ得るポリカーボネート樹脂および位相差フィルムの製造方法の詳細は、例えば、国際公開公報第2011/062239号に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0025】
第1の光学補償層は、例えば、上記樹脂を任意の適切な溶媒に溶解または分散した塗布液を収縮性フィルムに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を収縮させることにより形成され得る。代表的には、塗膜の収縮は、収縮性フィルムと塗膜との積層体を加熱して収縮性フィルムを収縮させ、このような収縮性フィルムの収縮により塗膜を収縮させる。塗膜の収縮率は、好ましくは0.50~0.99であり、より好ましくは0.60~0.98であり、さらに好ましくは、0.70~0.95である。加熱温度は、好ましくは130℃~170℃であり、より好ましくは150℃~160℃である。1つの実施形態においては、塗膜を収縮させる際に、当該収縮方向と直交する方向に積層体を延伸してもよい。この場合、積層体の延伸倍率は、好ましくは1.01倍~3.0倍であり、より好ましくは1.05倍~2.0倍であり、さらに好ましくは1.10倍~1.50倍である。収縮性フィルムを構成する材料の具体例としては、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアクリル、アセテート樹脂、ポリアリレート、ポリビニルアルコール、液晶ポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。収縮性フィルムは、好ましくは、これらの材料から形成される延伸フィルムである。
【0026】
第1の光学補償層の厚みは、好ましくは10μm~150μmであり、より好ましくは10μm~100μmであり、さらに好ましくは10μm~30μmである。このような厚みであれば、上記所望の面内位相差およびNz係数が得られ得る。
【0027】
A-3.第2の光学補償層
第2の光学補償層40は、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示し、遅相軸を有する。さらに、第第2の光学補償層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。すなわち、Re(550)>Re(450)を満たす。このような関係を満たすことにより、優れた反射色相を達成することができる。
【0028】
第2の光学補償層40は、面内位相差Re(550)が、100nm~180nmであり、好ましくは110nm~170nmであり、より好ましくは130nm~150nmである。第2の光学補償層の面内位相差がこのような範囲であれば、第2の光学補償層の遅相軸方向を偏光子の吸収軸方向に対して上記のように35°~55°(特に、約45°)の角度をなすよう設定することにより、優れた反射防止特性を実現することができる。
【0029】
別の実施形態においては、第2の光学補償層40は、上述のとおり、屈折率特性がnx>ny=nzの関係を示す。第2の光学補償層の面内位相差Re(550)は、好ましくは90nm~170nmであり、より好ましくは90nm~120nmであり、さらに好ましくは90nm~100nmである。第2の光学補償層の面内位相差がこのような範囲であれば、第2の光学補償層の遅相軸方向を偏光子の吸収軸方向に対して上記のように好ましくは50°~70°(特に好ましくは、約58°)の角度をなすよう設定することにより、優れた反射防止特性を実現することができる。
【0030】
第2の光学補償層は、代表的には、上記特性を実現し得る任意の適切な樹脂で形成された位相差フィルムである。この位相差フィルムを形成する樹脂としては、好ましくは、ポリカーボネート樹脂が用いられる。
【0031】
上記ポリカーボネート樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート樹脂を用いることができる。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、本発明に好適に用いられ得るポリカーボネート樹脂の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報(特許第5528606号)に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0032】
位相差フィルム(すなわち、第2の光学補償層)は、代表的には、樹脂フィルムを少なくとも一方向に延伸することにより作製される。
【0033】
上記樹脂フィルムの形成方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、溶融押出し法(例えば、Tダイ成形法)、キャスト塗工法(例えば、流延法)、カレンダー成形法、熱プレス法、共押出し法、共溶融法、多層押出し、インフレーション成形法等が挙げられる。好ましくは、Tダイ成形法、流延法およびインフレーション成形法が用いられる。
【0034】
樹脂フィルム(未延伸フィルム)の厚みは、所望の光学特性、後述の延伸条件などに応じて、任意の適切な値に設定され得る。好ましくは50μm~300μmである。
【0035】
上記延伸は、任意の適切な延伸方法、延伸条件(例えば、延伸温度、延伸倍率、延伸方向)が採用され得る。具体的には、自由端延伸、固定端延伸、自由端収縮、固定端収縮などの様々な延伸方法を、単独で用いることも、同時もしくは逐次で用いることもできる。延伸方向に関しても、水平方向、垂直方向、厚さ方向、対角方向等、様々な方向や次元に行なうことができる。延伸の温度は、樹脂フィルムのガラス転移温度(Tg)に対し、Tg-30℃~Tg+60℃であることが好ましく、より好ましくはTg-10℃~Tg+50℃である。
【0036】
上記延伸方法、延伸条件を適宜選択することにより、上記所望の光学特性(例えば、屈折率特性、面内位相差、Nz係数)を有する位相差フィルム(すなわち、第2の光学補償層)を得ることができる。
【0037】
位相差フィルム(延伸フィルム、すなわち第2の光学補償層)の厚みは、好ましくは20μm~100μmであり、より好ましくは20μm~80μmであり、さらに好ましくは20μm~65μmである。このような厚みであれば、上記所望の面内位相差および厚み方向位相差が得られ得る。
【0038】
上記A-2.に記載の第1の光学補償層と、当該A-3.に記載の第2の光学補償層とを組み合わせることにより、正面方向の優れた反射防止特性を維持しつつ、斜め方向の反射防止特性にも優れ、さらに、斜め方向の色相がニュートラルである有機ELパネルを実現し得る光学補償層付偏光板を得ることができる。
【0039】
A-4.保護層
保護層20は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001-343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN-メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0040】
保護層20には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0041】
保護層20の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm~500μm、さらに好ましくは5μm~150μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0042】
偏光子10と第1の光学補償層30との間に内側保護層が設けられる場合、当該内側保護層は、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。内側保護層は、光学的に等方性である限り、任意の適切な材料で構成され得る。当該材料は、例えば、保護層20に関して上記した材料から適切に選択され得る。
【0043】
内側保護層の厚みは、好ましくは5μm~200μm、より好ましくは10μm~100μm、さらに好ましくは15μm~95μmである。
【0044】
A-5.その他
光学補償層付偏光板を構成する各層は、任意の適切な粘着剤層または接着剤層を介して貼り合わせられている。
【0045】
図示しないが、光学補償層付偏光板100の第2の光学補償層40側には、粘着剤層が設けられていてもよい。粘着剤層が予め設けられていることにより、他の光学部材(例えば、有機ELパネル)へ容易に貼り合わせることができる。なお、この粘着剤層の表面には、使用に供されるまで、剥離フィルムが貼り合わされていることが好ましい。剥離フィルムを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、ロール形成が可能となる。
【0046】
B.有機ELパネル
本発明の有機ELパネルは、有機ELセルと、該有機ELセルの視認側に上記A項に記載の光学補償層付偏光板と、を備える。光学補償層付偏光板は、第2の光学補償層が有機ELセル側となるように(偏光子が視認側となるように)積層されている。
【実施例
【0047】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は以下の通りである。
【0048】
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG-205」、ダイヤルゲージスタンド(製品名「pds-2」))を用いて測定した。
(2)位相差
実施例および比較例の光学補償層付偏光板のそれぞれの光学補償層を構成する位相差フィルムから50mm×50mmのサンプルを切り出して測定サンプルとし、Axometrics社製のAxoscanを用いて測定した。測定波長は450nm、550nm、測定温度は23℃であった。
また、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用いて平均屈折率を測定し、得られた位相差値から屈折率nx、ny、nzを算出した。
(3)正面反射輝度
実施例および比較例で得られた光学補償層付偏光板を、有機EL表示装置(LGディスプレイ性、製品名「55C7P」)の有機ELパネルの視認側に、光学補償層が有機EL側となるようにして粘着剤層を介して貼り合せ、有機EL表示装置を得た。
有機ELに黒画像を表示させ、コニカミノルタ社製の分光測色計(商品名「CM-2600D」)を用いて正面反射輝度を測定した。
(4)斜め方向の反射特性
実施例および比較例で得られた光学補償層付偏光板の特性を用いて、シミュレーションした。斜め方向(極角60°)について評価した。シミュレーションには、シンテック社製、「LCD MASTER Ver.6.084」を用いた。LCD Masterの拡張機能を使用して、反射特性のシミュレーションを行った。
【0049】
[実施例1]
(i)第1の光学補償層の作製
樹脂フィルムとして、市販の環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR社製、商品名「Arton(R5000)」)を用いた。厚みは130μmであり、Tgは137℃であった。当該フィルムの両側に、厚み60μmの収縮性フィルム(東レ社製、商品名「トレファンBO2873」)を、アクリル系粘着剤層(厚み15μm)を介して貼り合わせ、自由端一軸延伸に供し、第1の光学補償層を構成する位相差フィルムを得た。延伸温度は165℃とし、延伸倍率は1.14倍とした。得られた第1の光学補償層のRe(550)は101nmであり、Nz係数は0であった。Re(450)/Re(550)は1.00であった。
【0050】
(ii)第2の光学補償層の作製
(ii-1)ポリカーボネート樹脂フィルムの作製
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。9,9-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)、イソソルビド(ISB)、ジエチレングリコール(DEG)、ジフェニルカーボネート(DPC)、および酢酸マグネシウム4水和物を、モル比率でBHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム=0.348/0.490/0.162/1.005/1.00×10-5になるように仕込んだ。反応器内を十分に窒素置換した後(酸素濃度0.0005~0.001vol%)、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。
【0051】
第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、反応液をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレット化を行い、BHEPF/ISB/DEG=34.8/49.0/16.2[mol%]の共重合組成のポリカーボネート樹脂を得た。このポリカーボネート樹脂の還元粘度は0.430dL/g、ガラス転移温度は128℃であった。
【0052】
(ii-2)第2の光学補償層の作製
得られたポリカーボネート樹脂を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅900mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:125℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。得られたポリカーボネート樹脂フィルムの吸水率は1.2%であった。
【0053】
上記のようにして得られたポリカーボネート樹脂フィルムを、特開2014-194483号公報の実施例1に準じた方法で斜め延伸し、第2の光学補償層を構成する位相差フィルムを得た。得られた位相差フィルム(すなわち、第2の光学補償層)のRe(550)は137nmであり、Nz係数は1.0であり、Re(450)/Re(550)は0.89であった。
【0054】
(iii)偏光子の作製
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
【0055】
(iv)偏光板の作製
上記偏光子の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して、TACフィルム(25μm)の片面にハードコート処理により形成されたハードコート(HC)層(7μm)を有するHC-TACフィルム(厚み:32μm、保護層に対応する)をロールツーロールにより貼り合わせ、保護層/偏光子の構成を有する長尺状の偏光板を得た。
【0056】
(v)光学補償層付偏光板の作製
上記(iv)の偏光板と上記(i)の位相差フィルム(第1の光学補償層)と上記(ii)の位相差フィルム(第2の光学補償層)とをロールツーロールにより貼り合わせ、位相差フィルム積層体を得た。上記収縮性フィルムを剥離除去して、保護層/偏光子/第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する光学補償層付偏光板を得た。偏光子の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸は実質的に平行となり、偏光子の吸収軸と第2の光学補償層の遅相軸とのなす角度は45°となった。
【0057】
得られた光学補償層付偏光板を、上記(3)の評価に供した。さらに、得られた光学補償層付偏光板の特性を用いて、上記(4)の反射特性のシミュレーションを行った。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例2]
表1に記載された延伸温度、延伸倍率を採用したこと以外は実施例1と同様にして、保護層/偏光子/第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する光学補償層付偏光板を得た。該第1の光学補償層のRe(550)は138nmであり、Nz係数は0.5であり、Re(450)/Re(550)は1.00であった。該第2の光学補償層のRe(550)は137nmであり、Nz係数は1.0であり、Re(450)/Re(550)は0.89であった。さらに、この光学補償層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして有機ELパネルを作製した。得られた光学補償層付偏光板および有機ELパネルを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例3]
表1に記載された延伸温度、延伸倍率を採用したこと以外は実施例1と同様にして、保護層/偏光子/第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する光学補償層付偏光板を得た。該第1の光学補償層のRe(550)は173nmであり、Nz係数は0.64であり、Re(450)/Re(550)は1.00であった。該第2の光学補償層のRe(550)は137nmであり、Nz係数は1.0であり、Re(450)/Re(550)は0.89であった。さらに、この光学補償層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして有機ELパネルを作製した。得られた光学補償層付偏光板および有機ELパネルを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例4]
表1に記載された延伸温度、延伸倍率を採用した。上記第1の光学補償層と上記第2の光学補償層とをロールツーロールにより貼り合わせ、第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する積層体を得た。第1の光学補償層の遅相軸と第2の光学補償層の遅相軸とのなす角度は45°であった。当該積層体を所定サイズに裁断し、さらに、偏光板の裁断および貼り合わせを、偏光子の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸とのなす角度が13°であり、偏光子の吸収軸と第2の光学補償層の遅相軸とのなす角度が58°となるようにして、保護層/偏光子/第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する光学補償層付偏光板を得た。光学補償層付偏光板を構成する各層を裁断して貼り合わせる工程(RtoS)の回数は1回であった。該第1の光学補償層のRe(550)は133nmであり、Nz係数は0.27であり、Re(450)/Re(550)は1.00であった。該第2の光学補償層のRe(550)は98nmであり、Nz係数は1.0であり、Re(450)/Re(550)は0.89であった。さらに、この光学補償層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして有機ELパネルを作製した。得られた光学補償層付偏光板および有機ELパネルを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0061】
[比較例1]
(i)第1の光学補償層の作製
実施例1の第2の光学補償層と同様に、第1の光学補償層を作製した。該第1の光学補償層のRe(550)は139nmであり、Nz係数は1.10であり、Re(450)/Re(550)は0.89であった。
【0062】
(ii)第2の光学補償層の作製
下記化学式(II)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、基材フィルム(ノルボルネン系樹脂フィルム:日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオネックス」)に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、基材上に第2の光学補償層となる液晶固化層(厚み:0.58μm)を形成した。得られた第2の光学補償層のRe(550)は0nmであり、Rth(550)は-71であった。
【0063】
【化1】
【0064】
上記(i)および(ii)で得られた第1の光学補償層および第2の光学補償層を用いたこと、偏光子の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸とのなす角度を45°としたこと以外は実施例1と同様にして、保護層/偏光子/第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する光学補償層付偏光板を得た。さらに、この光学補償層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして有機ELパネルを作製した。得られた光学補償層付偏光板および有機ELパネルを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例2]
第2の光学補償層の厚みを0.44μmとしたこと以外は比較例1と同様にして、保護層/偏光子/第1の光学補償層/第2の光学補償層の構成を有する光学補償層付偏光板を得た。第1の光学補償層のRe(550)は139nmであり、Nz係数は1.00であり、Re(450)/Re(550)は1.00であった。第2の光学補償層のRe(550)は0nmであり、Rth(550)は-54であった。さらに、この光学補償層付偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして有機ELパネルを作製した。得られた光学補償層付偏光板および有機ELパネルを実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
※は厚み方向の位相差(Rth)を示す。
【0067】
[評価]
表1から明らかなように、本発明の実施例の光学補償層付偏光板は、正面方向の優れた反射防止特性を維持しつつ、斜め方向の反射防止特性も優れたものとすることができる。さらに、実施例によれば、斜め方向の色相をニュートラルにすることができることも確認した。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の光学補償層付偏光板は、有機ELパネルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0069】
10 偏光子
20 保護層
30 第1の光学補償層
40 第2の光学補償層
100 光学補償層付偏光板
図1