(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電源装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241125BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20241125BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H02M3/28 V
H02M3/155 H
G03G21/00 398
(21)【出願番号】P 2020202459
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】淺野 裕基
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0051221(US,A1)
【文献】特開2018-196260(JP,A)
【文献】実開昭63-061012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
H02M 3/155
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、
前記1次巻線に直列に接続されたスイッチング素子と、
前記スイッチング素子をオンオフすることで、前記1次巻線に発生する電圧から第1の電圧を生成する第1の生成手段と、
前記スイッチング素子をオンオフすることで、前記2次巻線に発生する電圧から第2の電圧を生成する第2の生成手段と、
前記第1の電圧と前記第2の電圧とを、1つ以上の固定抵抗又は1つ以上のアクティブ素子を含む可変抵抗の、いずれか一方又は両方で接続することで、第3の電圧を生成する第3の生成手段と、
を備え、
前記第1の電圧は、前記第2の電圧よりも絶対値が小さいことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記第1の電圧は、前記第2の電圧と極性が異なることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1の生成手段は、少なくともダイオード及びコンデンサを有する整流部が複数接続された多段整流平滑回路を有し、
前記多段整流平滑回路は、前記1次巻線の両端に接続されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1の生成手段は、前記1次巻線に発生した電圧を整流平滑するダイオード及びコンデンサを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第2の生成手段は、少なくともダイオード及びコンデンサを有する整流平滑回路を有し、
前記整流平滑回路は、前記2次巻線の両端に接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第3の電圧を所定の制御値に制御するフィードバック手段を備え、
前記フィードバック手段は、前記所定の制御値を正極性又は負極性に制御することを特徴とする請求項
5に記載の電源装置。
【請求項7】
記録材に画像形成を行う画像形成手段と、
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の電源装置と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
感光ドラムを帯電する帯電部と、感光ドラムに形成された静電潜像をトナーにより現像する現像部と、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電源装置と、を備える画像形成装置であって、
前記第2の電圧は、前記帯電部に供給され、
前記第3の電圧は、前記現像部に供給され、
前記第1の電圧は、前記第2の電圧よりも絶対値が小さく、
前記第3の生成手段は、前記第3の電圧として正極性の電圧と負極性の電圧を生成する、
ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び画像形成装置に関し、例えば、トランスを用いたスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
1つのトランスの1次側を駆動して、2次側に複数の電源電圧を生成する構成が知られている。例えば、トランスの2次側に1つの巻線を構成し、その両端に2対のダイオードとコンデンサを接続してそれぞれ整流平滑することで、2つの電源電圧を生成する構成がある(例えば、特許文献1参照)。また例えば、トランスの2次側に2つの巻線を構成し、それぞれの両端にダイオードとコンデンサを接続して整流平滑することで、2つの電源電圧を生成する構成がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-154432号公報
【文献】特開2014-165931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電圧が大きく異なる2つの電源電圧を生成する場合は、従来の電源装置では以下のような課題がある。2次側に1つの巻線と2対のダイオード及びコンデンサを有する構成の場合は、低い電源電圧を生成するために、一方の整流平滑した電圧を降圧する必要がある。このため、降圧時に発生する消費電力が無駄となる。また、高い電圧から低い電圧を生成する場合は、高耐圧の部品が必要になる。また、2次側に2つの巻線を有する構成の場合は、トランスの巻き枠が制限されるため、必要なインダクタンスを得るために細い電線を使ったり、トランスサイズを大きくしたりする必要がある。いずれの場合も、部品コストの上昇や回路面積増大の要因となる。
【0005】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、コストの上昇や基板の面積の増大を抑えつつ、電位差の大きい複数の電圧を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、以下の構成を備える。
(1)1次巻線と2次巻線とを有するトランスと、前記1次巻線に直列に接続されたスイッチング素子と、前記スイッチング素子をオンオフすることで、前記1次巻線に発生する電圧から第1の電圧を生成する第1の生成手段と、前記スイッチング素子をオンオフすることで、前記2次巻線に発生する電圧から第2の電圧を生成する第2の生成手段と、前記第1の電圧と前記第2の電圧とを、1つ以上の固定抵抗又は1つ以上のアクティブ素子を含む可変抵抗の、いずれか一方又は両方で接続することで、第3の電圧を生成する第3の生成手段と、を備え、前記第1の電圧は、前記第2の電圧よりも絶対値が小さいことを特徴とする電源装置。
(2)記録材に画像形成を行う画像形成手段と、前記(1)に記載の電源装置と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
(3)感光ドラムを帯電する帯電部と、感光ドラムに形成された静電潜像をトナーにより現像する現像部と、前記(1)に記載の電源装置と、を備える画像形成装置であって、前記第2の電圧は、前記帯電部に供給され、前記第3の電圧は、前記現像部に供給され、前記第1の電圧は、前記第2の電圧よりも絶対値が小さく、前記第3の生成手段は、前記第3の電圧として正極性の電圧と負極性の電圧を生成する、ことを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コストの上昇や基板の面積の増大を抑えつつ、電位差の大きい複数の電圧を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】実施例3のVcont3信号のDutyと第3の電源電圧との関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1について説明する。説明には、電源回路を示した
図1を用いる。実施例1で説明する電源回路は、例えば、画像形成装置等の電子写真技術等における高電圧を出力する電源回路に用いられる。まず、電源回路全体の構成について説明する。
【0011】
[電源回路]
トランスT11は1次巻線T11-1と2次巻線T11-2からなり、1次巻線T11-1の一方の端子(以下、一端ともいう)に電源電圧V1が、他方の端子(以下、他端ともいう)に駆動回路部12が接続されている。1次巻線T11-1の両端子間には、さらに、第1の生成手段である1次電源生成部11が接続されている。一方、2次巻線T11-2の両端子間には、第2の生成手段である2次電源生成部21が接続されている。なお、実施例1の電源電圧V1は例えば24Vである。
次に、ブロックごとに、詳細を説明する。
【0012】
(駆動回路部12)
まず、駆動回路部12について説明する。駆動回路部12はスイッチング素子である電界効果トランジスタ(以下、FET11とする)とゲート抵抗R11とゲートソース間抵抗R12を有している。ここで、FET11は、ドレイン端子がトランスT11の1次巻線T11-1の他端に接続され、ソース端子はグランド(以下、GNDとする)に接続されている。ゲート抵抗R11は、一端がFET11のゲート端子に接続され、他端が電源の動作を管理する本体制御部14のCLK端子に接続される。
【0013】
本体制御部14のCLK端子からハイレベルの信号が出力されると、FET11はオンし、FET11のドレイン電圧はほぼGNDと同レベルに低下する。これにより、トランスT11の1次巻線T11-1の両端に電圧が印加され、励磁電流が流れる。この状態で、CLK端子から出力される電圧がローレベルに変化すると、FET11はオフし、1次巻線T11-1の両端にフライバック電圧が発生する。実際に、CLK端子から出力される電圧は、ハイレベルとローレベルとが交互に発生する矩形波となる。実施例1では、例えば周波数50kHz、デューティ(以下、Dutyとする)10%の固定の矩形波が出力される。なお、矩形波の周波数やDutyは各々の回路で最適な値に設計されるべきであり、実施例1での値は一例である。さらに固定値でなくてもよく、制御対象の電圧や負荷によって可変にしても良い。
【0014】
(1次電源生成部11)
続いて、1次電源生成部11について説明する。1次電源生成部11は、コンデンサC11~C14とダイオードD11~D14を用いた多段昇圧回路と、コンデンサC15及びツェナーダイオードZD11を有する。多段昇圧回路のうち、ダイオードD11とコンデンサC11とが直列に接続された回路が、1次巻線T11-1と並列に接続される。このとき、ダイオードD11のアノードが電源電圧V1(1次巻線T11-1の一端)と接続されるように構成される。さらにダイオードD12とコンデンサC12とが直列に接続された回路が、ダイオードD11と並列に接続される。このとき、ダイオードD12のアノードがダイオードD11のカソードと接続されるように構成される。
【0015】
同様に、ダイオードD13とコンデンサC13とが直列に接続された回路が、ダイオードD12と並列に接続される。このとき、ダイオードD13のアノードがダイオードD12のカソードと接続される。さらに、ダイオードD14とコンデンサC14とが直列に接続された回路が、ダイオードD13と並列に接続される。このとき、ダイオードD14のアノードがダイオードD13のカソードと接続される。また、ダイオードD14のカソードは、第1の電圧である1次側電源電圧Vout1に接続される。コンデンサC15の一端とツェナーダイオードZD11のカソードとは、1次側電源電圧Vout1に接続され、コンデンサC15の他端とツェナーダイオードZD11のアノードとは、GNDに接続される。このように、1次電源生成部11は、少なくともダイオード及びコンデンサを有する整流部が複数接続された多段整流平滑回路を有しており、多段整流平滑回路は、1次巻線T11-1の両端に接続されている。
【0016】
FET11がオンすると、電源電圧V1からダイオードD11、コンデンサC11、FET11を介してGNDに電流が流れ、コンデンサC11が充電される。コンデンサC11に充電される電圧は、電源電圧V1とほぼ同等となる。この状態でFET11がオフすると、1次巻線T11-1に発生したフライバック電圧によって、コンデンサC11、ダイオードD12、コンデンサC12のルートで電流が流れ、コンデンサC12が充電される。コンデンサC12に充電される電圧は、フライバック電圧とコンデンサC11の充電電圧の和から電源電圧V1を差し引いた値、すなわち、フライバック電圧となる。
【0017】
その後、再びFET11がオンすると、電源電圧V1から、コンデンサC12、ダイオードD13、コンデンサC13、コンデンサC11、FET11の経路で電流が流れ、コンデンサC13が充電される。コンデンサC13に充電される電圧は、電源電圧V1とコンデンサC12に充電された電圧の和から、コンデンサC11に充電された電圧を差し引いた電圧、すなわち、フライバック電圧となる。続いてFET11が再度オフすると、1次巻線T11-1に発生したフライバック電圧によって、コンデンサC11、コンデンサC13、ダイオードD14、コンデンサC14、コンデンサC12のルートで電流が流れ、コンデンサC14が充電される。コンデンサC14に充電される電圧は、フライバック電圧とコンデンサC11の充電電圧とコンデンサC13の充電電圧の和から、コンデンサC12に充電された電圧と電源電圧V1を差し引いた値、すなわち、フライバック電圧となる。各コンデンサに充電された電圧をまとめると、コンデンサC11が電源電圧V1、コンデンサC12~C14がフライバック電圧となる。
【0018】
このようにして多段昇圧回路によって昇圧された電圧は、コンデンサC15で平滑される。平滑される電圧は、電源電圧V1とコンデンサC12、C14に充電された電圧との和である、電源電圧V1+フライバック電圧×2の値となる。ツェナーダイオードZD11は、フライバック電圧のばらつきにより、1次側電源電圧Vout1が必要以上に大きくならないようにクランプする目的で接続されている。
【0019】
ここで、フライバック電圧は、主にはトランスT11のインダクタンスによって決まる。しかし、実際は、トランスT11のリーケージインダクタンスやFET11のスイッチングスピード、FET11のオフ時に流れている電流等によっても変動し、かつ、ばらつきが大きいものである。実施例1におけるフライバック電圧はおよそ80Vである。したがって、4段の多段昇圧回路によって得られる1次側電源電圧Vout1は、およそ180Vである。また、実施例1では、コンデンサ4つとダイオード4つで多段昇圧回路を構成したが、4段に限定されず、1次側電源電圧Vout1の仕様に応じて、段数を最適化するべきである。さらに、ツェナーダイオードZD11のクランプ電圧は、1次側電源電圧Vout1の電圧精度、リプルの仕様次第で値を決めるべきであり、場合によっては削除しても構わない。実施例1では、1次側電源電圧Vout1として必要な電圧が120Vであり、かつ、1次側電源電圧Vout1に発生する電圧の最低値は130Vであるとする。このため、ツェナーダイオードZD11のクランプ電圧は120Vに設定する。1次側電源電圧Vout1は、例えば画像形成装置においては、現像工程における現像正電圧として用いられる。
【0020】
(2次電源生成部21)
続いて、2次電源生成部21について説明する。2次電源生成部21は、ダイオードD21とコンデンサC21とを有する。ダイオードD21のアノードがトランスT11の2次巻線T11-2の一端に、ダイオードD21のカソードがコンデンサC21の一端に、そして、コンデンサC21の他端がGNDにそれぞれ接続される。このように、2次電源生成部21は、少なくともダイオード及びコンデンサを有する整流平滑回路を有し、整流平滑回路は、2次巻線T11-2の両端に接続されている。
【0021】
FET11のオンオフによって、2次巻線T11-2に発生するフライバック電圧がダイオードD21とコンデンサC21とで整流平滑され、第2の電圧である2次側電源電圧Vout2が生成される。実施例1における2次側電源電圧Vout2は例えば1500Vである。このように、1次側電源電圧Vout1は例えば120V、2次側電源電圧Vout2は例えば1500Vであり、1次側電源電圧Vout1は、2次側電源電圧Vout2よりも絶対値が小さい(|Vout1|<|Vout2|)。2次側電源電圧Vout2は、例えば画像形成装置においては、帯電工程における帯電電圧として用いられる。
【0022】
(電圧制御部13)
最後に、電圧制御部13について説明する。電圧制御部13は、コンパレータIC11とその周辺回路からなる。コンパレータIC11は電源電圧V1により駆動される。コンパレータIC11の負入力端子(-端子)は、抵抗R13を介してGNDに接続され、抵抗R14を介して2次側電源電圧Vout2に接続される。つまり、2次側電源電圧Vout2を抵抗R14と抵抗R13とで分圧した値が、コンパレータIC11の負入力端子に入力される。
【0023】
コンパレータIC11の正入力端子(+端子)は、抵抗R16、抵抗R15を介して電源電圧V2に接続され、さらに、コンデンサC16を介してGNDに接続される。抵抗R15と抵抗R16の接続点は、本体制御部14のVcont端子に接続される。また、コンパレータIC11の出力端子は、FET11のゲートに接続される。
【0024】
本体制御部14のVcont端子からは、ハイインピーダンス(以降、Hi-Zと記載する)状態とロー(以下、Loと記載する)状態とを交互に繰り返すパルス信号が出力される。Vcont端子がHi-Zのときは、電源電圧V2から抵抗R15と抵抗R16を介してコンデンサC16を充電する電流が流れる。一方、Vcont端子がLoのときは、コンデンサC16を放電する電流が、抵抗R16を介してVcont端子に向かって流れる。Vcont端子がHi-ZとLoとを繰り返すと、コンデンサC16の充放電のバランスが、所定の電圧で安定する。したがって、Vcont端子から出力されるパルス信号のDutyに応じて、コンパレータIC11の正入力端子の電圧が決まることになる。
【0025】
コンパレータIC11の負入力端子の電圧が正入力端子より小さい場合は、コンパレータIC11の出力端子はHi-Zとなる。この場合、本体制御部14のCLK端子から出力される信号は、そのままFET11をオンオフ駆動することになる。一方、コンパレータIC11の負入力端子の電圧が正入力端子より大きい場合、コンパレータIC11の出力端子はLoとなる。この場合、本体制御部14のCLK端子から出力される電流はコンパレータIC11の出力端子によって引かれ、FET11のゲート電圧は強制的にローレベルとなる。すなわち、本来FET11がオンすべきタイミングでオンできなくなるため、2次側電源電圧Vout2の低下が促される。この動作により、2次側電源電圧Vout2を所定の電圧に制御することが可能となる。ここで、実施例1における電源電圧V2は例えば5Vである。上述の通り電源電圧V2は、コンパレータIC11の正入力端子の電圧に影響を与える。そのため、電源電圧V2には比較的電圧精度の高い電源を使用すべき点に注意する必要がある。
【0026】
以上説明したように、トランスの1次巻線を多段昇圧して1つの電源電圧を生成することで、電圧の差が大きい2つの電源電圧を、小さな回路面積、かつ、低コストで実現できる。
以上、実施例1によれば、コストの上昇や基板の面積の増大を抑えつつ、電位差の大きい複数の電圧を生成することができる。
【実施例2】
【0027】
実施例2について説明する。実施例2は、実施例1に対して、1次電源生成部、2次電源生成部、電圧制御部のみが異なる。実施例2では、実施例1と異なる箇所についてのみ説明し、実施例1と同等の箇所は同じ符号を付し説明を省略する。説明には、電源回路を示した
図2を用いる。
【0028】
(1次電源生成部31)
まず、1次電源生成部31について説明する。1次電源生成部31は、ダイオードD31とコンデンサC31とツェナーダイオードZD31を有している。すなわち、1次巻線に接続された1つの整流部を有している。ダイオードD31のアノードがFET11のドレインに接続され、ダイオードD31のカソードがコンデンサC31の一端及びツェナーダイオードZD31のカソードに接続される。コンデンサC31の他端とツェナーダイオードZD31のアノードはGNDに接続される。
【0029】
FET11がオンオフすることで発生するフライバック電圧は、ダイオードD31とコンデンサC31によって整流平滑され、1次側電源電圧Vout1が生成される。1次側電源電圧Vout1は、フライバック電圧と電源電圧V1との和が出力される。ツェナーダイオードZD31は、1次側電源電圧Vout1が必要以上に大きくならないようにクランプする目的で接続されている。なお、実施例2では、1次側電源電圧Vout1として必要な電圧が75Vであり、かつ、1次側電源電圧Vout1に発生する電圧の最低値は100Vであるため、ツェナーダイオードZD11のクランプ電圧は75Vに設定した。
【0030】
(2次電源生成部41)
続いて、2次電源生成部41について説明する。2次電源生成部41は、ダイオードD41とコンデンサC41とを有している。ダイオードD41のカソードがトランスT11の2次巻線T11-2の一端に、ダイオードD41のアノードがコンデンサC41の一端に、そしてコンデンサC41の他端がGNDにそれぞれ接続される。FET11のオンオフによって、2次巻線T11-2に発生するフライバック電圧が、ダイオードD41とコンデンサC41とで整流平滑され、2次側電源電圧Vout2が生成される。実施例2における2次側電源電圧Vout2は-1500Vである。このように、1次側電源電圧Vout1は例えば75V、2次側電源電圧Vout2は例えば-1500Vであり、実施例2においても、1次側電源電圧Vout1は、2次側電源電圧Vout2よりも絶対値が小さい(|Vout1|<|Vout2|)。実施例2では、2次側電源電圧Vout2は、1次側電源電圧Vout1(正極性)に対して極性が逆(負極性)である点、すなわち極性が異なる点が特徴的である。
【0031】
(電圧制御部33)
最後に、電圧制御部33について説明する。電圧制御部33は、コンパレータIC31とその周辺回路からなる。コンパレータIC31の正入力端子は、抵抗R33を介して電源電圧V2に接続されるとともに、抵抗R34を介して2次側電源電圧Vout2に接続される。つまり、2次側電源電圧Vout2と電源電圧V2とを、抵抗R34と抵抗R33とで分圧した値が、コンパレータIC31の正入力端子に入力される。コンパレータIC31の出力端子は、FET11のゲートに接続される。コンパレータIC31の負入力端子の電圧は、本体制御部14のVcont端子から出力されるパルス信号のDutyに応じて決まる。
【0032】
コンパレータIC31の正入力端子の電圧が負入力端子より大きい場合は、コンパレータIC31の出力端子はHi-Zとなる。本体制御部14のCLK端子から出力される信号は、そのままFET11をオンオフ駆動することになる。一方、コンパレータIC31の正入力端子の電圧が負入力端子より小さい場合、コンパレータIC31の出力端子はLoとなる。本体制御部14のCLK端子から出力される電流はコンパレータIC31の出力端子によって引かれ、FET11のゲート電圧は強制的にLoとなる。これにより、本来FET11がオンすべきタイミングでオンできなくなるため、2次側電源電圧Vout2の上昇(絶対値としては低下)が促される。この動作により、2次側電源電圧Vout2の電圧を所定の電圧に制御することが可能となる。
【0033】
以上説明したように、トランスの1次巻線のフライバック電圧を整流平滑して1つの電源電圧を生成することで、電圧の差が大きく、かつ、互いに極性の異なる2つの電源電圧を、小さな回路面積、かつ、低コストで実現できる。
以上、実施例2によれば、コストの上昇や基板の面積の増大を抑えつつ、電位差の大きい複数の電圧を生成することができる。
【実施例3】
【0034】
実施例3について説明する。実施例3において、1次電源生成部11及び駆動回路部12は、実施例1で説明したものと同等である。また、2次電源生成部41及び電圧制御部33は、実施例2で説明したものと同等である。実施例3では、これらに加えて、第3の電源生成部が追加されている。したがって、実施例3では、第3の電源生成部についてのみ説明し、実施例1、2と同じ構成には同じ符号を付し、残りの箇所は説明を省略する。説明には、電源回路を示した
図3を用いる。
【0035】
(第3の電源生成部51)
第3の生成手段である第3の電源生成部51は、PNPトランジスタ(以下、トランジスタという)Tr51とバイパス抵抗R51、及び周辺の回路からなる。なお、実施例3では、1つの固定抵抗であるバイパス抵抗R51が接続されているが、複数の固定抵抗が接続されていてもよく、1つ以上の固定抵抗が接続されていればよい。1次側電源電圧Vout1と2次側電源電圧Vout2との間に、トランジスタTr51及びバイパス抵抗R51が直列に接続される。トランジスタTr51のコレクタにコンデンサC51の一端が接続され、第3の電圧である第3の電源電圧Vout3が出力される。コンデンサC51の他端はGNDに接続される。
【0036】
トランジスタTr51のベースエミッタ間には抵抗R52が接続され、トランジスタTr51のベースには、抵抗R53を介してNPNトランジスタ(以下、トランジスタという)Tr52が接続される。トランジスタTr52のベースエミッタ間には抵抗R55が接続され、トランジスタTr52のベースには、抵抗R54を介して、オペアンプIC51の出力端子が接続される。オペアンプIC51の出力端子は、抵抗R56を介して電源電圧V1に接続される。オペアンプIC51の負入力端子は、抵抗R57を介して電源電圧V2に接続されるとともに、抵抗R58を介して第3の電源電圧Vout3に接続される。つまり、第3の電源電圧Vout3と電源電圧V2とを抵抗R58と抵抗R57とで分圧した値が、オペアンプIC51の負入力端子に入力されることになる。オペアンプIC51の負入力端子と出力端子との間には、コンデンサC52と抵抗R59が直列に接続される。
【0037】
オペアンプIC51の正入力端子は、抵抗R61、抵抗R60を介して電源電圧V2に接続され、コンデンサC53を介してGNDに接続される。抵抗R60と抵抗R61の接続点は、本体制御部14のVcont3端子に接続される。オペアンプIC51は第3の電源電圧Vout3をVcont3端子から入力された信号に応じて所定の制御値にフィードバック制御するフィードバック手段として機能する。
【0038】
本体制御部14のVcont3端子からは、Hi-Z状態とLo状態とを交互に繰り返すパルス信号が出力される。Vcont3端子がHi-Zのときは、電源電圧V2から抵抗R60と抵抗R61を介してコンデンサC53を充電する電流が流れる。一方、Vcont3端子がLoのときは、コンデンサC53を放電する電流が、抵抗R61を介してVcont3端子に向かって流れる。Vcont3端子から出力されるパルス信号がHi-ZとLoとを繰り返すと、コンデンサC53の充放電のバランスが、所定の電圧で安定する。したがって、Vcont3端子から出力されるパルス信号のDutyに応じて、オペアンプIC51の正入力端子の電圧が決まることになる。すなわち、Vcont3端子から出力されるパルス信号のHi-Z状態のDutyが大きくなるほどオペアンプIC51の正入力端子の電圧が上昇し、Dutyが小さくなるほどオペアンプIC51の正入力端子の電圧が減少する。以降、Vcont3端子から出力されるパルス信号を、Vcont3信号と記載する。また、Hi-Z状態のDutyを、単にDutyと記載する。
【0039】
(第3の電源電圧の制御)
次に、Vcont3信号で、第3の電源電圧Vout3を制御する方法について説明する。オペアンプIC51の出力端子の電圧は、オペアンプIC51の正入力端子の電圧と負入力端子の電圧とが同等になるように制御される。Vcont3信号のDutyを小さくすると、オペアンプIC51の正入力端子の電圧が減少して負入力端子の電圧より小さくなり、オペアンプIC51の出力端子の電圧は低下する。これにより、第3の電源電圧Vout3は低下する。一方、Vcont3信号のDutyを大きくすると、オペアンプIC51の正入力端子の電圧が上昇して負入力端子の電圧より大きくなり、オペアンプIC51の出力端子の電圧は上昇する。これにより、第3の電源電圧Vout3は上昇する。
【0040】
(Vcont3信号のDutyと第3の電源電圧Vout3との関係)
Vcont3信号のDutyと第3の電源電圧Vout3との関係をグラフ化したものを
図4に示す。
図4は、横軸にVcont3信号のDuty(%)を示し、縦軸に第3の電源電圧Vout3(V)を示す。実施例3における1次側電源電圧Vout1は+120V、2次側電源電圧Vout2は-1500Vである。Vcont3信号のDutyが0%、すなわちオペアンプIC51の正入力端子の電圧が0Vのとき、第3の電源電圧Vout3は負極性である-1500Vとなる。また、Vcont3信号のDutyが100%、すなわちオペアンプIC51の正入力端子の電圧が電源電圧V2のとき、第3の電源電圧Vout3は正極性である+120Vとなる。Vcont3信号のDutyが0%と100%との間において、Vcont3信号のDutyと第3の電源電圧Vout3との関係は1次関数となる。
【0041】
ここで、実施例3では、第3の電源電圧Vout3を、1次側電源電圧Vout1から2次側電源電圧Vout2の全範囲に可変できる構成を説明したが、可変範囲を絞ってもよい。また、必ずしも第3の電源電圧Vout3を可変する必要はなく、固定値としてもよい。その場合は、トランジスタTr51の代わりに第2のバイパス抵抗を接続し、バイパス抵抗R51と共に1次側電源電圧Vout1と2次側電源電圧Vout2とを分圧して、第3の電源電圧Vout3を出力すると良い。また、実施例3では、1つのアクティブ素子であるトランジスタTr51が接続されている構成としたが、複数のアクティブ素子が接続されてもよく、1つ以上のアクティブ素子が接続されていてもよい。また、実施例3では、トランジスタTr51、バイパス抵抗R51によって可変抵抗を構成しているが、ボリューム抵抗が用いられてもよい。このように、実施例3では、1次側電源電圧Vout1と2次側電源電圧Vout2とを、1つ以上の固定抵抗又は1つ以上のアクティブ素子を含む可変抵抗の、いずれか一方又は両方によって接続している。第3の電源電圧Vout3は、例えば画像形成装置においては、現像工程における現像電圧として用いられる。
【0042】
以上説明したように、トランスの1次巻線を利用して生成した1次電源電圧と、トランスの2次巻線を利用して生成した2次電源電圧とから、第3の電源電圧を、小さな回路面積、かつ、低コストで実現できる。
なお、実施例1から実施例3で説明した、1次電源生成部、2次電源生成部、電圧制御部、第3の電源生成部は、どのように組み合わせてもよい。
以上、実施例3によれば、コストの上昇や基板の面積の増大を抑えつつ、電位差の大きい複数の電圧を生成することができる。
【実施例4】
【0043】
[レーザビームプリンタの説明]
図5に画像形成装置の一例として、レーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ1000(以下、プリンタ1000という)は、感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030を備えている。感光ドラム1010は、静電潜像が形成される像担持体である。帯電部1020は、感光ドラム1010を一様に帯電する。露光手段である光走査装置1025は、画像データに応じたレーザ光を感光ドラム1010上に走査することにより静電潜像を形成する。現像部1030は、感光ドラム1010に形成された静電潜像をトナーにより現像することでトナー像を形成する。感光ドラム1010上(像担持体上)に形成されたトナー像をカセット1040から供給された記録材としてのシートPに転写部1050によって転写し、シートPに転写した未定着のトナー像を定着器1060によって定着してトレイ1070に排出する。この感光ドラム1010、帯電部1020、現像部1030、転写部1050が画像形成部(画像形成手段)である。
【0044】
また、プリンタ1000は、電源装置1080を備え、電源装置1080からモータ等の駆動部、制御部5000、帯電部1020、現像部1030、転写部1050等へ電力を供給している。制御部5000は、CPU(不図示)を有しており、画像形成部による画像形成動作やシートPの搬送動作等を制御している。電源装置1080は、実施例1から実施例3で説明したいずれかの構成を有しており、画像形成動作に必要な電圧の生成に用いられる。なお、本発明の電源装置を適用することができる画像形成装置は、
図5に例示された構成に限定されない。
以上、実施例4によれば、コストの上昇や基板の面積の増大を抑えつつ、電位差の大きい複数の電圧を生成することができる。
【符号の説明】
【0045】
11 1次電源生成部
21 2次電源生成部
FET11 スイッチング素子
T11 トランス