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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/447 20060101AFI20241125BHJP
   B41J 2/45 20060101ALI20241125BHJP
   G03G 15/04 20060101ALI20241125BHJP
   H04N 1/036 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B41J2/447 101A
B41J2/447 101P
B41J2/45
B41J2/447 101Q
G03G15/04
H04N1/036
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020210271
(22)【出願日】2020-12-18
(65)【公開番号】P2022096966
(43)【公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古田 泰友
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-292922(JP,A)
【文献】特開2007-190786(JP,A)
【文献】特開2015-157391(JP,A)
【文献】特開2016-016668(JP,A)
【文献】特開2009-151975(JP,A)
【文献】米国特許第5612728(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
G03G 15/04
H04N 1/036
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを付着させて画像を形成する画像形成装置において、
前記感光体の表面に光を照射して前記静電潜像を形成する露光ヘッドであって、基板と、前記感光体の回転方向及び前記感光体の回転軸線方向に二次元配列された複数の電極であり前記基板上に分離して配置された複数の電極を含む第1電極層と、前記第1電極層に積層され、電圧が印加されることで発光する発光層と、前記発光層に対して前記第1電極層が配置されている側とは反対側に配置され、光が透過可能な第2電極層とを含む発光部を備える露光ヘッドと、
前記発光層が発光するように、画像データに基づいて前記第1電極層に含まれる前記複数の電極の各々への電圧の印加を制御する制御部であって、1画素が前記回転方向において異なる位置に配置された複数の電極に電圧を制御することによって形成されるように、前記画像データに基づいて前記複数の電極の各々への電圧を制御可能な制御部と、
を備え、
同一画素を形成するための前記複数の電極は、前記回転方向から見たときに前記電極の一部が互いに重なるように、且つ、前記回転軸線方向において当該複数の電極の重心間距離が前記回転軸線方向に等間隔となるように配置されており、
前記電極の前記回転軸線方向の幅をW1〔mm〕、前記同一画素を形成するための前記複数の電極の個数をn、前記回転軸線方向における前記等間隔の重心間距離をd3〔mm〕とする場合、d3=W1/n(nは2以上の自然数)であり、前記同一画素を形成するための前記複数の電極は、前記回転軸線方向において各電極の重心位置が前記d3の間隔をもって位置するように配置されていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電極群において、前記回転方向に並列する前記複数の電極は、隣接する電極との間で前記回転軸線方向に前記d3ずつ位置がずれるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記複数の電極を構成する各々の電極の前記回転軸線方向の幅は、前記d3の2倍以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記画像データを処理する画像処理部を備え、
前記画像処理部は、第1画像データを生成した後、前記第1電極層に含まれる前記複数の電極の配置に応じて前記第1画像データを変換して前記第1画像データよりも高解像度の第2画像データを生成し、前記第2画像データを画像位置に応じて補正することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、二値の画像データに応じて前記第1電極層に含まれる前記複数の電極の各々への電圧を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成方式を用いてシートに画像を形成する電子写真複写機、電子写真プリンタなどの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で画像を形成する場合、まず感光体の表面に画像データに応じた光を照射することにより感光体の表面に静電潜像を形成する。その後、現像装置によって感光体の表面の静電潜像にトナーを付着させてトナー像を形成し、トナー像をシートに転写し、シートに転写されたトナー像を定着装置によって加熱してシートに定着させて画像を形成する。
【0003】
ここで特許文献1では、感光体に光を照射して静電潜像を形成する装置として、有機ELを用いた発光部と、この発光部から照射される光を感光体の表面に結像させるレンズを有する露光ヘッドを備える画像形成装置が記載されている。このように露光ヘッドを用いることで、レーザ光を回転多面鏡により偏向走査して静電潜像を形成するレーザ走査方式の構成と比較して、部品点数の削減を図ることができ、画像形成装置の小型化や製造コストの削減を図ることができる。
【0004】
また露光ヘッドの有機ELを用いた発光部の一つの光量は十分に高いとは言えない。そこで特許文献1では、感光体の表面に静電潜像を形成するための光量を補うために複数の発光部から感光体の表面の同一部分に光を照射する構成が記載されている。具体的には、露光ヘッドにおいて感光体の回転軸線方向(主走査方向)と回転方向(副走査方向)に発光部を二次元配列する。そして感光体の回転方向に隣接する発光部を感光体の回転速度に応じてタイミングをずらして発光させることにより、複数の発光部から感光体の表面の同一部分に光を照射する。以下、このように複数の発光部から感光体の表面の同一部分に光を照射することを多重露光と称する。
【0005】
また露光ヘッドにおいて、発光部を基板に実装する際に実装位置にずれが生じる場合、感光体上での露光位置がずれて、画像の位置ずれが生じるおそれがある。これに対し特許文献2では、発光部の主走査方向の間隔より高解像度の画像データでディザリング処理を行って発光部の実装位置のずれ量に応じて画像データをシフトさせた後、発光部の主走査方向のピッチに合わせて画像データを変換する構成が記載されている。これにより画像の位置ずれを発光部の主走査方向のピッチよりも高い分解能で補正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-134820号公報
【文献】特開2019-217653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献2の構成では、画像の位置ずれを発光部の主走査方向の間隔よりも高い分解能で補正できるものの、画像の先鋭度が低下するおそれがある。以下、これについて図を用いて説明する。
【0008】
図18(a)は、発光部の主走査方向のピッチより高解像度の画像データでディザリング処理を行って発光部の実装位置のずれ量に応じて画像データをシフトさせたときの画像データの一例を示す図である。図18(b)は、図18(a)に示す画像データを発光部の主走査方向のピッチに合わせて変換したときの図である。図18に示す様に、特許文献2の構成では、高解像度の画像データを発光部の主走査方向のピッチに合わせて変換する際に画像のエッジ部分のデータが中間値となり、画像の先鋭度が低下するおそれがある。
【0009】
そこで本発明は、露光ヘッドにおいて、多重露光によって光量を確保するとともに、画像の先鋭度の低下を抑制しつつ、発光部の主走査方向のピッチよりも高い分解能で画像位置を補正することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る画像形成装置の代表的な構成は、感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成し、該静電潜像にトナーを付着させて画像を形成する画像形成装置において、前記感光体の表面に光を照射して前記静電潜像を形成する露光ヘッドであって、基板と、前記感光体の回転方向及び前記感光体の回転軸線方向に二次元配列された複数の電極であり前記基板上に分離して配置された複数の電極を含む第1電極層と、前記第1電極層に積層され、電圧が印加されることで発光する発光層と、前記発光層に対して前記第1電極層が配置されている側とは反対側に配置され、光が透過可能な第2電極層とを含む発光部を備える露光ヘッドと、前記発光層が発光するように、画像データに基づいて前記第1電極層に含まれる前記複数の電極の各々への電圧の印加を制御する制御部であって、1画素が前記回転方向において異なる位置に配置された複数の電極に電圧を制御することによって形成されるように、前記画像データに基づいて前記複数の電極の各々への電圧を制御可能な制御部と、を備え、同一画素を形成するための前記複数の電極は、前記回転方向から見たときに前記電極の一部が互いに重なるように、且つ、前記回転軸線方向において当該複数の電極の重心間距離が前記回転軸線方向に等間隔となるように配置されており、前記電極の前記回転軸線方向の幅をW1〔mm〕、前記同一画素を形成するための前記複数の電極の個数をn、前記回転軸線方向における前記等間隔の重心間距離をd3〔mm〕とする場合、d3=W1/n(nは2以上の自然数)であり、前記同一画素を形成するための前記複数の電極は、前記回転軸線方向において各電極の重心位置が前記d3の間隔をもって位置するように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画像形成装置の露光ヘッドにおいて、多重露光によって光量を確保するとともに、画像の先鋭度の低下を抑制しつつ、発光部の主走査方向のピッチよりも高い分解能で画像位置を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像形成装置の断面概略図である。
図2】感光ドラムと露光ヘッドの斜視図と断面図である。
図3】露光ヘッドが備えるプリント基板の実装面を示す図である。
図4】二つの発光素子アレイチップの位置関係と使用する発光部を示す図である。
図5】発光素子アレイチップの概略図である。
図6】発光素子アレイチップの断面図である
図7】発光部の配置を説明するための模式図である。
図8】画像コントローラ部と露光ヘッドのシステム構成を示すブロック図である。
図9】高解像度処理前と高解像度処理後の画像データの一例を示す図である。
図10】発光素子アレイチップのシステム構成を示すブロック図である。
図11】データ保持部の回路図である。
図12】データ保持部の動作タイミングチャートである。
図13】アナログ部の回路図である。
図14】発光素子アレイチップの発光部に送られる画像データを示す図である。
図15】発光部の発光時の感光ドラム上での光の位置を示す模式図である。
図16】発光部の配置を説明するための模式図である。
図17】発光部の配置を説明するための模式図である。
図18】従来の構成を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<画像形成装置>
以下、本発明に係る画像形成装置Aの全体構成を画像形成時の動作とともに図面を参照しながら説明する。なお、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
画像形成装置Aは、イエローY、マゼンダM、シアンC、ブラックKの4色のトナーをシートに転写して画像を形成するフルカラー画像形成装置である。なお、以下の説明において、上記各色のトナーを使用する部材には添え字としてY、M、C、Kを付するものの、各部材の構成や動作は使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同じであるため、区別を要する場合以外は添え字を適宜省略する。
【0015】
図1は、画像形成装置Aの断面概略図である。図1に示す様に、画像形成装置Aは、画像を形成する画像形成部を有する。画像形成部は、感光体としての感光ドラム1(1Y、1M、1C、10K)、帯電装置2(2Y、2M、2C、2K)、露光ヘッド6(6Y、6M、6C、6K)、現像装置4(4Y、4M、4C、4K)、転写装置5(5Y、5M、5C、5K)を有する。
【0016】
次に、画像形成装置Aによる画像形成動作について説明する。画像を形成する場合、まずシートカセット99a又はシートカセット99bに収納されたシートSが、ピックアップローラ91a、91b、給送ローラ92a、92b、搬送ローラ93a~93cによってレジストローラ96に送られる。その後、シートSは、レジストローラ96によって所定のタイミングで搬送ベルト11に送り込まれる。
【0017】
一方、画像形成部においては、まず帯電装置2Yにより感光ドラム1Yの表面が帯電させられる。次に、画像読取部90によって読み取られた画像データ又は不図示の外部機器から送信された画像データに応じて露光ヘッド6Yが感光ドラム10Yの表面に光を照射し、感光ドラム10Yの表面に静電潜像を形成する。その後、現像装置4Yにより感光ドラム1Yの表面に形成された静電潜像にイエローのトナーを付着させ、感光ドラム1Yの表面にイエローのトナー像を形成する。感光ドラム1Yの表面に形成されたトナー像は、転写装置5Yに転写バイアスが印加されることで、搬送ベルト11によって搬送されているシートSに転写される。
【0018】
同様のプロセスにより、感光ドラム1M、1C、1Kにも、露光ヘッド6M、6C、6Kから光が照射されて静電潜像が形成され、現像装置4M、4C、4Kによってマゼンダ、シアン、ブラックのトナー像が形成される。そして転写装置5M、5C、5Kに転写バイアスが印加されることで、これらのトナー像がシートS上のイエローのトナー像に対して重畳的に転写される。これによりシートSの表面には画像データに応じたフルカラーのトナー像が形成される。
【0019】
その後、トナー像を担持するシートSは、搬送ベルト97によって定着装置94に搬送され、定着装置94において加熱、加圧処理が施される。これによりシートS上のトナー像がシートSに定着される。その後、トナー像が定着されたシートSは、排出ローラ98によって排出トレイ95に排出される。
【0020】
<露光ヘッド>
次に、露光ヘッド6の構成について説明する。
【0021】
図2(a)は、感光ドラム1と露光ヘッド6の斜視図である。図2(b)は、感光ドラム1と露光ヘッド6の断面図である。図3(a)、図3(b)は、露光ヘッド6が備えるプリント基板22の一方側と他方側の実装面を示す図である。図3(c)は、図3(b)に示す領域Vの拡大図である。
【0022】
図2に示す様に、露光ヘッド6は、感光ドラム1の表面と対向する位置に、不図示の固定部材によって固定されている。露光ヘッド6は、光を出射する発光素子アレイチップ40と、発光素子アレイチップ40を実装するプリント基板22を有する。また発光素子アレイチップ40から出射された光を感光ドラム1上に結像(集光)させるロッドレンズアレイ23と、ロッドレンズアレイ23とプリント基板22が固定されるハウジング24を有する。
【0023】
またプリント基板22における発光素子アレイチップ40の実装面と反対側の面にはコネクタ21が実装されている。コネクタ21は、画像コントローラ部70(図8)から送信される発光素子アレイチップ40の制御信号の伝送や電源ラインを接続するために設けられている。発光素子アレイチップ40は、コネクタ21を介して駆動される。
【0024】
図3に示す様に、プリント基板22には、20個の発光素子アレイチップ40が千鳥状に二列に配列されて実装されている。また各々の発光素子アレイチップ40内には、その長手方向(矢印X方向)に所定の解像度ピッチで748個の発光部50が配列されている。また各々の発光素子アレイチップ40内には、その短手方向(矢印Y方向)に所定のピッチで4個の発光部50が配列されている。即ち、各々の発光素子アレイチップ40において、発光部50は矢印X方向と矢印Y方向に二次元配列されている。矢印Y方向に配列された4個の発光部50は、後述する多重露光によって同一画素を形成する。
【0025】
本実施形態において、発光素子アレイチップ40の上記解像度ピッチは1200dpi(約21.16μm)である。また各々の発光素子アレイチップ40が有する発光部50の長手方向の一端部から他端部までの距離は約15.828mmである。即ち露光ヘッド6は、矢印X方向に合計で14960個の発光部50を備えており、これにより約316mm(≒約15.8mm×20チップ)の長手方向の画像幅に対応した露光処理が可能となっている。また発光素子アレイチップ40の短手方向(矢印Y方向)において、隣接する発光素子アレイチップ40の発光部50同士の間隔L1は、約105μm(1200dpiで5画素分、2400dpiで10画素分)となっている。
【0026】
また矢印Y方向に隣接する発光素子アレイチップ40は、その各々が有する発光部50が矢印X方向においてオーバーラップするように配置される。この理由は、発光素子アレイチップ40の実装工程で位置ずれが生じ、各々の発光素子アレイチップ40の境界部分において感光ドラム1上で照射される光の位置がずれて濃淡が発生し、画像スジが形成されてしまうことを抑制するためである。オーバーラップ量は、実装装置(ダイボンダー)の実装ばらつきの最大量から計算し、矢印Y方向に隣接する発光素子アレイチップ40が各々有する発光部50の間で隙間ができない量に設定される。
【0027】
また露光ヘッド6のヘッド情報格納部171(図8)には、発光素子アレイチップ40の実装時の位置ずれ量が製造工程で測定されて記憶されている。画像コントローラ部70(図8)は、画像形成時において、ヘッド情報格納部171に記憶されている発光素子アレイチップ40の位置ずれ情報に基づいて、次に説明するように発光部50を選択的に発光させて画像スジの発生を抑制する。
【0028】
図4は、矢印Y方向に隣接する二つの発光素子アレイチップ40を示す図である。図4において、斜線が引かれている発光部50は露光時に使用される発光部50を示し、斜線が引かれていない発光部50は露光時に使用されない発光部50を示す。また図4(a)と図4(b)では、矢印Y方向に隣接する二つの発光素子アレイチップ40の矢印X方向の相対位置が異なる。
【0029】
図4に示す様に、画像コントローラ部70は、矢印Y方向に隣接する二つの発光素子アレイチップ40の発光部50うち、露光時に使用される発光部50の矢印X方向の間の距離L2が4800dpiの間隔に最も近くなるように、露光時に使用させる発光部50を選択する。なお、本実施形態では、後述の通り、露光ヘッド6が矢印X方向に4800dpiの解像度で露光する構成であるため、距離L2を4800dpiの間隔に近づける構成としたものの、距離L2は露光ヘッド6の矢印X方向の露光の解像度に応じて設定される。
【0030】
本実施形態において、発光素子アレイチップ40の長手方向である矢印X方向は、感光ドラム1の回転軸線方向であり、主走査方向でもある。また発光素子アレイチップ40の短手方向である矢印Y方向は、感光ドラム1の回転方向であり、副走査方向でもある。また感光ドラム1の回転方向は、露光ヘッド6によって光が集光される感光ドラム1上の露光位置における感光ドラム1の接線方向である。また矢印Z方向は、後述する層構造の発光部50の各層が重なる積層方向である。なお、発光素子アレイチップ40の長手方向は、感光ドラム1の回転軸線方向に対して±1°程度傾いていても構わない。また発光素子アレイチップ40の短手方向も感光ドラム1の回転方向に対して±1°程度傾いていても構わない。
【0031】
<発光素子アレイチップ>
次に、発光素子アレイチップ40の構成について説明する。
【0032】
図5は、発光素子アレイチップ40の概略図である。図6は、発光素子アレイチップ40を図5に示すM-M断面で切断した断面図である。図7は、発光素子アレイチップ40の発光部50の配置を説明するための模式図である。
【0033】
図5に示す様に、発光素子アレイチップ40は、発光部50を制御するための回路部46を内蔵した発光基板42(基板)と、複数の発光部50が発光基板42上に規則的に配置された発光領域44と、ワイヤボンディング用パッド48を有する。発光素子アレイチップ40の外部と回路部46との信号の出入力や回路部46への電源供給は、ワイヤボンディング用パッド48を通じて行われる。なお、回路部46は、アナログ駆動回路、デジタル制御回路、又はその両方を含んだ回路を用いることができる。
【0034】
図6に示す様に、発光部50は、発光基板42と、発光基板42上に矢印X方向と矢印Y方向に一定の間隔(図7に示す間隔d1、d2)で二次元配列された複数の下部電極54と、発光層56と、上部電極58から構成されている。
【0035】
下部電極54(複数の電極を有する第1電極層)は、発光基板42上に層状で、且つ、分離して形成された複数の電極であって、各画素に対応して設けられた電極である。つまり各々の下部電極54は、それぞれ一画素を形成するために設けられている。
【0036】
上部電極58(第2電極層)は、発光層56に対する下部電極54が配置された側と反対側の位置において、発光層56に積層されている。上部電極58は、発光層56の発光波長の光を透過させることが可能(透過可能)な電極である。
【0037】
回路部46は、画像データに応じて生成された制御信号に基づいて選択された下部電極54の電位を制御し、選択された下部電極54と上部電極58との間に電位差を生じさせる。陽極である上部電極58と陰極である下部電極54との間に電位差が生じると、陰極から電子が発光層56に流れ込み、陽極から正孔が発光層56に流れ込む。発光層56において電子と正孔が再結合することによって発光層56が発光する。
【0038】
発光層56が発光することで上部電極58に向かう光は、上部電極58を透過して出射される。また発光層56から下部電極54に向かう光は、下部電極54より上部電極58に向けて反射され、その反射光も上部電極58を透過して出射される。このようにして発光部50は光を出射する。なお、発光層56から上部電極58に直接向かって出射される光と、下部電極54より反射されて上部電極58から出射される光との間で出射タイミングに時間差は生じるものの、発光部50の層の厚さは極めて薄いため、ほぼ同時とみなすことができる。
【0039】
なお、本実施形態において、発光基板42はシリコン基板である。上部電極58は、発光層56の発光波長に対して透明であることが好ましい。例えば酸化インジウム錫(ITO)などの透明電極を用いることにより開口率は実質的に100%となって、発光層56で発光された光は上部電極58を通ってそのまま出射される。また本実施形態において、上部電極58は各々の下部電極54に対して共通に設けられた陽極であるが、各々の下部電極54それぞれに対して個別に設ける構成としても、複数の下部電極54毎に一つの上部電極58を設ける構成としてもよい。また上部電極58として透明電極を用いる場合、必ずしも全体が透明電極である必要はなく、光を出射する開口部のみが透明電極で開口部以外はメタル電線等の透明電極以外の電極で配線してもよい。
【0040】
また発光層56は、有機EL膜や無機EL層などが用いられる。発光層56として有機EL膜を用いる場合、発光層56は電子輸送層、正孔輸送層、電子注入層、正孔注入層、電子ブロック層、正孔ブロック層などの機能層を必要に応じて含む積層構造体であってもよい。また発光層56は矢印X方向に連続的に形成されていても、下部電極54と同等の大きさに分断されていてもよい。また各々の下部電極54を複数のグループに分割し、分割したグループ毎にそのグループに属する下部電極54の上部に一つの発光層56を積層させる構成としてもよい。
【0041】
なお、発光層56として有機EL層や無機EL層などの水分に弱い発光材料を用いる際は発光領域44への水分侵入を阻止するために封止しておくことが望ましい。封止方法としては、例えばシリコンの酸化物、シリコンの窒化物、アルミの酸化物などの薄膜の単体あるいは積層した封止膜を形成する。封止膜の形成方法としては段差などの構造の被覆性能に優れた方法が好ましく、例えば原子層堆積法(ALD法)などを用いることができる。なお、封止膜の材料、構成、形成方法などは一例であり、上述した例には限定されず、適宜好適なものを選択すればよい。
【0042】
また下部電極54は、発光層56の発光波長に対して反射率の高い金属を材料とするのが好ましい。例えばAg、Al、又はAgとAlの合金などが用いられる。また下部電極54は、回路部46の形成と共にSi集積回路加工技術を用いて形成され、回路部46の駆動部に直結される。このように下部電極54をSi集積回路加工技術によって形成することで、プロセスルールが0.2μm程度で高精度となるため、下部電極54を精度良く高密度に配置できる。さらに下部電極54を高密度に配置できるため、発光領域44の殆どを発光させることができ、発光領域44の利用効率を高めることができる。なお、各々の下部電極54の間には発光層56の有機材料が充填されており、各々の下部電極54は有機材料によって仕切られている。
【0043】
また発光部50は、両端にかかる電圧が所定以上になると電流が流れ始め、その後は電流の値が電圧の値にほぼ比例して大きくなる。各々の発光部50において電流が流れ始める電圧にはばらつきがある。そこで工場からの製品出荷前の段階において、発光素子アレイチップ40の発光部50を個別に順次発光させて、ロッドレンズアレイ23を介して集光した光が所定の光量になるように発光部50に流れる電流が調整される。なお、露光ヘッド6は、工場からの製品出荷前の段階において、上述した光量調整だけでなく、発光素子アレイチップ40とロッドレンズアレイ23との間隔を調整するピント調整がなされる。
【0044】
図7に示す様に、発光部50は、発光領域44において、矢印X方向及び矢印Y方向に所定の間隔でマトリクス状に配置されている。本実施形態では、発光部50の矢印X方向の幅W1は19.80μmであり、矢印X方向に隣接する発光部50同士の間隔d1は0.68μmである。即ち、発光部50は、矢印X方向において21.16μm(1200dpi)のピッチで配列されている。なお、この発光部50の矢印X方向のピッチは公差の範囲内でずれていてもよい。発光部50の矢印X方向のピッチの公差は、設計称呼上の発光部50の矢印X方向のピッチに対して±1%である。つまり本実施形態の発光部50の矢印X方向のピッチの公差は±0.21μmである。
【0045】
また発光部50の矢印Y方向の幅W2も、幅W1と同様に19.80μmである。即ち、本実施形態の発光部50は、一辺を19.80μmとする正方形状をなしている。なお、発光部50は、幅W1と幅W2とが等しいため正方形状を成しているものの、これらの幅W1、W2の寸法は公差の範囲内でずれていてもよい。本実施形態では、幅W1、W2の公差は共に±0.2μmである。
【0046】
また矢印Y方向に隣接する発光部50同士の間隔d2も、間隔d1と同様に0.68μmであり、発光部50は矢印Y方向においても21.16μm(1200dpi)ピッチに配列されている。なお、この発光部50の矢印Y方向のピッチは公差の範囲内でずれていてもよい。発光部50の矢印Y方向のピッチの公差は、設計称呼上の発光部50の矢印Y方向のピッチに対して±1%である。つまり本実施形態の発光部50の矢印Y方向のピッチの公差は±0.21μmである。ここで発光部50の間隔d1、d2は、上部電極58と下部電極54との間の間隔dz(図6)よりも広く設定されている。このような構成により、矢印X方向、矢印Y方向にそれぞれ隣接する下部電極54間のリーク電流を抑制することができ、発光部50の誤発光を抑制することができる。
【0047】
ここで発光部50の幅、形状、配置などは、本実施形態では実質的に下部電極54の幅、形状、配置で決められるため、下部電極54の幅、形状、配置とも言い換えることができる。また本実施形態では、発光部50間の距離、即ち下部電極54間の距離は、設計称呼上の下部電極54の重心位置を基準に定義された重心間距離を意味する。
【0048】
矢印Y方向に隣接する発光部50は、互いの位置が矢印X方向に間隔d3ずれるように配置されている。本実施形態では、間隔d3は5.29μm(4800dpi)に設定されている。また発光部50全体で見ると、矢印Y方向に並列する四個の発光部50の位置が間隔d3の整数倍ずつ矢印X方向へ互いにずれるように配置されている。換言すれば、同一画素を形成するために矢印Y方向に四個設けられた下部電極54は、矢印Y方向から見たときに一部が互いに重なるように、且つ、矢印X方向において下部電極54間の重心間距離が等間隔となるように配置されている。
【0049】
ここで間隔d3は、本実施形態では次のように決められる。即ち、画像形成装置Aによって形成される画像の主走査方向(矢印X方向)の解像度をm〔dpi〕、矢印Y方向に並列する発光部50の個数をn〔個〕、矢印Y方向に並列する発光部50の位置の矢印X方向へのずれ量の基準値を間隔d3〔mm〕(基準値)とする。この場合、間隔d3は、d3=25.4/m×1/nから求められ、矢印Y方向に並列する発光部50は間隔d3の整数倍ずつ互いに位置がずれるように配置される。つまり本実施形態では、m=1200、n=4であるため、d3=25.4/1200×1/4=0.00529〔mm〕=5.29〔μm〕となる。
【0050】
また間隔d3を次のように決めても間隔d3の上記算出結果と同じ結果となる。即ち、矢印Y方向の位置が同じ複数の発光部50の矢印X方向のピッチをq〔mm〕、矢印Y方向に並列する発光部50の個数をn〔個〕、矢印Y方向に並列する発光部50の位置の矢印X方向へのずれ量の基準値を間隔d3〔mm〕(基準値)とする。この場合、間隔d3は、d3=q/nから求められ、矢印Y方向に並列する発光部50は間隔d3の整数倍ずつ互いに位置がずれるように配置される。つまり本実施形態では、q=0.02116、n=4であるため、d3=0.02116/4=0.00529〔mm〕=5.29〔μm〕となる。
【0051】
また間隔d3を、上述した決め方ではなく、次のように決める構成としてもよい。即ち同一画素を形成するために矢印Y方向の異なる位置に配置された発光部50に関し、発光部50の個数をn、発光部50の矢印X方向の幅をW1〔mm〕とする。この場合、間隔d3を、d3=W1/n(nは2以上の自然数)から求める。そして同一画素を形成するために矢印Y方向の異なる位置に配置された発光部50は、矢印X方向において各々の発光部50の重心位置がd3の間隔をもって位置するように配置される。つまり後述する多重露光によって同一画素を形成するために矢印Y方向の異なる位置に配置された四個の発光部50の矢印X方向の等間隔の重心間距離がd3となるように各々の発光部50を配置する。本実施形態では、W1=19.80〔μm〕=0.01980〔mm〕、n=4である。従って、d3=0.01980/4=0.00495〔mm〕=4.95〔μm〕となる。このように間隔d3を設定することにより、同一画素を形成するために矢印Y方向の異なる位置に配置された四個の発光部50の矢印X方向のオーバーラップ量が均一化されるため、後述する多重露光において各画素の光量が均一化され、各画素の濃度が均一化される。
【0052】
なお、本発明において発光部50の形状は正方形に限られず、画像形成装置Aの出力解像度に対応する露光領域サイズの光を出射して出力画像の画質が画像形成装置Aの設計仕様を満たすレベルであれば、四角形以上の多角形、円形、楕円形などでもよい。しかしながら、有機発光材料はLEDに比較して光量が少ないため、発光部50を正方形として隣接する発光部50との間の距離を小さくすることで、感光ドラム1の電位を変化させる程度の光量を得るための発光面積を確保することが可能となり好ましい。また矢印Y方向に並列された発光部50の個数は、二個以上設けられていれば四個に限られず、露光ヘッド6の露光処理に必要な光量や画像形成装置Aによって形成される画像の解像度などに基づいて決定される。
【0053】
また上述の通り、発光部50間の距離、つまり下部電極54間の距離は、設計称呼上の下部電極54の重心位置を基準に定義される。即ち、下部電極54の形状が正多角形であれば対角線の交点、真円であれば円の中心、楕円であれば長軸と短軸の交点を基準に、重心間距離として下部電極54間の距離が設定される。なお、下部電極54の形状が正多角形の場合の角は完全な角でなくてもよくRがつけられていてもよい。
【0054】
<露光ヘッドのシステム構成>
次に、露光ヘッド6と露光ヘッド6の制御を行う画像コントローラ部70(制御部)の構成について説明する。画像コントローラ部70は、画像形成装置Aの本体側に設けられている。なお、以下では、一つの画像データ(単色)を処理する際に行う制御について説明するものの、画像形成動作を行う場合は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックに対応する四つの画像データについて同様の処理を並列処理するものとする。
【0055】
図8は、画像コントローラ部70と露光ヘッド6のシステム構成を示すブロック図である。図8に示す様に、画像コントローラ部70は、画像データ生成部71、チップデータ変換部72、CPU73、同期信号生成部74を備える。画像コントローラ部70は、これらの部位により、画像データの処理や画像形成タイミングの処理を行い、露光ヘッド6のプリント基板22に対して露光ヘッド6を制御するための制御信号を送信する。
【0056】
画像データ生成部71(画像処理部)には、画像読取部90により読み取られた原稿の画像データや外部機器からネットワークを介して転送された画像データが入力される。画像データ生成部71は、入力された画像データに対して、CPU73により指示された解像度でディザリング処理を行い、画像を出力するための画像データを生成する。本実施形態では、画像データ生成部71は、解像度1200dpi、階調数が二値でディザリング処理を行った後、高解像度化処理によって主走査方向で4800dpi、副走査方向で2400dpi、階調数が二値のデータを生成する。高解像度化処理では、1200dpiのデータを単純に複写する。
【0057】
図9(a)は、画像データ生成部71の高解像度処理前の画像データD1(第1画像データ)の一例を示す図である。図9(b)は、画像データD1を画像データ生成部71によって高解像度化処理した画像データD2(第2画像データ)を示す図である。図20に示す様に、高解像度化処理によって、発光素子アレイチップ40による露光の解像度に合わせた画像データD2が生成される。この時、画像データ生成部71は、二値化されたデータを生成することで、画像の先鋭度を失うことなく高精細な画像形成を可能とすることができる。
【0058】
また本実施形態では、画像データ生成部71のディザリング処理の解像度を1200dpiとしているため、感光ドラム1上で矢印X方向に並列する四つの発光部50の単位でディザリング処理後の画像データが生成される。矢印X方向に延び、矢印Y方向に並列する四つの発光部50の列のうち、一列目の発光部50と二列目の発光部50の列は、ロッドレンズアレイ23の中心からの距離が互いに異なるため、各列から感光ドラム1に照射される光の光量に差が生じる。三列目や四列目の発光部50の列に関しても同様である。そこで矢印X方向に並列する四つの発光部50の単位でディザリング処理を行って画像データを生成することで、生成されるドットの濃度差によるモアレ、バンディングの発生を抑制することができる。またディザリング後の画像データに対し、4800dpiの分解能で画像位置を補正するように画像データをシフトさせることで、モアレ、バンディングを抑制しつつ、4800dpiの高分解能で画像位置を補正することが可能となる。
【0059】
同期信号生成部74は、画像データの取り込み開始を示すライン同期信号(制御信号)を周期的に生成し、チップデータ変換部72に送信する。CPU73は、予め設定された感光ドラム1の回転速度に対し、感光ドラム1表面が回転方向に画像形成装置Aで形成される画像の副走査方向の解像度に応じた画素サイズ移動する周期を1ライン周期とし、同期信号生成部74に信号周期の時間間隔を指示する。
【0060】
本実施形態では、画像形成装置Aによって形成される画像の副走査方向の解像度は2400dpiであり、感光ドラム1は200mm/sで回転する。従って、感光ドラム1が2400dpiの画素サイズの距離(10.58um)移動する時間は52.92usとなり、ライン同期信号の周期は52.92usとなる。なお、感光ドラム1の回転速度は、不図示の記憶部に記憶された設定値に基づいてCPU73が算出する。
【0061】
チップデータ変換部72は、同期信号生成部74で生成されて入力されたライン同期信号に同期して、一ライン分×4列(発光部50の矢印Y方向の個数)の画像データを各々の発光素子アレイチップ40に分割する。そしてチップデータ変換部72は、ライン同期信号線75、クロック信号線76、画像データ信号線77を介して、クロック信号とライン同期信号と共に画像データを各々の発光素子アレイチップ40へ送信する。なお、画像データ信号線77は、発光部50の矢印Y方向の個数と同数である4本設けられている。
【0062】
露光ヘッド6が備えるヘッド情報格納部171は、通信信号線79を介してCPU73と接続されている。ヘッド情報格納部171は、ヘッド情報として、各々の発光素子アレイチップ40の発光量や実装位置情報を格納する。発光素子アレイチップ40は、画像コントローラ部70から入力された上記の各信号の設定値に基づいて、発光部50を発光させる。また発光素子アレイチップ40は、ライン同期信号線75を介して接続された他の発光素子アレイチップ40で使用されるライン同期信号を生成する。
<発光素子アレイチップのシステム構成>
次に、発光素子アレイチップ40のシステム構成について説明する。
【0063】
図10は、発光素子アレイチップ40のシステム構成を示すブロック図である。図10においては、デジタル部80の全てのブロックにクロック信号が入力されるため結線を省略している。図10に示す様に、発光素子アレイチップ40の回路部46は、デジタル部80とアナログ部86から構成されている。
【0064】
デジタル部80は、通信IF部81、レジスタ部82、取り込み信号生成部83、ライン同期信号生成部84、データ保持部85を備える。デジタル部80は、これらの部位により、クロック信号に同期して通信信号により予め設定された設定値、画像データ信号、ライン同期信号に基づいて、発光部50を発光させるためのパルス信号を生成し、アナログ部86へ送信する。なお、データ保持部85は、一つの発光素子アレイチップ40が有する発光部50の矢印X方向の個数である748個(85-001~85-748)設けられている。
【0065】
ライン同期信号生成部84は、入力されたライン同期信号を所定の時間遅延させて、ライン同期信号線75を介して接続された他の発光素子アレイチップ40で使用されるライン同期信号を生成する。取り込み信号生成部83は、入力されたライン同期信号から、レジスタ部82から入力された所定の設定時間分だけ遅れたタイミングでデータ保持部85-001にデータラッチ信号we001を出力する。
【0066】
レジスタ部82は、上述した取り込み信号生成部83の遅延時間の情報や、アナログ部86で設定される駆動電流の設定情報などを格納する。通信IF部81は、CPU73から入力された通信信号に基づいて、レジスタ部82に対する設定値の書き込みや読み出しを制御する。
【0067】
<データ保持部>
次に、データ保持部85の構成について説明する。
【0068】
図11はデータ保持部85の回路図である。図11に示す様に、データ保持部85には、4ライン分の画像データ(画像データ1~4)、クロック信号、データラッチ信号wen(n=1~748)が入力される。各々のデータ保持部85は、データラッチ信号が入力されたタイミングで同時に入力される4ライン分の画像データをラッチするための四つのフリップフロップ回路と四つのゲート回路を有する。また各々のデータ保持部85は、データラッチ信号を1クロック分、遅延させて出力するための一つのフリップフロップ回路を有する。
【0069】
図12は、データ保持部85の動作タイミングチャートである。図12に示す様に、データ保持部85-001には、4ライン分の画像データ(D1[1]~D1[4])が同時に入力される。データ保持部85-001は、取り込み信号生成部83からデータラッチ信号we001が入力されたタイミングでこの画像データをラッチし、駆動信号(P001[1]~P001[4])を生成する。またデータ保持部85-001は、入力されたデータラッチ信号we001を1クロック遅延させ、データラッチ信号we002として次のデータ保持部85-002に送信する。
【0070】
データ保持部85-002にも、4ライン分の画像データ(D2[1]~D2[4])が同時に入力される。データ保持部85-002は、データ保持部85-001からデータラッチ信号we002が入力されたタイミングでこの画像データをラッチし、駆動信号(P002[1]~P002[4])を生成する。またデータ保持部85-002は、データラッチ信号we002を1クロック遅延させ、データラッチ信号we003としてデータ保持部85-003に送信する。
【0071】
このようにしてデータ保持部85(-001~748)は、データラッチ信号を748個目のデータ保持部85まで送信しながら順次画像データをラッチする。そしてデータ保持部85(-001~748)は、画像データをラッチすると、ラッチした信号を駆動信号としてアナログ部86に送信する。本実施形態では、4ライン分の画像データを1つのデータラッチ信号でラッチするため、4ライン分(4画素分)の駆動信号が同時に出力される。
【0072】
<アナログ部>
次に、アナログ部86の構成について説明する。アナログ部86は、各々の発光部50に一対一で接続される駆動回路で構成されている。以下では、説明の便宜上、一つの駆動回路について説明するものの、同様の駆動回路が発光部50の数と同数、即ち748個×4列=2992個、存在しているものとする。
【0073】
図13は、アナログ部86の回路図である。図13に示す様に、アナログ部86は、電流設定用のDAC61、電流制御用のMOSFET62、スイッチング用のMOSFET63から構成される。DAC61は、デジタル部80のレジスタ部82から発光部50に流す電流設定値をデジタル値として受信し、アナログ電圧に変換して出力する。
【0074】
電流制御用のMOSFET62は、PchのMOSFETであり、ソース端子が電源電圧VDDに接続され、ゲート端子がDAC61の出力に接続されている。そしてDAC61から入力されるアナログ電圧が高いほどソースからドレインに流れる電流が増大する構成となっている。
【0075】
スイッチング用のMOSFET63は、PchのMOSFETであり、ソース端子が電流制御用のMOSFET62のドレイン端子に接続され、ゲート端子にはデータ保持部85から出力される駆動信号が入力される。駆動信号はHiレベルとLowレベルの二値の信号であり、Hiレベルが入力されたときにMOSFET63はONし、ソースからドレインに向けて電流制御用のMOSFET62で制御された電流が流れる。ドレイン端子は、発光部50のアノード端子に接続されているため、この電流が発光部50の駆動電流となる。
【0076】
<画像形成時の発光部の点灯制御>
次に、画像形成時の発光部50の点灯制御について説明する。なお、以下の説明において、発光部50の発光とは、トナーによって現像される程度に感光ドラム1の帯電電位を変位させる光量の光を発光部50が出射することを指す。つまり可視像としてトナー像が現像されない程度に感光ドラム1の帯電電位を変位させる光量の光を発光部50が出射することは発光に含まれないものとする。
【0077】
図14は、主走査方向(矢印X方向)に延びる一本の線画像を形成する際に発光素子アレイチップ40の発光部50に送られる画像データを示す図である。図14に示す様に、上述した線画像を形成する際、まず感光ドラム1の回転方向(矢印Y方向)に並列する四つの発光部50に関し、最も上流側の発光部50を発光させられる。次に、2400dpiの2ライン分遅延させたタイミングで、初めに発光させられた発光部50の一つ下流側の発光部50が発光させられる。遅延動作は、共通のライン同期信号に対して該当する位置の画像データを読み出すように画像データの読み出し位置を設定する。これにより感光ドラム1の回転方向の最も上流側の発光部50から照射された光と、この発光部50から一つ下流側の発光部50から出射された光の感光ドラム1上での副走査方向の露光位置(照射位置)を合わせることができる。
【0078】
次に、感光ドラム1の回転方向の最も上流側の発光部50の発光タイミングに対し、この発光部50よりも三つ下流側の発光部50を2400dpiの4ライン分遅延させたタイミングで発光させられる。同様に、感光ドラム1の回転方向の最も上流側の発光部50の発光タイミングに対し、この発光部50よりも四つ下流側の発光部50を2400dpiの6ライン分遅延させたタイミングで発光させられる。これにより感光ドラム1の回転方向に並列する四つの発光部50から出射された光の感光ドラム1上での副走査方向の露光位置を全て合わせることができる。
【0079】
図15は、矢印Y方向に並列する四つの発光部50を上記制御によって発光させた際の感光ドラム1上での光の照射位置を示す模式図である。図15に示す様に、Y方向に並列して配置された四つの発光部50を上述したタイミングで発光させる場合、四つの発光部50から出射された光H1~H4は、感光ドラム1上において、矢印Y方向では同一の位置で、矢印X方向では間隔d3の分だけ位置がずれて照射される。ここで間隔d3は、d3=25.4/m×1/nに設定されているため、感光ドラム1上では光H1~H4のうち少なくとも二つ以上の光が重なる部分ができ、これによって1画素が形成される。従って、感光ドラム1上で多重露光が行われて静電潜像を形成する際の光量を補うことができる。
【0080】
また本実施形態では、矢印Y方向に並列する発光部50が矢印Xに互いに4800dpi相当の5.29μm(=d3)ずらして配置されている。このため、画像のエッジ部分のデータを中間値にすることなく、感光ドラム1上で4800dpiの分解能で露光処理を行うことができる。従って、画像の先鋭度の低下を抑制しつつ、発光部50の主走査方向のピッチよりも高い分解能で画像位置を補正することができる。なお、間隔d3を、d3=W1/n(nは2以上の自然数)から求められた4.95〔μm〕とする構成の場合でも、感光ドラム1上で発光部50の主走査方向のピッチより高い分解能で露光処理を行う効果を得ることができる。この場合、画像データ生成部71は、高解像度化処理をd3=W1/n(nは2以上の自然数)から算出された間隔d3の数値に応じて行う。
【0081】
また発光部50の矢印X方向の幅W1が小さい場合、矢印Y方向に並列する発光部50間で光H1~H4の重なる量が少なくなり、多重露光が上手く行えない原因となる場合や光H1~H4の各々の間に隙間が生じて画像スジの原因となることがある。そこで幅W1を間隔d3の少なくとも2倍以上とする。これにより矢印Y方向で隣接する発光部50だけでなく、矢印Y方向で二つ隣にある発光部50から出射された光を感光ドラム1上で重ねることができ、多重露光を精度良く行い、また画像スジを抑制することができる。
【0082】
また上述した通り、矢印Y方向に隣接する二つの発光素子アレイチップ40が各々有する発光部50同士の図3(c)に示す間隔L1(最短距離)は、2400dpiで10ライン分に設定されている。そこで感光ドラム1の回転方向に関し、一つ目の発光素子アレイチップ40の最も下流側の発光部50と、一つ目の発光素子アレイチップ40の下流側にある二つ目の発光素子アレイチップ40の最も上流側の発光部50との間で、間隔L1に画素の発光面積である2ライン分を加算した12ライン分だけ発光タイミングを遅延させる。このような構成により、千鳥配列された発光素子アレイチップ40が各々有する発光部50間で、感光ドラム1上の副走査方向の露光位置を合わせることができる。
【0083】
なお、本実施形態では、発光素子アレイチップ40の全ての発光部50に関し、矢印Y方向に並列する発光部50を互いに間隔d3の整数倍ずつ矢印X方向へ位置がずれるように配置する構成について説明した。しかし本発明はこれに限られるものではない。即ち発光素子アレイチップ40の有する複数の発光部50に、矢印Y方向に並列する発光部50が互いに間隔d3の整数倍ずつ矢印X方向へ位置がずれるように配置された発光部群(電極群)が含まれる構成であれば、上記同様の効果を得ることができる。
【0084】
また本実施形態では、発光素子アレイチップ40において、矢印Y方向に隣接する発光部50を矢印X方向へ間隔d3ずつ位置がずれるように配置する構成について説明したものの、本発明はこれに限られるものではない。即ち、例えば図16に示す様に、矢印Y方向に並列する複数の発光部50の間で矢印X方向へのずれ量が間隔d3の整数倍であれば、矢印Y方向に隣接する発光部50間のずれ量が間隔d3である必要はない。また図17に示す様に、矢印Y方向に並列する複数の発光部50において、矢印X方向の位置が同じ発光部50が一部に含まれている構成であってもよい。図16図17に示す構成であっても、発光部50に送られる画像データを調整することで、上記同様の露光を行うことができる。
【符号の説明】
【0085】
1…感光ドラム(感光体)
6…露光ヘッド
42…発光基板(基板)
50…発光部
54…下部電極(複数の電極を含む第1電極層)
56…発光層
58…上部電極(第2電極層)
70…画像コントローラ部(制御部)
71…画像データ生成部(画像処理部)
A…画像形成装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18