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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】構造物劣化診断システム
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20241125BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020216855
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102236
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】井関 晃広
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 義英
【審査官】佐藤 賢斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-167768(JP,A)
【文献】特開2008-255570(JP,A)
【文献】特開2020-084419(JP,A)
【文献】国際公開第2015/071925(WO,A1)
【文献】特開2008-008810(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0202289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
E01D 22/00
G01H 1/00 - 17/00
G01M 7/00
G01M 13/00 - 13/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設置され、前記構造物の加速度を検出する加速度センサと、
前記加速度センサにより検出された前記加速度に基づいて前記構造物の劣化診断を行う診断部と
を備え、
前記診断部は、
前記加速度センサにより検出された前記加速度、および前記加速度センサによる前記加速度の検出中における気温データを、あらかじめ決められたサンプリング周期で順次取得し、
順次取得した前記加速度のそれぞれについて、前記構造物の劣化診断の指標となる前記構造物の傾きまたは前記構造物の固有振動を特徴量として算出することで、前記特徴量に関する時系列データを生成し
前記加速度の検出中に前記サンプリング周期で順次取得した前記気温データに関する時系列データと、前記サンプリング周期で前記気温データと同時刻に順次収集した前記特徴量に関する時系列データとを関連付けた関連データを時間経過とともに順次記憶部に記憶させ、
前記記憶部に順次記憶させた前記関連データに基づいて、前記特徴量と前記気温データとの相互の関係性の時間的変化から、定常状態のときと比較して前記関係性にばらつきが生じたと診断した場合には、前記構造物に劣化が発生していると判断する
構造物劣化診断システム。
【請求項2】
前記診断部は、前記気温データに関する時系列データと前記特徴量に関する時系列データのそれぞれについて、あらかじめ設定された時間幅で前記時間経過に伴って平均値を求め、前記平均値を用いて前記関連データを作成し、作成した前記関連データを前記記憶部に順次記憶させる
請求項1に記載の構造物劣化診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、橋梁等の構造物の劣化診断を行う構造物劣化診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物の異常を検知する従来技術として、異常を検知するための特徴量として固有振動数を用いる構造物異常検知システムがある(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に係るシステムは、固有振動数の振動強度などについて、複数位置間の関係性を評価して、異常を検知している。すなわち、同一機能を有する複数のセンサによる測定結果に基づいて、複数位置における特徴量の関係性の変化から、構造物の異常を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/064855号
【文献】特開2015-64347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1では、同一機能を有する複数のセンサの測定結果に基づく特徴量として算出された固有振動の変化により、構造物の劣化を検知することができる。しかしながら、季節変動あるいは急峻な気温変動に対応して高精度に劣化検知を行うためには、長期間にわたるデータ取得が必要となる。
【0005】
また、例えば、急峻な気温変化があった場合には、気温の影響を受けて固有振動が変化することで、実際には劣化が進行していないにもかかわらず、劣化の進行により固有振動が変化したと勘違いして、異常を誤検知してしまうおそれがある。
【0006】
本開示は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、気温変動に起因する誤検知を抑制して、構造物の劣化を検知することのできる構造物劣化診断システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る構造物劣化診断システムは、構造物に設置され、構造物の加速度を検出する加速度センサと、加速度センサにより検出された加速度に基づいて構造物の劣化診断を行う診断部とを備え、診断部は、加速度センサにより検出された加速度、および加速度センサによる加速度の検出中における気温データを、あらかじめ決められたサンプリング周期で順次取得し、順次取得した加速度のそれぞれについて、構造物の劣化診断の指標となる構造物の傾きまたは構造物の固有振動を特徴量として算出することで、特徴量に関する時系列データを生成し、加速度の検出中にサンプリング周期で順次取得した気温データに関する時系列データと、サンプリング周期で気温データと同時刻に順次収集した特徴量に関する時系列データとを関連付けた関連データを時間経過とともに順次記憶部に記憶させ、記憶部に順次記憶させた関連データに基づいて、特徴量と気温データとの相互の関係性の時間的変化から、定常状態のときと比較して関係性にばらつきが生じたと診断した場合には、構造物に劣化が発生していると判断するものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、気温変動に起因する誤検知を抑制して、構造物の劣化を検知することのできる構造物劣化診断システムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの構成図である。
図2】本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの診断対象である構造物に対して加速度センサ、および気温センサが設置され、定常状態と劣化進行状態における診断が行われる状態を示した説明図である。
図3】本開示の実施の形態1における加速度センサおよび気温センサを用いた劣化診断において、劣化が発生していない定常状態を示した説明図である。
図4】本開示の実施の形態1における加速度センサおよび気温センサを用いた劣化診断において、劣化が発生した劣化進行状態を示した説明図である。
図5】本開示の実施の形態1における加速度センサおよび気温センサを用いた劣化診断において、劣化が発生していない定常状態を示した、図3とは異なる説明図である。
図6】本開示の実施の形態1における構造物劣化診断システムの、劣化検知に要する時間的なメリットを説明するための図である。
図7】本開示の実施の形態1における構造物劣化診断システムが有する誤検出抑制機能に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の構造物劣化診断システムの好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
本開示は、気温データに関連付けられた現在の特徴量と過去の特徴量との有意差の有無により、気温変動に起因する誤検知を抑制して構造物の劣化診断を行うことを技術的特徴とするものである。
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1では、構造物の構造体に1つのセンサを設ける場合の一例として、橋梁の主桁に設置された1つの加速度センサによる測定結果と温度データとを関連付けた関連データに基づいて構造物の劣化診断を行う場合について、図面を用いて説明する。なお、気温データとしては、構造物の設置場所に関する気象台データとして外部から取得することもできるが、以下では、気温センサを用いて取得する場合について、図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの構成図である。本実施の形態1における構造物劣化診断システムは、加速度センサ10と、気温センサ11と、診断部20とを備えて構成されている。
【0013】
また、図2は、本開示の実施の形態1に係る構造物劣化診断システムの診断対象である構造物に対して加速度センサ10、および気温センサ11が設置され、定常状態と劣化進行状態における診断が行われる状態を示した説明図である。図2では、構造物の具体例として橋梁30が示されているとともに、橋梁30を車両1が通過する状況が示されている。
【0014】
図2(a)は、劣化が発生する前の定常状態を示している。一方、図2(b)は、劣化により橋梁30に亀裂が発生している劣化進行状態を示している。
【0015】
本実施の形態1において、加速度センサ10および気温センサ11は、橋梁30の構成部品である主桁に設置される。ここで、主桁は、診断対象である構造物の構造体に相当する。
【0016】
なお、以下の説明では、1つの加速度センサ10による検出結果と気温センサ11による検出結果とを関連付けた関連データに基づいて、劣化診断を行う場合について説明する。ただし、加速度センサ10自体は、橋梁30の2箇所以上に複数の加速度センサとして設置されていてもよい。また、複数の加速度センサを用いる場合にも、気温センサ11は1つのものを共用することができる。
【0017】
2つ以上の加速度センサ10が設置されている場合には、個々の加速度センサ10の設置位置における検出結果を、気温データと関連付けて、それぞれの加速度センサ10ごとに複数の劣化診断結果を得ることができる。
【0018】
診断部20は、時間経過とともに加速度センサ10によって取得される物理量から、構造物である橋梁30の劣化状態を診断するための指標となる特徴量として、橋梁30の傾きあるいは固有振動数を生成する。なお、加速度センサ10によって取得される物理量から構造物の傾きあるいは固有振動数を求める手法としては、従来技術を適用することができる(例えば、特許文献2参照)。
【0019】
本実施の形態1に係る構造物劣化診断システムは、加速度センサ10による測定結果から生成された構造物の劣化診断の指標となる傾きまたは固有振動を、気温データと関連付けた特徴量として管理し、同一の気温データに関する過去の特徴量と現在の特徴量との間に有意差が存在する場合に劣化が進行していると判断する点に技術的特徴を有している。そこで、診断部20により実行される具体的な劣化診断方法について、次に詳細に説明する。
【0020】
図3は、本開示の実施の形態1における加速度センサ10および気温センサ11を用いた劣化診断において、劣化が発生していない定常状態を示した説明図である。
【0021】
図3(a)は、気温センサ11の測定結果に基づいて約1年半に渡って収集された気温データを示している。また、図3(b)は、加速度センサ10の測定結果に基づいて約1年半に渡って収集された傾きデータを示している。さらに、図3(c)は、同時刻に収集された気温データと傾きデータとの関係性のまとめた図である。
【0022】
一方、図4は、本開示の実施の形態1における加速度センサ10および気温センサ11を用いた劣化診断において、劣化が発生した劣化進行状態を示した説明図である。
【0023】
図4(a)は、気温センサ11の測定結果に基づいて約9ヶ月に渡って収集された気温データを示している。また、図4(b)は、加速度センサ10の測定結果に基づいて約9ヶ月に渡って収集された傾きデータを示している。さらに、図4(c)は、同時刻に収集された気温データと傾きデータとの関係性のまとめた図である。
【0024】
次に、これら図3および図4を用いて、診断部20により実行される具体的な劣化診断方法について説明する。診断部20は、気温センサ11の測定値をあらかじめ決められたサンプリング周期で順次取得し、気温に関する時系列データを生成することで、図3(a)および図4(a)のデータを得ることができる。
【0025】
同様にして、診断部20は、加速度センサ10の測定値をあらかじめ決められたサンプリング周期で順次取得し、傾きに関する時系列データを生成することで、図3(b)および図4(b)のデータを得ることができる。
【0026】
さらに、診断部20は、同一のサンプリング時刻に収集された気温に関する時系列データと、傾きに関する時系列データとを関連付けることで、図3(c)および図4(c)に示した関連データを得ることができる。すなわち、診断部20は、同一のサンプリング時刻における気温データと傾きデータとの順次収集していくことで、相互の関係性の時間的変化を求めることができる。なお、気温データに関する時系列データおよび傾きに関する時系列データについて、ある時間幅で平均値を求めた上で、平均値を用いて関連データを作成してもよい。
【0027】
ここで、図3(c)に示したように、劣化が進行していない定常状態においては、気温と傾きとの関係性が安定しており、高い相関値が得られる。
【0028】
一方、図4(c)に示したように、橋梁30の一部に亀裂が生じ始めた劣化進行状態においては、気温と傾きとの関係性がばらつき、定常状態のときと比較して相関値が低下することとなる。
【0029】
図4では、図4(a)および図4(b)にまたがる点線の楕円で示した季節において、劣化が発生し、その結果、図4(c)に示したような相関が崩れた異常データが生成された状態を示している。
【0030】
従って、診断部20は、加速度センサ10に基づいて算出した傾きデータと、気温センサ11に基づいて算出した気温データとの相互の関係性の時間的変化から、相関値を指標値として、構造物の劣化診断を定量的に行うことができる。
【0031】
以上の診断処理を換言すると、診断部20は、以下のような手順によって、構造物の劣化診断を定量的に行うことができる。
手順1:加速度センサ10による加速度の検出中において、気温センサ11による気温データを取得する。
手順2:加速度センサ10により検出された加速度から、構造物の劣化診断の指標となる構造物の傾きまたは構造物の固有振動を特徴量として算出する。
【0032】
手順3:取得した気温データと、算出した特徴量とを関連付けた関連データを時間経過とともに、順次、記憶部に記憶させる。なお、図1においては、記憶部の図示を省略している。
手順4:記憶部に順次記憶された関連データの中から、現在の特徴量と関連付けられた気温データと同じ気温データに関連付けて記憶されている過去の特徴量を抽出し、過去の特徴量と現在の特徴量との間にあらかじめ設定した有意差が存在する場合には、構造物に劣化が発生していると判断する。
【0033】
なお、図3および図4では、加速度センサ10に基づいて算出した傾きに対して温度データを関連付けて劣化診断を行う場合について説明した。これに対して、傾きの代わりに、加速度センサ10に基づいて算出した固有振動数に対して温度データを関連付けて劣化診断を行うことも可能である。
【0034】
図5は、本開示の実施の形態1における加速度センサ10および気温センサ11を用いた劣化診断において、劣化が発生していない定常状態を示した、図3とは異なる説明図である。図5(a)は、気温センサ11の測定結果に基づいて約7ヶ月に渡って収集された気温データを示している。また、図5(b)は、加速度センサ10の測定結果に基づいて約7ヶ月に渡って収集された固有振動数データを示している。さらに、図5(c)は、同時刻に収集された気温データと固有振動数データとの関係性のまとめた図である。
【0035】
図5(c)に示したように、劣化が進行していない定常状態においては、気温と固有振動数との関係性が安定しており、高い相関値が得られる。一方、図示は省略するが、橋梁30の一部に亀裂が生じ始めた劣化進行状態においては、気温と固有振動数との関係性がばらつき、定常状態のときと比較して相関値が低下することとなる。
【0036】
従って、診断部20は、加速度センサ10に基づいて算出した固有振動数データと、気温センサ11に基づいて算出した気温データとの相互の関係性の時間的変化から、相関値を指標値として、構造物の劣化診断を定量的に行うことができる。
【0037】
図6は、本開示の実施の形態1における構造物劣化診断システムの、劣化検知に要する時間的なメリットを説明するための図である。図6の上段の図6(a)では、従来の劣化検出技術により劣化検知までに要する時間を模式的に示している。一方、図6の下段の図6(b)では、本実施の形態1の劣化検出技術により劣化検知までに要する時間を模式的に示している。
【0038】
図6(a)に示したような従来技術では、気温などの季節性の変化を吸収するために、傾きデータあるいは固有振動数データを長期間(例えば年単位)で取得し、変化を見極める必要があった。換言すると、傾きデータおよび固有振動数データは、季節性変動が強いため、時系列の前後での比較により劣化診断を行うには、季節変動の影響を抑制するために、長期間(年単位)の計測が必要であった。
【0039】
従って、高精度に劣化検知を行うためには長時間の準備期間を要し、実運用に供する構造物劣化診断システムを得ることが、比較的遅くなってしまう問題があった。
【0040】
これに対して、本実施の形態1に係る技術では、現在の特徴量と関連付けられた気温データと同じ気温データに関連付けた過去の特徴量を抽出し、過去の特徴量と現在の特徴量との間に有意差が存在する場合には、劣化が発生していることを迅速に判断することができる。従って、従来技術と比較して、より早期に、実運用に供する構造物劣化診断システムを得ることができる。
【0041】
診断部20は、例えば、平均気温が同一の1時間分における過去の特徴量と現在の特徴量との間に有意差が存在する場合には、劣化進行状態であることを判断できる。極論的には、現時点の1時間前の気温が現時点の気温と同一である場合には、現時点の特徴量と1時間前の特徴量とを比較してもよい。
【0042】
また、1年前、もしくはそれ以前から現時点1時間前までの、すべての同一気温時の特徴量を用いて、統計的に有意差の有無を判断してもよい。なお、安定して気温、固有振動数が算出できるのならば、1時間という単位にも限定されない。
【0043】
次に、気温との関連性に基づいた特徴量を用いて劣化診断を行うことで、誤検出を抑制できるメリットについて、図7を用いて補足説明する。図7は、本開示の実施の形態1における構造物劣化診断システムが有する誤検出抑制機能に関する説明図である。
【0044】
図7は、本開示の実施の形態1における加速度センサ10および気温センサ11を用いた劣化診断において、劣化が発生していない定常状態であり、かつ凍結が発生した場合を例示した説明図である。図7(a)は、気温センサ11の測定結果に基づいて約2日間に渡って収集された気温データを示している。また、図7(b)は、加速度センサ10の測定結果に基づいて約2日間に渡って収集された固有振動数データを示している。さらに、図5(c)は、同時刻に収集された気温データと固有振動数データとの関係性のまとめた図である。
【0045】
図5(a)に示したように、ある時間帯で凍結が発生した場合には、図5(b)に示したように、劣化が発生していない定常状態であるにもかかわらず、特徴量である固有振動数が急峻に変化している。
【0046】
このような凍結が発生した場合には、特徴量だけを監視する従来技術においては、凍結に起因して急峻に変化した特徴量を、劣化に起因して急峻に変化した特徴量と判断し、劣化として誤検出してしまうおそれがある。
【0047】
これに対して、本実施の形態1に係る構造物劣化診断システムは、気温データと関連付けられた過去の特徴量と現在の特徴量との有意差を判断することで劣化が進行しているか否かを判断している。従って、凍結発生時の温度に関連付けられた特徴量が定常データとして関連付けられており、かつ、劣化が発生した際の同一温度に関連付けられた特徴量とは異なる関連性を有する場合には、診断部20は、誤検出を抑制することができる。
【0048】
以上のように、実施の形態1によれば、気温データに関連付けられた現在の特徴量と過去の特徴量との有意差の有無により、劣化診断を行っている。この結果、気温変動に起因する誤検知を抑制して構造物の劣化診断を行うことができる。
【0049】
さらに、劣化診断に当たり、気温データと関連付けた指標値を用いることで、気温データとの関連付けが行われていない従来技術と比較して、より早いタイミングで構造物の劣化検知を行うことのできる構造物劣化診断システムを得ることができる。
【0050】
なお、本実施の形態では、橋梁を例に説明したが、ビル、トンネルの付帯物(ジェットファンの取付や照明装置等)、のり面および水道管等の劣化診断にも適応できる。
【符号の説明】
【0051】
10 加速度センサ、11 気温センサ、20 診断部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7