(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】防災照明装置及び救助支援システム
(51)【国際特許分類】
G08B 5/00 20060101AFI20241125BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20241125BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20241125BHJP
F21S 9/02 20060101ALI20241125BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20241125BHJP
G09F 13/04 20060101ALI20241125BHJP
F21W 131/40 20060101ALN20241125BHJP
【FI】
G08B5/00 C
G08B21/02
G08B25/00 510M
F21S9/02 130
F21V23/00 115
G09F13/04 Z
F21W131:40
(21)【出願番号】P 2021001994
(22)【出願日】2021-01-08
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 恭生
(72)【発明者】
【氏名】下山田 好孝
(72)【発明者】
【氏名】滝口 泰三
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-238593(JP,A)
【文献】特開2017-45474(JP,A)
【文献】特開2011-178483(JP,A)
【文献】特開2020-109708(JP,A)
【文献】特表2020-532850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0126700(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 23/00-99/00
G08B 1/00- 9/20,19/00-31/00
G09F 13/00-13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明装置であって、
少なくとも1つの非常用電池と、
前記少なくとも1つの非常用電池により発光可能な光源と、
前記少なくとも1つの非常用電池により動作可能な監視部と
を備え、
前記監視部は、
前記要避難領域にアクセスするための第1のアクセス領域を撮影するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像に対して画像認識処理を行うことによって前記第1のアクセス領域を通過する人を検出可能な画像解析部と、
記憶部と、
前記画像解析部によって検出された前記人の数に基づいて前記第1のアクセス領域を通って前記要避難領域に入った人の相対人数を表す第1の入境人数を前記記憶部に記録する入境人数記録部と、
前記記憶部に記録されている前記第1の入境人数に基づいて前記要避難領域からの救助を支援するための救助支援情報を生成する救助支援情報生成部と、
前記救助支援情報生成部により生成された前記救助支援情報を外部に出力する出力部と
を含む、防災照明装置。
【請求項2】
前記監視部は、非常時であることを検出可能な非常時検出部をさらに含み、
前記監視部の前記出力部は、前記非常時検出部により非常時であることが検出されたときに前記救助支援情報を出力するように構成される、
請求項1に記載の防災照明装置。
【請求項3】
前記救助支援情報は、前記第1の入境人数を示す情報である、請求項1又は2に記載の防災照明装置。
【請求項4】
前記監視部は、前記第1のアクセス領域とは異なる第2のアクセス領域を通って前記要避難領域に入った人の相対人数を表す第2の入境人数を受信可能な第1の受信部をさらに含み、
前記監視部の前記救助支援情報生成部は、前記記憶部に記録されている前記第1の入境人数と前記第1の受信部により受信した前記第2の入境人数との合計に基づいて、前記救助支援情報として前記要避難領域に残っていると思われる人の総数を示す情報を生成するように構成される、
請求項1又は2に記載の防災照明装置。
【請求項5】
前記監視部は、前記要避難領域とは異なる領域に設けられたサーバに、前記カメラにより撮影された画像と前記記憶部に記憶されている前記第1の入境人数とを送信可能な第1の送信部をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の防災照明装置。
【請求項6】
請求項5に記載の防災照明装置を少なくとも1つと、
前記防災照明装置の前記第1の送信部から送信された前記画像及び前記第1の入境人数を受信可能な第2の受信部と、前記第2の受信部により受信された前記画像及び前記第1の入境人数に基づく情報を出力可能な出力部とを含むサーバと
を備える、救助支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災照明装置及び救助支援システムに係り、特に建物内からの避難を誘導可能な防災照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、火災などの非常時に建物内から避難する際に避難口や避難方向を指示する誘導灯が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、このような誘導灯に類似するものとして非常灯も知られている。これらの誘導灯や非常灯などの防災照明器具は、非常用の電池を内蔵しているため、停電になったとしても点灯し続けることで建物内にいる人を避難口に迅速に誘導したり、周囲を照明し続けたりすることができる。
【0003】
しかしながら、これらの防災照明器具が設置されていたとしても、不運にも非常時に建物内に取り残されてしまった者は、外部からの救助者を待つ以外に手立てがない。したがって、外部からの救助者にとって、建物内に取り残されている人の数や場所を把握することがより多くの命を守るために非常に重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明を提供するとともに、要避難領域からの救助を支援する情報を救助者に迅速に提供することできる防災照明装置及び救助支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明を提供するとともに、要避難領域からの救助を支援する情報を救助者に迅速に提供することできる防災照明装置が提供される。この防災照明装置は、建物内の要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明装置である。上記防災照明装置は、少なくとも1つの非常用電池と、上記少なくとも1つの非常用電池により発光可能な光源と、上記少なくとも1つの非常用電池により動作可能な監視部とを備える。上記監視部は、上記要避難領域にアクセスするための第1のアクセス領域を撮影するカメラと、上記カメラにより撮影された画像に対して画像認識処理を行うことによって上記第1のアクセス領域を通過する人を検出可能な画像解析部と、記憶部と、上記画像解析部によって検出された上記人の数に基づいて上記第1のアクセス領域を通って上記要避難領域に入った人の相対人数を表す第1の入境人数を上記記憶部に記録する入境人数記録部と、上記記憶部に記録されている上記第1の入境人数に基づいて上記要避難領域からの救助を支援するための救助支援情報を生成する救助支援情報生成部と、上記救助支援情報生成部により生成された上記救助支援情報を外部に出力する出力部とを含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、救助支援システムは、上述した防災照明装置を少なくとも1つと、上記防災照明装置の上記第1の送信部から送信された上記画像及び上記第1の入境人数を受信可能な第2の受信部と、上記第2の受信部により受信された上記画像及び上記第1の入境人数に基づく情報を出力可能な出力部とを含むサーバとを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における救助システムを模式的に示す概念図である。
【
図2】
図2は、
図1の救助システムにおける防災照明装置を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の防災照明装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図2の防災照明装置においてアクセス領域を通って要避難領域に入る人の数をカウントする処理を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、
図1の救助システムにおけるサーバの機能的構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、
図2の防災照明装置において非常時を検出したときの処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る救助システムの実施形態について
図1から
図6を参照して詳細に説明する。
図1から
図6において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、
図1から
図6においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態における救助支援システム1を模式的に示す概念図である。この救助支援システム1は、建物内に設置される1つ以上の防災照明装置10と、LANやインターネットなどのネットワーク30を介して防災照明装置10と通信可能に接続されるサーバ20とを含んでいる。本実施形態における救助支援システム1は、3つの防災照明装置10を含んでおり、これらの防災照明装置10は、無線LANのようなネットワーク31を介して互いに直接通信できるようになっている。
【0011】
図1では、四方を壁90で囲まれた領域Rが、火災などの非常時に避難する必要のある領域(要避難領域)であるとする。このような要避難領域Rは、図示のものに限られず、建物内の少なくとも一部を占める領域であればどのような形態(形状及び大きさ)のものであってもよい。
【0012】
本実施形態では、要避難領域Rを規定する壁90に3つの開口40が形成されており、これらの開口40が形成された部分が要避難領域Rにアクセスするためのアクセス領域S(SA~SC)となっている。これらの開口40には図示しない扉が取り付けられていてもよい。また、要避難領域Rに連絡する通路をアクセス領域Sとしてもよい。図示の例では、それぞれの開口40の上部に防災照明装置10(10A~10C)が取り付けられている。防災照明装置10A~10Cは同一の構成であるため、以下では主として防災照明装置10Aを例として説明する。
【0013】
図2は、防災照明装置10Aを示す斜視図である。
図2に示すように、防災照明装置10Aは、直方体状の筐体11と、筐体11の前面に取り付けられたパネル12と、筐体11の下部に取り付けられたカメラ13と、筐体11の下面に設けられた表示部14と、筐体11の下部に設けられたスピーカ15とを含んでいる。
【0014】
パネル12には、避難口の場所や避難すべき方向が示されており、図示の例では避難口の場所を示すものとして「非常口 EXIT」が示されている。また、カメラ13は、要避難領域Rにアクセスするための(第1の)アクセス領域SAを撮像するように構成されている。表示部14は、例えば液晶ディスプレイや7セグメントLEDなどから構成される。表示部14及びスピーカ15は、要避難領域Rからの避難を支援するための救助支援情報を外部に出力する出力部として機能する。本実施形態では、この救助支援情報として、後述するように、要避難領域Rに残っていると思われる人の総数(残留総人数)を示す情報が提供される。
【0015】
図3は、防災照明装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、防災照明装置10は、パネル12を照明する光源16と、要避難領域Rにいる人の数を監視する監視部17と、停電時に光源16に電力を供給可能な第1の内部電池18と、停電時に監視部17に電力を供給可能な第2の内部電池19とを含んでいる。
【0016】
光源16は、例えば蛍光灯やLEDから構成されており、電力供給ポート101を介して外部電源に接続されている。光源16は、通常時は外部電源からの電力を受けて発光し、停電時には非常用電池としての第1の内部電池18から電力の供給を受けて発光し、パネル12を背面側から照明する。停電時には、防災照明装置10の周囲の照明が消えてしまうと考えられるため、カメラ13のセンサ感度は、光源16からの光だけで撮影できる程度に高いことが好ましい。なお、本実施形態における「非常用電池」とは消防法における「非常電源」を意味し、「外部電源」とは消防法における「常用電源」のことを意味する。
【0017】
また、監視部17も電力供給ポート102を介して外部電源に接続されている。監視部17は、通常時は外部電源からの電力を受けて動作し、停電時には非常用電池としての第2の内部電池19からの電力の供給を受けて動作する。本実施形態では、光源16及び監視部17が別個の非常用電池から電力の供給を受けるように構成されているが、1つの非常用電池から光源16及び監視部17の双方に電力を供給するように構成してもよい。
【0018】
図3に示すように、監視部17は、上述したカメラ13及び表示部14を含んでおり、さらに、ROMやRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどを含む記憶部171と、ネットワーク30,31に接続するためのインタフェイスとして(第1の)送信部及び(第1の)受信部を備える通信部172と、非常時であることを検出可能な非常時検出部173と、防災照明装置10内の各構成要素の動作を制御する制御部174とを備えている。なお、
図2に示すようにカメラ13の近傍にメモリスロット50を設け、このメモリスロット50に挿入されるメモリを記憶部171又はその一部として用いてもよい。
【0019】
記憶部171には、OS(Operating System)、カメラ13、表示部14、及び通信部172を制御するためのプログラム、後述する処理を行うためのプログラム、その他のデータなどが格納されている。また、記憶部171には、アクセス領域SAを通って要避難領域Rに入った人の相対人数を表す入境人数CA(第1の入境人数)が格納されている。さらに、後述するように、通信部172を介して他の防災照明装置10B,10Cから受信される第2の入境人数CB,CCも記憶部171に格納される。これらCA,CB,CCの初期値は0となっている。
【0020】
制御部174は、プロセッサ(CPU)、ROM、RAMなどを備えており、記憶部171に格納されたプログラムをRAMにロードしてこれをプロセッサにより実行することにより、後述する画像解析部175、入境人数記録部176、救助支援情報生成部177などが実現される。
【0021】
非常時検出部173は、停電検出器、赤外線センサ、熱センサ、煙センサなど非常時を検知可能なセンサにより構成することができる。あるいは、例えば通信部172を介してサーバ20や他の防災照明装置10B,10Cから受信した信号や通信部172を介して受信した緊急地震速報に基づいて非常時を検出するように非常時検出部173を構成してもよい。
【0022】
画像解析部175は、カメラ13により撮影されたアクセス領域SAの画像を取得し、この画像に対して画像認識処理を行うように構成されている。このような画像解析部175で用いられる画像認識処理としては公知のものを使用することができる。
【0023】
図4は、アクセス領域S
Aを通って要避難領域Rに入る人の数をカウントする処理を説明するフローチャートである。この処理においては、画像解析部175が、カメラ13により撮影されたアクセス領域S
Aの画像を取得し、この画像に対して画像認識処理を行うことで画像に人が写っているか否かを判断する(ステップS1)。これは画像に人が写っていると判断されるまで続けられる。
【0024】
ステップS1において画像に人が写っていると判断された場合には、続いて画像解析部175は、連続した画像から特定のアルゴリズムを用いて人の動きを分析し、画像に写っている人が外部からアクセス領域SAを通って要避難領域Rに入ったか否かを判断する(ステップS2)。画像に写っている人が外部からアクセス領域SAを通って要避難領域Rに入ったと判断される場合には、入境人数記録部176が、記憶部171に格納されている入境人数CAを1つ増やして記憶部171に格納されている入境人数CAを更新する(ステップS3)。
【0025】
ステップS2において、画像に写っている人が外部からアクセス領域SAを通って要避難領域Rに入ったと判断できない場合には、画像解析部175は、画像に写っている人が要避難領域Rからアクセス領域SAを通って外部に退出したか否かを判断する(ステップS4)。ステップS4において画像に写っている人が要避難領域Rからアクセス領域SAを通って退出したと判断される場合には、入境人数記録部176が、記憶部171に格納されている入境人数CAを1つ減らして記憶部171に格納されている入境人数CAを更新する(ステップS5)。なお、入境人数CAは、アクセス領域SAを通って要避難領域Rに入る人の相対人数を表しているため、負数ともなり得る。
【0026】
ステップS4において、画像に写っている人が要避難領域Rからアクセス領域SAを通って外部に退出したと判断できない場合には、ステップS1に戻る。すなわち、画像に写っている人がアクセス領域SA内に留まっている場合には、ステップS4からステップS1に戻る。なお、画像に写っている人がアクセス領域SA内に留まっている状態では、ステップS1、ステップS2、及びステップS4が繰り返されることとなる。
【0027】
ステップS3又はステップS5において入境人数CAが更新されると、通信部172が、ネットワーク31を介してこの更新された入境人数CAを他の防災照明装置10B,10Cに送信する(ステップS6)。
【0028】
同様に、通信部172は、ネットワーク30を介してこの更新された入境人数CAをサーバ20にも送信する(ステップS7)。このとき、停電などによりサーバ20に至るまでのネットワーク経路が断絶されていることも考えられるので、通信部172は、入境人数CAの送信に先立ってサーバ20が通信可能であるかをサーバ20に問い合わせ、サーバ20が通信可能であるときにのみサーバ20に入境人数CAを送信するようにしてもよい。
【0029】
また、防災照明装置10Bも防災照明装置10Aと同様に構成されており、アクセス領域SBを通って要避難領域Rに入った人の相対人数を表す入境人数CB(第2の入境人数)が防災照明装置10Bの通信部172から防災照明装置10A,10Cとサーバ20にそれぞれ送信される。さらに、防災照明装置10Cも防災照明装置10Aと同様に構成されており、アクセス領域SCを通って要避難領域Rに入った人の相対人数を表す入境人数CC(第2の入境人数)が防災照明装置10Cの通信部172から防災照明装置10A,10Bとサーバ20にそれぞれ送信される。
【0030】
防災照明装置10Aの通信部172の受信部は、これらの防災照明装置10B,10Cから送信される入境人数CB,CCを常時受信できるように構成されており、通信部172により受信された入境人数CB,CCは、上述した入境人数CAとともに記憶部171に格納されるようになっている。したがって、記憶部171には、常に最新の入境人数CA,CB,CCが格納されていることになる。
【0031】
図5は、サーバ20の機能的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、サーバ20は、ROMやRAM、フラッシュメモリ、ハードディスクなどを含む記憶部201と、ネットワーク30に接続するためのインタフェイスとして(第2の)送信部及び(第2の)受信部を備える通信部202と、ディスプレイやプリンタなどの出力部203と、サーバ20内の各構成要素の動作を制御する制御部204とを備えている。このようなサーバ20としては一般的なサーバコンピュータを用いることができる。
【0032】
サーバ20は、防災照明装置10A,10B,10Cから送信された入境人数CA,CB,CCを通信部202の受信部を介して受信し、この受信された入境人数CA,CB,CCに基づいて様々な情報(例えば後述する救助支援情報など)をディスプレイやプリンタなどの出力部203に出力することができる。
【0033】
図6は、
図2の防災照明装置において非常時を検出したときの処理を説明するフローチャートである。上述したように、非常時検出部173がセンサ信号やサーバ20や他の防災照明装置10B,10Cからの信号などにより非常時を検出すると(ステップS11)、救助支援情報生成部177が、記憶部171に格納されている入境人数C
A,C
B,C
Cを取得し、これらの入境人数C
A,C
B,C
Cに基づいて救助支援情報を生成する(ステップS12)。
【0034】
本実施形態では、救助支援情報生成部177は、要避難領域Rに残っていると思われる人の総数(残留総人数)を示す情報を救助支援情報として生成する。アクセス領域SA,SB,SCのいずれかを通って要避難領域Rに入りそのまま要避難領域Rに残っていると思われる人の総数はCA+CB+CCで表すことができる。したがって、本実施形態では、救助支援情報生成部177は、取得した入境人数CA,CB,CCを合計することにより残留総人数を算出し、この残留総人数を示す情報を救助支援情報として生成する。
【0035】
例えば、アクセス領域SAを通って要避難領域Rに入った人が9人、アクセス領域SAを通って要避難領域Rから退出した人が10人、アクセス領域SBを通って要避難領域Rに入った人が10人、アクセス領域SBを通って要避難領域Rから退出した人が8人、アクセス領域SCを通って要避難領域Rに入った人が10人、アクセス領域SCを通って要避難領域Rから退出した人が10人であった場合を考えると、CA=-1、CB=2、CC=0となり、CA+CB+CC=1であるから残留総人数は1人ということになる。したがって、この場合には、救助支援情報生成部177は、残留総人数が1人であることを示す情報を救助支援情報として生成する。
【0036】
そして、表示部14がこの救助支援情報生成部177により生成された救助支援情報(残留総人数)を表示する(ステップS13)。例えば、表示部14は、残留総人数を数値で表示してもよく、あるいは点光源の点滅回数により残留総人数を表示してもよい。また、この表示部14における表示に加えて、あるいは表示部14における表示に代えて、救助支援情報生成部177により生成された救助支援情報(残留総人数)をスピーカ15から音声で(例えば数値を読み上げるなどして)出力してもよい。
【0037】
このように、本実施形態の防災照明装置10によれば、非常時に停電となった場合においても、光源16の発光によりパネル12が照明されるため、要避難領域Rからの避難を誘導可能な防災照明を提供することができる。また、停電により他のネットワーク機器の電源がオフになったとしても、要避難領域Rからの救助を支援するための救助支援情報を表示部14及び/又はスピーカ15から出力することができるため、外部からの救助者が要避難領域Rに残された被救助者を迅速かつ効率的に救助(探索)することが可能となる。本実施形態では、表示部14及び/又はスピーカ15から救助支援情報として要避難領域Rに残っていると思われる人の総数を示す情報が出力されるため、救助者は救助すべき人の総数を即座に知ることができる。このため、要避難領域Rに残された人をより効率的に救助することが可能となる。また、建物内に複数の要避難領域が存在する場合には、それぞれの要避難領域に残された人の数によって要避難領域ごとに探索の優先順位を付けることができ、より多くの人を救助することが可能となる。また、通常時は、防災照明装置10のカメラ13を監視カメラや防犯カメラとしても利用することが可能である。
【0038】
本実施形態における救助支援情報生成部177は、救助支援情報としてCA+CB+CCから導かれる残留総人数を示す情報を生成しているが、救助支援情報生成部177において生成される救助支援情報はこれに限られるものではない。例えば、防災照明装置10Aの救助支援情報生成部177が救助支援情報としてCAを示す情報を生成し、防災照明装置10Bの救助支援情報生成部177が救助支援情報としてCBを示す情報を生成し、防災照明装置10Cの救助支援情報生成部177が救助支援情報としてCCを示す情報を生成してもよい。この場合、それぞれの防災照明装置10においては要避難領域Rに残っていると思われる人の総数を知ることはできないが、それぞれのアクセス領域Sを通って出入りした人の相対人数を把握することができるので、どのアクセス領域Sの近傍をより重点的に探索するかアクセス領域Sごとに優先順位を付けることができる。
【0039】
上述の例では、防災照明装置10とサーバ20とを接続するネットワーク30と、防災照明装置10同士を接続するネットワーク31とが別個に構成されているが、ネットワーク30と31とを同一のネットワークとしてもよい。また、これらのネットワーク30,31に例えば携帯端末や防犯又は防災用のネットワークをパスワード保護下で接続できるようにしておいてもよい。
【0040】
本実施形態における救助支援システム1は、3つの防災照明装置10を含んでいるが、救助支援システム1に含まれる防災照明装置10の数は、2つ以下であってもよいし、4つ以上であってもよい。また、救助支援システム1に含まれる複数の防災照明装置10のうち1つをノードサーバ(ホスト)として機能させてもよい。この場合には、管理者は、ネットワークを通じてノードサーバとして機能している防災照明装置10にアクセスすることで、要避難領域R内の状況を適切に把握することができる。
【0041】
また、本発明に係る「防災照明装置」には、避難口や避難方向を指示する誘導灯及び救助作業時の照明としての非常灯も含まれる。さらに、この誘導灯には、避難口を指示する「避難口誘導灯」と避難方向を指示する「通路誘導灯」が含まれる。
【0042】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0043】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明を提供するとともに、要避難領域からの救助を支援する情報を救助者に迅速に提供することできる防災照明装置が提供される。この防災照明装置は、建物内の要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明装置である。上記防災照明装置は、少なくとも1つの非常用電池と、上記少なくとも1つの非常用電池により発光可能な光源と、上記少なくとも1つの非常用電池により動作可能な監視部とを備える。上記監視部は、上記要避難領域にアクセスするための第1のアクセス領域を撮影するカメラと、上記カメラにより撮影された画像に対して画像認識処理を行うことによって上記第1のアクセス領域を通過する人を検出可能な画像解析部と、記憶部と、上記画像解析部によって検出された上記人の数に基づいて上記第1のアクセス領域を通って上記要避難領域に入った人の相対人数を表す第1の入境人数を上記記憶部に記録する入境人数記録部と、上記記憶部に記録されている上記第1の入境人数に基づいて上記要避難領域からの救助を支援するための救助支援情報を生成する救助支援情報生成部と、上記救助支援情報生成部により生成された上記救助支援情報を外部に出力する出力部とを含む。
【0044】
このような構成により、非常時に停電となった場合においても、光源の発光により要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明を提供するとともに、要避難領域からの救助を支援するための情報を出力部から外部に出力することができるため、外部からの救助者が要避難領域に残された人を迅速かつ効率的に救助することが可能となる。
【0045】
上記救助支援情報として、上記第1の入境人数を示す情報を用いてもよい。
【0046】
上記監視部は、上記第1のアクセス領域とは異なる第2のアクセス領域を通って上記要避難領域に入った人の相対人数を表す第2の入境人数を受信可能な第1の受信部をさらに含んでいてもよい。また、上記監視部の上記救助支援情報生成部は、上記記憶部に記録されている上記第1の入境人数と上記第1の受信部により受信した上記第2の入境人数との合計に基づいて、上記救助支援情報として前記要避難領域に残っていると思われる人の総数を示す情報を生成してもよい。この場合には、外部からの救助者は、要避難領域に残っていると思われる人の総数を即座に知ることができるので、要避難領域に残された人をより効率的に救助することが可能となる。
【0047】
上記監視部は、上記要避難領域とは異なる領域に設けられたサーバに、上記カメラにより撮影された画像と上記記憶部に記憶されている上記第1の入境人数とを送信可能な第1の送信部をさらに含んでいてもよい。この場合には、要避難領域とは離れた場所でカメラにより撮影された画像と第1の入境人数が得られるため、より効率的に救助の計画を立てることが可能となる。
【0048】
本発明の第2の態様によれば、要避難領域からの避難を誘導可能な防災照明を提供するとともに、要避難領域からの救助を支援する情報を救助者に迅速に提供することできる救助支援システムが提供される。この救助支援システムは、上述した防災照明装置を少なくとも1つと、上記防災照明装置の上記第1の送信部から送信された上記画像及び上記第1の入境人数を受信可能な第2の受信部と、上記第2の受信部により受信された上記画像及び上記第1の入境人数に基づく情報を出力可能な出力部とを含むサーバとを備える。
【符号の説明】
【0049】
1 救助支援システム
10,10A,10B,10C 防災照明装置
11 筐体
12 パネル
13 カメラ
14 表示部
15 スピーカ
16 光源
17 監視部
18 第1の内部電池
19 第2の内部電池
20 サーバ
30,31 ネットワーク
40 開口
50 メモリスロット
90 壁
171 記憶部
172 通信部
173 非常時検出部
174 制御部
175 画像解析部
176 入境人数記録部
177 救助支援情報生成部
R 要避難領域
S,SA,SB,SC アクセス領域