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特許7592498反射データ処理装置、反射データ処理方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】反射データ処理装置、反射データ処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/04 20200101AFI20241125BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20241125BHJP
【FI】
G01S17/04
G01S17/89
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021004265
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2021113807
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020005398
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520001073
【氏名又は名称】パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹村 到
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002776(WO,A1)
【文献】特開2018-115981(JP,A)
【文献】特開2014-174101(JP,A)
【文献】特開2007-121158(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0106615(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波の反射波を受信する受信部から前記電磁波の反射点までの基準距離及び前記反射点による前記反射波の強度である基準強度の少なくとも一方を、前記電磁波の照射方向別に示す基準データを取得する基準データ取得部と、
前記受信部から前記反射点までの距離及び前記反射波の強度の少なくとも一方を前記照射方向別に示す解析データを取得する解析データ取得部と、
前記基準データと前記解析データとの間で、距離又は強度の差が基準値以上となる前記照射方向を選択し、当該選択された前記照射方向を用いて対象物の存在を特定するための対象物データを生成するデータ処理部と、
を備え
前記データ処理部は、
前記解析データを処理することにより、それぞれが一つ以上の前記反射点を含む複数のセグメントを生成し、
前記差が基準値以上となる前記照射方向に対応する前記反射点からなる差分領域を特定し、
少なくとも2つの前記セグメントの間に前記差分領域の少なくとも一部が位置しており、かつ当該差分領域の少なくとも一部を介して前記少なくとも2つのセグメントが繋がっている場合、前記少なくとも2つのセグメントを同一の前記対象物とする反射データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の反射データ処理装置において、
前記解析データは、前記受信部が実際に受信した前記反射波を解析した結果である反射データ処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の反射データ処理装置において、
前記対象物データは、前記対象物の存在を示す表示データである反射データ処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の反射データ処理装置において、
前記表示データは前記反射点の3次元分布を示しており、
前記データ処理部は、前記選択した前記照射方向に対応する前記反射点を、他の前記反射点とは異なる態様で表示させる、反射データ処理装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の反射データ処理装置において、
前記データ処理部は、前記選択した前記照射方向を用いて、前記対象物の属性を推定する反射データ処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の反射データ処理装置において、
前記データ処理部は、前記属性の推定結果と、前記反射点の分布の大きさを用いて、前記対象物までの距離を推定する反射データ処理装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の反射データ処理装置において、
前記データ処理部は、前記差分領域の前記少なくとも一部も前記同一の対象物とする、反射データ処理装置。
【請求項8】
コンピュータが、
電磁波の反射波を受信する受信部から前記電磁波の反射点までの基準距離及び前記反射点による前記反射波の強度である基準強度の少なくとも一方を、前記電磁波の照射方向別に示す基準データを取得し、
前記受信部から前記反射点までの距離及び前記反射波の強度の少なくとも一方を前記照射方向別に示す解析データを取得し、
前記基準データと前記解析データとの間で、距離又は強度の差が基準値以上となる前記照射方向を選択し、当該選択された前記照射方向を用いて対象物の存在を特定するための対象物データを生成し、
さらに、
前記解析データを処理することにより、それぞれが一つ以上の前記反射点を含む複数のセグメントを生成し、
前記差が基準値以上となる前記照射方向に対応する前記反射点からなる差分領域を特定し、
少なくとも2つの前記セグメントの間に前記差分領域の少なくとも一部が位置しており、かつ当該差分領域の少なくとも一部を介して前記少なくとも2つのセグメントが繋がっている場合、前記少なくとも2つのセグメントを同一の前記対象物とする、反射データ処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
電磁波の反射波を受信する受信部から前記電磁波の反射点までの基準距離及び前記反射点による前記反射波の強度である基準強度の少なくとも一方を、前記電磁波の照射方向別に示す基準データを取得する機能と
前記受信部から前記反射点までの距離及び前記反射波の強度の少なくとも一方を前記照射方向別に示す解析データを取得する機能と、
前記基準データと前記解析データとの間で、距離又は強度の差が基準値以上となる前記照射方向を選択し、当該選択された前記照射方向を用いて対象物の存在を特定するための対象物データを生成する機能と、
を持たせ
前記対象物データを生成する機能は、
前記解析データを処理することにより、それぞれが一つ以上の前記反射点を含む複数のセグメントを生成し、
前記差が基準値以上となる前記照射方向に対応する前記反射点からなる差分領域を特定し、
少なくとも2つの前記セグメントの間に前記差分領域の少なくとも一部が位置しており、かつ当該差分領域の少なくとも一部を介して前記少なくとも2つのセグメントが繋がっている場合、前記少なくとも2つのセグメントを同一の前記対象物とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射データ処理装置、反射データ処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光などの電磁波を走査しながら照射し、この電磁波の反射波を解析することにより、物体や人などを検出することが行われている。この方法は、例えば特許文献1に記載されているように、車両の自動運転を支援するために用いられることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/152873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、上記した物体や人を検知する方法を、対象領域の警備に用いることが検討した。一方、対象領域にはあらかじめ様々な物体が設置されていることがある。しかし、電磁波を用いて検出したいのは、予め設置されている物体ではなく、一時的にその対象領域に入ってきた対象物である場合が多い。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、一時的に対象領域に入ってきた対象物を精度よく検出することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電磁波の反射波を受信する受信部から前記電磁波の反射点までの基準距離及び前記反射点による前記反射波の強度である基準強度の少なくとも一方を、前記電磁波の照射方向別に示す基準データを取得する基準データ取得部と、
前記受信部から前記反射点までの距離及び前記反射波の強度の少なくとも一方を前記照射方向別に示す解析データを取得する解析データ取得部と、
前記基準データと前記解析データとの間で、距離又は強度の差が基準値以上となる前記照射方向を選択し、当該選択された前記照射方向を用いて対象物の存在を特定するための対象物データを生成するデータ処理部と、
を備える反射データ処理装置である。
【0007】
請求項9に記載の発明は、コンピュータが、
電磁波の反射波を受信する受信部から前記電磁波の反射点までの基準距離及び前記反射点による前記反射波の強度である基準強度の少なくとも一方を、前記電磁波の照射方向別に示す基準データを取得し、
前記受信部から前記反射点までの距離及び前記反射波の強度の少なくとも一方を前記照射方向別に示す解析データを取得し、
前記基準データと前記解析データとの間で、距離又は強度の差が基準値以上となる前記照射方向を選択し、当該選択された前記照射方向を用いて選択方向データを生成する反射データ処理方法である。
【0008】
請求項10に記載の発明は、コンピュータに、
電磁波の反射波を受信する受信部から前記電磁波の反射点までの基準距離及び前記反射点による前記反射波の強度である基準強度の少なくとも一方を、前記電磁波の照射方向別に示す基準データを取得する機能と
前記受信部から前記反射点までの距離及び前記反射波の強度の少なくとも一方を前記照射方向別に示す解析データを取得する機能と、
前記基準データと前記解析データとの間で、距離又は強度の差が基準値以上となる前記照射方向を選択し、当該選択された前記照射方向を用いて選択方向データを生成する機能と、
を持たせるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る反射データ処理装置の使用環境を説明するための図である。
図2】反射データ処理装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】データ処理部が生成する表示データの一例を示す図である。
図4】反射データ処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
図5】反射データ生成装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態に係るデータ処理部の機能を説明するための図である。
図7】第2実施形態に係るデータ処理部の機能を説明するための図である。
図8】第2実施形態に係る反射データ生成装置が行う処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係る反射データ処理装置20の使用環境を説明するための図である。反射データ処理装置20は、反射データ生成装置10が生成した解析データを処理する装置である。
【0012】
反射データ生成装置10は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)であり、電磁波の照射部、受信部、および解析部を有している。照射部は、電磁波(例えば赤外線や近赤外線(例えば波長が905nm)を走査しながら照射する。ただし反射データ生成装置10がいわゆる3次元フラッシュLiDARであった場合、照射部は、電磁波を照射するときに走査しない。受信部は、照射部が照射した電磁波の反射波を受信する。解析部は、照射部による電磁波の照射方向及び照射タイミング、並びに受信部による反射波の受信タイミングを用いて、反射点の3次元分布を示すデータ(以下、解析データと記載)を生成する。この解析データは、反射データ生成装置10の受信部から反射点までの距離を、電磁波の照射方向別に示している。またこの解析データは、反射波の強度を電磁波の照射方向別に示すデータも含んでいる。
【0013】
本実施形態において、反射データ生成装置10は、静止物に固定されている。このため、反射データ生成装置10が電磁波を走査できる範囲は変化しない。このため、電磁波を走査する対象領域に変化が生じていない場合、照射部の出力を変化させない限り、反射点の3次元分布、および複数の反射点それぞれの反射波の強度は、いずれも変化しない。なお、本実施形態では、少なくとも照射方向が同じである場合、照射部の出力は変化しないとする。
【0014】
なお、反射データ生成装置10は、例えば設備の内部(例えば建物の内部)を、電磁波を走査する対象領域としている。この場合、反射データ生成装置10は、その設備の壁や天井に固定されている。そして反射データ生成装置10は、生成した解析データを反射データ処理装置20に出力する。
【0015】
なお、反射データ生成装置10は、照射部による電磁波の照射方向及び照射タイミング、並びに受信部による反射波の受信タイミングを示すデータを反射データ処理装置20に出力してもよい。この場合、反射データ処理装置20は、反射データ生成装置10から取得したデータを処理することにより、上記した解析データを生成する。なお、反射データ生成装置10が反射データ処理装置20に出力するデータは、反射波それぞれの強度を含んでいてもよい。
【0016】
反射データ生成装置10は、繰り返し電磁波を対象領域に照射する。そして反射データ生成装置10は、対象領域に電磁波を照射するたびに解析データを生成する。
【0017】
そして反射データ処理装置20は、詳細の後述するように、上記した解析データを処理することにより、対象領域に存在する対象物を検出する。
【0018】
図2は、反射データ処理装置20の機能構成の一例を示す図である。反射データ処理装置20は、基準データ取得部210、解析データ取得部220、およびデータ処理部230を有している。
【0019】
基準データ取得部210は基準データを取得する。上記したように、反射データ生成装置10は、静止物に固定されている。このため、電磁波を走査する対象領域に変化が生じておらず、かつ反射データ生成装置10の出力が変化していない場合、反射点の3次元分布、および複数の反射点それぞれの反射波の強度は、いずれも変化しない。基準データは、この変化が生じていない場合における反射点の3次元分布及び反射点別の基準強度を示している。言い換えると、基準データは、反射データ生成装置10(又は反射データ生成装置10が有する受信部)から電磁波の反射点までの基準距離又は基準強度を、電磁波の照射方向別に示している。
【0020】
本実施形態において、基準データは基準データ記憶部212に予め記憶されている。基準データ記憶部212は例えば反射データ処理装置20の一部である。基準データ記憶部212が記憶している基準データは、例えば反射データ生成装置10を静止物に固定した後に反射データ生成装置10を動作させることにより、生成される。ただし、基準データはシミュレーションによって生成されてもよい。また基準データ記憶部212が解析データを記憶している場合、基準データは、所定回数前に生成された解析データであってもよい。
【0021】
解析データ取得部220は、反射データ生成装置10から解析データを取得する。また解析データ取得部220は、必要に応じて解析データを基準データ記憶部212に記憶させる。
【0022】
データ処理部230は、基準データと解析データとの間で、強度又は距離の差が基準値以上となる照射方向を選択し、当該選択された照射方向を用いて対象物データを生成する。対象物データは、対象物の存在を特定するためのデータである。複数の照射方向のうち、基準データと解析データとの間で距離又は強度の差が基準値以上となる方向は、対象領域に存在していなかった対象物(例えば人などの動体)によって生成されている。このため、この照射方向を選択すると、対象物の存在を示すデータが生成される。そしてデータ処理部230は、この対象物の存在を示すデータを用いて、対象物の存在を特定するための対象物データ、例えば表示データを生成する。以下、対象物データが表示データであるとして説明を行う。そしてデータ処理部230は、この表示データを表示装置(例えば反射データ生成装置10が有している表示パネルやディスプレイ)に出力して表示させる。なお、データ処理部230は、強度及び距離の少なくとも一方において差が基準値以上となる反射点を選択してもよい。
【0023】
図3は、データ処理部230が生成する表示データの一例を示す図である。本図に示す例において、表示データは反射点の3次元分布を示している。そしてデータ処理部230は、選択した照射方向に対応する反射点を、他の反射点とは異なる態様で表示させる。ここで「異なる態様」の一例は、色、形状、および大きさの少なくとも一つを異ならせることである。そして異なる態様で表示された反射点の3次元分布は、当該反射点の要因となった対象物の3次元形状を示している。このため、反射データ生成装置10の利用者は、データ処理部230によって表示されたデータを見ることにより、対象物の3次元形状を認識することができる。
【0024】
例えば、対象領域に、電磁波の反射率が低い服を着用した人が入ってきたとする。この場合、解析データのうちその人に対応する反射点の反射強度は弱くなる。このような場合は、この強度が弱くなった反射点の表示態様が他の反射点の表示態様と異なるため、この人の存在は視認可能になる。
【0025】
また、一部の照射方向においてほとんど反射波を検出できない場合もある。一例として、対象領域に、電磁波の反射率がさらに低い服を着用した人が入ってきたとする。この場合、解析データのうちその人に対応する照射方向については反射点のデータが得られない。このような場合、一例として、データ処理部230は、反射点を得られなかった照射方向の2次元分布を出力する。他の例として、データ処理部230は、基準データを表示させるが、基準データに含まれる反射点のうち、反射波がほとんど得られなかった照射方向に対応する点の表示態様を変える。これらのようにすると、対象領域に人が入ってきたことが視認可能になる。
【0026】
なお、データ処理部230は、選択した照射方向に対応する反射点の3次元分布を加工したデータを、表示データとしてもよい。例えばデータ処理部230は、選択した反射点の3次元分布を用いて対象物の形状を推定し、その形状を示す図を、反射点の3次元分布とともに/又はその代わりに表示させてもよい。
【0027】
また、データ処理部230は、マウスやタッチパネルなどの入力デバイスを介してユーザが反射点を選択した場合、反射データ生成装置10が生成した、当該反射点までの距離を表示させてもよい。
【0028】
また、データ処理部230は、選択した照射方向、すなわち基準データと解析データとの間で強度又は距離の差が基準値以上となる照射方向の2次元分布用いて、当該反射点の要因となった対象物の属性(例えば「人」などの種類)を推定してもよい。例えばデータ処理部230は、予め属性別に2次元分布のテンプレートを記憶しておく。そしてデータ処理部230は、選択した照射方向の2次元分布に最も外形が似ている(大きさは異なっていてもよい)テンプレートを選択し、当該テンプレートに対応する属性を、推定結果として出力する。
【0029】
この際、データ処理部230は、属性の推定結果と、異なる態様で表示された2次元分布の大きさを用いて、対象物までの距離を推定してもよい。例えばデータ処理部230は、上記した2次元分布のテンプレートに、基準距離を紐づけておく。そしてデータ処理部230は、この基準距離に、選択したテンプレートと異なる態様で表示された反射点の2次元分布との面積比に応じた係数を乗じることにより、対象物までの距離を算出する。
【0030】
なお、データ処理部230は、異なる態様で表示された反射点の3次元分布を用いて、当該反射点の要因となった対象物の属性(例えば種類)を推定してもよい。例えばデータ処理部230は、予め属性別に3次元分布のテンプレートを記憶しておく。そしてデータ処理部230は、異なる態様で表示された反射点の3次元分布に最も外形が似ている(大きさは異なっていてもよい)テンプレートを選択し、当該テンプレートに対応する属性を、推定結果として出力する。
【0031】
なお、対象物が人である場合、その人が着用している衣服によっては、その人の一部(例えば電磁波の反射率が低い服に覆われている部分)のみ、反射点の強度が弱くなることがあり得る。言い換えると、一人の人について、反射点を確認できる部分(ただし反射波の強度は基準データから変化するはずである)と確認できない部分が混在することもあり得る。この場合においても、データ処理部230は、「基準データと解析データとの間で強度又は距離の差が基準値以上となる照射方向を選択する」という処理を行うため、反射点を確認できる部分と確認できない部分の双方を一緒に選択することになる。したがって、反射点の3次元分布(すなわち人体のうち反射点が得られた部分の分布)と、反射点を得られなかった照射方向の2次元分布(すなわち人体のうち反射点が得られなかった部分の分布)の組み合わせを用いて、その人物を認識することができる。
【0032】
例えば、人が黒いジャケットを着ている場合を考える。この場合、上半身は黒いジャケットで覆われているため、上半身に対応する反射点が得られない。本実施形態によれば、この部分は、反射波が得られなかった照射方向の2次元分布によって示される。このため、頭と脚と思われる点群の間に、何もないのではなく、物体が存在している可能性があると判断できる。このため、対象物の検出精度は向上する。
【0033】
図4は、反射データ処理装置20のハードウェア構成例を示す図である。反射データ処理装置20は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060を有する。
【0034】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、及びネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0035】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0036】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0037】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040は反射データ処理装置20の各機能(例えば基準データ取得部210、解析データ取得部220、およびデータ処理部230)を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。また、ストレージデバイス1040は基準データ記憶部212としても機能する。
【0038】
入出力インタフェース1050は、反射データ処理装置20と各種入出力機器(例えば反射データ生成装置10)とを接続するためのインタフェースである。
【0039】
ネットワークインタフェース1060は、反射データ処理装置20をネットワークに接続するためのインタフェースである。このネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060がネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。なお、反射データ処理装置20は、ネットワークインタフェース1060を介して反射データ生成装置10と接続してもよい。
【0040】
図5は、反射データ生成装置10が行う処理の一例を示すフローチャートである。本図に示す例において、基準データは基準データ記憶部212に予め記憶されている。
【0041】
まず反射データ生成装置10の基準データ取得部210は、基準データ記憶部212から基準データを読み出す(ステップS10)。そして反射データ生成装置10は、ステップS20~ステップS40に示す処理を繰り返す。
【0042】
反射データ生成装置10の解析データ取得部220は、反射データ生成装置10から解析データを取得する(ステップS20)。次いでデータ処理部230は、解析データに含まれる複数の反射点のうち、基準データと解析データとの間で距離又は強度の差が基準値以上となる点を選択し(ステップS30)、選択した点を用いて表示データを生成する(ステップS40)。表示データの生成方法は、図2を用いて説明した通りである。
【0043】
以上、本実施形態によれば、反射データ処理装置20は、反射データ生成装置10が生成した解析データに含まれる複数の反射点のうち、基準データと解析データとの間で距離又は強度の差が基準値以上となる点を選択し(ステップS30)、選択した点を用いて表示データを生成する。このため、一時的に対象領域に入ってきた対象物を精度よく検出できる。
【0044】
例えば対象物の表面状態が、電磁波の反射率が低い状態、例えば人が黒い服を着ている場合がある。この場合、対象物が存在する方向における電磁波の反射率は、基準データよりも低くなる。反射データ生成装置10によれば、このような場合においても対象物を検出することができる。
【0045】
(第2実施形態)
本実施形態に係る反射データ処理装置20は、以下の点を除いて第1実施形態に係る反射データ生成装置10と同様の構成である。
【0046】
まず、データ処理部230は、解析データを処理することにより、複数のセグメントを生成する。これら複数のセグメントは、それぞれが一つ以上(多くの場合は複数)の前記反射点を含んでいる。そして一つのセグメントは、同一の物体と推定される領域を示している。
【0047】
同一のセグメントに分類される反射点は、例えば以下の要件のすべてを満たしている。
(1)反射データ生成装置10からの距離が互いに近いこと
(2)電磁波の反射率が互いに近いこと
(3)反射データ生成装置10の走査順において互いに隣り合っていること
【0048】
そしてデータ処理部230は、反射データ生成装置10が生成した解析データに含まれる複数の反射点のうち、基準データと解析データとの間で距離又は強度の差が基準値以上となる点を選択し、これらの点からなる差分領域を特定する。
【0049】
この差分領域の一例を、図6及び図7を用いて説明する。
【0050】
反射データ生成装置10は、例えば図6(A)のような場面(すなわち車両などの移動体が存在しない場面)を測定する。これにより、基準データが生成される。そして図6(A)と同じ場所における測定結果と、上記した基準データとの差をとることにより、差分データ(差分領域)が生成される。例えば図6(B)に示すように、測定タイミングにおいて車両が走行していた場合、この車両が存在している領域が、差分領域となる。
【0051】
図7は、差分領域の一例を示す図である。図7において、差分領域は、黒以外の色(図7に示す例においては明るいグレー)で示されている。なお、図7において、暗いグレーで示されている部分(領域(d))は、差分領域ではない。また、差分領域には、例えば以下の領域が含まれている。データ処理部230は、これらのうち少なくとも(b)に相当する領域を、他の領域と区別して管理していてもよい。
差分領域(a):解析データ及び基準データの双方において距離が測定されたが、これらの距離が基準値以上異なっていた部分(例えば図7において白抜きで示された領域の一部)
差分領域(b):基準データでは距離が測定されたが解析データでは距離が測定さなかった部分(例えば図7において白及び黒以外(例えば明るいグレー)で示された部分)
差分領域(c):基準データでは距離が測定されなかったが解析データでは距離が測定された部分(例えば図7において白抜きで示された領域の一部)
【0052】
なお、これらの例において、距離を反射強度に置き換えてもよい。この場合、上記(a)~(c)は、以下のようになる。
(a)解析データ及び基準データの双方において反射波が測定されたが、これら反射波の強度が基準値以上異なっていた部分(例えば図7において白抜きで示された領域の一部)
(b´)基準データでは反射波が測定されたが、解析データでは反射波が測定さなかった部分(例えば図7において白及び黒以外で示された部分)
(c´)基準データでは反射波が測定されなかったが解析データでは反射波が測定された部分(例えば図7において白抜きで示された領域の一部)
【0053】
一方、差分領域が生成される原因となった対象物(例えば図6(B)に示した車両)は、反射率が低い部位(以下、低反射部位と記載)を有していることがある。この場合、反射データ生成装置10は低反射部位までの距離を検出できない。このため、反射データ処理装置20は、解析データを処理することのみでは低反射部位の存在を検出できず、その結果、反射率が高い2つの部位の間に低反射部位が存在していた場合、これら2つの部位を互いに異なるセグメントに分離してしまう。
【0054】
例えば、車両は、ガラス製の窓、塗料によって被覆された車体、ゴムからなるタイヤ、及び金属が表面に出ているホイールを有している。ここで塗料の反射率が低い場合(例えば黒色の塗料)、反射データ生成装置10は、車体の存在を検出できない。このため、例えば図7に示す例では、反射データ処理装置20は、車両が有する複数のホイールを、互いに異なる物体と認識することがある。
【0055】
これに対して本実施形態において、データ処理部230は、少なくとも2つのセグメント(例えば図7の第1のセグメント及び第2のセグメント)の間に差分領域の少なくとも一部(上記した低反射部位に相当しており、例えば差分領域のうち上記(b)又は(b´)に相当する部分)が位置しており、かつ当該差分領域の少なくとも一部を介して上記した少なくとも2つのセグメントが繋がっている場合、上記した少なくとも2つのセグメントを同一の対象物とする。上記した車両の例では、それぞれが互いに異なるホイールに相当する2つのセグメントの間には、差分領域のうち車体に相当する部分が存在している。そこで、データ処理部230は、これら2つのセグメントを同一の車両の一部であると判断する。
【0056】
また本実施形態において、データ処理部230は、差分領域のうち、少なくとも同一の対象物に含まれると判断された複数のセグメントの間に位置している部分を、これら複数のセグメントと同一の対象物に含まれると判断する。この際、データ処理部230は、差分領域のうち、上記した複数のセグメントの間に位置している部分とつながっている部分の全体(例えば上記(b)に相当する領域のうち、複数のセグメントの間に位置している領域及びこの領域とつながっている領域の全体)を、複数のセグメントと同一の対象物に含まれると判断するのが好ましい。図7に示した例では、それぞれが互いに異なるホイールに相当する2つのセグメントの間には、差分領域のうち車体に相当する部分が存在している。データ処理部230は、差分領域のうち車体に相当する部分を、ホイールに相当する2つのセグメントと同一の対象物(車両)に含まれていると判断する。
【0057】
なお、複数のセグメントが同一の対象物に属しているか否かの基準(すなわちどの程度差分領域と接している必要があるか)は、対象物の種類によって異なる。そこでデータ処理部230は、同一の対象物を構成すると推定されるセグメント及び差分領域を結合した後の外形(例えば図7において、差分領域のうち車体と推定される部分とホイールと推定される部分をつなげた後の外形)を用いると、対象物の種類(例えば車両であるか、人物であるか)を推定できる。そしてデータ処理部230は、対象物の種類別に上記した基準を記憶しておき、この推定結果を用いて、用いるべき基準を選択してもよい。
【0058】
図8は、本実施形態に係る反射データ生成装置10が行う処理の一例を示すフローチャートである。まず反射データ生成装置10の基準データ取得部210は、第1実施形態と同様に、基準データ記憶部212から基準データを読み出す(ステップS10)。そして反射データ生成装置10は、ステップS20~ステップS40に示す処理を繰り返す。
【0059】
反射データ生成装置10の解析データ取得部220は、反射データ生成装置10から解析データを取得する(ステップS20)。次いでデータ処理部230は、この解析データを処理することにより、少なくとも一つのセグメントを生成する(ステップS22)。次いでデータ処理部230は、解析データに含まれる複数の反射点のうち、基準データと解析データとの間で距離又は強度の差が基準値以上となる点を選択する(ステップS30)。次いでデータ処理部230は、少なくとも2つのセグメントの間に差分領域の少なくとも一部が位置しており、かつ当該差分領域の少なくとも一部を介して上記した少なくとも2つのセグメントが繋がっている場合、これら少なくとも2つのセグメントを同一の対象物とする(ステップS32)。そしてデータ処理部230は、対象物を認識させるための表示データを生成する(ステップS40)。この際、同一の対象物に属するセグメントが複数存在していた場合、これら複数のセグメントが同一の対象物であることがわかるように、表示データを生成する。例えばデータ処理部230は、同一の対象物であることを示すマークを各セグメントに付してもよいし、同一の対象物であると推定された領域を線で囲んでもよい。
【0060】
以上、本実施形態によっても、一時的に対象領域に入ってきた対象物を精度よく検出できる。また、反射データ生成装置10は、一つの対象物の中に反射率が低い部位が存在していた場合であっても、この一つの対象物を精度よく検出できる。
【0061】
以上、図面を参照して実施形態及び実施例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0062】
10 反射データ生成装置
20 反射データ処理装置
210 基準データ取得部
220 解析データ取得部
230 データ処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8