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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】納棺ベッド
(51)【国際特許分類】
   A61G 17/04 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
A61G17/04 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021024050
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022103001
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2020216973
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593154403
【氏名又は名称】株式会社富中産業
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【弁理士】
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】中田 ▲しょう▼作
(72)【発明者】
【氏名】中田 直義
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04253206(US,A)
【文献】特開2005-296174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0047700(US,A1)
【文献】特開平02-016256(JP,A)
【文献】中国実用新案第207950110(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0050701(US,A1)
【文献】特開平07-231918(JP,A)
【文献】実開昭54-141000(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棺内に安置される遺体の頭上から棺中央に向かって下降する傾斜面を有する段ボール材質の上部傾斜部材と、
当該上部傾斜部材の傾斜面下端と同じ高さで傾斜のない方形平表面を有する所定厚さの段ボール材質の下部平坦部材と、を有し、
上部傾斜部材は、内部に傾斜を維持しつつ載置される遺体の重さを支える芯材を配置し、左右の側面にはドライアイス収納前には開口に即した破線状の切り込みを入れ、ドライアイス収納の際には適宜切り抜いて使用するドライアイス収納域開口部を有することを特徴とする納棺ベッド。
【請求項2】
上部傾斜部材の上端が、遺体の顔のみが平らに配置される所定長さの棺床と平行な平坦構造であることを特徴とする請求項1記載の納棺ベッド。
【請求項3】
上部傾斜部材及び/又は下部平坦部材が、棺サイズに適合した遺体安置姿が自然となる分割又は三分割構造であることを特徴とする請求項1又は2に記載の納棺ベッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、納棺の際に遺体の下に配置される傾斜納棺ベッド及び傾斜内底を有する棺に関する。
【背景技術】
【0002】
納棺に際し遺体を棺内に安置する場合には、棺に直接遺体を収容するのではなく、一定の装束を着せ、棺の底板の上に所定に敷物、例えば、畳表を有する納棺用畳を敷いて,その上に遺体を安置することが行われる。
【0003】
この種の納棺用敷物については、本願出願人は,既に、実開平7-15029号公報及び実用新案登録第3229322号公報に開示のものを提案している。実開平7-15029号公報の開示は、考案名称「納棺用敷物」に係り、「納棺された遺体から滲出する水分(悪液)、生花、ドライアイスなどの納棺用具から滲出する水分(悪液)を吸収し、該水分が床の畳、床板などを汚染することを防止する有益な納棺用敷物の提供、遺体、棺、納棺用具などと共に完全燃焼する燃えやすい納棺用敷物の提供」を目的として(同公報明細書段落番号)0005参照)、「易燃性かつ吸湿性の芯材の少なくとも遺体安置部位側表面を易燃性で吸湿性の包被部材で包被した敷物体で構成」すること等によって(同公報実用新案登録請求の範囲請求項1の記載等参照)、「遺体から滲出する水分(悪液)、納棺用品から滲出する水分(悪液)が敷物体に吸収され、棺から床へ滲出しない。水分(悪液)で畳、床板などが汚染されることを防止できると共に、床の汚染防止のために防水シートを敷くという手間を省ける。」等々の効果を奏するものであり(同公報明細書段落番号0035~0040参照)、また、実用新案登録第3229322号公報の開示は、考案名称「リバーシブル納棺用敷物」に係り、「和風装束にも洋風装束にもマッチする(適合する)一面が畳表を使用する敷物で、他面が絵柄模様等が施された面を有する、リバーシブル納棺用敷物を提供する」ことを目的とする考案解決課題において(同公報明細書段落番号0006参照)、「上端部材及び下端部材の芯材の表側に上端部材及び下端部材を連結接合する両端に畳縁が縫合されたい草畳表面と、上端部材及び下端部材の各芯材の裏側に接合され、洋風装束に適合する図柄模様が描かれた裏面材と、を有し、上端部材及び下端部材が表側のい草畳表面の中央で表側に二つ折りされることを特徴とする」構成とすることにより(同公報)実用新案登録請求の範囲請求項1の記載等参照)、「納棺において、ご遺体の和風装束にも洋風装束にも適宜適応することができる」との効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0008参照)。
【0004】
図5は、実用新案登録第3229322号公報に図5として添付されるい草畳表面部2を上にして開示考案の実施例1に係るリバーシブル納棺用敷物1を配置した和風装束納棺の例を示した概略図であり、符号101は、実用新案登録第3229322号公報の開示考案の実施例1に係るリバーシブル納棺用敷物、102は、い草畳表面、108は、棺、109は、白布、110は、棺蓋である(なお、符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)
【0005】
図5に示すい草畳表を使用する納棺用敷物には、一般住宅用の天然い草の畳表を使用し、かつ、畳縁としては、幅42mmの白地の綾に雲形や菊花などの紋を黒く織り出した織物からなる高麗縁が使用され、い草畳表面部2と畳縁3は畳縁3の両端をミシン縫いで縫合するなどされている。
【0006】
ところが、納棺の際の遺体の装束については、近年、和風装束よりも洋装装束、すなわち、男性にあっては簡易モーニング姿,女性にあっては、ワンピース姿やスーツ姿の装束を希望する遺族が多く、畳表使用の納棺敷物ではない他の納棺敷物の要求がある。
また、洋装装束に限らず、最後のお別れには、より近くで遺体の顔と対面したいという要望もあり、遺体の顔が覗き窓近くになるように安置して欲しい等の要望がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平7-15029号公報
【文献】実用新案登録第3229322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記要望に応えるために案出したものであり、棺蓋の覗き窓近くに遺体の顔が位置することができる傾斜納棺ベッド及び傾斜内底を有する棺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、納棺ベッドにおいて、棺内に安置される遺体の頭上から棺中央に向かって下降する傾斜面を有する段ボール材質の上部傾斜部材と、当該上部傾斜部材の傾斜面下端と同じ高さで傾斜のない方形平表面を有する所定厚さの段ボール材質の下部平坦部材と、を有し、上部傾斜部材は、内部に傾斜を維持しつつ載置される遺体の重さを支える芯材を配置し、左右の側面にはドライアイス収納前には開口に即した破線状の切り込みを入れ、ドライアイス収納の際には適宜切り抜いて使用するドライアイス収納域開口部を有することを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の納棺ベッドにおいて、上部傾斜部材の上端が、遺体の顔のみが平らに配置される所定長さの棺床と平行な平坦構造であることを特徴とする。
さらに、本願請求項に係る発明は、前記請求項1又は2に記載の納棺ベッドにおいて、上部傾斜部材及び/又は下部平坦部材が、棺サイズに適合した遺体安置姿が自然となる分割又は三分割構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
遺体を安置した際には、遺体の顔がより高く位置され、棺蓋の覗き窓近くでの対面位置となり、遺族を含む会葬者は、覗き窓の近くに顔を見て最後のお別れをすることができる。
また、本願発明に係る納棺ベッドにおいては、軽量かつ丈夫等取り扱いに便宜な段ボール材質としたので、ドライアイスを使用する等の遺体安置には丈夫軽量で作業性が良く、かつ、焼却においても不完全燃焼や有毒ガスが生じることがない優れた納棺ベッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係る納棺ベッドを実施するための納棺ベッドの実施例1の概略を示す図である。
図2図2は、本実施例1に係る納棺ベッド1を棺内に収容する状態を示す概略図である。
図3図3は、実施例4に係る納棺ベッドの概略を示す図である。
図4図4は、棺自体の内底部が所定の傾斜を有し、棺内に遺体を安置した場合に遺体の顔が覗き窓近くに位置する棺形状の概略を示す図である。
図5図5は、実用新案登録第3229322号公報に図5として添付される開示考案の実施例1に係るリバーシブル納棺用敷物1を配置した和風装束納棺の例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る納棺ベッドを実施するための一実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明に係る納棺ベッドを実施するための納棺ベッドの実施例1の概略を示す図であり、符号1は、本実施例1に係る納棺ベッド、2は、本実施例1に係る納棺ベッド1の上部傾斜部材、3は、同下部平坦部材、4は、納棺ベッド1の上部傾斜部材2の傾斜面、5は、納棺ベッド1の下部平坦部材3の方形平表面である。
【0014】
図1から明らかなように、本実施例1に係る納棺ベッドは、上部傾斜部材2及び下部平坦部材3の2つの部材2、3で構成され、遺体の納棺に際し、棺に安置される遺体の顔が棺の覗き窓近くに位置するように、前記上部傾斜部材2を遺体の頭上から棺中央に向かって下降するように配置され、かつ、上部傾斜部材2の傾斜面下端と同じ高さの方形平表面を有する前記下部平坦部材3が並置される。
【0015】
図2は、本実施例1に係る納棺ベッド1を棺内に収容する状態を示す概略図である。図2において、符号1は、本実施例1に係る納棺ベッド、2は、棺の覗き窓下に配置する上部傾斜部材、3は、上部傾斜部材2に並置される所定厚さの下部平坦部材、4は、上部傾斜部材2の傾斜面、5は、下部平坦部材3の方形平表面、6は、棺、7は、棺蓋、8は、覗き窓、9は、白布である。
【0016】
図2から明らかなように、納棺において棺底に設置される傾斜面4を有する上部2及び長方形面5を有する下部3を棺6内に並置する納棺ベッド1であり。このため、標準サイズの棺6の内のり寸法に合わせた、例えば、上部傾斜部材2は、長さ870mm、幅450mm、最大高さ100mm、最小高さ15mmの傾斜面4を有し、また、下部平坦部材3は、長さ870mm、幅450mm、高さ15mmの方形平表面5を有する。したがって、その上部傾斜部材2の傾斜角は約5.58度の傾斜面4を有する。
【0017】
なお、本実施例1に係る納棺ベッド1においては、上部傾斜部材2の傾斜角を5.58度としたが、これは、傾斜角5.58度に限るものではなく、遺体の顔が覗き窓8近くに位置する配置となる適宜の傾斜角であっても良く、また、遺体の顔のみが平らに配置され、遺体は自然に傾斜されるように上端が所定長さ(例えば、上端から200mm程度)棺床と平行な平坦構造などであっても良い。
【0018】
なお、本実施例1に係る上部傾斜部材2及び下部平坦部材3については、標準サイズの棺サイズに適合させるため上記サイズとし、二分割構造としたが、上記サイズや二分割に限定されるものではなく、棺サイズに適合し、遺体安置姿が自然となるサイズや分割構造であれば、上記サイズや二分割構造に限らない。
このように、上部傾斜部材2及び下部平坦部材3を棺6内に並置し、上部傾斜部材2の上端の最大高さと下端の最低高さとの間に傾斜面4を設けたので、棺6内に遺体を安置した際には、遺体の顔が棺蓋7の覗き窓8近くの位置となり、遺族を含む会葬者は、覗き窓8の近くで最後のお別れをすることができることとなる。
【0019】
なお、本実施例1に係る納棺ベッド1の上部傾斜部材2及び下部平坦部材3は、芯材としては約15mmの段ボール表面に紙、布等が貼付された形状ないし構造としたが、軽量かつ丈夫等取り扱いに便宜な材質であれば、芯材及び表面材の材質を問わない。また、表面材には、花柄模様、宇宙柄模様などが描かれても良い。
【実施例2】
【0020】
また、本実施例1に係る納棺ベッド1にあっては、傾斜面4を有する上部傾斜部材2と下部平坦部材3について持ち運びの便宜等を考慮してセットとして扱うため分離構造としたものであるが、分離構造に限定されるものではなく、棺の全長に渡って傾斜角を有する1740mm長としてもよく、また、持ち運びの便宜から途中で折りたためる構造として、適宜二つ折り又は三つ折り構造としても良い。
【実施例3】
【0021】
上述してきた実施例1及び実施例2に係る納棺ベッド1は、その上面の全部又は一部を傾斜面とする構造であるが、安置するご遺体の顔が覗き窓8近くに位置するものであれば、必ずしも全長を傾斜構造とする必要はない。そこで、遺体の顔が位置する部分の上面のみが傾斜構造ではなく、棺の床の全面に渡りを覗き窓8近くまで高くする、いわば、底上げ式(高床式)納棺ベッドとしても良い。すなわち、実施例3に係る納棺ベッドは、いわば、方形平表面を有する下部平坦部材の高さを安置された遺体の顔が覗き窓近くに位置する高さ(例えば、100mm)まで、その高さで棺の床全面を覆うようにしたものである。
【実施例4】
【0022】
次に、上述した実施例1に係る納棺ベッドの変形例たる実施例4に係る納棺ベッドついて説明する。
図3は、実施例4に係る納棺ベッドの概略を示す図であり、符号2aは、実施例4に係る納棺ベッドの上部傾斜部材、2a1,2a2は、当該上部傾斜部材2の右側面に配置されるドライアイス収納域、2a3,2a4は、同左側面に配置されるドライアイス収納域、2b、2cは、当該上部傾斜部材2の内部で傾斜を維持しつつ裁置される遺体の重さを支える芯材、4は、傾斜面である。
【0023】
図3に示すように、本実施例4に係る納棺ベッドの上部傾斜部材2は、傾斜面4の下方に左右の側面に四つのドライアイス収納域2a1~2a4を配置し、この中に固形のドライアイスを収納できるようにしたものである。ドライアイス収納域2a1~2a4の数は、左右前後の四つに限るものではないが、その開口部は、段ボールの当該箇所に開口に即した破線状の切り込みをいれた開口部とし、使用に際して適宜切り抜いて使用する開口部としてもよい。また、ドライアイス収納域2a1~2a4は、上部傾斜部材2の強度に影響しないように芯材2b、2cの配置位置を避ける位置であれば、適宜の位置で構わず、また、収納されるドライアイスが棺の移動に際して動くことがないように適宜仕切り(図示外)を設けることを妨げない。
【0024】
なお、本実施例4に係る納棺ベッドのドライアイス収納域2a1~2a4は、固形ドライアイスの収納を前提としたが、炭酸ガスボンベ(図示外)から気化熱を利用して直接吹き込んで内部で生成されるドライアイスであっても良く、方形状収納域に限らない。
本実施例4に係る納棺ベッドにおいては、内部にドライアイスを収納できるので、遺体の保持を効果的に行うことができることとなる。
【実施例5】
【0025】
上述してきた実施例1~3は、棺6内の棺底上に遺体の下に配置し、遺体の顔が覗き窓8近くに位置するように棺6内に裁置する傾斜構造の納棺ベッド1であるが、これは、棺自6体の底部に傾斜をつけて、棺6内に遺体を安置したときに、遺体の顔が棺蓋7の覗き窓8近くに位置するような棺6自体であっても良い。
図4は、棺自体の内底部が所定の傾斜を有し、棺内に遺体を安置した場合に遺体の顔が覗き窓近くに位置する棺形状の概略を示す図である。図4において、符号6aは、実施例5に係る傾斜内底を有する棺、6bは、当該傾斜内底である。
図4に示すような傾斜内底6bを有する棺構造とすることにより、棺6内に遺体を安置した場合に遺体の顔がより高く位置され、棺蓋7の覗き窓8近くでの対面位置となり、遺族を含む会葬者が覗き窓8の近くに顔を見て最後のお別れをすることができることとなる。
【0026】
なお、図4においては、傾斜内底6bを有する棺6aとしたが、この傾斜角度は任意であって良く、傾斜の下端は、棺の全長に渡る傾斜内底6bであっても良く、さらには、傾斜ではなく、棺底の全体がかさ上げされた棺構造であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、納棺の際に遺体の下に配置される納棺ベッドに利用される。
【符号の説明】
【0028】
1 実施例1に係る納棺ベッド
2 上部傾斜部材
2a 実施例4に係る納棺ベッドの上部傾斜部材
2a1~2a4 上部傾斜部材2の左右側面に配置されるドライアイス収納域
2b、2c 芯材
3 下部平坦部材
4 傾斜面
5 方形平表面
6 棺
6a 実施例5に係る傾斜内底を有する棺
6b 傾斜内底
7 棺蓋
8 覗き窓
9 白布
101 実用新案登録第3229322号公報の開示のリバーシブル納棺用敷物
102 い草畳表面
108 棺
109 白布
110 棺蓋
図1
図2
図3
図4
図5