(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】TRPV1活性抑制剤、およびその利用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/08 20060101AFI20241125BHJP
A61K 31/22 20060101ALI20241125BHJP
A61K 31/343 20060101ALI20241125BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241125BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20241125BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241125BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241125BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20241125BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20241125BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20241125BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61K31/08
A61K31/22
A61K31/343
A61P17/00
A61P17/04
A61P29/00
A61P43/00 111
A61Q19/00
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/49
(21)【出願番号】P 2021046196
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高石 雅之
(72)【発明者】
【氏名】志水 弘典
(72)【発明者】
【氏名】河野 まおり
(72)【発明者】
【氏名】久原 丈司
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 淳
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0107747(US,A1)
【文献】特表2013-517275(JP,A)
【文献】特表2008-538115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0258079(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0345696(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0039823(US,A1)
【文献】国際公開第96/014840(WO,A1)
【文献】特表2005-515204(JP,A)
【文献】特表2012-523381(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042832(US,A1)
【文献】JEADV,2019年,Vol.33,pp.e67-e69
【文献】Experimental Dermatology,2016年,Vol.25,pp.812-826
【文献】PNAS ,2013年,Vol. 110, No. 18,pp.7476-7481
【文献】ACS Chem. Neurosci.,2012年,Vol.3,pp.248-267
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メントキシプロパンジオー
ルおよび
その塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する、TRPV1活性抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TRPV1活性抑制剤、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
TRPV1は、カプサイシン、熱などに感受性を有するイオンチャネルであることが知れている。また、TRPV1の活性化は、炎症性疼痛と関連していることも知られている。したがって、TRPV1の活性を阻害する物質(TRPV1活性抑制剤)は、炎症性疼痛の鎮痛剤等として有用である。このようなTRPV1活性抑制剤としては、例えば、メントールが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-074024号公報
【文献】特開2017-075129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながらメントール以外にも新規のTRPV1活性抑制剤の候補物質が開発されることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、新規のTRPV1活性抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、新規のTRPV1活性抑制剤の候補物質を見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の構成を含む。
【0007】
〔1〕メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、乳酸メンチル、およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する、TRPV1活性抑制剤。
【0008】
〔2〕〔1〕に記載のTRPV1活性抑制剤を含む、皮膚刺激抑制剤。
【0009】
〔3〕〔1〕に記載のTRPV1活性抑制剤、または、〔2〕に記載の皮膚刺激抑制剤を含む、皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規のTRPV1活性抑制剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例で使用した試験物質のアゴニスト評価の結果を示す図である。
【
図2】実施例で使用した試験物質のアンタゴニスト評価の結果を示す図である。
【
図3】実施例で使用した試験物質の皮膚浸透性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0013】
〔1.本発明の技術的思想〕
メントールは、TRPV1の活性を阻害するTRPV1活性抑制剤として知られているが、揮発性が高く、また、皮膚内に浸透した際の拡散性が高いため、TRPV1活性抑制効果の持続性に改善の余地があった。また、IC50(TRPV1活性の50%阻害に必要な濃度)が高い点についても、改善の余地があった。このような状況にあって、より持続性に優れ、かつ低い濃度でTRPV1の活性を抑制できる、新規のTRPV1活性抑制剤が求められていた。
【0014】
本発明者らは、新規のTRPV1活性抑制剤を提供すべく研究する中で、メントールのTRPV1活性抑制効果には、分子中のメントール骨格の存在が大きく寄与していると推測した。すなわち、メントール骨格を有する化合物であれば、TRPV1活性抑制効果を有するのではないかと独自に仮説を立てた。
【0015】
上記独自の仮説に基づき、複数のメントール骨格を有する化合物(メトキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、乳酸メンチル、シュウ酸メンチルエチルアミド、PCAメンチル)について、TRPV1活性抑制効果を測定、および評価した。その結果、メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および、乳酸メンチルがTRPV1のアンタゴニストであること、すなわち、TRPV1活性抑制効果を有することを新たに見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および、乳酸メンチルがTRPV1活性抑制効果を有することは、従来、一切開示されていない。
【0017】
また、メントール骨格を有する化合物のうち、シュウ酸メンチルエチルアミド、およびPCAメンチルはTRPV1活性抑制効果を有していないのみならず、TRPV1のアゴニストであること、すなわち、TRPV1活性効果を有するという知見も新たに見出した。
【0018】
かかる知見は、メントール骨格を有する化合物であっても、TRPV1の活性抑制効果を有するとは限らないこと、すなわち、単純にメントール骨格を有する化合物であれば、TRPV1活性抑制剤として使用できるとは限らないことを示している。このことは、驚くべき発見であると言える。
【0019】
この理由としては、以下のように推察されるが、本発明はかかる下記の推測により限定されるものではない:本発明者らが見出した新規のTRPV1のアンタゴニスト(メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および、乳酸メンチル)、および、従来知られているTRPV1のアンタゴニストであるメントールは、いずれも、メントール骨格、および水酸基を含有する化合物である。一方で、本発明者らが見出した新規のTRPV1のアゴニスト(シュウ酸メンチルエチルアミド、およびPCAメンチル)は、いずれも、メントール骨格を有し、かつ分子中にアミド結合を有する化合物である。すなわち、メントール骨格を有する化合物であっても、(A)水酸基を有する化合物は、アンタゴニストとして作用し、(B)分子中にアミド結合を有する化合物は、アゴニストとして作用する。
【0020】
〔2.TRPV1活性抑制剤〕
〔2-1.有効成分〕
本発明のTRPV1活性抑制剤は、メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、乳酸メンチル、およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を有効成分として含有する。以下、「本発明に係るTRPV1活性抑制剤」を「本TRPV1活性抑制剤」と称する場合がある。
【0021】
本明細書において、「塩」とは、医学的に、過度の毒性、刺激、アレルギー反応等がなく、ヒトまたはその他の哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適した塩を意味する。したがって、「塩」とは、「薬学的に許容される塩」であるともいえる。このような塩としては、当該技術分野において周知であり、任意のものが使用可能であるが、例えば、無機塩基(ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、アンモニア等)との塩、有機塩基(トリエチルアミン等のアミン類等)との塩、無機酸(塩酸、硫酸等)との塩、有機酸(酢酸等)との塩等が挙げられる。
【0022】
本TRPV1活性抑制剤によれば、TRPV1の活性を抑制することができる。換言すると、本TRPV1活性抑制剤は、TRPV1のアンタゴニストとして作用する。
【0023】
TRPV1は、一過性受容体電位チャネルの1つである。TRPV1の活性とは、例えば、カプサイシン、カンフル、プロトンなどによる化学刺激、熱覚刺激(例えば、43℃前後の刺激)、痛み刺激、機械刺激などの刺激による、細胞外から細胞内へのナトリウムイオン、カルシウムイオンなどの陽イオンの透過などが挙げられる。
【0024】
本明細書において、「TRPV1活性抑制剤」とは、当該物質の存在下において、TRPV1を刺激(例えば、化学刺激)した際に、当該物質の非存在下と比して、TRPV1の活性が低下する(例えば、化学刺激を受けた際の、ナトリウムイオン、カルシウムイオンなどの陽イオンの透過量の低下等)物質を意図する。
【0025】
TRPV1の活性化はそう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および炎症などと関連(誘導)する。すなわち、本TRPV1活性抑制剤によれば、TRPV1の活性を抑制することができるため、上記のようなTRPV1の活性化により関連する諸症状(そう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および炎症など)を抑制することができる。
【0026】
ここで、メントキシプロパンジオールとは下記構造式(1)で示される化合物を意図する。メントングリセリンアセタールとは下記構造式(2)で示される化合物を意図する。乳酸メンチルとは下記構造式(3)で示される化合物を意図する。本TRPV1活性抑制剤としては、これら(およびこれらの塩)のうち1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
本TPPV1抑制剤の有効成分(メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、乳酸メンチル、およびこれらの塩)としては、市販品を用いることもできる。本TRPV1抑制剤の有効成分の市販品としては、高砂香料工業株式会社製Cooling agent 10等の市販のメントキシプロパンジオール;シムライズ株式会社製Frescolat MGA等の市販のメントングリセリンアセタール;シムライズ株式会社製Frescolat ML等の市販の乳酸メンチル;等が挙げられる。
【0031】
従来、TRPV1活性抑制剤として知られていたメントールは、揮発性が高いため、皮膚への浸透性、およびTRPV1活性抑制効果の持続性について改善の余地があった。本発明者らが見出したメントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、乳酸メンチル、およびこれらの塩はいずれも、メントールと比して揮発性が低い化合物である。それゆえ、本TRPV1活性抑制剤は、従来のTRPV1活性抑制剤(メントール)と比して、より優れた持続性を有する。特にメントキシプロパンジオールは、メントールと比して、さらに皮膚浸透性が高く、皮膚内で拡散しにくく、かつ、IC50が低いため、より優れた持続性を有し、かつ、より優れたTRPV1活性抑制効果を有する。
【0032】
[2-2.その他の成分]
本TRPV1活性抑制剤は、上述した有効成分(メントキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、乳酸メンチル、およびこれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも1種)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。有効成分以外の成分は、薬学的に許容され得る成分であればよく、例えば、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、賦形剤、溶媒、経皮吸収促進剤などであり得る。
【0033】
前記緩衝剤の例としては、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモールなどが挙げられる。前記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムなどが挙げられる。前記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウムなどが挙げられる。前記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウムなどが挙げられる。前記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどが挙げられる。前記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。前記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウムなどが挙げられる。
【0034】
前記pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
【0035】
前記等張化剤の例としては、イオン性等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなど)、非イオン性等張化剤(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトールなど)が挙げられる。
【0036】
前記防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノールなどが挙げられる。
【0037】
前記抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0038】
前記高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、アテロコラーゲンなどが挙げられる。
【0039】
前記賦形剤の例としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロースなどが挙げる。
【0040】
前記溶媒の例としては、水、生理的食塩水、アルコールなどが挙げられる。
【0041】
本TRPV1活性抑制剤は、上述した他の成分として、有効成分が有するTRPV1活性抑制効果を向上させる作用を有する物質(以下、向上剤と称する場合がある)を含んでもよい。向上剤は、有効成分との併用により、有効成分が有するTRPV1活性抑制効果に対する向上作用を有する物質である。向上剤は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0042】
向上剤としては、例えば、無機化合物、有機化合物、植物抽出物、微生物培養物、微生物抽出物、ノニオン界面活性剤などの界面活性剤等が挙げられる。これらの物質のなかでも、有効成分のTRPV1活性抑制効果をより向上させることができることから、界面活性剤が好ましく、ノニオン界面活性剤がより好ましい。
【0043】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油などのポリオキシアルキレン鎖を有するノニオン界面活性剤;グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミドなどのポリオキシアルキレン鎖を有しないノニオン界面活性剤などが挙げられる。これらのノニオン界面活性剤のなかでも、有効成分が有するTRPV1活性抑制効果をより向上させる観点から、ポリオキシアルキレン鎖を有するノニオン界面活性剤が好ましい。
【0044】
[2-3.有効成分、および、他の成分の含有量]
本TRPV1活性抑制剤の有効成分の量は、当該有効成分が所望の効果を発揮する限り(例えばIC50以上の濃度を有する限り)、特に限定されない。当該有効成分の量は、例えば、薬剤の総重量に対して、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0045】
本TRPV1活性抑制剤に含まれる有効成分以外の成分の量は、特に限定されない。当該有効成分以外の成分の量は、例えば、薬剤の総重量に対して、0重量%~99.999重量%であってもよく、0重量%~99.99重量%であってもよく、0重量%~99.9重量%であってもよく、5重量%~99.9重量%であってもよく、10重量%~99.9重量%であってもよく、20重量%~99.9重量%であってもよく、30重量%~99.9重量%であってもよく、40重量%~99.9重量%であってもよく、50重量%~99.9重量%であってもよく、60重量%~99.9重量%であってもよく、70重量%~99.9重量%であってもよく、80重量%~99.9重量%であってもよく、90重量%~99.9重量%であってもよい。
【0046】
[2-4.投与対象、および投与経路]
本TRPV1活性抑制剤の投与対象としては、特に限定されず、ヒトであってもよく、非ヒト動物(例えば、家畜、愛玩動物、および、実験動物)であってもよい。非ヒト動物としては、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、および、ラットが挙げられる。
【0047】
本TRPV1活性抑制剤は、任意の投与経路によって投与対象に投与され得る。投与経路の例としては、皮下投与、皮内投与、経皮投与、眼内投与、口腔内投与、経粘膜投与等が挙げられる。有効成分の機能を維持しやすいことから、非経口投与が好ましく、非経口投与の中でも、経皮投与、または、眼球、口腔、その他粘膜等を介した経粘膜投与が好ましい。
【0048】
[2-5.製剤および処方]
有効成分、および、その他の成分を原料として、公知の手法により、例えば、ホモミキサーや万能ミキサーで混合することにより、本TRPV1活性抑制剤を製剤することができる。
【0049】
本TRPV1活性抑制剤を投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与量に制限はない。本TRPV1活性抑制剤を投与する場合、所望の効果が得られるならば、投与間隔に制限はない。前記投与間隔は、例えば、1時間~6箇月間に1回であり、1時間に1回、2時間に1回、3時間に1回、6時間に1回、12時間に1回、1日間に1回、2日間に1回、3日間に1回、4日間に1回、5日間に1回、6日間に1回、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1箇月間に1回、2箇月間に1回、3箇月間に1回、4箇月間に1回、5箇月間に1回、6箇月間に1回、等でありえる。
【0050】
[3.皮膚刺激抑制剤]
本TRPV1活性抑制剤、TRPV1活性抑制剤以外の有効成分、および、その他の成分を原料として、公知の手法により、皮膚刺激抑制剤を製剤することができる。すなわち、本発明に係る皮膚刺激抑制剤は、本TRPV1活性抑制剤を含む。以下、「本発明に係る皮膚刺激抑制剤」を、「本皮膚刺激抑制剤」と称する場合がある。なお、本皮膚刺激抑制剤において、以下に詳説した事項以外は、適宜、上記[2.TRPV1活性抑制剤]に記載の内容が適宜援用される。
【0051】
本皮膚刺激抑制剤は、上述した構成を有するため、化学物質、薬物等の化学刺激、熱覚刺激(例えば、43℃前後の刺激)、痛み刺激、機械刺激等による皮膚刺激を低減することができる。
【0052】
本明細書において、「皮膚刺激抑制剤」とは、当該物質の存在下において、皮膚が刺激を受けた際に、当該物質の非存在下と比して、皮膚刺激によって生じる諸症状(例えば、そう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および炎症など)が低減(抑制)される物質を意図する。すなわち、本皮膚刺激抑制剤によれば、上記の皮膚刺激によって生じる諸症状(そう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および炎症など)を抑制することができる。
【0053】
本皮膚刺激抑制剤の、その他の有効成分の量は、特に限定されない。当該その他の有効成分の量は、例えば、薬剤の総重量に対して、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0054】
[4.皮膚外用剤]
本TRPV1活性抑制剤、または、本皮膚刺激抑制剤と、その他の任意成分と、を原料として、公知の手法により、皮膚外用剤を製剤することができる。すなわち、本発明に係る皮膚外用剤は、本TRPV1活性抑制剤、または、本皮膚刺激抑制剤を含む。以下において、「本発明に係る皮膚外用剤」を、「本皮膚外用剤」と称する場合がある。なお、本皮膚外用剤において、以下に詳説した事項以外は、適宜、上記[2.TRPV1活性抑制剤]、および、[3.皮膚刺激抑制剤]に記載の内容が適宜援用される。
【0055】
本皮膚外用剤が含み得る、その他の任意成分の例としては、低級アルコール;保湿剤(多価アルコールなど);紫外線吸収剤;粉体;酸化防止剤;防腐剤(メチルパラベンなど);香料;着色剤;キレート剤;清涼剤;増粘剤;ビタミン類;中和剤;アミノ酸;pH調整剤;美白剤;抗炎症剤;消臭剤;動植物抽出物;金属封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩など)などの添加剤等が挙げられる。これらその他の任意成分は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
【0056】
前記その他の任意成分の中には、所望される効果と併せてTRPV1を活性化する成分が含まれる場合がある。本皮膚外用剤は、このようなTRPV1活性化成分を含有してもよい。本皮膚外用剤において、前記TRPV1を活性化する成分を、本TRPV1活性抑制剤、または、本皮膚刺激抑制剤と併用することで、前記TRPV1を活性化する成分による刺激を抑制しつつ、前記TRPV1活性化する成分に所望される効果を奏させることができる。
【0057】
本皮膚外用剤における、本TRPV1活性抑制剤、または、本皮膚刺激抑制剤の含有量は特に限定されない。当該本TRPV1活性抑制剤、または、本皮膚刺激抑制剤の量は、例えば、薬剤の総重量に対して、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0058】
本皮膚外用剤の投与剤型は、特に限定されないが、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、ゲル状クリーム剤、リニメント剤、ローション剤、スプレー剤、エアゾール剤、乳液、化粧水(ローション)、美容液(セラム)、ジェル等であることが好ましい。
【0059】
また、本皮膚外用剤を適用する部位は、特に限定されない。一例として、本皮膚外用剤の適用部位は、顔(額、目元、目じり、頬、口元など)、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中などである。
【0060】
本TRPV1活性抑制剤、本皮膚刺激抑制剤、または本皮膚外用剤を被験体に投与する工程を含む、皮膚のそう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および/または炎症を治療、改善または予防する方法も本発明に包含される。被検体は、皮膚のそう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および/または炎症を伴う疾患の治療、改善または予防が必要な被験体、または、化学物質、あるいは、薬物等による刺激に関連した皮膚のそう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および/または炎症の治療、改善または予防が必要な被験体等であり得る。例えば、被験体は、当該疾患に罹患した被験体、または、当該化学物質に接触した被験体等であり得る。被験体はヒトまたは非ヒト動物であり得る。皮膚のそう痒、紅潮、発疹、疼痛、湿疹、および/または炎症に関連した疾患としては、例えば、刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、乾癬などが挙げられる。また、本TRPV1活性抑制剤、本皮膚刺激抑制剤、または本皮膚外用剤を被験体に投与する工程を含む、TRPV1の活性を抑制する方法も本発明に包含される。本TRPV1活性抑制剤、本皮膚刺激抑制剤、または本皮膚外用剤は、例えば、被験体の皮膚に塗布され得る。
【0061】
上記各項目で記載した内容は、他の項目においても適宜援用できる。本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。したがって、異なる実施形態にそれぞれ開示されている技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
〔TRPV1安定発現細胞株の作製〕
ヒトTRPV1をコードするcDNA(GenBankアクセッション番号:MN_080704.3に示される塩基配列の276位~2795位のポリヌクレオチド)を、哺乳動物細胞用ベクター(インビトロジェン社製、商品名:pcDNA3.1(+))のクローニングサイトに挿入し、ヒトTRPV1発現ベクターを得た。得られたヒトTRPV1発現ベクター5μgを滅菌水10μLに懸濁し、混合物Iを得た。
【0064】
また、5体積%二酸化炭素の雰囲気中、37℃に維持された直径100mmのシャーレ上の10質量%FBS含有DMEM培地中において、HEK293細胞を70%のコンフルエンシーになるまで培養した。培養したHEK293細胞をエレクトロポレーションによる遺伝子導入試薬(Thermo Fisher社製、商品名:Neon Transfection System 100μLキット、カタログ番号:MPK10025)中に付属のR buffer 100μLに懸濁し、細胞懸濁液Iを得た。
【0065】
混合物Iと細胞懸濁液Iとを混合し、NeonTransfection System(Thermo Fisher社製、カタログ番号:MPK5000)を用いて、Plus Voltage 1100V、Plus Width 20ms、Plus Number 2で遺伝子導入を実施した。遺伝子導入を実施した翌日に、1mg/mLのG418硫酸塩を添加した10質量%FBS含有DMEM培地に変換し、2日ごとに培地交換を続け、5体積%二酸化炭素の雰囲気中で3週間培養を続けることによって、HEK293細胞に上記ヒトTRPV1発現ベクターが導入されたTRPV1安定発現細胞株を得た。
【0066】
〔TRPV1活性作用評価〕
(試験化合物)
メントール(富士フィルム和光純薬株式会社製)
メトキシプロパンジオール(高砂香料工業株式会社製Cooling agent 10)
メントングリセリンアセタール(シムライズ株式会社製Frescolat MGA)
乳酸メンチル(シムライズ株式会社製Frescolat ML)
シュウ酸メンチルエチルアミド(シムライズ株式会社製Frescolat X-cool)
PCAメンチル(Givaudan社製QUESTICE LIQUID CQ)
(アゴニスト評価)
下記(1)~(5)の手順により、各試験化合物のTRPV1アゴニスト活性を評価した:(1)96well black clear plate(縦8×横12ウェル、CORNING社製BioCoatTMマイクロプレート)の各ウェルについて、1ウェルあたり100μLの生育培地(Sigma-Aldrich社製DMEM)を加え、さらに、上記の方法によって作製したTRPV1安定発現細胞株を2×104個ずつ播種した;(2)一日経過後、各ウェルから生育培地を完全に取り除いた;(3)生育培地を取り除いた後、各ウェルに100μLのローディング試薬であるFluo-4 NW(Thermo Fisher scientific社製)を添加し、1時間静置して当該試薬をTRPV1安定発現細胞株にローディングした;(4)1時間静置後、各ウェルからローディング試薬を50μLずつ取り除いた;(5)1ウェル当たり1種類の試験化合物(最大濃度3mM、公比1.5、10濃度)を25μL添加、イオノマイシン(Non treat)25μLを添加、または、30nMカプサイシンを25μL添加(コントロール)の各操作を行った後、各ウェルについて、FDSS7000(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、3分間蛍光値を測定した。
【0067】
(アゴニスト評価の結果)
アゴニスト評価の結果を
図1に示す。なお、
図1において、TRPV1活性とは、10nMカプサイシンを25μL添加したウェル(コントロール)で測定された蛍光値を100%とした場合の、試験化合物を添加したウェルで測定された蛍光値の相対的強度であり、下記式によって算出した値である:
TRPV1活性(%)={(試験化合物を単独でTRPV1安定発現細胞に添加した場合の蛍光値-Non treatの蛍光値)/(30nMカプサイシンをTRPV1安定発現細胞に添加した場合の蛍光値-Non treatの蛍光値)}×100
図1に示すように、シュウ酸メンチルエチルアミド、およびPCAメンチルについて、TRPV1活性が増加していることが示された。すなわち、これらの化合物はTRPV1のアゴニストとして機能することが示された。一方で、試験物質のうち、メントール、メトキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および乳酸メンチルについては、Non treatと比して、蛍光値の変化は見られなかった(図示せず)。すなわち、これらの化合物はTRPV1のアゴニスト活性を有していないことが示された。
【0068】
(アンタゴニスト評価)
上記のアゴニスト評価において、アゴニスト活性を有していなかった試験化合物(メントール、メトキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および乳酸メンチル)について、下記(1)~(2)の手順により、アンタゴニスト活性を評価した:(1)アゴニスト評価において、メントール、メトキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および乳酸メンチルを添加したウェルに、さらに、10nMカプサイシン溶液を25μL添加した;(2)(1)で作製した各ウェルと、コントロールのウェルと、について、FDSS7000(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、さらに2分間蛍光値を測定した。
【0069】
(アンタゴニスト評価の結果)
アンタゴニスト評価の結果を
図2に示す。なお、
図2において、TRPV1活性とは、10nMカプサイシン25μLのみを添加したウェル(コントロール)で測定された蛍光値を100%とした場合の、試験化合物と、10nMカプサイシンを25μLと、を添加したウェルで測定された蛍光値の相対的強度であり、下記式によって算出した値である:
TRPV1活性(%)={(試験化合物を単独で添加したTRPV1安定発現細胞に、さらに10nMカプサイシン溶液を添加した場合の蛍光値-Non treatの蛍光値)/(10nMカプサイシンをTRPV1安定発現細胞に添加した場合の蛍光値-Non treatの蛍光値)}×100
図2に示すように、メントール、メトキシプロパンジオール、メントングリセリンアセタール、および乳酸メンチルについて、TRPV1活性が減少していることが示された。すなわち、これらの化合物はTRPV1のアンタゴニストとして機能することが示された。
【0070】
(IC50の測定)
さらにこれらの化合物について、TRPV1活性の50%阻害に必要な濃度(IC50(mM))を算出した。結果を表1に示す。なお、ここで、IC50とは、10nMカプサイシンによるアゴニスト活性に対するIC50値であり、プログラムGraphPad-Prism(バージョン7、グラフパッドソフトウェア(GraphPad Software)社、米国カリフォルニア州サンディエゴ)を用いて測定した値である。
【0071】
【0072】
表1より、メントキシプロパンジオールは、メントールと比してIC50が低い、すなわち、低い濃度であっても、高いTRPV1のアンタゴニスト活性を有することが示された。
【0073】
〔皮膚浸透性試験〕
試験物質(メントールおよびメントキシプロパンジオール)の、皮膚浸透性を皮膚内の試験物質量、および細胞毒性によって評価した。
【0074】
(皮膚モデルの作製)
下記の(1)~(4)の手順によって、皮膚内の試験物質量、および細胞毒性評価のための皮膚モデルを作成した:(1)ヒト皮膚細胞(MatTek社製 EpiDerm EPI-200)を、400μLの培養液(MatTek社製 EPI-100 ASY/Assay medium)中で、37℃、20時間培養した;(2)培養後、培養液を全て取り除き、10% ethanol PBSを400μL、ヒト皮膚細胞に添加した;(3)ヒト皮膚細胞100wt%に対して、0.5wt%の試験物質(メントール、または、メントキシプロパンジオール)10μLを添加(曝露)した;(4)5分間曝露、15分間曝露、30分間曝露後、ヒト皮膚細胞を回収し、各条件(5分間曝露、15分間曝露、30分間曝露)の皮膚モデルを作製した。
【0075】
(皮膚内の試験物質量)
作製した皮膚モデルについて、下記の(1)~(2)の手順によって、皮膚内の試験物質量を定量した:(1)作製した各皮膚モデルを、350μLの70% ethanol中に入れ、30分間超音波処理を行い、皮膚モデル内の成分を抽出した;(2)ゲルクロマトグラフィーによって、皮膚モデル内の試験物質量を定量した。
【0076】
(細胞毒性評価)
作製した皮膚モデルについて、下記の(1)~(4)の手順によって、試験物質の細胞毒性を評価した:(1)作製した皮膚モデルから、試験物質を取り除いた;(2)MTTアッセイ法にしたがって、より具体的には、MatTek社製のMTTアッセイキットを用いて、試験物質の細胞毒性を、細胞生存率として解析した。
【0077】
(皮膚浸透性試験の結果)
皮膚浸透性試験の結果(皮膚内の試験物質量の結果、および、細胞毒性評価の結果)を
図3に示す。
図3の左図は、皮膚内の試験物質量の定量結果を示し、
図3の右図は、細胞毒性評価の結果を示す。
図3の左図より明らかなように、5分間曝露、15分間曝露、30分間曝露の各条件において、メントキシプロパンジオールは、メントールより多く皮膚内に存在している。すなわち、メントキシプロパンジオールは、メントールと比して、皮膚内に浸透しやすく、かつ、皮膚内で拡散しにくいと言える。また、
図3の右図より明らかなように、メントキシプロパンジオールを添加した皮膚モデルは、5分間曝露、15分間曝露、30分間曝露の各条件において、80%以上の高い細胞生存率を示している。すなわち、5分間曝露、15分間曝露、30分間曝露の条件において、メントキシプロパンジオールは、細胞毒性(細胞障害性)が低いと言える。
【0078】
これらの結果より、メントキシプロパンジオールは、メントールと比して、皮膚内に浸透しやすい。また、メントキシプロパンジオールは、皮膚内で拡散しにくく、かつ、細胞毒性が低い。すなわち、メントキシプロパンジオールは、皮膚浸透性が高く、かつ、皮膚内での持続性に優れることが示された。
【0079】
[処方例1]
〔デオドラントウォーター(皮膚外用剤)〕
メントール 0.1質量%
メントキシプロパンジオール 0.5質量%
イソボルニルオキシエタノール 0.064質量%
トリクロサン 0.1質量%
クロルヒドロキシルアルミニウム 10.0質量%
イソノナン酸イソノニル 1.0質量%
ヒドロキシプロピルセルロース 1.0質量%
エタノール 60.0質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
[処方例2]
〔化粧水(皮膚外用剤)〕
メントール 0.05質量%
メントキシプロパンジオール 0.5質量%
イソボルニルオキシエタノール 0.064質量%
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 1.0質量%
グリセリン 1.5質量%
1,3-ブチレングリコール 15.0質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
1,2-オクタンジオール 0.2質量%
香料 適量
精製水 残部
合計 100.0質量%
[処方例3]
〔メイク落とし化粧料(皮膚外用剤)〕
ポリエチレングリコール1500 19.8質量%
ポリエチレングリコール400 4.8質量%
ポリエチレングリコール20000 2.0質量%
メントキシプロパンジオール 0.1質量%
エチルヘキサン酸セチル 10.0質量%
アジピン酸ジイソプロピル 10.0質量%
ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール(8E.O.) 4.0質量%
イソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(8E.O.) 3.0質量%
オリーブ油 7.0質量%
コメヌカ油 2.0質量%
ミツロウ 4.0質量%
スクワレン 5.0質量%
グリセリン 9.89質量%
ジプロピレングリコール 13.0質量%
ソルビトール 5.0質量%
酢酸トコフェロール 0.01質量%
フェノキシエタノール 0.5質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
[処方例4]
〔フェイスマスク(皮膚外用剤)〕
マスク用不織布1gに下記組成からなるフェイスマスク組成物4gを含浸させて、フェイスマスクとした。
ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.) 1.0質量%
ジプロピレングリコール 5.0質量%
グリセリン 5.0質量%
1,3-ブチレングリコール 5.0質量%
イソボルニルオキシエタノール 0.064質量%
メントール 0.1質量%
メントキシプロパンジオール 0.1質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.1質量%
メチルパラベン 0.1質量%
ソルビトール 1.0質量%
エタノール 1.0質量%
キサンタンガム 0.01質量%
ヒアルロン酸ナトリウム 0.001質量%
加水分解コラーゲン 0.001質量%
精製水 残部
合計 100.0質量%
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、皮膚刺激抑制剤、皮膚外用剤等の用途に好適に利用することができる。