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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20241125BHJP
   G01N 24/08 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
A61B5/055 351
G01N24/08 510Y
G01N24/08 510D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021055175
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152410
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 満幸
(72)【発明者】
【氏名】山木 裕文
(72)【発明者】
【氏名】丹治 正貴
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇
【審査官】嵯峨根 多美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-064897(JP,A)
【文献】特開2014-030714(JP,A)
【文献】特開2016-073382(JP,A)
【文献】特表平10-510135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055
G01N 24/08
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を消費して高周波パルスを増幅する増幅部と、
交流電源からの交流電力を第1の直流電力に変換し、第1経路を含む経路を介して前記増幅部に前記第1の直流電力を供給する第1電力供給部と、
前記交流電源からの交流電力を第2の直流電力に変換し、前記第1経路とは異なる第2経路を含む経路を介して前記増幅部に前記第2の直流電力を供給する第2電力供給部と、
前記高周波パルスの出力に関するパルスシーケンス情報に基づいて、前記第1電力供給部から前記増幅部に前記第1の直流電力が供給される期間における前記第2電力供給部から前記増幅部への前記第2の直流電力供給タイミングを決定する決定部と、
を備える磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記パルスシーケンス情報に基づいて前記増幅部の動作に必要必要電力を算出し、前記第1電力供給部から前記増幅部に前記第1の直流電力が供給される期間における前記第2電力供給部からの前記増幅部への前記第2の直流電力供給タイミングを前記必要電力に基づいて決定する、
請求項1に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記第1電力供給部から前記増幅部に供給可能な供給可能電力を算出し、前記供給可能電力が前記必要電力よりも小さい電力不足期間において足りない電力が補われるように、前記第1電力供給部から前記増幅部に前記第1の直流電力が供給される期間における前記第2電力供給部からの前記増幅部への前記第2の直流電力供給タイミングを決定する、
請求項2に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記決定部は、前記供給可能電力と前記必要電力との差に応じて、前記第2の直流電力の大きさを決定する、
請求項3に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記電力不足期間に応じて、前記第1電力供給部から前記増幅部に前記第1の直流電力が供給される期間における前記第2電力供給部からの前記増幅部への前記第2の直流電力供給タイミングを決定する、
請求項3または4に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記高周波パルスの1パルス毎に、前記供給可能電力と前記必要電力を算出する、
請求項3からまでのいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記決定部は、単位時間毎に、前記供給可能電力及び前記必要電力を算出する、
請求項3からまでのいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記第2電力供給部は、前記第1電力供給部から前記増幅部に前記第1の直流電力が供給されていない期間において、前記第2の直流電力を前記増幅部に供給せず、
前記第2電力供給部は、前記第1電力供給部から前記増幅部に前記第1の直流電力が供給されている期間において、前記決定部によって決定されたタイミングにおいて前記第2の直流電力の前記増幅部への供給を開始する、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記第1電力供給部は、前記第1経路に設けられ且つ前記交流電力を前記第1の直流電力に変換するスイッチング電源を有し、
前記第2電力供給部は、前記第2経路に設けられ且つ前記タイミングにおいて定電圧及び定電流の前記第2の直流電力を前記増幅部に供給する補助電源を有する、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の磁気共鳴イメージング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置は、高周波パルス(Radio Frequency Pulse:以下、RFパルスと呼ぶ)を増幅して送信コイルに供給する高周波増幅装置を備える。高周波増幅装置は、交流電源から出力された交流電力を直流電力に変換するスイッチング電源(SW電源)と、スイッチング電源から出力された電力を保持するコンデンサと、コンデンサにより保持された電力を用いてRFパルスを増幅する増幅回路を備える。
【0003】
実行するパルスシーケンスがCEST(Chemical Exchange Saturation Transfer)やCASL(Continous Arterial Spin Labeling)である場合には、RFパルスの印加時間が長くなるため、増幅回路においてRFパルスを増幅するために必要な電力が大きくなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-73857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、高周波パルスを増幅する増幅回路に必要な電力を適切に供給することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、増幅部と、第1電力供給部と、第2電力供給部と、決定部と、を備える。増幅部は、直流電力を消費して高周波パルスを増幅する。第1電力供給部は、前記増幅部に前記第1の直流電力を供給する。第2電力供給部は、前記増幅部に第2の直流電力を供給する。決定部は、パルスシーケンス情報に基づいて、前記第2電力供給部から前記増幅部に前記第2の直流電力を供給するタイミングを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の高周波増幅装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置によるタイミング決定処理の処理手順を例示するフローチャートである。
図4図4は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置によるタイミング決定処理に用いられるシーケンス情報の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の増幅回路へ供給される電力の時間変化を説明するための図である。
図6図6は、第1の実施形態の第1の変形例に係る磁気共鳴イメージング装置によるタイミング決定処理により補助電力の補助タイミングを決定する方法を説明するための図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の高周波増幅装置の構成の一例を示す図である。
図8図8は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置によるタイミング決定処理の処理手順を例示するフローチャートである。
図9図9は、第2の実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の増幅回路へ供給される電力の時間変化を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、磁気共鳴イメージング装置の実施形態について詳細に説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の磁気共鳴イメージング(MRI:Magnetic Resonance Imaging)装置1の制御構成を示す図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、架台11、寝台13、傾斜磁場電源21、受信回路25、寝台駆動装置27、シーケンス制御回路29、高周波増幅装置30及びホストコンピュータ(Host Computer)50を有する。ホストコンピュータは、データ処理装置の一例である。
【0010】
図1に示すように、架台11は、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とを有する。静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とは架台11の筐体に収容されている。架台11の筐体には中空形状を有するボアが形成されている。架台11のボア内には送信コイル45と受信コイル47とが配置される。架台11は、「ガントリ」と呼ばれてもよい。
【0011】
静磁場磁石41は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。静磁場磁石41としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石または常伝導磁石等が使用される。ここで、静磁場磁石41の中心軸をZ軸に規定し、Z軸に対して鉛直に直交する軸をY軸に規定し、Z軸に水平に直交する軸をX軸に規定する。X軸、Y軸及びZ軸は、直交3次元座標系を構成する。
【0012】
傾斜磁場コイル43は、静磁場磁石41の内側に取り付けられ、中空の略円筒形状に形成されたコイルユニットである。傾斜磁場コイル43は、傾斜磁場電源21からの電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。より詳細には、傾斜磁場コイル43は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対応する3つのコイルを有する。当該3つのコイルは、X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を形成する。X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿う傾斜磁場は合成されて互いに直交するスライス選択傾斜磁場Gs、位相エンコード傾斜磁場Gp及び周波数エンコード傾斜磁場Grが所望の方向に形成される。スライス選択傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面(スライス)を決めるために利用される。位相エンコード傾斜磁場Gpは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。なお、以下の説明においてスライス選択傾斜磁場Gsの傾斜方向はZ軸、位相エンコード傾斜磁場Gpの傾斜方向はY軸、周波数エンコード傾斜磁場Grの傾斜方向はX軸であるとする。
【0013】
傾斜磁場電源21は、シーケンス制御回路29からのシーケンス制御信号に従い傾斜磁場コイル43に電流を供給する。傾斜磁場電源21は、傾斜磁場コイル43に電流を供給することにより、X軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿う傾斜磁場を傾斜磁場コイル43により発生させる。当該傾斜磁場は、静磁場磁石41により形成された静磁場に重畳されて被検体Pに印加される。
【0014】
送信コイル45は、例えば、傾斜磁場コイル43の内側に配置され、高周波増幅装置30からRFパルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0015】
高周波増幅装置30は、シーケンス制御回路29に接続されている。高周波増幅装置30は、シーケンス制御回路29から取得したRFパルスを増幅し、増幅されたRFパルス(以下、増幅信号と呼ぶ)を、送信コイル45に出力する。いわゆるRFアンプは、高周波増幅装置30の一例である。具体的には、高周波増幅装置30は、被検体P内に存在する対象プロトンを励起するためのRFパルスを、送信コイル45を介して被検体Pに印加するために、送信コイル45にRFパルスを供給する。RFパルスは、対象とする原子核の種類及び磁場の強度で決まるラーモア周波数に対応する。RFパルスは、対象プロトンに固有の共鳴周波数で振動し、対象プロトンを励起させる。励起された対象プロトンからMR信号が発生され、受信コイル47により検出される。高周波増幅装置30の詳細については後述する。
【0016】
また、高周波増幅装置30は、主電源と補助電源とを備え、主電源から供給される電力がRFパルスを増幅するために必要な電力に満たない場合に、補助電力を用いてRFパルスを増幅する。
【0017】
受信コイル47は、ボアの内部に固定されている。受信コイル47は、RFパルスの作用を受けて撮像部位の内部に存在する対象プロトンから発せられるMR信号を受信する。受信したMR信号は、有線又は無線を介して受信回路25に供給される。
【0018】
受信回路25は、励起された対象プロトンから発生されるMR信号を、受信コイル47を介して受信する。受信回路25は、受信されたMR信号を信号処理してデジタルのMR信号を発生する。デジタルのMR信号は、空間周波数により規定されるk空間にて表現することができる。よって、以下、デジタルのMR信号をk空間データと呼ぶことにする。k空間データは、画像再構成に供される生データの一種である。k空間データは、有線又は無線を介してホストコンピュータ50に供給される。
【0019】
寝台13は、架台11に隣接して設置される。寝台13は、天板131と基台133とを有する。天板131には被検体Pが載置される。基台133は、天板131をZ軸方向に沿って移動可能に支持する。また、基台133は、天板131をX軸、Y軸、Z軸各々に沿ってスライド可能に支持する。基台133には、寝台駆動装置27が収容される。寝台駆動装置27は、シーケンス制御回路29からの制御を受けて天板131を移動する。寝台駆動装置27は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の如何なるモータ等を含んでも良い。
【0020】
シーケンス制御回路29は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。シーケンス制御回路29は、処理回路51の撮像プロトコル設定機能511により決定された撮像プロトコルに基づいて傾斜磁場電源21、受信回路25、及び高周波増幅装置30を同期的に制御し、当該撮像プロトコルに応じたパルスシーケンスに従い被検体Pに磁気共鳴イメージングを実行し、被検体Pに関するk空間データを収集する。また、シーケンス制御回路29は、パルスシーケンスに従ってRFパルスを生成し、生成したRFパルスを高周波増幅装置30に送信する。また、シーケンス制御回路29は、高周波増幅装置30から取得した補助電力に関する情報に基づいて、補助電力を制御するシーケンスを生成し、補助電力を制御するシーケンスに従って高周波増幅装置30における補助電力の供給タイミングを制御する。
【0021】
図1に示すように、ホストコンピュータ50は、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有するコンピュータである。
【0022】
処理回路51は、ハードウェア資源としてCPU等のプロセッサを有する。処理回路51は、磁気共鳴イメージング装置1の中枢として機能する。例えば、処理回路51は、各種プログラムを実行することにより、撮像プロトコル設定機能511、データ取得機能512、画像生成機能513、画像処理機能514、及び表示制御機能515を有する。
【0023】
なお、図1においては、単一の処理回路51にて撮像プロトコル設定機能511、データ取得機能512、画像生成機能513、画像処理機能514、及び表示制御機能515が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、撮像プロトコル設定機能511、データ取得機能512、画像生成機能513、画像処理機能514、及び表示制御機能515は、それぞれ撮像プロトコル設定回路、データ取得回路、画像生成回路、画像処理回路、及び表示制御回路と呼んでもよく、個別のハードウェア回路として実装してもよい。処理回路51が実行する各機能についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0024】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、ASIC、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)等の回路を意味する。プロセッサはメモリ52に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、メモリ52にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。上記「プロセッサ」の説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0025】
撮像プロトコル設定機能511において処理回路51は、磁気共鳴イメージングに関する撮像プロトコルを、入力インタフェース54を介したユーザ指示に応じて又は自動的に設定する。撮像プロトコルは、一の磁気共鳴イメージングに関する各種の撮像パラメータの集合である。撮像パラメータとしては、パルスシーケンスの種別、k空間充填方式の種別、撮像時間、繰り返し時間(TR)、エコー時間(TE)等の磁気共鳴イメージングを行うために直接又は間接に設定される種々のパラメータが適用可能である。
【0026】
データ取得機能512において処理回路51は、被検体P等の処理対象に関するMRデータを取得する。MRデータは、k空間データ、MR画像データ及びハイブリッドデータの総称である。k空間データは、オリジナルのk空間データでもよいし、オリジナルのk空間データに対してデータ圧縮処理や解像度分解処理、データ補間処理、解像度合成処理等の任意のデータ処理がなされたデータであってもよい。ハイブリッドデータは、k空間データの少なくとも1軸に沿ってフーリエ変換又は逆フーリエ変換等が実行されたデータである。
【0027】
画像生成機能513において処理回路51は、受信回路25から取得したMRデータに基づいて、被検体Pに関するMR画像を再構成する。処理回路51は、例えば、k空間または周波数空間に配置されたMRデータにフーリエ変換を施して、実空間で定義されたMR画像を生成する。フーリエ変換の代わり又はフーリエ変換と組み合わせて、逐次近似再構成法や機械学習モデルを使用した再構成法が行われてもよい。画像生成機能513を実現する処理回路51は、再構成部の一例である。
【0028】
画像処理機能514において処理回路51は、MR画像に種々の画像処理を施す。例えば、処理回路51は、ボリュームレンダリングや、サーフェスレンダリング、画素値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の画像処理を施す。
【0029】
表示制御機能515において処理回路51は、種々の情報をディスプレイ53に表示する。例えば、処理回路51は、画像生成機能513により生成されたMR画像、画像処理機能514により生成されたMR画像、撮像プロトコルの設定画面等をディスプレイ53に表示する。
【0030】
メモリ52は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ52は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。例えば、メモリ52は、学習済モデルやk空間データ、MR画像データ、制御プログラム等を記憶する。
【0031】
ディスプレイ53は、表示制御機能515により種々の情報を表示する。例えば、ディスプレイ53は、画像生成機能513により生成されたMR画像、画像処理機能514により生成されたMR画像、撮像プロトコルの設定画面等を表示する。ディスプレイ53としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0032】
入力インタフェース54は、ユーザからの各種指令を受け付ける入力機器を含む。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ、タッチスクリーン、タッチパッド等が利用可能である。なお、入力機器は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、磁気共鳴イメージング装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路も入力インタフェース54の例に含まれる。
【0033】
通信インタフェース55は、LAN(Local Area Network)等を介して磁気共鳴イメージング装置1と、ワークステーションやPACS(Picture Archiving and Communication System)、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)等とを接続するインタフェースである。通信インタフェース55は、各種情報を接続先のワークステーション、PACS、HIS及びRISとの間で送受信する。
【0034】
次に、高周波増幅装置30について詳しく説明する。図2は、高周波増幅装置30の構成の一例を示す図である。図2に示すように、高周波増幅装置30は、交流電源31と、スイッチング電源(以下、SW電源と呼ぶ)32と、コンデンサ33と、増幅回路34と、整流・平滑回路35と、定電圧・定電流回路36と、通信回路37と、制御装置38とを備える。
【0035】
SW電源32は、定電圧型の電源装置である。SW電源32は、交流電源31から供給される交流電力(交流電圧)を所望の直流電力(直流電圧)に変換し、変換した直流電力をコンデンサ33に出力する。SW電源32は、複数のスイッチング素子を有し、複数のスイッチング素子のONとOFFとを個別に切り替えることにより交流電力を直流電力に変換する。
【0036】
コンデンサ33は、SW電源32から供給された直流電力により充電され、蓄積した直流電力を増幅回路34に供給する。
【0037】
コンデンサ33から増幅回路34に供給される直流電力は、第1の直流電力の一例である。また、SW電源32は、交流電源31からの交流電力を第1の直流電力に変換して増幅回路34に供給する第1電力供給部の一例である。
【0038】
増幅回路34は、直流電力を消費してRFパルスを増幅する。具体的には、増幅回路34は、コンデンサ33から供給された直流電力を消費してシーケンス制御回路29から供給されたRFパルスの信号を増幅し、増幅したRFパルスの信号(以下、増幅パルスと呼ぶ)を送信コイル45に出力する。RFパルスの信号は、アナログデータまたはデジタルデータとして入力される。増幅回路34は、増幅素子を用いた増幅機構と電子回路とを含む。増幅素子は、例えば、FET等のトランジスタである。電子回路は、所定の電圧が印加されることにより、入力信号を増幅して増幅信号を出力する。電子回路は、例えば、FETのプッシュプル型増幅回路を含んだ電子回路により構成される。増幅回路34は、増幅部の一例である。
【0039】
以上のように、高周波増幅装置30は、シーケンス制御回路29から取得した供給されたRFパルスを増幅し、増幅パルスを送信コイル45に出力する。
【0040】
整流・平滑回路35は、交流電源31から供給された交流電力(交流信号)を直流電力(直流信号)に変換する回路である。整流・平滑回路35は、例えば、入力された交流電力(交流信号)を整流するダイオードブリッジと、入力された交流電力(交流信号)を平滑化するコンデンサとにより構成される。
【0041】
定電圧・定電流回路36は、整流・平滑回路35から供給された直流電力を所望の電圧値及び電流値になるように制御し、制御装置38の制御の元で、増幅回路34に供給する。すなわち、定電圧・定電流回路36及び整流・平滑回路35は、交流電源31からの交流電力を直流電力に変換して、変換した直流電力を増幅回路34に供給する。
【0042】
定電圧・定電流回路36から増幅回路34に供給される直流電力は、SW電源32及びコンデンサ33から増幅回路34に供給される直流電力が足りない場合に増幅回路34に供給される補助電力として用いられる。定電圧・定電流回路36から増幅回路34に供給される直流電力は、第2の直流電力の一例である。また、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、増幅回路34に第2の直流電力を供給する第2電力供給部の一例である。
【0043】
高周波増幅装置30は、交流電源31を共有し、交流電源31の電力を増幅回路34に供給する第1の電力供給系統と第2の電力供給系統とを有する。第1の電力供給系統は、SW電源32と、コンデンサ33と、増幅回路34とを含む。SW電源32の入力端は交流電源31に接続され、SW電源32の出力端は増幅回路34の入力端に接続される。そして、SW電源32と増幅回路34との間にはコンデンサ33が設けられる。コンデンサ33と増幅回路34とを結ぶ配線の一つは、アース接続される。コンデンサ33と増幅回路34とを結ぶ他の配線は、定電圧・定電流回路36の出力端に接続される。第1の電力供給系統は、増幅回路34に、SW電源32により発生した直流電力を常時供給する。
【0044】
第2の電力供給系統は、整流・平滑回路35と、定電圧・定電流回路36と、増幅回路34とを含む。整流・平滑回路35の入力端は交流電源31に接続され、整流・平滑回路35の出力端は定電圧・定電流回路36の入力端に接続される。定電圧・定電流回路36の出力端は増幅回路34の入力端に接続される。より詳細には、定電圧・定電流回路36の出力端は、コンデンサ33と増幅回路34とを結ぶ配線に分岐接続される。整流・平滑回路35の出力と定電圧・定電流回路36の出力は、アースに分岐接続されている。第2の電力供給系統は、増幅回路34に、定電圧・定電流回路36により発生した直流電力を補助的に供給する。整流・平滑回路35と定電圧・定電流回路36とは、補助電源として機能する。
【0045】
このように、SW電源32は、交流電源31と増幅回路34とを接続する第1経路に設けられ、交流電源31からの交流電力を直流電力に変換して増幅回路34に供給する。すなわち、SW電源32は、第1経路を介して増幅回路34に変換した直流電力を供給する。また、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、第1経路に分岐接続された第2経路に設けられ、決められたタイミングにおいて、定電圧及び定電流の直流電力を増幅回路34に供給する。すなわち、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、第1経路とは異なる第2経路を介して、増幅回路34に直流電力を供給する。このため、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、SW電源32から直流電力を供給する経路とは異なる経路を用いて、交流電源31からの直流電力を供給することができる。
【0046】
通信回路37は、LAN(Local Area Network)等を介して、高周波増幅装置30とシーケンス制御回路29とを接続する。
【0047】
制御装置38は、通信回路37を介して、シーケンス制御回路29に接続されている。制御装置38は、シーケンス制御回路29からパルスシーケンスに関する情報(以下、パルスシーケンス情報と呼ぶ)を取得し、パルスシーケンス情報に基づいて、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から増幅回路34に直流電力を供給するタイミングを決定する。整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から増幅回路34に供給される直流電力は、SW電源32及びコンデンサ33から増幅回路34に供給される直流電力が、RFパルスを所定の大きさに増幅するために必要な電力に満たない場合に、足りない電力を補うための補助的な電力として用いられる。以下、SW電源32及びコンデンサ33から増幅回路34に供給される直流電力を主電源電力と呼び、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から増幅回路34に供給される直流電力を補助電力と呼ぶこととする。
【0048】
制御装置38は、パルスシーケンス情報に基づいて、補助電力を増幅回路34に供給するタイミング(以下、補助電力の供給タイミングと呼ぶ)を決定し、補助電力の供給タイミングに基づいて定電圧・定電流回路36の作動状態を制御することにより、定電圧・定電流回路36から増幅回路34への補助電力の供給状態を制御する。
【0049】
次に、制御装置38の構成について、詳しく説明する。
【0050】
制御装置38は、処理回路381とメモリ382とを備える。処理回路381は、メモリ382内のプログラムを呼び出し実行することにより、決定機能3811及び出力制御機能3812を実行するプロセッサである。決定機能3811を実現する処理回路381は、決定部の一例である。出力制御機能3812を実現する処理回路381は、出力制御部の一例である。
【0051】
なお、図2においては、単一の処理回路381にて決定機能3811及び出力制御機能3812が実現されるものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより各機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路381の機能の一部がホストコンピュータ50又はシーケンス制御回路29に組み込まれても良く、処理回路381の一部がシーケンス制御回路29と同一の基板に実装されても良い。処理回路381が実行する各機能についての上記説明は、以下の各実施形態及び変形例でも同様である。
【0052】
処理回路381は、決定機能3811により、パルスシーケンス情報に基づいて、補助電力を供給するタイミング(以下、補助電力の供給タイミングと呼ぶ)を決定する。パルスシーケンス情報は、RFパルスの印加タイミングと、RFパルスの波形に関する情報(以下、波形情報と呼ぶ)とを含む。RFパルスは、間欠的に生成される複数のパルスを含む。波形情報は、各パルスの波高値(出力電圧)と、各パルスの出力時間(パルス幅)を含む。パルスシーケンス情報は、実行するパルスシーケンスのシーケンス名や等を含んでいてもよい。パルスシーケンス情報は、シーケンス制御回路29から入力される。
【0053】
また、処理回路381は、決定機能3811により、RFパルスを増幅するために増幅回路34で必要となる電力(以下、必要電力と呼ぶ)を算出し、算出した必要電力に基づいて、補助電力の供給タイミングを決定する。この際、処理回路381は、例えば、各パルスの波高値(出力電圧)と、各パルスの出力時間(パルス幅)を用いて、必要電力を算出する。
【0054】
また、処理回路381は、決定機能3811により、SW電源32及びコンデンサ33から増幅回路34に供給することができる電力(以下、供給可能電力と呼ぶ)を算出する。この際、処理回路381は、SW電源32の電力供給能力とコンデンサ33の電力容量とを用いて供給可能電力を算出する。
【0055】
また、処理回路381は、決定機能3811により、供給可能電力と必要電力を比較し、供給可能電力が必要電力よりも小さい期間(以下、電力不足期間と呼ぶ)を予測する。そして、処理回路381は、電力不足期間において足りない電力が補われるように、補助電力の供給タイミングを決定する。
【0056】
具体的には、処理回路381は、増幅回路34に供給される主電源電力と補助電力の合計が、必要電力以上の大きさとなるように、補助電力の供給タイミングと補助電力の大きさを算出する。補助電力の供給タイミングは、補助電力の供給を開始するタイミング及び補助電力を供給する時間(以下、補助電力の出力時間と呼ぶ)を含む。補助電力の供給タイミングは、補助電力の供給を終了するタイミングを含んでもよい。補助電力の大きさは、供給可能電力と必要電力との差に応じて決定される。また、補助電力の供給タイミングは、電力不足期間に応じて、決定される。具体的には、補助電力の供給タイミングは、補助電力の供給期間が電力不足期間を含むように決定される。
【0057】
また、処理回路381は、決定機能3811により、決定した補助電力に関する情報をパルスシーケンス情報に関連付けて、シーケンス制御回路29に出力する。処理回路381は、補助電力に関する情報は、補助電力の供給タイミングと補助電力の大きさを含む。シーケンス制御回路29は、取得した補助電力に関する情報に基づいて、高周波増幅装置30を制御する。
【0058】
処理回路381は、出力制御機能3812により、シーケンス制御回路29の制御に従い、定電圧・定電流回路36の状態を制御する。定電圧・定電流回路36は、処理回路381の制御に基づいて、増幅回路34に補助電力を供給する。
【0059】
次に、高周波増幅装置30により実行されるタイミング決定処理の動作について説明する。タイミング決定処理とは、パルスシーケンス情報に基づいて補助電力を供給するタイミングを決定する処理である。図3は、タイミング決定処理の手順の一例を示すフローチャートである。図3では、一例として、1パルス毎に必要電力と供給可能電力を算出し、補助電力の供給が必要か否かを判断する場合を例に説明する。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0060】
(タイミング決定処理)
(ステップS101)
処理回路381は、決定機能3811により、シーケンス制御回路29からパルスシーケンス情報を取得する。図4は、シーケンス制御回路29から増幅回路34に供給されるRFパルスの一例を示す図である。図4において、横軸は、シーケンスの経過時間[sec]を示し、縦軸は、RFパルスの出力電力[W]を示す。パルスシーケンス情報は、パルスA-A11のそれぞれの出力電力P-P11[W]と出力時間T-T11[sec]を含む。出力時間T-T11は、パルス幅と呼ばれてもよい。
【0061】
(ステップS102)
処理回路381は、以下の式(1)を用いて、パルスA-A11のそれぞれについて、1パルス当たりの必要電力EP1―EP11[W]を算出する。式(1)において、「η」-「η11」のそれぞれは、対応するパルスにおける高周波増幅装置30の効率を示す。
【0062】
【数1】
【0063】
(ステップS103)
処理回路381は、以下の式(2)を用いて、パルスA-A11のそれぞれについて、1パルス当たりの供給可能電力EPS1―EPS11[W]を算出する。式(2)において、「PSW」は、SW電源32の出力電力[W]を示す。「ECB」は、コンデンサ33から供給可能なエネルギ-[W]を示す。「ECB」は、以下の式(3)を用いて算出される。式(3)において、「C」は、コンデンサ33の電力容量(静電容量)[F]を示す。「Vdp」は、コンデンサ33の降下電圧[V]を示す。
【0064】
【数2】
【0065】
【数3】
【0066】
(ステップS104)
処理回路381は、パルスA-A11のそれぞれについて、1パルス当たりの必要電力と供給可能電力とを比較する。必要電力が供給可能電力以下である場合(ステップS104-No)、処理回路381は、主電源電力のみで増幅回路34で必要な電力を賄えると判断し、補助電力の供給が不要であると判断する。
【0067】
(ステップS105)
必要電力が供給可能電力よりも大きい場合(ステップS104-Yes)、処理回路381は、主電源電力のみでは増幅回路34に供給される電力が足りないため、補助電力の供給が必要であると判断する。
【0068】
この場合、処理回路381は、増幅回路34に供給する補助電力の供給開始タイミングを決定する。補助電力の出力開始タイミングは、対応するパルスの開始タイミングよりもα[sec]だけ前のタイミングである。「α」は、予め設定される定数である。「α」は、例えば、SW電源32の能力、コンデンサ33の容量、SW電源32の立ち上がり等の性能を考慮して算出される。
【0069】
次に、処理回路381は、増幅回路34に供給する補助電力の出力時間t[sec]を算出する。補助電力の出力時間tは、以下の式(4)を用いて算出される。式(4)において、「I」は、定電圧・定電流回路36の出力電流の電流値[A](以下、補助電力の電流値と呼ぶ)を示す。補助電力の電流値Iは、必要電力と供給可能電力との差[W]に応じて予め算出される。
【0070】
【数4】
【0071】
処理回路381は、パルスA-A11のそれぞれに対して、上記ステップS101からステップS105までの処理を実行する。これにより、全てのパルスA-A11について、増幅回路34に補助電力を供給するか否かが判断される。また、補助電力の供給が必要な場合、補助電力の出力開始タイミング、補助電力の電流値I、及び補助電力の出力時間tが算出される。
【0072】
(ステップS106)
処理回路381は、補助電力の出力に関する情報(以下、補助電力情報と呼ぶ)を生成する。補助電力情報は、補助電力の出力開始タイミング、補助電力の電流値I、及び補助電力の出力時間tを含む。処理回路381は、補助電力情報をパルスシーケンス情報に関連付けてシーケンス制御回路29へ出力する。
【0073】
シーケンス制御回路29は、補助電力情報に基づいて、SW電源32から増幅回路34へ供給する電力と、定電圧・定電流回路36から増幅回路34へ供給する補助電力を同期的に制御する。この際、制御装置38は、シーケンス制御回路29の制御に従って定電圧・定電流回路36から増幅回路34への補助電力の供給を制御する。
【0074】
図5は、増幅回路34へ供給される電力の時間変化を説明するための図である。図5には、グラフD1-D4が表示されている。グラフD1-D4の横軸は、シーケンスの経過時間を示す。グラフD1の縦軸は、パルスシーケンスに従って生成されるRFパルスの出力電力[W]を示す。グラフD2の縦軸は、コンデンサ33を介してSW電源32から増幅回路34に出力される電力の電圧[V]を示す。グラフD3の縦軸は、補助電源として機能する定電圧・定電流回路36から増幅回路34に出力される補助電力の電圧[V]を示す。グラフD4の縦軸は、増幅回路34に供給される電圧[V]を示す。
【0075】
ここでは、パルスAの出力期間における必要電力が供給可能電力よりも大きくなる場合を例に説明する。この場合、パルスAが出力されている期間は、電力不足期間となる。そして、パルスAが出力されている期間では、グラフD2に示すように、SW電源32から増幅回路34に出力される電力が徐々に降下する。すなわち、電力不足期間には、SW電源32の出力電圧の電圧降下が発生する。
【0076】
一方、電力不足期間では、グラフD3に示すように、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に定電圧の補助電力が供給される。補助電力の出力開始タイミングは、パルスAの出力開始タイミングよりもαだけ前に設定されている。また、補助電力の供給終了タイミングがパルスAの出力終了タイミングよりも後になるように、補助電力の出力時間tが設定されている。このため、パルスAの出力期間を含む期間に渡って、補助電力が増幅回路34に供給される。
【0077】
増幅回路34に供給される電圧は、グラフD2に示すSW電源32の出力電圧と、グラフD3に示す補助電力の出力電圧の合計値の影響を受ける。このため、グラフD4に示すように、電力不足期間において、SW電源32から出力される電力に加えて定電圧・定電流回路36から補助電力が増幅回路34に供給されることにより、増幅回路34に供給される電力の電圧は、SW電源32の出力電圧の電圧降下が発生した場合であっても、一定値に維持される。
【0078】
以下、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の効果について説明する。
【0079】
シーケンス制御回路29が実行するパルスシーケンスがCESTやCASLである場合には、RFパルスの印加時間が長くなるため、増幅回路34においてRFパルスを増幅するために必要な電力が大きくなることがある。この場合、増幅回路34で必要な電力がSW電源32及びコンデンサ33から供給可能な電力を超えてしまい、通常のSW電源32では出力能力が足りなくなることがある。一般的に、増幅回路34に供給可能な電力を大きくする場合、SW電源32やコンデンサ33を大型化する必要がある。一方で、高周波増幅装置30を小型化することが望まれている。
【0080】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、増幅回路34と、SW電源32と、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36と、制御装置38と、を備える。増幅回路34は、直流電力を消費して高周波パルス(RFパルス)を増幅することができる。SW電源32は、増幅回路34に直流電力を供給することができる。整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、増幅回路34に補助電力を供給することができる。制御装置38は、パルスシーケンス情報に基づいて、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から増幅回路34に補助電力を供給するタイミングを決定することができる。
【0081】
上記構成により、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1によれば、パルスシーケンス情報に基づいて、SW電源32から供給される電力に加えて、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から増幅回路34へ直流電力を供給することができる。このため、CESTのようにパルスの印可時間が長い撮像方法を実行する場合であっても、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から供給される電力を補助電力として使用することにより、SW電源32及び高周波増幅装置30を大型化することなく、増幅回路34に必要な電力を適切に供給することができる。また、電源容量の追加無しにMRIシステムからのシーケンス条件を受信することで電力不足を事前に予測し、予測結果に従って電力供給を行うことが可能となる。
【0082】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、パルスシーケンス情報に基づいて増幅回路34で必要となる必要電力を算出し、必要電力に基づいて補助電力の供給タイミングを決定することができる。これにより、増幅回路34で必要な電力を考慮して、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に供給される補助電力の供給タイミングを決定することにより、パルスシーケンスの電力効率を向上させることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、SW電源32から増幅回路34に供給可能な供給可能電力を算出し、供給可能電力が必要電力よりも小さい電力不足期間において足りない電力が補われるように、補助電力の供給タイミングを決定することができる。これにより、取得したパルスシーケンスがSW電源32の電力能力を超えるような波形条件だと判断した場合に、定電圧・定電流回路36から電力を補助することにより、増幅回路34で必要な電力を確保することができる。
【0084】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、供給可能電力と必要電力との差に応じて、補助電力の大きさを決定することができる。これにより、増幅回路34で必要となる電力に応じた適切な大きさの電力を、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に供給することができ、パルスシーケンスの電力効率を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、電力不足期間に応じて、補助電力の供給タイミングを決定することができる。これにより、SW電源32から供給される電力が不足するタイミングに合わせて、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に補助電力を供給することができる。
【0086】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、補助電力の供給期間が電力不足期間を含むように、補助電力の供給期間(補助電力の出力時間)を決定することができる。例えば、コンデンサ33の電圧降下が起きるタイミングよりも前のタイミングから、補助電力の出力を開始することができる。これにより、電力不足の発生が予測されるタイミングよりも前もって補助電力からの出力を開始しておくことで、スムーズに増幅回路34へ電力を補助することができる。また、SW電源32から供給される電力が不足する期間において確実に補助電力を供給することができる。なお、補助電力の供給終了タイミングを電力不足期間の終了タイミングよりも確実に後にするために、補助電力の出力時間tの算出時において、定数をさらに加算することにより、補助電力の出力時間tをさらに長くしてもよい。
【0087】
CESTのようにパルスの印可時間が長い撮像方法を実行する場合には、1パルス毎に電力不足が生じるか否かを判断することが好ましい。本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1によれば、1パルス毎に供給可能電力と必要電力を算出し、算出した供給可能電力と必要電力とを比較することにより、増幅回路34において電力が不足するタイミングを精度よく決定することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、SW電源32は、第1経路を介して増幅回路34に直流電力を供給する。整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、第1経路に分岐接続された第2経路に設けられる。整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、交流電源31からの交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を第1経路とは異なる第2経路を介して増幅回路34に直流電力を供給することができる。すなわち、SW電源32から直流電力を供給する経路とは異なる経路を用いて、交流電源31からの直流電力を増幅回路34に供給することができる。これにより、交流電源31からの電力を利用して、高周波増幅装置30を大型化することなく、SW電源32の出力能力では不足する電力を補助することができる。
【0089】
(第1の実施形態の第1の変形例)
【0090】
第1の実施形態の第1の変形例について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。本変形例に係る磁気共鳴イメージング装置1は、単位時間毎に必要電力と供給可能電力を算出し、補助電力の供給が必要か否かを判断する。
【0091】
次に、本変形例の高周波増幅装置30により実行されるタイミング決定処理の動作について説明する。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0092】
(タイミング決定処理)
(ステップS101)
処理回路381は、決定機能3811により、シーケンス制御回路29からパルスシーケンス情報を取得する。図6は、増幅回路34へ供給される電力の時間変化を説明するための図である。図6には、グラフD1-D4が表示されている。グラフD1-D4の横軸は、シーケンスの経過時間を示す。グラフD1は、パルスシーケンスを示す図である。グラフD1の縦軸は、パルスシーケンスに従って生成されるRFパルスの出力電力[W]を示す。図6のグラフD2の縦軸は、コンデンサ33を介してSW電源32から増幅回路34に出力される電力の電圧[V]を示す。グラフD3の縦軸は、補助電源として機能する定電圧・定電流回路36から増幅回路34に出力される補助電力の電圧[V]を示す。グラフD4の縦軸は、増幅回路34に供給される電圧[V]を示す。
【0093】
パルスシーケンス情報は、パルスA-A11のそれぞれの出力電力P-P11[W]と出力時間T-T11[sec]を含む。また、パルスシーケンス情報は、電力算出期間TA1-TA3に関する情報を含む。電力算出期間TA1-TA3に関する情報は、電力算出期間TA1-TA3の長さ(以下、電力算出時間と呼ぶ)T[sec]と、電力算出期間TA1-TA3のそれぞれの開始タイミング及び終了タイミングを含む。図6の一例では、電力算出期間TA1はパルスAからパルスAまでを含み、電力算出期間TA2はパルスAからパルスAまでを含み、電力算出期間TA3はパルスAからパルスA11までを含む。電力算出時間Tは、単位時間の一例である。
【0094】
(ステップS102)
処理回路381は、以下の式(5)を用いて、電力算出期間TA1-TA3のそれぞれについて、単位時間当たりの必要電力EPE1―EPE3[W]を算出する。この際、各電力算出時間に含まれるパルスの出力電力、出力時間及び効率を用いて、必要電力を算出する。式(5)において、「EPE1」-「EPE11」のそれぞれは、対応する電力算出時間における必要電力[W]を示す。「η」-「η11」のそれぞれは、対応するパルスにおける高周波増幅装置30の効率を示す。
【0095】
【数5】
【0096】
(ステップS103)
処理回路381は、以下の式(6)を用いて、電力算出期間TA1-TA3について、単位時間当たりの供給可能電力EPST[W]を算出する。式(6)において、「EPST」は、電力算出期間TA1-TA3における供給可能電力を示す。「PSW」は、SW電源32の出力電力[W]を示す。「ECB」は、コンデンサ33から供給可能なエネルギ-[W]を示す。「ECB」は、第1の実施形態で説明した式(3)を用いて算出される。
【0097】
【数6】
【0098】
(ステップS104)
処理回路381は、電力算出期間TA1-TA3のそれぞれについて、単位時間当たりの必要電力と供給可能電力とを比較する。必要電力が供給可能電力以下である場合(ステップS104-No)、処理回路381は、主電源電力のみで増幅回路34で必要な電力を賄えると判断し、補助電力の供給が不要であると判断する。
【0099】
(ステップS105)
必要電力が供給可能電力よりも大きい場合(ステップS104-Yes)、処理回路381は、主電源電力のみでは増幅回路34に供給される電力が足りないため、補助電力の供給が必要であると判断する。この場合、処理回路381は、増幅回路34に供給する補助電力の出力開始タイミングを決定する。出力開始タイミングは、例えば、対応する電力算出時間の開始タイミングと同じタイミングである。また、処理回路381は、増幅回路34に供給する補助電力の出力時間t[sec]を算出する。出力時間tは、第1の実施形態で説明した式(4)を用いて算出される。本変形例では、「α」は、補助電力の出力終了タイミングを調整するための定数である。「α」は、例えば、SW電源32の能力、コンデンサ33の容量、SW電源32の立ち上がり等の性能を考慮して算出される。
【0100】
処理回路381は、電力算出期間TA1-TA3のそれぞれに対して、上記ステップS101からステップS105までの処理を実行する。これにより、全ての電力算出期間TA1-TA3について、増幅回路34に補助電力を供給するか否かが判断される。また、補助電力の供給が必要な場合、補助電力の出力開始タイミング、補助電力の電流値I、及び補助電力の出力時間tが算出される。
【0101】
(ステップS106)
処理回路381は、補助電力情報を生成する。補助電力情報は、補助電力の出力開始タイミング、補助電力の電流値I、及び補助電力の出力時間tを含む。処理回路381は、補助電力情報をパルスシーケンス情報に関連付けてシーケンス制御回路29へ出力する。
【0102】
シーケンス制御回路29は、補助電力情報に基づいて、SW電源32から増幅回路34へ供給する電力と、定電圧・定電流回路36から増幅回路34へ供給する補助電力を同期的に制御する。
【0103】
図6を用いて、電力算出期間TA3において必要電力が供給可能電力よりも大きくなる場合を例に説明する。この場合、電力算出期間TA3は、電力不足期間となる。そして、電力算出期間TA3では、グラフD2に示すように、SW電源32から増幅回路34に出力される電力が徐々に降下する。すなわち、電力不足期間には、SW電源32の出力電圧の電圧降下が発生する。
【0104】
一方、電力不足期間では、グラフD3に示すように、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に定電圧の補助電力が供給される。補助電力の出力開始タイミングは、電力算出期間TA3の開始タイミングよりもαだけ前に設定されている。また、補助電力の供給終了タイミングが電力算出期間TA3の出力終了タイミングよりも後になるように、補助電力の出力時間tが設定されている。このため、電力算出期間TA3を含む期間に渡って、補助電力が増幅回路34に供給される。
【0105】
増幅回路34に供給される電圧は、グラフD2に示すSW電源32の出力電圧と、グラフD3に示す補助電力の出力電圧の合計値の影響を受ける。このため、グラフD4に示すように、電力不足期間において、SW電源32から出力される電力に加えて定電圧・定電流回路36から補助電力が増幅回路34に供給されることにより、増幅回路34に供給される電力の電圧は、SW電源32の出力電圧の電圧降下が発生した場合であっても、一定値に維持される。
【0106】
本変形例に係る磁気共鳴イメージング装置1は、第1の実施形態に係る効果に加えて、以下の効果を有する。
【0107】
図6に示す波形のように、短い時間内に多くのパルスが印可される撮像方法を実行する場合には、1パルス当たりの必要電力は小さいが、一定期間内における必要電力が大きくなるため、単位時間毎に電力不足が生じるか否かを判断することが好ましい。本変形例に係る磁気共鳴イメージング装置1によれば、単位時間毎に供給可能電力と必要電力を算出し、算出した供給可能電力と必要電力とを比較することにより、増幅回路34において電力が不足するタイミングを精度よく決定することができる。
【0108】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態の構成を以下の通りに変形したものである。実施形態と同様の構成、動作、及び効果については、説明を省略する。本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、パルスシーケンス情報を用いる代わりに、SW電源32から増幅回路34に供給される電力を監視し、監視結果に基づいて定電圧・定電流回路36から増幅回路34への補助電力の出力を制御する。
【0109】
図7は、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1の構成を示す図である。処理回路381は、出力制御機能3812及び監視機能3813を実行する。出力制御機能3812を実現する処理回路381は、制御部の一例である。監視機能3813を実現する処理回路381は、監視部の一例である。
【0110】
処理回路381は、監視機能3813により、SW電源32から増幅回路34へ供給される電力を監視する。
【0111】
処理回路381は、出力制御機能3812により、SW電源32から増幅回路34へ供給される電力の監視結果に基づいて、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に補助電力を供給するタイミングを制御する。具体的には、処理回路381は、SW電源32から出力される電力の電圧降下が検出されたことに基づいて、定電圧・定電流回路36から増幅回路34への補助電力の供給を開始させる。そして、処理回路381は、SW電源32から出力される電力の電圧降下が解消したことに基づいて、定電圧・定電流回路36から増幅回路34への補助電力の供給を終了させる。
【0112】
(補助電力制御処理)
次に、本実施形態の磁気共鳴イメージング装置1により実行される補助電力制御処理の動作について説明する。補助電力制御処理とは、SW電源32から出力される電力の監視結果に基づいて、補助電力の供給状態を制御する処理である。図8は、本実施形態に係る補助電力制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。なお、以下で説明する各処理における処理手順は一例に過ぎず、各処理は可能な限り適宜変更可能である。また、以下で説明する処理手順について、実施の形態に応じて、適宜、ステップの省略、置換、及び追加が可能である。
【0113】
(ステップS201)
シーケンスが開始されると、処理回路381は、監視機能3813により、SW電源32とコンデンサ33との間の電圧と、SW電源32からコンデンサ33へ流れる電流とを検出することにより、SW電源32から増幅回路34へ供給される電力を継続的に監視する。
【0114】
(ステップS202)
処理回路381は、監視機能3813により、SW電源32から増幅回路34へ供給される電力において電圧降下が発生したか否かを、継続的に判定する。電圧降下が発生していない場合(ステップS202-No)、処理回路381は、主電源電力のみで増幅回路34で必要な電力を賄えると判断し、補助電力の供給が不要であると判断する。
【0115】
(ステップS203)
電圧降下が発生した場合(ステップS202-Yes)、処理回路381は、主電源電力のみでは増幅回路34に供給される電力が足りないため、補助電力の供給が必要であると判断する。そして、処理回路381は、出力制御機能3812により、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に補助電力の供給を開始させる。この際、定電圧・定電流回路36の電流値Iとして、例えば、メモリ382に予め記憶された既定値が用いられる。電圧降下が検出されなくなると、処理回路381は、増幅回路34における電力不足が解消したと判断し、定電圧・定電流回路36から増幅回路34への補助電力の出力を停止させる。
なお、補助電力の供給の開始から所定の時間が経過したことに基づいて、増幅回路34への補助電力の供給を終了してもよい。
【0116】
(ステップS204)
処理回路381は、監視機能3813により、シーケンスが終了するまで、ステップS202及びステップS203の処理を繰り返す。
【0117】
図9は、増幅回路34へ供給される電力の時間変化を説明するための図である。図9には、グラフD2-D4が表示されている。グラフD2-D4の横軸は、シーケンスの経過時間を示す。グラフD2の縦軸は、コンデンサ33を介してSW電源32から増幅回路34に出力される電力の電圧[V]を示す。グラフD3の縦軸は、補助電源として機能する定電圧・定電流回路36から増幅回路34に出力される補助電力の電圧[V]を示す。グラフD4の縦軸は、増幅回路34に供給される電圧[V]を示す。
【0118】
グラフD2からグラフD4に示すように、SW電源32の出力電圧において電圧降下が発生すると、定電圧・定電流回路36から増幅回路34に定電圧の補助電力が供給される。増幅回路34に供給される電圧は、グラフD2に示すSW電源32の出力電圧と、グラフD3に示す補助電力の出力電圧の合計値の影響を受ける。このため、SW電源32から出力される電力に加えて定電圧・定電流回路36から補助電力が増幅回路34に供給されることにより、増幅回路34に供給される電力の電圧は、SW電源32の出力電圧の電圧降下が発生した場合であっても、一定値に維持される。そして、電圧降下が検出されなくなると、補助電力の供給が停止される。
【0119】
以下、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の効果について説明する。
【0120】
本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1は、増幅回路34と、SW電源32と、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36と、制御装置38と、を備える。増幅回路34は、直流電力を消費して高周波パルス(RFパルス)を増幅することができる。SW電源32は、交流電源31からの交流電力を直流電力に変換して増幅回路34に供給することができる。整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、増幅回路34に補助電力を供給することができる。制御装置38は、SW電源32から増幅回路34へ供給される電力を監視し、監視結果に基づいて、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36から増幅回路34に補助電力を供給するタイミングを制御することができる。
【0121】
上記構成により、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1によれば、パルスシーケンス情報を取得できない場合であっても、SW電源32から増幅回路34へ供給される電力の電圧降下を経時的に監視することにより、第1の実施形態と同様に、SW電源32及び高周波増幅装置30を大型化することなく、増幅回路34に必要な電力を適切に供給することができる。
【0122】
(第1の実施形態及び第2の実施形態の変形例)
なお、整流・平滑回路35及び定電圧・定電流回路36は、交流電源31とは別に設けられた直流電源から供給される直流電力を所望の電圧値及び電流値になるように制御し、増幅回路34に出力してもよい。
【0123】
また、定電圧・定電流回路36から供給される電力を、磁気共鳴イメージング装置1の立ち上がり時に用いてもよい。最初に磁気共鳴イメージング装置1本体の電源をONにしたときには、SW電源32から空のコンデンサ33に急速に電力がチャージされるため、SW電源32に負担がかかる。SW電源32からではなく、定電圧・定電流回路36からコンデンサ33に電力を供給することにより、SW電源32に加えて、定電圧・定電流回路36からもコンデンサ33に電力を供給することにより、SW電源32の負荷を軽減することができる。
【0124】
また、上記実施形態の構成は、傾斜磁場電源21に設けられる傾斜磁場の増幅システムにも適用可能である。
【0125】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、高周波パルスを増幅する増幅回路に必要な電力を適切に供給することができる。
【0126】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0127】
1…磁気共鳴イメージング装置
11…架台
13…寝台
21…傾斜磁場電源
25…受信回路
27…寝台駆動装置
29…シーケンス制御回路
30…高周波増幅装置
31…交流電源
32…SW電源
33…コンデンサ
34…増幅回路
35…整流・平滑回路
36…定電圧・定電流回路
37…通信回路
38…制御装置
381…処理回路
3811…決定機能
3812…出力制御機能
3813…監視機能
382…メモリ
41…静磁場磁石
43…傾斜磁場コイル
45…送信コイル
47…受信コイル
50…ホストコンピュータ
-A11…パルス
-P11…出力電力
-T11、t…出力時間
α…定数
C…静電容量
Vdp…降下電圧
I…電流値
A1-TA3…電力算出期間

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9