(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】音声案内システム、音声案内方法及び音声案内プログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20241125BHJP
G08G 1/005 20060101ALI20241125BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G08G1/005
H04N7/18 D
(21)【出願番号】P 2021058201
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 彰
(72)【発明者】
【氏名】羽山 西蔵
(72)【発明者】
【氏名】安藤 啓祐
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-063305(JP,A)
【文献】特開2013-161145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0063893(US,A1)
【文献】特開2017-211932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G08G 1/00-99/00
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一人又は複数のユーザが往来する撮像画像を撮像するカメラ装置と、
音声案内を出力するためのスピーカ装置と、
前記撮像画像の解析結果に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力する解析装置と、を備える音声案内システムであって、
前記解析装置は、
前記カメラ装置で撮像された前記撮像画像を解析して、視覚に障害のあるユーザであるか否か、視覚に障害のあるユーザの現在位置、及び、視覚に障害のあるユーザの特徴を検出する画像解析部と、
検出した前記特徴を示す音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力することで、検出した視覚に障害のあるユーザに対して自己に対する音声案内であることを認識させたうえで、視覚に障害のあるユーザの現在位置に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力する出力音声制御部と、を備えること
を特徴とする音声案内システム。
【請求項2】
前記出力音声制御部は、前記画像解析部により解析された、視覚に障害のあるユーザの、少なくとも現在位置及び移動方向に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力すること
を特徴とする請求項1に記載の音声案内システム。
【請求項3】
前記出力音声制御部は、前記画像解析部により解析された、視覚に障害のあるユーザの、少なくとも現在位置、移動方向及び人物特徴に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力すること
を特徴とする請求項1に記載の音声案内システム。
【請求項4】
前記カメラ装置、スピーカ装置及び解析装置は、一体化された端末装置であり、前記撮像画像を撮像する場所に設けられること
を特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の音声案内システム。
【請求項5】
前記カメラ装置及び前記スピーカ装置は、一体化された端末装置であり、
前記解析装置は、ネットワーク又は通信ケーブルを介して前記端末装置と接続されること
を特徴とする請求項1から請求項3のうち、いずれか一項に記載の音声案内システム。
【請求項6】
一人又は複数のユーザが往来する撮像画像を撮像するカメラ装置と、音声案内を出力するためのスピーカ装置と、前記撮像画像の解析結果に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力する解析装置と、を備える音声案内システムの音声案内方法であって、
前記解析装置の画像解析部が、前記カメラ装置で撮像された前記撮像画像を解析して、視覚に障害のあるユーザであるか否か、視覚に障害のあるユーザの現在位置、及び、視覚に障害のあるユーザの特徴を検出する画像解析ステップと、
出力音声制御部が、検出した前記特徴を示す音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力することで、検出した視覚に障害のあるユーザに対して自己に対する音声案内であることを認識させたうえで、視覚に障害のあるユーザの現在位置に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力する出力音声制御ステップと、を備えること
を特徴とする音声案内方法。
【請求項7】
一人又は複数のユーザが往来する撮像画像を撮像するカメラ装置と、音声案内を出力するためのスピーカ装置と、前記撮像画像の解析結果に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力する解析装置と、を備える音声案内システムの音声案内プログラムであって、
コンピュータを、
前記カメラ装置で撮像された前記撮像画像を解析して、視覚に障害のあるユーザであるか否か、視覚に障害のあるユーザの現在位置、及び、視覚に障害のあるユーザの特徴を検出する画像解析部と、
検出した前記特徴を示す音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力することで、検出した視覚に障害のあるユーザに対して自己に対する音声案内であることを認識させたうえで、視覚に障害のあるユーザの現在位置に対応する音声案内を、前記スピーカ装置を介して出力する出力音声制御部として機能させること
を特徴とする音声案内プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声案内システム、音声案内方法及び音声案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、例えば駅、施設等の構内又は構外において、例えば「5m先に改札口があります」又は「3m先に横断歩道があります」等の音声案内が、視覚に障害のあるユーザ等に対して提供されている。
【0003】
しかし、視覚に障害のあるユーザが近辺に存在しない場合でも、繰り返し音声案内が行われると、音声案内が健常者、近隣の店舗の店員、近隣の居住者等に対するノイズとなることがある。これは、環境的にも好ましいことではない。
【0004】
このため、特許文献1(特開2020-125907号公報)に開示されている視覚障害者用音声案内システムは、駅構内を通行するユーザ(視覚障害者)に向けて、そのユーザの移動方向に応じた音声案内を行う。これにより、視覚障害者用音声案内システムは、駅構内を通行するユーザに対して不要となる音声案内を行わないようにすることができ、無駄な音声案内の出力を軽減可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の視覚障害者用音声案内システムを含め、従来の音声案内システムでは、視覚に障害のあるユーザが聴取した音声案内が、自分に対する音声案内なのか、又は、視覚に障害のある他のユーザに対する音声案内なのか、認識しづらい問題があった。
【0007】
例えば、視覚に障害のある複数のユーザが同じ場所に位置しており、一方のユーザと他方のユーザは、それぞれ異なる方向に歩行していたとする。この状況で、一方のユーザに対して「5m直進した場所に改札口があります」との音声案内を行ったとする。この一方のユーザに対して行った音声案内が、一方のユーザとは反対方向に向かって歩行している他方のユーザにより、自分に対する音声案内だと誤認識されると、他方のユーザは、5m直進しても改札口には到着できない不都合を生ずる。
【0008】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、視覚に障害のあるユーザに対して、出力されている音声案内が自分に対する音声案内であることを認識させ、ユーザ毎に音声案内を有効に機能させることができるような音声案内システム、音声案内方法及び音声案内プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、一人又は複数のユーザが往来する撮像画像を撮像するカメラ装置と、音声案内を出力するためのスピーカ装置と、撮像画像の解析結果に対応する音声案内を、スピーカ装置を介して出力する解析装置と、を備える音声案内システムであって、解析装置は、カメラ装置で撮像された撮像画像を解析して、視覚に障害のあるユーザであるか否か、視覚に障害のあるユーザの現在位置、及び、視覚に障害のあるユーザの特徴を検出する画像解析部と、検出した特徴を示す音声案内を、スピーカ装置を介して出力することで、検出した視覚に障害のあるユーザに対して自己に対する音声案内であることを認識させたうえで、視覚に障害のあるユーザの現在位置に対応する音声案内を、スピーカ装置を介して出力する出力音声制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、視覚に障害のあるユーザに対して、出力されている音声案内が自分に対する音声案内であることを認識させることができる。このため、ユーザ毎に音声案内を有効に機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施の形態となる音声案内システムのシステム構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態となる音声案内システムの他のシステム構成を示す図である。
【
図3】
図3は、実施の形態の音声案内システムに設けられている解析装置のブロック図である。
【
図4】
図4は、解析装置に記憶されている地図データのフォーマットの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、解析装置のCPUが音声案内プログラムを実行することで実現される各機能の機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態の音声案内システムの音声案内動作の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施の形態の音声案内システムにおける音声案内のタイミング及び音声案内の内容の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を提供した実施の形態の音声案内システムの説明をする。
【0013】
(システム構成)
図1は、実施の形態の音声案内システムのシステム構成の一例を示す図である。この
図1に示すように実施の形態の音声案内システムは、カメラ装置1、スピーカ装置2及び解析装置3を備えた端末装置50を備えている。
【0014】
カメラ装置1は、例えば定点カメラ装置となっており、固定された撮像領域内の通路等を通行するユーザを撮像する。なお、カメラ装置1は、撮像領域を変更可能なカメラ装置でもよい。スピーカ装置2は、音声案内の音声を出力する。解析装置3は、視覚に障害のあるユーザの特徴を解析する。そして、解析装置3は、視覚に障害のあるユーザに対して、音声案内の対象が自分であることを認識させたうえで音声案内を行う。詳しくは、後述する。
【0015】
一例ではあるが、端末装置50は、カメラ装置1~解析装置3を、物理的に一つの筐体内に設けて形成されている。そして、端末装置50は、例えば駅構内又は大型店舗の入り口等の、通行するユーザを監視可能な様々な場所に点在するように設けられる。
【0016】
なお、このような音声案内システムは、ネットワーク又は他の機器に接続することなく単独で動作させてもよいし(スタンドアローン)、
図1に点線で示すように管理室等に設けられた管理者端末装置4に接続して動作させてもよい。
【0017】
(システム構成の他の例)
図2は、実施の形態の音声案内システムのシステム構成の他の例を示す図である。この
図2の例の場合、音声案内システムは、複数の端末装置60と、例えば管理室等の設けられた管理者端末装置である解析装置3とを、インターネット等の広域網又はLAN(Local Area Network)等のプライベート網を介して相互に接続することで構成されている。
【0018】
端末装置60には、カメラ装置1及びスピーカ装置2が設けられている。カメラ装置1は、例えば定点カメラ装置となっており、固定された撮像領域内の通路等を通行するユーザを撮像する。なお、カメラ装置1は、撮像領域を変更可能なカメラ装置でもよい。スピーカ装置2は、音声案内の音声を出力する。
【0019】
解析装置3は、各端末装置60のカメラ装置1の撮像画像を解析して、視覚に障害のあるユーザの特徴を解析する。そして、解析装置3は、視覚に障害のあるユーザに対して、音声案内の対象が自分であることを認識させたうえで音声案内を行うように、対応する端末装置60のスピーカ装置2を制御する。詳しくは、後述する。
【0020】
(解析装置のハードウェア構成)
図3は、解析装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。この
図3に示すように、解析装置3は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、及び、通信部14を備えている。また、解析装置3は、HDD(Hard Disk Drive)15、入出力インターフェース(入出力I/F)16、及び、通信インターフェース(通信I/F)17を備えている。
【0021】
通信部14は、インターネット又はLAN等のネットワークを介して有線通信の他、ブルートゥース(登録商標)又はWi-Fi(登録商標)等の無線通信を行う。HDD15には、視覚に障害があるユーザに対して音声案内を行うための音声案内プログラム、地図データ及び案内音声データが記憶されている。
【0022】
地図データは、
図4に示すように、音声案内を行う地理的範囲に位置する施設、テナント、改札口、エレベータ装置等の施設名又は名称を含む施設情報及び位置情報と、その施設に対する音声案内を行う際の条件を示す出力条件情報とが関連付けられて記憶されている。
【0023】
入出力I/F16には、必要な場合に、表示部18及び操作部19が接続される。通信I/F17は、必要な場合に、ネットワークケーブルを介してネットワーク5に接続される。
【0024】
(解析装置の機能構成)
図5は、CPU11がHDD15に記憶されている音声案内プログラムを実行することでソフトウェア的に実現される各機能の機能ブロック図である。この
図5に示すように、CPU11は、音声案内プログラムを実行することで、映像取得部21、地図データ取得部22、画像解析部23、出力音声制御部24及び通信制御部25として機能する。
【0025】
映像取得部21は、各カメラ装置1で撮像された地理的範囲を往来するユーザの撮像画像を取得する。地図データ取得部22は、各カメラ装置1で撮像されている地理的範囲の地図データをHDD15から取得する。画像解析部23は、各カメラ装置1で撮像された撮像画像に基づいて、ユーザの特徴、及び、視覚障害の有無等解析する。出力音声制御部24は、画像解析部23の解析結果に対応する案内音声データをHDD15から読み出して、スピーカ装置2を介して出力制御する。通信制御部25は、視覚に障害があるユーザ等から助けを求める動作が解析された際に、管理者端末装置4等に緊急通知を行う。
【0026】
なお、この例では、映像取得部21~通信制御部25は、音声案内プログラムにより、ソフトウェアで実現することとした。しかし、これらのうち全部又は一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。
【0027】
また、音声案内プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイル情報でCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、音声案内プログラムは、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、半導体メモリ等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。また、音声案内プログラムは、インターネット等のネットワーク経由でインストールするかたちで提供してもよい。また、音声案内プログラムは、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
【0028】
(音声案内動作)
図6は、実施の形態の音声案内システムにおける音声案内動作の流れを示すフローチャートである。この
図6において、ステップS1では、映像取得部21が、各カメラ装置で撮像されたユーザ(通行人)の撮像画像を取得する。ステップS2では、画像解析部23が、ステップS1で取得された撮像画像を解析する。そして、ステップS3において、画像解析部23が、撮像画像に写っているユーザが、健常者であるか、又は、視覚に障害のあるユーザであるかを判別する。
【0029】
一例ではあるが、視覚に障害のあるユーザは、白色の杖である盲人安全杖を所有している。これに対して、視覚に障害は無いが、歩行が困難な老人は、茶色又は黒色等の杖を使用している。このため、画像解析部23は、撮像画像に写っているユーザが所有している杖の色が白色であるか否かに基づいて、視覚に障害のあるユーザであるか否かを判別する。
【0030】
また、視覚に障害のあるユーザは、障害物の有無等を確認するために、盲人安全杖で地面等を軽く叩きながら歩行するという、独特の動きがある。画像解析部23は、このような独特な動きの有無も、視覚に障害のあるユーザであるか否かを判別するためのファクタとして用いる。
【0031】
また、視覚に障害のあるユーザは、盲導犬を連れている場合がある。通常の犬は、首輪又はハーネスに、1本の紐状のリードが取り付けられている。これに対して盲導犬の場合、「U字型ハーネス」又は「バーハンドル型ハーネス」と呼ばれる、独特の形状のハーネスが装着されている。画像解析部23は、このようなハーネスの形状も、視覚に障害のあるユーザであるか否かを判別するためのファクタとして用いる。
【0032】
また、「U字型ハーネス」又は「バーハンドル型ハーネス」は、多くの場合、白色である。このため、画像解析部23は、犬に装着されているハーネスの色も、その犬を連れたユーザが、視覚に障害のあるユーザであるか否かを判別するためのファクタとして用いる。
【0033】
また、犬を連れての入場が制限される場所に対して、犬を連れて入場している場合、その犬は盲導犬であり、そのユーザは、視覚に障害のあるユーザである可能性が高い。このため、犬を連れての入場が制限される場所に対して、犬を連れているユーザを、画像解析部23は、視覚に障害のあるユーザとして判別する。
【0034】
また、盲導犬は、多くの場合、ユーザの進行方向に対して左側を歩行することが多い。このため、画像解析部23は、ユーザの進行方向に対して左側を歩行している犬を連れているか否かということも、視覚に障害のあるユーザであるか否かを判別するためのファクタとして用いる。
【0035】
さらに、画像解析部23は、サングラスの着用の有無、身障者マークの有無等も、視覚に障害のあるユーザであるか否かを判別するためのファクタとして用いる。
【0036】
次に、撮像画像に写っているユーザが、視覚に障害のあるユーザであると判別された場合(ステップS3:Yes)、画像解析部23は、ステップS4において、撮像画像を解析することで、そのユーザの特徴、現在位置、及び、移動方向等を検出する。一方、視覚に障害のあるユーザであると判別されなかった場合(ステップS3:No)、処理がステップS1に戻る。
【0037】
ユーザの特徴としては、画像解析部23は、所定のアルゴリズムを用いて、そのユーザの年齢及び性別を検出する。また、画像解析部23は、撮像画像を解析することで、そのユーザの服装、服装の色、ハンドバッグ又はリュックサック等の所持品及び所持品の色等の特徴を検出する。これらの特徴を人物特徴と呼ぶ。
【0038】
また、画像解析部23は、カメラ装置1で撮像されている撮像画像の各座標に対応する経緯度に基づいて、そのユーザの現在位置を検出する。また、画像解析部23は、例えば数フレームの一連の撮像画像に写っている同じユーザの現在位置の差から、そのユーザの移動方向を検出する。
【0039】
次に、出力音声制御部24は、ステップS5において、ユーザに対して自分(自己)に対する音声であることを認識させる音声案内(事前認識用音声案内)、及び、ユーザの移動方向に対応する施設等の音声案内を出力する。
【0040】
具体的には、HDD15には、例えば「5」、「メートル」、「先」、「に」、「改札」、「口」、「が」、「あります」、「黒」、「白」、「色」、「の」、「カーディガン」、「を」、「コート」、「野球」、「帽子」、「ロング」、「ショート」、「ヘアー」等の各種単語毎の音声データである分割音声データが記憶されている。出力音声制御部24は、解析されたユーザの特徴に対応する音声データをそれぞれ読み出して組み合わせ、音声合成することで、そのユーザの特徴に対応する音声案内を作成する。
【0041】
例えば、解析されたユーザの特徴が、黒色のコートを着た女性である場合、出力音声制御部24は、HDD15から「黒」、「色」、「の」、「コート」、「を」、「着た」、「女性」、「の」、「方」等の各種単語毎の音声データを読み出す。また、出力音声制御部24は、読み出した音声データを組み合わせ、音声合成することで、「黒色のコートを着た女性の方」等の、解析されたユーザに対する音声案内であることを認識させるための音声案内(事前認識用音声案内)を形成する。そして、出力音声制御部24は、形成した事前認識用音声案内を、解析したユーザの撮像画像を撮像したカメラ装置1が設けられている端末装置50(又は端末装置60)のスピーカ装置2を介して出力制御する。これにより、今から出力される音声案内が、自分に対する音声案内であることを、解析したユーザに対して予め認識させることができる。
【0042】
次に、出力音声制御部24は、解析したユーザの特徴(上述の人物特徴(年齢及び性別、所持品等))、現在位置、移動方向に対応する地図データをHDD15から読み出す。
図4を用いて説明したように、地図データには、位置情報、その地理的範囲に存在する施設の施設情報、及び、施設情報等の音声案内の出力条件を示す出力条件情報が含まれている。このため、出力音声制御部24は、解析したユーザの特徴、現在位置、移動方向、及び、地図データに基づいて出力する音声案内を決定し、HDD15から読み出し、対応するスピーカ装置2を介して出力制御する。
【0043】
図7は、実施の形態の音声案内システムの動作の一例を説明するための図である。この
図7には、店舗の入り口から所定の地理的範囲内における店舗の内部の通路、テナント、エレベータ装置(EV)及びトイレの位置関係が示されている。また、店舗の内部には、図示しない1個又は複数のカメラ装置1が、
図7に示された通路全体を撮像できるように設置されており、当該カメラ装置1が撮像した撮像画像の解析結果で得られた、視覚に障害のあるユーザを検出した位置および移動方向が、
図7において矢印で示されている。
図7の「A」の矢印、及び、「B」の矢印の表示位置および向きは、それぞれ検知した視覚に障害のあるユーザの位置および移動方向を示している。また、エレベータ装置(EV)の前から女性用トイレの前まで、床上に視覚障害者誘導用ブロック(いわゆる点字ブロック)が並べて設けられている。
【0044】
この
図7において、「A」の位置では、進行方向左側にエレベータ装置(EV)が存在し、進行方向右側に第1のテナントが存在する。出力音声制御部24は、地図データを参照することで、このようなエレベータ装置及び第1のテナント等の位置情報、施設情報及び出力条件情報を検出する。そして、「A」の位置の視覚に障害のあるユーザの特徴等が、出力条件情報に合致する場合、出力すべき音声案内をHDD15から読み出して出力する。
【0045】
すなわち、「A」の位置の視覚に障害のあるユーザが、「年齢30歳程度の女性」として解析され、「A」の位置及び進行方向に対応するエレベータの音声案内の出力条件が「男性及び女性」で、第1のテナントが「化粧品売り場」であり、音声案内の出力条件が「女性」であるとする。この場合、出力音声制御部24は、視覚に障害のあるユーザが「A」の位置まで歩行した際に、「左手にエレベータがあります。右手には、化粧品売り場があります。」等の音声案内を行う。
【0046】
これにより、上述の事前認識用音声案内により、視覚に障害のある女性のユーザに対する音声案内であることを認識させたうえで、現在位置の左側にエレベータ装置があり、右側に化粧品売り場が存在することを案内することができる。
【0047】
次に、
図7の例において、視覚に障害のあるユーザが「A」の位置から「B」の位置まで移動したとする。また、この「B」の位置から5mほど進行した位置の左側に「女性用トイレ」があり、「B」の位置から2mほど進行した位置の右側に「男性用の洋服売り場」が存在したとする。この場合、出力音声制御部24は、「B」の位置において、「あと5mほどで左手にトイレがあります。」等の音声案内を行う。なお、視覚に障害のあるユーザが「女性」と解析されたのに対し、第2のテナントは「男性用の洋服売り場」である。このため、出力音声制御部24は、「男性用の洋服売り場」である第2のテナントの音声案内は、視覚に障害のある「女性」のユーザに対する出力条件に合致しないため、第2のテナントの音声案内は行わない(音声案内を出力しない)。
【0048】
これにより、上述の事前認識用音声案内により、視覚に障害のある女性のユーザに対する音声案内であることを認識させたうえで、5m先にトイレがあるとの、「B」の位置において、視覚に障害のある女性のユーザに有用となる音声案内のみを行うことができる。このため、ノイズとなるおそれのある、無用な音声案内の出力を防止できる。
【0049】
次に、
図6のフローチャートのステップS6において、画像解析部23は、視覚に障害のあるユーザが、例えば白杖を頭上50cm程度に掲げる動作、又は、白杖をユーザの顔の前あたりで左右に振る動作等の、「助けを求める動き」の有無を検出する。このような「助けを求める動き」が検出されない場合(ステップS6:No)、処理がステップS1に戻る。そして、上述の画像解析(ステップS1、ステップS2)→視覚に障害のあるユーザの特徴、現在位置及び移動方向を解析(ステップS3、ステップS4)→事前認識用音声案内及び施設の音声案内(ステップS5)が繰り返し行われる。
【0050】
これに対して、「助けを求める動き」を検出した場合(ステップS6:Yes)、通信制御部25が、
図1に示す管理者端末装置4、又は、
図2に示す解析装置(管理者端末装置)3に対して、視覚に障害のあるユーザが助けを求めていることを示す緊急通知を行う(ステップS7)。
【0051】
また、これと共に、ステップS8において、出力音声制御部24は、助けを求めているユーザの現在位置に対応するスピーカ装置2を介して、例えば「管理者に緊急通知を行いました。すぐに助けが参りますので、しばらくお待ちください。」等の音声案内を行う。すなわち、出力音声制御部24は、助けに応じて管理者に連絡した旨の音声案内、及び、しばらくの待機をお願いする音声案内を、HDD15に記憶されている案内音声データを読み出して行う。これにより、助けを求めた視覚に障害があるユーザに対して、安心感を与えることができる。
【0052】
この緊急通知を受信すると、管理者又は警備員等の補助者が、助けを求めているユーザの位置に直行して補助を行う。緊急通知は、このような補助が行われるまでの間、継続して行われる(ステップS9:No)。そして、補助者により補助が行われたことが、管理者端末装置4又は解析装置(管理者端末装置)3を操作している操作者により確認されると(ステップS9:Yes)、操作者により緊急通知が解除される(ステップS10)。実施の形態の音声案内システムは、このようなステップS1~ステップS10の各処理を、例えば店舗の営業時間の間、繰り返し実行する。
【0053】
なお、通信制御部25は、視覚に障害のあるユーザが検出された際に、管理者端末装置4又は解析装置(管理者端末装置)3に、視覚に障害があるユーザの存在を通知してもよい。これにより、補助者による案内の準備を行うことができ、また、助けが求められた際に、すぐに対応することができる。
【0054】
(実施の形態の効果)
以上の説明から明らかなように、実施の形態の音声案内システムは、音声案内を行う際に、まず、これから行う音声案内は、特定したユーザに対する音声案内であることを認識させる事前認識用音声案内を行う。そして、この事前認識用音声案内を行った後に、そのユーザの特徴、現在位置及び移動方向に対応する施設等の音声案内を行う。
【0055】
これにより、視覚に障害のあるユーザに対して、出力されている音声案内が自分に対する音声案内であることを認識させたうえで施設等の音声案内を行うことができる。このため、例えば視覚に障害のある複数のユーザが同じ場所に位置しており、一方のユーザと他方のユーザは、それぞれ異なる方向に歩行していた場合でも、各ユーザを特定したうえで音声案内することができ、ユーザ毎に音声案内を有効に機能させることができる。
【0056】
また、ユーザ毎の特徴、現在位置及び移動方向に対応した音声案内を形成して出力するため、常時、音声案内が出力されることで音声案内が健常者、近隣の店舗の店員、近隣の居住者等に対するノイズとなる不都合を防止できる。
【0057】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 カメラ装置
2 スピーカ装置
3 解析装置
4 管理者端末装置
5 ネットワーク
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 通信部
15 HDD
16 入出力インターフェース(入出力I/F)
17 通信インターフェース(通信I/F)
18 表示部
19 操作部