IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

特許7592542ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法
<>
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図1
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図2
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図3
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図4
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図5
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図6
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図7
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図8
  • 特許-ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
G01N29/265
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021069550
(22)【出願日】2021-04-16
(65)【公開番号】P2022164208
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦口 晃平
(72)【発明者】
【氏名】山本 摂
(72)【発明者】
【氏名】今崎 一人
(72)【発明者】
【氏名】亀山 育子
(72)【発明者】
【氏名】森川 史和
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-085709(JP,A)
【文献】特開平11-109081(JP,A)
【文献】特開平05-045347(JP,A)
【文献】特開2013-088242(JP,A)
【文献】特開平09-329687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G21C 17/00 - G21C 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジェットポンプのライザ管を原子炉圧力容器に固定するライザブレースの前記原子炉圧力容器との溶接部および熱影響部を非破壊で検査するライザブレース検査装置であって、
前記原子炉圧力容器内でライザブレース検査装置を遠隔水中で取り扱うための支援部材を接続する接続部と、
前記接続部に取り付けられ、前記ライザブレースに前記ライザブレース検査装置を自立固定して位置決めするよう前記ライザブレースをクランプするクランプ機構と、
少なくとも前記ライザブレースの前記溶接部の端部の曲面領域を超音波探傷する水浸式探傷プローブと、
前記クランプ機構に取り付けられ、直交3軸方向のそれぞれに前記水浸式探傷プローブを並進させる並進機構と、
前記並進機構に取り付けられ、少なくとも前記溶接部の前記曲面領域に垂直に超音波を送受信可能なように、直交2軸のそれぞれの周りに回転自在に前記水浸式探傷プローブを支持する回転機構と、
前記ライザブレース検査装置が前記ライザブレースの上面に据え付けられたことを検知する着座検知機構と、
を備えたライザブレース検査装置。
【請求項2】
前記溶接部の前記曲面領域は、
前記ライザブレースの上側リーフおよび下側リーフのそれぞれの上側の隅肉部、下側の隅肉部、左側面側の隅肉部、および右側面側の隅肉部の少なくとも1つを含む、
請求項1記載のライザブレース検査装置。
【請求項3】
前記接続部は、
人力で上方から前記ライザブレース検査装置を遠隔水中で吊り降ろし、前記クランプ機構を操作して前記ライザブレース検査装置を前記ライザブレースに据え付けるための操作ポールを接続する、
請求項1または2に記載のライザブレース検査装置。
【請求項4】
前記接続部は、
前記操作ポールを遠隔で着脱自在に構成された、
請求項3記載のライザブレース検査装置。
【請求項5】
前記原子炉圧力容器内で前記ライザブレース検査装置を遠隔で取り扱うために、前記ライザブレースの上方に固定された台座と、前記台座に設けられた径方向移動機構と、前記径方向移動機構から吊設されるマストと、を有する吊り下げ移動機構、
をさらに備え、
前記マストの下端は、前記接続部に着脱自在に接続される、
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のライザブレース検査装置。
【請求項6】
前記マストは、上下方向に伸縮する伸縮機構を有し、
前記水浸式探傷プローブは、前記マストの伸縮により上下方向に位置決めされる、
請求項5記載のライザブレース検査装置。
【請求項7】
ジェットポンプのライザ管を原子炉圧力容器に固定するライザブレースの前記原子炉圧力容器との溶接部および熱影響部を非破壊で検査するライザブレース検査装置を用いたライザブレース検査方法であって、
前記ライザブレースに前記ライザブレース検査装置を自立固定して位置決めするよう前記ライザブレースをクランプするステップと、
前記ライザブレース検査装置の水浸式探傷プローブを直交3軸方向のそれぞれに並進させるとともに直交2軸のそれぞれの周りに回転させることにより、少なくとも前記溶接部の端部の曲面領域に垂直に超音波を送受信可能な位置に前記水浸式探傷プローブを位置させるステップと、
前記水浸式探傷プローブにより前記曲面領域を超音波探傷するステップと、
前記ライザブレース検査装置が前記ライザブレースの上面に据え付けられたことを検知するステップと、
を有するライザブレース検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ライザブレースと原子炉圧力容器との溶接部を検査するライザブレース検査装置およびライザブレース検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉では、原子炉圧力容器内の炉心シュラウド溶接部やジェットポンプの健全性評価のために、原子炉圧力容器の内面と炉心シュラウド胴外面とバッフルプレートで構成されるアニュラス部と呼ばれる狭い空間に検査装置を挿入し、アニュラス部に位置する構造物に対する検査が行われる。
【0003】
従来、この種の検査装置として、原子炉圧力容器上部に取り付けられ、原子炉圧力容器の周方向に走行する台車と、原子炉圧力容器の径方向に移動する台座と、上下に伸縮可能なマストと、マストの最下段部に取り付けた探傷ブローブと、を備えたライザブレースの検査装置がある(たとえば特許文献1参照)。この種の検査装置は、マストを利用することにより、ライザブレースと原子炉圧力容器との溶接部などに遠隔でアクセスすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-085709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の検査装置は、探傷プローブを検査対象に直接接触させて検査を行う。このため、ライザブレースの上下面の隅肉溶接部や側面の隅肉溶接部など、平面形状ではなく曲面形状を有する検査対象には、直接接触型の探傷プローブを直接に接触させることが難しい。また、当該曲面形状を有する検査対象が小さく狭い領域に位置する場合には、そもそも探傷プローブを検査対象に近づけることすらできない。したがって、従来の検査装置では、ライザブレースの隅肉部を含む溶接部の全体積の検査をすることが極めて困難である。
【0006】
ライザブレース溶接部および熱影響部に対し、隅肉溶接部を含めた平面以外の形状に対しても検査を行うことで、溶接部の検査ができるライザブレース検査装置および検査方法を得ることを目的とする。
【0007】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、隅肉溶接部を含め、ライザブレースと原子炉圧力容器との溶接部の全体積の検査を行うことができるライザブレース検査装置および検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るライザブレース検査装置は、上述した課題を解決するために、ジェットポンプのライザ管を原子炉圧力容器に固定するライザブレースの原子炉圧力容器との溶接部および熱影響部を非破壊で検査するライザブレース検査装置であって、接続部と、クランプ機構と、水浸式探傷プローブと、並進機構と、回転機構とを含む。接続部は、原子炉圧力容器内でライザブレース検査装置を遠隔水中で取り扱うための支援部材を接続する。クランプ機構は、接続部に取り付けられライザブレースにライザブレース検査装置を自立固定して位置決めするようライザブレースをクランプする。水浸式探傷プローブは、少なくともライザブレースの溶接部の端部の曲面領域を超音波探傷する。並進機構は、クランプ機構に取り付けられ、直交3軸方向のそれぞれに水浸式探傷プローブを並進させる。回転機構は、並進機構に取り付けられ、少なくとも溶接部の曲面領域に垂直に超音波を送受信可能なように直交2軸のそれぞれの周りに回転自在に水浸式探傷プローブを支持する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態に係るライザブレース検査装置および検査方法によれば、隅肉溶接部を含めライザブレースと原子炉圧力容器との溶接部の検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るライザブレース検査装置の一構成例を示す全体構成図。
図2】ライザブレース検査装置をライザブレースに据え付ける方法の一例を説明するための概略側面図。
図3】ライザブレース検査装置がライザブレースに据え付けられた状態の一例を示す概略斜視図。
図4】溶接部の曲面領域を説明するための平面図。
図5】溶接部の曲面領域を説明するための側面図。
図6】平坦な探傷面を検査する場合における探傷部の姿勢の一例を示す平面図。
図7】溶接部の端部側面の曲面領域を検査する場合における探傷部の姿勢の一例を示す平面図。
図8】溶接部の端部上側の曲面領域を検査する場合における探傷部の姿勢の一例を示す平面図。
図9】ライザブレース検査装置を上方から吊り下げ支持する吊り下げ移動機構の一構成例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るライザブレース検査装置および検査方法の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係るライザブレース検査装置10の一構成例を示す全体構成図である。また、図2は、ライザブレース検査装置10をライザブレース20に据え付ける方法の一例を説明するための概略側面図である。
【0013】
図1に示すように、ライザブレース検査装置10は、接続部11、クランプ機構12、並進機構、回転機構、および水浸式の探傷プローブ13を有する。
【0014】
接続部11は、図2に示すようにライザブレース検査装置10の上部に設けられ、原子炉圧力容器100内でライザブレース検査装置10を遠隔水中で取り扱うための支援部材を接続する。
【0015】
接続部11に接続される支援部材としては、ライザブレース検査装置10を人力で上方から遠隔水中で吊り降ろし、クランプ機構12を操作してライザブレース検査装置10をライザブレース20に据え付けるための操作ポール111を用いることができる。
【0016】
クランプ機構12は、接続部11に取り付けられ、ライザブレース20にライザブレース検査装置10を自立固定して位置決めするようにライザブレース20をクランプする。
【0017】
ライザブレース検査装置10をライザブレース20に固定するときは、図2に示すように、原子炉圧力容器100の上方にある作業台車101から作業員が遠隔水中で取り扱いができるように、接続部11に操作ポール111を接続する。
【0018】
操作ポール111は、ライザブレース検査装置10が検査対象であるライザブレース20に到達するまで、複数のポールを連結していくとよい。特に、原子炉圧力容器100と炉心シュラウド120の間のアニュラス部とよばれる狭隘部内では、ライザブレース検査装置10を構造物に衝突させたりすることが無いように、操作ポール111を作業員が直接扱うことで、慎重にライザブレース検査装置10をライザブレース20に据え付けるとよい。なお、ライザブレース検査装置10は、ライザブレース検査装置10がライザブレース20の上面に接触して着座したことを検知して作業員にその旨を通知する着座検知機構(図示せず)をさらに備えてもよい。着座検知機構は、たとえばリミットスイッチを含む。
【0019】
このように、本実施形態に係るライザブレース検査装置10は、接続部11に操作ポール111を接続することにより、原子炉圧力容器100の上方にある作業台車101から作業員が遠隔水中で取り扱いができる。このため、ジェットポンプ130の一部であるインレットミキサを取り外すことなく、ライザブレース検査装置10を検査対象であるライザブレース20に固定することができる。したがって、インレットミキサの取り外し作業に要する作業人員や資機材を削減することができるとともに、点検工期を削減することができる。
【0020】
並進機構は、クランプ機構12に取り付けられ、直交3軸方向のそれぞれに探傷プローブ13を並進させる。以下の説明では、並進機構に係るx軸、y軸、z軸の直交3軸は、鉛直上下方向をz軸方向、原子炉圧力容器100の半径方向をy軸方向、z軸およびy軸に直交する方向をx軸方向と定義する。
【0021】
並進機構は、図1に示すように、x軸に沿ってライザブレース検査装置10を並進移動させるx軸並進機構31x、y軸に沿ってライザブレース検査装置10を並進移動させるy軸並進機構31y、およびz軸に沿ってライザブレース検査装置10を並進移動させるz軸並進機構31zを含む。これらの並進機構31x-31zは、各軸に沿ってライザブレース検査装置10を並進駆動可能に構成されればよく、たとえば、ねじ機構やピニオンラック、リニアモータ方式の並進駆動機構によって構成される。たとえば、図1に示したx軸並進機構31xはラックランドピニオン機構により構成されている。
【0022】
回転機構は、並進機構に取り付けられ、少なくともライザブレース20と原子炉圧力容器100との溶接部の曲面領域に垂直に超音波を送受信可能なように、直交2軸のそれぞれの周りに回転自在に探傷プローブ13を支持する。
【0023】
回転機構は、図1に示すように、x軸方向を前後方向と仮定した場合にライザブレース検査装置10をヨー回転させるヨー回転機構41YWと、ライザブレース検査装置10をロール回転させるロール回転機構41RLとを含む。
【0024】
ヨー回転機構41YWは、たとえば基軸側プーリとプローブ側プーリとこれらを連結するベルトとを有する。ヨー回転駆動モータ41ypに駆動されて基軸側プーリが回転すると、プローブ側プーリがヨー軸30を中心に回転し、プローブ側プーリに連結された探傷プローブ13を含む探傷部14が一体となってヨー軸30周りに回転する。
【0025】
なお、ヨー回転駆動モータ41ypは、プローブ側プーリではなく基軸側プーリに設けられるとよい。ヨー回転駆動モータ41ypをプローブ側プーリではなく基軸側プーリに設けることにより、たとえば上下2枚のリーフの間などの狭い場所であっても、ヨー回転駆動モータ41ypが妨げになることなく、容易に探傷部14を挿入させて探傷検査を行うことができる。
【0026】
ロール回転機構41RLは、たとえばロール回転駆動モータ41rpに駆動された歯車が回転すると、この歯車とかみ合った歯車42が回転し、歯車42に取り付けられたプローブ支持部材43がロール軸40を中心に回転することにより、プローブ支持部材43と一体に探傷プローブ13がロール軸40を中心に回転する。
【0027】
水浸式の探傷プローブ13は、ロール軸40に平行な面15に配列された超音波振動子を有し、少なくともライザブレース20の溶接部の端部(隅肉溶接部)の曲面領域を、探傷面から距離をおいて非接触で超音波探傷する。探傷プローブ13は、並進機構と回転機構により、少なくともライザブレース20と原子炉圧力容器100との溶接部の曲面領域に垂直に超音波を送受信可能な位置に移動することができる。
【0028】
なお、探傷プローブ13は、並進機構と回転機構により、少なくともライザブレース20と原子炉圧力容器100との溶接部の曲面領域に垂直に超音波を送受信可能な位置に配置すればよい。すなわち、探傷プローブ13の振動子配列面の法線と探傷面の法線とが平行になる必要はない。これらの2つの法線のなす角は、機械的にまたは遅延回路を利用してビーム方向を振ることができる角度の範囲内であるとよい。
【0029】
探傷プローブ13としては、1次元アレイプローブ、またはスキャン方向(アジマス方向)に複数の超音波振動子が配列されるとともにレンズ方向(エレベーション方向)にも複数の素子が配列された2次元アレイプローブを用いることができる。この種の2次元アレイプローブとしては、たとえば1.5Dアレイプローブ、1.75Dアレイプローブや、2Dアレイプローブなどを用いることができる。
【0030】
図3は、ライザブレース検査装置10がライザブレース20に据え付けられた状態の一例を示す概略斜視図である。
【0031】
図2に一例を示した方法によりライザブレース20の近傍までライザブレース検査装置10をアクセスさせたあと、ライザブレース検査装置10は、ライザブレース20の上面に据え付けられる。そして、ライザブレース検査装置10は、クランプ機構12により、ライザブレース20に固定される。
【0032】
ライザブレース20は、図3に示すように、ヨーク部21と、ヨーク部21の両端に溶接されたリーフ部22とを有し、平面視でコの字形状を有する。リーフ部22は、上側リーフ22Uと下側リーフ22Lとを有する。図3には、クランプ機構12によりライザブレース検査装置10が上側リーフ22Uに固定される場合の例を示している。
【0033】
ライザブレース検査装置10がライザブレース20に固定されたあとは、操作ポール111は、接続部11に設けられた遠隔で着脱自在とする着脱装置(図示せず)を用いて取り外してもよい。この場合、ライザブレース検査装置10を複数用意すれば、ライザブレース20の上下2枚のリーフの同時検査を含め、原子炉圧力容器100内に複数あるライザブレース20を同時に検査することが可能となり、点検期間を大幅に短縮することができる。
【0034】
図4は、溶接部51の曲面領域を説明するための平面図である。また、図5は、溶接部51の曲面領域を説明するための側面図である。
【0035】
ライザブレース20は、詳細には、パッド100pを介して原子炉圧力容器100に溶接される。ライザブレース検査装置10は、溶接部51と熱影響部52の健全性を非破壊、非接触で検査する。
【0036】
ここで、ライザブレース20と原子炉圧力容器100との熱影響部52は、溶接部51の近傍であって、溶接部51との境界である溶接止端部から非溶接部側へたとえば10mm離れた範囲の領域である。
【0037】
溶接部51の曲面領域は、ライザブレース20の上側リーフ22Uおよび下側リーフ22Lのそれぞれの上側の隅肉部51t、下側の隅肉部51b、左側面側の隅肉部51L、および右側面側の隅肉部51Lの少なくとも1つを含む。具体的には、図4に示すように、溶接部51の端部(隅肉溶接部)の側面は、左右にはみ出した曲面領域51Lを有する。また、図5に示すように、溶接部51の端部の上側は曲面領域51tを有し、端部の下側は曲面領域51bを有する。
【0038】
直接接触型のプローブでは、これらの曲面領域51L、51t、51bを探傷することが難しい。一方、本実施形態に係る探傷プローブ13は、並進機構と回転機構により、曲面領域51L、51t、51bのそれぞれに対して垂直に超音波を送受信可能な位置に移動させることにより、探傷面から距離をおいて非接触で容易かつ正確に曲面領域51L、51t、51bを超音波探傷することができる。
【0039】
また、ロール軸40周りに探傷プローブ13を回転させることにより、超音波の送信方向を上側に向けることができる。このため、ライザブレース検査装置10は、上側リーフ22Uの上面22Utと下側リーフ22Lの上面22Ltを検査することができるとともに、上側リーフ22Uの下面22Ubと下側リーフ22Lの下面22Lbも検査することができる。
【0040】
図6は、平坦な探傷面を検査する場合における探傷部14の姿勢の一例を示す平面図である。図7は、溶接部51の端部側面の曲面領域51Lを検査する場合における探傷部14の姿勢の一例を示す平面図である。また、図8は、溶接部51の端部上側の曲面領域51tを検査する場合における探傷部14の姿勢の一例を示す平面図である。
【0041】
熱影響部52などの平坦な探傷面は、回転機構を用いずともを検査を行うことができる(図6参照)。この場合は、クランプ機構12を用いてライザブレース検査装置10をライザブレース20に固定した後に、並進機構を用いて、水浸式探傷プローブ13の位置決めを行う。水浸式探傷プローブ13の位置決めは、並進機構の各直交3軸の移動量を調整しながら、水浸式探傷プローブ13の受信信号にもとづいて行うとよい。
【0042】
一方、溶接部51の端部側面の曲面領域51Lを検査する場合は、振動子のスライス方向が曲面領域51Lに垂直になるように、探傷プローブ13をヨー軸30周りに回転させる(図7参照)。溶接部51の端部上側の曲面領域51tや端部下側51bを検査する場合も同様に、振動子のスライス方向が曲面領域51t、51bに垂直になるように、探傷プローブ13をヨー軸30周りに回転させる(図8参照)。並進機構と回転機構を用い、ライザブレース20の溶接部51に正対するようにライザブレース検査装置10に取り付けられた水浸式探傷プローブ13を走査させることにより、溶接部51の全体積の探傷を行うことができる。
【0043】
本実施形態に係る探傷プローブ13は、並進機構と回転機構により、曲面領域51L、51t、51bのそれぞれに対して垂直に超音波を送受信可能な位置に移動することができる。このため、探傷面から距離をおいて非接触で容易かつ正確に曲面領域51L、51t、51bを超音波探傷することができる。したがって、本実施形態に係るライザブレース検査装置10によれば、熱影響部52だけでなく、曲面領域(隅肉溶接部)51L、51t、51bを含め、ライザブレース20と原子炉圧力容器100との溶接部51の全体積の検査を容易かつ正確に行うことができる。
【0044】
図9は、ライザブレース検査装置10を上方から吊り下げ支持する吊り下げ移動機構60の一構成例を示す斜視図である。
【0045】
ライザブレース検査装置10は、原子炉圧力容器100内で遠隔で取り扱うことができるように、吊り下げ移動機構60によって上方から吊り下げ支持されてもよい。吊り下げ移動機構60は、台座61と、台座61に設けられた径方向移動機構62と、径方向移動機構62から吊設されたマスト63とを有する。ライザブレース検査装置10は、吊り下げ移動機構60を備えてもよい。
【0046】
台座61は、ライザブレース20の上方に固定される。台座61は、検査対象のライザブレース20のほぼ直上であって、たとえば炉心シュラウド120の上端部に設置される。台座61の下面には位置決めピン64が垂設されてもよい。この位置決めピン64が、炉心シュラウド120の上端部のシュラウド上部リングに設けられたヘッドボルトブラケットに嵌合されることで、台座61が炉心シュラウド120の上端部に設置される。この結果、台座61の、原子炉圧力容器100および炉心シュラウド120の周方向に対する位置(方位)が決定される。
【0047】
径方向移動機構62は、この径方向移動機構62に設置されたマスト63を原子炉圧力容器100および炉心シュラウド120の径方向に移動させる。径方向移動機構62は、径方向レール621および設置架台622を有する。径方向レール621は、台座61の上面に固着されて、原子炉圧力容器100および炉心シュラウド120の径方向に延在する。設置架台622は、径方向レール621に沿って移動可能に設けられ、設置架台622にマスト63のマスト設置部65が取り付けられる。
【0048】
マスト63は、互いに連結されたマスト本体66とマスト設置部65とを含む。マスト63は、炉心シュラウド120の上方からジェットポンプ130を回避して吊り下げられる。マスト設置部65は、炉心シュラウド120の上端部に設置された台座61の径方向移動機構62に設けられる。
【0049】
マスト63のマスト本体66の下端部は、接続部11に接続される。
【0050】
マスト63は、伸縮機構67を内蔵する。伸縮機構67がマスト63を高さ方向に伸縮させることで、マスト63の下端部に接続部11を介して接続されたライザブレース検査装置10を上下方向に位置決めすることができる。
【0051】
また、吊り下げ移動機構60は、マスト63と接続部11とのいずれか一方をマスト63の周方向に旋回させる旋回機構68を有してもよい。たとえば旋回機構68がマスト63のマスト設置部65とマスト本体66との間に設置される場合は、旋回機構68は、マスト設置部65に対してマスト本体66をマスト63の周方向に旋回させることができる。旋回機構68がマスト本体66の下端部と接続部11との間に設置される場合は、マスト本体66に対してライザブレース検査装置10をマスト63の周方向に旋回させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
10…ライザブレース検査装置、11…接続部、12…クランプ機構、13…水浸式探傷プローブ、14…探傷部、20…ライザブレース、22L…下側リーフ、22U…上側リーフ、30…ヨー軸、31x…x軸並進機構、31y…y軸並進機構、31z…z軸並進機構、40…ロール軸、41RL…ロール回転機構、41YW…ヨー回転機構、51…溶接部、51L、51t、51b…曲面領域(隅肉部)、52…熱影響部、60…吊り下げ移動機構、61…台座、62…径方向移動機構、63…マスト、67…伸縮機構、100…原子炉圧力容器、111…操作ポール、130…ジェットポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9