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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】管継手とその使用方法
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20241125BHJP
   F16L 5/04 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
E03C1/12 E
F16L5/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021131051
(22)【出願日】2021-08-11
(65)【公開番号】P2023025744
(43)【公開日】2023-02-24
【審査請求日】2024-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】595025224
【氏名又は名称】フネンアクロス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小山 玲樹
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-101762(JP,A)
【文献】特開2011-208474(JP,A)
【文献】特開2003-194279(JP,A)
【文献】特開2010-139057(JP,A)
【文献】特開2019-178592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12-1/33
E04B 1/94
F16L 5/04
F16L 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が上端部から下端部へ向けて内部を流下すると共に側面から横に張り出し少なくとも一つ設けられた横枝管接続部からも上記排水が上記内部に流れ込む合成樹脂製の内管と、上記内管を覆う繊維モルタル製の外管と、を備えた管継手であって、
上記内管は、上記上端部と上記横枝管接続部を設けた流入部と、この流入部に接続した下方延長部と、を備え、
上記下方延長部は、上記流入部の差口部を入れる受口部と、一部が上記下端部を構成する円筒部と、上記受口部と上記円筒部との間に設けられていて上下に延びた軸に沿った寸法が上記円筒部よりも小さく設定されており更に上流側から下流側へ内径が小さくなる縮径部と、を備え、
上記外管は、上記内管に固定して設けられる第一被覆部と、上記内管に対して移動可能に設けられる第二被覆部と、を備え、
上記第二被覆部は円筒形状であり更に上記下端部側の接続代の領域分を除いて上記円筒部の外周面の一部を覆い、
上記第一被覆部は上記流入部と上記流入部に接続した上記下方延長部の外周面で上記第二被覆部で覆われていない上流側の領域とを覆っており、
さらに上記第二被覆部は上記内管の上記円筒部との間に少なくとも一つの弾性の環状材を介在させて上記内管の上記円筒部に保持されていることを特徴とする、管継手。
【請求項2】
上記第二被覆部が上記第一被覆部に寄せて設けられていて、
隙間を埋めるための熱膨張性の外周用目地部材を上記第一被覆部と上記第二被覆部との間に備えていることを特徴とする、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
上記内部を不通にするための熱膨張材を上記縮径部及び/又は上記円筒部の上記一部に備え、
上記熱膨張材が上記第一被覆部で覆われていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の管継手。
【請求項4】
上記第一被覆部は、上記流入部を覆う流入側部分と、上記受口部を覆う受口被覆部分と、を有し、
上記流入側部分は、厚さが上記受口被覆部分の厚み以下に構成された薄部分と、厚さが上記受口被覆部分よりも厚く構成された厚部分と、を備え、
上記流入側部分では上記厚部分が上記薄部分よりも多く設けられており、
上記第二被覆部は、上記受口被覆部分と同じ厚さで構成され、或いは上記受口被覆部分よりも薄く構成されていることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れかに記載の管継手。
【請求項5】
上記第一被覆部は上記受口被覆部分の下に、上が広く且つ下が狭くなる逆テーパー面と下方を臨む端面とを有する逆テーパー部を備えていることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れかに記載の管継手。
【請求項6】
繊維モルタル製の第一被覆部が、排水が流れ込む流入部から下流側に設けられ内部が逆テーパー面に形成された縮径部までを少なくとも覆い、
繊維モルタル製で円筒形状の第二被覆部が上記縮径部よりも下流側に設けられる円筒部の外周面を下端部側の接続代の領域分を除いて覆うと共に上記円筒部に対して動かすことができる、管継手の使用方法であって、
上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた位置から上記下端部側へ動かした後、上記第二被覆部と上記円筒部の余剰分を切除し、さらに上記円筒部の上記下端部側に上記接続代の領域が現れるように上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた元の位置に戻すことを特徴とする、管継手の使用方法。
【請求項7】
繊維モルタル製の第一被覆部が、排水が流れ込む流入部から下流側に設けられ内部が逆テーパー面に形成された縮径部までを少なくとも覆い、
繊維モルタル製で円筒形状の第二被覆部が上記縮径部よりも下流側に設けられる円筒部の外周面を下端部側の接続代の領域分を除いて覆うと共に上記円筒部に対して動かすことができる、管継手の使用方法であって、
上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた位置から上記下端部側へ動かして取り外した後、上記第二被覆部と上記円筒部の余剰分を切除し、さらに上記第二被覆部を再度上記円筒部に取り付けると共に上記円筒部の上記下端部側に上記接続代の領域が現れるように上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた元の位置に戻すことを特徴とする、管継手の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管とそれを覆う外管とを備えた管継手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの構造物の排水系統では、最下位の排水立て管と排水横主管との間に、最下階用の管継手を設けている。管継手は、上端部に排水立て管を接続し、側面から横に張り出した横枝接続部に横枝管を接続し、さらに下端部にスラブの下のエルボなどの脚部継手を接続して用いられる。
【0003】
また、管継手は一部をスラブの貫通部に入れて、スラブに設置される。管継手として、スラブの厚みより長く形成された部分を短くして使用することができるものが知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に開示の管継手は、排水立て管や横枝管と接続する本体部と、この本体部に取り付けられる接続縦管とを備えており、接続縦管が円筒に形成されていて短くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6652319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の管継手は、排水によって生じる音を低減するように、本体部と接続縦管とを遮音性の部材で覆っている。施工の際に、遮音性の部材を本体部等に取り付けると作業が煩雑となってしまう。
【0007】
管継手は、防火区画に配管する場合など、耐火性を備えて構成されることが望ましい。耐火性能を管継手に持たせるために、特許文献1のように施工の際に管継手に別途用意した部材を取り付けるのでは、作業が煩雑となってしまう。
【0008】
このようなことから、本発明は耐火性を備えた管継手とその使用方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、排水が上端部から下端部へ向けて内部を流下すると共に側面から横に張り出し少なくとも一つ設けられた横枝管接続部からも上記排水が上記内部に流れ込む合成樹脂製の内管と、上記内管を覆う繊維モルタル製の外管と、を備えた管継手である。上記内管が、上記上端部と上記横枝管接続部を設けた流入部と、この流入部に接続した下方延長部と、を備え、上記下方延長部が、上記流入部の差口部を入れる受口部と、一部が上記下端部を構成する円筒部と、上記受口部と上記円筒部との間に設けられていて上下に延びた軸に沿った寸法が上記円筒部よりも小さく設定されており更に上流側から下流側へ内径が小さくなる縮径部と、を備えている。上記外管は、上記内管に固定して設けられる第一被覆部と、上記内管に対して移動可能に設けられる第二被覆部と、を備えている。上記第二被覆部は円筒形状であり更に上記下端部側の接続代の領域分を除いて上記円筒部の外周面の一部を覆い、上記第一被覆部は上記流入部と上記流入部に接続した上記下方延長部の外周面で上記第二被覆部で覆われていない上流側の領域とを覆っている。さらに上記第二被覆部は上記内管の上記円筒部との間に少なくとも一つの弾性の環状材を介在させて上記内管の上記円筒部に保持されている。
さらに、本発明の管継手は、好ましくは、隙間を埋めるための熱膨張性の外周用目地部材を上記第一被覆部と上記第二被覆部との間に備え、また上記内部を不通にするための熱膨張材を上記縮径部及び/又は上記円筒部の上記一部に備えている。
【0010】
本発明の管継手は、好ましくは、上記第一被覆部が上記流入部を覆う流入側部分と上記受口部を覆う受口被覆部分と、を有し、上記流入側部分は、厚さが上記受口被覆部分の厚み以下に構成された薄部分と、厚さが上記受口被覆部分よりも厚く構成された厚部分と、を備え、上記流入側部分では上記厚部分が上記薄部分よりも多く設けられている。上記第二被覆部は、上記受口被覆部分と同じ厚さで構成され、或いは上記受口被覆部分よりも薄く構成されている。
さらに、本発明の管継手は、好ましくは、上記第二被覆部が上記受口被覆部分の下に、上が広く且つ下が狭くなる逆テーパー面と下方を臨む端面とを有する逆テーパー部を備えている。
また、本発明の管継手は、好ましくは、上記流入部が異径部とガイド部と合流部とを備えている。上記異径部は、上記上端部を構成する上流側受口部と、これとは反対側に設けられ更に内径が上記上流側受口部よりも小さい下流側受口部と、上記上流側受口部と上記下流側受口部との間に設けられて内部が上を広く且つ下を狭くした逆テーパー面に形成された縮径部と、を備えている。上記ガイド部は、円筒状に形成されていて一方の開口端部が上記異径部の上記下流側受口部に入る差口部として構成されている内筒部と、円筒状に形成されていて上記内筒部の外側に設けられて下方に開いた開口端部が差口部として構成された外筒部と、上記内筒部の外周面から突き出て上記外筒部とつながった保持部と、を備えている。上記合流部は、一方の開口端部が上記外筒部の上記差口部を入れる受口部として構成され更に他方の開口端部が上記下方延長部の上記受口部に入る差口部として構成された管本体部と、上記管本体部に設けた合流口を経て上記管本体部の内側に通じる上記横枝管接続部と、を備えている。上記ガイド部と上記合流部とが接続した状態で、上記ガイド部の上記内筒部は、他方の開口端部が上記合流部の内側で上記合流口と対向する位置まで延びており、上記合流部は、上記合流口の横に設けられて内側に突き出た逆流防止部を備えている。
上記ガイド部は、好ましくは、上記内筒部の内周面から突き出ていて流下する上記排水を上記内筒部の上記内周面に沿って旋回する流れに変える旋回部と、上記内筒部の上記内周面から突き出ていて上記排水の旋回を妨げる衝突部と、を備えている。
【0011】
本発明は、繊維モルタル製の第一被覆部が、排水が流れ込む流入部から下流側に設けられ内部が逆テーパー面に形成された縮径部までを少なくとも覆い、繊維モルタル製で円筒形状の第二被覆部が上記縮径部よりも下流側に設けられる円筒部の外周面を下端部側の接続代の領域分を除いて覆うと共に上記円筒部に対して動かすことができる、管継手の使用方法である。
上記管継手の使用方法は、下記の(1)又は(2)を含む。
(1)上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた位置から上記下端部側へ動かした後、上記第二被覆部と上記円筒部の余剰分を切除し、さらに上記円筒部の上記下端部側に上記接続代の領域が現れるように上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた元の位置に戻すこと。
(2)上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた位置から上記下端部側へ動かして取り外した後、上記第二被覆部と上記円筒部の余剰分を切除し、さらに上記第二被覆部を再度上記円筒部に取り付けると共に上記円筒部の上記下端部側に上記接続代の領域が現れるように上記第二被覆部を上記第一被覆部に寄せた元の位置に戻すこと。
【発明の効果】
【0012】
本発明の管継手によれば、外管の第一被覆部が内管に固定して設けられ、第二被覆部が内管の円筒部の外側で軸の延びる方向に移動可能に設けられているので、施工の際に、耐火性の外装を別途内管に設けるような作業は不要である。また、内管と比べて重量のある外管が分割して構成されていることで、例えば全体を厚い外管で内管を覆う構成と比べて第二被覆部の部分を薄くして軽量化を図ることができる。さらに、第二被覆部は、円筒部の外側で軸方向に移動可能であるため、その一部を加工する場合など取り扱い易い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)と(b)は本発明の実施形態に係る管継手を示す正面図と左側面図である。
図2図1(b)のS1-S1線に沿った管継手の断面図である。
図3】(a)は本発明の実施形態に係る管継手の内管を示す正面図であり、(b)は内管の分解図であり、(c)は内管の分解断面図であり、(d)は(c)の破線部分の拡大図である。
図4】(a)は図3(b)のS3-S3線に沿ったガイド部の断面図であり、(b)は図3(b)のS4-S4線に沿った合流部の断面図である。
図5図2の破線で囲った部分の拡大図である。
図6】(a)から(c)は図1の管継手の第1の切断方法を示す図であり、(d)から(g)は図1の管継手の第2の切断方法を示す図である。
図7】(a)は図1の管継手を用いた排水構造を示す図であり、(b)は(a)の排水構造の部分断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る管継手の変形例を用いた排水構造を示す図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る管継手であって流入部を二部品で構成する内管の分割断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る管継手の他の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1の(a)は本発明の実施形態に係る管継手1を示す正面図であり、(b)は管継手1を示す左側面図である。図2図1(b)のS1-S1線に沿った管継手1の断面図である。管継手1は、排水が内部を流下する内管10と、内管10の外表面を覆う耐火性の外管20と、を備えている。なお、図1(a)と図2とに示す、管継手1の軸Cが上下に延びた状態を基に以下説明する。
【0015】
図3の(a)は内管10を示す正面図であり、(b)は内管10の分解図であり、(c)は内管10の分解断面図である。なお、図3(c)は図1(b)のS2-S2線に沿った各部材の断面を表している。内管10は、異径部110とガイド部120と合流部130と下方延長部140とを備えている。
【0016】
異径部110は、内管10の最も高い部分を構成して、排水立て管の端部につながる。異径部110は、図3(b)に示すように、内径がそれぞれ異なる受口部111′,112′(上流側受口部,下流側受口部)と、これらの受口部111′,112′の間に設けられて上流側から下流側へ内径が小さくなる、つまり内周面が上を広く且つ下を狭くした逆テーパー面に形成された縮径部113と、を備えている。上流側の受口部111′は、下流側の受口部112′よりも深くまた大きく形成されており、内部に排水立て管の端部に密着するリップルを備えたゴムパッキン30を収容する。
【0017】
異径部110では、受口部111′,112′、縮径部113をそれぞれ構成する筒状部分がそれぞれ全体に亘って厚みをほぼ同じに形成されている。また、内周面は、図3(c)に示すように、上流側円筒面111Aが段差面114Aを介して縮径部113の逆テーパー面113Aとつながり、また逆テーパー面113Aが段差面114Bを介して下流側円筒面112Aにつながっている。以下、出角と入角とそれらの間に設けられる段差面とで形成される段差状を成す部分を段差部と呼ぶ。異径部110では、内周面と外周面とに段差部を設けている。
【0018】
ガイド部120は、異径部110の下に設けられ、異径部110の縮径部113から流下する排水を合流部130の内側で深く入ったところまで案内する。ガイド部120は、図3(b)に示すように、円筒状に形成された内筒部121と、円筒状に形成されていて内筒部121の外側に設けられる外筒部122と、内筒部121の外周面から突き出て外筒部122の端部とつながって外筒部122を内筒部121と同軸に配置する保持部123と、を備えている。
【0019】
ガイド部120では、内筒部121が外筒部122よりも長く形成され、また内筒部121の両端の開口端部側の外周面が現れるように外筒部122は内筒部121の中間寄りの一部を覆っている。
【0020】
保持部123は、内筒部121の外周面でその周方向の全体から張り出していて、外側にテーパー面を構成しており、外筒部122の上の開口側を塞いでいる。外筒部122は、後述する合流部130の受口部131′に入る差口部122A″を構成する。図3(c)に示すように、外筒部122は、薄く形成された差口部122A″と保持部123側に設けられていて厚く形成された肉厚部122Bとを備えて、段差部が外周面に設けられている。なお、外筒部122の内周面は一定の径で非凹凸面に形成されている。
【0021】
内筒部121では、上流側の開口端部が異径部110の受口部112′に入る差口部121A″を構成する。また、内筒部121の下流側の開口端部は外筒部122の開口端部(差口部122A″)から外に突き出て放出口121Bを構成する。なお、ガイド部120が合流部130に接続した状態では、内筒部121で、保持部123より下方へ延びた部分が合流部130の内側に入り、排水を深く入った位置まで案内する。内筒部121で、合流部130の内側に入る部分をガイド筒部121Cと呼ぶ。
【0022】
図4(a)は図3(b)のS3-S3線に沿ったガイド部120の断面図である。ガイド部120は、好ましくは、排水の流れを制御するように、内筒部121の内側に旋回部150と衝突部160とを備えている。
【0023】
旋回部150は、流下する排水を内筒部121の内周面に沿って旋回する流れに変えるものであり、内筒部121の内周面から突き出ていて、排水が当たる斜面150Aを備えている。例えば旋回部150は、内筒部121の内周面に設けられる弧状縁部151とこの両端をつなぐ直線状の先端縁部152とを持って板状に形成されている。図2に示すように、弧状縁部151の一方の端が他方の端よりも高い位置に設けられて、一方の端から他方の端へ下る斜面150Aを構成する。なお、排水を当てる斜面150Aが内筒部121の内周面と成す角度θが90度より小さく設定されていて、先端縁部152から弧状縁部151へも下る斜面を成す。旋回部150は、内筒部121の内周面において、放出口121Bから離れた箇所に一つ設けられている。
【0024】
衝突部160は、旋回部150を経て内周面に沿って旋回しながら流れる排水の進行を妨げるものであり、内筒部121の内周面から突き出ていて、排水が当たる面を備えている。例えば衝突部160は、台形の板状に形成されている。衝突部160では、上底縁部161とこれと平行に延びる下底縁部162とが軸Cに沿って延びるように、長い下底縁部162が内筒部121の内周面に設けられている。上底縁部161と下底縁部162とはそれぞれの両端が斜めの傾斜縁部163でつながっており、また衝突部160は、内周面から軸Cへ向けて突き出ている。
【0025】
また、衝突部160は、内筒部121の内周面において、放出口121Bに寄せて一つ設けられている。また、図4(a)に示すように、ガイド部120を平面視した状態で、衝突部160は、軸Cを中心として旋回部150が設けられる角度の範囲から外れた角度位置に設けられている。勢いよく流れる排水が旋回部150を経て放出口121Bから後述する合流部130の合流口132へ向うことを規制するように、衝突部160は配置されている。排水が内筒部121の内周面に沿って旋回し、その一部或いは全ては衝突部160に当った場合には旋回力を失って下降する。
【0026】
合流部130は、ガイド部120の下に設けられ、横枝管を接続するものである。合流部130は、図3(b)に示すように、筒状の管本体部131と、管本体部131から外側へ張り出して筒状を成し更に内側が管本体部131の側面を貫く合流口132を経て管本体部131の内側に通じる横枝管接続部133と、を備えている。
【0027】
管本体部131は、一方の開口端部がガイド部120の差口部122A″を入れるように内径を大きくした受口部131′として構成され、他方の開口端部が下方延長部140とつながる差口部131″として構成されている。管本体部131の内周面は、受口部131′と合流口132とを除いて、一定の或いはほぼ同じ径で形成されている。管本体部131の受口部131′側は、異径部110の受口部111′,112′と同様に、内周面と外周面とに段差部を有する。
【0028】
管本体部131では、下方延長部140とつながる他方の開口側が横枝管接続部133よりも下方へ突き出ており、その一部が差口部131″を構成する。具体的には、ガイド部120の外筒部122と同様に、差口部131″は、管本体部131の他の部位の厚みよりも薄く構成されており、段差部が外周面に設けられる。例えば、図3(c)に示すように、差口部131″が肉厚部よりも軸Cに沿った寸法を大きく(L11>L12)設定され、また差口部131″と肉厚部の寸法の和(=L11+L12)は横枝管接続部133の呼び径φ1よりも小さく設定されている。
【0029】
図4(b)は図3(b)のS4-S4線に沿った合流部130の断面図であり、横枝管接続部133は、管本体部131の合流口132から外側へ延びた筒状の延長部133Aと、延長部133Aよりも軸Cから離れて設けられ内径を延長部133Aよりも大きく形成された受口部133B′と、を備えている。横枝管接続部133は内周面と外周面とに段差部を設けている。図4(b)に示すように、本実施形態では、合流部130を平面視した状態で、横枝管接続部133が管本体部131の軸Cを中心としてその周りに90度の間隔で三つ設けられており、図3(a)に示すように三つの横枝管接続部133は同じ高さの位置で横に口を開けている。
【0030】
逆流防止部170が合流部130の内側に設けられている。逆流防止部170は、横枝管接続部133から管本体部131に入った排水が、他の横枝管接続部133へ入ること、つまり逆流を防止するものである。逆流防止部170は、合流部130の内側の面から突き出ていて、排水が当たる面を備えている。
【0031】
例えば逆流防止部170は、板状に形成されている。短辺縁部171とこれと平行に延びる長辺縁部172とが軸Cに沿って延びるように、長辺縁部172が合流部130の内周面に設けられている。短辺縁部171と長辺縁部172とは低い位置にある端が斜めの傾斜縁部173でつながっており、さらに短辺縁部171の高い側の端からは、ガイド部120の内筒部121の端面に当るように、切り欠き状の当接縁部174を設けている。また逆流防止部170は、内側の面から軸Cへ向けて突き出ている。
【0032】
図4(b)に示すように、逆流防止部170は、合流口132の横、両側に設けられており、本実施形態では軸Cまわりに90度の間隔で四つの逆流防止部170を設けている。二つの合流口132の間に設けられた逆流防止部170は、一方の面が一方の合流口132と対向し、他方の面が他方の合流口132と対向している。なお、合流口132を設けていない二つの逆流防止部170の間の領域は湾曲して広がった曲面部131Cを構成する。
【0033】
下方延長部140は、合流部130の下に設けられて、内管10の最も低い部分を構成して、スラブ下のエルボなどの脚部継手(硬質ポリ塩化ビニルの内管と繊維モルタルの外管とでなる二層管継手や鋳鉄製の継手)につながる。下方延長部140は、図3(b)に示すように、合流部130につながる受口部141′と、脚部継手につながる円筒部142と、受口部141′と円筒部142の間に設けられた縮径部143と、を備えている。円筒部142は、内径及び外径を全体に亘って一定或いはほぼ同じに形成されている。縮径部143は、受口部141′側から円筒部142側へ内径及び外径が小さくなり、内側と外側に逆テーパー面を構成する。
【0034】
図3(d)は図3(c)の破線部分の拡大図であり、受口部141′は、円筒部142や縮径部143よりも薄く形成されていて合流部130の差口部131″を入れる受口薄部141Aと、受口薄部141Aよりも厚く形成されていると共に一定或いはほぼ同じ径の内周面を持った受口厚部141Bと、を備えている。受口部141′の内側には段差部が設けられており、受口薄部141A側の内周面144Aと、受口厚部141B側の内周面144Bとが外側を臨む段差面144Cを介してつながっている。合流部130とつながった状態で、図2に示すように合流部130の差口部131″の内周面の延長上に受口厚部141Bの内周面144Bが設けられている。縮径部143の逆テーパー面144Dが受口厚部141Bの内周面144Bの縁から延びており、円筒部142の下流側円筒面144Eが逆テーパー面144Dの縁から延びていて受口厚部141Bの内周面144Bよりも軸Cに寄せて設けられる。なお、受口部141′は、受口厚部141Bを省いて構成すると、受口部141′の内周面144Aが段差面144Cを介して縮径部143の逆テーパー面144Dとつながる。
【0035】
円筒部142,縮径部143はそれぞれ厚みを全体に亘ってほぼ同じに形成されており、また円筒部142,縮径部143はそれぞれの内周面に排水の流れを変える例えば旋回用或いは衝突用の突出部を設けずに構成されている。円筒部142では、その一部である開口端部が差口部142″を構成し、スラブ下に配管されるエルボなどの脚部継手の受口部に入れられる。下方延長部140の差口部142″の呼び径φ2が異径部110の上流側の呼び径φ3と同じ大きさになるように構成されている。
また、円筒部142とその上流側に配置されるガイド部120の内筒部121とを軸Cに直交する平面への投影を想定すると、両者共に軸Cを中心に配置され、円筒部142が軸Cまわりの全体に亘ってガイド部120の内筒部121と少なくとも一部が重なるように設けられる。
【0036】
受口部141′、円筒部142、縮径部143の軸Cに沿った寸法(L21、L22、L23)では円筒部142の寸法L22が最も大きく設定されている。図示例の下方延長部140では、縮径部143の寸法L23が受口部141′の寸法L21よりも大きくなるように設定されているが、これとは逆に受口部141′の寸法L21を縮径部143の寸法L23よりも大きく設定してもよく、何れの場合も円筒部142が長く延びた形態を成す。また、受口部141′では、受口薄部141Aの寸法L211が受口厚部141Bの寸法L212よりも大きく設定されている。
【0037】
異径部110とガイド部120と合流部130と下方延長部140とは、それぞれ合成樹脂を射出成形した硬質の成形体であり、例えば硬質ポリ塩化ビニルで構成されている。旋回部150と衝突部160とはガイド部120に一体に成形され、逆流防止部170は合流部130に一体に成形される。これらの異径部110とガイド部120と合流部130と下方延長部140とがつながって内管10を構成する。
【0038】
ガイド部120の差口部121A″を異径部110の受口部112′に、内周面の段差部に当るまで差し込む。異径部110とガイド部120とがつながった状態では、ガイド部120の内筒部121の内周面が異径部110で縮径部113の内側の逆テーパー面の下縁から下方へ延びるように、続いている。なお、異径部110とガイド部120との接続を維持するように、接着剤を利用する。
【0039】
ガイド部120の差口部122A″を合流部130の受口部131′に、合流部130の内周面の段差部に当るまで差し込む。ガイド部120と合流部130とは接着剤を用いてつながった状態が維持される。接続状態における内側では、ガイド部120の外筒部122の内周面が合流部130の内周面と面一状に連なり、また内筒部121の外周面と対向して、内筒部121と外筒部122及び合流部130との間には図2に示すようにクリアランス180が設けられる。また、合流部130の内側では、図2に示すようにガイド部120の内筒部121は放出口121Bが合流口132と対向する位置まで延びており、内筒部121が逆流防止部170の当接縁部174に端面を当てて、支えられている。なお、内筒部121は、端面に隣接して逆テーパー状の面取り部121Dを設けている。
衝突部160は、軸Cまわりで一つの逆流防止部170の近くに設けられる。図4(b)は軸Cに直交した仮想面で切った合流部130の断面を表していて、仮想面に投影した内筒部121の内周面の一部と衝突部160とを破線で表している。また、図4(b)では内筒部121で旋回した排水が入り得る横枝管接続部133に符号Aを付している。ここで、軸Cを通ると共に符号Aを付した横枝管接続部133の中を通る仮想線L1を基準に、逆流防止部170と衝突部160との軸Cまわりの位置を比べると、衝突部160は逆流防止部170からずれて配置されており、衝突部160の角度位置θ2が逆流防止部170の角度位置θ1よりも大きく設定されている。
【0040】
合流部130の差口部131″を下方延長部140の受口部141′に、段差部に当たるまで差し込む。合流部130と下方延長部140とは接着剤を用いてつながった状態が維持される。接続状態における内側では、下方延長部140の受口部141′の内周面144Bが合流部130の内周面の下縁に続いて下方へ延びて、排水が流下する空間を構成する。
このように内管10は、異径部110とガイド部120と合流部130と下方延長部140とが連なって構成され、排水が上端部の受口部111′から下端部の差口部142″へ向けて内部を流下すると共に側面から横に張り出した横枝管接続部133からも排水が内部に流れ込み、排水を最下の差口部142″から排出する。
このように、異径部110とガイド部120と合流部130と下方延長部140とを接着剤で固定した状態で、外管20を内管10の外側に設ける前に、内管10の漏水検査が行われる。
【0041】
外管20は、内管10に固定して設けられる第一被覆部210と、内管10に取り付けた状態で軸C方向へ動かして位置を変えることができる第二被覆部220と、を備えている。
【0042】
第一被覆部210は、図1(b)に示すように、外径の異なる外周面を持った短筒部211,くびれ部212及び長筒部213と、逆テーパー部214,217と、テーパー部215と、長筒部213の外周面から張り出していて横枝管接続部133を覆う突出被覆部216と、を備えている。
【0043】
短筒部211が異径部110の受口部111′を覆い、くびれ部212が異径部110の縮径部113からガイド部120の内筒部121までを覆い、長筒部213がガイド部120の外筒部122から下方延長部140一部までを覆う。長筒部213が短筒部211よりも外径の大きい円筒面を形成し、これらよりもくびれ部212は外径の小さい円筒面を形成する。
【0044】
逆テーパー部214が短筒部211とくびれ部212との間に設けられ、逆テーパー部217が長筒部213の下流側の縁に続くように設けられており、逆テーパー部214,217はそれぞれ外形が上流側から下流側へ下降するにつれて外径が小さくなる逆テーパー面を成す。なお、下流側の逆テーパー部217は環状に広がると共に逆テーパー面217Aよりも表面積が小さい端面217Bを有する。
【0045】
テーパー部215が、くびれ部212と長筒部213との間に設けられており、外形が上流側から下流側へ下降するにつれて外径が大きくなるテーパー面を成す。突出被覆部216は、横枝管接続部133の延長部133Aと受口部133B′とを覆い、円筒状の外周面を構成する。
【0046】
図2に示すように、長筒部213が下方延長部140の受口部141′と縮径部143の一部を覆い、逆テーパー部217が長筒部213で覆われない縮径部143の他の部分と円筒部142の一部とを覆っている。
【0047】
図5図2の破線の楕円で囲った部分の拡大図であり、内管10の構成部材を二点鎖線で表し、その他を実線で表している。第一被覆部210の長筒部213は、横枝管接続部133の突出被覆部216よりも下方に、軸Cを中心として外周面を形成する円筒面部分213Dを有する。この円筒面部分213Dにおける、合流部130の管本体部131を覆う厚みt11と、受口部141′を覆う厚みt12と、縮径部143を覆う厚みt13とを比べると、受口部141′を覆う部分が最も薄く構成されている。なお、円筒面部分213Dで受口部141′を覆う部分を、以下、受口被覆部分213Eと呼ぶ。
【0048】
第一被覆部210では、流入側部分、つまり異径部110,ガイド部120及び合流部130を覆う部分が、受口被覆部分213Eの厚さt12と同じ厚さで構成された薄部分と、受口被覆部分213Eよりも厚く構成された厚部分と、を備えている。具体的には、第一被覆部210で異径部110,ガイド部120及び合流部130を覆う部分(流入側部分)は、受口被覆部分213Eの厚さt12を、最も薄い部分の厚さ(最薄厚)として構成されている。受口部131′を覆う部分が最薄厚で構成され、その他の流入側部分では、図2において矢印P1~P6の方向に沿った寸法(厚み)がそれぞれ最薄厚よりも大きく設定されて厚部分として構成されている。厚部分は、矢印P1~P6の方向に沿った寸法(厚み)がそれぞれ異なるように構成されてもよい。流入側部分では厚部分が薄部分よりも多く設けられている。
さらに、第一被覆部210では、異径部110とガイド部120及び合流部130を覆う部分が、異径部110,ガイド部120,合流部130のそれぞれの厚み(段差部を除く。)よりも厚く形成されている。
【0049】
第一被覆部210は、セメント、骨材及び補強用繊維を主原料として、水を加えて混錬した繊維モルタルを用いた成形体である。繊維モルタルを、内管10を入れた型の中に流して内管10の外周面と型の間に充填し、内管10の外周面を被覆した未乾燥の繊維モルタルを固化させて、製造する。なお、第一被覆部210を射出成形する際に、排水立て管や横枝管を接続する受口部111′,133B′まわりや接続箇所のまわりに例えば長尺の紙を巻き、また後述する熱膨張材や受口用目地部材71,72をセットして、内管10と共に繊維モルタルで被覆する。紙は、乾燥中の繊維モルタルの水分を吸収し、第一被覆部210が固化する過程で共に乾燥し、また内管10が熱収縮して、第一被覆部210との間に空間を形成する。
【0050】
第二被覆部220は、円筒形状であり、内径と外径が一定或いはほぼ同じに形成されている。第二被覆部220は、第一被覆部210で覆われていない円筒部142の外周面の内、差口部142″を成す接続代の領域を除いて覆う。第二被覆部220は、第一被覆部210が形成する外周面の内、軸Cから最も外側の円筒面を形成する部分で、その最小の厚みを成す部分、つまり受口被覆部分213Eと同じ厚さ或いはそれよりも薄く形成されている。
【0051】
また、図5に示すように、第一被覆部210の逆テーパー部217が第二被覆部220に近接して設けられていて、その厚みが上流側から下流側へ薄くなっており、図示例では逆テーパー部217の内、円筒部142を覆う部分の厚みt14が端面217Bで第二被覆部220の厚みt2とほぼ同じになる構成を示しているが、第二被覆部220の厚みt2は第一被覆部210の下の端面217Bが成す厚みt14(>t2)よりも薄く形成されてもよい。図5では、第二被覆部220が円筒部142よりも厚い構成例(t2>t3)を示しているが、厚さを第二被覆部220を円筒部142とほぼ同じにするなど寸法を変えて構成してもよい。
【0052】
第二被覆部220は、セメント、骨材及び補強用繊維を主原料として、水を加えて混錬した繊維モルタルを用いた成形体である。
【0053】
第二被覆部220は、内管10の円筒部142に着脱自在に取り付けられている。第二被覆部220の取付には少なくとも一つの輪ゴムなどの弾性の環状材40を用い、環状材40の内側に円筒部142を通して環状材40を円筒部142の外周に密着させ、円筒部142を第二被覆部220の内側に入れる。
【0054】
図5に示すように、第二被覆部220と円筒部142とが環状材40を挟んで、第二被覆部220は、その自重によって落下しないように円筒部142の外側に保持されている。また、第二被覆部220と円筒部142との間には、0.5mmほどの隙間(空間)50が筒状に広がるように構成される。また、環状材40は矩形の断面を有し、この一つの縁側を円筒部142に当てると共に反対側の縁側を第二被覆部220に当てている。環状材40が第二被覆部220を一定の位置に保持する力に抗して、第二被覆部220を移動させると環状材40が変形して位置を変え、また円筒部142及び第二被覆部220と接触する面が他の面に変わる。このような変形を繰り返して、第二被覆部220が円筒部142に対して移動する。
【0055】
管継手1をスラブに設置するにあたり、管継手1では、内管10と外管20とが下流側を円筒形状に構成されているので、余剰分がある場合は切断して寸法を短くすることができる。
【0056】
図6の(a)から(c)は管継手1の第1の切断方法を示す図である。図6では第二被覆部220で覆われた内管10の円筒部142を破線で表し、環状材40を省略している。管継手1では、外管20の第二被覆部220が内管10の円筒部142との間に環状材40や隙間50を介在させていることから、第二被覆部220を円筒部142に対して動かすことができる。そこで、直管状の部分の切断を行う際に、図6(a)に示すように、第二被覆部220を第一被覆部210に寄せた位置から差口部142″側へ動かし、その端を円筒部142の端に合わせる。そして、図6(a)の一点鎖線を境に、図6(b)に示すように円筒部142と第二被覆部220とから余剰分142x,220xを切断する。例えば第二被覆部220と円筒部142とを併せて切断することもできる。なお、寸法を短くした後も、円筒部142と第二被覆部220とでは、下流側の端面が軸Cに直交するように、切断する。切断後、図6(c)に示すように、第二被覆部220を第一被覆部210に寄せるよう動かして元の位置に戻すと、切断前と同様に、円筒部142の一部が差口部142″(接続代)として第二被覆部220の端部から外に現れる。第二被覆部220が、第一被覆部210と比べて厚みを薄くして軽量化が図られているので、切断などを行い易い。
【0057】
図6の(d)から(g)は管継手1の第2の切断方法を示す図である。第2の切断方法では、先ず図6(d)に示すように、第二被覆部220を円筒部142から取り外す。次に、図6(e)に示すように第二被覆部220と円筒部142との余剰分をそれぞれ切断した後、図6(f)に示すように再び第二被覆部220を円筒部142の端部に取り付ける。最後に図6(g)に示すように第二被覆部220を第一被覆部210に寄せるよう動かして元の位置に戻すと、切断前と同様に、円筒部142の一部が差口部142″(接続代)として第二被覆部220の端部から外に現れる。第二被覆部220が、第一被覆部210と比べて厚みを薄くして軽量化が図られているので、第一被覆部210から取り外して切断などを行うこともできる。
【0058】
管継手1は、好ましくは熱膨張材を設けている。熱膨張材は、酸化処理された粉末状の黒鉛などの耐火性膨張原料を帯状の収容部の中に入れて構成されている。
【0059】
熱膨張材は、下方延長部140の外周面で、内径が合流部130の内径よりも小さくなる箇所の外側に設けられており、外に現れないよう第一被覆部210で覆われている。図5の構成例では、長筒部213の面とこれとは向きの異なる逆テーパー部217の面とがつながる境界部218の内側で、熱膨張材60が縮径部143を周方向に一周する形態で、縮径部143の逆テーパー面の一部を覆っている。なお、帯状の熱膨張材60に代えて、難燃性のゴムを耐火性膨張原料に添加して成形したものを用いてもよい。
【0060】
火災発生時など内管10の下方延長部140が熱によって溶損しても、熱膨張材60が第一被覆部210の内側で膨張して内部を塞いで不通にする。これにより、軸C方向に沿った火や煙の移動が遮断される。
【0061】
目地部材として、受口用目地部材71,72と、外周用目地部材73とが設けられている。
【0062】
異径部110では、受口用目地部材71が、排水立て管を入れる口まわりの端面を構成する。受口用目地部材71は、例えば、周縁側が平たく形成され中央側が穴として形成されていて、内管10とその内側のゴムパッキン30さらに外管20のそれぞれの端を覆っている。図示例では受口用目地部材71が異径部110を覆う短筒部211の外径よりも小さく設定されていて、短筒部211を構成する繊維モルタルが受口用目地部材71のまわりにも設けられて端面を構成している。なお、受口用目地部材71は窪みを設けて形成されてもよい。
【0063】
耐火二層管で成る排水立て管が接続代(内管)を受口用目地部材71の穴に通して異径部110につながると、排水立て管の外管(端面)が受口用目地部材71に寄せて配置される。なお、受口用目地部材71は繊維モルタルで内管10を被覆する際に、内管10と共に型に入れられて第一被覆部210と一体に設けられる。
【0064】
合流部130では、上記と同様の受口用目地部材72が、横枝管を入れる受口部133B′の端面を構成して、外管20の端を覆う。例えば耐火二層管で成る直管が接続代(内管)を受口用目地部材72の穴に通して横枝管接続部133(合流部130)につながると、直管の外管(端面)が受口用目地部材72に寄せて配置される。
【0065】
管継手1は外管20の第二被覆部220を第一被覆部210に寄せた形態で用いられ、外周用目地部材73が第一被覆部210と第二被覆部220との間に設けられている。外周用目地部材73は、内管10を一周するリング形状を成し、第一被覆部210の端面に隣接して設けられている。図5に示す構成例では、外周用目地部材73は逆テーパー部217の端面217Bの外側の縁や第二被覆部220の端面220Aの縁に合わせて外周面を設けて、外側に張り出さないように構成されているが、外周面は端面217Bの外側の縁よりも内側或いは第二被覆部220の端面220Aの縁よりも内側でもよい。
【0066】
受口用目地部材71,72や外周用目地部材73は、例えば加硫ゴムを耐火性膨張原料に添加して成形したものなどを用いる。火災発生時など受口用目地部材71や外周用目地部材73などが熱によって膨張すると、管継手1とこれに接続した耐火二層管との隙間を塞ぎ、また第一被覆部210と第二被覆部220との隙間を塞ぐ。
【0067】
図7(a)は管継手1を用いた排水構造を示す図である。管継手1をスラブ2の貫通部2Aに設けて、スラブ2の上で管継手1は排水立て管3や横枝管4の端部と直接つながると共に、スラブ2の下で管継手1は排水横主管5に脚部継手6を介して接続されている。なお、図7(a)では、排水立て管3、横枝管4、排水横主管5、脚部継手6を一点鎖線で表している。
【0068】
スラブ2の貫通部2Aは管継手1との間をモルタル2Bなどで埋められている。管継手1は、例えば境界部218と外周用目地部材73を含めて下方延長部140の一部が埋まるよう、また筒状の第二被覆部220の端部がスラブ2から下方へ突き出るように、設けられる。
【0069】
図7(b)は図7(a)の排水構造の部分断面図であり、脚部継手6とこれにつながる管継手1の差口部142″周辺と排水横主管5とを表している。脚部継手6は上流側の受口部6A′が呼び径を管継手1の差口部142″の呼び径よりも大きく構成されており、管継手1の差口部142″は硬質ポリ塩化ビニルの偏芯ブッシング81を介して脚部継手6の受口部6A′に接続されている。図面では、二層管継手としての脚部継手6を構成する硬質ポリ塩化ビニルの内管を表し、繊維モルタルの外管の表示を省略しており、下流側の受口部6B′が呼び径を上流側の受口部6A′の呼び径と同じに構成されていて、耐火二層管でなる排水横主管5とつながっている。上流側の受口部6A′と偏芯ブッシング81、偏芯ブッシング81と管継手1の差口部142″、下流側の受口部6B′と排水横主管5の内管の開口端部によって構成される差口部51″、がそれぞれ接着材で固定されている。ここで、図示することを省略するが、脚部継手6として、上流側の受口部6A′が呼び径を管継手1の差口部142″の呼び径よりも大きく構成され更に下流側の受口部6B′が呼び径を上流側の受口部6A′の呼び径よりも大きく構成されたものを用いることができ、または上流側の受口部6A′が管継手1の差口部142″と同じ呼び径であって、下流側の受口部6B′が呼び径を上流側の受口部6A′の呼び径よりも大きく構成されたものを用いることもできる。また、上流側の受口部6A′の呼び径と下流側の受口部6B′の呼び径とを上記のように構成した脚部継手6として、耐火二層管に代えて鋳鉄製のものを用いることもでき、留付材やパッキンが各受口部6A′,6B′に設けられていて管継手1の差口部142″や排水横主管5の差口部を固定することができる。なお、脚部継手6や排水横主管5は図示することを省略する取付金具を用いてスラブ2の下、所定位置に保持されている。
【0070】
複数の階に亘る排水構造では、排水立て管と各階で横にはしる横枝管をつなぐ他の管継手とが連なるように設けられると共に、管継手1と脚部継手6とが最下位の排水立て管3と排水横主管5との間に設けられている。この排水構造によれば、管継手1が通気のコアを確保して排水設備に設けられたトラップの破封を防止しながら、排水が上の階から排水横主管5へ向けて流下する。
【0071】
本実施形態の管継手1によれば、外管20の第一被覆部210が内管10に固定して設けられ、第二被覆部220が内管10の円筒部142の外側で軸Cの延びる方向に移動可能に設けられているので、施工の際に、耐火性の外装を別途内管10に設けるような作業は不要である。また、管継手1では、耐火性の外管20が第一被覆部210と第二被覆部220とに分けて構成されており、第二被覆部220が第一被覆部210の最薄厚で或いはそれよりも薄く形成されていることから、管継手1の軽量化を図ることができる。さらに、スラブ2の貫通部2Aに入れる部位を太くすると貫通部2Aを大きく形成する必要があるが、管継手1では下方延長部140の差口部142″の呼び径φ2を異径部110の上流側の呼び径φ3と同じに設定していることで、スラブ2に設ける貫通部2Aとして小さいものを利用することができる。また、管継手1では、円筒部142が合流部130に接続して内管10を構成し、外管20の第一被覆部210で接続箇所を覆われて施工場所に搬入されるため、施工の際に内管10を組み立てる作業は不要である。
【0072】
本発明は、上記の説明や図示例に限られるものではなく、例えば寸法,構成,接続する他の管材を変えて実施をすることができる。
【0073】
図1の管継手1では、内管10の円筒部142と第二被覆部220とが余剰分を含めて長く形成されていたが、管継手1をそのままの形態で利用できるように円筒部142と第二被覆部220とを短くしてもよい。図8は管継手1の他の構成例を用いた排水構造を示す図であり、例えば150mm厚のスラブ2の貫通部2Aに対して、円筒形状の部分を切断せずに設置することができる。また、短く構成した管継手1も、図1の管継手1と同様に一部を切除して用いてもよい。なお、図8では、排水立て管3、横枝管4、排水横主管5、脚部継手6を一点鎖線で表している。
【0074】
管継手1の内管10が、排水立て管3や横枝管4などの管材とつながり上流側からの排水が流れ込む流入部と、この流入部から下方へ延びた下方延長部とを備えていて、流入部が三部品、つまり異径部110とガイド部120と合流部130で構成される場合を示したが、内管10の流入部の構成や部品点数などは上記の構成例に限るものではない。内管10の下流側の円筒部142や縮径部143がそれより上流側で外側の面を構成する部分よりも厚く構成して、外部へ伝搬する音を低減させてもよい。
【0075】
逆流防止部170は、横枝管接続部133の数に応じて設けられ、例えば軸Cまわりに180度の範囲で二つの合流口132があれば3つの逆流防止部170を90度間隔に設ける。
【0076】
また、流入部の構成や部品点数の変更例として、上記構成で旋回部150と衝突部160とを省くと共に異径部110とガイド部120とを一部品にすると、流入部がガイド付接続部190と合流部130との二部品で構成することができる。図9は流入部を二部品で構成する内管10Aの分割断面図であり、図9では内管10Aを構成する流入部と下方延長部140とを実線で表し、他の部材を一点鎖線で表し、上記と同様の構成については同じ符号を付している。
【0077】
ガイド付接続部190は、排水立て管3から流下する排水を合流部130の内側で深く入ったところまで案内する。ガイド付接続部190は、図9に示すように、円筒状に形成された内筒部191と、この内筒部191の外側に設けられており円筒状に形成された外筒部192と、内筒部191の一方の端部から延びて外筒部192の内周面につながって外筒部192を内筒部191と同軸に配置する保持部193と、を備えている。
ガイド付接続部190では、内筒部191と外筒部192との各開口端部が軸C方向にずれていて、外筒部192の一方の開口端部側が内筒部191の一方の開口端部よりも上流側に設けられて受口部111′を構成し、内筒部191の一方の開口端部側が外筒部192の内側に設けられ内筒部191の他方の開口端部側が外筒部192の他方の開口端部よりも下流側へ延びていて内筒部191はガイド筒部121Cを構成し、さらに外筒部192の他方の開口端部側がガイド筒部121Cの外側に設けられていて合流部130の受口部131′に入る差口部122A″を構成する。
また、ガイド付接続部190では、保持部193が段差面114Aを構成し、この段差面114Aを境に上流側の部分が受口部111′を構成し、下流側の部分がガイド筒部121Cを構成しており、軸Cに沿った寸法において例えば受口部111′よりもガイド筒部121Cが長く形成されている。
なお、内管10Aでは、下方延長部140の差口部142″の呼び径φ2が異径部110の上流側の呼び径φ3よりも大きく設定されて、通気のコアが確保される。
このように、内管10Aの部品点数を減らし、軸Cに沿った縦の寸法も小さくすると、二層に構成した管継手の総重量も低減することになり、より一層取り扱い易くなる。
【0078】
第一被覆部210が下方延長部140を覆う領域を変えて管継手1を構成することができる。図10は管継手1の他の変形例の断面図を示しており、下方延長部140が受口部141′の寸法L21を縮径部143の寸法L23よりも大きく設定されていて、第一被覆部210の長筒部213が下方延長部140の円筒部142の一部までを覆っている。
図10に示すように、長筒部213で覆われる円筒部142の一部の面積は、長筒部213で覆われる受口部141′の面積と縮径部143の面積との和よりも小さく設定されている。換言すれば、長筒部213で覆われる部分で、軸Cに沿った受口部141′、円筒部142、縮径部143の寸法(L31、L32、L33)では、長筒部213で覆われる円筒部142の一部の寸法L32が受口部141′の寸法L31と縮径部の寸法L33との和(=L31+L33)よりも小さく設定されている。長筒部213と逆テーパー部217とで構成される境界部218が円筒部142の外側に設けられ、図示例では熱膨張材60は境界部218から軸C方向に離れて縮径部143の外側に設けられている。図示省略するが熱膨張材60は縮径部143に限らず、例えば円筒部142或いは縮径部143から円筒部142に亘って、周方向に一周する形態で外側に設けられてもよい。また、円筒部142は、内径がガイド部120の内筒部121の内径及び外径よりも大きく設定されている。
なお、下方延長部140の差口部142″の呼び径φ2が異径部110の上流側の呼び径φ3よりも大きく設定されている。
【0079】
図2図10に示す構成例に限らず、円筒面部分213Dや逆テーパー部217更に境界部218の位置を変えて構成することもできる。円筒面部分213Dで覆われる領域を狭くして、例えば円筒面部分213Dは受口部141′だけを覆うように構成する場合、縮径部143や円筒部142の一部を覆う部分は、上が広く且つ下が狭くなる逆テーパー面を形成し、例えば上記の逆テーパー部217として構成することもできる。また図2の構成例において第一被覆部210が流入部と流入部に接続した下方延長部140の外周面で円筒部142の一部を含めて、第二被覆部220で覆われていない上流側の領域を覆っているが、逆テーパー部217が円筒部142を覆う部分を省いて縮径部143だけを覆うように構成することもできる。
【0080】
また、第一被覆部210の最も低い箇所を構成する端部は、長筒部213から第二被覆部220へ向けて広がる逆テーパー面217Aと下方を臨む端面217Bとを持った逆テーパー部217に代えて、外周の円筒面につながり下方を臨む端面として形成されてもよい。
実施形態では、流入側部分の最薄厚が受口被覆部分213Eの厚みt12と同じに設定した構成例を示したが、流入側部分の薄部分は、受口被覆部分213Eの厚みt12よりも薄く構成されてもよい。
【0081】
第一被覆部210と第二被覆部220との隙間は、外周用目地部材73に代えて、耐熱性テープを巻いて隙間を覆ってよい。また、管継手1で受口部における他の二層管との隙間部分も、受口用目地部材に代えて、耐熱性テープを巻いて隙間を覆ってよい。
【符号の説明】
【0082】
1 管継手
10,10A 内管
110 異径部
120 ガイド部
130 合流部
140 下方延長部
150 旋回部
160 衝突部
170 逆流防止部
20 外管
210 第一被覆部
220 第二被覆部
30 ゴムパッキン
40 環状材
50 隙間
60 熱膨張材
71,72 受口用目地部材
73 外周用目地部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10