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特許7592572配置推定装置、配置推定システム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】配置推定装置、配置推定システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 17/00 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021162617
(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公開番号】P2023053529
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グエン・カム・リー
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023127(JP,A)
【文献】特開2019-144192(JP,A)
【文献】特開2016-114512(JP,A)
【文献】特開2017-032469(JP,A)
【文献】国際公開第2019/044499(WO,A1)
【文献】特開2018-155674(JP,A)
【文献】特開2015-175827(JP,A)
【文献】特開2004-117174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の振動発生機器が設置されている複数の既知の設置位置に対する当該複数の振動発生機器の各々の配置を推定する配置推定装置において、
前記複数の振動発生機器の各々から検知された第1振動検知データを取得する取得手段と、
前記取得された第1振動検知データに基づいて、前記複数の振動発生機器の各々の相関位置を推定する推定手段と、
前記推定された相関位置及び前記複数の既知の設置位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングするマッチング手段と
を具備する配置推定装置。
【請求項2】
前記推定手段は、前記複数の振動発生機器の各々から検知された第1振動検知データに基づいて当該振動発生機器までの距離及び当該振動発生機器が位置する方位角度を計算し、当該計算された距離及び方位角度に基づいて当該振動発生機器の相関位置を推定する請求項1記載の配置推定装置。
【請求項3】
前記第1振動検知データは、振動を発生している振動発生機器によって反射された電磁波に基づくデータであり、前記複数の振動発生機器の各々に対して電磁波を放射する検知装置によって検知され、
前記取得手段は、前記第1振動検知データを前記検知装置から取得する
請求項1または2記載の配置推定装置。
【請求項4】
前記推定手段によって推定された前記複数の振動発生機器の各々の相関位置は、前記検知装置の位置及び方位角度を基準として設定することによって規定された第1座標空間上の位置である請求項3記載の配置推定装置。
【請求項5】
前記複数の既知の設置位置の各々は、前記第1座標空間とは異なる第2座標空間上の位置として定義されており、
前記マッチング手段は、
前記検知装置の前記第2座標空間上の位置及び方位角度が既知である場合、当該検知装置の前記第2座標空間上の位置及び方位角度に基づいて前記複数の振動発生機器の各々の前記第1座標空間上の位置を前記第2座標空間上の位置に変換し、
前記複数の振動発生機器の各々の前記第2座標空間上の位置及び前記複数の既知の設置位置の各々の前記第2座標空間上の位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする
請求項4記載の配置推定装置。
【請求項6】
前記複数の既知の設置位置の各々は、前記第1座標空間とは異なる第2座標空間上の位置として定義されており、
前記マッチング手段は、
前記検知装置の前記第2座標空間上の位置及び方位角度が既知でない場合、前記複数の振動発生機器の各々の前記第1座標空間上の位置及び前記複数の既知の設置位置の各々の前記第2座標空間上の位置に基づいて、前記検知装置の前記第2座標空間上の位置及び方位角度を推定し、
前記推定された前記検知装置の前記第2座標空間上の位置及び方位角度に基づいて前記複数の振動発生機器の各々の前記第1座標空間上の位置を前記第2座標空間上の位置に変換し、
前記複数の振動発生機器の各々の前記第2座標空間上の位置及び前記複数の既知の設置位置の各々の前記第2座標空間上の位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする
請求項4記載の配置推定装置。
【請求項7】
前記マッチング手段は、
前記検知装置の前記第2座標空間上の位置を、前記複数の振動発生機器の各々の前記第1座標空間上の位置及び前記複数の既知の設置位置の各々の前記第2座標空間上の位置に基づいて、当該検知装置の方位角度毎に計算し、
前記計算された前記検知装置の前記第2座標空間上の位置及び当該位置を計算するために用いられた方位角度に基づいて当該方位角度の評価値を計算し、
前記計算された評価値に基づいて選択された方位角度を用いて計算される位置及び当該選択された方位角度を、前記検知装置の前記第2座標空間上の位置及び方位角度として推定する
請求項6記載の配置推定装置。
【請求項8】
前記マッチング手段は、
前記複数の振動発生機器が設置されている空間または前記検知装置の配置に関する情報に基づいて、当該検知装置の方位角度の範囲を決定し、
前記決定された範囲に該当する方位角度の評価値を計算する
請求項7記載の配置推定装置。
【請求項9】
前記取得手段は、前記第1振動検知データ及び前記振動発生機器とは異なる振動発生源から検知された第2振動検知データが重畳された第3振動検知データを取得し、
前記推定手段は、
前記振動発生機器とは異なる振動発生源が存在していない環境において前記振動発生機器から事前に検知された第4振動検知データを取得し、
前記取得された第4振動検知データに基づいて、前記第3振動検知データから前記第1振動検知データを分離する
請求項1~8のいずれか一項に記載の配置推定装置。
【請求項10】
前記推定手段は、前記第4振動検知データを学習することによって生成された学習済モデルを用いて、前記第3振動検知データから前記第1振動検知データを分離する請求項9記載の配置推定装置。
【請求項11】
複数の振動発生機器と、前記複数の振動発生機器が設置されている複数の既知の設置位置に対する当該複数の振動発生機器の各々の配置を推定する配置推定装置と、前記複数の振動発生機器の各々から振動検知データを検知する検知装置とを備える配置推定システムにおいて、
前記配置推定装置は、
前記振動検知データを前記検知装置から取得する取得手段と、
前記取得された振動検知データに基づいて、前記複数の振動発生機器の各々の相関位置を推定する推定手段と、
前記推定された相関位置及び前記複数の既知の設置位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングするマッチング手段と
を含む
配置推定システム。
【請求項12】
複数の振動発生機器が設置されている複数の既知の設置位置に対する当該複数の振動発生機器の各々の配置を推定する配置推定装置が実行する方法であって、
前記複数の振動発生機器の各々から検知された振動検知データを取得するステップと、
前記取得された振動検知データに基づいて、前記複数の振動発生機器の各々の相関位置を推定するステップと、
前記推定された相関位置及び前記複数の既知の設置位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングするステップと
を具備する方法。
【請求項13】
複数の振動発生機器が設置されている複数の既知の設置位置に対する当該複数の振動発生機器の各々の配置を推定する配置推定装置のコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記複数の振動発生機器の各々から検知された振動検知データを取得するステップと、
前記取得された振動検知データに基づいて、前記複数の振動発生機器の各々の相関位置を推定するステップと、
前記推定された相関位置及び前記複数の既知の設置位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングするステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配置推定装置、配置推定システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、大規模施設等においては、例えば空調機(エアコン)のような稼働時に振動を発生する複数の機器(以下、振動発生機器と表記)が複数の予め定められた設置位置(以下、既知の設置位置と表記)に設置される。
【0003】
ところで、上記した複数の既知の設置位置の各々に設置されている振動発生機器には機器IDが割り当てられており、当該機器IDを指定することによって当該振動発生機器を制御することができる。これによれば、例えば特定の設置位置に設置されている振動発生機器を制御する(例えば、大規模施設内の一部の空間の空調を制御する)ようなことが可能となる。
【0004】
なお、このような制御を実現するためには、各振動発生機器(に割り当てられている機器ID)と当該振動発生機器が設置されている設置位置との対応関係(つまり、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器の各々の配置)を予め把握しておく必要がある。
【0005】
しかしながら、複数の既知の設置位置の各々に設置されている振動発生機器に割り当てられている機器IDを人手(目視)により確認する作業は非常に煩雑である。
【0006】
また、例えば無線通信を利用して複数の無線機間で測定された受信電力に基づいて当該複数の無線機の配置を推定する技術が知られているが、このような技術を適用するためには、振動発生機器の各々が無線通信機能を有するまたは振動発生機器の各々に無線機を取り付ける必要がある。
【0007】
このため、無線通信を利用することなく複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器の各々の配置を推定する技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-032469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、複数の振動発生機器と複数の既知の設置位置との対応関係を特定することが可能な配置推定装置、配置推定システム、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、複数の振動発生機器が設置されている複数の既知の設置位置に対する当該複数の振動発生機器の各々の配置を推定する配置推定装置が提供される。前記配置推定装置は、取得手段と、推定手段と、マッチング手段とを具備する。前記取得手段は、前記複数の振動発生機器の各々から検知された第1振動検知データを取得する。前記推定手段は、前記取得された第1振動検知データに基づいて、前記複数の振動発生機器の各々の相関位置を推定する。前記マッチング手段は、前記推定された相関位置及び前記複数の既知の設置位置に基づいて、前記複数の振動発生機器の各々と前記複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態における複数の既知の設置位置の一例を示す図。
図2】複数の振動発生機器の機器IDの一例を示す図。
図3】複数の振動発生機器の機器IDと複数の既知の設置位置との対応関係の一例を示す図。
図4】配置推定装置の機能構成の一例を示す図。
図5】配置推定装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図6】配置推定装置の処理手順の一例を示すフローチャート。
図7】振動発生機器の相関位置の概要を示す図。
図8】複数の振動発生機器の各々の相関位置に対して実施される座標変換を概念的に示す図。
図9】相関位置推定処理の一例を示す図。
図10】配置推定装置が作業者用タブレットとして実現されている場合における配置推定装置10の動作の概要を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る配置推定装置は、複数の振動発生機器が設置されている複数の既知の設置位置に対する当該複数の振動発生機器の各々の配置を推定するために用いられる。
【0013】
なお、本実施形態における振動発生機器としては例えば大規模施設等において複数設置される空調機(エアコン)のような機器を想定しているが、振動発生機器は、例えば稼働時に振動を発生する機器であればよく、他の機器であってもよい。
【0014】
以下、図1図3を参照して、本実施形態に係る配置推定装置の概要について簡単に説明する。
【0015】
図1は、大規模施設のような所定の空間内に配置された複数の既知の設置位置の一例を示している。図1に示す例では、N個の設置位置P_1~P_Nが示されており、当該設置位置P_1~P_Nにはそれぞれ1つの振動発生機器が設置される。すなわち、本実施形態においては、複数の既知の設置位置の数がN個である場合には、複数の振動発生機器の数も同様にN個である。
【0016】
ここで、複数の振動発生機器の各々には、当該振動発生機器を識別するための識別情報(以下、振動発生機器の機器IDと表記)が割り当てられている。上記したように振動発生機器が空調機である場合、例えば設置位置P_1~P_3の各々に設置されている振動発生機器の機器IDを指定して当該振動発生機器を稼働させることによって、設置位置P_1~P_3の近傍の空間の空調を制御することができる。同様に、例えば設置位置P_N-2~P_Nの各々に設置されている振動発生機器の機器IDを指定して当該振動発生機器を稼働させることによって、設置位置P_N-2~P_Nの近傍の空間の空調を制御することができる。
【0017】
しかしながら、上記したN個の設置位置P_1~P_Nに設置されているN個の振動発生機器の機器IDを機器ID_1~ID_Nとすると、振動発生機器の機器ID_1~ID_Nと既知の設置位置P_1~P_Nとの対応関係が不明である場合には、特定の設置位置に設置されている振動発生機器を制御する際に指定すべき機器IDが不明であり、当該振動発生機器を適切に制御することができない。
【0018】
具体的には、上記したN個の設置位置P_1~P_Nが既知である場合において、当該N個の設置位置P_1~P_Nに設置されているN個の振動発生機器の機器IDが図2に示す機器ID_1~ID_Nである場合を想定する。この場合において、例えば図3に示すような振動発生機器の機器ID_1~ID_Nと設置位置P_1~P_Nとの対応関係が判明していれば、例えば設置位置P_1に設置されている振動発生機器を制御する際には機器ID_2を指定すればよいことがわかる。他の設置位置に設置されている振動発生機器を制御する場合についても同様である。
【0019】
すなわち、N個の設置位置P_1~P_Nに設置されているN個の振動発生機器を適切に制御するためには、図3に示すような振動発生機器の機器ID_1~ID_Nの各々と設置位置P_1~P_Nの各々との対応関係(つまり、いずれの振動発生機器がいずれの設置位置に設置されているか)を予め把握しておく必要があるが、多数の振動発生機器が設置されるような環境(空間)において、このような対応関係を人手により把握することは非常に煩雑である。
【0020】
そこで、本実施形態においては、複数の振動発生機器の機器ID(のリスト)と当該複数の振動発生機器が設置される複数の設置位置とが既知であるという前提の下で、当該複数の振動発生機器(の機器ID)と当該複数の設置位置との対応関係を自動的に特定(推定)するものとする。
【0021】
図4は、本実施形態に係る配置推定装置の機能構成の一例を示す。図4に示すように、配置推定装置10は、設置位置取得部11、制御部12、振動検知データ取得部13、推定部14、マッチング部15及び出力部16を含む。
【0022】
設置位置取得部11は、上記した複数の既知の設置位置(を示す位置情報)を取得する。設置位置取得部11によって取得される複数の既知の設置位置の各々は、例えば2次元または3次元の予め規定された座標空間上の位置として定義されているものとする。この場合、設置位置は、例えばx軸、y軸及びz軸上の座標(値)によって定義(表現)されてもよいし、基準となる点からの距離及び角度によって定義(表現)されてもよいが、他の形式で表現されてもよい。
【0023】
制御部12は、振動発生機器20(の稼働及び停止)を制御する。なお、図4においては、便宜的に、1つの振動発生機器20のみが示されているが、制御部12は、複数の既知の設置位置に設置されている複数の振動発生機器20の各々を制御する。具体的には、制御部12は、複数の振動発生機器20の各々を順次稼働させるような制御を実行する。
【0024】
ここで、本実施形態においては、例えば複数の振動発生機器20が設置されている空間内に振動検知装置30が配置されているものとする。制御部12によって複数の振動発生機器20の各々が制御された場合、当該振動発生機器20は稼働して振動を発生するが、振動検知装置30は、当該振動に基づく振動検知データを検知するように構成されている。
【0025】
なお、本実施形態において振動検知データは、振動検知装置30から振動発生源(つまり、稼働することによって振動を発生している振動発生機器20)までの距離及び当該振動検知装置30の位置を基準とした場合の当該振動発生源が位置する方位角度に関するデータに相当する。
【0026】
具体的には、振動検知装置30は、振動発生機器20の各々に対して電磁波を送信(放射)し、当該振動発生機器20によって反射された電磁波に基づく振動検知データを受信(検知)するように構成されているものとする。この場合、振動検知装置30は、例えば電波を送受信するように構成されたレーダ(例えば、FMCWレーダ)であってもよいし、光を送受信するように構成されたLiDAR(例えばFMCWLiDAR)であってもよい。また、振動検知装置30は、超音波を送受信するように構成された装置であってもよい。
【0027】
なお、本実施形態においては振動検知装置30が配置推定装置10の外部に配置されている場合を想定しているが、当該振動検知装置30は、配置推定装置10に搭載されていてもよい。
【0028】
振動検知データ取得部13は、上記したように振動検知装置30によって検知された振動検知データを当該振動検知装置30から取得する。
【0029】
推定部14は、制御部12が複数の振動発生機器20の各々を制御した時刻(稼働開始時刻及び稼働停止時刻)及び振動検知データ取得部13によって取得された振動検知データに基づいて、複数の振動発生機器20の各々の相関位置を推定する。
【0030】
マッチング部15は、設置位置取得部11によって取得された複数の既知の設置位置及び推定部14によって推定された複数の振動発生機器20の各々の相関位置に基づいて、複数の振動発生機器の各々と複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする。なお、本実施形態において「複数の振動発生機器の各々と複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする」とは、振動発生機器の機器IDと設置位置との対応関係(組み合わせ)を特定することをいう。
【0031】
出力部16は、マッチング部15によるマッチング結果を出力する。このように出力部16によって出力されたマッチング結果は、上記したように複数の振動発生機器20を制御するために用いられる。
【0032】
なお、図4に示す配置推定装置10、複数の振動発生機器20及び振動検知装置30は、配置推定システムを構成する。
【0033】
図5は、配置推定装置10のハードウェア構成の一例を示す。図5に示すように、配置推定装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103及び通信デバイス104等を備える。
【0034】
CPU101は、配置推定装置10内の様々なコンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU101は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU101は、不揮発性メモリ102から主メモリ103にロードされる様々なプログラムを実行する。
【0035】
通信デバイス104は、無線通信または有線通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0036】
図5においては不揮発性メモリ102及び主メモリ103のみが示されているが、配置推定装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0037】
なお、本実施形態において、図4に示す各部11~16の一部または全ては、CPU101(つまり、配置推定装置10のコンピュータ)に所定のプログラム(以下、配置推定プログラムと表記)を実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。この配置推定プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて配置推定装置10にダウンロードされてもよい。なお、各部11~16の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0038】
次に、図6のフローチャートを参照して、配置推定装置10の処理手順の一例について説明する。なお、図6の処理は、例えば複数の振動発生機器20が設置された施設が実際に使用される前(つまり、当該施設の運用開始前)に実行される。
【0039】
まず、設置位置取得部11は、複数の既知の設置位置を取得する(ステップS1)。なお、ステップS1において、設置位置取得部11は、例えば配置推定装置10の内部に予め保持されている設置位置を取得してもよいし、当該設置位置を管理する外部のサーバ装置等から当該設置位置を取得してもよい。なお、ステップS1において取得される既知の設置位置は例えばx軸、y軸及びz軸上の座標値等であればよいが、以下の説明においては、当該既知の設置位置が定義されている座標空間をメイン座標空間と称する。
【0040】
次に、ステップS1において取得された複数の既知の設置位置に設置されている複数の振動発生機器20(の機器ID)の各々についてステップS2~S4の処理が実行される。なお、上記したように複数の振動発生機器20の機器IDは、既知であり、配置推定装置10または外部のサーバ装置等において管理されているものとする。以下、ステップS2~S4の処理の対象となる振動発生機器20を対象振動発生機器20と称する。
【0041】
この場合、制御部12は、対象振動発生機器20の機器IDを指定して当該対象振動発生機器20を制御(起動)し、当該対象振動発生機器20を稼働させる(ステップS2)。対象振動発生機器20の稼働が開始されると、当該対象振動発生機器20は、当該稼働によって振動を発生する。
【0042】
ステップS2の処理が実行されると、振動検知装置30は、対象振動発生機器20から振動検知データを検知する。具体的には、例えば振動検知装置30が定期的に電磁波を送受信するように構成されているものとすると、当該振動検知装置30は、対象振動発生機器20が振動を発生している間当該対象振動発生機器20によって反射された電磁波(反射波)に基づく振動検知データ(つまり、対象振動発生機器20の振動に関するデータ)を検知する。ここでは振動検知装置30が定期的に電磁波を送信するように動作するものとして説明したが、当該振動検知装置30は、例えばステップS2の処理が実行されたことが制御部12から振動検知装置30に通知された場合に電磁波を送受信するように動作してもよい。
【0043】
なお、振動検知装置30によって送信された電磁波は例えば対象振動発生機器20を含む複数の振動発生機器20によって反射され、当該反射された電磁波が当該振動検知装置30によって受信(検知)されるが、対象振動発生機器20は上記したように稼働している(つまり、振動を発生している)ため、当該対象振動発生機器20によって反射された電磁波(振動の影響を受けた反射波)は、稼働していない他の機器によって反射された電磁波(振動の影響を受けていない反射波)と区別することができる。
【0044】
振動検知データ取得部13は、上記したように振動検知装置30が対象振動発生機器20から検知した振動検知データを、当該振動検知装置30から取得する(ステップS3)。ステップS3の処理が実行されると、当該ステップS3において取得された振動検知データ及び当該振動検知データが検知(取得)された時刻(以下、検知時刻と表記)が推定部14に渡される。
【0045】
次に、制御部12は、対象振動発生機器20の機器IDを指定して当該対象振動発生機器20を制御し、当該対象振動発生機器20の稼働を停止する(ステップS4)。対象振動発生機器20の稼働が停止されると、当該対象振動発生機器20は振動を発生しない(つまり、対象振動発生機器20の振動が停止する)。
【0046】
なお、ステップS4の処理は、例えばステップS2の処理が実行された後、上記した振動検知データを取得するために確保された十分な期間が経過した際に実行されればよいが、ステップS3の処理が実行されたことが振動検知データ取得部13から制御部12に通知された際に実行されてもよい。
【0047】
ステップS2及びS4の処理が実行された場合、制御部12は、対象振動発生機器20の機器ID_i(i=1,2,…,N)、当該対象振動発生機器20の稼働開始時刻(つまり、ステップS2の処理が実行された時刻)T_on_i及び当該対象振動発生機器20の稼働停止時刻(つまり、ステップS4の処理が実行された時刻)T_off_iを内部に保持(記録)する。このように制御部12に保持された対象振動発生機器20の機器ID_i、稼働開始時刻T_on_i及び稼働停止時刻T_off_iは、推定部14に渡される。
【0048】
ステップS4の処理が実行されると、全ての振動発生機器20についてステップS2~S4の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS5)。
【0049】
全ての振動発生機器20について処理が実行されていないと判定された場合(ステップS5のNO)、ステップS2に戻って処理が繰り返される。この場合、ステップS2~S4の処理が実行されていない振動発生機器20を対象振動発生機器20として当該処理が実行される。すなわち、本実施形態においては、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20の配置の推定精度を向上させるため、当該複数の振動発生機器20の各々を異なる時刻(タイミング)で順次稼働させて、当該振動発生機器20から検知された振動検知データを取得する。
【0050】
一方、全ての振動発生機器20について処理が実行されたと判定された場合(ステップS5のYES)、推定部14は、制御部12から渡された振動発生機器20の機器ID_i、稼働開始時刻T_on_i及び稼働停止時刻T_off_iと、振動検知データ取得部13から渡された振動検知データ及び検知時刻とに基づいて、複数の振動発生機器20の各々の相関位置を推定する(ステップS6)。
【0051】
ここで、ステップS6において、機器IDが機器ID_iである振動発生機器20(つまり、N個の振動発生機器20のうちのi番目の振動発生機器20)の相関位置P_corr_iを推定する場合について説明する。
【0052】
まず、上記したように振動検知データは異なる時刻(タイミング)で順次稼働させた振動発生機器20の各々から検知されるため、振動検知データ取得部13から推定部14に渡される振動検知データは、時系列データであるといえる。この場合、推定部14は、制御部12から渡された振動発生機器20の機器ID、稼働開始時刻及び稼働停止時刻に基づいて、上記した時系列データからi番目の振動発生機器20(以下、振動発生機器20-iと表記)から検知された振動検知データを取り出す。
【0053】
この場合、ステップS3において取得された振動検知データは検知時刻とともに推定部14に渡されるため、推定部14は、振動発生機器20-iの機器ID_iとともに制御部12から渡された稼働開始時刻T_on_iから稼働停止時刻T_off_iまでの間に該当する検知時刻とともに振動検知データ取得部13から渡された振動検知データを、当該振動発生機器20-iから検知された振動検知データとして取り出すことができる。
【0054】
本実施形態においては、制御部12から渡された時刻の情報(稼働開始時刻及び稼働停止時刻)に基づいて振動発生機器20-iから検知された振動検知データを取り出すものとして説明したが、例えば予め定められたパターン(順番)で複数の振動発生機器20の各々を稼働させる(制御する)ことを推定部14が把握しているような場合には、当該時刻の情報用いることなく(つまり、当該パターンに基づいて)当該振動検知データを取り出すようにしてもよい。
【0055】
ここで、振動検知データは上記したように振動検知装置30から振動発生源までの距離及び当該振動検知装置30の位置を基準とした場合の振動発生源が位置する方位角度に関するデータであるところ、推定部14は、取り出された振動検知データ(振動発生機器20-iから検知された振動検知データ)を用いて、振動検知装置30から当該振動発生機器20-iまでの距離(以下、単に振動発生機器20-iまでの距離と表記)及び当該振動検知装置30の位置を基準とした場合の振動発生機器20-iの方位角度(以下、単に振動発生機器20-iが位置する方位角度と表記)を計算する。
【0056】
なお、振動発生機器20-iまでの距離及び当該振動発生機器20-iが位置する方位角度は、例えばBeamformer法、MUSIC法、AngleFFT法、RangeFFT法のような公知の手法を用いて計算することができる。また、例えば特開2020-122720号公報に記載されている技術を適用することも可能である。
【0057】
推定部14は、上記したように計算された振動発生機器20-iまでの距離及び当該振動発生機器20-iが位置する方位角度に基づいて、当該振動発生機器20-iの相関位置P_corr_iを計算することができる。
【0058】
ここで、推定部14によって推定される振動発生機器20-i(を含む複数の振動発生機器20の各々)の相関位置は、例えば振動検知装置30の位置及び方位角度を基準として設定(仮定)することによって規定された座標空間上に定義される位置であるものとする。なお、このような相関位置が定義される座標空間は、上記したメイン座標空間(複数の既知の設置位置が定義されている座標空間)とは異なる座標空間であり、便宜的に、サブ座標空間と称する。
【0059】
サブ座標空間上の位置がx軸、y軸、z軸上の座標(値)で定義され、当該サブ座標空間上の方位角度が方位角(azimuth)及び仰角(elevation)で定義される場合において、当該振動検知装置30の位置(x、y、z)=(0,0,0)であり、当該振動検知装置30の方位角度(azimuth,elevation)=(0,0)であるものとすると、図7に示すような振動発生機器20-iの相関位置P_corr_i=(x_i,y_i,z_i)は、以下の式(1)を用いて計算される。
x_i=d*cos(θe)*sin(θa)
y_i=d*cos(θe)*cos(θa)
z_i=d*sin(θe) 式(1)
【0060】
なお、上記した式(1)において、dは、振動発生機器20-iまでの距離である。また、θaは振動発生機器20-iが位置する方位角(水平方向の向き)であり、θeは振動発生機器20-iが位置する仰角(上下方向の向き)である。
【0061】
ここでは振動発生機器20-iの相関位置の推定(計算)について説明したが、このような相関位置は、複数の振動発生機器20の各々について推定される。
【0062】
次に、マッチング部15は、ステップS6において推定された複数の振動発生機器20の各々の相関位置に加えてステップS1において取得された複数の既知の設置位置を用いることによって、当該複数の振動発生機器20(の機器ID)の各々と当該複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする処理(以下、マッチング処理と表記)を実行する(ステップS7)。
【0063】
以下、ステップS7の処理(マッチング処理)について具体的に説明する。本実施形態においては、振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度(当該振動検知装置30が向いている方向)が既知であるものとする。具体的には、メイン座標空間上の位置がx軸、y軸、z軸上の座標で定義され、方位角度が方位角及び仰角で定義される場合、振動検知装置30の位置(x,y,z)=(x,y,0)であり、当該振動検知装置30の方位角度(azimuth,elevation)=(φ,0)であるものとする。なお、振動検知装置30は例えば複数の振動発生機器20が設置される空間の床面(平面)において当該床面に沿う方向を向いて配置される場合が多いため、ここではz軸上の座標値及び仰角を0としている。
【0064】
ここで、ステップS7においてマッチングされる複数の既知の設置位置はメイン座標空間において定義された位置であり、複数の振動発生機器20の各々の相関位置はサブ座標空間において定義された位置であり、このような異なる座標空間上の位置を用いたマッチング(処理)は困難である。
【0065】
このため、本実施形態において、マッチング部15は、複数の振動発生機器20の各々の相関位置(つまり、サブ座標空間上の位置)をメイン座標空間(つまり、複数の既知の設置位置と同じ座標空間)上の位置に変換する。換言すれば、マッチング部15は、複数の振動発生機器20の各々の相関位置に対して座標変換を実施する。
【0066】
図8は、上記した複数の振動発生機器20の各々の相関位置に対して実施される座標変換を概念的に示す図である。図8の左側は、座標変換前の複数の振動発生機器20の相関位置を複数の既知の設置位置とともにメイン座標空間上に表している。図8の右側は、座標変換後の複数の振動発生機器20の相関位置を複数の既知の設置位置とともにメイン座標空間上に表している。図8に示すように、複数の振動発生機器20の位置に対して座標変換を実施することにより、当該複数の振動発生機器20の各々と複数の既知の設置位置の各々との対応関係をより明確に把握することができるようになる。
【0067】
なお、複数の振動発生機器20のうちの振動発生機器20-iの相関位置P_corr_i=(x_i,y_i,z_i)に対する座標変換は、以下の式(2)を用いて実施することができる。
_i=x_i*cosφ+y_i*sinφ+x
_i=y_i*cosφ-x_i*sinφ+y
_i=z_i 式(2)
【0068】
なお、上記した式(2)において、x_i、y_i、z_iは、振動発生機器20-iのサブ座標空間上の相関位置に対する座標変換が実施された後のメイン座標空間上のx軸、y軸、z軸上の座標値である。
【0069】
ここでは振動発生機器20-iの相関位置に対する座標変換について説明したが、このような座標変換は、他の振動発生機器20の相関位置についても同様に実施される。これにより、マッチング部15は、複数の振動発生機器20の各々のメイン座標空間上の位置を得ることができる。
【0070】
次に、マッチング部15は、複数の振動発生機器20の各々のメイン座標空間上の位置及び複数の既知の設置位置のメイン座標空間上の位置に基づいてマッチングを行う。本実施形態においては、重み付き2部マッチング(weighted bipartite matching)と称される手法を用いて、各振動発生機器20-iの機器ID_iと各設置位置P_j(j=1,2,…,N)との重み(weight)を以下の式(3)により計算する。
【数1】
【0071】
なお、上記した式(3)において、P_corr_iは、振動発生機器20-iの相関位置P_corr_i(つまり、サブ座標空間上の位置)から変換されたメイン座標空間上の位置(x_i,y_i,z_i)である。
【0072】
式(3)に示すように、本実施形態においては、振動発生機器20-iと設置位置P_jとの間の距離(振動発生機器20-iのメイン座標空間上の位置と設置位置P_jのメイン座標空間上の位置との差分)を重み(重み付き2部マッチングにおけるパラメータ)として利用する。なお、振動発生機器20-iと設置位置P_jとの間の距離distance(P_corr_i,P_j)は、例えばEuclidean距離、Manhattan距離、Minkowski距離またはHamming距離のような距離メトリックを使用して計算することが可能である。
【0073】
マッチング部15は、以下に示す式(4)に表すように、上記した式(3)によって計算される重み(振動発生機器20-iと設置位置P_jとの間の距離)の総和が最小となる複数の振動発生機器20の各々と複数の既知の設置位置の各々とのマッチング(組み合わせ)を探索する。
【数2】
【0074】
上記した式(4)において、πは、仮想マッチングであり、置換に相当する。なお、仮想マッチングとは、複数の振動発生機器20の各々がそれぞれ複数の設置位置のうちの1つと対応する(つまり、複数の振動発生機器20の各々が互いに異なる設置位置と1対1の関係となる)ような当該複数の振動発生機器20の各々と当該複数の設置位置の各々との組み合わせ(つまり、想定可能なマッチングパターン)の1つをいう。
【0075】
また、式(4)において、πは、重みの総和が最小となる仮想マッチング(つまり、最も可能性が高いマッチング)を表している。更に、式(4)におけるπ(i)=jであるものとすると、weight(i,π(i))は、振動発生機器20-iが設置位置P_jに設置されているときの振動発生機器20-iと設置位置P_jとの重み(振動発生機器20-iと設置位置P_jとの間の距離)である。
【0076】
このような式(4)によれば、全ての仮設マッチングの中から最適なマッチング(つまり、複数の既知の設置位置の各々に対して距離が近い振動発生機器20が割り当てられたような組み合わせ)を特定することができる。なお、式(4)の解(つまり、マッチング結果)は、例えばHungarianアルゴリズム等によって得ることができる。
【0077】
ここでは重み付き2部マッチングを用いる場合について説明したが、マッチング手法としては、例えば最大マッチング法または安定マッチング(stable matching)法等が用いられてもよい。ただし、精度の高いマッチング結果を得るためには、適切なマッチング手法を選択し、当該マッチング手法におけるパラメータに適切な値を設計する必要がある。
【0078】
ステップS7の処理が実行されると、出力部16は、当該処理の結果(つまり、マッチング結果)を出力する(ステップS8)。なお、ステップS8において、マッチング結果は、例えば配置推定装置10に備えられる不揮発性メモリ102または記憶装置等に出力されて配置推定装置10内に保持されてもよいし、当該配置推定装置10とは異なるサーバ装置または振動発生機器20の各々を制御する制御装置等に出力(送信)されてもよい。更に、マッチング結果は、配置推定装置10(配置推定システム)の使用者が確認するために、表示デバイスに出力され、当該表示デバイスに表示されてもよい。
【0079】
なお、複数の振動発生機器20(例えば、空調機)が設置された施設が実際に使用される際(つまり、当該施設の運用開始後)には、ステップS8において出力されたマッチング結果を用いて当該振動発生機器20が制御される。
【0080】
上記したように本実施形態においては、複数の振動発生機器20の各々から検知された振動検知データ(第1振動検知データ)を取得し、当該取得された振動検知データに基づいて複数の振動発生機器20の各々の相関位置を推定し、当該推定された相関位置及び複数の既知の設置位置に基づいて、当該複数の振動発生機器20の各々と当該複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする。
【0081】
本実施形態においては、このような構成により、例えば複数の振動発生機器20の各々が無線通信機能を有していない(または当該振動発生機器20に無線機を取り付けていない)場合であっても、複数の振動発生機器20と複数の既知の設置位置との対応関係を特定する(つまり、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20の各々の配置を推定する)ことができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、複数の振動発生機器20の各々から検知された振動検知データに基づいて当該振動発生機器20までの距離及び当該振動発生機器20が位置する方位角度を計算し、当該計算された距離及び方位角度に基づいて当該振動発生機器20の相関位置を推定する。この振動検知データは、例えば振動を発生している振動発生機器20によって反射された電磁波に基づくデータであり、複数の振動発生機器20の各々に対して電磁波を放射する振動検知装置30によって検知される。すなわち、振動検知データは、このような振動検知装置30から取得することができる。
【0083】
本実施形態においては、このような構成により、例えばレーダやLiDARのような振動検知装置30を用いて複数の振動発生機器20の各々の相関位置を推定することができる。
【0084】
また、本実施形態において、複数の振動発生機器の各々の相関位置は、振動検知装置30の位置及び方位角度を基準として設定することによって規定されたサブ座標空間(第1座標空間)上の位置であるが、複数の既知の設置位置の各々はサブ座標空間とは異なるメイン座標空間(第2座標空間)上の位置として定義されている。このため、本実施形態においては、振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が既知である場合を想定し、当該振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度に基づいて複数の振動発生機器20の各々のサブ座標空間上の位置をメイン座標空間上の位置に変換する。これにより、複数の振動発生機器20の各々のメイン座標空間上の位置及び複数の位置の設置位置の各々のメイン座標空間上の位置に基づいて複数の振動発生機器の各々と複数の既知の設置位置の各々とをマッチングする。
【0085】
本実施形態においては、このような構成により、上記したように振動検知装置30を用いて推定された複数の振動発生機器20の各々の相関位置から、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20の配置を適切に推定することが可能となる。
【0086】
ところで、上記したように稼働している(つまり、振動を発生している)振動発生機器20によって反射された電磁波は、他の稼働していない(つまり、振動を発生していない)振動発生機器20によって反射された電磁波と区別することが可能である。本実施形態においては、複数の振動発生機器20の各々を異なる時刻で順次稼働させることにより、当該稼働している(振動を発生している)振動発生機器20によって反射された電磁波に基づく振動検知データ(つまり、当該振動発生機器20から検知された振動検知データ)を適切に取得することが可能である。
【0087】
しかしながら、複数の振動発生機器20が設置されている空間内に、配置推定装置10(制御部12)によって制御される複数の振動発生機器20以外の振動発生源(以下、他の振動発生源と表記)が存在し、当該他の振動発生源が振動を発生している場合には、稼働している振動発生機器20によって反射された電磁波に基づく振動検知データ(つまり、当該振動発生機器20から検知された第1振動検知データ)及び当該他の振動発生源によって反射された電磁波に基づく振動検知データ(つまり、当該振動発生源から検知された第2振動検知データ)が重畳された振動検知データ(第3振動検知データ)が取得されることになる。
【0088】
この場合、例えば上記した特開2020-122720号公報に記載されている技術を利用すれば、このように取得された振動検知データに重畳されている複数の振動検知データ(つまり、波源)を分離することが可能であるが、当該分離された振動検知データの中から振動発生機器20から検知された振動検知データ(当該振動発生機器20によって反射された電磁波に基づく振動検知データ)を判別することはできない。
【0089】
そこで、上記したように複数の振動発生機器20以外の他の振動発生源が存在するような環境において配置推定装置10が使用される場合には、上記した図6に示すステップS6において、図9に示す処理(以下、相関位置推定処理と表記)が実行されるものとする。
【0090】
まず、推定部14は、基準データを取得する(ステップS11)。なお、基準データとは、例えば複数の振動発生機器20以外の他の振動発生源が存在しない環境において当該複数の振動発生機器20のうちの少なくとも1つの振動発生機器20から事前に検知された振動検知データに相当する。換言すれば、基準データは、振動発生機器20から検知された振動検知データ以外の振動検知データが重畳されていないデータであり、当該振動発生機器20が発生する振動の特徴を表すデータである。このような基準データは、予め用意されていればよく、配置推定装置10内において保持されていてもよいし、当該配置推定装置10の外部のサーバ装置等から取得(受信)されてもよい。
【0091】
次に、推定部14は、図6に示すステップS3において取得された振動検知データの各々についてステップS12~S14の処理を実行する。
【0092】
この場合、推定部14は、上記した時系列データ(時系列の振動検知データ)から1つの振動検知データ(以下、対象振動検知データと表記)を取得する(ステップS12)。
【0093】
ここで、ステップS12において取得された対象振動検知データに複数の振動検知データ(つまり、振動発生機器20によって反射された電磁波及び他の振動発生源によって反射された電磁波)が重畳されているものとすると、推定部14は、当該各電磁波に基づく振動検知データ(つまり、当該電磁波の波源)を対象振動検知データから分離する(ステップS13)。なお、ステップS13の処理は、例えば特開2020-122720号公報に記載されている技術を利用することによって実現可能である。
【0094】
次に、推定部14は、ステップS11において取得された基準データに基づいて、ステップS13において分離された振動検知データの中から振動発生機器20から検知された振動検知データを取り出す(ステップS14)。
【0095】
この場合、推定部14は、ステップS11において取得された基準データから当該基準データにおける振動特徴を抽出し、例えばステップS13において分離された振動検知データの各々から当該振動検知データの各々における振動特徴を抽出する。なお、振動特徴を抽出するためには、基準データ及び振動検知データ(つまり、反射波信号)に対する信号処理を行い、当該信号の特徴を抽出する。この場合、例えば「Coluccia, Angelo, Gianluca Parisi, and Alessio Fascista. “Detection and classification of multirotor drones in radar sensor networks: A review.” Sensors 20, no. 15 (2020): 4172.」に記載されている技術を適用することによって得られる時系列データまたは画像データを利用してもよい。
【0096】
推定部14は、このように抽出された基準データにおける振動特徴と振動検知データの各々における振動特徴とを比較することによって、当該基準データにおける振動特徴と振動特徴が類似する振動検知データを判別する。推定部14は、このように判別された振動検知データを、振動発生機器20から検知された振動検知データとして取り出す。
【0097】
ステップS14の処理が実行されると、推定部14は、図6に示すステップS3において取得された全ての振動検知データについてステップS12~S14の処理が実行されたか否かを判定する(ステップS15)。
【0098】
全ての振動検知データについて処理が実行されていないと判定された場合(ステップS15のNO)、ステップS12に戻って処理が繰り返される。この場合、ステップS12~S14の処理が実行されていない振動検知データがステップS12において取得され、ステップS13及びS14の処理が実行される。
【0099】
一方、全ての振動検知データについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS15のYES)、ステップS14において取り出された振動検知データ(つまり、振動発生機器20の各々から検知された振動検知データ)に基づいて各振動発生機器20の相関位置(サブ座標空間上の位置)が推定される(ステップS16)。なお、ステップS16の処理は上記した図6に示すステップS6の処理と同様の処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0100】
上記した相関位置推定処理によれば、他の振動発生源が存在するような場合であっても振動発生機器20から検知された振動検知データを振動検知データ取得部13によって取得された振動検知データから適切に分離して、振動発生機器20の相関位置の推定に用いることができる。
【0101】
なお、図9に示す例ではステップS12~S14の処理が振動検知データ毎に実行されるものとして説明したが、複数の振動発生機器20の各々の稼働によって発生する振動(特徴)には個体差が存在する場合がある。このため、上記した基準データは、振動発生機器20毎に用意されていてもよい。この場合には、ステップS11~S14の処理が振動検知データ毎に実行されるものとする。具体的には、ステップS11においては各振動発生機器20に対応する基準データが取得され、ステップS12においては当該ステップS11において取得された基準データに対応する振動発生機器20が稼働している間に該当する検知時間とともに振動検知データ取得部13から渡された振動検知データが取得されればよい。一方、全ての振動発生機器20による基準データを用意しなくてもよい。同じ種類の振動発生機器20(例えば、エアコン)のうちの1台を代表として選び、当該代表として選ばれた振動発生機器20の基準データを取得してもよい。
【0102】
また、図9に示す例では基準データにおける振動特徴と振動検知データの各々における振動特徴とを比較することによって、当該基準データにおける振動特徴と振動特徴が類似する振動検知データを判別するものとして説明したが、当該判別処理は、上記した基準データを学習データとして学習することによって生成された学習済モデルを用いて実行されてもよい。なお、このような学習済モデルは、例えばステップS13において分離された振動検知データが入力された場合に当該振動検知データが振動発生機器20から検知された振動検知データであるか否かを出力するように構築されていればよく、任意の機械学習アルゴリズム(教師あり学習)に基づいて生成されていればよい。学習済モデルを生成するための機械学習アルゴリズムとしては、例えばConvolution Neural Network、Recurrent Neural Network、Support Vector Machine等を利用することができる。
【0103】
ここで、本実施形態においては配置推定装置10が例えばサーバ装置のように動作することを想定しているが、当該配置推定装置10は、複数の振動発生機器20が設置される施設において作業を行う作業者が使用するタブレット端末(作業者用タブレット)等として実現されていてもよい。なお、配置推定装置10が作業者用タブレットとして実現される場合、当該配置推定装置10は、例えば作業者のタッチ操作(指を画面上に接触させる操作)を検出することができる入力デバイスと各種画面を表示することができる表示デバイスが一体として構成されたタッチスクリーンディスプレイを備えているものとする。
【0104】
以下、図10のフローチャートを参照して、配置推定装置10が作業者用タブレットとして実現されている場合における当該配置推定装置10の動作の概要について説明する。
【0105】
まず、配置推定装置10(作業者用タブレット)において所定のアプリケーションプログラムが起動されると、当該配置推定装置10に備えられるタッチスクリーンディスプレイには、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20(例えば、空調機)の配置を推定するために、当該複数の振動発生機器20を稼働させるか否かを確認するための画面(以下、稼働確認画面と表記)が表示される。
【0106】
なお、この稼働確認画面には、例えば「配置推定のために振動発生機器(空調機)を稼働しますか」のようなメッセージが表示されるとともに、「はい」ボタン及び「いいえ」ボタンが設けられている。作業者は、稼働確認画面に表示されたメッセージを確認し、上記したタッチスクリーンディスプレイを介して「はい」ボタン及び「いいえ」ボタンの一方を押下する操作(タッチ操作)を行うことができる。
【0107】
この場合、配置推定装置10(タッチスクリーンディスプレイ)に対する作業者の操作に応じて、複数の振動発生機器20を稼働させる指示(以下、稼働指示と表記)があるか否かが判定される(ステップS21)。なお、ステップS21においては、上記した「はい」ボタンが作業者によって押下された場合には稼働指示があると判定され、「いいえ」ボタンが作業者によって押下された場合には稼働指示がないと判定される。
【0108】
稼働指示があると判定された場合(ステップS21のYES)、配置推定装置10は、振動検知データ取得処理を実行する(ステップS22)。なお、このステップS22の処理は、上記した図6に示すステップS1~S5の処理に相当する。
【0109】
ステップS22の処理が実行されると、配置推定装置10に備えられるタッチスクリーンディスプレイには、振動検知データの取得の完了が表示される(ステップS23)。
【0110】
次に、配置推定装置10に備えられるタッチスクリーンディスプレイには、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20の配置を推定するか否かを確認するための画面(以下、配置推定確認画面と表記)が表示される。
【0111】
なお、この配置推定確認画面には、例えば「振動発生機器(空調機)の配置を推定しますか」のようなメッセージが表示されるとともに、「はい」ボタン及び「いいえ」ボタンが設けられている。作業者は、配置推定画面に表示されたメッセージを確認し、タッチスクリーンディスプレイを介して「はい」ボタン及び「いいえ」ボタンの一方を押下する操作(タッチ操作)を行うことができる。
【0112】
この場合、配置推定装置10(タッチスクリーンディスプレイ)に対する作業者の操作に応じて、複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20の配置を推定する指示(以下、配置推定指示と表記)があるか否かが判定される(ステップS24)。
【0113】
配置推定指示(つまり、マッチング指示)があると判定された場合(ステップS24のYES)、配置推定装置10は、配置推定処理を実行する(ステップS25)。なお、このステップS25の処理は、上記した図6に示すステップS6~S8の処理に相当する。ステップS25の処理が実行されることによって得られるマッチング結果は、例えば作業者が確認するためにタッチスクリーンディスプレイに表示されるものとする。この場合、マッチング結果は、例えば振動発生機器20の機器IDと設置位置との対応関係を把握することが可能な態様で表示されればよく、リスト、マップまたは表のような形式で表示可能である。
【0114】
なお、ステップS21において稼働指示がないと判定された場合(ステップS21のNO)またはステップS24において配置推定指示がないと判定された場合(ステップS24のNO)、図10に示す処理は終了される。
【0115】
上記したように本実施形態に係る配置推定装置10は、複数の振動発生機器20が設置される施設において作業員によって使用されるタブレット端末として運用することも可能である。ここでは配置推定装置10がタブレット端末として実現されるものとして説明したが、当該配置推定装置10は、例えばスマートフォンのような他の携帯端末として実現されてもよい。
【0116】
なお、大規模施設のように複数の振動発生機器20が設置される空間が広い場合や当該空間の構造が特殊な場合には、1つの振動検知装置30では全ての振動発生機器20から振動検知データを検知することができない場合がある。このような場合には、複数の振動発生機器20が設置される空間に複数の振動検知装置30を配置し、当該複数の振動検知装置30の各々によって検知された振動検知データに基づいて推定された複数の振動発生機器20の相関位置をマージしてマッチング処理を実行してもよい。なお、複数の振動検知装置30が同一の振動発生機器20から振動検知データを検知した場合には、当該複数の振動検知装置30の各々によって検知された振動検知データに基づいて複数の相関位置が推定されるが、当該振動発生機器20の相関位置は、当該複数の相関位置の中間の位置としてもよいし、当該複数の相関位置のうちの1つとしてもよい。
【0117】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の部分についての詳しい説明を省略し、当該第1実施形態とは異なる部分について主に説明する。また、本実施形態に係る配置推定装置(配置推定システム)の構成については、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、図4等を用いて説明する。
【0118】
前述した第1実施形態においてはマッチング処理が実行される際に振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が既知であるものとして説明したが、当該振動検知装置30の位置及び方位角度を予め人手により計測してためには作業コストを要する。
【0119】
このため、本実施形態においては、振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が未知である場合にマッチング処理が実行されることを想定している。
【0120】
以下、本実施形態におけるマッチング処理について説明する。前述した第1実施形態において説明したように振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が既知であれば、複数の振動発生機器20の各々のサブ座標空間上の位置をメイン座標空間上の位置に変換し、前述した式(4)により最適なマッチング(最も可能性が高い仮想マッチング)を特定することが可能である。しかしながら、本実施形態においては当該振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が未知であるため、当該振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度と最適なマッチングとを同時に推定する。
【0121】
この場合、前述した式(4)に対して振動検知装置30のメイン座標空間上の位置(x,y,0)及び方位角度(φ,0)を組み込むことによって導き出された以下の式(5)を用いる。
【数3】
【0122】
上記した式(5)は、各振動発生機器20のメイン座標空間上の位置P_corr_iと各設置位置のメイン座標空間上の位置P_π(i)との距離の総和が最小となる最適なx、y、φ及びπの組み合わせを探索することを表している。
【0123】
なお、各振動発生機器20のメイン座標空間上の位置P_corr_iと各設置位置のメイン座標空間上の位置P_π(i)との距離がEuclidean距離であるものとすると、上記した式(5)は以下の式(6)のように表される。
【数4】
【0124】
次に、推定部14は、上記した式(5)(または式(6))を解くためのアルゴリズム(最適化手法)を設計する。この場合、例えばbrute force法、meta-heuristic法及びheuristic法のようなアルゴリズムを利用することができるが、これらのアルゴリズムは計算量が多いため、以下のようなアルゴリズムを採用して計算量を低減するようにしてもよい。
【0125】
まず、本実施形態においては振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が未知であるが、振動検知装置30の位置(x軸及びy軸上の座標値x及びy)は、以下の式(7)を用いることによって、振動検知装置30の方位角φから計算することができる。なお、上記したように振動検知装置30のz軸上の座標値及び仰角は0であるものとする。
【数5】
【0126】
上記した式(7)において、Nは、振動発生機器20の数である。x_i及びy_iは、振動発生機器20-iのサブ座標空間上の位置(x軸及びy軸上の座標値)である。x_j及びy_jは、設置位置P_jのメイン座標空間上の位置(x軸及びy軸上の座標値)である。
【0127】
この式(7)によれば振動検知装置30の方位角度(φ,0)を定めることによって当該振動検知装置30のメイン座標空間上の位置(x,y,0)を計算することができるため、このような位置及び方位角度を前述した第1実施形態において説明した式(2)に適用すれば、複数の振動発生機器20の各々の相関位置(サブ座標空間上の位置)をメイン座標空間上の位置に変換(座標変換)することができ、更には、最適なマッチングπを特定することができる。
【0128】
このため、本実施形態においては、振動検知装置30の方位角度(方位角)φを変えながら当該方位角度φ(及び当該方位角度φから計算された位置)を用いたときの最適なマッチングを特定し、このように特定された最適なマッチングに基づいて当該方位角度φを評価する。以下の式(8)は、各方位角度φを評価するための評価値を計算する評価関数を表している。
【数6】
【0129】
上記した式(8)の右辺のweight関数は前述した式(4)の右辺と同様であるため、詳しい説明を省略するが、当該式(8)によれば、所定の方位角度φを用いて特定された最適なマッチングにおける振動発生機器20と設置位置との組み合わせ毎に計算される距離(メイン座標空間上の位置の差分)の総和を、当該方位角度φの評価値として計算することができる。
【0130】
本実施形態においては、上記した式(8)を用いて計算される評価値が最小となる方位角度φを探索する。なお、このような方位角度φの探索手法としては、例えば最急降下法、遺伝的アルゴリズム、焼きなまし法及び粒子群最適化のような手法を利用することができる。
【0131】
なお、評価値が最小となる方位角度φを探索するための計算量を低減させるために、上記した評価値を計算する方位角度φの範囲を決定(限定)するようにしてもよい。
【0132】
具体的には、例えば複数の振動発生機器20が設置される空間に関する情報や振動検知装置30の配置に関する情報(以下、単に配置情報と表記)を得ることができる場合には、当該配置情報に基づいて、方位角度φの下限φmin及び上限φmaxを求める。この場合には、下限φminから上限φmaxの範囲を方位角度φの範囲(つまり、φ∈[φmin,φmax])とすることができる。上記した配置情報から振動検知装置30の方位角度が例えば-20°~20°の範囲内であることが明らかである場合には、φ∈[-20°,20°]を満たす方位角度φについて評価値を計算するようにすればよい。なお、配置情報を得ることができない場合には、φmin=-180°、φmax=180°等とすればよい。
【0133】
また、上記した[φmin,φmax]は連続した値を包含する範囲であるため、当該[φmin,φmax](連続範囲)を離散化する。例えばm+1個の方位角度φについて評価値を計算する場合には、[φmin,φmax]に該当する方位角度φの集合を[φ,φ,φ,…,φ](つまり、φ∈[φ,φ,φ,…,φ])とする。この場合、例えばφ=φmin+k*(φmax-φmin)/m(k=1,2,…,m)により、上記した[φmin,φmax]を等間隔の方位角度φ,φ,φ,…,φに離散化することができる。
【0134】
これによれば、各方位角度φ,φ,φ,…,φに対して式(8)を用いた評価値(つまり、F(φ))を計算し、当該評価値が最小となるφを振動検知装置30の方位角度として選択(推定)する。
【0135】
なお、評価値を計算する方位角度φの数(つまり、離散化した場合の各方位角度φの間隔)は、任意に設定可能である。
【0136】
このように振動検知装置30の方位角度が選択された場合には、当該方位角度を上記した式(7)に適用することによって、当該振動検知装置30の位置が計算(推定)される。
【0137】
上記したような処理が実行されることによって振動検知装置30の位置及び方位角度が得られた後は、前述した第1実施形態において説明した処理と同様の処理を実行することによって、最も可能性の高いマッチングを特定することができる。
【0138】
上記したように振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が既知でない場合には、複数の振動発生機器20の各々のサブ座標空間上の位置及び複数の既知の設置位置の各々のメイン座標空間上の位置に基づいて振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が推定される。このように振動検知装置30のメイン座標空間上の位置及び方位角度が推定された場合には、前述した第1実施形態と同様に、当該位置及び方位角度に基づいて複数の振動発生機器20の各々のサブ座標空間上の位置をメイン座標空間上の位置に変換し、当該複数の振動発生機器20の各々のメイン座標空間上の位置及び複数の既知の設置位置の各々のメイン座標空間上の位置に基づいて、複数の振動発生機器20の各々と複数の既知の設置位置の各々とをマッチングすることができる。
【0139】
この場合、複数の方位角度の各々から計算された位置及び当該方位角度に基づいて当該方位角度毎の評価値が計算され、振動検知装置30の方位角度(及び位置)は、このように計算された方位角度毎の評価値に基づいて推定される。
【0140】
本実施形態においては、上記した構成により、振動検知装置30の位置及び方位角度が不明(未知)である場合であっても複数の既知の設置位置に対する複数の振動発生機器20の配置を推定することが可能であるため、当該振動検知装置30の位置及び方位角度を計測(測定)する作業コストを抑制することができる。
【0141】
また、本実施形態においては、例えば複数の振動発生機器20が設置されている空間または振動検知装置30の配置に関する情報に基づいて、当該振動検知装置30の方位角度の範囲を決定し、当該決定された範囲に該当する方位角度の評価値を計算する構成としてもよい。このような構成によれば、振動検知装置30の位置及び方位角度を推定する際の計算量を低減することができる。
【0142】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、複数の振動発生機器と複数の既知の設置位置との対応関係を特定することが可能な配置推定装置、配置推定システム、方法及びプログラムを提供することができる。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0144】
10…配置推定装置、11…設置位置取得部、12…制御部、13…振動検知データ取得部、14…推定部、15…マッチング部、16…出力部、20…振動発生機器、30…振動検知装置、101…CPU、102…不揮発性メモリ、103…主メモリ、104…通信デバイス。
図1
図2
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図10