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特許7592573画像処理装置、移動体、画像処理方法、及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】画像処理装置、移動体、画像処理方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20241125BHJP
   H04N 23/60 20230101ALI20241125BHJP
   H04N 23/63 20230101ALI20241125BHJP
   B60R 1/26 20220101ALI20241125BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N23/60 500
H04N23/63
H04N23/63 330
B60R1/26 100
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021177136
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2023066504
(43)【公開日】2023-05-16
【審査請求日】2023-05-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】小島 安弘
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-157291(JP,A)
【文献】特開2020-110010(JP,A)
【文献】特開2018-129833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0350607(US,A1)
【文献】国際公開第2016/178190(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
H04N 23/63
H04N 23/60
B60R 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の後方を撮影する撮像手段からの映像を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記映像のうち、第1の範囲を第1の表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記取得手段によって取得された前記映像に基づき所定の対象物を検出する検出手段と、を有し、
前記表示制御手段は、前記検出手段によって前記所定の対象物が検出された場合に、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の前記映像を前記第1の表示手段とは異なる第2の表示手段に切り替えて表示させるよう制御することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第2の範囲は少なくとも前記所定の対象物が表示される範囲であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2の範囲は前記移動体も表示される範囲であることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記検出手段は、前記取得手段によって取得された前記映像に基づき、所定の動作をする他の移動体を前記所定の対象物として検出することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記所定の動作は、追い越し動作、合流動作、警告灯を表示した走行動作、危険運転動作の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記危険運転動作は、蛇行運転、所定のパッシング動作、所定のクラクション動作、所定速度以上の走行動作、所定加速度以上の走行動作、所定の法定の規則に反した走行をする動作の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記移動体の現在位置の情報を取得する位置情報検知部を有し、
前記検出手段は、前記現在位置の情報に基づき、前記他の移動体を前記所定の対象物として検出することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項8】
音声を検知する音声検知部を有し、
前記音声検知部により検知された所定の音声と前記取得手段によって取得された前記映像に基づき、前記所定の音声を発する前記他の移動体を前記所定の対象物として検知することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記検出手段は、所定の種類の他の移動体を、前記取得手段によって取得された前記映像に基づき前記所定の対象物として検出することを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記表示制御手段は、前記第2の表示手段に、前記所定の対象物の属性を表示することを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記表示制御手段は、前記第2の表示手段に、前記所定の対象物を囲む認識枠を表示することを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記第1の表示手段と、前記第2の表示手段とを有すると共に、前記撮像手段を配置した移動体。
【請求項13】
移動体の後方を撮影する撮像手段からの映像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記映像のうち、第1の範囲を第1の表示手段に表示させる表示制御ステップと、
前記取得ステップによって取得された前記映像に基づき所定の対象物を検出する検出ステップと、を有し、
前記表示制御ステップは、前記検出ステップによって前記所定の対象物が検出された場合に、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の前記映像を前記第1の表示手段とは異なる第2の表示手段に切り替え表示させるよう制御することを特徴とする画像処理方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれか1項に記載の画像処理装置又は請求項12の移動体の各手段をコンピュータにより制御するためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体のための画像処理装置、移動体、画像処理方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、後方を撮影する車載カメラによって撮影された画像を、電子ルームミラー、又はセンタークラスターに設置された表示パネルに表示し、後方の安全を確認できる技術が知られている。
【0003】
特許文献1には、画角の狭い表示モードで表示中に、車両周辺の物体を検知した場合に、画角の広い表示モードに切り替え、更に車両の発進操作を検出した場合には再び画角の狭い表示モードに切り替え構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-161440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、後退時の後方の確認を目的としており、表示の切り替えのタイミングが発進操作であるため、通常運転時の表示の切り替えについては考慮されていない。
【0006】
しかし、それでは後続車が死角に入るおそれがある。例えば、後方から追い越される場合や、合流車線で合流する場合や、後方を緊急車両が走行中の場合や、近年社会的に問題になっている危険運転を行う車両が後方を走行している場合などが想定される。
【0007】
本発明は、移動体の後方の視認性を向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、
移動体の後方を撮影する撮像手段からの映像を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された前記映像のうち、第1の範囲を第1の表示手段に表示させる表示制御手段と、
前記取得手段によって取得された前記映像に基づき所定の対象物を検出する検出手段と、を有し、
前記表示制御手段は、前記検出手段によって前記所定の対象物が検出された場合に、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の前記映像を前記第1の表示手段とは異なる第2の表示手段に切り替えて表示させるよう制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移動体の後方の視認性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一の実施形態における移動体及び撮像装置の配置例を示す図である。
図2】第一の実施形態における移動体の車内の表示部を示す図である。
図3】第一の実施形態における画像処理装置が搭載された移動体10の要部ブロック図である。
図4図4(A)は第一の実施形態における通常の表示用撮影領域を示す図である。図4(B)は第一の実施形態において運転者103が設定を変更し表示用撮影領域の範囲を変更した状態を示す図である。
図5】第一の実施形態における、後続車から追い越される場合の、カメラシステムの処理の1例を示すフローチャートである。
図6】第一の実施形態における撮像装置100がウィンカーを点滅させた後続車400を撮影した場合の表示用撮影領域を示す図である。
図7】第一の実施形態における移動体10の車内に設置された第1表示部206の移動を示す図である。
図8図5のステップS505における第1表示部206上での鏡像の表示の例を示す図である。
図9】第二の実施形態における撮像装置100が合流車を撮影した場合の表示用撮影領域を示す図である。
図10】第二の実施形態における合流車を撮影した場合の第1表示部206又は第2表示部207への鏡像の表示例を示す図である。
図11】第三の実施形態における緊急車両の接近の場合の、カメラシステムの処理の1例を示すフローチャートである。
図12】第三の実施形態における音声検知部102で緊急車両の検知をした場合の表示用撮影領域を示す図である。
図13】第三の実施形態における音声検知部102で緊急車両の検知をした場合の第1表示部206又は第2表示部207への表示例を示す図である。
図14図11のステップS1103で緊急車両の検知をした場合の表示用撮影領域の例を示す図である。
図15図11のステップS1103で緊急車両の検知をした場合の、第1表示部206又は第2表示部207への表示例を示す図である。
図16】第四の実施形態におけるパッシングや蛇行、クラクションを行う車両の検知する場合のカメラシステムの処理の1例を示すフローチャートである。
図17】パッシングをしている車両を撮像装置100で撮影している例を示す図である。
図18】蛇行をしている車両を撮像装置100で撮影している例を示す図である。
図19】クラクション車407を検知した車両を撮像装置100で撮影している例を示す図である。
図20図17のパッシング車405の鏡像の表示例を示す図である。
図21】第五の実施形態における違法速度での走行車、急な加速をする走行車、車両通行不可の場所を走行する車両の検知を行う場合の処理の1例を示すフローチャートである。
図22】第五の実施形態において撮像装置100が路側帯を走行している車両を撮影した場合の例を示す図である。
図23図22で撮影された画像を第1表示部206又は第2表示部207に鏡像で表示した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について実施例を用いて説明する。尚、各図において、同一の部材ないし要素については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略ないし簡略化することがある。
【0012】
[第一の実施形態]
以下、実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は第一の実施形態における移動体及び撮像装置の配置例を示す図である。図2は第一の実施形態における移動体の車内の表示部を示す図である。
図1に示すように、移動体10には後方を撮影するための撮像装置100及び、後方の音声情報を取得するための音声検知部102が搭載されている。ここで述べる移動体10とは、例えば自動車のような公道を走る車両であり、移動体10を運転するための運転者103が搭乗し、任意の場所へ移動可能なものである。
【0013】
図1で示すように、移動体10の前方側を+Y方向、地面に垂直な上方向を+Z方向、運転者103にから見て左側、つまり紙面手前側方向を+X方向として定義する。
図2は、運転者103から見た移動体10の車内の様子となる。運転者103は図2の中の例えば右側に着座するものとする。運転者103の前に設置され、移動体10の進行方向を変更するためのハンドル(操舵部)200を操作することにより、移動体10の進行方向を操作する。
【0014】
ハンドル200の前方には移動体10の速度やエンジンの回転数を表示するためのインストゥルメントパネル202が設置されている。本実施形態におけるインストゥルメントパネル202は液晶パネルとして構成されている。ハンドル200の左側のセンターコンソール201には、減速比及び回転方向を変更するトランスミッションを操作するためのシフトレバー203が設置されている。シフトレバー203を操作することにより、駐車中であればポジションをパーキングPKに、走行する場合はポジションをドライブDRに、バック走行するときはポジションをリバースRVに、設定を変更できるものとする。
【0015】
インストゥルメントパネル202の左側には、移動体10の様々な情報表示や設定を行うためのセンタークラスター204が設置してある。センタークラスター204には、前記撮像装置100にて取得した画像や様々な情報の表示や設定の変更が可能な第2の表示手段としての第2表示部207が設置されている。第2表示部207ではカーナビとして走行時の現在位置やルート案内表示、エアコン設定などを表示することができる。
【0016】
更に又、前方の車両に追従して自動で走行するシステムや自動で駐車を支援システムする等の所謂、ADAS(Advanced Driving Assistant System)の設定表示など、様々な情報を表示することができる。
第2表示部207の下には、移動体10の様々な設定を変更するための操作部205が設置されている。又、第2表示部207はタッチパネル式となっており、タッチパネル式の機能を使用して移動体10の様々な設定も変更可能である。また第2表示部207は音声認識機能も備えているため、音声によるこれらの設定変更も可能である。
【0017】
第2表示部207の上部のウインドシールドの上側には第1表示部206が設置されている。第1表示部206は第1の表示手段の一例である。第1表示部206は電子ミラー装置として機能しており、撮像装置100により取得した画像を表示することにより、走行中に後方を確認、監視するためのデバイスである。又、第1表示部206の電子映像の表示を消灯すれば、光学式のミラーとしても使用することができるように構成されている。
【0018】
又、後述するように、第1表示部206は表示画面に応じて自動で横方向にスライドすることもできる。尚、液晶表示部等で構成されたインストゥルメントパネル202や、センタークラスター204の周辺に設置されたヘッドアップディスプレイ(不図示)等を、第2表示部207として統合的に設定しても良い。
【0019】
次に移動体10について図3及び図4を用いて説明する。
図3は第一の実施形態における移動体10の要部ブロック図である。移動体10は、撮像装置100および画像処理装置360を有する。図3に示すように、移動体10に設けられた撮像装置100は、移動体10の後方の光学的な被写体像を形成する光学系110を有する。前記被写体像は光電変換素子である撮像素子140の光電変換エリアである撮像素子受光面141上に形成され、電気的な信号である電気信号に変換される。
【0020】
撮像素子140により変換された電気信号は、電子回路基板143により画像信号に変換される。尚、電子回路基板143の機能は撮像素子に内蔵されていても良い。ここで、撮像装置100は、移動体の後方を撮影する撮像手段からの映像を取得する取得手段として機能している。
【0021】
上述のようにして生成された画像信号は、画像処理装置360に送られる。画像処理装置360は歪曲補正や切り出しなどの各種画像処理、種々の信号制御、信号の入出力先の選択等の制御を行う制御部370を有している。
【0022】
制御部370にはコンピュータとしてのCPUが内蔵されており、記憶媒体としてのメモリ部380に記憶されたコンピュータプログラムに基づき装置全体の各部の動作を制御する制御手段として機能する。また、制御部370は、GPUなどの画像処理に特化したプロセッサを有してもよい。
又、画像処理装置360は画像を一時保存したり、コンピュータプログラムを保存するメモリ部380を有する。
【0023】
尚、画像処理は、制御部370内の、CPUとは別に設けた画像処理用の不図示のハードウェア回路(例えば、GPUを有する回路)で行われるが、制御部370内のCPU等を用いてソフトウェアで行っても良い。
画像処理装置360に送られた画像信号は歪曲補正や切り出しなどの各種画像処理が行われ、制御部370内に設けた不図示の表示制御回路において表示用信号に変換される。表示用信号は移動体10に設けられた第1表示部206や、第2表示部207に送られ、運転者103から視認できるように表示を行う。第1表示部206および第2表示部207は表示手段の一例である。
【0024】
又、操作部205や、第2表示部207に搭載されたタッチパネル機能や不図示の音声認識部により様々な機能の設定の変更が可能である。そしてその設定を変更した場合、そのことを示す信号が画像処理装置360に送られる。その場合には、画像処理装置360は第1表示部206や第2表示部207に設定が変更されたことを示す表示を表示する。
【0025】
シフトレバー203には、シフトレバーの現在のポジションを認識するためのレバー検知部307が設置されており、シフトレバー203のポジションが変更されると、その旨を示すポジション位置信号が画像処理装置360に送られる。ポジション位置信号は画像処理装置360で行なわれる後述する様々な動作の判断に使用される。
【0026】
本実施形態では移動体10の後方の音声を検知するための音声検知部102が設置されており、そこで取得した音声情報は、画像処理装置360に送られ、画像処理装置360で行なわれる後述する様々な動作の判断に使用される。
音声検知部102は本実施形態では指向性ステレオマイクで構成され、後方に位置する音源の方向や位置を検知できるものとする。
【0027】
又、移動体10には、移動体10の現在位置の情報を取得する位置情報検知部301も設置されている。本実施形態の位置情報検知部301は測位衛星により位置情報を取得するGNSS(Global Navigation Satellite System)やGPS(Global Positioning System)などにより構成されており、移動体10の正確な位置情報を取得することができる。
【0028】
位置情報検知部301により取得された移動体10の位置情報は画像処理装置360に送られ、メモリ部380に格納された地図情報と照合され、画像処理装置360で行なわれる後述する様々な動作の判断に使用される。
【0029】
次に図4を用いて表示用撮影領域の説明を行う。図4(A)は第一の実施形態における通常の表示用撮影領域を示す図、図4(B)は第一の実施形態において運転者103が設定を変更し表示用撮影領域の範囲を変更した状態を示す図である。
尚、本実施形態では、撮像素子受光面141の全域を、画像認識用及び物体検知用の領域である画像検知用撮像領域410として用いている。しかし、撮像素子受光面141の一部分を画像検知用撮像領域410として使用しても良い。
【0030】
図4で示す画像検知用撮像領域410は画像認識及び物体検知に使用する範囲を示し、表示用撮影領域411は第1表示部206又は第2表示部207に表示する範囲を示している。表示用撮影領域411は第1の範囲の一例である。後続車400は移動体10の後方を走行する車両を示している。自車線450は移動体10が走行している車線を示している。隣接車線451は自車線450と並行して設置された、自車線450と同じ進行方向の車線である。本実施形態では、自車線450を所謂走行車線、隣接車線451を所謂追い越し車線として説明する。
【0031】
車線境界線471は自車線450と隣接車線451を分ける線を示している。中央線472は隣接車線451の更に右側(-X方向)にある自車線450と逆方向の道路とを分ける線を示している。外側線473は自車線450と走行車線以外のいわゆる路側帯を分ける線を示している。又、地平線474は自車線450と隣接車線451の後方(-Y方向)の遠方の、撮像装置100により撮影できる限界の線を示している。
【0032】
図3の画像処理装置360は、図4(A)に示すように、画像検知用撮像領域410(破線により図示)より狭い範囲を表示用撮影領域411(一点鎖線により図示)として切り出す。そして、表示用画像を生成し第1表示部206、或は状況に応じて第2表示部207により表示を行う。
【0033】
表示用撮影領域411は、運転者(ユーザ)103による前記操作部205や、前記第2表示部207に搭載されたタッチパネルの操作や、不図示の音声認識部への発声等に応じて大きが変更可能に構成されている。即ち、表示用撮影領域411は、画像検知用撮像領域410の内の、任意の大きさ(図4(B)の表示用撮影領域411aや表示用撮影領域411bなど)に変化させることができる。
【0034】
表示用撮影領域411は図4(A)で示す通り、後続車400を認識しやすくするために、自車線450がゆとりをもって入る範囲でも良い。しかし、図4(B)の表示用撮影領域(狭角)411aで示すように自車線450がぎりぎり入る狭い範囲でも良いし、表示用撮影領域(広角)411bで示すように、特に左右に広い、隣接車線451までも入る範囲に設定しても良い。
【0035】
次に、本実施形態における、図1図3で説明した移動体及びカメラシステムの動作の説明を図5図8を用いて詳細に行う。
図5は第一の実施形態における後続車から追い越される場合の、カメラシステムの処理の1例を示すフローチャートである。尚、図5における各ステップの動作は、制御部370の内部のコンピュータとしてのCPUがメモリ部380に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって行われる。
【0036】
図5において、ステップS500にて運転者103がシフトレバー203のポジションをドライブDRにし、移動体10の通常走行が始まると制御部370における処理が始まり、ステップS501の処理が実行される。
ステップS501では、メモリ部380に格納されたプログラムが制御部370により呼び起こされ、処理が開始される。
【0037】
処理が始まると、制御部370は、撮像装置100により撮影された画像を取得し、その画像の所定の第1の範囲(図4(A)の411などの範囲)を第1表示部206に表示する。ここで、ステップS501は、撮像装置100によって取得された映像のうち、第1の範囲を表示手段としての第1表示部に表示させる表示制御手段(表示制御ステップ)として機能している。
【0038】
次にステップS502において、制御部370は、撮像装置100で撮影された画像検知用撮像領域410の映像から、図6で説明した移動体10と同一車線を走行している後続車400の方向指示器(以下ウィンカーとも呼ぶ)が点滅しているか否かを判断する。ウィンカーが点滅している場合はその後、ステップS503の処理が実行され、点滅していない場合はステップS508の処理が実行される。ここで、ステップS502は、撮像装置100によって取得された映像に基づき所定の対象物を検出する検出手段(検出ステップ)として機能している。
【0039】
尚、ステップS502において、制御部370は、移動体10と同一車線の車両であってウィンカーを点滅している後続車400を所定の対象物として検出している。即ち、制御部370は、撮像装置100によって取得された映像に基づき、所定の動作(ウィンカー点滅動作)をする他の移動体(車両)としての後続車400を所定の対象物として検出している。
【0040】
尚、本実施形態ではステップS502では説明を簡単にするため、ウィンカーが点滅しているか否かを判定しているが、後続車400の左右のウィンカーのうちどちらのウィンカーが点滅しているかを判断してその後の動作を変更するようにしても良い。
【0041】
ステップS503では、制御部370は、メモリ部380に格納されている地図情報、或は、移動体10に設置された位置情報検知部301による位置情報、或はそれらを組み合わせた情報を参照する。そして、制御部370は、上記の情報から、ステップS502で認識した後続車400のウィンカー点灯方向600が示す左右の方向に、進入可能な道路、つまり、進行中の道路とは異なる左折又は右折可能な道路があるかないかの判断を行う。
【0042】
ステップS503は、制御部370が単なる右左折のための動作か、それとも追い越しのための動作かを見極めて、ウィンカーを点滅している後続車を所定の対象物として検知するか否かを判断するためのステップである。即ち、ステップS503において、制御部370は、移動体10の現在位置の情報に基づき、他の移動体(後続車400)が追い越し動作中か、右左折否かを判別し、所定の対象物として検出するか否かを決めている。
【0043】
左折又は右折可能な道路が無い場合はステップS504の処理が実行され、左折又は右折可能な道路がある場合はステップS508の処理が実行される。
ステップS504では、制御部370は、事前に設定された表示部が第1表示部206であるか第2表示部207であるかの判定を行う。事前に第1表示部206が表示部として設定されていればステップS505の処理が実行され、第2表示部207が表示部として設定されていればステップS509の処理が実行される。
【0044】
即ち、本実施形態ではステップS501の段階では第1表示部206に第1の範囲の映像を表示し、所定の対象物が検出された場合には、予め設定された第1表示部206又は第2表示部207の一方に、第2の範囲の映像を表示させるように切り替えている。尚、ステップS504では、第1表示部206と第2表示部207の表示手段の一方を選択しているが、両方を表示手段として選択できるようにしても良い。
【0045】
ステップS505は第1表示部206の表示範囲(や表示位置)と内容を変更するステップである。ステップS505においては、制御部370は、第1表示部206への表示範囲(や表示位置)を、図4(A)の表示用撮影領域411で示す表示範囲から、図6(A)、(B)の表示用撮影領域411c又は411dで示す表示範囲に変更する。即ち、表示用撮影領域411で示す表示範囲(第1の範囲)から表示用撮影領域411c又は411dで示す表示範囲(第2の範囲)に変更する。尚、表示用撮影領域411cは表示用撮影領域411を含む領域である。
【0046】
図6は第一の実施形態における撮像装置100がウィンカーを点滅させた後続車400を撮影した場合の表示用撮影領域を示す図である。図6(A)は表示用撮影領域411を拡大表示した場合の図であり、図6(B)は表示用撮影領域411の画像中心(重心)を移動させた場合の図である。ウィンカー点灯方向600は点滅している側のウィンカーを示している。
【0047】
或いは、図4(B)で示す表示用撮影領域(広角)411bから、図6(A)、(B)の表示用撮影領域411c又は411dで示す表示範囲(第2の表示範囲)に変更しても良い。即ち図6(A)の表示用撮影領域411cのように元の画面中心を中心に表示範囲を広げたり、図6(B)の表示用撮影領域411dのように後続車400と隣接車線451が画面いっぱいなるように画面中心を移動した表示範囲に変更する。
【0048】
ここで、ステップS505は、検出手段(検出ステップ)としてのステップS502によって所定の対象物が検出された場合に、第1の範囲とは異なる第2の範囲の映像を第1表示部に表示させる表示制御手段(表示制御ステップ)として機能している。尚、第2の範囲は第1の範囲よりも広いことが望ましく、又、第1の範囲とオーバーラップすることが望ましい。更に第2の範囲は第1の範囲全体を含んでも良い。
【0049】
但し、図6(B)に示した変更の場合、画面中心が左に移動してしまい、運転者103に違和感を与えるおそれがある。その場合は、図7で示す通り、破線で示す通常の第1表示部206の位置から、矢印700で示す方向に第1表示部206そのものを不図示の移動手段によって移動制御することにより、運転者103から見た画面中心が移動しないようにすることも可能である。図7は、第一の実施形態における移動体10の車内に設置された第1表示部206の移動を示す図であり、図7において、第1表示部206の表示画像は鏡像に変換されている。
【0050】
或いは画面の例えば左右に所定幅の黒い非表示領域を設け、その非表示領域をシフトすることで同様の効果を得ても良い。即ち、第1表示部206の幅を図7に示すものよりも横長にし、通常は例えば左右に所定幅の黒い非表示領域を表示する。そして、右に第1表示部206の表示領域をシフトする場合は、例えば右側の非表示領域の幅をゼロにして、左側の非表示領域の幅を広げることで、第1表示部206が右にシフトしたのと同様の効果を得ても良い。
【0051】
このように本実施形態ではステップS502で、ウィンカーを点滅させた後続車400を検知した場合に、ステップS501における表示範囲(第1の範囲)を拡大や縮小、又は画像中心の移動をして第2の範囲に変更している。ここで第2の範囲は、少なくとも所定の対象物が表示される範囲であり、移動体10自身も一緒に表示される範囲であることが望ましい。
尚、本実施形態はこれらに限らず、表示範囲を拡大或は縮小と画像中心の移動を組み合わせた表示範囲の変更をしても良い。
【0052】
次に図8を使用し、ステップS505の第1表示部206への表示内容の説明を行う。図8はステップS505における第1表示部206上での鏡像の表示の例を示す図である。
図8に示すように、本実施形態では、第1表示部206に表示された後続車400を運転者103に注意喚起するために、枠表示としての認識枠810で後続車400を囲む。
【0053】
そして、認識枠810で囲まれた後続車400の今後の動作予測として「追い越し可能性あり」という、所定の対象物としての後続車400の属性に関するタグ811を付帯的に表示する。それによって運転者103への注意喚起をしている。又、これらの注意喚起に加えて、音声などで運転者103に注意喚起を行っても良い。
【0054】
次に、ステップS506では、制御部370は、自車線450にいる後続車400のウィンカーが消灯してから一定時間経過したか、或は、ウィンカーを点滅した後続車400が隣接車線451に移ってから一定時間経過したかを判断する。本実施形態においてこの一定時間は例えば15秒程度に設定されている。これら条件のうちいずれかに該当すれば、追い越しをしないと判断し、ステップS507の処理が実行され、該当しなければステップS505の処理が実行される。
【0055】
ステップS507では、制御部370は、第1表示部206への表示範囲をステップS505の直前の、図4に示す表示用撮影領域411、表示用撮影領域(狭小)411a、又は表示用撮影領域(広大)411bなどの、元の表示用撮影領域に戻す。そして、図8の認識枠810と「追い越し可能性あり」というタグ811の表示を消して、ステップS508の処理が実行される。
【0056】
ステップS504で第2表示部207が選択されていた場合は、ステップS509の処理が制御部370により実行される。この時、第1表示部206は表示範囲や表示内容を変更しないものとする。
ここで、第2表示部207がナビゲーションシステムの表示をしていた場合、制御部370は、表示されていた走行時の現在位置やルート案内を映像表示に切り替える。
【0057】
即ち、撮像装置100からの後方の映像のうち、図6で示す、表示用撮影領域411c又は411dの表示範囲の後方の映像表示に切り替える。即ち、ここでステップS509は、検出手段(検出ステップ)としてのステップS502によって所定の対象物が検出された場合に、第1の範囲とは異なる第2の範囲の映像を第2表示部に表示させる表示制御手段(表示制御ステップ)として機能している。
【0058】
表示の範囲と内容についてはステップS505で説明したのと同様であり、図8のように、後方の映像と、認識枠810と、「追い越し可能性あり」というタグ811を表示する。尚、第2表示部207の表示領域を分割し、ナビゲーションシステムにおけるルート案内の表示と、撮像装置100からの映像を両方同時に表示しても良い。そして、ステップS510の処理が実行される。
【0059】
ステップS510では、制御部370は、ステップS506と同様の判断を行う。即ち、自車線450にいる後続車400のウィンカーが消灯してから一定時間経過したか、或は、ウィンカーを点滅した後続車400が隣接車線451に移ってから一定時間経過したかを判断する。本実施形態においてこの一定時間は例えば15秒程度に設定されている。
【0060】
これら条件のうちいずれかに該当すれば、追い越しをしないと判断し、ステップS511の処理が実行され、該当しなければステップS509の処理が実行される。
【0061】
ステップS511では制御部370は、第2表示部207への表示をステップS509の直前の、走行時の現在位置やルート案内の表示に戻し、その後ステップS508の処理が実行される。
ステップS508では、制御部370は、移動体10が走行中か否かの判断を行う。本実施形態ではシフトレバー203のポジションがドライブDRにあるか否かを判断している。走行中であればステップS502に戻り、ステップS502~ステップS511までの動作を繰り返す。
【0062】
シフトレバー203がドライブDR以外に設定されたことをレバー検知部307が検知すると、走行中でないと判断し、ステップS512の処理が実行され、カメラシステムの動作を終了する。
以上のように第一の実施形態では他の移動体が所定の動作として追い越し動作を行っていることを検出した場合には、所定の対象物として検知し、当該他の移動体が表示されるように表示範囲を切り替えている。
【0063】
[第二の実施形態]
第二の実施形態は、隣接する車線が合流車線である場合の、画像処理装置による表示例であり、図9及び図10を用いて説明する。
図9は第二の実施形態における撮像装置100が合流車を撮影した場合の表示用撮影領域を示す図である。
又、図10は第二の実施形態における合流車401を撮影した場合の第1表示部206又は第2表示部207への鏡像の表示例を示す図である。
【0064】
図9において、合流車線452は自車線450に途中から隣接し、その後、自車線450に合流していく車線であり、合流車401は、合流車線452を走行し、その後自車線450に合流する車両を示す。475は合流車線452と自車線450の境界である。476は合流車線452の外側線である。
【0065】
図9は合流を行う車両である合流車401が、合流車線452をウィンカーを点滅させながら走行している状況を示している。
このとき表示用撮影領域411は合流車401と自車線450を表示されるように切出し位置変更が行われる。
【0066】
次に図10を使用し、第1表示部206又は第2表示部207への表示の説明を行う。図10図9に対して鏡像の表示となっており、図10図9の状況を第1表示部206又は第2表示部207に表示したときの鏡像の表示状態を示している。合流車401は図8と同様に認識枠810で囲われ、認識枠810の内側に合流車401の走行状況を示す「合流車」という、所定の対象物としての合流車401の属性に関するタグ812を付帯的に表示する。
【0067】
それによって、運転者103への注意喚起をしている。このように第二の実施形態では他の移動体が所定の動作として合流動作を行っていることを検出した場合には、所定の対象物として検知し、当該他の移動体が表示されるように表示範囲を切り替えている。
【0068】
[第三の実施形態]
移動体10及びカメラシステムに、例えばパトカーや救急車などの緊急車両が警告灯を点灯して接近している場合の第三の実施形態の説明を図11図15を用いて行う。
図11は第三の実施形態における緊急車両の接近の場合の、カメラシステムの処理の1例を示すフローチャートである。尚、図11における各ステップの動作は、制御部370の内部のコンピュータとしてのCPUがメモリ部380に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって行われる。
【0069】
図11で示す処理は、ステップS1100にて運転者103がシフトレバー203のポジションをドライブDRにし、移動体10の通常走行が始まるとフローが始まり、ステップS1101の処理が実行される。
ステップS1101では、メモリ部380に格納されたプログラムが制御部370により呼び起こされ、処理が開始される。処理が始まるのに伴って、制御部370は、撮像装置100により撮影された画像を第1表示部206又は第2表示部207に表示し、ステップS1102の処理が実行される。
【0070】
図12は第三の実施形態における音声検知部102で緊急車両の検知をした場合の表示用撮影領域を示す図である。
図12では移動体10の後方に後続車400が走行しており、隣接する車線に別な後続車である後続車404が走行している状況を示している。この状況において、後続車404の後方に緊急車両が走行し、接近したとしても、画像検知用撮像領域410では確認できない場合がある。
【0071】
しかし第三の実施形態のステップS1102では、制御部370は、緊急車両がサイレンを鳴らしていたとすると音声検知部102がサイレンが鳴っている方向を検知し、後方からサイレンが鳴っていたと判断した場合はステップS1103の処理が実行される。又、後方以外からのサイレン音を検知した場合、又はサイレンの音が全く検知されない場合にはステップS1108の処理が実行される。
【0072】
ステップS1103では制御部370は緊急車両が接近したか否かを撮像装置100で検知されたかどうかを判定し、緊急車両の接近が検知された場合はステップS1104の処理が実行され、緊急車両の接近が検知されない場合はステップS1105の処理が実行される。
即ち、ステップS1102によって、音声検知部により検知された所定の音声(サイレン等)とステップS1103で撮像装置100によって取得された映像に基づき、所定の音声を発する他の移動体(緊急車両)を前記所定の対象物として検知している。
【0073】
ステップS1103で緊急車両の接近が検知されていないと判定された場合、ステップS1105において制御部370は、緊急車両が後方から接近していることを示すタグ表示を行う。
図13は第三の実施形態における音声検知部102で緊急車両の検知をした場合の第1表示部206又は第2表示部207への表示例を示す図である。
【0074】
「緊急車」タグ814は撮像装置100で検知できない緊急車両が接近していることを示すタグ表示である。図13では鏡像の表示になっている。図13で示すように、隣接車線451が入るように図12の表示用撮影領域411を図13の表示用撮影領域411eのように拡大する。
【0075】
又、第1表示部206又は第2表示部207において、緊急車両403がいる側の上方に「緊急車」という、所定の対象物としての緊急車両403の属性に関するタグ814を付帯的に表示する。それにより、運転者103への注意喚起をしている。これらの注意喚起に加えて、音声などで運転者103に注意喚起を行っても良い。その後、ステップS1106の処理が実行される。
【0076】
ステップS1103で緊急車両の接近が検知された場合、ステップS1104の処理が実行される。そして、制御部370は、移動体10の走行車線である自車線450と緊急車両が表示されるように表示用撮影領域を411eに拡大し、第1表示部206又は第2表示部207に表示する。
図14図11のステップS1103で緊急車両の検知をした場合の表示用撮影領域の例を示す図であり、図15図11のステップS1103で緊急車両の検知をした場合の、第1表示部206又は第2表示部207への表示例を示す図である。
【0077】
図15に示すように、緊急車両403に「緊急車」のタグ814と認識枠810を表示する。又、図14図15において、緊急車両403はサイレン音を鳴らすと共に警告灯1501を点灯させている。これらの表示に加えて、音声などで運転者103に注意喚起を行っても良い。その後、ステップS1106の処理が実行される。
【0078】
ステップS1106では、制御部370は撮像装置100により警告灯1501を点灯させた緊急車両403が検知されなくなるか、音声検知部102によりサイレン音が検知されなくなってから一定時間経過したか否かの判断を行う。本実施形態においてこの一定時間は例えば20秒程度に設定されている。
【0079】
ステップS1106でYesの場合にはステップS1107の処理が実行され、Noの場合にはステップS1103に戻ってステップS1103~ステップS1106の動作を繰り返す。
ステップS1107では制御部370は、第1表示部206への表示範囲をステップS1103の直前の、第1表示部206又は第2表示部207の元の表示範囲に戻し、認識枠や「緊急者」のタグを消して、ステップS1108の処理が実行される。
【0080】
ステップS1108では、制御部370は、移動体10が走行中か否かの判断を行う。本実施形態ではシフトレバーのポジションがドライブDRにあるか否かを判断する。シフトレバーのポジションがドライブDR、つまり走行中であればステップS1102に戻る。
【0081】
ステップS1108でシフトレバー203がドライブDR以外のポジションに設定されていることをレバー検知部307が検知すると、走行中ではないと判断してステップS1109においてカメラシステムの動作を終了する。
以上のように第三の実施形態では他の移動体が所定の動作として警告灯を点灯した走行動作を行っていること検出した場合には、所定の対象物として検知し、表示範囲を切り替えている。
【0082】
[第四の実施形態]
近年は、危険運転と呼ばれる、他の自動車に危害を与える可能性がある危険運転行為が問題となっている。第四の実施形態においては、後続の危険運転を行う車両を検知し、運転者103に知らせ、危険運転する車両を視認しやすくし、事故を回避しやすくしている。以下に危険運転を行う車両を検知した場合の処理に関して図を用いて詳細に説明する。
先ず、危険運転の中でもあおり運転と呼ばれる、パッシングや蛇行、クラクションを行う車両を検知した場合の動作の説明を図16図20を用いて行う。
【0083】
図16は第四の実施形態におけるパッシングや蛇行、クラクションを行う車両の検知する場合のカメラシステムの処理の1例を示すフローチャートである。尚、図16における各ステップの動作は、制御部370の内部のコンピュータとしてのCPUがメモリ部380に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって行われる。
尚、蛇行運転はあおり運転によるものに限らない。例えば運転者が飲酒運転をしている場合、居眠りをしている場合、意識を喪失している場合など、いずれも危険性が高いので検知して速やかに注意喚起することが望ましい。
【0084】
図16で示す処理は、ステップS1600にて運転者103がシフトレバー203のポジションをドライブDRにし、移動体10の通常走行が始まると処理が始まり、ステップS1601の処理が実行される。
ステップS1601において、メモリ部380に格納されたプログラムが制御部370により呼び出され、処理が開始される。処理が始まると同時に、制御部370は、撮像装置100により撮影された画像を第1表示部206に表示し、ステップS1602の処理が実行される。
【0085】
ステップS1602では、制御部370は、撮像装置100からの信号に基づき、所謂パッシング動作を一定時間内に複数回行う後続車が検知されたか否かの判断を行う。ここで、パッシング動作とは、前照灯であるヘッドライト602をハイビーム状態に素早くオンオフさせる動作とする。尚、1~2回のパッシングは危険運転ではない場合もあるため、本実施形態においては、一定時間内に複数回のパッシングがあったか否かを判定しており、例えば20秒間に3回以上のパッシングがあったか否かを判定する。
【0086】
図17はパッシングをしている車両を撮像装置100で撮影している例を示す図である。尚、このとき移動体10は追い越し車線としての隣接車線451を走行しているものとする。
ステップS1602でYesの場合はステップS1606の処理が実行され、Noの場合はステップS1604の処理が実行される。
【0087】
ステップS1604は、危険運転の中でも、蛇行運転をする車両を検知するステップである。具体的にはステップS1604において、制御部370は、撮像装置100からの信号に基づき、一定時間内に複数回の蛇行運転を行う後続車が検知されたかの判断を行う。
本実施形態では、例えば後続車の前輪の片方のタイヤが車線境界線471や外側線473などを1回横切り、前輪の他方のタイヤが車線境界線471や外側線473などを1回横切った場合に一回の蛇行運転とする。
【0088】
図18は蛇行をしている車両を撮像装置100で撮影している例を示す図であり、図18では蛇行運転車406が、1回目の蛇行運転903、2回目の蛇行運転904、3回目の蛇行運転905を行った状態を示している。2回までの蛇行であれば落下物を避けたことも考えられるため、本実施形態では例えば20秒以内に3回以上の蛇行を行った車両を蛇行運転車406と判断する。
【0089】
ステップS1604でYesの場合はステップS1606の処理が実行され、Noの場合はステップS1605の処理が実行される。
ステップS1605は危険運転の中でもクラクションを複数回発した車両を検知するステップである。
【0090】
即ち、ステップS1605では制御部370は、撮像装置100からの画像に基づき検出された後続車と、指向性を有する音声検知部102より取得された音源の位置とを組み合わせて、一定時間内に複数回のクラクション音を発生させた車両の検知を行う。1~2回のクラクションは注意を促すクラクション音の可能性が高いため、本実施形態では例えば20秒以内に3回以上のクラクション音を発生させた車両をクラクション車407と判断している。
【0091】
図19はクラクション車407を検知した車両を撮像装置100で撮影している例を示す図である。ステップS1605で一定時間内に複数回のクラクション音を発生させたクラクション車407を検知した場合にはステップS1606の処理が実行される。そして、一定時間内に複数回のクラクション音を発生させた車両を検知しなければ、ステップS1610の処理が実行される。
【0092】
ステップS1606では、制御部370は、第1表示部206又は第2表示部207への表示範囲を少なくとも危険車が表示されるように変更する。即ち、図12の表示用撮影領域411から図17図18図19で示すように、自車線450及び危険車(パッシング車405や蛇行運転車406やクラクション車407)が表示用撮影領域411の範囲に入るように変更して表示する。
【0093】
又、このときの第1表示部206又は第2表示部207の表示内容をパッシング車405を例に図20を用いて説明する。図20図17のパッシング車405の鏡像の表示例を示す図である。
図20のように、第1表示部206又は第2表示部207に表示されているパッシング車405を認識枠810で囲む。そして、認識枠810の内側にパッシング車であることを示す「危険運転」という、所定の対象物としてのパッシング車405の属性に関するタグ815を表示して注意喚起をしている。
【0094】
又、これらの注意喚起に加えて、音声などで運転者103に注意喚起を行っても良い。蛇行運転車406及びクラクション車407に関しても、同様の第1表示部206又は第2表示部207への表示を行う。そしてステップS1608の処理が実行される。
【0095】
ステップS1608では、制御部370は、危険運転車(パッシング車405や蛇行運転車406やクラクション車407等)が検知されなくなり一定時間経過したかを判断する。本実施形態においては、この一定時間は例えば15秒程度に設定されている。ステップS1608でYesの場合はステップS1609の処理が実行され、Noの場合はステップS1606に戻る。
【0096】
ステップS1609では制御部370は、第1表示部206又は第2表示部207への表示をステップS1606の直前の表示範囲に戻す。又、パッシング車405や蛇行運転車406やクラクション車407を囲み表示していた認識枠810と「危険運転」タグ815の表示を消して、ステップS1610の処理が実行される。
【0097】
ステップS1610では、制御部370は、走行中か否かの判断を行う。本実施形態ではシフトレバー203のポジションがドライブDRにあるか否かを判断し、走行中であればステップS1602に戻り、ステップS1602~ステップS1610までの動作を繰り返す。ステップS1610でシフトレバー203がドライブDR以外のポジションに設定されていることをレバー検知部307が検知すると、走行中ではないと判断してステップS1611の処理が実行されフローを終了する。
【0098】
以上のように第四の実施形態では他の移動体が所定の動作(パッシング動作、蛇行運転動作、クラクション動作等の危険運転動作)を行ったことを検出した場合には、所定の対象物として検知し、当該他の移動体が表示されるように表示範囲を切り替えている。
【0099】
[第五の実施形態]
次に危険運転の中でも、違法速度での走行車、急な加速をする走行車、車両通行不可の場所を走行する車両を検知する第五の実施形態の動作の説明を、図21図23を用いて行う。
【0100】
図21は第五の実施形態における違法速度での走行車、急な加速をする走行車、車両通行不可の場所を走行する車両の検知を行う場合の処理の1例を示すフローチャートである。尚、図21における各ステップの動作は、制御部370の内部のコンピュータとしてのCPUがメモリ部380に記憶されたコンピュータプログラムを実行することによって行われる。
【0101】
図21で示す処理は、ステップS2100にて運転者103がシフトレバー203のポジションをドライブDRにし、移動体10の通常走行が始まると処理が始まり、ステップS2101の処理が実行される。
【0102】
ステップS2101では、メモリ部380に格納されたプログラムが制御部370により呼び出され、処理が開始される。処理が始まると共に、制御部370は、撮像装置100により撮影された画像を第1表示部206に表示し、ステップS2102の処理が実行される。
ステップS2102は、撮像装置100により、ある速度以上で接近する後続車が検知されるかの判断を行うステップである。
【0103】
本実施形態では、制御部370は、メモリ部380に格納されている地図情報、移動体10に設置されたGPS等の位置情報検知部301による位置情報等に基づき、撮影された車両が走行している道路の所定の法定の制限速度を取得する。そして、制限速度より例えば時速30km/hを越えた後続車(以下高速後続車)の検知を行う。即ち、法定の速度に関する規則に違反した走行動作をする後続車を検出する。高速後続車が検知されたと判断するとステップS2106の処理が実行され、高速後続車が検知されなければステップS2104の処理が実行される。
【0104】
ステップS2104では制御部370は、撮像装置100からの信号に基づき画像処理装置360により、所定の加速度以上で接近する車両が検知されるか否かを判断する。即ち、危険な急加速で接近する所謂あおり運転車を検知する。本実施形態では例えば4m/s2以上の加速度で接近する車両(急加速車)の検知を行う。急加速車が検知されたと判断するとステップS2106の処理が実行され、急加速車が検知されなければ、ステップS2105の処理が実行される。
【0105】
ステップS2105では、制御部370は、車両通行不可の場所(例えば路側帯)を一定距離以上走行する車両を検知する。即ち、撮像装置100からの信号に基づく画像認識、メモリ部380に格納されている地図情報、位置情報検知部301による移動体10の現在の位置情報に基づき、例えば路側帯を一定距離以上走行する車両を検出する。即ち、移動体10の現在の位置情報に基づき、所定の法定の規則(車両の通行区分に関する規則等)に反した走行動作をする後続車を所定の対象物として検出する。
【0106】
図22は第五の実施形態において撮像装置100が路側帯を走行している車両を撮影した場合の例を示す図である。
図22では、走行が禁止されている路側帯を走行する路側帯走行車408を検知し撮像している状態を示している。尚、この場合に、法律で進行方向が指定されている道路(例えば一方通行道路)の検知も行うことができるため、法律で指定された進行方向を逆方向に走行する所謂逆走車両の検知もこのステップで行っても良い。
【0107】
ステップS2105では、走行不可な場所(例えば路側帯)を路側帯走行車408等が例えば100m以上走行したかを検知している。ステップS2105でYesの場合はステップS2106の処理が実行され、Noの場合はステップS2110の処理が実行される。
【0108】
ステップS2106では、制御部370は、第1表示部206又は第2表示部207への表示範囲を、例えば図12の表示用撮影領域411から、図22に示す表示用撮影領域411に拡大する。それによって、自車線450と、高速後続車、急加速車、路側帯走行車等が表示用撮影領域411の範囲に入るように変更して表示する。
【0109】
このときの第1表示部206又は第2表示部207の表示内容を図23を用いて説明する。図23図22で撮影された画像を第1表示部206又は第2表示部207に鏡像で表示した例を示す図である。図23で示すように、第1表示部206又は第2表示部207に表示されている路側帯走行車408を認識枠810で囲み、認識枠810の内側に危険車であることを示すの「危険運転」というタグ815を付帯して表示する。これにより運転者103への注意喚起をしている。
【0110】
又、これらの注意喚起に加えて、音声などで運転者103に注意喚起を行っても良い。高速後続車や急加速車に関しても、第1表示部206又は第2表示部207に同様の表示を行い、ステップS2108の処理が実行される。
ステップS2108では、制御部370は、危険運転者が検知されなくなり一定時間経過したかを判断する。ステップS2108でYesの場合はステップS2109の処理が実行され、Noの場合はステップS2106に戻る。
【0111】
ステップS2109では制御部370は、第1表示部206又は第2表示部207への表示範囲をステップS2106の直前の表示用撮影範囲に戻し、認識枠810と「危険運転」タグ815の表示を消して、ステップS2110の処理が実行される。
ステップS2110では、制御部370は、走行中か否かの判断を行う。本実施形態ではシフトレバー203のポジションがドライブDRにあるか否かを判断し、走行中であればステップS2102に戻り、ステップS2102~ステップS2110までの動作を繰り返す。
【0112】
ステップS2110でシフトレバー203がドライブDR以外のポジションに設定されたことをレバー検知部307が検知すると、走行中ではないと判断してステップS2113の処理が実行されフローを終了する。
以上のように第五の実施形態では他の移動体が所定の危険な動作(違法速度運転動作、急加速動作、路側帯等を走行する動作)をしていることを検出した場合には、所定の対象物として検知し、当該他の移動体が表示されるように表示範囲を切り替えている。
【0113】
[第六の実施形態]
第一の実施形態~第五の実施形態では撮像装置100によって取得された映像に基づき、所定の動作(追い越し動作、合流動作、警告灯を表示した走行動作、危険運転動作等)の少なくとも1つを検知した場合に所定の表示範囲への切り替え等を行った。尚、危険運転動作は、蛇行運転、所定のパッシング動作、所定のクラクション動作、所定速度以上の走行動作、所定加速度以上の走行動作、法定の所定の規則に反した走行をする動作の少なくとも1つを含んでいる。
【0114】
しかし、第六の実施形態では、撮像装置100の画像検知用撮像領域410において、運転者103が予め設定した所定の種類の車両の検知を行い表示する。運転者103は事前に例えばバイク、大型トラック、クレーン車などを注意喚起したい種類の車(車種)を不図示の設定手段により設定する。設定された車種の車両が画像検知用撮像領域410内に検知されると、それを所定の対象物として検知し、第1表示部206や第2表示部207の表示用撮影領域411の拡大や認識枠810の表示や「注意車両」タグの表示を行う。それにより、運転者103への注意喚起を行う。
【0115】
前記の所定の車両としては他にも、警告灯を点灯していない緊急車両(例えば消防車、救急車、パトカー等)、タンクローリー、トレーラー等の特殊車両、指定したナンバープレートの車両等を含んでも良い。
【0116】
尚、以上の実施例において、複数の車両に対して同時に処理を行うようにしても良く、その場合、第1表示部206又は第2表示部207に、対象となる複数の車両のための複数の認識枠810や複数のタグを表示するようにしても良い。
又、第一の実施形態から第六の実施形態では様々な車両の検知に関して説明してきたが、これらの実施例を適宜組み合わせても良いし、その場合、事前にどの検知を有効にするか無効にするかを任意に選択できるようにしても良い。
【0117】
尚、上述の実施例における移動体10は、例えば、自動車に限らず、バイク、自転車、車椅子、船舶、飛行機、ロボット、ドローンなどの移動をする装置であれば、どのようなものであっても良く、それらを含む。
又、移動体をリモートでコントロールするリモートコントローラとしての画像処理装置の画面においても、上述の実施例を適用することができる。
【0118】
以上、本発明をその好適な実施例に基づいて詳述してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨に基づき種々の変形が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0119】
尚、本実施形態における制御の一部又は全部を上述した実施例の機能を実現するコンピュータプログラムをネットワーク又は各種記憶媒体を介して画像処理装置等に供給するようにしてもよい。そしてその画像処理装置等におけるコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行するようにしてもよい。その場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することとなる。
【符号の説明】
【0120】
10:移動体
100:撮像装置
102:音声検知部
103:運転者
110:光学系
140:撮像素子
141:撮像素子受光面
143:電子回路基板
200:ハンドル
201:センターコンソール
202:インストゥルメントパネル
203:シフトレバー
204:センタークラスター
205:操作部
206:第1表示部
207:第2表示部
301:位置情報検知部
307:レバー検知部
360:画像処理装置
370:制御部
380:メモリ部
400:後続車
401:合流車
403:緊急車
404:後続車
405:パッシング車
406:蛇行運転車
407:クラクション車
408:路側帯走行車
410:画像検知用撮像領域
411:表示用撮影領域
450:自車線
451:隣接車線
452:合流車線
471:車線境界線
472:中央線
473:外側線
474:地平線
600:ウィンカー点灯方向
602:ヘッドライト
700:矢印
810:認識枠
811:「追い越し可能性あり」タグ
812:「合流車」タグ
814:「緊急車」タグ
815:「危険運転」タグ
903:1回目の蛇行
904:2回目の蛇行
905:3回目の蛇行
1501:警告灯
図1
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