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特許7592576電気化学セルおよび電気化学セルスタック
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】電気化学セルおよび電気化学セルスタック
(51)【国際特許分類】
   C25B 13/02 20060101AFI20241125BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241125BHJP
   C25B 9/77 20210101ALI20241125BHJP
   C25B 15/08 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C25B13/02 302
C25B9/23
C25B9/77
C25B15/08 302
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021200341
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2023085988
(43)【公開日】2023-06-21
【審査請求日】2024-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-148783(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0827929(KR,B1)
【文献】特開昭56-102586(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00111149(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 13/00
C25B 9/00
C25B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔膜と、前記隔膜の一方の主面に配置されたアノード電極と、前記隔膜の他方の主面に配置されたカソード電極と、を有する電極板と、
前記電極板に積層される流路板であって、前記アノード電極に対向して配置され、アノード流体が流通するアノード流路と、前記カソード電極に対向して配置され、カソード流体が流通するカソード流路と、を有する流路板と、
前記電極板の外側に配置された電極板外枠と、
前記流路板の外側に配置された流路板外枠と、を備え、
前記電極板外枠および前記流路板外枠は、それぞれ積層方向に連通したアノード流体連通孔およびカソード流体連通孔を有し、
前記流路板外枠は、前記アノード流体連通孔と前記流路板の前記アノード流路とを連通するアノード連絡溝および前記カソード流体連通孔と前記流路板の前記カソード流路とを連通するカソード連絡溝のうちのいずれか一方の連絡溝を有し、
前記電極板外枠は、前記アノード連絡溝および前記カソード連絡溝のうちのいずれか他方の連絡溝を有する、電気化学セル。
【請求項2】
前記流路板は、平面視で前記アノード電極および前記カソード電極よりも外側に突出した突出部を有し、
前記突出部は、前記アノード流路または前記カソード流路から連続した流路を有し、
前記電極板外枠の前記連絡溝は、前記電極板まで延びておらず、積層方向において前記突出部の前記流路と連通している、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記電極板外枠は、複数のシート状の部材が重ね合わされて形成されている、請求項1または2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記流路板外枠は、複数のシート状の部材が重ね合わされて形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記アノード流路および前記カソード流路は、前記流路板に形成された複数の凸部を含み、前記流路板を前記電極板を挟んで互いに面内で180度回転させて積層した場合に、前記アノード流路の前記凸部と前記カソード流路の前記凸部とが前記電極板を挟んで互いに対向するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の電気化学セル。
【請求項6】
互いに積層された複数の請求項1~5のいずれか一項に記載の電気化学セルを備える、電気化学セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、電気化学セルおよび電気化学セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルは、電解質膜等の隔膜を挟んで配置されたアノード電極およびカソード電極の少なくとも一方に液体もしくは気体または液体と気体の混合体からなる流体(以下、アノード流体、カソード流体等と称する)を供給した状態で、アノード電極とカソード電極の間に外部から電位差を付与し電流を流して、イオン化した物質が隔膜を通過させられることで、電気化学反応を発生させる。例えば、アノード側に水(HO)を供給し、カソード出口側から水素(H)を取り出す水電解や、アノード側に水(HO)、カソード側に二酸化炭素(CO)を供給し、カソード出口側から一酸化炭素(CO)を取り出す二酸化炭素電解等に用いられる。また、アノード流体またはカソード流体には、電気化学反応を促進する目的で、反応に必要な液体に少量のイオン性物質を溶解させた電解質溶液が用いられる場合もある。
【0003】
アノード電極とカソード電極にアノード流体とカソード流体をそれぞれ供給するために、アノード電極とカソード電極に隣接して流路板が設置される。流路板にはアノード流体およびカソード流体が流通するための流路が形成されており、更に電極板と流路板を複数積層した状態でそれぞれの電極が直列に接続されるように、流路板は導電性の物質で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6385788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アノード流体またはカソード流体は、純水を使用しても流体中に混入する不純物の影響で導電率をゼロにすることは困難である。このため、積層された流路板の連通孔を通して、異なる流路板の間で電流が流れ、電気化学反応のために使用すべき電流の一部がリーク電流として消費されてしまう。また、流体として電解質溶液を使用する場合には、更に導電率が増加してしまい、リーク電流も増加する。アノード流体またはカソード流体が主に気体の流体であっても、含有されている物質の一部が凝縮して連通孔の壁面に付着することで、同様にリーク電流が発生する原因となる。
【0006】
このような問題に対処するため、電極板の外側に電極板外枠を配置するとともに、流路板の外側に流路板外枠を配置する方法が考えられる。電極板外枠および流路板外枠には、電気化学セルの外部からアノード流体やカソード流体を供給するための連通孔が設けられる。連通孔からのアノード流体およびカソード流体は、流路板外枠の両面にそれぞれ配置された連絡溝を通って、流路板の両面にそれぞれ配置された流路に流通する。ここで、電極板外枠および流路板外枠とアノード流体およびカソード流体とのそれぞれの接触部分は、電気絶縁性の材料で構成される。このことにより、連通孔と流路板の間の流路において流体と接する部分が絶縁される。このため、電極板を挟んで隣接する流路板の間に流れるリーク電流を低減することができる。
【0007】
しかしながら、このように流路板外枠の両面に連絡溝を配置する構成では、流路板外枠の厚さが厚くなり、電気化学セルの厚さが厚くなってしまう。このため、複数の電気化学セルが積層された電気化学セルスタックが大型化してしまうという課題がある。
【0008】
本実施の形態は、このような点に鑑み、厚さを低減することができる電気化学セルおよび電気化学セルスタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施の形態による電気化学セルは、隔膜と、隔膜の一方の主面に配置されたアノード電極と、隔膜の他方の主面に配置されたカソード電極と、を有する電極板と、電極板に積層される流路板であって、アノード電極に対向して配置され、アノード流体が流通するアノード流路と、カソード電極に対向して配置され、カソード流体が流通するカソード流路と、を有する流路板と、電極板の外側に配置された電極板外枠と、流路板の外側に配置された流路板外枠と、を備える。電極板外枠および流路板外枠は、それぞれ積層方向に連通したアノード流体連通孔およびカソード流体連通孔を有する。流路板外枠は、アノード流体連通孔と流路板のアノード流路とを連通するアノード連絡溝およびカソード流体連通孔と流路板のカソード流路とを連通するカソード連絡溝のうちのいずれか一方の連絡溝を有し、電極板外枠は、アノード連絡溝およびカソード連絡溝のうちのいずれか他方の連絡溝を有する。
【0010】
また、実施の形態による電気化学セルスタックは、互いに積層された複数の上述した電気化学セルを備える。
【発明の効果】
【0011】
本実施の形態によれば、電気化学セルの厚さを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1の実施の形態による電気化学セルスタックの斜視図である。
図2図2は、第1の実施の形態による電気化学セルの斜視図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図2の電極板と電極板外枠を分解して示す斜視図である。
図5図5は、図4の電極板と電極板外枠の平面図である。
図6図6は、図5の電極板と電極板外枠を裏側から見た図である。
図7図7は、図5のB-B線断面図である。
図8図8は、図2の流路板と流路板外枠を分解して示す斜視図である。
図9図9は、図8の流路板と流路板外枠の平面図である。
図10図10は、図9の流路板と流路板外枠を裏側から見た図である。
図11図11は、図9のC-C線断面図である。
図12図12は、第2の実施の形態による電極板と電極板外枠の断面図である。
図13図13は、第2の実施の形態による流路板と流路板外枠の断面図である。
図14図14は、第3の実施の形態による電気化学セルが複数積層された状態を示す斜視図である。
図15図15は、図14を電気化学セル毎に分解して示す斜視図である。
図16図16は、図14のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
まず、図1図11を参照して、第1の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態による電気化学セルスタック1の斜視図である。図1に示すように、本実施の形態による電気化学セルスタック1は、互いに積層された複数の電気化学セル2を備えている。電気化学セルスタック1は、複数の電気化学セル2が積層されて構成されている。
【0016】
また、図1に示すように、電気化学セルスタック1は、絶縁板3と集電板4と締付板5とを備えている。絶縁板3は、板状の絶縁体である。絶縁板3は、積層された複数の電気化学セル2の積層方向における両側にそれぞれ配置されている。集電板4は、板状の導電体である。集電板4は、それぞれの絶縁板3に埋め込まれていてもよい。集電板4は、外側に向けて延び出た端子4aを有している。この端子4aは、ケーブル等を介して外部の電源と電気的に接続される。これにより、外部の電源から各電気化学セル2に電圧を付与し電流を流すことができる。締付板5は、各電気化学セル2および絶縁板3の積層方向における両側にそれぞれ配置されている。締付板5は、各電気化学セル2を互いに近接する方向に締付けている。締付板5は、タイロッド6により固定されていてもよい。締付板5は、タイロッド6による締付力により、各電気化学セル2を互いに近接する方向に締付けていてもよい。
【0017】
また、図1に示すように、締付板5は、アノード流体流入孔7a、アノード流体流出孔7b、カソード流体流入孔7cおよびカソード流体流出孔7dを有している。これらの流入孔7a、7cおよび流出孔7b、7dは、締付板5を貫通している。アノード流体流入孔7aは、後述する電気化学セル2のアノード流体入口連通孔12、22と連通している。アノード流体流出孔7bは、後述する電気化学セル2のアノード流体出口連通孔13、23と連通している。カソード流体流入孔7cは、後述する電気化学セル2のカソード流体入口連通孔14、24と連通している。カソード流体流出孔7dは、後述する電気化学セル2のカソード流体出口連通孔15、25と連通している。アノード流体流入孔7aには、外部から供給されたアノード流体が流入する。各電気化学セル2による電気化学反応後のアノード流体は、アノード流体流出孔7bから外部に流出する。カソード流体流入孔7cには、外部から供給されたカソード流体が流入する。各電気化学セル2による電気化学反応後のカソード流体は、カソード流体流出孔7dから外部に流出する。
【0018】
図2は、本実施の形態による電気化学セル2の斜視図である。図3は、図2のA-A線断面図である。図2および図3に示すように、本実施の形態による電気化学セル2は、電極板10および電極板外枠11と、流路板20および流路板外枠21と、を備えている。電気化学セル2は、電極板10および電極板外枠11と、流路板20および流路板外枠21とを一組として、これらを積層した構造を有している。
【0019】
図4は、本実施の形態による電極板10と電極板外枠11を分解して示す斜視図である。図5は、本実施の形態による電極板10と電極板外枠11の平面図である。図6は、図5の電極板10と電極板外枠11を裏側から見た図である。図7は、図5のB-B線断面図である。
【0020】
図4に示すように、本実施の形態による電極板10は、隔膜16と、アノード電極17と、カソード電極18と、を有している。アノード電極17およびカソード電極18は、隔膜16を挟んで配置されている。すなわち、隔膜16の両側にアノード電極17およびカソード電極18がそれぞれ配置されている。アノード電極17は、隔膜16の一方の主面(図4および図7における上側)に配置され、カソード電極18は、隔膜16の他方の主面(図4および図7における下側)に配置されている。
【0021】
隔膜16は、固体高分子膜(イオン交換膜)や固体電解質膜(電解質膜)等のイオン濾過膜であってもよい。アノード電極17およびカソード電極18は、カーボンまたは金属を原料としたガス透過性を有する基材に、ニッケル、イリジウム、金、銀または白金等の金属や、酸化ニッケル、二酸化イリジウムまたは酸化コバルト等の金属酸化物を含む触媒が付着されて構成されていてもよい。
【0022】
図4に示すように、隔膜16、アノード電極17およびカソード電極18は、それぞれ平板状に形成されていてもよい。図4に示すように、カソード電極18は、隔膜16と同じ平面サイズを有していてもよい。一方、アノード電極17は、隔膜16よりも小さい平面サイズを有していてもよい。このことにより、図4および図7に示すように、アノード電極17と隔膜16との間に段差が形成されていてもよい。
【0023】
図4図7に示すように、電極板10の外側には、電極板外枠11が配置されている。電極板外枠11は、電極板10に接合されている。電極板外枠11は、電極板10の外周部に接合されていてもよい。また、図4および図7に示すように、電極板10のアノード電極17と隔膜16との間の段差の部分を覆うように電極板外枠11が積層方向に重ね合わされて接合されていてもよい。この場合、電極板10と電極板外枠11との接合部の接合面積を広くすることができ、接合部でのシール性を向上させることができる。
【0024】
図4図7に示すように、電極板外枠11は、アノード流体入口連通孔12、アノード流体出口連通孔13、カソード流体入口連通孔14およびカソード流体出口連通孔15を有している。これらの連通孔12、13、14、15は、それぞれ電極板10から離れた位置に設けられている。これらの連通孔12、13、14、15は、厚さ方向(積層方向)においてそれぞれ電極板外枠11を貫通している。
【0025】
また、図4および図5に示すように、電極板外枠11は、アノード連絡溝19a、19bを有している。アノード連絡溝19aは、アノード流体入口連通孔12と後述する流路板20のアノード流路26とを連通している。すなわち、アノード連絡溝19aは、アノード流体入口連通孔12から流路板20のアノード流路26にアノード流体を流通させる。アノード連絡溝19bは、流路板20のアノード流路26とアノード流体出口連通孔13とを連通している。すなわち、アノード連絡溝19bは、流路板20のアノード流路26からアノード流体出口連通孔13にアノード流体を流通させる。
【0026】
図4および図5に示すように、アノード連絡溝19a、19bは、電極板外枠11の表面に形成された複数の溝部を含んでいてもよい。すなわち、アノード連絡溝19a、19bは、内部をアノード流体が流通する複数の溝部で構成されていてもよい。また、図4および図5に示すように、アノード連絡溝19a、19bは、連通孔12、13から延び出ていてもよい。一方、アノード連絡溝19a、19bは、電極板10までは延びていなくてもよい。すなわち、アノード連絡溝19a、19bは、電極板10から離間していてもよい。図4および図5に示すように、アノード連絡溝19a、19bは、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。
【0027】
また、図4および図5に示すように、電極板外枠11は、積層シール部材30を有していてもよい。積層シール部材30は、アノード流体入口連通孔12、アノード連絡溝19a、電極板10、アノード連絡溝19bおよびアノード流体出口連通孔13を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材30は、カソード流体入口連通孔14を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材30は、カソード流体出口連通孔15を囲むように設けられていてもよい。
【0028】
積層シール部材30は、電極板10および電極板外枠11と流路板20および流路板外枠21とを積層したときに、部材間の隙間からアノード流体やカソード流体が外部に流出しないようにその隙間をシールするための部材である。積層シール部材30は、ゴム等の弾性体であってもよい。この場合、電極板10および電極板外枠11と流路板20および流路板外枠21とを積層して互いに近接する方向に締付けたときに、電極板外枠11と流路板外枠21との間で積層シール部材30が圧縮され、その反力によって部材間の隙間をシールすることができる。あるいは、シール部材30は、接着剤であってもよい。この場合、電極板10および電極板外枠11と流路板20および流路板外枠21とを積層して互いに近接する方向に締付けたときに、電極板外枠11と流路板外枠21とが互いに接着され、部材間の隙間をシールすることができる。
【0029】
電極板外枠11は、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料またはフッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコンゴム等のゴム材料等の電気絶縁性の材料から構成されていてもよい。あるいは、電極板外枠11は、導電性の基材の表面に電気絶縁性の材料が被膜されて構成されていてもよい。電極板外枠11は、少なくともアノード流体およびカソード流体と接する部分に電気絶縁性の材料が設けられていればよい。
【0030】
図8は、本実施の形態による流路板20と流路板外枠21を分解して示す斜視図である。図9は、本実施の形態による流路板20と流路板外枠21の平面図である。図10は、図9の流路板20と流路板外枠21を裏側から見た図である。図11は、図9のC-C線断面図である。
【0031】
図8図11に示すように、本実施の形態による流路板20は、アノード流路26と、カソード流路28と、を有している。アノード流路26およびカソード流路28は、流路板20の両面にそれぞれ配置されている。アノード流路26は、流路板20のアノード電極17の側の面(図8および図11における下側)に配置され、カソード流路28は、流路板20のカソード電極18の側の面(図8および図11における上側)に配置されている。アノード流路26は、電極板10のアノード電極17に対向して配置される。カソード流路28は、電極板10のカソード電極18に対向して配置される。
【0032】
アノード流路26は、アノード流体が流通するように構成されている。図10および図11に示すように、アノード流路26は、流路板20の一側の主面から凹んだ複数の凹部を含んでいてもよい。すなわち、アノード流路26は、内部をアノード流体が流通する複数の凹部で構成されていてもよい。ここで、アノード流路26は、流路板20の溝底部(凹部の底)から突出した複数の凸部を含んでいるということもでき、アノード流路26は、隣り合う凸部間をアノード流体が流通する複数の凸部で構成されているということもできる。図10に示すように、アノード流路26は、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。
【0033】
カソード流路28は、カソード流体が流通するように構成されている。図8図9および図11に示すように、カソード流路28は、流路板20の他側の主面から突出した複数の凸部を含んでいてもよい。すなわち、カソード流路28は、隣り合う凸部間をカソード流体が流通する複数の凸部で構成されていてもよい。図8および図9に示すように、カソード流路28は、複数の屈曲部を有するサーペンタイン型流路であってもよい。
【0034】
アノード流路26およびカソード流路28は、流路板20となる薄板を一側の主面からプレス加工することにより形成されてもよい。すなわち、プレス加工により流路板20の一側の主面に複数の凹部が形成されるとともに他側の主面に複数の凸部が形成され、その一側の主面に形成された複数の凹部をアノード流路26とし、他側の主面に形成された複数の凸部をカソード流路28としてもよい。アノード流路26およびカソード流路28をプレス加工により形成することにより、流路板20の大量生産を容易化し、電気化学セル2の製造コストを低減することができる。
【0035】
また、図8図11に示すように、流路板20は、平面視でアノード電極17およびカソード電極18よりも外側に突出した突出部27a、27bを有していてもよい。突出部27aは、後述する流路板外枠21のカソード流体入口連通孔24の側に向かって突出している。突出部27bは、後述する流路板外枠21のカソード流体出口連通孔25の側に向かって突出している。
【0036】
図10に示すように、突出部27a、27bには、アノード流路26から連続した流路が設けられている。すなわち、アノード流路26は、突出部27a、27bまで延びるように形成されている。突出部27a、27bのアノード流路26は、積層方向において電極板外枠11のアノード連絡溝19a、19bの電極板10側の端部に対向し、積層方向においてアノード連絡溝19a、19bと連通している。このため、電極板外枠11のアノード連絡溝19aを流通したアノード流体は、積層方向に流れて流路板20のアノード流路26に流入する。そして、流路板20のアノード流路26を流通したアノード流体は、積層方向に流れて電極板外枠11のアノード連絡溝19bに流入する。
【0037】
また、図9に示すように、突出部27a、27bには、カソード流路28から連続した流路が設けられている。すなわち、カソード流路28は、突出部27a、27bまで延びるように形成されている。突出部27a、27bのカソード流路28は、後述する流路板外枠21のカソード連絡溝29a、29bまで延び、カソード連絡溝29a、29bと連通している。このため、流路板外枠21のカソード連絡溝29aを流通したカソード流体は、流路板20のカソード流路28に流入する。そして、流路板20のカソード流路28を流通したカソード流体は、流路板外枠21のカソード連絡溝29bに流入する。
【0038】
流路板20は、カーボン、カーボンと樹脂の混合物、金属等の導電性の材料から構成されていてもよい。あるいは、流路板20は、導電性の材料の表面に、腐食電位を高くする、接触抵抗を低減する等の目的で導電性のコーティング剤が被膜されて構成されていてもよい。
【0039】
図8図11に示すように、流路板20の外側には、流路板外枠21が配置されている。流路板外枠21は、流路板20に接合されている。流路板外枠21は、流路板20の外周部に接合されていてもよい。また、図8および図11に示すように、流路板20の流路が形成されていない部分において流路板外枠21が積層方向に重ね合わされて接合されていてもよい。この場合、流路板20と流路板外枠21との接合部の接合面積を広くすることができ、接合部でのシール性を向上させることができる。
【0040】
図8図11に示すように、流路板外枠21は、アノード流体入口連通孔22、アノード流体出口連通孔23、カソード流体入口連通孔24およびカソード流体出口連通孔25を有している。これらの連通孔22、23、24、25は、それぞれ流路板20から離れた位置に設けられている。これらの連通孔22、23、24、25は、厚さ方向(積層方向)においてそれぞれ流路板外枠21を貫通している。
【0041】
図2および図3に示すように、電極板10および電極板外枠11と流路板20および流路板外枠21とが積層された状態において、連通孔22、23、24、25は、対応する連通孔12、13、14、15と重なっている。すなわち、アノード流体入口連通孔12、22、アノード流体出口連通孔13、23、カソード流体入口連通孔14、24およびカソード流体出口連通孔15、25は、それぞれ積層方向に連通している。また、アノード流体入口連通孔12、22はアノード流体流入孔7aと連通し、アノード流体出口連通孔13、23はアノード流体流出孔7bと連通し、カソード流体入口連通孔14、24はカソード流体流入孔7cと連通し、カソード流体流出孔7dはカソード流体出口連通孔15、25と連通している。外部から供給されたアノード流体は、アノード流体流入孔7aを通ってアノード流体入口連通孔12、22に流入する。アノード流路26を流通した電気化学反応後のアノード流体は、アノード流体出口連通孔13、23からアノード流体流出孔7bを通って外部に流出する。外部から供給されたカソード流体は、カソード流体流入孔7cを通ってカソード流体入口連通孔14、24に流入する。カソード流路28を流通した電気化学反応後のカソード流体は、カソード流体出口連通孔15、25からカソード流体流出孔7dを通って外部に流出する。
【0042】
また、図8および図9に示すように、流路板外枠21は、カソード連絡溝29a、29bを有している。カソード連絡溝29aは、カソード流体入口連通孔24と流路板20のカソード流路28とを連通している。すなわち、カソード連絡溝29aは、カソード流体入口連通孔24から流路板20のカソード流路28にカソード流体を流通させる。カソード連絡溝29bは、流路板20のカソード流路28とカソード流体出口連通孔25とを連通している。すなわち、カソード連絡溝29bは、流路板20のカソード流路28からカソード流体出口連通孔25にカソード流体を流通させる。
【0043】
図8および図9に示すように、カソード連絡溝29a、29bは、流路板外枠21の表面に形成された複数の溝部を含んでいてもよい。すなわち、カソード連絡溝29a、29bは、内部をアノード流体が流通する複数の溝部で構成されていてもよい。また、図8および図9に示すように、カソード連絡溝29a、29bは、連通孔24、25から流路板20まで延びていてもよい。また、図8および図9に示すように、カソード連絡溝29a、29bは、直線状に延びる平行流型流路であってもよい。
【0044】
また、図8および図9に示すように、流路板外枠21は、電極板外枠11と同様、積層シール部材30を有していてもよい。積層シール部材30は、カソード流体入口連通孔24、カソード連絡溝29a、流路板20、カソード連絡溝29bおよびカソード流体出口連通孔25を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材30は、アノード流体入口連通孔22を囲むように設けられていてもよい。また、積層シール部材30は、アノード流体出口連通孔23を囲むように設けられていてもよい。
【0045】
流路板外枠21は、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料またはフッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコンゴム等のゴム材料等の電気絶縁性の材料から構成されていてもよい。あるいは、流路板外枠21は、導電性の基材の表面に電気絶縁性の材料が被膜されて構成されていてもよい。流路板外枠21は、少なくともアノード流体およびカソード流体と接する部分に電気絶縁性の材料が設けられていればよい。
【0046】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用効果について説明する。ここでは、本実施形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックの動作について説明する。
【0047】
まず、電気化学セルスタック1にカソード流体およびアノード流体が供給される。電気化学セルスタック1に供給されたカソード流体は、カソード流体流入孔7cを通って各電気化学セル2のカソード流体入口連通孔14、24に流入する。続いて、カソード流体は、カソード流体入口連通孔14、24から流路板外枠21のカソード連絡溝29aに流入し、カソード連絡溝29aを流通する。次に、カソード連絡溝29aの流路板20側の端部に到達したカソード流体は、流路板20のカソード流路28に流入する。そして、カソード流体は、電極板10のカソード電極18に接触しながら、カソード流路28を流通する。
【0048】
また、電気化学セルスタック1に供給されたアノード流体は、アノード流体流入孔7aを通って各電気化学セル2のアノード流体入口連通孔12、22に流入する。続いて、アノード流体は、アノード流体入口連通孔12、22から電極板外枠11のアノード連絡溝19aに流入し、アノード連絡溝19aを流通する。次に、アノード連絡溝19aの電極板10側の端部に到達したアノード流体は、積層方向に流れて流路板20のアノード流路26に流入する。そして、アノード流体は、電極板10のアノード電極17に接触しながら、流路板20のアノード流路26を流通する。
【0049】
カソード電極18に接触したカソード流体とアノード電極17に接触したアノード流体の構成物質の少なくとも一部は電極に付着した触媒と反応してイオン化する。この状態で、電気化学セルスタック1の積層方向における両端に所定の電圧を付与すると、電極板10の電気絶縁性の隔膜16を挟んでカソード電極18とアノード電極17との間に電位差が生じる。これにより、流体中のイオン化した特定の物質が隔膜16を通過することで、カソード流体とアノード流体の物質構成が変化する電気化学反応が発生する。
【0050】
例えば、アノード側に水(HO)を供給することで、カソード出口側から水素(H)を取り出す水電解の反応を得ることができる。また例えば、アノード側に水(HO)を供給し、カソード側に二酸化炭素(CO)を供給することで、カソード出口側から一酸化炭素(CO)を含む混合ガスを取り出す二酸化炭素電解の反応を得ることができる。
【0051】
電気化学反応後のカソード流体は、流路板20のカソード流路28から流路板外枠21のカソード連絡溝29bに流入する。続いて、カソード流体は、流路板外枠21のカソード連絡溝29bを流通する。次に、流路板外枠21のカソード連絡溝29bを流通したカソード流体は、カソード流体出口連通孔15、25に到達する。そして、カソード流体は、カソード流体出口連通孔15、25からカソード流体流出孔7dを通って外部に流出する。
【0052】
また、電気化学反応後のアノード流体は、流路板20のアノード流路26から積層方向に流れて電極板外枠11のアノード連絡溝19bに流入する。続いて、アノード流体は、電極板外枠11のアノード連絡溝19bに流通する。次に、電極板外枠11のアノード連絡溝19bを流通したアノード流体は、アノード流体出口連通孔13、23に到達する。そして、アノード流体は、アノード流体出口連通孔13、23からアノード流体流出孔7bを通って外部に流出する。
【0053】
ここで、流路板外枠の両面にそれぞれ連絡溝を配置した場合、すなわち、流路板外枠の一側の面にアノード連絡溝を配置するとともに、流路板外枠の他側の面にカソード連絡溝を配置した場合、平面視でアノード連絡溝とカソード連絡溝とが重なる部分が生じ得る。この場合、各連絡溝は流路としての機能を確保するためにある程度の深さを有するため、当該連絡溝が重なる部分では流路板外枠の厚さが厚くなることが要求される。このため、流路板外枠の厚さが全体的に厚くなり、電気化学セルの厚さも厚くなってしまう。この結果、電気化学セルスタックが大型化してしまう。
【0054】
これに対して本実施の形態によれば、流路板外枠21がカソード連絡溝29a、29bを有し、電極板外枠11がアノード連絡溝19a、19bを有している。このようにアノード連絡溝19a、19bを電極板外枠11に配置することにより、流路板外枠21にアノード連絡溝19a、19bを配置することを不要にすることができる。このため、流路板外枠21の厚さを低減することができ、電気化学セル2の厚さを低減することができる。この結果、電気化学セルスタック1を小型化することができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、電極板外枠11のアノード連絡溝19a、19bは、電極板10まで延びておらず、積層方向において流路板20の突出部27a、27bのアノード流路26と連通している。このような構成により、電極板10に流路を形成することなく、アノード連絡溝19a、19bとアノード流路26とを連通させることができる。このため、電極板10に流路を形成する場合よりも製造を容易化することができ、電気化学セル2の製造コストを低減することができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
次に、図12および図13を参照して、第2の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0057】
図12および図13に示す第2の実施の形態においては、電極板外枠および流路板外枠が、それぞれ複数のシート状の部材が重ね合わされて形成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図11に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図12および図13において、図1図11に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0058】
図12は、本実施の形態による電極板10と電極板外枠11の断面図である。図13は、本実施の形態による流路板20と流路板外枠21の断面図である。図12は、第1の実施の形態の図7に対応する部分の断面図である。図13は、第1の実施の形態の図11に対応する部分の断面図である。
【0059】
図12に示すように、本実施の形態による電極板外枠11は、複数のシート状の部材(シート部材)が重ね合わされて形成されている。また、図13に示すように、本実施の形態による流路板外枠21は、複数のシート状の部材(シート部材)が重ね合わされて形成されている。
【0060】
図12に示す例においては、電極板外枠11は、2枚のシート部材11a、11bが重ね合わされて形成されている。シート部材11aは、アノード電極17側(図12における上側)に配置されており、シート部材11bは、カソード電極18側(図12における下側)に配置されている。シート部材11aは、シート部材11aの内側部分が電極板10のアノード電極17と隔膜16との間の段差の部分を覆うように配置されている。アノード連絡溝19a、19bは、シート部材11aに配置されており、シート部材11aを貫通するように形成されている。
【0061】
図13に示す例においては、流路板外枠21は、3枚のシート部材21a、21b、22cが重ね合わされて形成されている。シート部材21aは、カソード電極18側(図13における上側)に配置されており、シート部材21bは、アノード電極17側(図13における下側)に配置されており、シート部材21cは、シート部材21aとシート部材21bの間に配置されている。カソード連絡溝29a、29bは、シート部材21aに配置されており、シート部材21aを貫通するように形成されている。
【0062】
各シート部材11a、11b、21a、21b、22cは、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂材料またはフッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコンゴム等のゴム材料等の電気絶縁性の材料から構成されていてもよい。あるいは、流体に接しないシート部材21bは、金属板等の剛性の高い材料から構成され、流体に接するシート部材11a、11b、21a、22cは、電気絶縁性の材料から構成されていてもよい。あるいは、流体に接するシート部材11a、11b、21a、22cは、金属板等の導電性の基材の表面に電気絶縁性の材料が被膜されて構成されていてもよい。流体に接するシート部材11a、11b、21a、22cは、少なくともアノード流体およびカソード流体と接する部分に電気絶縁性の材料が設けられていればよい。
【0063】
重ね合わされたシート部材11a、11b、21a、21b、22c間は、互いに近接する方向に締付けて密着させる、接触面を接着材で互いに接着する、部材の少なくとも一部に凹部を設け、凹部内にゴム材料等の弾性変形の比較的大きい部材を設置する等の方法により接合され、シールされてもよい。
【0064】
このように本実施の形態によれば、電極板外枠11は、複数のシート状の部材が重ね合わされて形成されている。このことにより、電極板外枠11を比較的安価に作製することができる。このため、電気化学セル2の製造コストを低減することができる。
【0065】
また、本実施の形態によれば、流路板外枠21は、複数のシート状の部材が重ね合わされて形成されている、このことにより、流路板外枠21を比較的安価に作製することができる。このため、電気化学セル2の製造コストを低減することができる。
【0066】
(第3の実施の形態)
次に、図14図16を参照して、第3の実施の形態による電気化学セルおよび電気化学セルスタックについて説明する。
【0067】
図14図16に示す第3の実施の形態においては、アノード流路およびカソード流路は、流路板を電極板を挟んで互いに面内で180度回転させて積層した場合に、アノード流路の凸部とカソード流路の凸部とが電極板を挟んで互いに対向するように構成されている点が主に異なり、他の構成は、図1図11に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図14図16において、図1図11に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
図14は、本実施の形態による電気化学セルが複数積層された状態を示す斜視図である。図15は、図14を電気化学セル毎に分解して示す断面図である。図16は、図14のD-D線断面図である。図14図16に示す例においては、4つの電気化学セル2が積層されている。
【0069】
図15および図16に示すように、本実施の形態による流路板20は、電極板10を挟んで互いに面内で180度回転されて積層されている。ここで、流路板20のみが、電極板10を挟んで互いに面内で180度回転されていてもよいし、流路板20および流路板外枠21が、電極板10および電極板外枠11を挟んで互いに面内で180度回転されていてもよい。図15および図16では、このように面内で180度回転された流路板を符号20’、流路板外枠を符号21’、そのような流路板20’および流路板外枠21’を含む電気化学セルを符号2’で示している。図15および図16に示す例においては、電気化学セル2と電気化学セル2’とが積層方向において交互に配置されている。
【0070】
また、本実施の形態においては、図16に示すように、流路板20のアノード流路26の凸部と流路板20’のカソード流路28’の凸部とが電極板10を挟んで互いに対向している。また、流路板20’のアノード流路26’の凸部と流路板20のカソード流路28の凸部とが電極板10を挟んで互いに対向している。すなわち、本実施の形態による流路板20のアノード流路26およびカソード流路28は、流路板20を電極板10を挟んで互いに面内で180度回転させて積層した場合に、アノード流路26の凸部と流路板20のカソード流路28の凸部とが電極板10を挟んで互いに対向するように構成されている。
【0071】
通常、同一の流路板を積層方向に複数積層した場合、流路板の各凸部は電極板を挟んで互いに対向せず、むしろ流路板の凸部と凹部が互いに対向する場合がある。この状態で、電極板と流路板を互いに近接する方向に締付けた場合、電極板が流路板の凸部から力を受けて、電極板が曲がったり破損したりするおそれがある。このことを回避するために、凸部の位置が異なる2種類の流路板を準備して、流路板の各凸部が電極板を挟んで互いに対向するように配置する方法もあるが、この場合、2種類の流路板を準備する必要があり、電気化学セルの製造コストが増大するおそれがある。
【0072】
これに対して本実施の形態によれば、アノード流路26およびカソード流路28は、流路板20を電極板10を挟んで互いに面内で180度回転させて積層した場合に、アノード流路26の凸部と流路板20のカソード流路28の凸部とが電極板10を挟んで互いに対向するように構成されている。このことにより、1種類の流路板20により、流路板20の各凸部を電極板10を挟んで互いに対向させることができる。このため、電極板10と流路板20を互いに近接する方向に締付けた場合であっても、電極板10が曲がったり破損したりすることを抑制することができる。また、電極板10と流路板20を締付ける締付力を増大させることができ、シール性能を向上させることができる。また、1種類の流路板20により流路板20の各凸部を電極板10を挟んで互いに対向させることができるため、複数種類の流路板を準備する必要がなく、電気化学セル2の製造コストの増大を抑制することができる。
【0073】
以上述べた実施の形態によれば、電気化学セルの厚さを低減することができる。
【0074】
(その他の実施の形態)
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0075】
例えば、流路板の各流路の溝の幅、本数および断面形状、サーペンタイン型流路の屈曲回数および屈曲部の面取り形状、並びに平行流型流路の分岐部や合流部の形状等は図示の内容に限定されない。また、電極板外枠と流路板外枠の連通孔および連絡溝の形状等も図示の内容に限定されない。
【0076】
また、図12および図13にそれぞれ示す電極板外枠および流路板外枠の構成も図示の内容に限定されない。図12に示す例においては、電極板外枠は、2枚のシート状の部材が重ね合わされて形成されているが、電極板外枠は、3枚以上のシート状の部材が重ね合わされて形成されていてもよい。図13に示す例においては、流路板外枠は、3枚のシート状の部材が重ね合わされて形成されているが、流路板外枠は、2枚のシート状の部材あるいは4枚以上のシート状の部材が重ね合わされて形成されていてもよい。
【0077】
また、上述した実施の形態においては、流路板外枠がカソード連絡溝を有し、電極板外枠がアノード連絡溝を有している例について説明した。しかしながら、このことに限定されず、流路板外枠がアノード連絡溝を有し、電極板外枠がカソード連絡溝を有していてもよい。このような場合であっても、同様に、流路板外枠の厚さを低減することができ、電気化学セルの厚さを低減することができる。すなわち、流路板外枠が、アノード連絡溝およびカソード連絡溝のうちのいずれか一方の連絡溝を有し、電極板外枠が、アノード連絡溝およびカソード連絡溝のうちのいずれか他方の連絡溝を有していればよい。
【符号の説明】
【0078】
1:電気化学セルスタック、2:電気化学セル、10:電極板、11:電極板外枠、12:アノード流体入口連通孔、13:アノード流体出口連通孔、14:カソード流体入口連通孔、15:カソード流体出口連通孔、16:隔膜、17:アノード電極、18:カソード電極、19a、19b:アノード連絡溝、20:流路板、21:流路板外枠、22:アノード流体入口連通孔、23:アノード流体出口連通孔、24:カソード流体入口連通孔、25:カソード流体出口連通孔、27a、27b:突出部、29a、29b:カソード連絡溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16