(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】編み機用針及び編み物システム
(51)【国際特許分類】
D04B 35/04 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
D04B35/04
(21)【出願番号】P 2021523400
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2020051356
(87)【国際公開番号】W WO2020156875
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザウター,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】シュティンゲル,ウーヴェ
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01145150(GB,A)
【文献】中国実用新案第2534208(CN,Y)
【文献】米国特許第00664808(US,A)
【文献】実開昭62-191888(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループを形成するためのフック(2)であって、シャンク(3)の長手方向(z)に該シャンク(3)を制限し、フックの先端(4)で終わる、フック(2)と、
前記フック(2)から前記シャンク(3)の長手方向(z)に続く第1の駆動部分(33)と、
を少なくとも含む、編み機用針(1)であって、
前記フック(2)を前記第1の駆動部分(33)から分離するための既定の破断部分(9)が、
前記シャンク(3)の一部分によって形成され、前記シャンク(3)の長手方向(z)に延び、
前記既定の破断部分(9)は、前記フック(2)と前記第1の駆動部分(33)の間で前記シャンク(3)の長手方向(z)に延びる部分に全体が配置されて
おり、
前記フック(2)に高さ方向(x)に作用する力の80%よりも小さい力の印加により破断し、
前記フック(2)に高さ方向(x)に作用する力は、前記既定の破断部(9)を有しない同一構造の編み機用針が永久変形する力である、
ことを特徴とする編み機用針(1)。
【請求項2】
ラッチ(6)であって、閉位置(7)ではフック(2)の内部を閉鎖し、該ラッチ(6)の後向き位置(8)では、該ラッチの先端が前記シャンク(3)の長手方向(z)に沿って前記第1の駆動部分(33)を向くように前記シャンク(3)に軸支されているラッチ(6)を有すること、を特徴とする請求項
1に記載の編み機用針(1)。
【請求項3】
前記既定の破断部分(9)は、前記シャンクの第2の部分(11)に全体が配置され、
前記シャンクの第2の部分(11)は、前記ラッチ(6)の後向き位置における前記ラッチの先端(12)の位置と、前記第1の駆動部分(33)のフック側の開始部(19)の間で前記シャンクの長手方向(z)に延びる、ことを特徴とする請求項
2に記載の編み機用針(1)。
【請求項4】
前記既定の破断部分(9)は、前記シャンクの第3の部分(13)に全体が配置され、
前記シャンクの第3の部分は、前記編み機用針(1)の長手方向(z)に沿って前記ラッチ(6)のピボット点(14)から前記第1の駆動部分(33)の方向に1.5ラッチ長から2.5ラッチ長の間隔をあけた位置から開始され、
前記編み機用針(1)の長手方向(z)に沿って前記ラッチ(6)の前記ピボット点(14)から前記第1の駆動部分(33)の方向に3ラッチ長から4ラッチ長の間隔をあけた位置で終了し、
前記ラッチ長は、前記ラッチの前記ピボット点(14)と前記ラッチの先端(12)との間の距離のことである、ことを特徴とする請求項
2または
3に記載の編み機用針(1)。
【請求項5】
前記第1の駆動部分(33)の前記フック側の開始部(19)は、前記編み機用針(1)の前記フック側の開始部(20)から前記シャンク(3)の長手方向(z)に少なくとも75mmの間隔をあけて配置される、ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか1項に記載の編み機用針(1)。
【請求項6】
前記駆動部分(33)は、バット(5)によって形成され、該バット(5)は、前記シャンク(3)の正の高さ方向(x)にシャンク(3)の上方に突出する、ことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の編み機用針(1)。
【請求項7】
前記既定の破断部分(9)は、前記シャンクの長手方向(z)に直角な断面の縮小部(21)を含む、ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の編み機用針(1)。
【請求項8】
前記既定の破断部分(9)は、前記シャンクの高さ方向(x)の寸法が低減することにより前記シャンクの断面(22)が縮小された前記縮小部(21)を含む、ことを特徴とする請求項
7に記載の編み機用針(1)。
【請求項9】
前記既定の破断部分(9)は、前記シャンクの断面(22)が最大に縮小された箇所において、前記シャンクの高さ方向(x)の寸法が少なくとも10%、最大で50%低減されている、ことを特徴とする請求項
8に記載の編み機用針(1)。
【請求項10】
前記シャンクの高さ方向(x)の寸法の低減は、高さ方向(x)と長手方向(z)で定義される平面において、三角形または台形の形状(26)を有し、該形状の両側面(25)が互いに60°から120°の開口角を囲んでいる範囲をとる、ことを特徴とする請求項
8または
9に記載の編み機用針(1)。
【請求項11】
前記既定の破断部分(9)は、少なくとも部分的に、前記シャンク(3)の他の部分(10、11、13)よりも、特に前記シャンク(3)の前記既定の破断部分(9)に隣接する部分(23、24)よりも、破断時の伸長が小さい材料を含む、ことを特徴とする請求項1から
10のいずれか1項に記載の編み機用針(1)。
【請求項12】
案内手段(17)及び少なくとも1つの溝底(32)であって、編み機用針(1)を受け入れ、該編み機用針の長手方向(z)の断続的な動作の間、該編み機用針を支持及び案内するように設定された案内手段及び少なくとも1つの溝底、を備えた針床(16)、
前記針床(16)に着座した前記編み機用針(1)の少なくとも第1の駆動部(33)に力を伝達するための、少なくとも1つのカム要素(18)、及び、
多数の前記編み機用針(1)であって、これらの編み機用針(1)の各々は、その一部において、
ループを形成するためのフック(2)であって、シャンク(3)の長手方向(z)に該シャンク(3)を制限し、フックの先端(4)で終わる、フック(2)と、
前記フック(2)から前記シャンク(3)の長手方向(z)に続く第1の駆動部分(33)と、を含む多数の前記編み機用針(1)、を少なくとも含む編み物システム(15)であって、
前記編み機用針(1)の少なくとも1つは、前記フック(2)を前記第1の駆動部分(33)から分離するための既定の破断部分(9)を有しており、
該既定の破断部分(9)は、前記シャンク(3)の第1の部分(10)によって形成され、前記シャンク(3)の長手方向(z)に延び、
前記フック(2)と前記第1の駆動部分(33)のフック側の開始部(19)との間で前記シャンク(3)の長手方向(z)に延びる前記シャンク(3)の部分に全体が配置されて
おり、
前記フック(2)に高さ方向(x)に作用する力の80%よりも小さい力の印加により破断し、
前記フック(2)に高さ方向(x)に作用する力は、前記既定の破断部(9)を有しない同一構造の編み機用針が永久変形する力である、
ことを特徴とする編み物システム(15)。
【請求項13】
前記針床(16)の前記案内手段(17)及び少なくとも1つの前記溝底(32)、少なくとも1つの前記カム要素(18)、並びに、少なくとも1つの前記編み機用針(1)の前記駆動部分(33)の位置及び前記既定の破断部分(9)の位置は、
編み動作の間、少なくとも1つ前記編み機用針(1)が、少なくとも断続的に、前記案内手段(17)及び少なくとも1つの前記溝底(32)から突出するように上昇し、
前記案内手段(17)及び少なくとも1つの前記溝底(32)が、少なくとも断続的に、少なくとも1つの編み機用針(1)の前記既定の破断部分(9)を支持しなくなる、ように設定されている、ことを特徴とする請求項1
2に記載の編み物システム(15)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編み機用針及び編み物システムに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の編み機用針は、多くの異なる構成で存在する。編み機用針は、編み機で使用され、編み機用針床の溝中で編み機用針の1つ以上のバットを介して移動することが多い。この場合、編み機用針のバットは、編み機のカムと相互作用する。特に、高速の編み機の場合、編み機用針には強い加速力がかかる。ラッチ付きの編み機用針(ラッチニードル)が頻繁に使用されている。ラッチは、フックと共にループを形成するために多くの往復動作を行う。高速の編み機の場合、この往復動作の高い運動性のため、ループ形成の欠陥が発生することがある。この種の欠陥は、フックとラッチの不可避の摩耗によって促進される。フックとラッチは、編み機用針の前端に配置され、シャンクを介して編み機用針のバットと結合されている。
【0003】
ある種の編み機では、編み機用針のバットとカムまたはセレクターとの間で衝突が起こる。実開昭62-191888号及び欧州特許出願公開第1424416号には、損傷の発生に対抗するために、あるいは少なくとも損傷を軽減するために、大きな損傷が発生する前にバットが折れるように編み機用針のバットに既定の破断点を設けることが提案されている。同様の既定の破断点は、中国実用新案第2534208号に記載されている。また、中国実用新案第2534208号に記載されている針には、針のシャンクの下面のうち、ラッチが後退する位置の下に窪みが設けられている。この窪みは、ループが背面のラッチの上をスライドする際に、ループの張力を緩和する役割を果たす。この張力の緩和は、既存の編物(好ましくは先行するループ)がこの窪みに係合するときに発生する。この種の張力緩和用の窪みは、多くの編み機用針の構成において、ラッチの背面位置の下またはすぐ近くに見られる。これらの窪みは、フック上の糸が及ぼす力の結果として窪みが有意な確率で破断することは意図されていないため、既定の破断点ではない。
【0004】
独国特許出願公開第1635837号には、バットからフックへの衝撃波の伝達を防止するための部分をシャンクに設けた針が示されている。これらの部分は、機械的特性が変化した部分として構成されてもよく、針の直径が小さくなった部分として構成されてもよい。各実施形態において、この特別な部分は、シャンクの高さが最大となる位置に設けられている。これらの部分は、シャンクがこれらの部分で破断する可能性が高くないため、既定の破断点ではない。
【0005】
独国特許出願公開第4320956号及び独国特許発明公開第19503048号には、縫い針及び編み針の既定の破断点が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、特に細長い編み機用針では、シャンクのバットに隣接する部分とカムに隣接する部分との衝突による破損が発生している。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、請求項1に記載の編み機用針と、請求項13に記載の編み物システムによって達成される。
【0009】
本発明に従う編み機用針は、ループを形成するためのフックを含み、このフックは、シャンクの長手方向にシャンクを制限し、すなわちそこから始まり、フックの先端で終わる。フックは、シャンクの長手方向に第1の駆動部分に続いている。編み機のカム要素は、編み機用針を動かすための力を編み機用針の駆動部分に伝達する。駆動部分は、シャンクの正の高さ方向に沿ってシャンクの上方に突出するバットとして構成されていてもよい。また、駆動部分は、結合位置によって形成されていてもよい。この場合、通常は結合要素がバットを有しており、編み機用針を移動させるための力は、編み機用針の結合位置に既知の方法で作用する。本発明に従う編み機用針は、さらに、ラッチを含んでいてもよい。ラッチは、閉位置ではフックの内部を閉鎖し、ラッチが後向き位置にあるときには、ラッチの先端がシャンクの長手方向に沿って第1の駆動部分の方を向くように、シャンクに軸支されていてもよい。ラッチは、シャンクに形成されたピンによって、ヒンジまたは軸によって、シャンクに軸支されるものであってもい。
【0010】
本発明に従う編み機用針は、第1の駆動部分からフックを分離するための既定の破断部分が、シャンクの一部分によって形成され、その長手方向に延びていることを特徴とする。本明細書の用語では、「部分」は、針の長手方向に微小な距離よりも長い距離にわたって延びるものである。既定の破断部分は、その全体がシャンクの第1の部分に配置され、シャンクの第1の部分は、シャンクの長手方向に沿ってフックの先端と第1の駆動部分との間に延びている。
【0011】
驚くべきことに、針床やカムの損傷の問題は、この種の既定の破断部分によって大幅に軽減されることが分かった。この破断部分は、編み機用針のシャンクに対するその作用を顕現させ、フックと第1の駆動部分との間でのシャンクの破断をもたらす。
【0012】
既定の破断部分は、編み機用針の長手方向に微小ではない距離にわたって延びている。編み機用針は、針床内での針の移動が妨げられたり、ループのノックオーバーが失敗したりすると、糸によって伝達され得る力の結果として、既定の破断部分で相当に高い確率で破断する。本明細書で定義されているように、編み機用針のシャンクはその全長にわたって延びており、様々に異なる機能部分に細分化されるだけである。シャンクの端部は、フックを形成し、このフックに境を接して、編み物動作の間に糸と接触し得る部分を有する。シャンクは、さらに、編み機用針の動きを開始させる部分(駆動部分またはバット)を有する。上述した部分の間に位置する部分は、例えば、編み機用針を(針床で)案内する役割を果たし、上述した機能部分を結合する。既定の破断部分は、有利には、シャンクの他の機能部分を案内及び結合する機能を有する部分に配置される。シャンクは、高さが様々に異なる部分を有していてもよい。シャンクの高さが異なる部分は、移行点で互いに融合するものであってもよい。第1の移行点は、駆動部分の近くに配置されていてもよい。第2の移行点は、フックの近くに配置されていてもよい。第2の移行点は、長手方向に沿って、フックの先端から、ラッチの後向き位置にあるラッチの先端の2倍または3倍の距離に配置されてもよい。また、第2の移行点とフックの先端との距離は、上記の値の間の任意の値をとるものであってもよい。
【0013】
編み機用針が有する既定の破断部分は、フックに作用する力であって既定の破断部分を有しない同一構造の針を永久変形させる力の80%よりも小さい力によって、フックが第1の駆動部分から分離可能となるように構成されるものであってもよい。既定の破断部分は、特に、フックに負の高さ方向に例外的に大きな力が作用した場合に、フックが第1の駆動部分から分離可能となるように構成されるものであってもよい。当業者であれば、少なくとも糸の直径(「細さ」)が針の破断強度に関係すること、及び破断強度は確実に針の細さによっても共に定まることも明らかであろう。また、この細さは、使用される糸の最大直径も定めるものである。糸の引張強度も確実に糸の直径に大きく依存するため、この細さは、全体として既定の破断部分の構成に大きな影響を与える針の特性であると言える。編み機用針の細さ(ゲージ)は、編み機用針が打ち抜かれたバンド(帯状材料)の厚さによって決定され得るものであり、編み機用針の幅方向に測定されるものであってもよい。0.4mmゲージの針の場合、フックが第1の駆動部分から分離される力は、既定の破断部分の構成に応じて、おおよそ5Nから1Nの範囲であり得る。同じ構造の編み機用針であれば、約8Nで永久変形するであろう。ここで、「変形」という用語は、本明細書では、特に、「曲げ」を含む一般的な用語として理解されるべきである。既定の破断部分の適合性を検証するための専用の試験は、針を、その下面(バットの高さ方向においてバットとは反対側を向いている面)がテーブルに接するように置き、テーブル上の針を、フックの先端がテーブルの縁部を超えて、針のフックが終端する(前側)部分が少なくとも既定の破断部分がテーブルの縁部を超えるように突出するまで、押すことである。定められた破断力または座屈力がフックに加えられた場合、針は既定の破断部分で破断するはずである。力をさらに増大させても(上記の例を参照)、針が塑性変形するが破断しない場合、その針の本開示の目的への適合性は疑わしい。
【0014】
編み機用針は、シャンクの第2の部分に全体が位置する既定の破断部分を有していてもよい。シャンクの第2の部分は、ラッチの後向き位置にあるラッチの先端の位置と第1の駆動部分の間でシャンクの長手方向に延びるものである。
【0015】
編み機用針は、シャンクの第3の部分に全体が位置する既定の破断部分を有していてもよい。この破断部分は、編み機用針の長手方向に沿って第1の駆動部分の方向にラッチのピボット点から2ラッチ長の間隔をあけた点から始まり、編み機用針の長手方向に沿って第1の駆動部分の方向にラッチのピボット点から3ラッチ長の間隔をあけた点で終わる。ラッチ長とは、ラッチのピボット点とラッチの先端との間の距離である(例えば、nラッチ長は、このラッチ長のn倍の距離を意味する)。ラッチのこのピボット点または軸受点は、円形の貫通孔の形でラッチ内に軸受座を有していてもよく、その中には軸またはピンが延びている。ラッチ長は、この貫通孔の中心から測るものであってもよい。ラッチの先端は、この中心点から最も離れたラッチの点であり、これら2つの点の間の距離がラッチ長を表し得る。既定の破断部分の編み機用針の長手方向における位置を具体的に定めることにより、多数の編み機用針の個々の実例が示すような、フックが駆動部分から分離する力のばらつきを低減することができる。上述したシャンクの第3の部分の始点と終点の位置は、ラッチ動作長が6.5mmの場合に特に有利である。ラッチ動作長は、シャンクの長手方向における針のフックが終端する端からラッチの後向き位置におけるラッチの先端まで、編み機用針の長手方向に沿って測定されるものであってもよい。ラッチ動作長が7.5mmの編み機用針のシャンクの第3の部分は、有利には、ラッチのピボット点から1.5ラッチ長の間隔をあけた点から始まり、有利には、ラッチのピボット点から3ラッチ長の間隔をあけた点で終わる。ラッチ動作長が5.5mmの編み機用針のシャンクの第3の部分は、有利には、ラッチのピボット点から2ラッチ長の間隔をあけた点から始まり、有利には、ラッチのピボット点から3.5ラッチ長の間隔をあけた点で終わる。ラッチ動作長が4.5mmの編み機用針のシャンクの第3の部分は、有利には、ラッチのピボット点から2.5ラッチ長の間隔をあけた点から始まり、有利には、ラッチのピボット点から4ラッチ長の間隔をあけた点で終わる。シャンクの第3の部分の位置は、言及されていないラッチ動作長の値に対して適切に外挿されなければならない。
【0016】
既定の破断部分は、シャンクの第4の部分またはシャンクの第5の部分に位置するものであってもよい。シャンクの第4の部分は、ラッチのピボット点から第2の移行点まで延びていてもよい。シャンクの第5の部分は、後向き位置をとるラッチの先端の位置から第2の移行点まで延びていてもよい。ラッチのない編み機用針(例えばスライド針)の場合、既定の破断部分は、以下に説明するシャンクの第6の部分に位置するものであってもよい。スライド針は、スライド(フック閉鎖要素)用の案内手段を有しており、案内手段は、フックの先端から長手方向に間隔をあけて配置され、駆動部分に向かって長手方向に延びている。これらの案内手段は、フックの先端の下までは延びていない。その結果、フックの先端と案内手段との間には長手方向に沿って最小限の距離が存在する。シャンクの第6の部分は、フックの先端から、この最小限の距離の1.5倍から3倍まで、延びるものであってもよい。
【0017】
編み機用針は、シャンクの長手方向における針のフックが終端する端から第1の駆動部分(すなわち、第1のバット)の開始部(フックに近い側)までの長手方向における距離が、少なくとも75mmであってもよい。
【0018】
編み機用針は、ラッチがシャンクに軸支されている部分における最も高い点で、0.8mm~1.5mmの高さ(「胸高」)を有する、シャンクを有するものであってもよい。この高さは、高さ方向に測定される。編み機用針は、既定の破断部分が位置する部分において胸高の50%と70%の間の高さを有するシャンクを有するものであってもよい。
【0019】
編み機用針は、帯状材料から打ち抜かれたシャンクを有していてもよい。このシャンクは、その厚さが帯状の材料の厚さと一致する部分では、幅方向に0.3mm~0.6mmまたは0.3mm~0.7mmの厚さを有するものであってもよい。
【0020】
編み機用針は、シャンクの長手方向に対して直角な断面が縮小された既定の破断部分を有していてもよい。「長手方向に対して直角な」とは、特に、針の高さ方向xと幅方向yとで規定される面内であることをいう。
【0021】
編み機用針は、シャンクの断面が縮小された既定の破断部分を有していてもよい。この断面の縮小は、シャンクの高さ方向の低減によって達成される。この種の既定の破断部分は、パンチング工程の場合、同時に製造することができ、別の製造段階を必要としないという利点がある。したがって、既定の破断部分を経済的に製造することができる。シャンクの高さ方向の低減は、上方及び/または下方から行われるものであってもよい。しかし、シャンクに、シャンクまたは既定の破断部分の上側及び下側までには及ばない凹部(または複数の凹部)を設けることも考えられる。編み機用針は、断面の縮小が最大となる点で隣接するシャンクまたは隣接するシャンクの部分の高さまたは高さ寸法の最小で10%、最大で60%だけ低減された既定の破断部分を有していてもよい。したがって、既定の破断部分の最も細い点では、(針の長手方向に対して直角な面内で)40%~90%の断面積が残ることになる。特に、複数のノッチがそれぞれ異なる方向(例えば、上及び下)からシャンクに入り込んでいる場合には、断面積または高さの低減は、既定の破断部分の異なる小部分にわたって分散されるものであってもよい(上から20%、下から25%)。既定の破断部分の断面縮小箇所をノッチ状にすることで、駆動部分からフックを分離するために、比較的正確に定められた位置を得ることができる。既定の破断部分の位置には、応力の集中が見られる。加えて、あるいは代わりに、針の幅を低減させることも当然可能である。この場合、シャンクの高さを低くするために上述した手段と同等の手段を用いることができる。
【0022】
編み機用針は、高さ方向に、三角形状であり、60°~120°の開口角を有するシャンクの縮小部を有していてもよい。90°の角度が特に有利な場合がある。シャンクに形成された3つの角は丸みを帯びていてもよい。高さ方向の低減が小さい場合、丸みの半径は少なくとも0.02mmが有利であり、高さ方向の低減が大きい場合、丸みの半径は、0.35mmであっても、または、例えば0.4mmまたは0.5mmであっても、有利に構成することができる。また、高さの低減は、台形、段差、その他の幾何学的な形状で構成されるものであってもよい。上述した情報に鑑みれば、例えば後向き位置をとるラッチ上をループが滑り移動するときにループの張力を緩和するように機能する窪みと比べたときの相違が明らかになるであろう。この種の窪みは、ループの出入りを容易にするために、開口部の角度が大きくなり、平らになっている。対照的に、ほとんどの既定の破断部分は、定められた位置で定められた破断を誘発することを目的とする。この種の既定の破断部分の側面の開口角は、それに応じて小さくなっている。さらに、既定の破断部分にとって有利な特定の形状のために、この種の既定の破断部分は、ループ緩和用の窪みには適さない位置に配置することが推奨される。ループ緩和用の窪みは、ループが滑る位置に配置される。既定の破断部分は、その形状のため、ループを「捕捉」してしまい、編み工程を危険にさらす可能性がある。したがって、上述したように、既定の破断部分は、例えば、ラッチの後向き位置におけるラッチの先端の位置の後方に配置するのが有利である。既定の破断部分を針の後方部分に配置することが好ましいとするさらなる考慮事項は、梃子の作用である。ループ(ここでは特にノックオーバーされていないループ)がフックの内部に大きな力を伝達する場合、フックからの距離があると、この力が既定の破断部分に与える梃子の作用が増大する。
【0023】
編み機用針が有する既定の破断部分の材料は、シャンクの残りの部分を構成する部分よりも破断時の伸長が小さいものであってもよい。過負荷時の編み機用針の挙動は、既定の破断部分の(高さの低減または同様の手段に加えて、あるいはそれらの代わりに)この構成によって、選択的に制御することができる。材料が受ける塑性変形の程度の相違は、負荷が編み機用針の設計上の負荷を明らかに超えたときの選択的な破断のために抑制される。編み機用針は有利には鋼からなる。鋼の場合、硬度または微細構造を選択的に調整することにより、破断時の伸長に影響を与えることができる。例えば、既定の破断部分の微細構造は、選択的に脆く及び/または粗粒であってもよい。
【0024】
上述したように、針床やカムの破損は、細長い編み機用針を高速で使用する編み物システムで多く発生している。本明細書において、「針床」という用語は、編み物システムの中で編み動作時に針を案内する部分の総称として使用される。具体的には、丸編機の編み用シリンダー及びダイヤル、横編機の平面状の針床などが挙げられる。
【0025】
独国特許出願公開第3311361号及び独国特許出願公開第102014118217号には、高速の編み機の生産性をさらに向上させるための方法が記載されており、図面には、適切な編み機用針を備えた典型的な編み物システムの例が示されている。本発明は、特に、これらの刊行物に記載されている高速要求に適した編み機用針及び編み物システムの改良に取り組むものである。これらの2つの刊行物には、フックと第1のバットとの間に非常に長くて細いシャンクを有する編み針を備えた編み物システムが記載されている。これらの2つの刊行物によれば、この長くて細いシャンクの大部分は、針床の溝壁ではなく、シンカーによってそれぞれの針床内で横方向(針の幅方向)に案内される。上述した種類の編み物システムは、高い編み物性能と高度な精細さを同時に達成する。上述した2つの刊行物の内容は、少なくとも、使用される編み針の形状と、当該編み物システムにおける編み針とシンカーの配置に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本発明に従う編み物システムは、案内手段と少なくとも1つの溝底を備えた針床を含む。これらの案内手段及び溝底は、編み機用針を受け入れ、編み機用針を、その断続的な動きの間にその長手方向に沿って案内しかつ支持するように設定されている。シリンダー、ダイヤル、または例えば横編機用の平面状の針床の形をした針床が好適である。編み機用針は、針床によって溝中に受け入れられ、編み機用針の幅方向には溝壁によって案内され、編み機用針の負の高さ方向には溝底によって支持される。特に幅方向では、編み機用針は必ずしも全長にわたって案内されるわけではなく、編み機用針の後方部分でのみ案内される場合もある。その長さの他の部分では、編み機用針は他の編み具によって幅方向に案内されるものであってもよい(これは、例えば、独国特許出願公開第3311361号及び独国特許出願公開第102014118217号に従う編み物システムの場合である)。また、溝底での編み機用針の支持についても同様である。
【0027】
本発明に従う編み物システムは、さらに、針床に着座した編み機用針の少なくとも第1の駆動部分に力を伝達するための少なくとも1つのカム要素を含む。多くの場合、編み機用針のバットは、針床の溝から突出し、カム要素の経路型の溝(カム曲線)に受け入れられる。丸編機は、通常、複数のカム要素を有しており、各カム要素は、丸編機の針シリンダーが1回完全に回転する間に(結合要素の)針のバットが横切る距離の小部分を定める。編み機用針とカム要素の間の針の幅方向のこの相対的な動きの結果として、カム要素は、丸編機での編み動作中に、針をその長手方向に移動させる力を、針の駆動部分または針のバットに伝達する。
【0028】
本発明の対象は、多数の編み機用針を有する編み物システムを含み、これらの編み機用針のそれぞれは、その一部として以下の特徴を含む。
・ ループを形成するためのフックであって、シャンクの長手方向にシャンクを制限し、かつフックの先端で終わるフック、および、
・ フックからシャンクの長手方向に続く第1の駆動部分。
・
【0029】
本発明に従う編み物システムは、編み機用針の少なくとも1つが、フックを第1の駆動部分から分離するための既定の破断部分を有することを特徴とする。既定の破断部分は、シャンクの長手方向に延びるシャンクの第1の部分によって形成されている。既定の破断部分は、フックの先端と第1の駆動部分との間でシャンクの長手方向に延びるシャンクの第1の部分に全体が配置されていることを特徴とする。
【0030】
既定の破断部分のため、編み機用針に負の高さ方向に作用する例外的に大きな力は、フックを第1の駆動部分から分離させることになる。その結果、これらの力は、シャンクのカム要素のすぐ近くにある部分には伝達されないことになる。この手段により、衝突を契機とする針床及びカム要素の損傷が防止される、または少なくとも低減される。
【0031】
本発明に従う編み物システムは、針床の案内手段及び少なくとも1つの溝底が、次のように構成されるものであってもよい。この構成において、少なくとも1つのカム要素並びに少なくとも1つの編み機用針上の駆動部分の位置及び既定の破断部分の位置は、編み動作の間、少なくとも1つの編み機用針が少なくとも断続的に案内手段から突出して上昇される結果、案内手段が少なくとも断続的に少なくとも1つの編み機用針の既定の破断部分をもはや支持しないように調整されている。少なくとも編み機用針が上昇状態にあるときには、既定の破断部分は第1のカム要素の上方にある。このような特定の設定により、フックまたは編み機用針の支持されていない部分に異常に大きな力が作用した場合、システムの挙動を正確に制御することができる。このような大きな力は、フックから既定の破断部分までの比較的長いレバーにわたって作用し得る。既定の破断部分は、上昇した編み機用針の針床による支持が始まる位置にほぼ位置しているため、既定の破断部分でのまたは既定の破断部分中の厳密に定められた破断が起こる確率が非常に高い。また、これに関連して、既定の破断部分の位置がフック方向に前方すぎないことも重要である。そうでない(前方すぎる)場合には、梃子の作用により、編み機用針が再び針床に支持される点で、定められていない破断が生じる可能性があるからである。また、既定の破断部分が支持された領域内に完全にある場合には、針床の端部で定められてない破断が発生する可能性がある。例えば、ループがノックオーバーされずにフックに集まった場合、編地の取出し時に大きな力が発生することがある。このような場合、フックには、通常の取出し力を(例えば、2倍以上)上回る取出し力がすぐに印加される可能性がある。
【0032】
本明細書に従う針の使用は、独国特許出願公開第3311361号及び独国特許出願公開第102014118217号に記載されている種類の編み物システムで特に有利である。有利には、本発明の対象である編み物システムは、独国特許出願公開第3311361号及び独国特許出願公開第102014118217号の付加的な特性も有している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】
図3は、
図2と同様の編み機用針の別の実施形態の拡大図である。
【
図4】
図4は、編み機用針の別の実施形態の全体を示す図である。
【
図6】
図6は、
図5と同様の編み機用針の別の実施形態の拡大図である。
【
図7】
図7は、
図2の編み機用針の拡大図にラッチの閉位置並びに2つの断面図を加えた図である。
【
図8】
図8は、本発明に従う編み物システムを模式的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、編み機用針1の全体を示す図である。この図は縮尺通りではなく、また本発明に必須ではない詳細は省略されている。さらなる図もそれに応じて簡略化されている。明確にするために、編み機用針1上で定義される方向を示す座標系が付加され、編み機用針1の長手方向がzで、幅方向がyで、高さ方向がxで示されている。
図1では、フック2は、編み機用針1の長手方向zの左端に位置している。編み機用針1は、
図1において編み機用針1の長手方向zの右端から遠くない位置に、バット5(駆動部分33ともいう)を有している。バット5は、正の高さ方向xに沿って編み機用針1の上方に突出している。すべての図には、編み機用針1に設けられた1つのバット5のみが示されている。しかし、すべての実施形態において、編み機用針1がさらに右方に向かって延び、1つまたは複数の追加のバットを有することが考えられる。編み機用針1のシャンク3は、フック2とバット5の間に延びており、シャンク3が細長い形状を有することが明確に示されている。この実施形態では、編み機用針1のフック端側の開始部20から、第1のバット5のフック側の開始部19までの長さは、約78mmである。明確にするために、編み機用針1のシャンク3の長さに沿った3つの部分(10、11、13)が、波括弧で示されている。第1の部分10及び第2の部分11は、その右端が第1のバット5のフック側の開始部まで延びている。第1の部分10及び第2の部分11内に含まれる第3の部分13には、シャンク3に既定の破断点9が設けられている。この点及びさらなる詳細は、編み機用針1の左側部分の拡大図である
図2に、より明確に示されている。
【0035】
図2の拡大図には、特に、編み機用針1のフックの先端4とフック端側の先端部20が分かりやすく示されている。編み動作の間、ループ形成のための糸のループは、フックの先端4の下のフック2の内部に保持される。ラッチ6は、後向き位置8で示されており、このラッチ6もループ形成の役割を果たす。この位置では、ラッチの先端12は、長手方向zにおいて、バット5(駆動部分33ともいう)に向かうように最大に向き付けられた点に到達する。ラッチ6は、ピボット点14でシャンク3に軸支される。シャンク3は、既定の破断部分9を有しており、既定の破断部分9は、高さ方向xに沿ったシャンクの高さ又はシャンクの高さ寸法を上方から低減させるノッチまたは凹部を備えている。この凹部は三角形状であり、丸められた先端を有する。この三角形は、丸められた先端において、90°の角度(「開口角」)を囲んでいる。シャンク3の高さは、残りの断面積が最も小さくなった点で、約50%低減している。
【0036】
図3は、既定の破断部分9の別の実施形態を示すことを除いて、基本的に
図2に対応する。断面積の縮小の大きさは、
図2の実施形態に比べて小さい。既定の破断部分に形成された凹部の先端の丸みは、存在しないか、または、この図では表し得ないほど小さいものである。なお、各実施形態において、形成される凹部の先端は丸められるものであってもよい。また、シャンク3の上縁部において既定の破断部分9の左右に形成される角部も、全ての実施形態において丸められていてもよい。
【0037】
図4は、編み機用針1のさらなる実施形態の全体を示す図である。既定の破断部分9の別の構成を除いて、編み機用針1は、
図1の編み機用針1にほぼ対応する。さらに、第1の移行点28及び第2の移行点が示されており、また、シャンク3の第4の部分30及びシャンク3の第5の部分31が波括弧で示されている。シャンク3の高さ(高さ方向xの寸法)は、バット5から第1の移行点28までが最大である。第1の移行点28の後、シャンク3の高さは、シャンク3のフック2に向かって急激に低減し、中程度の高さになる。シャンク3の高さは、第2の移行点29の後、フック2に向かって再び低減する。シャンク3の第4の部分30は、編み機用針1の長手方向zに沿って、ラッチ6のピボット点14から第2の移行点29まで延びている。シャンク3の第5の部分31は、編み機用針1の長手方向zに沿って、後向き位置8にあるラッチ6の先端12から第2の移行点29まで延びている。シャンク3の最小の高さ、したがって既定の破断点9のための適切な位置は、これらの両方の部分で定められるものであってもよい。シャンクの第2の移行点29と第1の駆動部分33との間の部分は、シャンクの高さが大きいため、シャンクのこの部分は、既定の破断部分9のための最適な位置を提供するものではない。
【0038】
既定の破断部分9は、
図5の拡大図に分かりやすく示されている。
図5の編み機用針1は、既定の破断部分9の構成においてのみ、
図2及び
図3の編み機用針1と本質的に異なる。この既定の破断部分9は、シャンク3の高さを、高さ方向xに下方から低減させることによって形成されている。この「下方から」の低減は、他のすべての点において、
図2に示された「上方から」の低減と同一の構成である。編み機用針1のすべての実施形態において、シャンク径の低減は、常に上から、下から、または上と下から有利に実行することができる。その代わりに、またはそれと組み合わせて、幅方向yの低減も使用可能である。
図5には、さらに、側面25、z-x平面におけるシャンクの高さ寸法の高さ低減の形状26、及び高さ低減の開口角27が示されている。
【0039】
図6は、編み機用針1の前方領域の拡大図であり、この編み機用針1は、既定の破断部分9が実現されている方法を除いて、
図1から
図5に示す編み機用針1に基本的に対応している。この実施形態では、既定の破断部分9は、その断面積が既定の破断部分9を形成するために調整されていないシャンク3の断面によって形成されている。その代わり、既定の破断部分9の材料の特性が変更され(これは、既定の破断部分9におけるシャンク3のハッチングにより象徴的に示されている)、特に、シャンク3の隣接部分23、24よりも破断時の伸長が小さくなっている。既定の破断部分9における材料特性のこの種の調整は、断面積の縮小などの他の手段の代わりに、またはそれらの手段と組み合わせて、本発明のすべての実施形態で有利に使用することができる。
【0040】
図7は、基本的に
図2に対応している。明確にするために、
図7の編み機用針1のラッチ6は、その両極端の位置で示されている。すなわち、ラッチは、閉位置7と後向き位置8の両方で示されている。既定の破断部分に隣接部分23、24も示されている。
【0041】
さらに、
図7には、シャンク3の2つの位置に断面線A-A及びB-Bが示されている。関連する断面図は、
図7において編み機用針1の右側に配置されており、一方はシャンクの非縮小断面22を示し、他方はシャンクの縮小断面21を示している。これらの断面図には、背景に、第1のバット5、第1の移行点28、及び第2の移行点29が示されている。
【0042】
図8は、本発明に従う編み物システム15の針床16の溝を通る断面を示している。この図の切断線は、幅方向において針1の側壁と平行に、側壁のすぐ前に存在する。編み物システム15は、独国特許出願公開第3311361号及び独国特許出願公開第102014118217号に記載された編み物システムと同様のものである。図面は縮尺通りではなく、追加の編み具(特に、シンカー)などといった、編み工程に必須の構成要素は省略されている。上述したように、省略されたシンカーは、編み針1の長手方向zで溝壁17よりも前方にある部分において、編み針1をその幅方向yに案内する。したがって、針1に隣接するシンカーは、通常、針1の背後に部分的に見えることになる。編み機用針1は、針床16の案内手段17によって二次元的に案内される。編み機用針1は、高さ方向xには、針床16の溝32の底部(溝底)によって支持される。編み機用針1は、2つの溝壁17によって幅方向yに案内される。
図8では、針床16の1つの溝壁17のみが示されており、この溝壁17は、バット5が位置する編み機用針1の後方部分を幅方向yに案内する(上述したように、溝の前方で案内機能を引き継ぐシンカーは省略されている)。編み機用針1のバット5は、断面で示すカム要素18に係合する。編み機用針1は、針床16内の図示の位置にある針1の前方に向かって、特にフック2から既定の破断部分9まで、針床16によって高さ方向xに支持されていない。このような状況は、本発明に従う編み物システム15では、少なくとも、編み動作中に編み機用針1が最大限に上昇した場合に生じる。既定の破断は、針1が、針床16または他の編み機部品が既定の破断部分9または少なくともその前方の針のフック端部の大部分に対する支持機能をもはや保証しないような上昇位置にある場合に、特に起こりやすい。このことは、図示されている負荷位置において、フック2を有する針1の前部が折れることにより、力Fによる既定の破断が起こる可能性が高いため、なおさら当てはまる。この折れは、梃子の長さ(ここでは、フック2の既定の破断部分9からの距離)(梃子の作用)によって促進される。
【符号の説明】
【0043】
1:編み機用針、2:フック、3:シャンク、4:フックの先端、5:バット、6:ラッチ、7:閉位置、8:ラッチ6の後向き位置、9:ラッチ6の既定の破断部分、10:シャンク3の第1の部分、11:シャンク3の第2の部分、12:ラッチの先端、13:シャンク3の第3の部分、14:ラッチ6のピボット点、15:編み物システム、16:針床、17:案内手段、18:カム要素、19:第1のバット5のフック側の開始部、20:編み機用針1のフックエンド開始位置、21:シャンクの縮小断面、22:シャンクの断面、23:既定の破断部分9に隣接する部分、24:既定の破断部分9に隣接する部分、25:側面、26:z-x平面におけるシャンクの高さ寸法の高さ低減の形状、27:高さ低減の開口角、28:第1の移行点、29:第2の移行点、30:シャンク3の第4の部分、31:シャンク3の第5の部分、32:針床16の溝32の底部、33:駆動部分、F:力、x:高さ方向、y:幅方向、z:長手方向