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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】回転位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/52 20060101AFI20241125BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20241125BHJP
   B23Q 16/02 20060101ALI20241125BHJP
   F16H 1/12 20060101ALI20241125BHJP
   F16C 33/58 20060101ALI20241125BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20241125BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B23Q1/52
B23Q17/00 A
B23Q16/02 C
F16H1/12
F16C33/58
F16C19/38
F16C17/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021554824
(86)(22)【出願日】2020-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2020031647
(87)【国際公開番号】W WO2021090551
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2019203234
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 直幸
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-087416(JP,A)
【文献】特開2004-160642(JP,A)
【文献】特開2005-014210(JP,A)
【文献】特開平07-081747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/52
B23Q 17/00
B23Q 16/02
F16H 1/12
F16C 33/58
F16C 19/38
F16C 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
回転部材軸線を中心として回転可能な回転部材であって、その円周方向に沿って伝達機構が配置され、前記回転部材の少なくとも一部が前記ハウジング内に収容されている、回転部材と、
第2の回転部材軸線を中心として回転可能な第2の回転部材と、
前記ハウジングに設置され、円形の回転部材孔が設けられたセンサフランジと、
前記センサフランジに設置された少なくとも1つのセンサと
を備える回転位置決め装置であって、
前記回転部材の前記伝達機構と前記第2の回転部材との接触によって、前記回転部材及び前記第2の回転部材のうちの一方の回転が、前記回転部材及び前記第2の回転部材のうちの他方の回転を可能にし、
複数の目盛を有する目盛スケールが、前記回転部材の円周方向に沿って前記回転部材に一体として形成され、前記少なくとも1つのセンサは、前記複数の目盛に基づいて前記回転部材の回転による角度変化量を検出し、前記回転部材は、前記角度変化量に基づいて目標角度位置に位置決めされ
前記回転部材孔内に前記回転部材の少なくとも一部を収容すると、前記回転部材孔の中心軸線は、前記回転部材軸線と整列して、前記目盛スケールに対する前記少なくとも1つのセンサの位置が決定されるようになっており、
前記少なくとも1つのセンサが設置されている空間に潤滑剤が入り込まないように、前記少なくとも1つのセンサを前記伝達機構から隔離するために、前記センサフランジと前記回転部材との間の前記回転部材孔の中に、第1のシールが設けられている、回転位置決め装置。
【請求項2】
前記目盛スケールは、前記回転部材軸線に対して放射方向に又は前記回転部材軸線に対して平行方向に、前記回転部材に一体として形成されている、請求項1に記載の回転位置決め装置。
【請求項3】
前記センサフランジには、少なくとも1つの座部が設けられ、前記少なくとも1つのセンサの各々は、各センサの位置及び各センサと前記目盛との間の隙間を画定するようにその対応する座部に設置されている、請求項1又は2に記載の回転位置決め装置。
【請求項4】
前記ハウジングに設置されたシールフランジを更に備え、前記シールフランジと前記回転部材との間に、前記空間を外部から隔離するように、第2のシールが設けられている、請求項1~3の何れか一項に記載の回転位置決め装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの座部は、前記回転部材の円周方向に沿って設けられた2つ以上の座部であって、前記2つ以上の座部は、前記回転部材軸線からの距離が等しく、且つ隣接する座部間の距離が等しくなるように設けられ、前記少なくとも1つのセンサは、2つ以上のセンサであって、前記2つ以上のセンサの各々は、前記2つ以上の座部の何れかに設置されている、請求項3に記載の回転位置決め装置。
【請求項6】
前記回転位置決め装置は、前記ハウジングに対して前記回転部材の回転を支持するための軸受を更に備え、前記軸受の軌道面が、前記回転部材に一体として形成されている、請求項の何れか一項に記載の回転位置決め装置。
【請求項7】
前記目盛スケールは、前記ハウジング内に収容されている前記回転部材の部分に一体として形成されている、請求項の何れか一項に記載の回転位置決め装置。
【請求項8】
前記回転部材は出力軸であって、前記出力軸の端部には回転テーブルが設けられ、前記目盛スケールは、前記回転テーブルに隣接する前記出力軸の部分に一体として形成されている、請求項1~7の何れか一項に記載の回転位置決め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転角度を目標角度位置に高精度に位置決めすることが可能である回転位置決め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転位置決め装置は、一般的に、モータ等の駆動力が入力される入力軸と、工作機械の加工ワーク等を積載するための回転テーブルが取り付けられる出力軸を有し、入力軸や出力軸に取り付けられたエンコーダ等の角度検出器によって、回転テーブルの回転による角度変化量を検出し、検出された角度変化量を元にドライバ及びモータを制御することによって、回転テーブルを回転させて目標角度位置に位置決めする。
【0003】
特許文献1には、互いに立体交差する2本の回転軸線の周りにそれぞれ回転可能に設けられ、互いに噛み合わされたローラギヤとローラギヤカムとを含むローラタレットカムインデックス装置が開示されている。このローラタレットカムインデックス装置においては、回転角度検出器であるエンコーダを、アダプタによってハウジングに固定し、エンコーダの入力軸を、カップリングによってローラギヤのローラギヤ軸に相対回転不能に接続し、ローラギヤ軸の回転をエンコーダによって検出する。エンコーダによる検出値は、ローラギヤの回転停止位置、すなわち割出位置を表す。
【0004】
特許文献2には、ワークが搭載される円テーブルと、円テーブルを支持する回転軸と、回転軸を回転可能に支持するフレームと、フレームと回転軸との間に収容されるモータとを備える回転テーブル装置が開示されている。モータを駆動させると、フレームに対して円テーブルが回転軸と一緒に、回転軸の軸線を中心にして回転して、その角度位置が割り出される。回転軸は、2つの軸部材から成り、両軸部材をそれらの軸線を一致させた状態で組み合わせ、ネジ部材によって連結した構成である。フレームと回転軸との間に環状の空間部が存在し、空間部に、モータ、スラスト軸受、ラジアル軸受、回転検出器が設けられる。回転検出器は、回転軸の回転量を検出するためのエンコーダと、エンコーダに検出される被検出子とを備え、回転軸の一方の軸部材に別途設けられた被検出子を、フレームに設けられたエンコーダが検出し、エンコーダからの検出信号に基づいて回転軸の回転量が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-158293号公報
【文献】特開2010-99789号公報
【文献】特開2006-98392号公報
【文献】特開2011-99802号公報
【文献】特開2011-99804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のローラタレットカムインデックス装置においては、エンコーダを外付けしているために、エンコーダの体積分、ローラタレットカムインデックス装置のサイズが大型化し、更には高コスト化に繋がるという問題点がある。また、エンコーダを外付けにする場合、エンコーダの入力軸とローラギヤ軸とを接続する際の組立時に、エンコーダの入力軸の回転軸線とローラギヤ軸の回転軸線との間のオフセット、いわゆる心ズレが生じ、この心ズレによる組立誤差の影響を受けることによって、エンコーダによって検出されたローラギヤの角度変化量に誤差が生じ、更にはローラギヤの目標角度位置にも誤差が生じるという問題点がある。また、ローラギヤは通常、中空となっているが、エンコーダを外付けにする場合、構造上、中空の一方の開口が塞がれてしまうので、中空を介してケーブル、油圧部品、等を貫通することができないという問題点がある。
【0007】
特許文献2の回転テーブル装置においては、回転軸が2つの軸部材から成り、両軸部材をそれらの軸線を一致させた状態で組み合わせているものの、引用文献1と同様に、2つの軸部材を組み合わせる際の組立時に心ズレが生じ、また、回転軸の一方の軸部材に被検出子を別途設ける際の組立時にも心ズレが生じ、これらの心ズレによる組立誤差の影響を受けることによって、回転検出器によって検出された回転軸の角度変化量に誤差が生じ、更には回転軸の目標角度位置にも誤差が生じるという問題点がある。また、軸受の軌道面が回転軸に別途設けられており、軌道面を別途設ける際の組立時における組立誤差によって、回転検出器によって検出された回転軸の角度変化量に誤差が生じ、更には回転軸の目標角度位置にも誤差が生じるという問題点がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、回転角度を目標角度位置に高精度に位置決めすることが可能である回転位置決め装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点によれば、回転位置決め装置が、ハウジングと、回転部材軸線を中心として回転可能な回転部材であって、回転部材の少なくとも一部がハウジング内に収容されている、回転部材と、ハウジングに設置された少なくとも1つのセンサとを備え、複数の目盛を有する目盛スケールが、回転部材の円周方向に沿って回転部材に一体として形成され、少なくとも1つのセンサが、複数の目盛に基づいて回転部材の回転による角度変化量を検出し、回転部材が、角度変化量に基づいて目標角度位置に位置決めされる。
【0010】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、目盛スケールが、回転部材軸線に対して放射方向に又は回転部材軸線に対して平行方向に、回転部材に一体として形成されている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、ハウジングには、少なくとも1つの座部が設けられ、少なくとも1つのセンサの各々が、各センサの位置及び各センサと目盛との間の隙間を画定するようにその対応する座部に設置されている。
【0012】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、少なくとも1つの座部が、センサフランジを介してハウジングに設けられる。
【0013】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、センサフランジには、回転部材の少なくとも一部を通すための回転部材孔が設けられ、回転部材孔の中心軸線が回転部材軸線と整列している。
【0014】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、少なくとも1つの座部が、回転部材の円周方向に沿って設けられた2つ以上の座部であって、2つ以上の座部が、回転部材軸線からの距離が等しく、且つ隣接する座部間の距離が等しくなるように設けられ、少なくとも1つのセンサが、2つ以上のセンサであって、2つ以上のセンサの各々が、2つ以上の座部の何れかに設置されている。
【0015】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置が、ハウジングに対して回転部材の回転を支持するための軸受を更に備え、軸受の軌道面が、回転部材に一体として形成されている。
【0016】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、目盛スケールが、ハウジング内に収容されている回転部材の部分に一体として形成されている。
【0017】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、回転部材が出力軸であって、出力軸の端部には回転テーブルが設けられ、目盛スケールが、回転テーブルに隣接する出力軸の部分に一体として形成されている。
【0018】
本発明の一具体例によれば、回転位置決め装置において、回転部材が入力軸であって、回転位置決め装置が、出力軸線を中心として回転可能な出力軸であって、出力軸の円周方向に沿って伝達機構が設置された出力軸を更に備え、出力軸が、入力軸が伝達機構に接触することによって入力軸の回転に伴って回転することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、回転位置決め装置は、高精度に回転部材の角度変化量を検出することができ、更には回転部材を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。
【0020】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としての、目盛スケールが回転部材軸線に対して放射方向に一体として形成される、回転位置決め装置の断面図である。
図2】本発明の別の実施形態としての、目盛スケールが回転部材軸線に対して平行方向に一体として形成される、回転位置決め装置の断面図である。
図3】本発明の別の実施形態としての、目盛スケールが回転部材軸線に対して平行方向に一体として形成される、回転位置決め装置の一部断面図である。
図4A図1の実施形態の回転位置決め装置の斜視図である。
図4B図1の実施形態の回転位置決め装置の内部の斜視図である。
図4C図1の実施形態の回転位置決め装置におけるセンサの斜視図である。
図4D図1の実施形態の回転位置決め装置におけるセンサフランジの上方及び下方から見た斜視図である。
図4E図1の実施形態の回転位置決め装置におけるセンサフランジの底面図である。
図5A図2の実施形態の回転位置決め装置の斜視図である。
図5B図2の実施形態の回転位置決め装置の内部の斜視図である。
図5C図2の実施形態の回転位置決め装置におけるセンサの斜視図である。
図5D図2の実施形態の回転位置決め装置におけるセンサフランジの上方及び下方から見た斜視図である。
図5E図2の実施形態の回転位置決め装置におけるセンサフランジの底面図である。
図6A】本発明の別の実施形態としての、目盛スケールが回転部材軸線に対して放射方向に一体として形成される、回転位置決め装置の内部の一部斜視図である。
図6B】本発明の別の実施形態としての、目盛スケールが回転部材軸線に対して平行方向に一体として形成される、回転位置決め装置の内部の一部斜視図である。
図7A図2の実施形態の回転位置決め装置の内部の斜視図である。
図7B図2の実施形態の回転位置決め装置の一部断面図である。
図8A従来技術による指令位置に対する位置決め精度を示す図である。
図8B本発明による指令位置に対する位置決め精度を示す図である。
図9A】本発明による回転位置決め装置の断面図である。
図9B】従来技術による回転位置決め装置の断面図である。
図10A】一自己校正機能付き角度検出器の概略図である。
図10B図10Aの自己校正機能付き角度検出器の各センサによる目盛番号に対する位置決め精度を示す図である。
図10C図10Aの自己校正機能付き角度検出器から算出された目盛番号に対する自己校正値を示す図である。
図10D】別の自己校正機能付き角度検出器の概略図である。
図11A】本発明の一実施形態としての位置決め制御方法の図である。
図11B】本発明の別の実施形態としての位置決め制御方法の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0023】
まず図1図3を参照して、本発明による幾つかの実施形態としての回転位置決め装置100について説明する。図1図3は、回転位置決め装置100の断面図を示す。回転位置決め装置100は、ハウジング101と、回転部材軸線103を中心として回転可能な回転部材102と、ハウジング101に設置されている、角度検出器としての少なくとも1つのセンサ104とを備える。図1においては、回転部材102は、全体がハウジング101内に収容されているが、回転部材102の少なくとも一部がハウジング101内に収容されていてもよい。複数の目盛を有する目盛スケール105が、回転部材102の円周方向に沿って回転部材102に一体として形成される。
【0024】
目盛スケール105の目盛は、回転部材102の円周方向に沿って、図1に示すように、回転部材軸線103に対して放射方向に回転部材102に一体として形成されてもよく、又は図2に示すように、回転部材軸線103に対して平行方向に回転部材102に一体として形成されてもよい。目盛は、歯車状に回転部材102に一体として形成されたものであってもよく、又は線状に回転部材102を刻んだものであってもよい。また、目盛は、視覚的に認識できるものだけではなく、目盛スケール105における所定の位置間隔を1目盛分の間隔としてセンサ104に対して読み取らせることができるものであればよい。目盛スケール105は、回転部材102のうちの何れの部分の円周方向に沿って、回転部材102に一体として形成されてもよい。例えば、目盛スケール105は、図1図2に示すように、回転部材102の下側の部分に形成されてもよく、図3に示すように、回転部材102の上側の部分に形成されてもよい。また、目盛スケール105は、図1図2に示すように、ハウジング101内にある回転部材102の部分に形成されてもよく、図3に示すように、ハウジング101外にある回転部材102の部分に形成されてもよい。
【0025】
回転位置決め装置100において回転部材102が出力軸である場合には、図1図3に示すように、出力軸としての回転部材102の端部には回転テーブル113が設けられる。回転テーブル113は、回転部材102が回転部材軸線103を中心として回転すると、それに伴って回転する。目盛スケール105は、図1図2に示すように、ハウジング101内に収容されている出力軸としての回転部材102の部分に一体として形成されてもよい。目盛スケール105は、回転部材102の下側の部分に形成されてもよく、回転部材102の上側の部分に形成されてもよい。出力軸としての回転部材102に目盛スケール105を一体として形成することによって、回転テーブル113の角度変化量を高精度に検出することができ、そして回転テーブル113を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。なお、図1図3に示すように、回転部材102には伝達機構114が設けられてもよく、入力軸からの駆動力を、伝達機構114を介して伝達して、出力軸としての回転部材102を回転させてもよい。また、回転部材102には伝達機構114が設けられていなくてもよく、回転部材102にモータ等の駆動装置を直接接続して、回転部材102を回転させてもよい。
【0026】
目盛スケール105は、回転テーブル113に隣接する出力軸としての回転部材102の部分に一体として形成されてもよい。例えば、目盛スケール105は、図3に示すように、ハウジング101と回転テーブル113との間の出力軸としての回転部材102の部分に一体として形成されてもよい。目盛スケール105を回転テーブル113に隣接するように出力軸としての回転部材102に一体として形成することによって、更に回転テーブル113の角度変化量を高精度に検出することができ、そして回転テーブル113を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。
【0027】
センサ104は、目盛スケール105の目盛を読み取ることができれば特に原理は問われない。センサ104としては、例えば、光学式センサ、磁気式センサ、コイル、等がある。例えば、センサ104として光学式センサを設置する場合には、光の反射状態や透過状態を変化させるために、線状に回転部材102を刻んだものを目盛として回転部材102に一体として形成し、センサ104として磁気式センサを設置する場合には、磁極を変化させるために、歯車状に回転部材102に構成されたものを目盛として回転部材102に一体として形成してもよい。センサ104が、回転部材102の円周方向に沿って回転部材102に一体として形成された複数の目盛を有する目盛スケール105を読み取ることによって、複数の目盛に基づいて、回転部材102の回転による角度変化量が検出される。このように、回転部材102に目盛スケール105を一体として形成することによって、目盛スケール105による心ズレの影響を小さくすることができ、回転位置決め装置100は、高精度に回転部材102の角度変化量を検出することができ、そして回転部材102を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。また、回転位置決め装置100のコンパクト化と部品点数削減を実現し、コストも低減することができる。
【0028】
ハウジング101には、少なくとも1つのセンサ104を設置するための少なくとも1つの座部106が設けられる。ハウジング101に2つ以上の座部106が設けられる場合には、各座部106は、回転部材102の円周方向に沿って設けられ、各座部106は、回転部材102の回転部材軸線103からの距離が等しく、且つ隣接する座部106間の距離が等しくなるように設けられる。各センサ104は、2つ以上の座部106の何れかに設置される。なお、全ての座部106にセンサ104を設置しなくてもよく、任意の座部106にのみセンサ104を設置してもよい。各センサ104はその対応する座部106に設置されて、回転部材102に対する各センサ104の位置が画定され、各センサ104と目盛スケール105の目盛との間の隙間107(P)が画定される。座部106によって、隙間107(P)が保証され、また、回転部材102の回転部材軸線103からの各センサ104の距離が決定される。2つの以上のセンサ104が設置される場合には隣接する2つのセンサ104間の距離が決定され、各センサ104が目盛スケール105の目盛を読み取るための位置(Q)が保証される。これによって、回転部材102の回転部材軸線103に対して、センサ104及び目盛スケール105が位置決めされており、回転位置決め装置100は、高精度に回転部材102の角度変化量を検出することができ、そして回転部材102を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。
【0029】
回転位置決め装置100は、ハウジング101に対して回転部材102の回転を支持するための軸受111を更に備えてもよい。軸受111の軌道面112は、図1図3に示すように、回転部材102に一体として形成されてもよい。これによって、回転部材102の回転部材軸線103に対して、センサ104、目盛スケール105、及び軸受111が位置決めされており、回転位置決め装置100は、高精度に回転部材102の角度変化量を検出することができ、そして回転部材102を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。また、軌道面112に対応するハウジング101の部分の内径(D1)の中心軸線は、図1に示すように、回転部材102の回転部材軸線103と整列するようになっている。なお、図1図3においては、軸受111としてラジアル軸受111a、第1のスラスト軸受111b、及び第2のスラスト軸受111cが設けられているが、軸受の形状はこれに限定されるものではなく、軸受111の軌道面112が、回転部材102に一体として形成されていればよい。
【0030】
図4A図4Eは、図1の実施形態の回転位置決め装置100に関連し、回転部材102を出力軸とし、出力軸としての回転部材102の端部には回転テーブル113が設けられる。複数の略等間隔の目盛を有する目盛スケール105が、回転部材102の円周方向に沿って、回転部材軸線103に対して放射方向に回転部材102に一体として形成される。また、回転位置決め装置100は、第2の回転部材軸線120を中心として回転可能な第2の回転部材119を更に備えてもよい。図4Bの回転位置決め装置100においては、回転部材102を出力軸とし、第2の回転部材119を入力軸とするローラギヤカム機構が採用され、第2の回転部材119は、スクリュー形状のカムリブを有する、第2の回転部材軸線120を中心として回転可能なカムであって、回転部材102は、第2の回転部材軸線120に直交する回転部材軸線103を中心として回転可能である。回転部材102には、その円周方向に沿って、伝達機構114としての複数の軸受が配置される。第2の回転部材119にはモータ121が接続され、モータ121が駆動して第2の回転部材119を第2の回転部材軸線120を中心として回転させることによって、カムの入力トルクを伝達機構114としての複数の軸受を介して回転部材102に伝達して、回転部材軸線103を中心として回転部材102を回転させる。伝達機構114としての複数の軸受の各々は、第2の回転部材119のカムリブに対して転がり接触してもよく、ローラフォロア又はカムフォロアであってもよい。また、伝達機構114としての複数の軸受の各々は、軸部材、軸部材の外周面に沿って回転可能な外輪部、等を備え、軸部材と外輪部との間にころ等を含む転がり接触の軸受であってもよく、ころ等を含まない滑り接触の軸受であってもよい。この場合、軸部材が、回転部材102に直接嵌合されてもよい。
【0031】
図4Bにおいては、入力軸としての第2の回転部材119は鼓形カムであるが、円筒形カム(cylindrical cam、barrel cam)、太鼓形カム(globoidal cam)であってもよい。また、入力軸としての第2の回転部材119と出力軸としての回転部材102とは外接する位置関係にあるが、入力軸としての第2の回転部材119のカムの形状によって、内接する位置関係にあってもよい。また、図4Bの回転位置決め装置100においてはローラギヤカム機構が採用されているが、第2の回転部材119の入力トルクを回転部材102に伝達機構114を介して伝達することができるものであればよく、例えば、バレルカム機構が採用されてもよいし、歯車機構が採用されてもよい。
【0032】
少なくとも1つの座部106は、図4D図4Eに示すセンサフランジ108を介してハウジング101に設けられてもよい。すなわち、センサ104は、センサフランジ108に設けられた座部106を介してハウジング101に設置される。図4Cに、センサフランジ108の座部106に設置するためのセンサ104の形状を示す。センサフランジ108には、回転部材102の少なくとも一部を通すための回転部材孔109が設けられる。回転部材孔109の中心軸線110は、図1に示すように、回転部材102の回転部材軸線103と整列するようになっている。そして、センサフランジ108に対応するハウジング101の部分の内径(D2)の中心軸線もまた、図1に示すように、回転部材102の回転部材軸線103と整列するようになっており、その結果、回転部材孔109の中心軸線110とも整列するようになっている。センサフランジ108を介してセンサ104をハウジング101に設置することによって、センサフランジ108によってセンサ104の位置が決定され、回転位置決め装置100の組立後であっても、センサ104の位置を調整することが容易になる。センサフランジ108は、ハウジング101にセンサフランジ108を取り付けるためのセンサフランジ108の取付け面から、センサフランジ108に設置されたセンサ104までの距離(A)を画定し、隙間107(P)を保証する。また、センサフランジ108は、回転部材孔109の中心軸線110からの座部106の距離(B)を画定し、回転部材孔109の円周方向の座部106の位置(C)を画定し、センサ104が目盛スケール105の目盛を読み取るための位置(Q)を保証する。また、センサフランジ108には、ケーブル孔118が設けられてもよく、ケーブル孔118を介してケーブルをセンサ104に接続して、センサ104によって検出された回転部材102の回転による角度変化量に関する信号を受け取れるようにしてもよい。
【0033】
図1図2に示すように、ハウジング101にはシールフランジ115が設けられてもよく、センサフランジ108とシールフランジ115とによって、それらの間にセンサ・ケーブル設置空間117が設けられてもよい。回転部材102とセンサフランジ108との間にシール116を設けて、潤滑剤がセンサ・ケーブル設置空間117に入り込まないようにしてもよく、また、回転部材102とシールフランジ115との間にシール116を設けて、センサ・ケーブル設置空間117を外部空間から隔離してもよい。
【0034】
図5A図5Eは、図2の実施形態の回転位置決め装置100に関連し、概ね図4A図4Eに同じであるが、図5Bに示すように、複数の略等間隔の目盛を有する目盛スケール105が、回転部材102の円周方向に沿って、回転部材軸線103に対して平行方向に回転部材102に一体として形成される点において相違する。また、形成される目盛スケール105に従って、図5D図5Eに示すように、センサフランジ108の形状は変更され、図5Cに示すように、センサ104の形状は変更される。
【0035】
回転位置決め装置100においては、工作機械の加工ワーク等を積載するための回転テーブル113の回転による角度変化量を検出することができればよいので、図4図5に示す入力軸としての第2の回転部材119に目盛スケール105を一体として形成してもよい。この場合には、図6A図6Bに示すように、回転位置決め装置100は、ハウジング101と、第2の回転部材軸線120を中心として回転可能な第2の回転部材119と、ハウジング101に設置されている、角度検出器としての少なくとも1つのセンサ104とを備える。複数の目盛を有する目盛スケール105が、第2の回転部材119の円周方向に沿って第2の回転部材119に一体として形成される。目盛スケール105の目盛は、第2の回転部材119の円周方向に沿って、図6Aに示すように、第2の回転部材軸線120に対して放射方向に第2の回転部材119に一体として形成されてもよく、又は図6Bに示すように、第2の回転部材軸線120に対して平行方向に第2の回転部材119に一体として形成されてもよい。回転位置決め装置100は、回転部材軸線103を中心として回転可能な出力軸としての回転部材102を更に備え、出力軸としての回転部材102には、回転部材102の円周方向に沿って伝達機構114が設置され、出力軸としての回転部材102は、入力軸としての第2の回転部材119が伝達機構114に接触することによって第2の回転部材119の回転に伴って回転することができる。なお、この場合、回転部材102に目盛スケール105を必ずしも形成する必要はなく、また回転部材102と第2の回転部材119との両方に目盛スケール105を形成してもよい。
【0036】
このように、入力軸に目盛スケール105を一体として形成することによって、回転位置決め装置100のサイズを小さくすることができる。また、入力軸と出力軸との間の角度伝達精度がよい場合には、出力軸に角度検出器を設置するより低精度にすることができる。例えば、入力軸と出力軸との間の減速比を16とし、出力軸の目標位置決め精度を22bit(360°/222)とした場合には、出力軸に角度検出器を設置する場合には直接22bitの精度が必要となるが、入力軸に角度検出器を設置する場合には4bit分(16=2)低精度、すなわち18bitでも同等の精度を実現することができ、コストを低減することができる。
【0037】
図7A図7Bに、図2の実施形態の回転位置決め装置100の内部の拡大図を示す。用途に応じて、回転位置決め装置100のサイズは変更されるが、何れのサイズであっても、同様に回転部材102に目盛スケール105を一体として形成し、回転部材102の円周方向に沿ってセンサ104を設置するだけであって、サイズに制限されない回転位置決め装置100を実現することができる。
【0038】
図8に、回転部材102と目盛スケール105との間に心ズレがない場合の指令位置に対する位置決め精度の例を示し、図8に、回転部材102と目盛スケール105との間に心ズレがある場合の指令位置に対する位置決め精度の例を示す。回転部材102に目盛スケール105を一体として形成することによって、出力軸としての回転部材102の目標角度位置である指令位置に対して位置決め精度が、最大約800arcsecから最大約200arcsecに、約600arcsec改善した具体例である。
【0039】
図9Aに、目盛スケール105を、ハウジング101内に収容されている回転部材102の部分に一体として形成し、ハウジング101内のセンサ・ケーブル設置空間117にセンサ104を設置した場合の回転位置決め装置100の断面図を示す。図9Bに、角度検出器が外付けされている場合の回転位置決め装置を示す。図9Bの回転位置決め装置においては、角度検出器としての外付けエンコーダ122は、取り付けベース123を介してハウジングに固定され、エンコーダカラー124及び延長フランジ125を介して出力軸に嵌め合い軸126が接続される。一方、図9Aの回転位置決め装置100においては、従来から構成上デッドスペースとなっていた空間に、センサ104が設置され、目盛スケール105が形成されることから、従来と比較して回転位置決め装置100をコンパクト化することができ、更には部品点数削減を実現し、コストも低減することができる。
【0040】
回転位置決め装置100は、角度検出器として、特許文献3~5に開示されているような自己校正機能付き角度検出器を採用してもよい。図10Aに示すような1つの自己校正機能付き角度検出器によれば、その構成上、複数のセンサ104が、回転部材102の円周方向に沿って配置され、複数のセンサ104の各々が、回転部材102の円周方向に沿って回転部材軸線103に対して放射方向に回転部材102に一体として形成された複数の目盛を有する目盛スケール105を読み取ることによって、複数の目盛に基づいて、回転部材102の回転による角度変化量が検出される。図10Bに、複数のセンサ104の各々によって検出された角度変化量から算出された目盛番号に対する位置決め精度を示す。複数のセンサ104の各々によって検出された角度変化量に基づいて、図10Cに示す角度誤差を除去する校正曲線が算出される。そして、代表となる1つのセンサ104の角度変化量からこの校正曲線による角度誤差を差し引くことによって、回転テーブル113の回転による真の角度変化量を算出することができる。このように、自己校正機能付き角度検出器を採用することによって、回転テーブル113の角度変化量を高精度に検出することができ、そして回転テーブル113を目標角度位置に高精度に位置決めすることができる。なお、図10Aではセンサの数は8つであるが、2つ以上であればよい。
【0041】
また、図10Dに示すような別の自己校正機能付き角度検出器によれば、その構成上、複数のセンサ104が、回転部材102の円周方向に沿って配置され、複数のセンサ104の各々が、回転部材102の円周方向に沿って回転部材軸線103に対して平行方向に回転部材102に一体として形成された複数の目盛を有する目盛スケール105を読み取ることによって、複数の目盛に基づいて、回転部材102の回転による角度変化量が検出される。図10Dに示すような自己校正機能付き角度検出器においても、図10B図10Cと同様の結果を得ることができる。なお、図10Dではセンサの数は5つであるが、2つ以上であればよい。
【0042】
図11Aに、出力軸としての回転部材102に一体として目盛スケール105が形成された回転位置決め装置100による位置決め制御方法の例を示す。図11Bに、入力軸としての第2の回転部材119に一体として目盛スケール105が形成された回転位置決め装置100による位置決め制御方法の例を示す。回転位置決め装置100においては、入力軸が矢印のように回転すると、入力軸の回転角度が伝達されて出力軸が矢印のように回転し、それに伴って回転テーブル113も回転する。角度検出器としてのセンサ104は、目盛スケール105の複数の目盛に基づいて、出力軸又は入力軸の回転による角度変化量を検出し、角度変化量は、モータ121を駆動するコントローラ又はドライバ127に、回転テーブル113の位置決めのための参照角度として通信される。コントローラ又はドライバ127は、目標角度位置と参照角度との間の差に応じてモータ121を制御し、回転テーブル113を目標角度位置に高精度に位置決めする。
【0043】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0044】
100 回転位置決め装置
101 ハウジング
102 回転部材
103 回転部材軸線
104 センサ
105 目盛スケール
106 座部
107 隙間
108 センサフランジ
109 回転部材孔
110 中心軸線
111 軸受
111a ラジアル軸受
111b 第1のスラスト軸受
111c 第2のスラスト軸受
112 軌道面
113 回転テーブル
114 伝達機構
115 シールフランジ
116 シール
117 センサ・ケーブル設置空間
118 ケーブル孔
119 第2の回転部材
120 第2の回転部材軸線
121 モータ
122 外付けエンコーダ
123 取り付けベース
124 エンコーダカラー
125 延長フランジ
126 嵌め合い軸
127 コントローラ又はドライバ
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B