(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】ペンダントイミダゾール官能基を担持するグラフト化ポリマー
(51)【国際特許分類】
C08C 19/22 20060101AFI20241125BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
C08C19/22
C08L15/00
(21)【出願番号】P 2021561025
(86)(22)【出願日】2020-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020066121
(87)【国際公開番号】W WO2020249631
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-バティスト ディ ドミニク フランソワ
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-535744(JP,A)
【文献】特表2016-535807(JP,A)
【文献】特表2017-501240(JP,A)
【文献】特開2015-044929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0016349(US,A1)
【文献】国際公開第2020/249623(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-146/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエンエラストマー鎖の少なくとも1つの不飽和に少なくとも1種の下記の式(I)の化合物をグラフトさせることによって得られる変性ジエンエラストマー
【化1】
(式中:
- Qは、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を表し;
- Aは、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し、前記2価のヘテロ芳香環は、フラン-ジイル、チオフェン-ジイル、またはピロール-ジイルであり、および前記脂肪族炭化水素ベース鎖は1個もしくは複数個のヘテロ原子を鎖の中に有していてもよい;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成してもよい)。
【請求項2】
式(I)の化合物のモルグラフト化度が、0.01%~15%の範囲内である、請求項1記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項3】
Qが、下記の式(II)、(III)または(IV)の基である、請求項1または2記載の変性ジエンエラストマー
【化2】
(式中:
- 符号
*は、QのAへの連結を表し;
- R
2およびR
4は、互いに独立して、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【請求項4】
式(I)の化合物が、下記の式(IIa)の化合物から選ばれる、請求項3記載の変性ジエンエラストマー
【化3】
(式中:
- Aは、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し、前記2価のヘテロ芳香環は、フラン-ジイル、チオフェン-ジイル、またはピロール-ジイルであり、および前記脂肪族炭化水素ベース鎖は1個もしくは複数個のヘテロ原子を鎖の中に有していてもよい;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【請求項5】
Aが、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
24脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい5~10個の原子から形成された2価のヘテロ芳香環であり、前記5~10個の原子から形成された2価のヘテロ芳香環は、フラン-ジイル、チオフェン-ジイル、またはピロール-ジイルであり、および前記C
1-C
24脂肪族炭化水素ベース鎖は1個もしくは複数個のヘテロ原子を鎖の中に有していてもよい、請求項1~4のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項6】
式(IIa)の化合物が、下記の式(IIb)の化合物から選ばれる、請求項
4記載の変性ジエンエラストマー
【化4】
(式中:
- Xは、イオウ原子、酸素原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【請求項7】
R
2が水素原子であり、R
3がC
1-C
20アルキルおよびC
6-C
20アリールから選ばれる、請求項3
、4または6のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項8】
Eが、1個もしくは複数個の窒素、イオウまたは酸素原子を鎖の中に有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖の飽和脂肪族C
1-C
24炭化水素ベース鎖から選ばれる、請求項1~7のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項9】
Eが、基-R-、-NHR-、-OR-および-SR-(ここで、Rは直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
24アルキレンである)から選ばれる、請求項1~8のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項10】
YおよびZが、同一または異なるものであって、各々、水素原子または直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
24アルキルを表し、YとZがこれらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環を形成してもよい、請求項1~9のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項11】
YおよびZが、水素原子である、請求項1~10のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項12】
R
1が、水素原子またはC
1-C
6アルキルである、請求項1~11のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー。
【請求項13】
式(I)の化合物が、下記の式(VIII)の化合物である、請求項1~12のいずれか1項記載の変性ジエンエラストマー
【化5】
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項記載の少なくとも1種の変性ジエンエラストマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
I-技術分野
本発明は、ヘテロ芳香環とイミダゾール官能基とを含む1,3-双極性化合物をグラフトさせることによって官能化された新規なポリマーに関する。本発明はまた、このようなポリマーを得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
II-技術的背景
ポリマーの構造を変性すること、例えばそのグラフト化による官能化は、とりわけ、組成物中のポリマーと充填剤を接合することを望む場合に探求される。この変性は、例えば、高分子マトリックス中での充填剤の分散を改善させることができ、従ってより均質な材料を得ることを可能にする。その組成物の性質は、最終的に改善される。
ある種の充填剤、例えばカーボンブラックまたはシリカのような補強用充填剤の場合、前記充填剤のより良好な分散は、一般に、組成物のヒステリシスの低下によって反映されるであろう。そのような性質は、例えば、タイヤ用途を意図するゴム組成物において特に探求される。具体的には、ゴム組成物のヒステリシスの低下は、タイヤの転がり抵抗の低減、従ってこのようなタイヤで運転する車両の燃費の削減に対して有利である。
ヒステリシスの低下は、多くの場合、硬化状態のゴム組成物における剛性の低下を伴い、ある場合には、その組成物を意図する使用にとって不適切なものにし得ることが知られている。
従って、硬化状態のゴム組成物の剛性の過度の低下を引き起こすことのない補強用充填剤の分散を促進する利用可能なポリマーを有することが望ましい。
【0003】
式Q-A-B(ここで、基Qは少なくとも1個の窒素原子を含有する双極子を含み、Aは芳香族であってもなくてもよい2価の基であり、Bはイミダゾール官能基である)の化合物でグラフトさせるエラストマーは、WO 2015/059269 A1号から公知である。このグラフトエラストマーがゴム組成物において補強用充填剤と混合される場合、このゴム組成物の硬化状態での剛性とヒステリシスの間の妥協点はグラフトエラストマーを含んでいないゴム組成物に対して改善される。このように、これらのグラフトエラストマーは、特に有利である。
出願人は、その研究を続けて、少なくとも1個の窒素原子を含有する双極子を含みかつイミダゾール官能基を担持する化合物でグラフトされたポリマーの製造を改善することを探求した。
多数の試験の後、出願人は、特定の1,3-双極子化合物ファミリーを使用することによって先行技術の化合物に対して改善されたグラフト収率でかつより急速にペンダントイミダゾール官能基を担持するグラフトポリマーを得ることができることを発見した。
【発明の概要】
【0004】
III-発明の概要
従って、本発明の1つの主題は、最初のポリマー鎖の少なくとも1つの不飽和に少なくとも1種の式(I)の化合物をグラフトさせることによって得られる変性ポリマーである
【化1】
(式中:
- Qは、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を表し;
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の同一または異なる脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい)。
有利には、式(I)の化合物により、先行技術の化合物よりも急速にかつ良好な収率でペンダントイミダゾール官能基をグラフトさせ、担持することによって変性ポリマーを得ることが可能である。
【0005】
本文書では、別段明示的に示されない限り、示されている全ての百分率(%)は質量の百分率(%)である。
さらに、「aからbの間(between a and b)」という表現により表されている任意の値の間隔は、「a」超から「b」未満に及ぶ範囲(すなわち限界値aおよびbが除外される)を表す一方、「a~b(from a to b)」という表現により表される任意の値の間隔は、「a」~「b」までに及ぶ値の範囲を意味する(すなわち厳密な限界値aおよびbを含む)。本文書では、値の間隔が、「a~b」という表現により表される場合、「aからbの間」という表現により表されている間隔も優先的に表される。
特に言及されない限り、「ヘテロ原子」という用語は、イオウ原子、酸素原子および窒素原子からなる群から選ばれる原子を意味する。
本明細書で言及されている炭素を含む化合物は、化石起源またはバイオソースであり得る。後者の場合では、これらは、部分的もしくは全体的に、バイオマスに由来し得る、または、バイオマスに由来する再生可能な出発材料から得られる。ポリマー、可塑剤、充填剤などが、特に関係している。
本発明およびその利点は、下記の説明および実施例に照らして容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0006】
IV-発明の詳細な説明:
従って、前に説明したように、本発明の1つの主題は、最初のポリマー鎖の少なくとも1つの不飽和に少なくとも1種の式(I)の化合物をグラフトさせることによって得られる変性ポリマーである
【化2】
(式中:
- Qは、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を表し;
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい)。
【0007】
「グラフト化によって得られた変性ポリマー」または「グラフト化によって変性されたポリマー」という用語は、ポリマー鎖に導入された官能基、特にイミダゾール官能基を含むポリマーを指す。実際には、この変性ポリマーは、イミダゾール官能基を担持しかつポリマー鎖の不飽和と共有結合を形成することのできる官能基を担持する化合物のグラフト反応によって得られ、この官能基は少なくとも1個の窒素原子、好ましくはニトロンを含む双極子である。このグラフト反応の間、グラフトされる化合物の少なくとも1個の窒素原子を含むこの双極子は、ポリマー鎖の不飽和と共有結合を形成する。
知られているように、ポリマーは、一般に、少なくとも1種の主ポリマー鎖を含む。このポリマー鎖は、文書「高分子科学の基本用語集」(IUPAC勧告1996), PAC, 1996, 68, 2287, page 2294に記載されているように、ポリマーの他の鎖が全てペンダント鎖であるとみなされる限り主鎖と呼ばれ得る。
「不飽和」という用語は、2個の炭素原子間の複数の共有結合を意味する:この複数の共有結合は、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合、好ましくは炭素-炭素二重結合であり得る。
【0008】
本発明の目的のために、「最初のポリマー鎖」という用語は、グラフト反応前のポリマー鎖を意味し;この鎖は、上記の式(I)の化合物と反応することのできる少なくとも1つの不飽和を含む。従って、この最初のポリマーは、グラフト反応の間、開始試薬として役立つポリマーである。グラフト反応は、最初のポリマーから開始して、変性ポリマーを得ることを可能にする。
この最初のポリマーは、好ましくはエラストマー、さらにより優先的にはジエンエラストマーである。
【0009】
「ジエンエラストマー」(または区別することなくゴム)という用語は、天然か合成かにかかわらず、知られている通り、少なくとも部分的に(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)ジエンモノマー単位(2個の共役または非共役炭素-炭素二重結合を担持するモノマー)からなるエラストマーを意味するものとして理解されなければならない。
これらのジエンエラストマーは、2つの分類:「本質的に不飽和」または「本質的に飽和」に分類され得る。「本質的に不飽和」という用語は、一般に、ジエン起源の単位(共役ジエン)を15%(mol%)超含有量で有する、共役ジエンモノマーから少なくとも部分的に由来するジエンエラストマーを指す;従って、これは、ブチルゴムまたはジエンとEPDMタイプのα-オレフィンのコポリマーのようなジエンエラストマーが前述の定義内に入らず、特に「本質的に飽和」ジエンエラストマー(ジエン由来の単位の低いまたは極めて低い、常に15%よりも低い含有量)として記載され得るということである。
「本発明に関連して使用し得るジエンエラストマー」という用語は、とりわけ、下記を意味する:
- 4~18個の炭素原子を含有する共役もしくは非共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー;
- 4~18個の炭素原子を含有する共役もしくは非共役ジエンおよび少なくとも1個の他のモノマーの任意のコポリマー。
【0010】
他のモノマーは、エチレン、オレフィンまたは共役もしくは非共役ジエンであり得る。
適している共役ジエンには、4~12個の炭素原子を含有する共役ジエン、とりわけ1,3-ジエン、特に1,3-ブタジエンやイソプレンが含まれる。
適している非共役ジエンには、6~12個の炭素原子を含有する非共役ジエン、例えば1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンが含まれる。
適しているオレフィンには、8~20個の炭素原子を含有するビニル芳香族化合物および3~12個の炭素原子を含有する脂肪族α-モノオレフィンが含まれる。
適しているビニル芳香族化合物には、例えば、スチレン、オルト-、メタ-またはパラ-メチルスチレン、「ビニルトルエン」市販混合物またはパラ-(tert-ブチル)スチレンが含まれる。
適している脂肪族α-モノオレフィンには、特に3~18個の炭素原子を含有する非環式脂肪族α-モノオレフィンが含まれる。
【0011】
より具体的には、ジエンエラストマーは、下記の通りであり得る:
- 共役ジエンモノマーの任意のホモポリマー、特に4~12個の炭素原子を含有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意の単独ポリマー;
- 1つもしくは複数の共役ジエンを互いにまたは8~20個の炭素原子を含有する1つもしくは複数のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
- イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、とりわけ塩素化または臭素化形;
- 1つもしくは複数の共役もしくは非共役ジエンとエチレン、α-モノオレフィンまたはその混合物との共重合によって得られる任意のコポリマー、例えばエチレンから、プロピレンから上述のタイプの非共役ジエンモノマーと得られるエラストマー。
【0012】
優先的には、最初のポリマーは、好ましくは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、ブチルゴム(IRR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
優先的には、最初のポリマーは、好ましくは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)コポリマー、ブチルゴム(IRR)、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、エチレン/ブタジエンコポリマー(EBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム-IIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
優先的には、最初のポリマーは、好ましくは、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、およびこれらのゴムの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
【0013】
優先的には、最初のポリマーは、好ましくは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
より優先的には、最初のポリマーは、好ましくは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
優先的には、最初のポリマーは、好ましくは、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
より優先的には、最初のポリマーは、ポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、エチレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエンコポリマー、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー、イソブテン/イソプレンコポリマー、イソプレン/スチレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーである。
【0014】
以下が適している:ポリブタジエン、とりわけ4%から80%の間の1,2-単位の含有量(mol%)を有するものまたは80%超のcis-1,4-単位の含有量(mol%)を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン/スチレンコポリマー、とりわけ0℃から-90℃の間、より具体的には-10℃から-70℃の間のTg(ガラス転移温度(Tg、ASTM D3418(2014)に従って測定された)、1質量%から60質量%の間、より具体的には20%から50%の間のスチレン含有量、4%から75%の間のブタジエン部分の1,2-結合の含有量(mol%)および10%から80%の間のtrans-1,4-結合の含有量(mol%)を有するもの、ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に5質量%から90質量%の間のイソプレン含有量および-40℃~-80℃のTgを有するもの、またはイソプレン/スチレンコポリマー、特に5質量%から50質量%の間のスチレン含有量および-5℃から-50℃の間のTgを有するもの。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合には、5質量%から50質量%の間、より具体的には10%から40%の間のスチレン含有量、15質量%から60質量%の間、より具体的には20%から50%の間のイソプレン含有量、5質量%から50重量%の間、より具体的には20%から40%の間のブタジエン含有量、4%から85%の間のブタジエン部分の1,2-単位の含有量(mol%)、6%から80%の間のブタジエン部分のtrans-1,4-単位の含有量(mol%)、5%から70%の間のイソプレン部分の1,2-単位と3,4-単位の含有量(mol%)および10%から50%の間のイソプレン部分のtrans-1,4-単位の含有量(mol%)を有するもの、より一般的には-5℃から-70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが特に適している。
【0015】
本発明に関連して使用し得る最初のポリマー、好ましくはエラストマー、より優先的にはジエンエラストマーは、使用される重合条件の関数である任意のミクロ構造を有し得る。このポリマーは、例えば、ブロック、ランダム、逐次もしくは微細逐次ポリマーでもよく、分散液中、エマルジョン中または溶液中で調製され得る。これらは、例えばポリマー鎖を一緒に結合するケイ素またはスズ原子によって、カップリングおよび/または星状枝分れされてもよい。
本発明によれば、最初のポリマー、好ましくはエラストマー、さらにより優先的にはジエンエラストマーは、変性剤としても知られる、上で定義された通りの式(I)化合物をグラフトさせることにより変性される。
【0016】
式(I)に従い、この変性剤は、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を示している基Qを含有する。
本発明の目的のために、「双極子」という用語は、不飽和炭素-炭素結合上に1,3-双極性付加を形成することのできる官能基を意味する。
少なくとも1個の窒素原子を含む双極子は、好ましくは、ニトリルオキシド、ニトロンおよびニトリルイミンからなる群から選ばれる。
本発明の目的のために、「ニトリルオキシド」という用語は、式C≡N→Oに相応し、その共鳴構造が含まれる双極子を意味する。
本発明の目的のために、「ニトリルイミン」という用語は、式C≡N→Nに相応し、その共鳴構造が含まれる双極子を意味する。
本発明の目的のために、「ニトロン」という用語は、式-C=N(→O)-に相応し、その共鳴構造が含まれる双極子を意味する。
【0017】
より優先的には、Qは、下記の式(II)、(III)または(IV)の基である:
【化3】
(式中:
- 符号
*は、QのAへの連結を表し;
- R
2およびR
4は、互いに独立して、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
好ましくは、R
2およびR
4は、互いに独立して、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキルで置換されていてもよいC
3-C
30シクロアルキル、1つもしくは複数の直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキルで置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ、R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、1つもしくは複数の直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキルで置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および1つもしくは複数の直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
6アルキルで置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0018】
優先的には、式(I)の化合物は、下記の式(IIa)の化合物から選ばれる
【化4】
(式中:
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の同一または異なる脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0019】
式(I)および(IIa)の本発明の化合物は、互いに独立して、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表す基Aを含有する。
「2価のヘテロ芳香環」という用語は、窒素、イオウおよび酸素からなる群から選ばれる1個もしくは複数個のヘテロ原子を含む芳香族環系を意味する。この系は、単環または二環でもよく、5~10個の原子から形成され得る。好ましくは、この系は、単環であり、5~6個の原子から形成される。この系は、1個もしくは複数個のヘテロ原子、例えばO、NおよびSで置換されていてもよく、中断されていてもよい、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1個もしくは複数個の同一または異なる脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい。
好ましくは、2価のヘテロ芳香環が、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1個もしくは複数個の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されている場合、このまたはこれらの鎖は、置換基R1、XおよびYを担持するイミダゾール環についておよび基Qについて不活性であることが好ましい。
【0020】
本発明の目的のために、「置換基R1、XおよびYを担持するイミダゾール環についておよび基Qについて不活性である炭化水素ベース鎖」という用語は、前記イミダゾール複素環または前記基Qといずれも反応しない炭化水素ベース鎖を意味する。従って、前記複素環についておよび前記基について不活性である前記炭化水素ベース鎖は、例えば、前記環または前記基と反応することのできるアルケニルもしくはアルキニル官能基を担持しない炭化水素ベース鎖である。好ましくは、これらの炭化水素ベース鎖は、1~24個の炭素原子を含み、飽和している。
好ましくは、Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の同一または異なるC1-C24脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい、5~10個の原子、好ましくは5~6個の原子から形成される2価のヘテロ芳香環である。
【0021】
さらにより優先的には、式(I)および(IIa)の化合物において、Aは、直鎖もしくは分枝鎖C1-C12(より優先的にはC1-C6、さらにより優先的にはC1-C4)アルキル、基-OR’、基-NHR’、基-SR’(ここで、R’はC1-C12、好ましくはC1-C6、さらにより優先的にはC1-C4アルキル基である)からなる群から選ばれる1個もしくは複数個の置換基で置換されていてもよい、5~10個の原子、好ましくは5~6個の原子から形成される2価のヘテロ芳香環である。
より優先的には、式(I)および(IIa)の化合物において、Aは、フラン-ジイル、チオフェン-ジイル、ピロール-ジイル、チアゾール-ジイル、イミダゾール-ジイル、ピリジン-ジイル、ピラジン-ジイル、ピリミジン-ジイル、インドール-ジイル、ベンゾフラン-ジイル、イソインドール-ジイル、イソベンゾフラン-ジイルおよびベンゾチオフェン-ジイルから選ばれる;これらの環は、1個もしくは複数個のヘテロ原子、例えばO、NおよびSで置換されていてもよく、中断されていてもよい、飽和であることが好ましい、1つもしくは複数の同一または異なる脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい;より優先的には、これらの環は、1個もしくは複数個のC1-C6アルキルで置換されていてもよい。さらにより優先的には、これらの環は置換されていない。
より優先的には、式(I)および(IIa)の化合物において、Aは、フラン-ジイル、チオフェン-ジイルおよびピロール-ジイルから選ばれ、さらにより優先的にはフラン-ジイルである。
【0022】
式(IIa)の化合物の中で、下記の式(IIb)の化合物がとりわけ好ましい
【化5】
(式中:
- Xは、イオウ原子、酸素原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を表し;Xは、酸素原子であることが好ましく;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース基を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0023】
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物は、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース結合基を表す基Eを含有する。本発明の目的のために、「2価の炭化水素ベース結合基」という用語は、基Aと置換基R1、XおよびYを担持するイミダゾール環の間に架橋を形成するスペーサ基を意味し、このスペーサ基は1個もしくは複数個のヘテロ原子、例えばN、OおよびSを含有していてもよい直鎖もしくは分枝鎖、好ましくは飽和した、好ましくはC1-C24脂肪族炭化水素ベース鎖である。前記炭化水素ベース鎖は、置換基が基Qおよび置換基R1、XおよびYを担持するイミダゾール環と反応しない場合には、置換されていてもよい。
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、優先的には、Eは、1個もしくは複数個のN、SおよびOのようなヘテロ原子で中断されていてもよい、直鎖もしくは分枝鎖の飽和したC1-C24、より優先的にはC1-C10、さらにより優先的にはC1-C6脂肪族炭化水素ベース鎖から選ばれる。
【0024】
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、好ましくは、Eは、-R-、-NH-R-、-O-R-および-S-R-からなる群から選ばれ、Rは直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキレンである。
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、さらにより優先的には、Eは、-R-および-O-R-からなる群から選ばれ、Rは直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキレンである。
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、さらにより優先的には、Eは、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、-O-CH2-、-O-CH2-CH2-、-O-CH2-CH2-CH2-および-O-CH2-CH2-CH2-CH2-から選ばれる。
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、さらにより優先的には、Eは、直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキレンから選ばれ、さらにより優先的には、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-および-CH2-CH2-CH2-CH2-から選ばれる。
式(I)および(IIa)の本発明の化合物において、さらにより優先的には、Eは、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-および-CH2-CH2-CH2-CH2-から選ばれる。
【0025】
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物は、水素原子またはC1-C20アルキル基を表す基R1を含有する。式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、優先的には、R1は、水素原子またはC1-C6アルキル基、好ましくはメチルを表す。これらのアルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよい。
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物は、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表す基YおよびZを含有し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい。
【0026】
式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、優先的には、YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキルを表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい。
好ましい実施形態によれば、式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、YおよびZは、水素原子である。
もう1つの好ましい実施形態によれば、式(I)、(IIa)および(IIb)の本発明の化合物において、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって芳香環を形成する;好ましくは、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子とベンゼン環を形成する。
【0027】
式(IIa)および(IIb)の化合物において、優先的には、R2は、水素原子または直鎖もしくは分枝鎖C1-C20アルキル、C1-C6アルキルで置換されていてもよいC3-C20シクロアルキル、またはC1-C6アルキルで置換されていてもよいC6-C20アリールから選ばれる基を表す。
式(IIa)および(IIb)の化合物において、優先的には、R3は、直鎖もしくは分枝鎖C1-C20アルキル、C1-C6アルキルで置換されていてもよいC3-C20シクロアルキル、またはC1-C6アルキルで置換されていてもよいC6-C20アリールから選ばれる。
式(IIa)および(IIb)の化合物において、さらにより優先的には、R2は水素原子であり、R3はC1-C20アルキルおよびC6-C20アリールから選ばれる。
式(IIa)および(IIb)の化合物において、さらにより優先的には、R2は水素原子であり、R3はフェニルである。
【0028】
式(I)、(IIa)および(IIb)の化合物の中で、式(VIII)の化合物がとりわけ好ましい
【化6】
【0029】
驚くべきことに、式(I)の化合物、好ましくは式(IIa)または(IIb)の化合物、さらにより優先的には式(VII)の化合物は、より急速にかつ先行技術の化合物よりも良好な収率で、ペンダントイミダゾール官能基をグラフトさせ、担持することによって変性されたポリマーを得ることを可能にする。
【0030】
式(IIa)の変性剤およびその好ましい実施形態は、例えば、上で定義されたように化合物(IIa)を調製するための方法によって、得ることができ、前記方法は、下記の反応スキームに従って式(III)の化合物と式(IV)の化合物の少なくとも1つの反応(c)を含む
【化7】
(ここで、式(IIa)、(III)および(IV)において:
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の同一または異なる脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース基を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0031】
A、E、R1、R2、R3、YおよびZの好ましい形もまた、式(III)の化合物と式(IV)の化合物から式(IIa)の化合物を調製するための方法にあてはまる。
当業者は、式(III)の化合物から本発明に従う式(I)の化合物を得るために上記の反応を適応させる方法を知っている。
式(IV)の化合物は、Sigma-Aldrich社、Fischer社などのような供給元から市販されている。
【0032】
上で定義されたように化合物(IIa)を調製するための化合物を調製するための方法もまた、式(III)の化合物を形成させる式(V)の化合物と少なくとも1種の式(IV)の化合物との少なくとも1つの反応(b)を含む
【化8】
(ここで、
- 基E、A、R
1、R
2、R
3、YおよびZは、その好ましい形が含まれている、前に定義された通りであり;
- 基Tは、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、メシレート基、トシレート基、アセテート基およびトリフルオロメチルスルホネート基から選ばれる)。
式(IV)の化合物は、Aldrich社、ABCR社などの化学製品供給元から市販されている。
【0033】
上で定義されたように化合物(IIa)を調製するための化合物を調製するための方法もまた、下記の反応スキームに従って求電子活性化剤の存在下に式(V)の化合物を形成させる式(VII)の化合物の求電子活性化の少なくとも1つの反応(a)を含む:
【化9】
(ここで
- 基E、AおよびR
2は、その好ましい形が含まれている、上で定義された通りであり、Tは求電子活性化剤により得られる離脱基である。
- 基Tは、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素、メシレート基、トシレート基、アセテート基およびトリフルオロメチルスルホネート基から選ばれる)。
【0034】
「親水性活性化剤」という用語は、水酸基-OHと反応する物質を意味し、それに求電子性を与える。これらの求電子活性化剤および水酸基についてのこの求電子活性化反応は、当業者に周知である。言及され得る求電子活性化剤の例としては、塩化チオニル、塩化メシル、4-トルエンスルホニルクロリド、パラー-トルエンスルホニルクロリドなどが挙げられる。
求電子剤によって得られる離脱基Tは、優先的には、塩素、臭素、ヨウ素、メシレート基およびトシルレート基からなる基から選ばれる。
式(VII)および(VI)の化合物は、Aldrich社、ABCR社などの化学製品供給元から市販されている。
【0035】
優先的な実施形態によれば、式(IIa)の化合物を調製するための方法は、少なくとも次の逐次反応を含む:前に定義されたように、反応(b)の後に反応(c)が続く。
もう1つの優先的な実施形態によれば、式(IIa)の化合物を調製するための方法は、少なくとも次の逐次反応を含む:前に定義されたように、反応(a)の後に反応(b)が続き、次に反応(c)が続く。
もう1つの優先的な実施形態によれば、式(IIa)の化合物を調製するための方法は、少なくとも次の逐次反応を含む:前に定義されたように、反応(a)の後に反応(b)が続き、次に反応(c)が続く。優先的には、この実施形態において、式(VII)の化合物は、フルクトースまたはグルコースの脱水によって得られる;さらにより優先的には、式(VII)の化合物は、バイオソースフルクトースまたはバイオソースグルコースの脱水によって得られる。本発明の目的のために、「バイオソースフルクトース」および「バイオソースグルコース」という用語は、それぞれ、規格ASTM D6866-12に記載されている方法によって化石の出発原料から合成されるフルクトースおよびグルコースから区別され得るバイオマスから得られるフルクトースおよびグルコースを意味する。
【0036】
前に説明したように、式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物、より具体的には式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物がポリマー-変性剤として使用される。これらは、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含む1種もしくは複数種のポリマー上へグラフトされ得る;とりわけ、このポリマーは、前に定義されたように、エラストマー、より具体的にはジエンエラストマーであってもよい。式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)または(IIb)の化合物、とりわけ式(VII)の化合物は、有利には、先行技術の化合物に対してポリマー上へグラフトさせる速度論の改善を有する。
【0037】
本発明の主題はまた、変性ポリマーを調製するための方法であり、前記方法が、少なくとも1つの不飽和を含む最初のポリマーの上に、上で定義されたように、その好ましい実施形態が含まれる、式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物、より具体的には式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物を、式(I)の化合物の基Qを、または、それぞれ、式(IIa)の化合物または式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物のニトロンを前記不飽和上に[3+2]環付加することによって、グラフトさせるステップを含む。
これらの化合物のグラフト化は、ポリマー鎖の不飽和炭素-炭素結合上へ前記化合物の基Q(または、それぞれ、ニトロン)を[3+2]環付加することによって実施される。この環付加の機序は、WO 2012/007441号において特に例示されている。この反応の間、前記式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物または式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物は、ポリマー鎖と共有結合を形成する。
【0038】
本発明によれば、ポリマーは、主ポリマー鎖に沿って、上で定義されたように、式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物、より具体的には式(IIb)、さらにより具体的には式(VII)の化合物のグラフト反応に由来する1個もしくは複数個のペンダント基を担持する。有利には、これらのペンダント基は、主ポリマー鎖に沿ってランダムに分配される。
好ましい実施形態によれば、式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物、より具体的には式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物のモルグラフト化度は、0.01%~15%、好ましくは0.05%~10%、より優先的には0.07%~5%の範囲内である。
「モルグラフト化度」という用語は、最初のポリマーを構成するモノマー単位100mol当たりのポリマー上にグラフトされた、式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物、より具体的には式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物のモル数を意味する。モルグラフト化度は、従来のポリマー分析法、例えば、1H NHR解析によって測定できる。
【0039】
変性ポリマーを調製するための方法の1つの実施形態によれば、式(I)の化合物、とりわけ式(IIa)の化合物、より具体的には式(IIb)の化合物、さらにより具体的には式(VII)の化合物のグラフト化は、塊状で、例えば、押出機、内部ミキサーでまたはロールミルのような外部ミキサーで、または溶液で実施され得る。
もう1つの実施形態によれば、変性ポリマーを調製するため方法は、連続してまたはバッチ式で溶液中で実施され得る。このようにしてグラフト化によって得られるポリマーは、当業者に知られる任意のタイプの手段によって、とりわけスチームストリッピング操作によって、その溶液から分離され得る。
本発明の方法において、好ましくは、最初のポリマーは、エラストマー、さらにより優先的にはジエンエラストマーである。
【0040】
本発明の主題はまた、上記のように、式(I)の化合物、好ましくは式(Ia)または(Ib)の化合物、さらにより優先的には式(VIII)の化合物のグラフト化によって得られる少なくとも1種の変性ポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物である。
本発明に従う組成物において使用され得る添加剤は、可塑剤(可塑化用オイルおよび/または可塑化用樹脂)、充填剤(補強用充填剤または非補強用充填剤)、顔料、保護剤(オゾン防止ワックス)、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、疲労防止剤、補強用樹脂(例えば、特許出願WO 02/10269号に記載されている通り)、架橋系(例えばイオウおよび他の加硫剤をベースとする)、および/またはペルオキシドまたはビスマレイミドであり得る。好ましくは、この添加剤は補強用充填剤であり、より優先的には、この添加剤は無機補強用充填剤であり、さらにより優先的には、この添加剤はシリカである。
【0041】
前に記載されている主題に加えて、本発明は、下記の実施形態に記載されている主題の少なくとも1つに関する:
1.最初のポリマー鎖の少なくとも1つの不飽和に少なくとも1種の下記の式(I)の化合物をグラフトさせることによって得られる変性ポリマー
【化10】
(式中:
- Qは、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を表し;
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい)。
【0042】
2.式(I)の化合物のモルグラフト化度が、0.01%~15%、好ましくは0.05%~10%、より優先的には0.07%~5%の範囲内である、実施形態2による変性ポリマー。
【0043】
3.基Qが、下記の式(II)、(III)または(IV)の基である、実施形態1および2のいずれかによる変性ポリマー
【化11】
(式中:
-符号
*は、QのAへの連結を表し;、
-R
2およびR
4は、互いに独立して、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
-R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0044】
4.式(I)の化合物が、下記の式(IIa)の化合物から選ばれる、実施形態3による変性ポリマー
【化12】
(式中:
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0045】
5.基Aが、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖C1~C24脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい、5~10個の原子、好ましくは5~6個の原子から形成される2価のヘテロ芳香環である、実施形態1~4のいずれか1つによる変性ポリマー。
6.基Aが、フラン-ジイル、チオフェン-ジイル、ピロール-ジイル、チアゾール-ジイル、イミダゾール-ジイル、ピリジン-ジイル、ピラジン-ジイル、ピリミジン-ジイル、インドール-ジイル、ベンゾフラン-ジイル、イソインドール-ジイル、イソベンゾフラン-ジイルおよびベンゾチオフェン-ジイルから選ばれる、実施形態1~5のいずれか1つによる変性ポリマー。
【0046】
7.式(IIa)の化合物が、下記の式(IIb)の化合物から選ばれる、実施形態4による変性ポリマー
【化13】
(式中:
- Xは、イオウ原子、酸素原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を表し;Xは、酸素原子であることが好ましく;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖のC
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0047】
8.R2が水素原子であり、R3がC1-C20アルキルおよびC6-C20アリールから選ばれる、実施形態3~7のいずれか1つによる変性ポリマー。
9.基Eが、1個もしくは複数個の窒素、イオウまたは酸素原子で中断されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖飽和脂肪族C1-C24、優先的にはC1-C10、より優先的にはC1-C6炭化水素ベース鎖から選ばれる、実施形態1~8のいずれか1つによる変性ポリマー。
10.基Eが、基-R-、-NHR-、-OR-および-SR-(ここで、Rは直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキレンである)から選ばれる、実施形態1~9のいずれか1つによる変性ポリマー。
11.基Eが、基-R-および-OR-(ここで、Rは直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキレンである)から選ばれる、実施形態1~10のいずれか1つによる変性ポリマー。
12.基Eが、直鎖もしくは分枝鎖C1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキレンであり、さらにより優先的には-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-および-CH2-CH2-CH2-CH2-から選ばれる、実施形態1~11のいずれか1つによる変性ポリマー。
【0048】
13.基YおよびZが、同一または異なるものであって、各々、水素原子またはC1-C24、好ましくはC1-C10、より優先的にはC1-C6アルキルを表し、YとZが、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい、実施形態1~12のいずれか1つによる変性ポリマー。
14.YおよびZが、水素原子である、実施形態1~13のいずれか1つによる変性ポリマー。
15.基YおよびZが、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって芳香環を形成する;好ましくは、基YおよびZがこれらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になってベンゼンを形成する、実施形態1~13のいずれか1つによる変性ポリマー。
16.R1が、水素原子またはC1-C6アルキル、好ましくはメチルである、実施形態1~15のいずれか1つによる変性ポリマー。
【0049】
17.式(I)の化合物が、下記の式(VIII)の化合物であることを特徴とする、実施形態1~16のいずれか1つによる変性ポリマー
【化14】
【0050】
18.最初のポリマーが、エラストマー、好ましくはジエンエラストマーである、実施形態1~17のいずれか1つによる変性ポリマー。
19.そのジエンエラストマーが、エチレン/プロピレン/ジエンモノマーコポリマー、ブチルゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、実施形態18による変性ポリマー。
【0051】
20.実施形態1~19のいずれか1つによる変性ポリマーを調製するための方法であって、少なくとも1つの不飽和を含む最初のポリマー上に、式(I)の化合物の官能基Qを前記不飽和上に[3+2]環付加することによって、下記の式(I)の化合物をグラフトさせるステップを含む方法
【化15】
(式中:
- Qは、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を表し;
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい)。
【0052】
21.式(I)の化合物が下記の式(IIa)の化合物から選ばれる、実施形態20による変性ポリマーを調製するための方法
【化16】
(式中:
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0053】
22.Aが、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族C1-C24炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい、5~10個の原子、好ましくは5~6個の原子から形成される2価のヘテロ芳香環である、実施形態20および21のいずれかによる変性ポリマーを調製するための方法。
【0054】
23.式(IIa)の化合物が、式(IIb)の化合物から選ばれる、実施形態20~22の1つによる変性ポリマーを調製するための方法
【化17】
(式中:
- Xは、イオウ原子、酸素原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を表し;Xは、酸素原子であることが好ましく;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1は、水素原子またはC
1-C
20アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールから選ばれ;
- R
3は、直鎖もしくは分枝鎖C
1-C
20アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3-C
20シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6-C
20アリールからなる群から選ばれる)。
【0055】
24.式(I)の化合物が、下記の式(VIII)の化合物であることを特徴とする、実施形態20~23のいずれか1つによる変性ポリマーを調製するための方法
【化18】
【0056】
25.実施形態1~19のいずれか1つによる少なくとも1つの変性ポリマーと、少なくとも1つの添加剤とを含む組成物であって、この添加剤が、好ましく充填剤であり、この添加剤が、より優先的には補強用充填剤であり、この添加剤が、さらにより優先的には無機補強用充填剤であり、この添加剤が、より優先的にはシリカである組成物。
26.実施形態25において記載された通りの少なくとも1種の組成物を含むトレッド。
27.実施形態25において記載された通りの少なくとも1種の組成物を含むタイヤ。
28.実施形態26において記載された通りの少なくとも1種のトレッドを含むタイヤ。
【実施例】
【0057】
V-実施例
下記の実施例により、本発明を例示することができる;しかしながら、本発明は、これらの実施例のみに限定されないものとする。
【0058】
5.1 分子の特性決定
合成した分子の構造分析およびモル純度の定量は、NMR解析によって実施する。スペクトルは、「5mmのBBFO Z-gradブロードバンド」プローブを備えたBrueker Avance 3400MHz分光計によって獲得する。定量1H NMR試験は、単純な30°パルスシーケンスおよび64回の獲得毎に3秒の繰返し時間を使用する。サンプルを、特に断らない限り、重水素化溶媒である重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解する。重水素化溶媒はまた、「ロック」シグナルにおいても使用される。例えば、較正は、0ppmでのTMS参照に対して2.44ppmでの重水素化DMSOのプロトンシグナルにおいて実施する。2D 1H/13C HSQCおよび1H/13C HMBC試験とカップリングさせた1H NMRスペクトルは、分子の構造決定を可能にする(代入表参照)。モル定量化は、定量1D 1H NMRスペクトルから実施する。
【0059】
5.2 ジエンエラストマーにグラフトさせた分子の特性決定
ジエンエラストマーについて試験したグラフト化合物のモル含有量の定量は、NMR解析によって実施する。スペクトルは、「5mmのBBFO Z-gradブロードバンド」プローブを備えたBrueker 500MHz分光計によって獲得する。定量1H NMR試験は、単純な30°パルスシーケンスおよび獲得毎に5秒の繰返し時間を使用する。サンプルは、「ロック」シグナルを得る目的でもって、特に断らない限り重水素化溶媒である重水素化クロロホルム(CDCl3)に溶解する。2D NMR試験により、炭素原子とプロトンの化学シフトによってグラフト単位の性質を確認することができた。
【0060】
5.3 ジエンエラストマーの数平均(Mn)および質量平均(Mw)モル質量および多分散性指数の測定
別段明示的に示されない限り、使用するジエンエラストマーの数平均および質量平均モル質量はサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)法によって測定する。SECにより、多孔質ゲル充填カラムを通して、溶液中の高分子をこれらのサイズに従って分離することができる。これらの高分子はその流体力学的体積に従って分離され、最もかさ高いものが最初に溶出される。
絶対的な方法ではないが、SECにより、エラストマーのモル質量分布を理解することができる。市販の標準から様々な数平均モル質量(Mn)および質量平均モル質量(Mw)は決定することができ、「ムーア」較正により多分散性指数(PI=Mw/Mn)を計算することができる。
分析前のエラストマーサンプルに対する特定の処理はない。前記サンプルは、単に、クロロホルム中または次の混合物:テトラヒドロフラン+1vol%のジイソプロピルアミン+1vol%のトリエチルアミン+1vol%の蒸留水(vol%=体積%)中に約1g/lの濃度まで溶解される。次いで、この溶液は、注入の前に0.45μmの細孔を有するフィルターを通して濾過される。
使用される装置は、Waters Allianceクロマトグラフである。溶出溶媒は、エラストマーの溶解に使用される溶媒に従い、次の混合物:テトラヒドロフラン+1vol%のジイソプロピルアミン+1vol%のトリエチルアミンまたはクロロホルムである。流速は0.7ml/分であり、システムの温度は35℃であり、分析時間は90分である。商品名Styragel HMW7、Styragel HMW6Eおよび2本のStyragel HT6Eを有する、直列の4本のWatersカラムの一組が使用される。
注入されるエラストマーサンプルの溶液の体積は、100μlである。検出器は、810nmの波長のWaters 2410示差屈折計である。クロマトグラフデータを処理するためのソフトウェアは、Waters Empowerシステムである。
計算された平均モル質量は、PSS Ready Cal-Kit市販ポリスチレン標準から生成された較正曲線に対するものである。
【0061】
5.4
1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチルフラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(化合物E)の合成
1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチルフラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシドは、下記の反応スキームに従って合成され得る
【化19】
【0062】
1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチルフラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシドは、下記に記載されている2つのステップで合成される。この合成の間に使用される全ての化学化合物は、「Sigma-Aldrich社」または「Fischer Scientific社」から入手される。
5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-カルバルデヒド(化合物A、CAS 67-47-0)は、市販されているかまたはフルクトースから生化学的にまたは化学的に合成され得る。
生成物N-フェニルヒドロキシルアミン(化合物D、CAS 100-65-2)は、市販されているかまたはOrganic Syntheses, Coll. Vol. 1, page 445 (1941); Vol. 4, page 57 (1925)に記載されている手順に従ってニトロベンゼンから合成され得る。
5-(クロロメチル)フラン-2-カルバルデヒド(化合物B)は、フルクトースからまたはSanda, Komla et al., Synthesis of 5-(bromomethyl)- and of 5-(chloromethyl)-2-furancarboxaldehyde, Carbohydrate Research, 187(1), 15-23; 1989に記載されている手順に従って5-(ヒドロキシメチル)フラン-2-カルバルデヒドから合成され得る。
【0063】
5.4.1 ステップ1:5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-カルバルデヒド(生成物C)の合成
DMF(4ml)中の2-メチルイミダゾール(4.83g;58.80mmol;2.5当量)および5-(クロロメチル)フラン-2-カルバルデヒド(3.40g;23.52mmol)の混合物を70℃の浴温まで加熱する。この温度で2~3時間および80℃の浴温で2時間撹拌した後、反応媒体を水(50ml)で希釈し、次いで、有機相を分離する。水相をジクロロメタン(4×20ml)で4回抽出する。有機相画分を混ぜ合わせ、次いで、水(4×5ml)で洗浄し、次いで、減圧(2~3ミリバール;32℃)下で濃縮して黒色油状物(2.44g;12.8ミリmmol)を55%の収率で得る。この生成物をさらなる精製なしで次のステップに使用する。
【0064】
5.4.2 ステップ2: 1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(生成物E)の合成
35~40℃の浴温におけるエタノール(5ml)中の5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-カルバルデヒド(化合物C)(5.00g;26.3mmol)の溶液に、N-フェニルヒドロキシルアミン(2.87g;26.3mmol;1当量)を5分にわたって少しずつ添加する。反応媒体を60℃の浴温まで加熱する。この温度で1.5時間撹拌してから30~35℃の温度に戻った後、tert-ブチルジメチルエーテル(15ml)を滴下する。室温(23℃)で1時間撹拌した後、得られた沈殿物を濾別し、フィルター上でエタノールとtert-ブチルジメチルエーテル(1mlと5ml)の混合物、次いでtert-ブチルジメチルエーテル(8ml)で洗浄する。147~150℃の融点を有する薄茶色の固形物を、68.4%(5.06g;17.99mmol)の収率および98%(1H NMR)よりも高いモル純度で得る。
【0065】
【0066】
5.5.ポリマーの化合物Eによるグラフト化
5.5.1 1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(化合物E)でグラフトされたスチレン-ブタジエンコポリマーの製造
1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(0.3l;1.14mmol)を、15gのスチレンブタジエンコポリマーSBR(コポリマーの全質量に対して26.5質量%のスチレンおよびブタジエン部分の質量に対して24質量%の1,2-ブタジエン単位、ブタジエン部分の質量に対して28質量%の1,4-シスブタジエン単位およびブタジエン部分の質量に対して48質量%の1,4-トランスブタジエン単位を含有する、5.3項に記載されている方法に従って測定したMn=120000g/molおよびPI=1.84)に23℃のロールミル上で混入する。この混合物を15回のポートフォリオ通過で均質化する。この混合段階に続いて、160℃で10バールの圧力のプレス下に60分間熱処理する。
1H NMR解析に従うグラフト結果を表2に示す。
【0067】
5.5.2 1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(化合物E)でグラフトされたポリブタジエンポリマーの製造
0.5gのポリブタジエン(75.4mol%の1,2-ブタジエン単位および24.6mol%の1,4-ブタジエン単位;5.3項に記載されている方法に従って測定したMn=7800g/molおよびPI=1.02)を、窒素で15分間フラッシュした。次に、予め窒素で5分間スパージした2mlのジクロロメタンを添加して、このポリマーを溶解した。
このポリマーが溶解されると、予め2mlのジクロロメタンに溶解した0.265gの1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(化合物E)(0.94mmol)を撹拌しながら反応媒体に添加した。15分間撹拌した後、反応媒体を窒素フラッシュ下に15分間放置して、ジクロロメタンを蒸発させた。溶媒の全てが蒸発されると、反応媒体を窒素の一定の流れ下に150℃(浴温)まで加熱した。10時間30分の反応後、反応媒体は室温(23℃)に戻った。
1H NMR解析に従うグラフト化結果を表2に示す。
【0068】
5.5.3 1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(化合物E)でグラフトされたエチレン-ブタジエンコポリマーの製造
1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(0.57;2mmol)を、15gのエチレン-ブタジエンコポリマーEBR(16.8mol%のブタジエン、7.7mol%のブタジエン/エチレン環および75.5mol%のエチレンを含有する)に23℃のロールミル上で混入する。この混合物を、15回のポートフォリオ通過で均質化する。この混合段階に続いて、10バールの圧力のプレス下に160℃で60分間熱処理する。
1H NMR解析に従うグラフト化結果を表2に示す。
【表2】
【0069】
5.6.1,3-双極性化合物N-(4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンジリデン)アニリンオキシド(化合物E1)の合成
この化合物は、下記の反応スキームに従って5つのステップで調製し得る:
【化21】
【0070】
5.6.1 ステップ1:メチル4-(クロロメチル)ベンゾエート(化合物A1)の合成
【化22】
塩化チオニルSOCl
2(2.4ml;32.2mmol)を、-8℃(浴温)の温度に冷却した150mlのメタノールに-8℃(浴温)の温度で10分間にわたって滴下する。-8℃(浴温)で5分間撹拌した後、4-(クロロメチル)安息香酸(5.0g;29.3mmol)を-8℃(浴温)で10分間にわたって滴下する。-8℃(浴温)で20分間撹拌した後、反応媒体を14℃(浴温)で20分間加熱する。次いで、反応媒体を50℃(浴温)まで1時間にわたって加熱し、この温度で2時間撹拌する。生成物溶液を減圧(28ミリバール、40℃、浴温)下に濃縮して、室温で結晶する油状物を得る。
38~40℃の融点を有する白色固形物(5.16g、27.9mmol、モル収率95%)を得る。
モル純度は、95mol%(
1H NMR)よりも高い。
【0071】
【0072】
5.6.2 ステップ2:メチル-4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾエートの合成:
【化24】
DMF(4ml)中のメチル4-(クロロメチル)ベンゾエート(5.15g;28mmol)と2-メチル-1H-イミダゾール(2.52g;31mmol)の混合物およびK
2CO
3(2.89g;21mmol)を、60℃(浴温)で1~1.5時間、次いで、80℃で5時間加熱する。冷却後、反応媒体を0℃の水(50ml)および酢酸エチル(25ml)で希釈する。水相を分離し、酢酸エチル(3×10ml)で抽出する。混ぜ合せた有機相は、水(3×5ml)で洗浄する。生成物溶液を減圧(7ミリバール、40℃、浴温)下に濃縮して、黄色油状物(4.266g;18.5mmol、モル収率66%)を得る。
【0073】
【0074】
5.6.3 ステップ3:4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェニルメタノールの合成:
【化26】
無水THF(230ml)中のLiAlH
4(1.50g、0.039mol)の溶液を、-60℃に冷却する。無水THF(100ml)中のエチル4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンゾエート(7.80g、0.028mol、81mol%)の溶液を15分にわたってアルゴン下に添加する。反応媒体を-60℃で1時間、次いで、室温で10~12時間撹拌する。水(20ml)を滴下する(発熱反応)。生じた沈殿物を濾別し、ろ液を減圧下に濃縮する。得られた粗生成物を、不溶性物質を析出させるためにCH
2Cl
2(100ml)に溶解する。濾過して減圧下に濃縮した後、黄色油状物(4.96g、モル収率93%)を得る。モル純度は、85%(
1H NMR)よりも高い。
【0075】
【0076】
5.6.4 ステップ4:4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンズアルデヒドの合成:
【化28】
CHCl
3(180ml)中のMnO
2(6.88g;0.079mol)と4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フェニルメタノール(4.57g;0.021mol、
1H NMRにより85mol%)の混合物を、還流温度で4時間撹拌する。反応媒体を室温に冷却し、この温度で10~12時間撹拌を続ける。不溶性生成物を濾別し、濾液を減圧下に濃縮する。減圧下に濃縮した後に黄色油状物(3.78g、モル収率98%)を得る。モル純度は、81%(
1H NMR)よりも高い。
【0077】
【0078】
5.6.5 フェニルヒドロキシルアミンの合成:
【化30】
フェニルヒドロキシルアミンを、Org. Syntheses Coll. Vol. 1, page 445, 1941; Org. Syntheses Coll. Vol. 3, page 668, 1955に記載されている手順に従って合成した。
【0079】
5.6.6 ステップ5:N-4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンジルジエン)アニリンオキシドの合成:
【化31】
無水エタノール(20ml)中の4-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)ベンズアルデヒド(3.48g;0.015mol、
1H NMRにより81mol%)とフェニルヒドロキシルアミン(2.86g;0.026mol)の溶液を、60℃(浴温)で2時間、次いで、室温で12時間撹拌する。黄色沈殿物を濾別する(0.249g、予想される生成物を含む)。水(30ml)を激しく撹拌しながら濾液に添加する。その時に生じた黄色沈殿物を、20分間撹拌した後に濾別し、EtOH(10ml)と水(20ml)の混合物で、次いで、水(50ml)で洗浄する。2つの部分の固形物を混ぜ合わせ、大気圧下に室温で10~12時間乾燥する。82%(
1H NMR)よりも高いモル純度を有する黄色固形物(3.71g、モル収率89%)を得る。室温で1.5時間撹拌し、濾過し、フィルター上で50mlのエチルエーテルで洗浄し、室温で2日間乾燥することによって、追加の精製を加える。
115~116℃の融点を有する黄色固形物(3.04g、モル収率78%)を得る。モル純度は、88%(
1H NMR)よりも高い。
【0080】
【0081】
5.7.時間の関数としての化合物Eのグラフト収率の研究
この試験においては、本発明に従う1,3-双極性化合物(化合物E)の時間の関数としてのグラフト収率を、スチレン/ブタジエンコポリマーSBRについて、先行技術の1,3-双極性化合物(化合物E1)と比較する。
使用されるスチレン/ブタジエンコポリマーは、コポリマーの総質量に対して26.5質量%のスチレンおよびブタジエン部分の質量に対するそのブタジエン部分においては、ブタジエン部分の質量に対して24質量%の1,2-ブタジエン単位、28質量%の1,4-シス-ブタジエン単位および48質量%の1,4-トランス-ブタジエン単位を含有するSBRである。そのMnは120000g/molに等しく、そのPIは1.84に等しい;これらは、3項に記載されている方法に従って測定される。
このプロセスは、下記の方法で実施される:
1-(5-((2-メチル-1H-イミダゾール-1-イル)メチル)フラン-2-イル)-N-フェニルメタンイミンオキシド(0.27g、0.97mmol)(本発明に従う化合物E)またはN-(4-((2-メチル-1H-イミダゾール-l-イル)メチル)ベンジリデン)アニリンオキシド(従わない化合物E1)(0.28g、0.97mmol)を、23℃のロールミル上で上記の通りの15gのSBRに混入する。この混合物を15回のポートフォリオ通過で均質化する。この混合段階に続いて、10バールの圧力のプレス下に160℃で15分間熱処理する。
【0082】
同じ試験を、30分および60分のグラフト時間として実施する。
各試験の終了後、本発明に従う化合物Eまたは本発明に従わない化合物E1のモルグラフト化度を、2項に記載されている方法に従う
1H NMRによって解析的に測定する。結果を表8にまとめる。
【表8】
【0083】
驚くべきことに、表8から、本発明に従う化合物Eのグラフト収率が本発明に従わない化合物E1に対して常に大幅に改善されていることがわかる。加えて、本発明に従う化合物Eのグラフト収率は、30分の反応を超えて増加し続ける一方、本発明に従わない化合物E1では15分以内にプラトーに達する。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕最初のポリマー鎖の少なくとも1つの不飽和に少なくとも1種の下記の式(I)の化合物をグラフトさせることによって得られる変性ポリマー
【化1】
(式中:
- Qは、少なくとも1個の窒素原子を含む双極子を表し;
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1
は、水素原子またはC
1
-C
20
アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい)。
〔2〕式(I)の化合物のモルグラフト化度が、0.01%~15%、好ましくは0.05%~10%、より優先的には0.07%~5%の範囲内である、前記〔1〕記載の変性ポリマー。
〔3〕Qが、下記の式(II)、(III)または(IV)の基である、前記〔1〕または〔2〕記載の変性ポリマー
【化2】
(式中:
- 符号
*
は、QのAへの連結を表し;
- R
2
およびR
4
は、互いに独立して、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
20
アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3
-C
20
シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6
-C
20
アリールから選ばれ;
- R
3
は、直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
20
アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3
-C
20
シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6
-C
20
アリールからなる群から選ばれる)。
〔4〕式(I)の化合物が、下記の式(IIa)の化合物から選ばれる、前記〔3〕記載の変性ポリマー
【化3】
(式中:
- Aは、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい2価のヘテロ芳香環を表し;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1
は、水素原子またはC
1
-C
20
アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2
は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
20
アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3
-C
20
シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6
-C
20
アリールから選ばれ;
- R
3
は、直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
20
アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3
-C
20
シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6
-C
20
アリールからなる群から選ばれる)。
〔5〕Aが、1個もしくは複数個のヘテロ原子で置換されていてもよく、中断されていてもよい、1つもしくは複数の同一または異なる直鎖もしくは分枝鎖脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよい、5~10個の原子、好ましくは5~6個の原子から形成され2価のヘテロ芳香環である、前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔6〕式(IIa)の化合物が、下記の式(IIb)の化合物から選ばれる、前記〔4〕または〔5〕記載の変性ポリマー
【化4】
(式中:
- Xは、イオウ原子、酸素原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を表し;Xは、酸素原子であることが好ましく;
- Eは、1個もしくは複数個のヘテロ原子を含有していてもよい2価の炭化水素ベース基を表し;
- R
1
は、水素原子またはC
1
-C
20
アルキル基を表し;
- YおよびZは、同一または異なるものであって、各々、水素原子または炭化水素ベース鎖を表し、YとZは、これらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよく;
- R
2
は、水素原子、直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
20
アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3
-C
20
シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6
-C
20
アリールから選ばれ;
- R
3
は、直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
20
アルキル、飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
3
-C
20
シクロアルキル、および飽和した直鎖もしくは分枝鎖であることが好ましい、1つもしくは複数の脂肪族炭化水素ベース鎖で置換されていてもよいC
6
-C
20
アリールからなる群から選ばれる)。
〔7〕R
2
が水素原子であり、R
3
がC
1
-C
20
アルキルおよびC
6
-C
20
アリールから選ばれる、前記〔3〕~〔6〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔8〕Eが、1個もしくは複数個の窒素、イオウまたは酸素原子で中断されていてもよい直鎖もしくは分枝鎖の飽和脂肪族C
1
-C
24
、優先的にはC
1
-C
10
、より優先的にはC
1
-C
6
炭化水素ベース鎖から選ばれる、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔9〕Eが、基-R-、-NHR-、-OR-および-SR-(ここで、Rは直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
24
、好ましくはC
1
-C
10
、より優先的にはC
1
-C
6
アルキレンである)から選ばれる、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔10〕YおよびZが、同一または異なるものであって、各々、水素原子または直鎖もしくは分枝鎖C
1
-C
24
、好ましくはC
1
-C
10
、より優先的にはC
1
-C
6
アルキルを表し、YとZがこれらを結合しているイミダゾール環の炭素原子と一緒になって環、特に芳香環を形成してもよい、前記〔1〕~〔9〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔11〕YおよびZが、水素原子である、前記〔1〕~〔10〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔12〕R
1
が、水素原子またはC
1
-C
6
アルキル、好ましくはメチルである、前記〔1〕~〔11〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔13〕式(I)の化合物が、下記の式(VIII)の化合物である、前記〔1〕~〔12〕のいずれか1項記載の変性ポリマー
【化5】
〔14〕最初のポリマーが、エラストマー、好ましくはジエンエラストマーである、前記〔1〕~〔13〕のいずれか1項記載の変性ポリマー。
〔15〕前記〔1〕~〔14〕のいずれか1項記載の少なくとも1種の変性ポリマーと、少なくとも1種の添加剤とを含む組成物。