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特許7592627光電変換素子のエッチング方法、および光電変換素子のエッチング装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】光電変換素子のエッチング方法、および光電変換素子のエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20241125BHJP
   H01L 31/0224 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20241125BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
H01L31/04 420
H01L31/04 260
H01L21/306 U
H01L21/28 E
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021564033
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046073
(87)【国際公開番号】W WO2021117818
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2019223983
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発 先端複合技術型シリコン太陽電池、高性能CIS太陽電池の技術開発、結晶Si太陽電池をベースとした複合型太陽電池モジュールの開発」共同研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】兼松 正典
(72)【発明者】
【氏名】石橋 寛隆
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/216339(WO,A1)
【文献】特開平06-013446(JP,A)
【文献】特開平04-010414(JP,A)
【文献】特開2018-181912(JP,A)
【文献】特開2013-239476(JP,A)
【文献】特開平07-115086(JP,A)
【文献】特開2008-210947(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106784165(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
H01L 21/28-21/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面電極型の光電変換素子における電極層を形成するエッチング方法であって、
光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の上に連続して製膜された導電膜をエッチングして、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々にパターン化された前記電極層を形成する際に、
前記光電変換基板の主面に光を照射し、
前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測し、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記導電膜のエッチングの終了を判断し、
当該エッチング方法において、
複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記複数の光電変換基板のうち、前記導電膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング方法。
【請求項2】
裏面電極型の光電変換素子における電極層を形成するエッチング方法であって、
光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の上に連続して製膜された導電膜をエッチングして、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々にパターン化された前記電極層を形成する際に、
前記光電変換基板の主面に光を照射し、
前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測し、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記導電膜のエッチングの終了を判断し、
当該エッチング方法において、
複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記複数の光電変換基板のうち、前記導電膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板、および前記導電膜の膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング方法。
【請求項3】
前記フォトルミネッセンス強度が最大値となるときに、前記導電膜のエッチングの終了を判断する、請求項1または2に記載の光電変換素子のエッチング方法。
【請求項4】
前記電極層は透明電極層であり、前記導電膜は透明導電膜であり、
前記透明導電膜の上に形成された金属電極層をマスクとして、前記透明導電膜をエッチングする、請求項1~3のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチングは、エッチング溶液を用いたウエットエッチングである、請求項1~のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング方法。
【請求項6】
裏面電極型の光電変換素子における半導体層を形成するエッチング方法であって、
光電変換基板の一方主面側に連続して製膜された半導体層材料膜をエッチングして、前記光電変換基板の前記一方主面側にパターン化された前記半導体層を形成する際に、
前記光電変換基板の主面に光を照射し、
前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測し、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断し、
当該エッチング方法において、
複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記複数の光電変換基板のうち、前記半導体層材料膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング方法。
【請求項7】
裏面電極型の光電変換素子における半導体層を形成するエッチング方法であって、
光電変換基板の一方主面側に連続して製膜された半導体層材料膜をエッチングして、前記光電変換基板の前記一方主面側にパターン化された前記半導体層を形成する際に、
前記光電変換基板の主面に光を照射し、
前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測し、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断し、
当該エッチング方法において、
複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記複数の光電変換基板のうち、前記半導体層材料膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板、および前記半導体層材料膜の膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング方法。
【請求項8】
前記フォトルミネッセンス強度が最小値となるときに、または、前記フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるときに、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断する、請求項6または7に記載の光電変換素子のエッチング方法。
【請求項9】
前記エッチングは、エッチング溶液を用いたウエットエッチングである、請求項6~のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング方法。
【請求項10】
裏面電極型の光電変換素子における電極層を形成するエッチング装置であって、
光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の上に連続して製膜された導電膜をエッチングして、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々にパターン化された前記電極層を形成するエッチング部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板の主面に光を照射する光照射部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測するフォトルミネッセンス観測部と、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記導電膜のエッチングの終了を判断するエッチング終了判断部と、
を備え、
前記エッチング部は、複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記光照射部、前記フォトルミネッセンス観測部および前記エッチング終了判断部は、前記複数の光電変換基板のうち、前記導電膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング装置。
【請求項11】
裏面電極型の光電変換素子における電極層を形成するエッチング装置であって、
光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の上に連続して製膜された導電膜をエッチングして、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々にパターン化された前記電極層を形成するエッチング部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板の主面に光を照射する光照射部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測するフォトルミネッセンス観測部と、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記導電膜のエッチングの終了を判断するエッチング終了判断部と、
を備え、
前記エッチング部は、複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記光照射部、前記フォトルミネッセンス観測部および前記エッチング終了判断部は、前記複数の光電変換基板のうち、前記導電膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板、および前記導電膜の膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング装置。
【請求項12】
前記エッチング終了判断部は、前記フォトルミネッセンス強度が最大値となるときに、前記導電膜のエッチングの終了を判断する、請求項10または11に記載の光電変換素子のエッチング装置。
【請求項13】
前記電極層は透明電極層であり、前記導電膜は透明導電膜であり、
前記エッチング部は、前記透明導電膜の上に形成された金属電極層をマスクとして、前記透明導電膜をエッチングする、請求項10~12のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング装置。
【請求項14】
前記エッチング部は、エッチング溶液を用いたウエットエッチングを行う、請求項10~13のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング装置。
【請求項15】
裏面電極型の光電変換素子における半導体層を形成するエッチング装置であって、
光電変換基板の一方主面側に連続して製膜された半導体層材料膜をエッチングして、前記光電変換基板の一方主面側にパターン化された前記半導体層を形成するエッチング部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板の主面に光を照射する光照射部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測するフォトルミネッセンス観測部と、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断するエッチング終了判断部と、
を備え、
前記エッチング部は、複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記光照射部、前記フォトルミネッセンス観測部および前記エッチング終了判断部は、前記複数の光電変換基板のうち、前記半導体層材料膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング装置。
【請求項16】
裏面電極型の光電変換素子における半導体層を形成するエッチング装置であって、
光電変換基板の一方主面側に連続して製膜された半導体層材料膜をエッチングして、前記光電変換基板の一方主面側にパターン化された前記半導体層を形成するエッチング部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板の主面に光を照射する光照射部と、
前記エッチング部における前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測するフォトルミネッセンス観測部と、
前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断するエッチング終了判断部と、
を備え、
前記エッチング部は、複数の前記光電変換基板を同時にエッチングし、
前記光照射部、前記フォトルミネッセンス観測部および前記エッチング終了判断部は、前記複数の光電変換基板のうち、前記半導体層材料膜の膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの光電変換基板、および前記半導体層材料膜の膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの光電変換基板を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とする、
光電変換素子のエッチング装置。
【請求項17】
前記エッチング終了判断部は、前記フォトルミネッセンス強度が最小値となるときに、または、前記フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるときに、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断する、請求項15または16に記載の光電変換素子のエッチング装置。
【請求項18】
前記エッチング部は、エッチング溶液を用いたウエットエッチングを行う、請求項15~17のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング装置。
【請求項19】
裏面電極型の光電変換素子の製造方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング方法を用いて、光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の各々の上にパターン化された電極層を形成する工程を含む、
光電変換素子の製造方法。
【請求項20】
裏面電極型の光電変換素子の製造方法であって、
請求項6~9のいずれか1項に記載の光電変換素子のエッチング方法を用いて、光電変換基板の一方主面側にパターン化された半導体層を形成する工程を含む、
光電変換素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子のエッチング方法、および光電変換素子のエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェハをエッチング液中に浸漬してアルミ等の導電薄膜のエッチングを行う際に、半導体ウェハと対向してエッチング液中に対向電極を配設し、半導体ウェハ表面上の導電薄膜と対向電極との間に流れる電流の、エッチング工程中における減少状態を基準値と比較し、予定の状態になったときにエッチング終了と判定する
技術がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-048671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、CVD法またはPVD法を用いて、基板トレイに配置された複数の半導体基板(ウェハ)に同時に透明電極層または半導体層を製膜する場合、半導体基板ごとに透明電極層または半導体層の膜厚にばらつきが生じる。そのため、半導体基板(ウェハ)ごとに透明電極層または半導体層の最適なエッチング時間にばらつきが生じる。また、CVD法またはPVD法を用いて、繰り返し同一条件で透明電極層または半導体層を製膜する場合であっても、製膜装置内の着膜具合など、微妙な環境変化の影響を受け、各製膜バッチ間で膜厚にばらつきが生じる。
【0005】
そこで、本発明は、半導体基板ごとに電極層または半導体層の膜厚にばらつきがあっても、複数の電極層または半導体層を適切にエッチングすることが可能なエッチング方法およびエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光電変換素子のエッチング方法は、裏面電極型の光電変換素子における電極層を形成するエッチング方法であって、光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の上に連続して製膜された導電膜をエッチングして、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々にパターン化された前記電極層を形成する際に、前記光電変換基板の主面に光を照射し、前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測し、前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記導電膜のエッチングの終了を判断する。
【0007】
本発明の他の光電変換素子のエッチング方法は、裏面電極型の光電変換素子における半導体層を形成するエッチング方法であって、光電変換基板の一方主面側に連続して製膜された半導体層材料膜をエッチングして、前記光電変換基板の前記一方主面側にパターン化された前記半導体層を形成する際に、前記光電変換基板の主面に光を照射し、前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測し、前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断する。
【0008】
本発明の光電変換素子のエッチング装置は、裏面電極型の光電変換素子における電極層を形成するエッチング装置であって、光電変換基板の一方主面側の第1導電型半導体層および第2導電型半導体層の上に連続して製膜された導電膜をエッチングして、前記第1導電型半導体層および前記第2導電型半導体層の各々にパターン化された前記電極層を形成するエッチング部と、前記エッチング部における前記光電変換基板の主面に光を照射する光照射部と、前記エッチング部における前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測するフォトルミネッセンス観測部と、前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記導電膜のエッチングの終了を判断するエッチング終了判断部と、を備える。
【0009】
本発明の他の光電変換素子のエッチング装置は、裏面電極型の光電変換素子における半導体層を形成するエッチング装置であって、光電変換基板の一方主面側に連続して製膜された半導体層材料膜をエッチングして、前記光電変換基板の一方主面側にパターン化された前記半導体層を形成するエッチング部と、前記エッチング部における前記光電変換基板の主面に光を照射する光照射部と、前記エッチング部における前記光電変換基板からのフォトルミネッセンス強度を観測するフォトルミネッセンス観測部と、前記フォトルミネッセンス強度に基づいて、前記半導体層材料膜のエッチングの終了を判断するエッチング終了判断部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、半導体基板ごとに電極層または半導体層の膜厚にばらつきがあっても、複数の電極層または半導体層を適切にエッチングすることが可能なエッチング方法およびエッチング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。
図2図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。
図3A】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図3B】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3C】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3D】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。
図3E】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図である。
図3F】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における半導体層形成工程を示す図である。
図3G】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明導電層形成工程を示す図である。
図3H】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層形成工程を示す図である。
図3I】本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。
図4】本実施形態に係る太陽電池の電極層のエッチング装置およびエッチング方法を示す図である。
図5A】透明電極層の離間距離を説明するための図である。
図5B】透明電極層の離間距離を説明するための図である。
図5C】透明電極層の離間距離を説明するための図である。
図6A】透明電極層のエッチング時間に対する半導体基板の開放電圧Vocの関係を示す図である。
図6B】透明電極層のエッチング時間に対する半導体基板の曲線因子FFの関係を示す図である。
図6C】半導体基板の開放電圧Vocに対する曲線因子FFの関係を示す図である。
図7】透明電極層のエッチング時間に対する半導体基板のフォトルミネッセンス強度の関係を示す図である。
図8】本実施形態の変形例に係る太陽電池の電極層のエッチング装置およびエッチング方法を示す図である。
図9A】第1導電型半導体層のエッチングを説明するための図である。
図9B】第1導電型半導体層のエッチングを説明するための図である。
図9C】第1導電型半導体層のエッチングを説明するための図である。
図10】第1導電型半導体層のエッチング時間に対する半導体基板のフォトルミネッセンス強度の関係を示す図である。
図11図9Cに示す第1導電型半導体層のエッチング過剰の問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態の一例について説明する。なお、各図面において同一または相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。また、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。
【0013】
(太陽電池)
図1は、本実施形態に係る太陽電池を裏面側からみた図である。図1に示す太陽電池1は、裏面電極型の太陽電池である。太陽電池1は、2つの主面を備える半導体基板11を備え、半導体基板11の主面において第1導電型領域7と第2導電型領域8とを有する。
【0014】
第1導電型領域7は、いわゆる櫛型の形状をなし、櫛歯に相当する複数のフィンガー部7fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部7bとを有する。バスバー部7bは、半導体基板11の一方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部7fは、バスバー部7bから、第1方向に交差する第2方向(Y方向)に延在する。
【0015】
同様に、第2導電型領域8は、いわゆる櫛型の形状であり、櫛歯に相当する複数のフィンガー部8fと、櫛歯の支持部に相当するバスバー部8bとを有する。バスバー部8bは、半導体基板11の一方の辺部に対向する他方の辺部に沿って第1方向(X方向)に延在し、フィンガー部8fは、バスバー部8bから、第2方向(Y方向)に延在する。
【0016】
フィンガー部7fとフィンガー部8fとは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に設けられている。
なお、第1導電型領域7および第2導電型領域8は、ストライプ状に形成されてもよい。
【0017】
図2は、図1の太陽電池におけるII-II線断面図である。図2に示すように、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光する側の主面である受光面側に順に積層されたパッシベーション層13および反射防止層15を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の主面のうちの受光面の反対側の主面(一方主面)である裏面側の一部(主に、第1導電型領域7)に順に積層されたパッシベーション層23、第1導電型半導体層25、および第1電極層27を備える。また、太陽電池1は、半導体基板11の裏面側の他の一部(主に、第2導電型領域8)に順に積層されたパッシベーション層33、第2導電型半導体層35、および第2電極層37を備える。
【0018】
半導体基板11は、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等の結晶シリコン材料で形成される。半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にn型ドーパントがドープされたn型の半導体基板である。なお、半導体基板11は、例えば結晶シリコン材料にp型ドーパントがドープされたp型の半導体基板であってもよい。n型ドーパントとしては、例えばリン(P)が挙げられる。p型ドーパントとしては、例えばホウ素(B)が挙げられる。半導体基板11は、受光面側からの入射光を吸収して光キャリア(電子および正孔)を生成する光電変換基板として機能する。
【0019】
半導体基板11の材料として結晶シリコンが用いられることにより、暗電流が比較的に小さく、入射光の強度が低い場合であっても比較的高出力(照度によらず安定した出力)が得られる。
【0020】
半導体基板11は、裏面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、半導体基板11に吸収されず通過してしまった光の回収効率が高まる。
【0021】
また、半導体基板11は、受光面側に、テクスチャ構造と呼ばれるピラミッド型の微細な凹凸構造を有していてもよい。これにより、受光面において入射光の反射が低減し、半導体基板11における光閉じ込め効果が向上する。
【0022】
パッシベーション層13は、半導体基板11の受光面側に形成されている。パッシベーション層23は、半導体基板11の裏面側の第1導電型領域7に形成されている。パッシベーション層33は、半導体基板11の裏面側の第2導電型領域8に形成されている。パッシベーション層13,23,33は、例えば真性(i型)アモルファスシリコン材料で形成される。パッシベーション層13,23,33は、半導体基板11で生成されたキャリアの再結合を抑制し、キャリアの回収効率を高める。
【0023】
半導体基板11の受光面側のパッシベーション層13上には、例えばSiO、SiN、またはSiON等の材料で形成される反射防止層15が設けられていてもよい。
【0024】
第1導電型半導体層25は、パッシベーション層23上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第1導電型領域7に形成されている。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第1導電型半導体層25は、例えばアモルファスシリコン材料にp型ドーパント(例えば、上述したホウ素(B))がドープされたp型の半導体層である。
【0025】
第2導電型半導体層35は、パッシベーション層33上に、すなわち半導体基板11の裏面側の第2導電型領域8に形成されている。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料で形成される。第2導電型半導体層35は、例えばアモルファスシリコン材料にn型ドーパント(例えば、上述したリン(P))がドープされたn型の半導体層である。
なお、第1導電型半導体層25がn型の半導体層であり、第2導電型半導体層35がp型の半導体層であってもよい。
【0026】
第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23と、第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33とは、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第2導電型半導体層35およびパッシベーション層33の一部は、隣接する第1導電型半導体層25およびパッシベーション層23の一部の上に重なっていてもよい(図示省略)。
【0027】
第1電極層27は、第1導電型半導体層25に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第1導電型領域7における第1導電型半導体層25の上に形成されている。第2電極層37は、第2導電型半導体層35に対応して、具体的には半導体基板11の裏面側の第2導電型領域8における第2導電型半導体層35の上に形成されている。第1電極層27は、第1導電型半導体層25上に順に積層された第1透明電極層28と第1金属電極層29とを有する。第2電極層37は、第2導電型半導体層35上に順に積層された第2透明電極層38と第2金属電極層39とを有する。
【0028】
第1透明電極層28および第2透明電極層38は、透明な導電性材料で形成される。透明導電性材料としては、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムおよび酸化スズの複合酸化物)等が挙げられる。
【0029】
第1金属電極層29および第2金属電極層39は、銀、銅、アルミニウム等の粒子状の金属材料、絶縁性の樹脂材料および溶媒を含有する導電性ペースト材料で形成される。
【0030】
第1電極層27および第2電極層37、すなわち第1透明電極層28,第2透明電極層38,第1金属電極層29および第2金属電極層39は、第2方向(Y方向)に延在する帯状をなしており、第1方向(X方向)に交互に並んでいる。第1透明電極層28と第2透明電極層38とは互いに分離されており、第1金属電極層29と第2金属電極層39とも互いに分離されている。
【0031】
第1透明電極層28の第1方向(X方向)の帯幅は、第1金属電極層29の第1方向(X方向)の帯幅よりも狭く、第2透明電極層38の第1方向(X方向)の帯幅は、第2金属電極層39の第1方向(X方向)の帯幅よりも狭い。
【0032】
(太陽電池の製造方法)
次に、図3A図3Iを参照して、本実施形態に係る太陽電池の製造方法について説明する。図3Aは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図3B図3Dは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第1半導体層形成工程を示す図である。また、図3Eは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層材料膜形成工程を示す図であり、図3Fは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における第2半導体層形成工程を示す図である。図3Gは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明導電層形成工程を示す図であり、図3Hは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における金属電極層形成工程を示す図であり、図3Iは、本実施形態に係る太陽電池の製造方法における透明電極層形成工程を示す図である。図3A図3Iでは、半導体基板11の裏面側を示し、半導体基板11の表面側を省略する。
【0033】
まず、図3Aに示すように、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、パッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zを順に積層(製膜)する(第1半導体層材料膜形成工程)。
【0034】
次に、図3B図3Dに示すように、半導体基板11の裏面側において、第2導電型領域8におけるパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zを除去することにより、第1導電型領域7に、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する(第1半導体層形成工程)。
【0035】
例えば、図3Bに示すように、半導体基板11の第1導電型領域7に、フォトリソグラフィ技術を用いたマスクMまたはメタルマスクMを形成する。その後、図3Cに示すように、マスクMを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のパターニングを行う。その後、図3Dに示すように、マスクMを剥離する。なお、p型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えばオゾンを含有するフッ酸や、硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられ、n型半導体膜に対するエッチング溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液のようなアルカリ性溶液が挙げられる。
【0036】
次に、図3Eに示すように、例えばCVD法またはPVD法を用いて、半導体基板11の裏面側の全面に、パッシベーション層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを順に積層(製膜)する(第2半導体層材料膜形成工程)。
【0037】
次に、図3Fに示すように、半導体基板11の裏面側において、第1導電型領域7におけるパッシベーション層材料膜33Zおよび第2導電型半導体層材料膜35Zを除去することにより、第2導電型領域8に、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35を形成する(半導体層形成工程)。
【0038】
例えば、上述同様に、フォトリソグラフィ技術を用いて生成するマスクまたはメタルマスクを利用したエッチング法を用いて、パッシベーション層33および第2導電型半導体層35をパターニングしてもよい。
【0039】
なお、上述した第1半導体層材料膜形成工程または第2半導体層材料膜形成工程において、半導体基板11の受光面側の全面に、パッシベーション層13を形成してもよい(図示省略)。
【0040】
次に、図3Gに示すように、第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35上にこれらに跨って透明導電膜28Zを形成する(透明導電膜形成工程)。透明導電膜28Zの形成方法としては、例えばCVD法またはPVD法等が用いられる。
【0041】
次に、図3Hに示すように、透明導電膜28Zを介して第1導電型半導体層25上に第1金属電極層29を形成し、透明導電膜28Zを介して第2導電型半導体層35上に第2金属電極層39を形成する(金属電極層形成工程)。
【0042】
第1金属電極層29および第2金属電極層39は、印刷材料(例えば、インク)を印刷することにより形成される。第1金属電極層29および第2金属電極層39の形成方法としては、スクリーン印刷法、インクジェット法、グラビアコーティング法、またはディスペンサー法等が挙げられる。これらの中でも、スクリーン印刷法が好ましい。
【0043】
印刷材料は、絶縁性の樹脂材料中に、粒子状(例えば、球状)の金属材料を含む。印刷材料は、粘度または塗工性の調整のために、溶媒等を含んでもよい。
【0044】
絶縁性の樹脂材料としては、マトリクス樹脂等が挙げられる。詳説すると、絶縁性樹脂としては、高分子化合物であると好ましく、特に熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂であると好ましく、エポキシ、ウレタン、ポリエステルまたはシリコーン系の樹脂等が代表例である。
【0045】
金属材料としては、銀、銅、アルミニウム等が挙げられる。これらの中でも、銀粒子を含む銀ペーストが好ましい。
【0046】
例えば、印刷材料に含有される金属材料の割合は、印刷材料全体に対する重量比として85%以上95%以下である。
【0047】
次に、第1金属電極層29および第2金属電極層39の印刷後、加熱処理または紫外線照射処理により、第1金属電極層29および第2金属電極層39における絶縁性樹脂を硬化させる。
【0048】
次に、図3Iに示すように、第1金属電極層29および第2金属電極層39をマスクとして用いたエッチング法を用いて、透明導電膜28Zをパターニングすることにより、互いに分離された第1透明電極層28および第2透明電極層38を形成する(透明電極層形成工程)。エッチング法としては例えばウェットエッチング法が挙げられ、エッチング溶液としては塩酸(HCl)等の酸性溶液が挙げられる。
以上の工程により、本実施形態の裏面電極型の太陽電池1が完成する。
【0049】
(太陽電池の透明電極層のエッチング装置)
次に、図4を参照して、本実施形態に係る太陽電池の透明電極層のエッチング装置について説明する。図4は、本実施形態に係る太陽電池の電極層のエッチング装置を示す図である。図4に示すように、エッチング装置100は、上述した透明電極層形成工程において、第1透明電極層28および第2透明電極層38を形成するためのエッチング装置である。エッチング装置100は、エッチング部110と、光照射部120と、フォトルミネッセンス観測部130と、エッチング終了判断部140とを備える。
【0050】
エッチング部110は、図3Hに示す半導体基板11の裏面側の第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の上に連続して製膜された透明導電膜28Zをエッチングして、図3Iに示すように第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の各々にパターン化された第1透明電極層28および第2透明電極層38を形成する。例えば、上述したように、第1金属電極層29および第2金属電極層39をマスクとして用いたエッチング法が用いられる。エッチング法としては例えばウェットエッチング法が挙げられ、エッチング部110はエッチング溶液槽である。エッチング溶液としては塩酸(HCl)等の酸性溶液が挙げられる。
【0051】
光照射部120は、エッチング部110における半導体基板11の受光面または裏面に光を照射する。裏面は金属電極層により光が遮蔽されるので、受光面に光を照射するのが好ましい。光照射部120は、例えば半導体基板11のフォトルミネッセンス特性に応じた波長の光を照射する光照射装置である。
【0052】
フォトルミネッセンス観測部130は、エッチング部110における半導体基板11からのフォトルミネッセンス強度を観測する。フォトルミネッセンス観測部としては、CCDイメージセンサなどが組み込まれた、公知のフォトルミネッセンス強度測定装置が挙げられる。
【0053】
エッチング終了判断部140は、フォトルミネッセンス強度に基づいて、透明導電膜28Zのエッチングの終了を判断する。具体的には、エッチング終了判断部140は、フォトルミネッセンス強度が最大値となるときに、或いは、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるときに、透明導電膜28Zのエッチングの終了を判断する(詳細は後述する)。
【0054】
エッチング終了判断部140は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の演算プロセッサで構成される。エッチング終了判断部140の各種機能は、例えば記憶部に格納された所定のソフトウェア(プログラム、アプリケーション)を実行することで実現される。エッチング終了判断部140の各種機能は、ハードウェアとソフトウェアとの協働で実現されてもよいし、ハードウェア(電子回路)のみで実現されてもよい。
【0055】
また、エッチング終了判断部140は、記憶部を備える。記憶部は、エッチングの終了を判断するためのフォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量の閾値(所定値)を予め記憶する。記憶部は、例えばEEPROM等の書き換え可能なメモリ、または例えばHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の書き換え可能なディスクである。
【0056】
(太陽電池の透明電極層のエッチング方法)
次に、本実施形態に係る太陽電池の透明電極層のエッチング方法について説明する。
【0057】
図3Hに示すように第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の上に透明導電膜28Zが連続して製膜された半導体基板11を、エッチング部110に浸漬する(ウエットエッチング)。これにより、透明導電膜28Zの上に形成された第1金属電極層29および第2金属電極層39をマスクとして透明導電膜28Zをエッチングして、図3Dに示すように第1導電型半導体層25および第2導電型半導体層35の各々にパターン化された第1透明電極層28および第2透明電極層38を形成する。
【0058】
このとき、光照射部120によって、半導体基板11のフォトルミネッセンス特性に応じた波長の光を、半導体基板11の受光面または裏面に照射する。そして、フォトルミネッセンス観測部130によって、半導体基板11からのフォトルミネッセンス強度を観測する。
【0059】
エッチング終了判断部140によって、フォトルミネッセンス強度に基づいて、透明導電膜28Zのエッチングの終了を判断する。具体的には、フォトルミネッセンス強度が最大値となるときに、或いは、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるときに、透明導電膜28Zのエッチングの終了を判断する。
【0060】
ここで、透明電極層28,38の離間距離に対する、半導体基板11の性能(開放電圧Voc、曲線因子FF)と半導体基板11のフォトルミネッセンス強度特性とには相関がある。
【0061】
図5A図5Cは、透明電極層28,38の離間距離を説明するための図である。図5Aは、(i)透明電極層28,38のエッチングが不十分であり、透明電極層28,38の離間距離が小さい場合を説明するための図であり、図5Bは、(ii)透明電極層28,38のエッチングが適切であり、透明電極層28,38の離間距離が適切である場合を説明するための図であり、図5Cは、(iii)透明電極層28,38のエッチングが過剰であり、透明電極層28,38の離間距離が大きい場合を説明するための図である。
【0062】
また、図6Aは、透明電極層28,38のエッチング時間に対する半導体基板11の開放電圧Vocの関係を示す図であり、図6Bは、透明電極層28,38のエッチング時間に対する半導体基板11の曲線因子FFの関係を示す図であり、図6Cは、半導体基板11の開放電圧Vocに対する曲線因子FFの関係を示す図である。また、図7は、透明電極層28,38のエッチング時間に対する半導体基板11のフォトルミネッセンス強度の関係を示す図である。
【0063】
図5Aに示すように、(i)透明電極層28,38のエッチングが不十分であり、透明電極層28,38の離間距離が小さいと、図6Aの(i)および図6Bの(i)に示すように、半導体基板11のVocおよびFFは低い。このとき、図7の(i)に示すように、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度も低い。
【0064】
その後、透明電極層28,38のエッチングが進行し、透明電極層28,38の離間距離が大きくなると、半導体基板11のVocおよびFFが上昇する。このとき、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度も上昇する。
【0065】
その後、図5Bに示すように、(ii)透明電極層28,38のエッチングが適切(最適)となり、透明電極層28,38の離間距離が適切(最適)となると、図6Aの(ii)および図6Bの(ii)に示すように、半導体基板11のVocおよびFFは最大となる。このとき、図7の(ii)に示すように、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度も最大となる、或いは、フォトルミネッセンス強度の変化が飽和し、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの上昇量(変化量)が所定値以下となる。
【0066】
さらに、透明電極層28,38のエッチングが進行し、透明電極層28,38の離間距離が大きくなると、半導体基板11のVocは最大のままであるが、FFは低下する。このとき、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は最大のままである。
【0067】
すなわち、図5Cに示すように、(iii)透明電極層28,38のエッチングが過剰となり、透明電極層28,38の離間距離が大きすぎると、図6Aの(iii)および図6Bの(iii)に示すように、半導体基板11のVocは最大のままであるが、FFは低下する。このとき、図7の(iii)に示すように、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は最大のままである。
【0068】
これにより、(ii)PL強度が最大になる時点(飽和する時点)、或いは、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの減少量(変化量)が所定値以下となる時点が、(ii)透明電極層28,38のエッチングが適切(最適)な時点である。
【0069】
この点に関し、本実施形態の太陽電池の透明電極層のエッチング方法およびエッチング装置によれば、透明電極層28,38のエッチングの最中にフォトルミネッセンス強度をリアルタイムに測定(観測)し、エッチング終了を判定する。例えば、フォトルミネッセンス強度が最大になる時点(飽和する時点)を、透明電極層28,38のエッチングが適切(最適)な時点とする。これにより、半導体基板11ごとに透明電極層28,38の膜厚にばらつきがあっても、複数の透明電極層28,38を適切にエッチングすることができる。
【0070】
ところで、実際に製品を量産する場合、最適なエッチング時間の設定が難しい。例えば、PVD法を用いて複数の半導体基板に同時に透明電極層を製膜すると、PVD装置内の位置によって透明電極層の膜厚にばらつきが生じる。このように、半導体基板(ウェハ)によって透明電極層の膜厚にばらつきがあると、複数の半導体基板の透明電極層を同時にエッチングする場合、最適なエッチング時間の設定が難しい。
【0071】
この点に関し、図8に示すように、カセット115を用いて複数の半導体基板11を同時にエッチング部110に浸漬してエッチングする場合、複数の半導体基板11のうち、透明導電膜28Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)、および透明導電膜28Zの膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの半導体基板11(薄)を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象としてもよい。
【0072】
例えば、透明導電膜28Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)、および透明導電膜28Zの膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの半導体基板11(薄)をカセット115の両端にそれぞれセットし、カセット115の両端においてフォトルミネッセンス強度を観察する。これにより、半導体基板11ごとに透明電極層28,38の膜厚にばらつきがあっても、複数の透明電極層28,38をより適切にエッチングすることができる。
【0073】
なお、カセット115を用いて複数の半導体基板11を同時にエッチング部110に浸漬してエッチングする場合、複数の半導体基板11のうち、透明導電膜28Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)のみを、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とするだけでも十分である。
【0074】
例えば、透明導電膜28Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)をカセット115の一方端にセットし、カセット115の一方端においてフォトルミネッセンス強度を観察する。
【0075】
(太陽電池の第1導電型半導体層のエッチング装置)
次に、図4を参照して、本実施形態に係る太陽電池の第1導電型半導体層のエッチング装置について説明する。本実施形態に係る太陽電池の半導体層のエッチング装置100の構成は、図4に示す太陽電池の電極層のエッチング装置100の構成と同一である。なお、本実施形態に係る太陽電池の半導体層のエッチング装置100は、太陽電池の電極層のエッチング装置100と比較して、主にエッチング部110およびエッチング終了判断部140の機能および動作が異なる。太陽電池の半導体層のエッチング装置100は、上述した第1導電型半導体層形成工程において、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成するためのエッチング装置である。
【0076】
エッチング部110は、図3Bに示す半導体基板11の裏面側に連続して製膜されたパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zをエッチングして、図3Cに示すように半導体基板の裏面側にパターン化されたパッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する。例えば、上述したように、マスクM(例えばレジスト)を用いたエッチング法が用いられる。エッチング法としては例えばウェットエッチング法が挙げられ、エッチング部110はエッチング溶液槽である。エッチング溶液としてはオゾンを含有するフッ酸や、硝酸とフッ酸の混合液のような酸性溶液が挙げられる。
【0077】
エッチング終了判断部140は、フォトルミネッセンス強度に基づいて、パッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zのエッチングの終了を判断する。具体的には、エッチング終了判断部140は、フォトルミネッセンス強度が最小値となるときに、或いは、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるときに、透明導電膜28Zのエッチングの終了を判断する(詳細は後述する)。
【0078】
(太陽電池の第1導電型半導体層のエッチング方法)
次に、本実施形態に係る太陽電池の第1導電型半導体層のエッチング方法について説明する。
【0079】
図3Bに示すように半導体基板11の上にパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zが連続して製膜された半導体基板11を、エッチング部110に浸漬する(ウエットエッチング)。これにより、レジストをマスクとしてパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zをエッチングして、図3Cに示すようにパターン化されたパッシベーション層23および第1導電型半導体層25を形成する。
【0080】
このとき、光照射部120によって、半導体基板11のフォトルミネッセンス特性に応じた波長の光を、半導体基板11の受光面または裏面に照射する。そして、フォトルミネッセンス観測部130によって、半導体基板11からのフォトルミネッセンス強度を観測する。
【0081】
エッチング終了判断部140によって、フォトルミネッセンス強度に基づいて、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングの終了を判断する。具体的には、フォトルミネッセンス強度が最小値となるときに、或いは、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの変化量が所定値以下となるときに、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングの終了を判断する。
【0082】
ここで、半導体基板11そのものでは、表面でキャリアの再結合が生じやすく、フォトルミネッセンス強度は小さい。
図3Aおよび図3Bに示すように半導体基板11の裏面側にパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zが形成されると、これらの膜によって半導体基板11の表面でのキャリアの再結合が抑制され、フォトルミネッセンス強度は大きくなる。
図3Cに示すようにパッシベーション層23および第1導電型半導体層25が適切にパターン化されると、露出した半導体基板11の表面でキャリアの再結合が生じやすくなり、フォトルミネッセンス強度は小さくなる。
このように、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のパターニングの度合いと半導体基板11のフォトルミネッセンス強度特性とには相関がある。
【0083】
図9Aは、(i)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが不十分である場合を説明するための図であり、図9Bは、(ii)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが適切である場合を説明するための図であり、図9Cは、(iii)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが過剰である場合を説明するための図である。
また、図10は、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチング時間に対する半導体基板11のフォトルミネッセンス強度の関係を示す図である。
【0084】
図9Aに示すように、(i)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが不十分であると、図10の(i)に示すように、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は高い。
【0085】
その後、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが進行すると、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は減少する。
その後、図9Bに示すように、(ii)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが適切(最適)となると、図10の(ii)に示すように、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は最小となる、或いは、フォトルミネッセンス強度の変化が飽和し、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの減少量(変化量)が所定値以下となる。
【0086】
さらに、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが進行すると、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は最小のままである。
すなわち、図9Cに示すように、(iii)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが過剰となると、図10の(iii)に示すように、半導体基板11のフォトルミネッセンス強度は最小のままである。なお、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが過剰となると、図11に示すように、第1導電型半導体層25と第2導電型半導体層35とが短絡する可能性がある。
【0087】
これにより、(ii)PL強度が最小になる時点(飽和する時点)、或いは、フォトルミネッセンス強度の単位時間当たりの減少量(変化量)が所定値以下となる時点が、(ii)パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが適切(最適)な時点である。
【0088】
この点に関し、本実施形態の太陽電池の第1導電型半導体層のエッチング方法およびエッチング装置によれば、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングの最中にフォトルミネッセンス強度をリアルタイムに測定(観測)し、エッチング終了を判定する。例えば、フォトルミネッセンス強度が最小になる時点を、パッシベーション層23および第1導電型半導体層25のエッチングが適切(最適)な時点とする。これにより、半導体基板11ごとにパッシベーション層23および第1導電型半導体層25の膜厚にばらつきがあっても、複数のパッシベーション層23および第1導電型半導体層25を適切にエッチングすることができる。
【0089】
この場合でも、上述同様に、実際に製品を量産する場合、最適なエッチング時間の設定が難しい。例えば、CVD法を用いて複数の半導体基板に同時にパッシベーション層および第1導電型半導体層を製膜すると、CVD装置内の位置によってパッシベーション層および第1導電型半導体層の膜厚にばらつきが生じる。このように、半導体基板(ウェハ)によってパッシベーション層および第1導電型半導体層の膜厚にばらつきがあると、複数の半導体基板のパッシベーション層および第1導電型半導体層を同時にエッチングする場合、最適なエッチング時間の設定が難しい。
【0090】
この点に関し、上述同様に、図8に示すように、カセット115を用いて複数の半導体基板11を同時にエッチング部110に浸漬してエッチングする場合、複数の半導体基板11のうち、パッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)、およびパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zの膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの半導体基板11(薄)を、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象としてもよい。
【0091】
例えば、パッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)、およびパッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zの膜厚が最も薄い方の少なくとも1つの半導体基板11(薄)をカセット115の両端にそれぞれセットし、カセット115の両端においてフォトルミネッセンス強度を観察する。これにより、半導体基板11ごとにパッシベーション層23および第1導電型半導体層25の膜厚にばらつきがあっても、複数のパッシベーション層23および第1導電型半導体層25をより適切にエッチングすることができる。
【0092】
なお、カセット115を用いて複数の半導体基板11を同時にエッチング部110に浸漬してエッチングする場合、複数の半導体基板11のうち、パッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)のみを、光照射、フォトルミネッセンス強度観測、およびエッチング終了判断の対象とするだけでも十分である。
【0093】
例えば、パッシベーション層材料膜23Zおよび第1導電型半導体層材料膜25Zの膜厚が最も厚い方の少なくとも1つの半導体基板11(厚)をカセット115の一方端にセットし、カセット115の一方端においてフォトルミネッセンス強度を観察する。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、図2に示すようにヘテロ接合型の太陽電池1を例示したが、本発明は、ヘテロ接合型の太陽電池に限らず、ホモ接合型の太陽電池等の種々の太陽電池に適用可能である。
【0095】
また、上述した実施形態では、結晶シリコン基板を有する太陽電池を例示したが、これに限定されない。例えば、太陽電池は、ガリウムヒ素(GaAs)基板を有していてもよい。
【0096】
また、上述した実施形態では、金属電極層をマスクとして透明電極層をエッチングする方法および装置を例示したが、これに限定されない。例えば、本発明の特徴は、一般的な金属マスクまたはレジストをマスクとして透明電極層をエッチングする方法および装置にも適用可能である。
【0097】
また、上述した実施形態では、エッチング溶液を用いたウエットエッチングを例示したが、これに限定されない。例えば、本発明の特徴は、ドライエッチングにも適用可能である。
【0098】
また、上述した実施形態では、太陽電池の透明電極層のエッチング方法およびエッチング装置を例示したが、これに限定されない。例えば、本発明の特徴は、フォトルミネッセンス特性を有する光電変換素子であって、極性が異なる電極層が隣り合う光電変換素子の電極層のエッチング方法およびエッチング装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 太陽電池(光電変換素子)
7 第1導電型領域
7b,8b バスバー部
7f,8f フィンガー部
8 第2導電型領域
11 半導体基板(光電変換基板)
13,23,33 パッシベーション層
23Z,33Z パッシベーション層材料膜
15 反射防止層
25 第1導電型半導体層
25Z 第1導電型半導体層材料膜
27 第1電極層
28 第1透明電極層(電極層)
28Z 透明導電膜(導電膜)
29 第1金属電極層
35 第2導電型半導体層
35Z 第2導電型半導体層材料膜
37 第2電極層
38 第2透明電極層(電極層)
39 第2金属電極層
100 エッチング装置
110 エッチング部
115 カセット
120光照射部
130 フォトルミネッセンス観測部
140 エッチング終了判断部
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11