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特許7592655銅多孔質焼結シート及び該銅多孔質焼結シートの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】銅多孔質焼結シート及び該銅多孔質焼結シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/11 20060101AFI20241125BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20241125BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20241125BHJP
【FI】
B22F3/11 A
B22F1/00 L
B22F7/04 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022004132
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103552
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2023-11-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】大西 亜友
(72)【発明者】
【氏名】大河内 均
(72)【発明者】
【氏名】和田 仁
(72)【発明者】
【氏名】宮川 智
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-524220(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112247152(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00-8/00
C22C 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅と不可避不純物とからなる銅多孔質焼結シートであって、前記銅多孔質焼結シートは、連結した銅粒子からなり、前記連結した銅粒子の下記(式1)で表されるネック指標値が0.40以上、かつ、0.75以下であり、多孔度が20%以上、かつ、40%以下である銅多孔質焼結シート。
(式1):L/{(D1+D2)/2}
L:連結部の長さ
D1、D2:連結している2つの銅粒子の連結部と平行な各長径
【請求項2】
厚みが30μm以上、かつ、200μm以下である請求項1記載の銅多孔質焼結シート。
【請求項3】
前記不可避不純物の総量が0.3質量%以下である請求項1又は2記載の銅多孔質焼結シート。
【請求項4】
屈曲した連通孔を有する請求項1乃至3いずれか記載の銅多孔質焼結シート。
【請求項5】
親水性である請求項1乃至4いずれか記載の銅多孔質焼結シート。
【請求項6】
銅粉末と高分子樹脂と溶剤を含有するペーストを30μm以上、かつ、200μm以下の厚みのシート状に成形した後、窒素及び/又はアルゴンガス雰囲気中で加熱処理して焼結する請求項1乃至5いずれか記載の銅多孔質焼結シートの製造方法。
【請求項7】
前記銅粉末が、球体積換算最大粒子径が50μm以下であり、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が10以下であり、50%積算球体積換算粒子径が3μm以上であり、BET比表面積が5000cm/g以下である請求項6記載の銅多孔質焼結シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅多孔質焼結シートに関する。詳しくは、該銅多孔質焼結シートは、形成される空隙の形状や大きさ及び形状や大きさの分布状態の制御が容易であり、多孔度が高く、引張強度や曲げ強度に優れ、また、屈曲する連通孔を有する薄い銅多孔質焼結シートに関する。
【背景技術】
【0002】
金属多孔質シートは通常の金属材料と異なる特性があるため、様々な用途で利用できる。
【0003】
特に開気孔を有する金属多孔質シートは表面積が大きいため、電池の集電体、ヒートパイプまたはベーパーチャンバーのウィック等への利用が期待されている。
【0004】
また、銅は電気伝導性に優れるためリチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタの電極部材として使用されており、また、熱伝導性にも優れるため、放熱部材としても利用されている。これらは通常シート状または箔状で用いられているが、さらなる薄型化が期待されている。
【0005】
金属多孔質シートは、発泡樹脂に金属めっきを施した後、樹脂を消失させて発泡金属を得てから、シート状に薄くカットして製造することができる。
【0006】
また、金属粉末をバインダー及び溶剤と混合してスラリー状とし、ドクターブレード法等でシート状に成形したものを焼結して、多孔質シートを作製し、該多孔質シートに圧力をかけて薄く延ばして製造することができる。
【0007】
一般的に金属多孔質シートの製造には、ガスアトマイズ法等によって得られる球状の金属粉末が使用される。
【0008】
球状の金属粉末を用いれば、比較的容易に空隙の形状、大きさ及び形状や大きさの分布状態を制御することができる。
【0009】
しかし、球状の金属粉末は粒子同士の接触面積が小さいことから、得られた金属多孔質シートは引張強度や曲げ強度が低く、容易に破断するので実用に耐える強度を有する金属多孔質シートを得ることが難しいという問題がある。
【0010】
そこで、形成される空隙の形状、大きさ及び形状や大きさの分布状態の制御が容易であり、多孔度が高く、また、引張強度や曲げ強度に強くて薄い銅多孔質シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2012-12688
【文献】特開2004-156103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1には、電池に使用する際、電池の厚みを薄くできる、又は、内部抵抗が小さくなる等の利点から、空隙率が80%~95%程度、厚みが0.1mm~0.5mmの金属多孔質薄板が記載されている。
【0013】
厚みが0.1mm~0.5mm金属多孔質薄板は電池の内部抵抗の低下には有利であるが、容量を担わない部分の体積が大きくなり、体積当たりのエネルギー密度が低くなるという問題がある。
【0014】
また、0.1mm~0.5mmの金属多孔質薄板を放熱部材として電子機器に使用すると機器を小型化できないという問題がある。
【0015】
特許文献2には、成形圧力6t/cm、1%ステアリン酸亜鉛添加により成形した圧粉体のラトラ値が10%以下である金属粉末であって、水アトマイズ法で製造される異形状化した金属粉末を用いることで、粒子同士の接触面積を高め、引張強度に優れる金属多孔質シートが記載されている。
【0016】
しかしながら、異形状化した粉末を用いた場合、球状粉末を用いた場合と比較して形成される空隙の形状、大きさ及び形状や大きさの分布状態は制御し難く、不均一になるという問題がある。
【0017】
本発明者らは、前記諸問題を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、連結した銅粒子からなり、前記連結した銅粒子のネック指標値が0.40以上、かつ、0.75以下であり、多孔度が20%~40%である銅多孔質焼結シートであれば、空隙の形状、大きさ及び形状や大きさの分布状態の制御が容易であり、多孔度が高く、引張強度や曲げ強度に優れる銅多孔質焼結シートになるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記技術的課題は次のとおりの本発明によって解決できる。
【0019】
本発明は、銅と不可避不純物とからなる銅多孔質焼結シートであって、前記銅多孔質焼結シートは、連結した銅粒子からなり、前記連結した銅粒子の下記(式1)で表されるネック指標値が0.40以上、かつ、0.75以下であり、多孔度が20%以上、かつ、40%以下である銅多孔質焼結シートである。
(式1): L/{(D1+D2)/2}
L:連結部の長さ
D1、D2:連結している2つの銅粒子の各直径
【0020】
本発明は、厚みが30μm以上、かつ、200μm以下である前記の銅多孔質焼結シートである。
【0021】
また本発明は、不可避不純物の総量が0.3質量%以下である前記の銅多孔質焼結シートである。
【0022】
また本発明は、屈曲した連通孔を有する前記の銅多孔質焼結シートである。
【0023】
また本発明は、親水性である前記の銅多孔質焼結シートである。
【0024】
また本発明は、銅粉末と高分子樹脂と溶剤を含有するペーストを30μm以上、かつ、200μm以下の厚みのシート状に成形した後、窒素及び/又はアルゴンガス雰囲気で焼結する前記の銅多孔質焼結シートの製造方法である。
【0025】
また本発明は、前記銅粉末が、球体積換算最大粒子径が50μm以下であり、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が10以下であり、50%積算球体積換算粒子径が3μm以上であり、BET比表面積が5000cm/g以下である前記の銅多孔質焼結シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は連結した銅粒子からなる銅多孔質焼結シートであり、前記連結した2つの銅粒子のネック指標値が0.40~0.75であり、多孔度が20%~40%であり、球状粉末と同じく、形成される空隙の形状、大きさ及び形状や大きさの分布状態の制御が容易な多孔度の高い銅多孔質焼結シートである。
【0027】
したがって、異形状化した粒子からなる多孔質シートよりも空隙の形状や大きさ及び形状や大きさの分布を均一にすることができる。
【0028】
また、引張強度に優れると共に曲げ強度にも優れるので、曲げ加工によって容易に破断しない銅多孔質焼結シートになる。
【0029】
また、曲げ強度に優れるため、ロール形状に巻き取った状態で搬送できるのでハンドリング性に優れ、後工程において曲げ加工もできる。
【0030】
また、本発明における銅多孔質焼結シートは屈曲した連通孔を有するので、比表面積が大きく、熱交換器用の熱媒体の通路部材に使用すれば、熱交換性能の向上が望める。
【0031】
また、本発明における銅多孔質焼結シートは親水性処理によって親水性に改質することができる。
【0032】
親水性であれば、水を熱媒体として使用することができる。
【0033】
また、窒素及び/又はアルゴンガス雰囲気で焼結することで、不純物の少ない銅多孔質焼結シートを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ネック指標値の算出方法を示す図である。
図2】本発明における銅多孔質焼結シートの走査型電子顕微鏡画像(1000倍)である。
図3】銅粉末のレーザー回折法による球体積換算粒子径分布を示す図であって、球体積換算粒子径による頻度(%)のヒストグラム(a)と、球体積換算粒子径と積算(%)の関係(b)である。
図4】アルゴンガス雰囲気と大気雰囲気のアクリル樹脂の熱重量測定の結果である温度による重量減少曲線である。
図5】本発明における銅多孔質焼結シートの断面の走査型電子顕微鏡画像(500倍)である。
図6】半径Rが1mmの丸棒に沿って180°曲げた時の銅多孔質焼結シートを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明における銅多孔質焼結シートは連結した銅粒子からなり、連結した銅粒子のネック指標値は0.40~0.75である。
【0036】
ネック指標値は連結部(以下「ネック」という)で連結される2つの銅粒子の各直径(D1、D2)の平均に対するネックの長さ(L)の比で表される値であり、次の(式1)で算出する(図1)。
【0037】
(式1) L/{(D1+D2)/2}
【0038】
ネック指標値が0.40未満であると、焼結が不十分であり、銅多孔質焼結シートを製造できない虞がある。
【0039】
また、引張りや曲げ加工によって、容易に破断する虞もある。
【0040】
ネック指標値が0.75を超えると、焼結が進み過ぎて銅多孔質焼結シートが緻密化し、多孔度が20%未満になる虞がある。
【0041】
また、内部に閉じられた孔が形成されて連通孔の割合が少なくなる虞がある。
【0042】
ネック指標値の測定方法は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して銅多孔質焼結シートの表面を90μm×120μmの視野で観察し、ネックの長さ(L)及びネックを挟む2つの銅粒子の直径(D1、D2)を測定して得た値から求めればよい(図2)。
【0043】
本発明における銅多孔質焼結シートは、多孔度が20%~40%である。
【0044】
多孔度が20%未満の場合、銅多孔質焼結シートが緻密な焼結体となるため、内部に閉じ込められた孔が形成されて連通孔が形成されない虞がある。
【0045】
また、多孔度が40%を超えると、焼結が不十分であり、銅多孔質焼結シートを製造することができない虞がある。
【0046】
また、引張りや曲げ加工によって容易に破断する虞もある。
【0047】
銅の真密度に対する銅多孔質焼結シートの密度の比を相対密度とすると、多孔度(%)は(式2)で求めることができる。
【0048】
(式2) 多孔度(%)=(1-相対密度)×100
【0049】
銅多孔質焼結シートの相対密度は、シートの密度を算出した後、銅の真密度(8.94g/cm)に対する測定した銅多孔質焼結シートの密度の比で求めればよい。
【0050】
本発明における銅多孔質焼結シートは、厚みが30μm~200μmであることが好ましい。
【0051】
30μm未満の銅多孔質焼結シートを製造することは困難であり、また、200μmを超えると曲げ加工が困難になり、長尺巻きが困難になるからである。
【0052】
厚みは、超小型デュアル式膜厚測定器MP0R(フィッシャー・インストルメンツ製)によって測定することができる。
【0053】
本発明における銅多孔質体焼結シートは、銅の他に不可避不純物を含む。
【0054】
不可避不純物として、酸素、炭素、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、クロム、鉄、ニッケルを例示する。
【0055】
不可避不純物は微量であれば銅多孔質焼結シートの引張強度や曲げ強度へ影響は少ないが、総量が0.3質量%を超えると引張強度や曲げ強度が低下する虞があるので好ましくない。
【0056】
不可避不純物量は、炭素・硫黄同時分析装置EMIA-920V(株式会社堀場製作所製)、酸素・窒素同時分析装置ON830(LECO社製)、及び、蛍光X線分析装置ZSX PrimusIV(株式会社リガク製)によって測定できる。
【0057】
本発明における銅多孔質焼結シートは、屈曲した連通孔を有することが好ましい。
【0058】
屈曲していない直進する孔は、形状が直線的であるので引張りや曲げ加工時に亀裂の発生点となり、容易に破断する虞があるからである。
【0059】
屈曲した連通孔であるかどうかは、銅多孔質焼結シートの片面から反対面に、直進性のある可視光を照射して、可視光が透過するか、しないかを観察し、透過しなければ屈曲した連通孔であると確認できる。
【0060】
また、走査型電子顕微鏡により銅多孔質焼結シートの断面構造を観察することでも確認できる。
【0061】
連通孔でない孔は、放熱効果が低下するので集電体やヒートパイプとして実用上の機能が損なわれるから好ましくない。
【0062】
連通孔であるかどうかは銅多孔質焼結シートの片面に純水を40質量%以下含有するエタノール混合液を滴下して、反対面に浸透するかどうかを観察し、浸透すれば連通孔であると確認できる。
【0063】
本発明における銅多孔質焼結シートは親水性であることが好ましい。
【0064】
親水性でなければ水に濡れないので、片面側から屈曲した連通孔中を通過して反対面側に水が浸透しない。
【0065】
また、水を熱媒体として使用する場合、連通孔内部に水の流れが無くなるので放熱効果が低下するからである。
【0066】
酸化雰囲気や高温多湿環境で使用する場合は防錆処理をしてから親水性処理を行うことが好ましい。
【0067】
銅の酸化が進むと、電気や熱の伝導性が低下する虞があるからである。
【0068】
本発明における銅多孔質焼結シートは、半径Rが1mmの丸棒に沿って、0°~180°に曲げて元のシート形状に戻した時に割れが生じない程度の曲げ強度を有することが好ましい。
【0069】
銅多孔質焼結シートを長尺にした時に、円柱状の管に巻き取ることができるのでハンドリング性と生産性に優れるからである。
【0070】
多孔度が40%を超えると、半径Rが1mmの丸棒に沿って、0°~180°に曲げて元に戻した時に、割れが生じる可能性が高くなる。
【0071】
割れがあるかどうかは、目視、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で確認できる。
【0072】
本発明における銅多孔質焼結シートは、銅粉末、高分子樹脂及び溶剤を含有するペーストを30μm~200μmの厚みとなるようにフィルム基材に塗布し、乾燥させた後にフィルムから剥離して得た成形シートを窒素及び/又はアルゴンガス雰囲気で加熱処理し、高分子樹脂を除去しながら焼結して製造することができる。
【0073】
酸化性雰囲気で加熱すると高分子樹脂の分解消失速度が速くなるため急激に成形シートが収縮するので、形状の制御が困難になり、しわやうねりが発生する虞がある。
【0074】
また、銅粉末の酸化が進み、焼結後に銅中の不可避不純物と化合して酸化物となり、酸素が残存し易くなるため、銅多孔質焼結シート中の不可避不純物の総量が0.3質量%以下にならない虞がある。
【0075】
また、成形シートを還元性雰囲気で加熱すると、成形体から高分子樹脂が変質して分解消失せずに残存して、銅多孔質焼結シート中の不可避不純物の総量が0.3質量%以下にならない虞がある。
【0076】
また、半径Rが1mmの丸棒に沿って、0°~180°に曲げて元に戻した時に、割れが生じる虞がある。
【0077】
原料の銅粉末は、球体積換算最大粒子径が50μm以下であることが好ましい。
【0078】
球体積換算最大粒子径が50μmを超えると、銅多孔質焼結シートの厚みを200μm以下で製造する際に、厚みに対する粒子数が4以下になるので、半径Rが1mmの丸棒に沿って、0°~180°に曲げて元に戻した時に割れが生じる虞がある。
【0079】
銅粉末は、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が10以下であることが好ましく、より好ましくは、2.5以下である。
【0080】
10を超える銅粉末は、大径の銅粒子の間に小径の銅粒子が入り込むので充填率が上がり、銅多孔質焼結シートの緻密化が進むからである。
【0081】
緻密化すると、連通孔の比率が低くなるので、多孔度が20%未満になる虞がある。
【0082】
銅粉末は、50%積算球体積換算粒子径は3μm以上が好ましく、より好ましくは5μm以上である。
【0083】
3μm未満である銅粉末を用いると、焼結時に銅多孔質焼結シートの緻密化が進み、孔の連通性は損なわれ、多孔度は20%未満になる虞がある。
【0084】
球体積換算最大粒子径と10%、50%、90%の積算球体積換算粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-3100(株式会社島津製作所製)によって測定することができる。
【0085】
本明細書における積算球体積換算粒子径は、測定対象とした粉末全体の体積を100%とし、体積の小さな粒子から順番に体積を積算して一定の積算値に達したときの粒子径である。
【0086】
体積の積算値が、全体の積算の10%に達した時の球体積換算粒子径が10%積算球体積換算粒子径であり、同様に50%、90%に達した時の粒子径がそれぞれ50%、90%積算球体積換算粒子径である。
【0087】
本発明における銅粉末の粒度分布を図3に示す。
【0088】
球体積換算粒子径による頻度(%)を(a)に示し、球体積換算粒子径と積算(%)の関係を(b)に示す。
【0089】
銅粉末のBET比表面積は5000cm/g以下であることが好ましく、より好ましくは4000cm/g以下である。
【0090】
BET比表面積が5000cm/gを越えると焼結時における成形シートの緻密化が進み易く、孔の連通性は損なわれ、多孔度が20%未満になる虞がある。
【0091】
BET比表面積は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb HM-1208(株式会社マウンテック製)により測定できる。
【0092】
銅粉末の製造方法は特に限定されず、アトマイズ法、電解法、化学還元法あるいは粉砕法等の一般的な方法により製造された銅粉末を用いることができるが、球状に近い粒子が得られるガスアトマイズ法、遠心アトマイズ法、回転電極法によって製造された銅粉末を用いることが好ましい。
【0093】
均一な大きさの空隙を有する連通孔が得られるからである。
【0094】
本発明における高分子樹脂は特に限定されない。
【0095】
高分子樹脂として、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリエステル樹脂を例示するが、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体であるアクリル樹脂がより好適に使用できる。
【0096】
図4に、大気雰囲気またはアルゴン雰囲気におけるアクリル樹脂の熱重量測定の結果を示す。
【0097】
いずれの場合も500℃以下で樹脂が全量分解し消失することが確認できる。
【0098】
また、大気雰囲気では、アルゴンガス雰囲気よりも、アクリル樹脂の熱分解が速く進行することがわかる。
【0099】
銅粉末と高分子樹脂に添加する溶剤は特に限定されないが、沸点が100℃~200℃であって有害性の低いものであれば用いることができる。
【0100】
添加する溶剤として、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、ブチルカルビトール(BC)を例示する。
【0101】
銅粉末、高分子樹脂および溶剤を含有するペーストにおける固形分(銅粉末と高分子樹脂の合計質量)中の銅粉末は90質量%以上、かつ、97質量%以下であることが好ましい。
【0102】
銅粉末が90質量%未満であると、乾燥後の成形シートにおける銅粒子の分布が不均一になり易いからである。
【0103】
また銅粒子同士の接触の割合が少なくなるため、銅多孔質焼結シートの引張強度や曲げ強度が低下するからである。
【0104】
また、乾燥した成形シート中の高分子樹脂の割合が多くなるので、焼結中、脱高分子樹脂部分と銅粉末同士の接触部分で収縮率の差が大きくなり易く、これが亀裂発生の起点となるからである。
【0105】
また、銅粉末が97質量%を超えると、高分子樹脂の割合が少なくペースト状にならなくなり、溶剤で粘度を調製しても、適正な塗工性が得られず、塗布ムラが発生して、銅粒子が均一に分散した成形シートになり難いからである。
【0106】
高分子樹脂と溶剤の質量比は適宜決定すればよいが、高分子樹脂が25質量%以上、かつ、50質量%以下であることが好ましい。
【0107】
高分子樹脂が25質量%未満であると、ペーストのチクソ性が低下し、塗布後にシート形状の保持が困難になる虞がある。
【0108】
また30μm以上の厚みの塗膜にすることが困難になる。
【0109】
また、乾燥時の収縮が大きく、成形シートにおける銅粒子の分布の均一性を確保することが困難になる。
【0110】
高分子樹脂が50質量%を超えると、粘度が高くなるので塗工性が悪くなる。
【0111】
フィルム基材は、ペーストの塗布時にたわみやシワを生じず、また、溶剤によって表面が荒れないものであれば特に限定されない。
【0112】
フィルム基材としてPETフィルムを例示する。
【0113】
フィルム基材の表面にシリコーンコートなどの表面処理が施されたものを用いてもよい。
【0114】
ペーストは公知の方法で塗布すればよいが、ドクターブレード法、ナイフコーター法を例示する。
【0115】
フィルム基材にペーストを塗布した後、乾燥させる。
【0116】
乾燥方法は特に限定されないが、例えば、大気雰囲気、100℃の条件下で一定時間保持することで乾燥できる。
【0117】
乾燥塗膜をフィルム基材から剥離することで成形シートを作製することができる。
【0118】
作製した成形シートを耐熱素材上で、窒素及び/又はアルゴンガス雰囲気のバッチ炉、又は、連続ベルト炉で加熱し、高分子樹脂の分解・消失から焼結まで連続して処理する。
【0119】
焼結中では必要に応じて3%以下の水素を含んだ窒素又は3%以下の水素を含んだアルゴンガスとの混合ガスを用いることもできる。
【0120】
使用する高分子樹脂の分解開始温度は約200℃で、終了温度は500℃未満である。加熱は成形シート中の高分子樹脂の分解・消失を経て、焼結温度へ昇温する。
【0121】
図4に示すように、アルゴンガス雰囲気と大気雰囲気のアクリル樹脂の重量減少曲線から、樹脂の分解開始温度は約200℃で、終了温度は500℃未満であることが分かる。
【0122】
接触した2つの銅粒子のネック形成からネック成長の程度は、焼結開始後の保持する温度と時間で制御することができる。
【0123】
昇温速度や保持温度、時間などの加熱条件は、個々の処理炉による特徴や性能に応じて決定すればよい。
【0124】
得られた銅多孔質焼結シートについて、親水性処理や防錆処理を行ってもよい。
【0125】
親水性処理や防錆処理は特に限定されない。
【0126】
例えば、親水性処理剤を含む溶液中に銅多孔質焼結シートを浸漬した後、乾燥するという方法で親水性に改質できる。
【0127】
また、防錆剤を含む溶液中に銅多孔質シートを浸漬した後乾燥するという方法で防錆処理し、続いて、親水性処理剤を含む溶液中に浸漬した後、乾燥するという方法で、防錆処理後に親水性に改質できる。
【実施例
【0128】
本発明の実施例を以下に示すが、本発明はこれに限定されない。
【0129】
<実施例1>
(銅粉末)
ガスアトマイズ法で製造された球状の銅粉末を使用した。
【0130】
(銅粉末の粒子径)
レーザー回折式粒子径分布測定装置SALD-3100(株式会社島津製作所製)で測定した銅粉末の10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径はそれぞれ、8.570μm、14.022μm、18.532μmであり、球体積換算最大粒子径は29.948μmであった。10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比は2.16であった。
【0131】
(銅粉末のBET比表面積)
全自動BET比表面積測定装置Macsorb HM-1208(株式会社マウンテック製)で測定した銅粉末のBET比表面積は600cm/gであった。
【0132】
(ペーストの作製)
高分子樹脂が50質量%、残部が溶剤であるアクリル樹脂混合物KFA-819(互応化学工業株式会社製)を用いて、固形分中の銅粉末を95質量%になるように調整してペーストを作製した。
【0133】
(成形シートの作製)
表面にシリコーンコートが施されたPETフィルム上にナイフコータ(バンクコーティング)でペーストを塗布し、大気中にて120℃で加熱して乾燥を行った後、PETフィルムから塗膜を剥離して成形シートを作製した。
【0134】
(成形シートの厚み測定)
超小型デュアル式膜厚測定器MP0R(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて、塗布の巾方向について、任意の中央1点と両端2点の計3点測定し、この平均値を成形シートの厚みとした。
【0135】
成形シートの厚みは105μmであった。
【0136】
(焼結)
作製した成形シートを、窒素雰囲気の連続ベルト炉内で常温から加熱し、870℃で2分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0137】
(ネック指標値)
銅多孔質焼結シートの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)JCM-6000(日本電子株式会社製)にて、90μm×120μmの視野で観察し、2つの銅粒子間に成長したネックの長さ(L)、及び当該ネックで連結される2つの銅粒子の直径(D1、D2)を測定し、前記の(式1)によってネック指標値を算出した。
【0138】
2つの銅粒子の連結部分の最もくびれている箇所(短径)をネックの長さ(L)とした。
【0139】
2つの銅粒子の直径(D1、D2)は、Lを挟み、Lと平行し、かつ、最も長い箇所(長径)を測定した。
【0140】
同様の測定を行って10点ネック指標値を算出し、10点の平均値をネック指標値とした。
【0141】
ネック指標値は0.50であった。
【0142】
(銅多孔質焼結シートの厚み)
成形シートと同様の測定方法で銅多孔質焼結シートの厚みを測定した。
【0143】
厚みは111μmであった。
【0144】
(多孔度)
銅多孔質焼結シートから30mm角のシートを任意に切り出し、シートの質量を電子天秤で測定し、また、前記銅多孔質焼結シートの厚みを用いてシート体積を算出した後、シートの質量を体積で割ってシートの密度を算出した。
【0145】
銅多孔質焼結シートの密度を銅の真密度(8.94g/cm)で割って、シートの相対密度を算出した後、前記(式2)によって多孔度を求めた。
【0146】
多孔度は34.3%であった。
【0147】
(不可避不純物)
不可避不純物量は、炭素量、硫黄量については炭素・硫黄同時分析装置EMIA-920V(株式会社堀場製作所製)を使用し、酸素量、窒素量については酸素・窒素同時分析装置ON830(LECO社製)を使用し、その他の不純物については蛍光X線分析装置ZSX PrimusIV(株式会社リガク製)によって測定し、これらの不純物量の総量を求めた。
【0148】
不可避不純物量は、0.3質量%以下であった。
【0149】
(孔の断面形状)
銅多孔質焼結シートを冷間硬化樹脂に埋入し、研磨を行って厚み方向の断面を露出させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて孔の断面形状を観察した。
【0150】
断面SEM画像から、孔は屈曲しており、また、連通孔であることが確認できた(図5)。
【0151】
(透光性評価)
LED電灯(GENTOS SR-220DT/ジェントス株式会社製)で直進光を銅多孔質焼結シートの片面側に照射し、反対面側から光が確認できなかったものを〇とし、反対面から光が確認できたものを×として評価した。
【0152】
反対面側から光は確認できなかったので〇であった。
【0153】
(浸透性評価)
銅多孔質焼結シート表面に、エタノールが60質量%、残部が純水である混合液を10μl滴下し、シート裏面側に染みが現れるまでの時間を計測し、10秒以内のものを○とし、10秒を超えるものは×として評価した。
【0154】
1秒以内に裏面まで浸透したため屈曲した連通孔を有することが確認された。
【0155】
(曲げ戻し評価)
10mm×50mmの銅多孔質焼結シートを試料とし、図6に示すように、半径Rが1mmの丸棒に沿って、シートを180°に曲げてから元に戻した時に、曲げ部分において目視で割れが認められなければ○とし、割れが認められれば×として評価した。
【0156】
割れは認められなかったので〇であった。
【0157】
<実施例2>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ、3.371μm、4.798μm、6.232μm、球体積換算最大粒子径は10.105μmであり、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が1.85であり、BET比表面積は1800cm/gである銅粉末を用いた。
【0158】
成形シートの厚みは47μmであった。
【0159】
これ以外は、実施例1と同じ方法で銅多孔質焼結シートを製造した。
【0160】
<実施例3>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ4.677μm、11.194μm、18.115μm、球体積換算最大粒子径が29.307μmであり、また、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が3.87であり、BET比表面積が1100cm/gである福田金属箔粉工業株式会社製SRC-Cu-20を用いた。
【0161】
成形シートの厚みは98μmであった。
【0162】
これ以外は、実施例1と同じ方法で銅多孔質焼結シートを製造した。
【0163】
<実施例4>
実施例1と同じ銅粉末を用いた。
【0164】
成形シートの厚みは105μmであった。
【0165】
真空炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後850℃まで加熱し、850℃で30分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0166】
<実施例5>
実施例1と同じ銅粉末を用いた。
【0167】
成形シートの厚みは105μmであった。
【0168】
チューブ炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後850℃まで加熱し、850℃で30分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0169】
<実施例6>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ、2.689μm、7.529μm、17.137μm、球体積換算最大粒子径が26.561μm、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が6.37であり、BET比表面積が3700cm/gである銅粉末を用いた。
【0170】
成形シートの厚みは70μmであった。
【0171】
チューブ炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後850℃まで加熱し、850℃で15分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0172】
<実施例7>
実施例1で製造した銅多孔質焼結シートを用いて、ネオコールSW-C(第一工業製薬株式会社)を、エタノール(試薬特級/和光純薬工業株式会社製)中に0.1質量%になるように希釈した混合液中に、1分間浸漬処理した後に乾燥させて親水性処理を行った。
【0173】
銅多孔質焼結シート表面に純水を10μl滴下したところ、10秒以内にシート裏面側に染みが表れたため、親水性に改質していることがわかった。
【0174】
また、屈曲した連通孔であることがわかった。
【0175】
<実施例8>
実施例1で製造した銅多孔質焼結シートを用いて重クロム酸ナトリウム(特級/関東化学株式会社製)を純水中に0.5質量%になるように希釈した液中に、1分間浸漬処理した後に、洗浄し乾燥して防錆処理した。
【0176】
次に、ネオコールSW-Cを、エタノール中に0.1質量%になるように希釈した液中に、1分間浸漬処理した後に、乾燥して親水性処理を行った。
【0177】
銅多孔質焼結シート表面に純水を10μl滴下したところ、10秒以内にシート裏面側に染みが表れたため、親水性に改質していることがわかった。
【0178】
また、屈曲した連通孔であることがわかった。
【0179】
<比較例1>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ、59.531μm、70.107μm、84.609μm、球体積換算最大粒子径が88.317μmであり、また、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が1.42であり、BET比表面積が100cm/gである銅粉末を用いた。
【0180】
成形シートの厚みは220μmであった。
【0181】
チューブ炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後950℃まで加熱し、950℃で15分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0182】
ネック指標値は0.31、多孔度は43.8%、成形シートの厚みは221μmであった。
【0183】
比較例1の銅多孔質焼結シートの一方の面から直進性の可視光を照射すると反対側の面に透過した。
【0184】
純水を40質量%以下含むエタノールの混合液を、銅多孔質焼結シートの表面に10μl滴下すると、1秒以内に裏面まで浸透した。
【0185】
Rが1mmの丸棒に沿って180°曲げて戻すと、シートの曲げ部分に割れが生じた。
【0186】
<比較例2>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ、77.567μm、98.186μm、124.387μm、球体積換算最大粒子径が136.393μmであり、また、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が1.60であり、BET比表面積が200cm/gである銅粉末を用いた。
【0187】
成形シートの厚みは221μmであった。
【0188】
チューブ炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後950℃まで加熱し、950℃で15分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0189】
多孔度は45.6%であった。
【0190】
<比較例3>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ、0.997μm、2.240μm、3.307μm、球体積換算最大粒子径が5.535μmであり、また、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が3.32であり、BET比表面積が7000cm/gである福田金属箔粉工業株式会社製銅粉末Cu-HWQ1.5μmを用いた。
【0191】
成形シートの厚みは60μmであった。
【0192】
チューブ炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後850℃まで加熱し、850℃で30分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0193】
多孔度は4.1%であった。
【0194】
<比較例4>
10%、50%、90%の各積算球体積換算粒子径がそれぞれ、2.659μm、6.465μm、10.809μm、球体積換算最大粒子径が18.555μmであり、また、10%積算球体積換算粒子径に対する90%積算球体積換算粒子径の比が4.07であり、BET比表面積が20800cm/gである福田金属箔粉工業株式会社製銅粉末2L3を用いた。
【0195】
成形シートの厚みは66μmであった。
【0196】
チューブ炉内を窒素雰囲気に置換して常温から加熱し、500℃で1時間保持し、その後850℃まで加熱し、850℃で30分間保持した後、常温まで冷却して銅多孔質焼結シートを製造した。
【0197】
多孔度は18.5%であった。
【0198】
実施例および比較例の作製条件と結果について、表1に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
表1から、本発明における銅多孔質焼結シートは空隙の大きさや分布状態が均一であり、曲げ強度に優れる薄い銅多孔質焼結シートであり、屈曲した連通孔を有することが証明された。
また、親水性処理、あるいは防錆処理後の親水性処理によって親水性に改質できることが証明された。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明における銅多孔質焼結シートは、形成される空隙の形状、大きさ及び形状や大きさの分布状態の制御が容易であり、多孔度が高く、引張強度や曲げ強度に優れる薄い銅多孔質焼結シートであるから、電池の集電体や放熱部材、流体のフィルター、配管内の抗菌部材等多用途に利用できる銅多孔質焼結シートである。
したがって、本発明は産業上の利用可能性の高い発明である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6