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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-22
(45)【発行日】2024-12-02
(54)【発明の名称】トナーバインダー
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20241125BHJP
【FI】
G03G9/087 325
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022088806
(22)【出願日】2022-05-31
(65)【公開番号】P2023029219
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2021133291
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】本夛 将
(72)【発明者】
【氏名】千葉 宙
(72)【発明者】
【氏名】大久保 誠哉
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2019/225207(JP,A1)
【文献】特開2014-142632(JP,A)
【文献】特開2021-096463(JP,A)
【文献】特開2019-211763(JP,A)
【文献】特開2019-139213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーであって、
非晶性ビニル樹脂(A)が単量体(a)を含む単量体組成物(A0)の重合体であり、
単量体(a)がアクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、
結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、
単量体(b)が直鎖の炭素数18~30のアルキル基を有する炭素数21~34の(メタ)アクリレートであり、
単量体(c)がアクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、
単量体(d)がビニル基とエーテル基を有する単量体及び/又はビニル基と水酸基を有する単量体であり、
前記単量体組成物(B0)中の単量体(b)の重量割合が、単量体組成物(B0)の重量を基準として15~93重量%であるトナーバインダー。
【請求項2】
前記単量体組成物(A0)中の単量体(a)の重量割合が、単量体組成物(A0)の重量を基準として5~30重量%である請求項1に記載のトナーバインダー。
【請求項3】
前記単量体組成物(B0)中の単量体(c)の重量割合が、単量体組成物(B0)の重量を基準として5~30重量%である請求項1に記載のトナーバインダー。
【請求項4】
非晶性ビニル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比[(A):(B)]が、[20:80]~[65:35]である請求項1~のいずれか1項に記載のトナーバインダー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナーバインダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真システムの発展に伴い、複写機やレーザープリンター等の電子写真装置の需要は急速に増加しており、それらの性能に対するトナーへの要求も高度化している。また、トナー中の主成分であるトナーバインダーへの要求も同様に高度化している。
【0003】
トナーバインダーは、トナー特性に大きな影響を与えるものであり、ビニル樹脂(ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂等)、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂等が知られているが、最近では、低温定着性と耐熱保存性のバランスを取りやすいことから、結晶性ビニル樹脂と非晶性ビニル樹脂を組み合わせたトナーバインダーが特に注目されている。
【0004】
低温定着性と耐熱保存性のバランスを向上させる方法として、長鎖アルキルアクリレートを重合させた結晶性ビニル樹脂と、非晶性ビニル樹脂を組み合わせた結着樹脂(トナーバインダー)を使用したトナーが提案されている(引用文献1)。
しかし、結晶性ビニル樹脂の構成成分として長鎖アルキルアクリレートを多量(例えば93重量%以上)に用いると、トナーに含まれる離型剤の機能を阻害してしまい、高速印刷等の特定の条件において、定着ローラーからの分離性が悪化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-142632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低温定着性及び耐熱保存性のバランスを維持しつつ、定着ローラーからの分離性に優れたトナーに用いるトナーバインダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち本発明は非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーであって、非晶性ビニル樹脂(A)が単量体(a)を含む単量体組成物(A0)の重合体であり、単量体(a)がニトリル基を有する単量体であり、結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、単量体(b)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、単量体(c)がニトリル基を有する単量体であり、単量体(d)がビニル基とエーテル基を有する単量体及び/又はビニル基と水酸基を有する単量体であるトナーバインダーである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、低温定着性及び耐熱保存性のバランスを維持しつつ、定着ローラーからの分離性に優れたトナーに用いるトナーバインダーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のトナーバインダーは、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーであって、非晶性ビニル樹脂(A)が単量体(a)を含む単量体組成物(A0)の重合体であり、単量体(a)がニトリル基を有する単量体であり、結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、単量体(b)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、単量体(c)がニトリル基を有する単量体であり、単量体(d)がビニル基とエーテル基を有する単量体及び/又はビニル基と水酸基を有する単量体である。
以下に、本発明のトナーバインダーを順次説明する。
【0010】
本発明のトナーバインダーは、非晶性ビニル樹脂(A)を含む。非晶性ビニル樹脂(A)は単量体(a)を含む単量体組成物(A0)の重合体であり、単量体(a)がニトリル基を有する単量体である。
本発明において、「非晶性」とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて試料の転移温度測定を行った場合に、吸熱ピークのピークトップ温度が存在しないことを意味する。
【0011】
単量体(a)はニトリル基を有する単量体であり、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート、メタクリロニトリルのメチル基が炭素数2~16のアルキル基に置き換えられたニトリル基含有モノマー等が挙げられる。
単量体(a)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
単量体組成物(A0)は、必要により単量体(e)を併用してもよい。
単量体(e)としては、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエステルモノマー及び脂肪族炭化水素系ビニルモノマー等が挙げられる。これらの単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
単量体組成物(A0)は、単量体(e)として耐熱保存性、帯電維持率および粉砕性の観点から、スチレン系モノマーを含むことが好ましい。
スチレン系モノマーとしては、スチレン、アルキル基の炭素数が1~3のアルキルスチレン(例えばα-メチルスチレン、及びp-メチルスチレン)等が挙げられる。これらの単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
スチレン系モノマーとしてはスチレンがより好ましい。
【0013】
(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~16のアルキルエステル類、不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステル[エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数1~16のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数1~16のアミノ基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び/又は「メタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチルアクリレート、ブチルアクリレートが好ましい。
【0014】
ビニルエステルモノマーとしては脂肪族ビニルエステル(炭素数4~15、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及びイソプロペニルアセテート等)及び芳香族ビニルエステル(炭素数9~15、例えばメチル-4-ビニルベンゾエート等)等が挙げられる。
【0015】
脂肪族炭化水素系ビニルモノマーとしてはオレフィン(炭素数2~10、例えばエチレン、プロピレン、ブテン及びオクテン等)、ジエン(炭素数4~10、例えばブタジエン、イソプレン及び1,6-ヘキサジエン等)等が挙げられる。
【0016】
単量体組成物(A0)中の単量体(a)の重量割合が、単量体組成物(A0)の重量を基準として5~30重量%であることが好ましい。
単量体(a)の重量割合が上記範囲内であると、定着ローラーからの分離性がより向上するために好ましい。
【0017】
非晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体組成物(A0)が、単量体(a)、スチレン系モノマー、及び、(メタ)アクリル系モノマーの組合せからなることが好ましい。
この組み合わせの場合の好ましい重量割合は、単量体(a)3~30重量%、スチレン系モノマー30~80重量%、(メタ)アクリル系モノマー15~45重量%、とすることができる。
単量体(a)、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマーをそれぞれ複数種類使用する場合は、各分類に属するモノマーの合計重量に基づき重量割合を定める。
【0018】
非晶性ビニル樹脂(A)を構成する単量体組成物(A0)の組合せが、単量体(a)としてのアクリロニトリル、並びに、単量体(e)としてのスチレン、メチルアクリレート及びブチルアクリレートの組み合わせからなることが好ましい。
【0019】
非晶性ビニル樹脂(A)は、単量体組成物を公知の方法(例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、リビングラジカル重合、リビングアニオン重合及びリビングカチオン重合等)で重合することで製造できる。ラジカル重合の場合は、例えば、前記単量体を溶媒(トルエン等)中でラジカル反応開始剤(r)とともに反応させる溶液重合法(特開平5-117330号公報等)により合成することが出来る。
また、ラジカル反応開始剤は公知のラジカル反応開始剤(r)を用いてもよい。ラジカル反応開始剤(r)としては、特に限定されず、無機過酸化物(r1)、有機過酸化物(r2)及びアゾ化合物(r3)等が挙げられる。また、これらのラジカル反応開始剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
無機過酸化物(r1)としては、特に限定されないが、例えば過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0021】
有機過酸化物(r2)としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、α、α-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)へキサン、ジ-t-へキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシへキシン-3、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタニノルパーオキシド、デカノリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキシド、m-トルイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート及びt-ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0022】
アゾ化合物(r3)としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及びアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0023】
ラジカル反応開始剤(r)のうち有機過酸化物(r2)が好ましく、ジ-t-ブチルパーオキシドがより好ましい。
【0024】
ラジカル反応開始剤(r)の使用量は、特に限定されないが、単量体組成物(A0)100重量部に対して、0.01~1重量部であることが好ましい。
【0025】
非晶性ビニル樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、低温定着性と耐熱保存性の観点から、25~80℃であることが好ましく、さらに好ましくは40~65℃である。
Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、25℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、例えばTA Instruments(株)製、DSCQ20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0026】
非晶性ビニル樹脂(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から2,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは5,000~150,000であり、さらに好ましくは50,000~110,000である。
【0027】
非晶性ビニル樹脂(A)の数平均分子量(以下、Mnと略称することがある。)、重量平均分子量(以下、Mwと略称することがある。)は、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) : HLC-8120 [東ソー(株)製]
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF溶液
移動相 : テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
溶液注入量 : 100μL
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)
分子量の測定では、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分を口径1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
【0028】
非晶性ビニル樹脂(A)の酸価は60mgKOH/g以下が好ましい。酸価が60mgKOH/g以下であると吸湿性が下がることで耐熱保存性が良好になる。非晶性ビニル樹脂(A)の酸価は、より好ましくは20mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは19mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0~15mgKOH/gである。
非晶性ビニル樹脂(A)の酸価は、単量体の酸価及び酸価を有する単量体の含有量で調整できる。(A)の酸価は、例えばJISK0070などの方法で測定される。
【0029】
本発明のトナーバインダーは、結晶性ビニル樹脂(B)を含む。結晶性ビニル樹脂(B)は結晶性のビニル樹脂であり、単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を含む単量体組成物(B0)の重合体である。
単量体(b)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、単量体(c)がニトリル基を有する単量体であり、単量体(d)がビニル基とエーテル基を有する単量体及び/又はビニル基と水酸基を有する単量体である。
結晶性ビニル樹脂(B)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明における「結晶性」とは下記に記載の示差走査熱量測定(DSC測定ともいう)において、DSC曲線が吸熱ピークのピークトップ温度を有することを意味する。
【0030】
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)の測定方法を記載する。
示差走査熱量計{例えば「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて測定する。結晶性ビニル樹脂(B)を20℃から10℃/分の条件で150℃まで第1回目の昇温を行い、続いて150℃から10℃/分の条件で0℃まで冷却し、続いて0℃から10℃/分の条件で150℃まで第2回目の昇温をした際の第2回目の昇温過程の吸熱ピークのトップを示す温度を結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)とする。
【0031】
単量体(b)は鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートである。単量体(b)の炭素数は、鎖状炭化水素基の炭素数と(メタ)アクリル酸エステルを構成する炭素数(3又は4)の合計である。
単量体(b)は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
単量体(b)としては直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレート[オクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレートともいう)、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ヘンエイコサニル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、モンタニル(メタ)アクリレート、トリアコンチル(メタ)アクリレート(ミリシル(メタ)アクリレート)及びドドリアコンチル(メタ)アクリレート等]及び分岐のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレート[2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート等]が挙げられる。
これらの内、低温定着性および耐熱保存性の観点から、直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~36)を有する(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは直鎖のアルキル基(アルキル基の炭素数18~30)を有する(メタ)アクリレートであり、さらに好ましいのはオクタデシル(メタ)アクリレート(ステアリル(メタ)アクリレート)、アラキジル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セリル(メタ)アクリレート、及びトリアコンチル(メタ)アクリレートであり、特に好ましくはオクタデシルアクリレート(ステアリルアクリレート)、ベヘニルアクリレート、及びトリアコンチルアクリレートである。
【0032】
単量体(c)はニトリル基を有する単量体である。単量体(c)としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアノスチレン、シアノアクリレート、メタクリロニトリルのメチル基が炭素数2~16のアルキル基に置き換えられたニトリル基含有モノマー等が挙げられる。
単量体(c)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
単量体(d)はビニル基とエーテル基を有する単量体及び/又はビニル基と水酸基を有する単量体である。
ビニル基とエーテル基を有する単量体としては、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が挙げられる。
ビニル基と水酸基を有する単量体としては、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びエチル-2-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリラート等が挙げられる。
また、単量体(d)として、ビニル基とエーテル基を有する単量体とビニル基と水酸基を有する単量体を併用してもよい。
また、単量体(d)としてビニル基とエーテル基と水酸基とを有する単量体を使用してもよい。ビニル基とエーテル基と水酸基とを有する単量体としては、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
単量体組成物(B0)は、必要により単量体(e)を併用してもよい。
単量体(e)としては、単量体組成物(A0)が含むことができる単量体(e)と同様のものを使用することができる。
単量体組成物(B0)に含まれる単量体(e)としては、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエステルモノマー及び脂肪族炭化水素系ビニルモノマー等が挙げられる。これらの単量体は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
単量体組成物(B0)は、単量体(e)としてスチレン系モノマー及び(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。
単量体(e)としては、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが好ましい。
【0036】
単量体組成物(B0)中の単量体(b)の重量割合は、トナーの耐熱保存性及び定着ローラーからの分離性の観点から、単量体組成物(B0)の重量を基準として15~93重量%であることが好ましい。
【0037】
単量体組成物(B0)中の単量体(c)の重量割合は、トナーの耐熱保存性及び定着ローラーからの分離性の観点から、単量体組成物(B0)の重量を基準として5~30重量%であることが好ましい。
【0038】
単量体組成物(B0)中の単量体(d)の重量割合は、トナーの耐熱保存性及び定着ローラーからの分離性の観点から、単量体組成物(B0)の重量を基準として1~20重量%であることが好ましく、1.2~15重量%であることがさらに好ましく、1.5~10重量%であることが特に好ましい。
【0039】
本発明における結晶性ビニル樹脂(B)は、非晶性ビニル樹脂(A)と同様の方法で製造できる。ラジカル重合の場合のラジカル反応開始剤(r)も同様のものが挙げられる。
【0040】
ラジカル反応開始剤(r)の使用量は、特に限定されないが、単量体組成物(B0)100重量部に対して、0.01~2重量部であることが好ましい。
【0041】
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は耐熱保存性、耐久性、低温定着性及び光沢性の観点から、40~100℃であることが好ましい。Tmが40℃以上であると耐熱保存性および耐久性が良好となり、100℃以下であると低温定着性および光沢性が良好となる。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、より好ましくは45~95℃であり、さらに好ましくは50~90℃であり、特に好ましくは53~75℃である。
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の種類や構成比率、重量平均分子量などで調整することができる。
【0042】
結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を示す吸熱ピークの半値幅は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、6℃以下であることが好ましい。
結晶性ビニル樹脂(B)のピークトップ温度(Tm)を示す吸熱ピークの半値幅とは、吸熱ピークのピークトップ温度の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅をいう。
【0043】
結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は60mgKOH/g以下が好ましい。酸価が60mgKOH/g以下であると結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が上がることや吸湿性が下がることで耐熱保存性が良好になる。結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は、より好ましくは50mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは40mgKOH/g以下であり、特に好ましくは0~30mgKOH/gである。結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は0mgKOH/gであってもよい。
結晶性ビニル樹脂(B)の酸価は、単量体の酸価及び酸価を有する単量体の含有量で調整できる。(B)の酸価は、例えばJIS K 0070などの方法で測定される。
【0044】
結晶性ビニル樹脂(B)の水酸基価は5mgKOH/g以上が好ましい。水酸基価が5mgKOH/g以上であると定着ローラーからの分離性が良好になる。結晶性ビニル樹脂(B)の水酸基価は、より好ましくは7mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは10mgKOH/g以上であり、特に好ましくは15~35mgKOH/gである。結晶性ビニル樹脂(B)の水酸基価は0mgKOH/gであってもよい。
結晶性ビニル樹脂(B)の水酸基価は、単量体の水酸基価及び水酸基価を有する単量体の含有量で調整できる。(B)の水酸基価は、例えばJIS K 0070などの方法で測定される。
【0045】
結晶性ビニル樹脂(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)における重量平均分子量は、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から2,000~200,000であることが好ましく、より好ましくは5,000~100,000であり、さらに好ましくは10,000~70,000である。
結晶性ビニル樹脂(B)の重量平均分子量は非晶性ビニル樹脂(A)と同様の条件で測定することができる。
【0046】
本発明のトナーバインダーは、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)以外のトナーバインダー用樹脂として公知であるその他の樹脂(特許第4493080号公報及び特開平06-194876号公報に記載の重合体等)を含有しても良い。その他の樹脂は1種類の樹脂でもよく、2種類以上の樹脂の混合物であってもよい。
【0047】
本発明において、非晶性ビニル樹脂(A)の含有割合は、耐ホットオフセット性、帯電維持率、画像強度、耐久性および粉砕性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として5~65重量%であることが好ましい。より好ましくは8~65重量%であり、さらに好ましくは10~65重量%であり、特に好ましくは15~65重量%であり、最も好ましくは20~65重量%である。
【0048】
本発明において、結晶性ビニル樹脂(B)の含有割合は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として好ましくは35~95重量%であり、より好ましくは35~92重量%であり、さらに好ましくは35~90重量%であり、特に好ましくは35~85重量%であり、最も好ましくは35~80重量%である。
【0049】
本発明のトナーバインダーにおいて、非晶性ビニル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比[(A):(B)]は、[20:80]~[65:35]であることが好ましく、[50:50]~[65:35]であることがより好ましい。
重量比[(A):(B)]が上記範囲内であると、定着ローラーからの分離性がより向上するために好ましい。
【0050】
本発明のトナーバインダーにおける単量体(a)の含有割合は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として好ましくは1~20重量%であり、より好ましくは1.5~15重量%であり、さらに好ましくは2~13重量%である。
本発明のトナーバインダーにおける単量体(b)の含有割合は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として好ましくは20~70重量%であり、より好ましくは25~60重量%であり、さらに好ましくは30~56重量%である。
本発明のトナーバインダーにおける単量体(c)の含有割合は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として好ましくは1~20重量%であり、より好ましくは2~18重量%であり、さらに好ましくは3~16重量%である。
本発明のトナーバインダーにおける単量体(d)の含有割合は、低温定着性および耐熱保存性の観点から、トナーバインダーの重量を基準として好ましくは0.5~10重量%であり、より好ましくは1~9重量%であり、さらに好ましくは1.5~8重量%である。
【0051】
本発明のトナーバインダーのガラス転移温度(Tg)は、低温定着性と耐熱保存性の観点から、25~80℃であることが好ましく、さらに好ましくは40~65℃である。
Tgが80℃以下であると低温定着性が良好になり、25℃以上であると耐熱保存性が良好になる。
なお、トナーバインダーのガラス転移温度(Tg)は、非晶性ビニル樹脂(A)のガラス転移温度と同様に、例えばTA Instruments(株)製、DSCQ20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定することができる。
【0052】
本発明のトナーバインダーは、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)を40~100℃の範囲に少なくとも1個有することが好ましい。
なお、トナーバインダーの吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)の吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)と同様にして測定することができる。
【0053】
上記吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)は、結晶性ビニル樹脂(B)に由来する吸熱ピークのピークトップ温度であることが好ましい。一態様において、本発明のトナーバインダーは、結晶性ビニル樹脂(B)に由来する吸熱ピークのピークトップ温度が、好ましくは43~95℃であり、より好ましくは45~90℃であり、さらに好ましくは50~90℃であり、特に好ましくは51~88℃である。結晶性ビニル樹脂(B)に由来する吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)が上記範囲にあると、トナーバインダーの低温定着性及び耐熱保存性のバランスがより良好になる。これはトナーバインダーを用いたトナーを熱定着する際に(Tm)を示す温度で結晶性ビニル樹脂(B)がシャープメルト化してトナーバインダーが低粘度化するためであり、またトナーを保管する際に結晶性ビニル樹脂(B)の溶融によるトナー粒子同士の融着を防ぎ、保管安定性を満足するためである。
【0054】
本発明のトナーバインダーは、ピークトップ温度(Tm)を示す吸熱ピークの半値幅が6℃以下であることが、低温定着性、定着幅及び耐熱保存性の観点で好ましく、より好ましくは5℃以下であり、特に好ましくは2~5℃である。
トナーバインダーの吸熱ピークの半値幅は、吸熱ピークのピークトップ温度(Tm)の測定によって得られるDSC曲線に基づいて、吸熱ピークのベースラインからピーク最大高さにおける2分の1高さにおけるピークの温度幅をいう。
【0055】
本発明のトナーバインダーの酸価は、耐熱保存性および帯電維持率の観点から、60mgKOH/g以下であることが好ましい。酸価が60mgKOH/g以下であると吸熱ピークのピークトップ温度Tmが上がることや吸湿性が下がることで耐熱保存性が良好になる。トナーバインダーの酸価は、より好ましくは30mgKOH/g以下であり、さらに好ましくは3~25mgKOH/gである。また、トナーバインダーの酸価は0mgKOH/gであってもよい。
トナーバインダーの酸価は、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の酸価や酸価を有する単量体の含有量で調整できる。トナーバインダーの酸価は、例えばJIS K 0070などの方法で測定される。
【0056】
本発明のトナーバインダーの水酸基価は、定着ローラーからの分離性の観点から、3mgKOH/g以上であることが好ましい。水酸基価が3mgKOH/g以上であると定着ローラーからの分離性が良好になる。トナーバインダーの水酸基価は、より好ましくは7mgKOH/g以上であり、さらに好ましくは10~30mgKOH/g以上である。また、トナーバインダーの水酸基価は0mgKOH/gであってもよい。
トナーバインダーの水酸基価は、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を構成する単量体の水酸基価や水酸基価を有する単量体の含有量で調整できる。トナーバインダーの水酸基価は、例えばJIS K 0070などの方法で測定される。
【0057】
本発明のトナーバインダーの重量平均分子量(Mw)は、トナーの耐ホットオフセット性と低温定着性との両立の観点から、5,000~200,000が好ましく、より好ましくは10,000~180,000、さらに好ましくは40,000~100,000であり、特に好ましくは40,000~80,000である。
トナーバインダーの重量平均分子量は非晶性ビニル樹脂(A)と同様の条件で測定することができる。
【0058】
トナーバインダーの製造方法について説明する。
トナーバインダーは非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有していれば特に限定されない。一態様において、例えば、非晶性ビニル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)を公知の混合方法で混合してトナーバインダーを製造することができる。公知の混合方法としては、例えば、粉体混合、溶融混合及び溶剤混合等が挙げられる。また、非晶性ビニル樹脂(A)、結晶性ビニル樹脂(B)の混合は、トナーを製造するときに他の必要なトナー原料と共に同時に混合してもよい。
【0059】
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置及び連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続式混合装置としては、スタティックミキサー、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等が挙げられる。
溶剤混合の方法としては、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を溶剤(酢酸エチル、THF及びアセトン等)に溶解し、均一化させた後、脱溶剤及び粉砕する方法や、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を溶剤(酢酸エチル、THF及びアセトン等)に溶解し、水中に分散させた後、造粒及び脱溶剤する方法等が挙げられる。
【0060】
本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、必要により着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等を含有してもよい。
【0061】
着色剤としては、トナー用着色剤として使用されている染料及び顔料等のすべてを使用することができる。例えば、カーボンブラック、鉄黒、スーダンブラックSM、ファーストイエローG、ベンジジンイエロー、ピグメントイエロー、インドファーストオレンジ、イルガシンレッド、パラニトロアニリンレッド、トルイジンレッド、カーミンFB、ピグメントオレンジR、レーキレッド2G、ローダミンFB、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットBレーキ、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、ブリリアントグリーン、フタロシアニングリーン、オイルイエローGG、カヤセットYG、オラゾールブラウンB及びオイルピンクOP等が挙げられ、着色剤は、これらは単独であってもよく、2種以上が混合されたものであってもよい。また、必要により磁性粉(鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性金属の粉末若しくはマグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の化合物)を着色剤としての機能を兼ねて含有させることができる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1~40重量部、より好ましくは3~10重量部である。着色剤として磁性粉を用いる場合は、好ましくは20~150重量部、より好ましくは40~120重量部である。
【0062】
離型剤としては、定試験力押出形細管式レオメータフローテスタによるフロー軟化点〔T1/2〕が50~170℃のものが好ましく、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、エステルワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0063】
フロー軟化点〔T1/2〕の測定方法を記載する。
定試験力押出形細管式レオメータフローテスタ{たとえば、(株)島津製作所製、CFT-500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をフロー軟化点〔T1/2〕とする。
【0064】
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、1-ドデセン、1-オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及びそれをさらに熱減成して得られるものを含む]、(例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体)、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1~18)エステル等]等との共重合体等が挙げられる。
【0065】
マイクロクリスタリンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のHi-Mic-2095、Hi-Mic-1090、Hi-Mic-1080、Hi-Mic-1070、Hi-Mic-2065、Hi-Mic-1045、Hi-Mic-2045等が挙げられる。
【0066】
パラフィンワックスとしては、例えば、日本精蝋(株)製のParaffin WAX-155、Paraffin WAX-150、Paraffin WAX-145、Paraffin WAX-140、Paraffin WAX-135、HNP-3、HNP-5、HNP-9、HNP-10、HNP-11、HNP-12、HNP-51等が挙げられる。
【0067】
フィッシャートロプシュワックスとしては、サゾール社製のSasolwax C80、日本精蝋(株)製のFT-0070等が挙げられる。
【0068】
カルナバワックスとしては、株式会社加藤洋行社製の精製カルナウバワックス 特製1号等が挙げられる。
【0069】
エステルワックスとしては、脂肪酸エステルワックス(例えば、日油社製のニッサンエレクトールWEP-2、WEP-3、WEP-4、WEP-5及びWEP-8等)等が挙げられる。
【0070】
高級アルコール類としては、炭素数30~50の脂肪族アルコールなどであり、例えばトリアコンタノールが挙げられる。脂肪酸類としては、炭素数30~50の脂肪酸などであり、例えばトリアコンタンカルボン酸が挙げられる。
【0071】
脂肪酸アミドとしては、三菱ケミカル株式会社製のダイヤミッドY、ダイヤミッド200等が挙げられる。
【0072】
荷電制御剤としては、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよく、ニグロシン染料、3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン染料、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0073】
流動化剤としては、シリカ、チタニア、アルミナ、炭酸カルシウム、脂肪酸金属塩、シリコーン樹脂粒子及びフッ素樹脂粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。トナーの帯電性の観点からシリカが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。また、シリカは、トナーの転写性の観点から疎水性シリカであることが好ましい。
【0074】
トナー中のトナーバインダーの含有量は、トナーの重量に基づき、好ましくは30~97重量%、より好ましくは40~95重量%、さらに好ましくは45~92重量%である。
着色剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0.05~60重量%、より好ましくは0.1~55重量%、さらに好ましくは0.5~50重量%である。
離型剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0~30重量%、より好ましくは0.5~20重量%、さらに好ましくは1~10重量%である。
荷電制御剤の含有量はトナーの重量に基づき、好ましくは0~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、さらに好ましくは0.5~7.5重量%である。
流動化剤の含有量はトナー重量に基づき、好ましくは0~10重量%、より好ましくは0~5重量%、さらに好ましくは0.1~4重量%である。
また、添加剤(着色剤、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等)の含有量の合計量はトナー重量に基づき、好ましくは3~70重量%、より好ましくは4~58重量%、さらに好ましくは5~50重量%である。
【0075】
本発明のトナーバインダーを含有するトナーの製造方法は特に限定されず、混練粉砕法、乳化転相法、乳化重合法、懸濁重合法、溶解懸濁法及び乳化凝集法等の公知のいずれの方法により得られたものであってもよい。
例えば、混練粉砕法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分をヘンシェルミキサー、ナウターミキサー及びバンバリーミキサー等で乾式ブレンドした後、二軸混練機、エクストルーダー、コンティニアスニーダー及び3本ロール等の連続式混合装置で溶融混練し、その後ミル機等粗粉砕し、最終的に気流式微粉砕機等を用いて微粒化して、さらにエルボージェット等の分級機で粒度分布を調整することにより、トナー粒子[好ましくは体積平均粒径(D50)が5~20μmの粒子]とした後、流動化剤を混合して製造することができる。
【0076】
なお、トナー粒子(トナー)の体積平均粒径(D50)はコールターカウンター[例えば、商品名:マルチサイザーIII(ベックマン・コールター(株)製)]を用いて測定することができる。
具体的には、電解水溶液であるISOTON-II(ベックマン・コールター社製)100~150mL中に分散剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1~5mL加える。さらに測定試料を2~20mg加え、試料を懸濁した電解液を、超音波分散器で約1~3分間分散処理を行い、前記測定装置により、アパチャーとして50μmアパチャーを用いて、トナー粒子の体積、個数を測定して、体積分布と個数分布を算出する。得られた分布から、トナー粒子の体積平均粒径(D50)(μm)、個数平均粒径(μm)、粒度分布(体積平均粒径/個数平均粒径)を求める。
【0077】
また、乳化転相法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に溶解又は分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3~15μmが好ましい。
【0078】
本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、必要に応じて鉄粉、ガラスビーズ、ニッケル粉、フェライト、マグネタイト及び樹脂(アクリル樹脂、シリコーン樹脂等)により表面をコーティングしたフェライト等のキャリア粒子と混合されて電気的潜像の現像剤として用いられる。キャリア粒子を用いる場合、トナーとキャリア粒子との重量比は、1/99~99/1が好ましい。また、キャリア粒子の代わりに帯電ブレード等の部材と摩擦し、電気的潜像を形成することもできる。
なお、本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、キャリア粒子を含まなくてもよい。
【0079】
本発明のトナーバインダーを含有するトナーは、複写機、プリンター等により支持体(紙、及びポリエステルフィルム等)に定着して記録材料とされる。支持体に定着する方法としては、公知の熱ロール定着方法及びフラッシュ定着方法等が適用できる。
【0080】
本発明のトナーバインダーを用いて作製したトナー組成物は、電子写真法、静電記録法や静電印刷法等において、静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。さらに詳しくは、特にフルカラー用に好適な静電荷像または磁気潜像の現像に用いられる。
【0081】
本明細書には以下の事項が開示されている。
【0082】
本開示(1)は、非晶性ビニル樹脂(A)及び結晶性ビニル樹脂(B)を含有するトナーバインダーであって、
非晶性ビニル樹脂(A)が単量体(a)を含む単量体組成物(A0)の重合体であり、
単量体(a)がニトリル基を有する単量体であり、
結晶性ビニル樹脂(B)が単量体(b)、単量体(c)及び単量体(d)を含む単量体組成物(B0)の重合体であり、
単量体(b)が鎖状炭化水素基を有する炭素数21~40の(メタ)アクリレートであり、
単量体(c)がニトリル基を有する単量体であり、
単量体(d)がビニル基とエーテル基を有する単量体及び/又はビニル基と水酸基を有する単量体であるトナーバインダーである。
【0083】
本開示(2)は、前記単量体組成物(A0)中の単量体(a)の重量割合が、単量体組成物(A0)の重量を基準として5~30重量%である本開示(1)に記載のトナーバインダーである。
【0084】
本開示(3)は、前記単量体組成物(B0)中の単量体(b)の重量割合が、単量体組成物(B0)の重量を基準として15~93重量%である本開示(1)又は(2)に記載のトナーバインダーである。
【0085】
本開示(4)は、前記単量体組成物(B0)中の単量体(c)の重量割合が、単量体組成物(B0)の重量を基準として5~30重量%である本開示(1)~(3)のいずれか1項に記載のトナーバインダーである。
【0086】
本開示(5)は、非晶性ビニル樹脂(A)と結晶性ビニル樹脂(B)の重量比[(A):(B)]が、[20:80]~[65:35]である本開示(1)~(4)のいずれか1項に記載のトナーバインダーである。
【実施例
【0087】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り「部」は重量部を示す。
【0088】
非晶性ビニル樹脂(A)、結晶性ビニル樹脂(B)及びトナーバインダー等の各物性値については次の方法により測定した。
【0089】
[水酸基価及び酸価]
樹脂の水酸基価及び酸価は、JIS K0070に規定の方法で測定した。ただし、酸価の測定溶媒はアセトン、メタノール及びトルエンの混合溶媒(アセトン:メタノール:トルエン=12.5:12.5:75)とした。水酸基価の測定溶媒はピリジンとした。
【0090】
[重量平均分子量]
重量平均分子量は、下記の条件でGPCを用いて測定した。
装置:HLC-8120 [東ソー(株)製]
カラム:TSK GEL GMH6 2本 [東ソー(株)製]
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のTHF溶液
移動相:テトラヒドロフラン(重合禁止剤を含まない)
試料溶液注入量:100μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1,050 2,800 5,970 9,100 18,100 37,900 96,400 190,000 355,000 1,090,000 2,890,000)[東ソー(株)製]
重量平均分子量の測定では、0.25重量%になるように試料をTHFに溶解し、不溶解分をアパチャー1μmのPTFEフィルターでろ別したものを試料溶液とした。
【0091】
[ガラス転移温度]
ガラス転移温度(Tg)は、TA Instruments(株)製DSC Q20を用いて、ASTM D3418-82に規定の方法(DSC法)で測定した。ガラス転移温度の測定条件を記載する。
<測定条件>
(1)30℃から20℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃で10分間保持
(3)20℃/分で-35℃まで冷却
(4)-35℃で10分間保持
(5)20℃/分で150℃まで昇温
(6)(5)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析した。
【0092】
[吸熱ピークのピークトップ温度]
吸熱ピークのピークトップ温度は示差走査熱量計{「DSCQ20」[TA Instruments(株)製]}を用いて以下の測定条件で測定した。
(測定条件)
(1)20℃から10℃/分で150℃まで昇温
(2)150℃から10℃/分で0℃まで冷却
(3)0℃から10℃/分で150℃まで昇温
(4)(3)の過程にて測定される示差走査熱量曲線を解析した。
【0093】
<製造例1> [非晶性ビニル樹脂(A-1)の製造]
オートクレーブにキシレン120部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、密閉にした。スチレン[出光興産(株)製、以下同様]301部、メチルアクリレート[(株)日本触媒製、以下同様]126部、ブチルアクリレート[(株)日本触媒製、以下同様]105部、アクリロニトリル[三菱ケミカル(株)製、以下同様]168部、ジ-t-ブチルパーオキシド[パーブチルD、日油(株)製、以下同様]0.7部、及びキシレン165部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン15部で洗浄した。更に140℃で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。50℃まで冷却後にアクリロニトリルの反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.35部投入し、同温度で0.5時間保持した。さらに170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.35部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後にアクリロニトリルの反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、非晶性ビニル樹脂(A-1)を得た。
【0094】
<製造例2> [非晶性ビニル樹脂(A-2)の製造]
オートクレーブにキシレン100部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、密閉にした。スチレン525部、メチルアクリレート45部、ブチルアクリレート150部、アクリロニトリル30部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.1部、及びキシレン138部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン13部で洗浄した。更に140℃で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。50℃まで冷却後にアクリロニトリルの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、非晶性ビニル樹脂(A-2)を得た。
【0095】
<比較製造例1> [非晶性ビニル樹脂(A’-1)の製造]
オートクレーブにキシレン120部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、密閉にした。スチレン525部、ブチルアクリレート175部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.7部、及びキシレン165部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を140℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン15部で洗浄した。更に140で1時間保持した後、170℃まで1時間かけて昇温し、開始剤を分解させた。100℃まで冷却後にスチレンの反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、非晶性ビニル樹脂(A’-1)を得た。
【0096】
アクリロニトリルおよびスチレンの反応率(%)は以下の方法で算出した。
装置 :(株)島津製作所製GC-14A
カラム :PEG20M20% クロモソルブW担持 2mガラスカラム(phenomenex社製)
内部標準 :アミルアルコール
検出器 :FID検出器
カラム温度:100℃
試料濃度 :5%DMF溶液
アクリロニトリルおよびスチレンとアミルアルコールの検量線を予め作製しておき、この検量線をもとに試料中のアクリロニトリルモノマーおよびスチレンモノマーの含有量を求め、仕込量に対するモノマーの残存量から重合率を算出した。また、試料濃度が5重量%になるように試料をジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、10分間静置した上澄み液を試料溶液とした。
【0097】
非晶性ビニル樹脂(A-1)、(A-2)及び(A’-1)の組成と物性値を表1に示した。
【0098】
【表1】
【0099】
<製造例3> [結晶性ビニル樹脂(B-1)の製造]
オートクレーブにキシレン100部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート[日触テクノファインケミカル(株)製、以下同様]450部、スチレン94部、メチルアクリレート75部、アクリロニトリル94部、2-ヒドロキシエチルアクリレート[(株)日本触媒製、以下同様]38部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン143部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン8部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.4部投入し、同温度で0.5時間保持した。さらに170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.4部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-1)を得た。
【0100】
<製造例4> [結晶性ビニル樹脂(B-2)の製造]
オートクレーブにキシレン100部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート375部、スチレン75部、メチルアクリレート75部、メチルメタクリレート[三菱ケミカル(株)製、以下同様]38部、アクリロニトリル113部、2-メトキシエチルアクリレート(アクリル酸メトキシエチル)[(株)日本触媒製、以下同様]75部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.5部、及びキシレン143部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン8部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.8部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-2)を得た。
【0101】
<製造例5> [結晶性ビニル樹脂(B-3)の製造]
オートクレーブにキシレン100部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ステアリルアクリレート[(株)日本触媒製、以下同様]600部、アクリロニトリル105部、2-ヒドロキシエチルアクリレート45部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン143部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン8部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.4部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-3)を得た。
【0102】
<製造例6> [トリアコンチルアクリレートの合成]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、空気導入管、減圧装置、減水装置を備えた反応容器に、1-トリアコンタノール50部、トルエン50部、アクリル酸12部、ハイドロキノン0.05部を投入し、撹拌して均一化した。その後、パラトルエンスルホン酸2部を加え、30分撹拌した後、空気を30mL/分の流量で吹き込みながら100℃で生成する水を除去しながら5時間反応させた。その後、反応容器内の圧力を300mmHgに調整し、生成する水を除去しながらさらに3時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却後、10重量%水酸化ナトリウム水溶液30部を加えて1時間撹拌したのち静置して有機相と水相を分離させた。有機相を分液及び遠心分離操作で採取し、ハイドロキノン0.01部を投入し、空気を吹き込みながら減圧で溶媒を除去し、トリアコンチルアクリレートを得た。
【0103】
<製造例7> [結晶性ビニル樹脂(B-4)の製造]
オートクレーブにキシレン120部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。トリアコンチルアクリレート420部、スチレン105部、アクリロニトリル140部、2-メトキシエチルアクリレート(アクリル酸メトキシエチル)35部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.4部、及びキシレン171部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン9部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.2部投入し、同温度で0.5時間保持した。さらに170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.2部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-4)を得た。
【0104】
<製造例8> [結晶性ビニル樹脂(B-5)の製造]
オートクレーブにキシレン100部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート450部、スチレン113部、アクリロニトリル75部、メチルアクリレート38部、2-エトキシエチルアクリレート(アクリル酸エトキシエチル)[(株)三和ケミファ製、以下同様]38部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート[(株)日本触媒製、以下同様]38部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン143部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン8部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.4部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-5)を得た。
【0105】
<製造例9> [結晶性ビニル樹脂(B-6)の製造]
オートクレーブにキシレン80部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ステアリルアクリレート752部、2-ヒドロキシエチルアクリレート12部、メタクリロニトリル[旭化成(株)製、以下同様]32部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート[共栄社化学(株)製、以下同様]4部、ジ-t-ブチルパーオキシド0.8部、及びキシレン114部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン6部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、170℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.4部投入し、同温度で0.5時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-6)を得た。
【0106】
<製造例10> [結晶性ビニル樹脂(B-7)の製造]
オートクレーブに酢酸エチル[三協化学(株)製、以下同様]135部、ベヘニルアクリレート330部を仕込み、窒素で置換した後、撹拌下密閉状態で60℃まで昇温した。アクリロニトリル39部、スチレン94部、メチルアクリレート55部、アクリル酸17部、2-メトキシエチルアクリレート(アクリル酸メトキシエチル)17部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)[富士フイルム和光純薬(株)製、以下同様]5.5部、酢酸エチル135部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を60℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインを酢酸エチル14部で洗浄した。同温度で1時間保った後、1時間かけてオートクレーブ内温度を80℃まで昇温した。更に同温度で1時間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認した。単量体(b)の反応率が95%未満であったため、80℃まで昇温し、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)3.0部と酢酸エチル38部の混合溶液を1時間かけて滴下した。滴下後80℃で2時間保持し、反応率が95%以上まで反応させた。110℃で6時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-7)を得た。
【0107】
<製造例11> [結晶性ビニル樹脂(B-8)の製造]
オートクレーブにキシレン80部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で160℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート680部、メタクリロニトリル80部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート40部、ジ-t-ブチルパーオキシド2.4部、及びキシレン114部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を160℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン6部で洗浄した。更に同温度で80分間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、160℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.8部投入し、同温度で80分間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-8)を得た。
【0108】
<製造例12> [結晶性ビニル樹脂(B-9)の製造]
オートクレーブにキシレン120部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。トリアコンチルアクリレート210部、スチレン140部、メチルアクリレート140部、メタクリロニトリル140部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート70部、ジ-t-ブチルパーオキシド1.4部、及びキシレン171部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、3時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン9部で洗浄した。更に同温度で80分間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%未満であったため、160℃でジ-t-ブチルパーオキシドを0.7部投入し、同温度で80分間保持した後、50℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を再度確認したところ反応率は95%以上となった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B-9)を得た。
【0109】
<比較製造例2> [結晶性ビニル樹脂(B’-1)の製造]
オートクレーブにキシレン175部を仕込み、窒素で置換した。撹拌下解放状態で140℃まで昇温後、撹拌下密閉状態で170℃まで昇温した。ベヘニルアクリレート720部、アクリル酸30部[(株)日本触媒製、以下同様]、ジ-t-ブチルパーオキシド1.1部、及びキシレン65部の混合溶液を、オートクレーブ内温度を170℃にコントロールしながら、2時間かけて滴下し重合を行った。滴下後、滴下ラインをキシレン10部で洗浄した。更に同温度で0.5時間保持した後、100℃まで冷却後に単量体(b)の反応率を確認したところ95%以上であった。170℃で5時間0.5~2.5kPaの減圧下で脱溶剤を行い、結晶性ビニル樹脂(B’-1)を得た。
【0110】
単量体(b)の反応率(%)はNMRで、残存する単量体量を同定する方法で算出した。
<測定条件>
装置:ブルカーバイオスピン社製「AVANCE III HD400」
積算回数:4回
緩和時間:1秒
<サンプル調製>
NMRチューブにサンプルを100mg、重水素化溶媒(例えば重クロロホルム)を0.8mL加えて樹脂を溶解させた。
<解析及び計算>
反応前の単量体(b)のプロトンの面積、残存する単量体(b)のプロトンの面積並びに単量体(b)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積に基づき、下記の式により反応率を算出した。
反応率:100×[{反応前の単量体(b)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(b)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}-{残存する単量体(b)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(b)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}]/{反応前の単量体(b)の二重結合炭素に結合しているプロトンの面積/単量体(b)及び結晶性ビニル樹脂(B)の鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトンの面積}
例えば単量体(b)がベヘニルアクリレートであれば、二重結合炭素に結合しているプロトン(約6.4ppm)と、鎖状炭化水素基の末端メチル基のプロトン(約0.9ppm)を使用した。
【0111】
結晶性ビニル樹脂(B-1)~(B-9)及び(B’-1)の組成と物性値を表2に示した。
【0112】
【表2】
【0113】
<実施例1> [トナーバインダー(C-1)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-1)60部を混合し、二軸混練機[(株)池貝製、PCM-30]に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例1に係るトナーバインダー(C-1)を得た。
【0114】
<実施例2> [トナーバインダー(C-2)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-2)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例2に係るトナーバインダー(C-2)を得た。
【0115】
<実施例3> [トナーバインダー(C-3)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-3)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例3に係るトナーバインダー(C-3)を得た。
【0116】
<実施例4> [トナーバインダー(C-4)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-4)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例4に係るトナーバインダー(C-4)を得た。
【0117】
<実施例5> [トナーバインダー(C-5)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)50部及び結晶性ビニル樹脂(B-5)50部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例5に係るトナーバインダー(C-5)を得た。
【0118】
<実施例6> [トナーバインダー(C-6)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-6)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例6に係るトナーバインダー(C-6)を得た。
【0119】
<実施例7> [トナーバインダー(C-7)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)50部及び結晶性ビニル樹脂(B-7)50部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例7に係るトナーバインダー(C-7)を得た。
【0120】
<実施例8> [トナーバインダー(C-8)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-2)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-1)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例8に係るトナーバインダー(C-8)を得た。
【0121】
<実施例9> [トナーバインダー(C-9)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)20部及び結晶性ビニル樹脂(B-4)80部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例9に係るトナーバインダー(C-9)を得た。
【0122】
<実施例10> [トナーバインダー(C-10)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)15部及び結晶性ビニル樹脂(B-2)85部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例10に係るトナーバインダー(C-10)を得た。
【0123】
<実施例11> [トナーバインダー(C-11)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)50部及び結晶性ビニル樹脂(B-8)50部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例11に係るトナーバインダー(C-11)を得た。
【0124】
<実施例12> [トナーバインダー(C-12)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-9)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例12に係るトナーバインダー(C-12)を得た。
【0125】
<実施例13> [トナーバインダー(C-13)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)60部及び結晶性ビニル樹脂(B-8)40部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、実施例13に係るトナーバインダー(C-13)を得た。
【0126】
<比較例1> [トナーバインダー(C’-1)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B’-1)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、比較例1に係るトナーバインダー(C’-1)を得た。
【0127】
<比較例2> [トナーバインダー(C’-2)の製造]
非晶性ビニル樹脂(A’-1)40部及び結晶性ビニル樹脂(B-1)60部を混合し、二軸混練機に供給し、140℃で2分間混錬した。得られたものを冷却することにより、比較例2に係るトナーバインダー(C’-2)を得た。
【0128】
トナーバインダー(C-1)~(C-13)及び(C’-1)~(C’-2)の組成と物性値を表3に示した。
【0129】
【表3】
【0130】
<実施例14> [トナー(T-1)の製造]
実施例1に係るトナーバインダー(C-1)85部に対して、顔料のカーボンブラック[三菱ケミカル(株)製、MA-100]5部、離型剤のフィッシャー・トロプッシュワックス[日本精蝋(株)製、FT-0070]8部、荷電制御剤[保土谷化学工業(株)製、T-77]1部を加えて下記の方法でトナー化した。
まず、ヘンシェルミキサー[日本コークス工業(株)製、FM10B]を用いて予備混合した後、二軸混練機[(株)池貝製、PCM-30]で混練した。ついで超音速ジェット粉砕機ラボジェット[(株)栗本鐵工所製、KJ-25]を用いて微粉砕した後、エルボージェット分級機[(株)マツボー製、EJ-L-3(LABO)型]で分級し、体積平均粒径(D50)が7μmのトナー粒子を得た。
ついで、トナー粒子100部に流動化剤として疎水性シリカ[日本アエロジル(株)製、アエロジルR972]1部をサンプルミルにて混合して、実施例14に係るトナー(T-1)を得た。
【0131】
<実施例15~26> [トナー(T-2)~(T-13)の製造]
表4に記載した原料の配合部数で、実施例14と同様にトナーを製造し、実施例15~26に係るトナー(T-2)~(T-13)を得た。
【0132】
<比較例3、4> [トナー(T’-1)~(T’-2)の製造]
表4に記載した原料の配合部数で、実施例14と同様にトナーを製造し、比較例3、4に係るトナー(T’-1)~(T’-2)を得た。
【0133】
各実施例及び比較例で得られたトナーバインダーを使用したトナーの組成と評価結果を表4に示した。
【0134】
【表4】
【0135】
[評価方法]
以下に、得られたトナー(T-1)~(T-13)及び(T’-1)~(T’-2)の低温定着性、耐熱保存性及び定着ローラーからの分離性の測定方法と評価方法を、判定基準を含めて説明する。
【0136】
<低温定着性>
トナーを紙面上に1.00mg/cmとなるように均一に載せた。このとき粉体を紙面に載せる方法は、熱定着機を外したプリンターを用いた。この紙をソフトローラーに定着速度(加熱ローラーの周速)213mm/秒、加熱ローラーの温度90~230℃の範囲を5℃刻みで通した。次に定着画像へのコールドオフセットの有無を目視し、コールドオフセットの発生温度(MFT)を測定した。
コールドオフセットの発生温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味し、この評価条件では、MFTは一般には125℃以下であることが好ましい。
【0137】
<耐熱保存性>
トナー1gとアエロジルR8200(エボニックジャパン(株)製)0.01gをシェイカーで1時間混合した。混合物を密閉容器に入れ、温度50℃、湿度80%の雰囲気で24時間静置し、ブロッキングの程度を目視で判断し、下記判定基準で耐熱保存性を評価した。
【0138】
[判定基準]
◎:ブロッキングが全く発生しておらず、耐熱保存性に優れる。
○:一部にブロッキングが発生しているが、触れると容易に崩れる。
△:一部にブロッキングが発生しており、触れても容易には崩れない。
×:全体にブロッキングが発生しており、耐熱保存性が大きく劣る。
【0139】
<定着ローラーからの分離性>
A4普通紙の紙面上の横1cm、縦3cmの大きさにトナーを4.5mg均一に載せた。この紙をベルト定着機に定着速度(加熱ローラーの周速)100mm/秒、加熱ローラーの温度150~200℃の範囲を10℃刻みで通した(計6点確認)。次にベルト定着ローラーへの定着紙の巻き付きの有無を目視により確認し、定着紙への巻き付きが認められない場合は定着紙にシワが発生しているか否かを目視により確認し、以下の基準により評価した。下記基準は、評価結果が◎または〇であれば、定着ローラーからの分離性に優れていることを意味する。
【0140】
[判定基準]
◎:定着ローラーへの定着紙の巻き付きが認められず、定着紙にシワが認められない。
〇:定着ローラーへの定着紙の巻き付きは認められないが、定着紙にシワが認められる。
△:定着ローラーへの定着紙の巻き付きが1~2回見られた。
×:定着ローラーへの定着紙の巻き付きが3回以上見られた。
【0141】
各実施例のトナーバインダーを使用した各実施例のトナーは、低温定着性及び耐熱保存性が良好であり、かつ、定着ローラーからの分離性にも優れていた。
単量体(b)の含有量が多く、吸熱ピークのピークトップ温度が低く、重量比[(A):(B)]において(B)が多いトナーバインダー(C)を使用すると低温定着性が良好(MFTが低い)となっていた。
吸熱ピークのピークトップ温度が高いトナーバインダー(C)を使用すると耐熱保存性が特に良好(◎評価)となっていた。実施例16と19では吸熱ピークのピークトップ温度が55℃とやや低いために耐熱保存性は○評価となっていた。
一方、各比較例のトナーバインダーを使用した各実施例のトナーは、低温定着性及び耐熱保存性は良好であったものの、定着ローラーからの分離性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明のトナーバインダーは、低温定着性及び耐熱保存性、並びに、定着ローラーからの分離性に優れるため、電子写真、静電記録や静電印刷等に用いる、静電荷像現像用トナーとして好適に使用できる。